著者 後藤 純子, 伊藤 裕才, 秋田 陽子
雑誌名 共立女子大学・共立女子短期大学総合文化研究所紀
要
巻 27
ページ 17‑25
発行年 2021‑02
URL http://id.nii.ac.jp/1087/00003401/
― 17 ―
共立女子大学・共立女子短期大学 総合文化研究所紀要 第27号
イカ表皮色素の布への染色可能性に関する研究
後藤 純子、伊藤 裕才、秋田 陽子
1.緒言天然染料は古代より染色に用いられており、色素は自然界に存在する種々の植物や動物などから 抽出される。
近年では、紫タマネギ外皮を染色材料とした絹布の染色1)、青森県産黒ブドウのスチューベン果 皮を染色材料とした染色2)、岩手県宮古産うに殻を染色材料とした各繊維に対する染色3)など、廃 棄物を使用した染色の研究、香辛料のクローブ4)や赤キャベツ5)を染色材料とした研究が行われ ている。
伊藤6)は、イカやタコなどの軟体動物頭足類の色素について着色料の実用化に向けて研究を行い、
イカ表皮色素が水に溶けず、強酸で抽出されることを明らかにしている。イカやタコなどの軟体動 物の色素は、昆虫などの無脊椎動物と同様に、トリプトファンから生合成されるオンモクローム色 素類であることが知られているが7)、色素の詳細な化学構造は、主要物質であるキサントオマチン
(黄色~橙色)およびその類縁物質以外は未解明な部分が多い。日本はイカを最も食する民族と言 われているが、それに伴って廃棄される表皮も大変多い。それゆえ、イカの表皮は染色の新しい素 材として利用できる可能性が高いと考える。
本研究では、スルメイカ表皮色素を用い、布への染色可能性を明らかにすることを目的とした。
この抽出液は、水不溶性のため通常の方法では染色が困難であるため、色素を抽出した溶媒のまま 染色することを試みた。抽出液は強酸であり、布の損傷が予測されたが、染色可能性を調べるため に敢えてそのまま使用した。まず、4種の方法によって染色方法を検討し、最も濃く染まることが 確認できた方法で染色した綿布について、洗濯堅ろう度試験及び引張試験を行い、染色堅ろう度を 調べるとともに、染色により綿布の損傷を明らかにした。
2.実験
2.1 イカ表皮色素の抽出 2.1.1 試料・試薬
色素を抽出するイカとして、日本国内で最も流通が多く、かつ歴史的にも日本人に最もなじみの 深いイカである、ツツイカ目アカイカ科のスルメイカ(Todarodes pacificus)を試料に用いた。ス ルメイカは日本近海の固有種であり、ヒレ(エンペラ)が短くひし形であり、全体に褐色を帯びて、
背中には黒い色帯がある。イカの表皮には色素胞が点在しており、色素胞の収縮と開放によって表 皮の色調が変化する。色素胞個々の色調は多様であり、スルメイカでは黄色、赤色、紫色、黒色な
どの色素胞が観察された(図1)。
今回、試料として日本海で漁獲し石川県能都町で水揚げしたスルメイカを購入した。できるだけ 鮮度が高いスルメイカを試料とするために、漁獲したイカを生きたまま船上で冷凍した「船凍イカ」
を選んだ。試料は冷凍のまま輸送され、実験に供するまで-20℃で保管された。
を 生 き た ま ま 船 上 で 冷 凍 し た 「 船 凍 イ カ 」 を 選 ん だ 。 試 料 は 冷 凍 の ま ま 輸 送 さ れ 、 実 験 に 供 す る ま で ‐20℃ で 保 管 さ れ た 。
図 1: ス ル メ イ カ と 表 皮 の 色 素 胞
実 験 に 使 用 し た 有 機 溶 媒 ( ア セ ト ン 、 メ タ ノ ー ル ) お よ び 塩 酸 は 、 富 士 フ ィ ル ム 和 光 純 薬 株 式 会 社 製 の 特 級 品 を 用 い た 。ま た 、水 は す べ て 蒸 留 水 を 用 い た 。
2 . 1 . 2 抽 出 方 法
流 水 で 解 凍 し た 試 料 か ら 、 頭 足 部 お よ び 内 臓 を と り 除 き 、 胴 部 の 内 側 を 流 水 で 洗 浄 後 、 胴 部 ( ヒ レ を 含 む ) の 表 皮 を 素 手 で 剥 い て 採 取 し た 。 得 ら れ た 表 皮 を 水 洗 い し た 後 、 ガ ラ ス ビ ー カ ー に 入 れ 、 イ カ 1杯 に つ き 約 100 mL の ア セ ト ン を 加 え て 、 表 皮 を 5 分 間 浸 漬 し た 。 ア セ ト ン へ の 浸 漬 は 、 表 皮 の 水 分 お よ び 粘 液 を 除 去 す る た め で あ る 。 ア セ ト ン に 浸 漬 す る と 、 イ カ 表 皮 に 皺 が 生 じ て 縮 む の が 観 察 さ れ た 。 ア セ ト ン お よ び 少 量 の 沈 殿 物 を 廃 棄 後 、 ビ ー カ ー に メ タ ノ ー ル を イ カ 表 皮 1杯 に つ き 約 100 mL 加 え て 、表 皮 を 5 分 間 浸 漬 し た 。こ れ は 、 次 に 加 え る 塩 酸 含 有 メ タ ノ ー ル の 前 処 理 と し て 、 溶 媒 を メ タ ノ ー ル に 置 換 す る た め で あ る 。メ タ ノ ー ル を 廃 棄 後 、抽 出 液 で あ る 塩 酸/メ タ ノ ー ル(2:100、v/v) 混 液 を イ カ 表 皮 1 杯 に つ き 100 mL 加 え 、5℃ 下 で 色 素 の 抽 出 を 行 っ た 。 色 素 の 溶 出 は 、 塩 酸 メ タ ノ ー ル 混 液 を 添 加 後 す ぐ に 始 ま る が 、 色 素 の 変 性 や 分 解 を 最 小 限 と す る た め に 、抽 出 は 低 温 下 で 行 っ た 。24 時 間 後 、表 皮 を ピ ン セ ッ ト で 除 去 し て 抽 出 液 と し た 。 得 ら れ た 抽 出 液 は 、 赤 橙 ~ 赤 褐 色 を 呈 し て い た 。
