染色物の色が繊維のぜい化に及ぼす影響
著者 松山 しのぶ, 卜部 澄子
雑誌名 東京家政大学研究紀要 2 自然科学
巻 33
ページ 127‑137
発行年 1993
出版者 東京家政大学
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010528/
染色物の色が繊維のぜい化に及ぼす影響 松山しのぶ,卜部澄子
(平成4年10月8日受理)
Effects of the Colors of Dyed Fabrics on the Degradation of Fiber Shinobu MATsuYAMA, Sumiko URABE
(Received October 8,1992)
1.緒 言
一般には暗い色の布は熱を吸収するのでその布の破壊 強度も大きいと言われ,暗幕やカーテンの劣化を日常で も経験することがある.近年,さまざまな色が好まれる ようになって,衣料品を始めインテリア用品でもカラフ ルなものが選ばれるようになっている.これらの染色物 はその色相によって染色された素材の損傷に差があると いう報告がみられこの点に着目して実験を試みている.
文献によれば,1973年Mckinneyら1)は,100%コッ トンのあや織り布を各色のvat染料で染め,連続60日 間大気にさらした結果,色の変化の程度は布の織り方に 関係なく,黄色が一番大きく,青が一一番小さい.破壊強 度試験では,一番弱いのが黄色一番強いのが青色であっ たと報告している.また,1946年成田2)は,亜麻ででき た飛行機の翼の布を各色の塗料でぬって,ガラスを通し て2年半日光暴露した結果,黄色も青色も弱い傾向が見
られたと報告し,さらに1983年M.Christineら1)は,反 応染料染布の光劣化を調べ,耐光性が減少すると繊維の 劣化が増大したと述べている.
そこで我々は,綿布を5種の部属染料でそれぞれ5色 ずっ染色して,13年間恒温恒湿室内に光を遮断して保存 した試料と,染色直後の染布をカーボンアーク灯光照射 で劣化促進試験した試料を染料部属別,色別に強力伸展
と色変化の状態を検討した.
2.実 験 方 法
(1990年染色)規格の染色堅ろう度試験用添付白布,綿,
かなきん3号(表1)を用いた.
表1 試布の組成
規 格 原糸 組織 番 手
たて糸 よこ糸 たて糸 よこ糸 密度 本ノ5a 質量1/i
1965年
綿糸 平繊 1986年
20te〕【 16tex 141±2 135土2 −
{308猛手} 【36纏番手} 141 135 100
1.試料
JIS−L−08031965年(1977年染色)および1986年 服飾美術学科 繊維加工研究室
2.使用染料
使用染料を表2に示した。試布は,1977年および1990 年に染色した。
3.染色方法
染色方法は,メーカー表示の標準染色方法4)5)で行い,
ナ
濃度は,JIS−L 一 0803−1971標準染色濃度(1/1)
によって染めた.