図1:スルメイカと表皮の色素胞
実験に使用した有機溶媒(アセトン、メタノール)および塩酸は、富士フィルム和光純薬株式会 社製の特級品を用いた。また、水はすべて蒸留水を用いた。
2.1.2 抽出方法
流水で解凍した試料から、頭足部および内臓をとり除き、胴部の内側を流水で洗浄後、胴部(ヒ レを含む)の表皮を素手で剥いて採取した。得られた表皮を水洗いした後、ガラスビーカーに入れ、
イカ1杯につき約100mLのアセトンを加えて、表皮を5分間浸漬した。アセトンへの浸漬は、表皮 の水分および粘液を除去するためである。アセトンに浸漬すると、イカ表皮に皺が生じて縮むのが 観察された。アセトンおよび少量の沈殿物を廃棄後、ビーカーにメタノールをイカ表皮1杯につき 約100mL加えて、表皮を5分間浸漬した。これは、次に加える塩酸含有メタノールの前処理として、
溶媒をメタノールに置換するためである。メタ ノールを廃棄後、抽出液である塩酸/メタノール
( 2:100、v/v) 混 液 を イ カ 表 皮 1 杯 に つ き 100mL加え、5℃下で色素の抽出を行った。色素 の溶出は、塩酸メタノール混液を添加後すぐに始 まるが、色素の変性や分解を最小限とするために、
抽出は低温下で行った。24時間後、表皮をピンセッ トで除去して抽出液とした。得られた抽出液は、
赤橙~赤褐色を呈していた。
れ 、 実 験 に 供 す る ま で ‐20℃ で 保 管 さ れ た 。
図 1: ス ル メ イ カ と 表 皮 の 色 素 胞
実 験 に 使 用 し た 有 機 溶 媒 ( ア セ ト ン 、 メ タ ノ ー ル ) お よ び 塩 酸 は 、 富 士 フ ィ ル ム 和 光 純 薬 株 式 会 社 製 の 特 級 品 を 用 い た 。ま た 、水 は す べ て 蒸 留 水 を 用 い た 。
2 . 1 . 2 抽 出 方 法
流 水 で 解 凍 し た 試 料 か ら 、 頭 足 部 お よ び 内 臓 を と り 除 き 、 胴 部 の 内 側 を 流 水 で 洗 浄 後 、 胴 部 ( ヒ レ を 含 む ) の 表 皮 を 素 手 で 剥 い て 採 取 し た 。 得 ら れ た 表 皮 を 水 洗 い し た 後 、 ガ ラ ス ビ ー カ ー に 入 れ 、 イ カ 1杯 に つ き 約 100 mL の ア セ ト ン を 加 え て 、 表 皮 を 5分 間 浸 漬 し た 。 ア セ ト ン へ の 浸 漬 は 、 表 皮 の 水 分 お よ び 粘 液 を 除 去 す る た め で あ る 。 ア セ ト ン に 浸 漬 す る と 、 イ カ 表 皮 に 皺 が 生 じ て 縮 む の が 観 察 さ れ た 。 ア セ ト ン お よ び 少 量 の 沈 殿 物 を 廃 棄 後 、 ビ ー カ ー に メ タ ノ ー ル を イ カ 表 皮 1 杯 に つ き 約 100 mL加 え て 、表 皮 を 5分 間 浸 漬 し た 。こ れ は 、 次 に 加 え る 塩 酸 含 有 メ タ ノ ー ル の 前 処 理 と し て 、 溶 媒 を メ タ ノ ー ル に 置 換 す る た め で あ る 。メ タ ノ ー ル を 廃 棄 後 、抽 出 液 で あ る 塩 酸/メ タ ノ ー ル(2:100、v/v) 混 液 を イ カ 表 皮 1 杯 に つ き 100 mL 加 え 、5℃ 下 で 色 素 の 抽 出 を 行 っ た 。 色 素 の 溶 出 は 、 塩 酸 メ タ ノ ー ル 混 液 を 添 加 後 す ぐ に 始 ま る が 、 色 素 の 変 性 や 分 解 を 最 小 限 と す る た め に 、抽 出 は 低 温 下 で 行 っ た 。24 時 間 後 、表 皮 を ピ ン セ ッ ト で 除 去 し て 抽 出 液 と し た 。 得 ら れ た 抽 出 液 は 、 赤 橙 ~ 赤 褐 色 を 呈 し て い た 。
図 2 : ス ル メ イ カ 表 皮 か ら の 色 素 の 抽 出 図2:スルメイカ表皮からの色素の抽出
~`”•9 —· ・ •ニヽ ・
9..
と ‑ヽ‑ . . ,
ご ? こ p . . . .
• ° .:夕c_•.. •o ”``今 ・ -/09• 、 • C d
る:#~”'ら#:ヤ
‘4 (•:~&2‘’
u .`
ヽ
︑. J
︐
`ぷ
・`.
ヘ.ゃ 亀 ",.︑9,̀
r . 4 f︑r
.』~・し.r
― 19 ―
共立女子大学・共立女子短期大学 総合文化研究所紀要 第27号 2.2 イカ表皮色素の布への染色
2.2.1 試料
染色用試料布には、JIS L 0803に規定する染色堅ろう度添付白布の毛、絹、綿を使用した。試料 布はイオン交換水を用い、毛60℃、絹30℃、綿80℃、浴比1:50で30分間糊抜き後、染色に供した。
染色堅ろう度試験には、JIS L 0844 洗濯に対する染色堅ろう度試験方法(A法)既定の洗浄剤とし て、粉石けん(ライオン株式会社)を使用し、添付白布にはJIS L 0803規定のものを用いた。
2.2.2 染色方法
イカ表皮から抽出された色素は水不溶性のため、塩酸/メタノール混液(pH=0.31)のまま用いた。
染色は、繊維に対する染色可能性と染色条件を明らかにするために、4種の方法(表1)を試みた。
染色温度はすべて室温とした。
Aは、5cm×5cmに裁断した毛、絹、綿の染色布を各3枚ずつ同じビーカーに入れ、浴比が1:
50になるように抽出液を110mlとし、20分間攪拌しながら染色を行った。染色後、乾燥させる前に イオン交換水によるすすぎを行ったものを条件1、染色布が乾燥してからイオン交換水によるすす ぎを行ったものを条件2、すすぎを行わずそのまま自然乾燥させたものを条件3とした。
Bは、5cm×5cmに裁断した綿布をシャーレに入れ、メスピペットを用いて抽出液を2.6ml(浴 比1:10)滴下し、布を浸漬させた状態で20分間静置した。すすぎは行わなかった。
Cは、5cm×5cmに裁断した綿布をシャーレに入れ、メスピペットを用いて抽出液を1ml滴下 し、その後は乾燥と約0.4ml滴下を繰り返した。常に浴比が1:4程度の状態を保ち、滴下する際は、
布の端から染色液があふれ出ないように注意しながら3時間染色を行った。最終的に、抽出液は9
表1:染色条件
A B C D
染色方法 浸漬、攪拌 浸漬 滴下 浸漬
[浴比]抽出液 110ml
[1:50] 2.6ml
[1:10] 9ml※
[約1:4] 15ml
[約1:57]
使用した試料布 毛、絹、綿 綿 綿 綿
試料布の枚数 9枚 1枚 1枚 密閉あり:1枚
密閉なし:1枚
試料布の重さ 2.187g 0.260g 0.257g 密閉あり:0.262g
密閉なし:0.269g
時間 20min 20min 3h 96h
温度 室温(24℃) 室温(21℃) 室温(21℃) 室温(21℃)
後処理 条件1 条件2 条件3
すすぎなし すすぎなし すすぎなし 染色後すぐに
すすぎ 染色後乾燥さ
せ、すすぎ すすぎなし
※複数回にわたり滴下を行った抽出液の合計。浴比は各回のもの。
\
mlを使用した。すすぎは行わなかった。
Dは、5cm×5cmに裁断した綿布をビーカーに入れ、抽出液15ml(浴比1:57程度)に96時間 浸漬して染色を行った。浴比の低下による染着性の比較を行うため、ビーカーを密閉したものと密 閉しないもので染色を行った。どちらもすすぎは行わなかった。
染色堅ろう度及び引張試験には、Dの密閉しない方法で30cm×21cmの綿布を染色し、乾燥後に イオン交換水ですすぎを行ったものを用いた。
2.3 染色状態の評価
染色布は、ベンチトップ型積分球分光測色計Ci7800(X-rite)を用い て表2の条件で測色を行った。
2.4 染色布の洗濯堅ろう度試験 洗濯堅ろう度試験は、JIS L 0844 洗濯 に対する染色堅ろう度試験方法(A法)に 準じ、第一添付白布に綿、第二添付白布 に絹を取り付け、図3のような複合試験 片を作成した。洗浄溶液は、浴比1:50 になるように0.5%粉石けん溶液を作成し、
ビーカーで絶えず攪拌させながら洗浄を 行った。温度は50℃とした。すすぎは常
温のイオン交換水を用いて4分間攪拌を行い、余分な水分をろ紙で取り去り、三辺を縫い留めてい た糸を取り去り、約40℃の乾燥器内で乾燥させた。乾燥後、残りの糸を取り去り、標準光源D65の 下で、試験片の変退色を変退色用グレースケール、添付白布の汚染を汚染用グレースケールを用い て評価した。また、ベンチトップ型積分球分光測色計Ci7800(X-rite)で試験片及び添付白布の L*a*b*値を測定し、以下の式を用いてΔE値を算出した。L*1、a*1、b*1は染色前、L*2、a*2、b*2
は染色後のL*a*b*値である。
は 行 わ な か っ た 。
D は 、 5cm×5cm に 裁 断 し た 綿 布 を ビ ー カ ー に 入 れ 、 抽 出 液 15ml( 浴 比 1:57 程 度 )に 96 時 間 浸 漬 し て 染 色 を 行 っ た 。浴 比 の 低 下 に よ る 染 着 性 の 比 較 を 行 う た め 、 ビ ー カ ー を 密 閉 し た も の と 密 閉 し な い も の で 染 色 を 行 っ た 。 ど ち ら も す す ぎ は 行 わ な か っ た 。
染 色 堅 牢 度 及 び 引 張 試 験 に は 、D の 密 閉 し な い 方 法 で 30cm×21cm の 綿 布 を 染 色 し 、 乾 燥 後 に イ オ ン 交 換 水 で す す ぎ を 行 っ た も の を 用 い た 。
2 . 3 染 色 状 態 の 評 価
染 色 布 は 、 ベ ン チ ト ッ プ 型 積 分 球 分 光 測 色 計 Ci7800(X-rite)を 用 い て 表 2 の 条 件 で 測 色 を 行 っ た 。
2 . 4 染 色 布 の 洗 濯 堅 牢 度 試 験
洗 濯 堅 牢 度 試 験 は 、 JIS L 0844 洗 濯 に 対 す る 染 色 堅 ろ う 度 試 験 方 法 ( A 法 ) に 準 じ 、 第 一 添 付 白 布 に 綿 、 第 二 添 付 白 布 に 絹 を 取 り 付 け 、 図
3 の よ う な 複 合 試 験 片 を 作 成 し た 。 洗 浄 溶 液 は 、 浴 比 1: 50 に な る よ う に 0.5% 粉 石 け ん 溶 液 を 作 成 し 、 ビ ー カ ー で 絶 え ず 攪 拌 さ せ な が ら 洗 浄 を 行 っ た 。温 度 は 50℃ と し た 。 す す ぎ は 常 温 の イ オ ン 交 換 水 を 用 い て 4 分 間 攪 拌 を 行 い 、 余 分 な 水 分 を ろ 紙 で 取 り 去 り 、 三 辺 を 縫 い
留 め て い た 糸 を 取 り 去 り 、約 40℃ の 乾 燥 器 内 で 乾 燥 さ せ た 。乾 燥 後 、残 り の 糸 を 取 り 去 り 、標 準 光 源 D65 の 下 で 、試 験 片 の 変 退 色 を 変 退 色 用 グ レ ー ス ケ ー ル 、 添 付 白 布 の 汚 染 を 汚 染 用 グ レ ー ス ケ ー ル を 用 い て 評 価 し た 。 ま た 、 ベ ン チ ト ッ プ 型 積 分 球 分 光 測 色 計 Ci7800(X-rite)で 試 験 片 及 び 添 付 白 布 の L*a*b*値 を 測 定 し 、 以 下 の 式 を 用 い て Δ E 値 を 算 出 し た 。 L*1、 a*1、 b*1は 染 色 前 、 L*2、 a*2、 b*2 は 染 色 後 の L*a*b*値 で あ る 。
2 . 5 染 色 布 の 引 張 試 験
引 張 試 験 に は 、 染 色 布 を 3cm×20 ㎝ に 裁 断 し 、 両 端 端 か ら ほ ぼ 同 数 の 糸 を 取 り 除 き 、 2.5cm×20cm に し た 試 験 片 を 用 い た 。 試 験 機 は 、 テ ン シ ロ ン 万 能 試 験 機 RTC-1250 (株 式 会 社 オ リ エ ン テ ッ ク )、 記 録 計 AR-6000 (株 式 会 社 オ リ エ ン テ ッ ク )を 用 い た 。試 験 片 を つ か み 間 隔 100mm、試 験 速 度 100mm/min の 条 件 で 試 験 を 行 い 、 切 断 時 の 強 度 ( kgf) お よ び 伸 び ( ㎜ ) を 測 定 し た 。
図 3 : 洗 濯 堅 牢 度 試 験 の 試 験 片 表 2 : 測 色 条 件
視野 10°
標準光源 D65
背景 白
波長 360~750nm 測定面積 直径10mm
2.5 染色布の引張試験
引張試験には、染色布を3cm×20㎝に裁断し、両端端からほぼ同数の糸を取り除き、2.5cm×
20cmにした試験片を用いた。試験機は、テンシロン万能試験機RTC-1250(株式会社オリエンテッ ク)、記録計AR-6000(株式会社オリエンテック)を用いた。試験片をつかみ間隔100mm、試験速 度100mm/minの条件で試験を行い、切断時の強度(kgf)および伸び(㎜)を測定した。
表2:測色条件
視野 10°
標準光源 D65
背景 白
波長 360~ 750nm 測定面積 直径10mm D は 、 5cm×5cm に 裁 断 し た 綿 布 を ビ ー カ ー に 入 れ 、 抽 出 液 15ml( 浴 比 1:57 程 度 )に 96 時 間 浸 漬 し て 染 色 を 行 っ た 。浴 比 の 低 下 に よ る 染 着 性 の 比 較 を 行 う た め 、 ビ ー カ ー を 密 閉 し た も の と 密 閉 し な い も の で 染 色 を 行 っ た 。 ど ち ら も す す ぎ は 行 わ な か っ た 。
染 色 堅 牢 度 及 び 引 張 試 験 に は 、D の 密 閉 し な い 方 法 で 30cm×21cm の 綿 布 を 染 色 し 、 乾 燥 後 に イ オ ン 交 換 水 で す す ぎ を 行 っ た も の を 用 い た 。
2 . 3 染 色 状 態 の 評 価
染 色 布 は 、 ベ ン チ ト ッ プ 型 積 分 球 分 光 測 色 計 Ci7800(X-rite)を 用 い て 表 2 の 条 件 で 測 色 を 行 っ た 。
2 . 4 染 色 布 の 洗 濯 堅 牢 度 試 験
洗 濯 堅 牢 度 試 験 は 、 JIS L 0844 洗 濯 に 対 す る 染 色 堅 ろ う 度 試 験 方 法 ( A 法 ) に 準 じ 、 第 一 添 付 白 布 に 綿 、 第 二 添 付 白 布 に 絹 を 取 り 付 け 、 図
3 の よ う な 複 合 試 験 片 を 作 成 し た 。 洗 浄 溶 液 は 、 浴 比 1: 50 に な る よ う に 0.5% 粉 石 け ん 溶 液 を 作 成 し 、 ビ ー カ ー で 絶 え ず 攪 拌 さ せ な が ら 洗 浄 を 行 っ た 。温 度 は 50℃ と し た 。 す す ぎ は 常 温 の イ オ ン 交 換 水 を 用 い て 4 分 間 攪 拌 を 行 い 、 余 分 な 水 分 を ろ 紙 で 取 り 去 り 、 三 辺 を 縫 い
留 め て い た 糸 を 取 り 去 り 、約 40℃ の 乾 燥 器 内 で 乾 燥 さ せ た 。乾 燥 後 、残 り の 糸 を 取 り 去 り 、標 準 光 源 D65 の 下 で 、試 験 片 の 変 退 色 を 変 退 色 用 グ レ ー ス ケ ー ル 、 添 付 白 布 の 汚 染 を 汚 染 用 グ レ ー ス ケ ー ル を 用 い て 評 価 し た 。 ま た 、 ベ ン チ ト ッ プ 型 積 分 球 分 光 測 色 計 Ci7800(X-rite)で 試 験 片 及 び 添 付 白 布 の L*a*b*値 を 測 定 し 、 以 下 の 式 を 用 い て Δ E 値 を 算 出 し た 。 L*1、 a*1、 b*1は 染 色 前 、 L*2、 a*2、 b*2 は 染 色 後 の L*a*b*値 で あ る 。
2 . 5 染 色 布 の 引 張 試 験
引 張 試 験 に は 、 染 色 布 を 3cm×20 ㎝ に 裁 断 し 、 両 端 端 か ら ほ ぼ 同 数 の 糸 を 取 り 除 き 、 2.5cm×20cm に し た 試 験 片 を 用 い た 。 試 験 機 は 、 テ ン シ ロ ン 万 能 試 験 機 RTC-1250 (株 式 会 社 オ リ エ ン テ ッ ク )、 記 録 計 AR-6000 (株 式 会 社 オ リ エ ン テ ッ ク )を 用 い た 。試 験 片 を つ か み 間 隔 100mm、試 験 速 度 100mm/min の 条 件 で 試 験 を 行 い 、 切 断 時 の 強 度 ( kgf) お よ び 伸 び ( ㎜ ) を 測 定 し た 。
図 3 : 洗 濯 堅 牢 度 試 験 の 試 験 片 表 2 : 測 色 条 件
視野 10°
標準光源 D65
背景 白
波長 360~750nm 測定面積 直径10mm
図3:洗濯堅ろう度試験の試験片
試 験 片 第二添付白布
10cm
「―‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑
i
l l 第一添付白布 4cm
:
I ‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑
△E = JcL
五 ー
L企 + (a五 ー
a企 + (b• 2-b•1)2― 21 ―
共立女子大学・共立女子短期大学 総合文化研究所紀要 第27号
3.結果及び考察 3.1 染色状態
条件Aで染色を行った各染色布の測色結果を図4及び図5に示す。明度を表すL*(図4)は、す すぎの条件にかかわらず、綿の値が最も小さく、次いで絹、毛の順であり、綿が最もよく染まるこ とがわかった。すすぎの条件については、染色直後にすすぐ条件1に比べ、乾燥後にすすぐ条件2、
すすぎなしの条件3のL*値が低かった。図5より、a*値は綿が最も高く、次いで絹、毛の順となっ ていることから、色相は、綿が最も赤っぽいことがわかる。綿の染色で、一部分のみに濃く染色さ れた場所が確認され、これは染色時に発生した糸くずの塊が付着していたことにより、その部分の
3 . 結 果 及 び 考 察 3 . 1 染 色 状 態
条 件 Aで 染 色 を 行 っ た 各 染 色 布 の 測 色 結 果 を 図 4 及 び 図 5に 示 す 。明 度 を 表 す L*( 図 4 )は 、す す ぎ の 条 件 に か か わ ら ず 、綿 の 値 が 最 も 小 さ く 、次 い で 絹 、 毛 の 順 で あ り 、綿 が 最 も よ く 染 ま る こ と が わ か っ た 。す す ぎ の 条 件 に つ い て は 、 染 色 直 後 に す す ぐ 条 件 1に 比 べ 、 乾 燥 後 に す す ぐ 条 件 2 、 す す ぎ な し の 条 件 3 の L*値 が 低 か っ た 。図 5 よ り 、a*値 は 綿 が 最 も 高 く 、次 い で 絹 、毛 の 順 と な っ て い る こ と か ら 、 色 相 は 、 綿 が 最 も 赤 っ ぽ い こ と が わ か る 。 綿 の 染 色 で 、 一 部 分 の み に 濃 く 染 色 さ れ た 場 所 が 確 認 さ れ 、 こ れ は 染 色 時 に 発 生 し た 糸 く ず の 塊
が 付 着 し て い た こ と に よ り 、 そ の 部 分 の み 低 浴 比 に な っ て い た こ と が 原 因 で は 図 4 : 条 件 A染 色 布 の L*値
図 5 : 条 件 A 染 色 布 の a*値 及 び b*値 図4:条件A染色布のL*値
3 . 結 果 及 び 考 察 3 . 1 染 色 状 態
条 件 Aで 染 色 を 行 っ た 各 染 色 布 の 測 色 結 果 を 図 4 及 び 図 5に 示 す 。明 度 を 表 す L*( 図 4 )は 、す す ぎ の 条 件 に か か わ ら ず 、綿 の 値 が 最 も 小 さ く 、次 い で 絹 、 毛 の 順 で あ り 、綿 が 最 も よ く 染 ま る こ と が わ か っ た 。す す ぎ の 条 件 に つ い て は 、 染 色 直 後 に す す ぐ 条 件 1に 比 べ 、 乾 燥 後 に す す ぐ 条 件 2 、 す す ぎ な し の 条 件 3 の L*値 が 低 か っ た 。図 5 よ り 、a*値 は 綿 が 最 も 高 く 、次 い で 絹 、毛 の 順 と な っ て い る こ と か ら 、 色 相 は 、 綿 が 最 も 赤 っ ぽ い こ と が わ か る 。 綿 の 染 色 で 、 一 部 分 の み に 濃 く 染 色 さ れ た 場 所 が 確 認 さ れ 、 こ れ は 染 色 時 に 発 生 し た 糸 く ず の 塊
が 付 着 し て い た こ と に よ り 、 そ の 部 分 の み 低 浴 比 に な っ て い た こ と が 原 因 で は 図 4 : 条 件 A 染 色 布 の L*値
図 5 : 条 件図5:条件A染色布のa*値及びb*値A 染 色 布 の a*値 及 び b*値 100
8 〇:綿
90 ~
口
△:口:毛絹口 口
80
* → △ △
,
70
゜ ゜ .
60 濃色
.
so
白布 条件1 条件2 条 件3 醗 諌 に す す ぎ 砲 緑 に す す ぎ すすぎなし
黄
16│ ↑ 〇:綿
△:絹 日 白 布
12 I 条件3
口:毛 条件n1条件
ロ
2.
* ..c 8 I 条件3▲
条件1 41 ー布 条件2[ 条件3
白布 条件1 ●条件3 条件2 (濃色)
緑←‑5 ° ↓
➔赤
5 10 15 20
↓ a*
‑4 I青
み低浴比になっていたことが原因ではないかと考えられる。
このことから、最も濃く染まることが確認できた綿について、低浴比での染色を試みた。その結 果(図6)、浴比1:10で染色条件Aと同じ20分間の浸漬を行ったBのL*値は、染色条件Aよりわず かに高く、あまり高い染色性を示さなかった。また、a*値(図7)についても、染色条件Aより小 さくなっていることから赤みが薄いことがわかる。浴比を低くしたにもかかわらず、染色性が上が らなかったのは、染色中に攪拌しなかったことが考えられる。浸漬のみで染色性を高めるため、さ らに低い浴比1:4で維持して3時間の染色を試みた(染色条件C)。その結果、染色条件A、Bに 比べ、L*値(図6)は10~ 20程度低下し、a*、b*値(図7)ともに染色条件A、Bより大きくなり 赤み及び黄みが増したことから、褐色に濃く染まったといえる。低浴比で長時間染めることで、攪
な い か と 考 え ら れ る 。
こ の こ と か ら 、 最 も 濃 く 染 ま る こ と が 確 認 で き た 綿 に つ い て 、 低 浴 比 で の 染 色 を 試 み た 。そ の 結 果( 図 6 )、浴 比 1:10 で 染 色 条 件 Aと 同 じ 20分 間 の 浸 漬 を 行 っ た B の L*値 は 、 染 色 条 件 A よ り わ ず か に 高 く 、 あ ま り 高 い 染 色 性 を 示 さ な か っ た 。ま た 、a*値( 図 7 ) に つ い て も 、染 色 条 件 A よ り 小 さ く な っ て い る こ と か ら 赤 み が 薄 い こ と が わ か る 。 浴 比 を 低 く し た に も か か わ ら ず 、 染 色 性 が 上 が ら な か っ た の は 、 染 色 中 に 攪 拌 し な か っ た こ と が 考 え ら れ る 。 浸 漬 の み で 染 色 性 を 高 め る た め 、 さ ら に 低 い 浴 比 1:4 で 維 持 し て 3 時 間 の 染 色 を 試 み た ( 染 色 条 件 C)。 そ の 結 果 、 染 色 条 件 A、B に 比 べ 、L*値 ( 図 6 ) は 10~20 程 度 低 下 し 、a*、b*値 ( 図 7 ) と も に 染 色 条 件 A、Bよ り 大 き く な り 赤 み 及 び 黄 み が 増 し た こ と か ら 、 褐 色 に 濃 く 染 ま っ た と い え る 。 低 浴 比 で 長 時 間 染 め る こ と で 、 攪 拌 と い う 機 械 力 を 加 え な く て も 染 色 が 可 能 で あ る こ と が 明 ら か に な
図 7:条 件 A~D の 綿 染 色 布 の a*値 及 び b*値 図 6 : 条 件図6:条件A 〜 Dの綿染色布のL*値A~Dの 綿 染 色 布 の L*値 な い か と 考 え ら れ る 。
こ の こ と か ら 、 最 も 濃 く 染 ま る こ と が 確 認 で き た 綿 に つ い て 、 低 浴 比 で の 染 色 を 試 み た 。そ の 結 果( 図 6 )、浴 比 1:10で 染 色 条 件 Aと 同 じ 20分 間 の 浸 漬 を 行 っ た B の L*値 は 、 染 色 条 件 A よ り わ ず か に 高 く 、 あ ま り 高 い 染 色 性 を 示 さ な か っ た 。ま た 、a*値( 図 7 ) に つ い て も 、染 色 条 件 Aよ り 小 さ く な っ て い る こ と か ら 赤 み が 薄 い こ と が わ か る 。 浴 比 を 低 く し た に も か か わ ら ず 、 染 色 性 が 上 が ら な か っ た の は 、 染 色 中 に 攪 拌 し な か っ た こ と が 考 え ら れ る 。 浸 漬 の み で 染 色 性 を 高 め る た め 、 さ ら に 低 い 浴 比 1:4 で 維 持 し て 3 時 間 の 染 色 を 試 み た ( 染 色 条 件 C)。 そ の 結 果 、 染 色 条 件 A、B に 比 べ 、L*値 ( 図 6 ) は 10~20 程 度 低 下 し 、a*、b*値 ( 図 7 ) と も に 染 色 条 件 A、Bよ り 大 き く な り 赤 み 及 び 黄 み が 増 し た こ と か ら 、 褐 色 に 濃 く 染 ま っ た と い え る 。 低 浴 比 で 長 時 間 染 め る こ と で 、 攪 拌 と い う 機 械 力 を 加 え な く て も 染 色 が 可 能 で あ る こ と が 明 ら か に な
図 7:条 件 A~Dの 綿 染 色 布 の a*値 及 び b*値 図 6 : 条 件 A~Dの 綿 染 色 布 の L*値
図7:条件A 〜 Dの綿染色布のa*値及びb*値 100
゜
90 80
* → 70 i
. ゜
60 l‑ 濃色
. .
密閉あり密閉なし50
.
白布 A B C D
16 I黄
↑
12
.
ー密閉なし〇C* 8 BO
.0
● A条 件3 4 白布 D密閉あり 0 •A-条件3
(濃色)
緑← ° ↓ ➔赤
‑5 5 10 15 20
↓ a*
‑4 I言
― 23 ―
共立女子大学・共立女子短期大学 総合文化研究所紀要 第27号
拌という機械力を加えなくても染色が可能であることが明らかになったため、染色開始時の浴比を 1:57とし、96時間浸漬して染色を行った。この時、色素の抽出溶媒であるメタノールが揮発する ことによって浴比が徐々に低下して染着が促進される影響を見るため、ビーカーをフィルムで密閉 した場合と密閉しない場合の染色を試みた。その結果、密閉ありとなしでL*値(図6)には違いが 見られ、密閉なしでは、これまでの条件の中で最も低い値となった。密閉なしのa*、b*値(図7)は、
染色条件Cと同程度の値となり、褐色に濃く染まったことがわかった。染色終了時に、密閉なしの ビーカー内には抽出液がほとんど残っていなかったが、密閉ありのビーカー内にはオレンジ色の液 が残っており、色素の黄色成分の染着速度が遅いことが推測される。抽出液に含まれる色素には黄 色、赤色、紫色などがあるが、それぞれの色素の染着速度についてはさらに検討する必要があると 考えられる。
3.2 染色布の洗濯堅ろう度
染色条件Dの密閉なしと同様の方法で染色を行った染色布を用い、洗濯堅ろう牢度試験を行った。
抽出液は水不溶性であるが、染色布を石けん水溶液で洗浄したところ、洗浄液は弁柄色になり、一 旦綿布に付着した色素が洗浄液に溶出したと考えられる。
洗浄後の染色布を変退色用グレースケールで評価した結果は2級で、第一添付白布(綿)及び第 二添付白布(絹)を汚染用グレースケールで評価した結果は3級及び4- 5級であった。グレースケー ルの評価は、5級が最も堅ろう度が高く、1級が最も低いことを意味しており、染色布の2級とい う結果から堅ろう度がかなり低いことがわかった。添付白布の汚染は、第一添付白布の綿には目視 で確認できるほどの汚染があったが、第二添付白布の絹には目視で確認できるほどの汚染は見られ なかった。測色値(表3)より、染色布と第一添付白布(綿)のΔEの数値が大きく、第二添付白 布(絹)のΔEは小さいことがわかった。このことから、綿布から脱落した色素は、絹より綿に付 着しやすいことがわかる。つまり、イカ表皮からの抽出色素は、タンパク質繊維よりセルロース繊 維に染着しやすいことが推察される。
色素が水ではなく塩酸/メタノールに溶けた状態での染色であるため、綿布への色素の染着メカ ニズムについては今後解明する必要がある。
表3:洗濯堅ろう度試験による変退色
L* a* b* ΔE
染色布 試験前 45.46 17.43 13.45 12.2
試験後 56.67 14.39 9.70
第一添付白布(綿) 試験前試験後 96.1287.37 -0.187.58 2.130.96 11.7
第二添付白布(絹) 試験前 94.89 -0.29 3.76 4.9
試験後 90.81 2.29 4.73
3.3 染色布の引張強度
抽出液が強酸であるため、布への影響が大きいことは推測できるが、実際の損傷の程度を調べる ため、染色前後の綿布の引張試験を行った。その結果、染色後の強度(図8)は染色前に比べ、縦 方向で66.7%、横方向で68.3%の低下が認められた。伸度(図9)は、横方向で23.3%の低下がみ られたが、縦方向はほとんど変わらなかった。
強度は推測通りの低下が確認され、布はかなり損傷することが明らかとなった。これにはpHが 大きく影響していると考えられるため、染色前に抽出液のpH調整を行うことで、布の損傷を抑え ることが可能であると考えられる。pH調整によって染色性が変化することも推測され、さらなる 検討が必要である。
3 . 3 染 色 布 の 引 張 強 度
抽 出 液 が 強 酸 で あ る た め 、 布 へ の 影 響 が 大 き い こ と は 推 測 で き る が 、 実 際 の 損 傷 の 程 度 を 調 べ る た め 、 染 色 前 後 の 綿 布 の 引 張 試 験 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 染 色 後 の 強 度( 図 8 )は 染 色 前 に 比 べ 、縦 方 向 で 66.7% 、横 方 向 で 68.3% の 低 下 が 認 め ら れ た 。伸 度( 図 9 ) は 、 横 方 向 で 23.3% の 低 下 が み ら れ た が 、 縦 方 向 は ほ と ん ど 変 わ ら な か っ た 。
強 度 は 推 測 通 り の 低 下 が 確 認 さ れ 、 布 は か な り 損 傷 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ に は pH が 大 き く 影 響 し て い る と 考 え ら れ る た め 、 染 色 前 に 抽 出 液 の pH 調 整 を 行 う こ と で 、 布 の 損 傷 を 抑 え る こ と が 可 能 で あ る と 考 え ら れ る 。 pH 調 整 に よ っ て 染 色 性 が 変 化 す る こ と も 推 測 さ れ 、 さ ら な る 検 討 が 必 要 で あ る 。
4 . 結 論
0 5 10 15 20 25 30
たてよこ
染⾊前 染⾊後
強 度 (kgf)
図 8 : 染 色 前 後 の 強 度 変 化
0 5 10 15 20 25 30 35 40
たてよこ
染⾊前 染⾊後
伸 度 (㎜)
図 9 : 染 色 前 後 の 伸 度 変 化 図8:染色前後の強度変化 3 . 3 染 色 布 の 引 張 強 度
抽 出 液 が 強 酸 で あ る た め 、 布 へ の 影 響 が 大 き い こ と は 推 測 で き る が 、 実 際 の 損 傷 の 程 度 を 調 べ る た め 、 染 色 前 後 の 綿 布 の 引 張 試 験 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 染 色 後 の 強 度( 図 8 )は 染 色 前 に 比 べ 、縦 方 向 で 66.7% 、横 方 向 で 68.3% の 低 下 が 認 め ら れ た 。伸 度( 図 9 ) は 、 横 方 向 で 23.3% の 低 下 が み ら れ た が 、 縦 方 向 は ほ と ん ど 変 わ ら な か っ た 。
強 度 は 推 測 通 り の 低 下 が 確 認 さ れ 、 布 は か な り 損 傷 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ に は pH が 大 き く 影 響 し て い る と 考 え ら れ る た め 、 染 色 前 に 抽 出 液 の pH 調 整 を 行 う こ と で 、 布 の 損 傷 を 抑 え る こ と が 可 能 で あ る と 考 え ら れ る 。 pH 調 整 に よ っ て 染 色 性 が 変 化 す る こ と も 推 測 さ れ 、 さ ら な る 検 討 が 必 要 で あ る 。
4 . 結 論
0 5 10 15 20 25 30
たてよこ
染⾊前 染⾊後
強 度 (kgf)
図 8 : 染 色 前 後 の 強 度 変 化
0 5 10 15 20 25 30 35 40
たてよこ
染⾊前 染⾊後
伸 度 (㎜)
図 9 : 染 色 前 後 の 伸 度 変 化 図9:染色前後の伸度変化
4.結論
イカ表皮色素の布への染色可能性を明らかにすることを目的とし、4種の方法によって染色方法 を検討したのち、洗濯堅ろう度試験及び引張試験を行った。その結果、毛、絹、綿の3種の繊維で
0ロ
習
••••
. . .
•••• .
••••
. . . .
. . ••
••••• ••
. . . .
••••
. . .
•• .
. . ••
. . .
••
. . .
••••
••
••
. .
•• ••
e }
車 上
出....... g
・・・・・・ . ... .... ... ..
•••••田
c‑・…………・…・・・・・・・・・・・・・0
― 25 ―
共立女子大学・共立女子短期大学 総合文化研究所紀要 第27号
は綿が最も濃く染まることが明らかとなった。また、低浴比で長時間染色することで、より濃く染 めることが可能であることがわかった。濃く染めることができた綿布の洗濯堅ろう度試験では、染 色布の変退色が大きく、堅ろう度が低いこと、また添付白布として綿を用いた場合に汚染しやすい ことが明らかとなった。さらに、引張試験では強度の低下が著しく、推測通り、強酸の抽出液で染 色することによって綿布を著しく損傷させることが確認された。イカ表皮色素を用いた布への染色 の実用化には、抽出液のpH調整を可能にすることが重要であり、さらに検討をする必要があると 考えられる。
参考・引用文献
1) 安川あけみ, 前田圭香;紫タマネギ外皮による絹布の染色 ―茶色タマネギとの比較から―, 日本家政学会誌, Vol.68, No. 5, P.206-214(2017)
2) 葛西美樹, 安川あけみ, 神島和彦;青森県産黒ブドウ「スチューベン」果皮を用いた染色, 繊消誌, Vol.58, P.503-511
(2017)
3) 天木 桂子;岩手県宮古産うに殻抽出液を用いた各種繊維に対する染色性および洗濯堅牢性, 一般社団法人日本家 政学会研究発表要旨集, Vol.68 (2016)
4) 都甲由紀子, 松尾和樹, 佐藤恵利菜, 小池加菜子, 澤水夏姫, 西口宏泰;クローブで染色した羊毛布と絹布の消費性能, 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集, Vol.69(2017)
5) 安川あけみ, 千田愛弓, 前田圭香, 小林真帆, 葛西美樹;赤キャベツのアントシアニン系色素による絹布の染色 -媒 染条件と保存条件による比較-, 弘前大学教育学部紀要, Vol.113, P.75-82(2015)
6) 伊藤裕才;イカやタコなど頭足類の表皮中に含まれる赤色素の着色料としての実用化へ向けた研究, 科研費(2014
∼2016)
7) T. S. Gore, B. S. Joshi, S. V. Sunthankar, and B. D. Tilak, Recent Progress in the Chemistry of Natural and Synthetic Colouring Matters and Related Fields. Editors. New York, Academic Press, p13-33(1962)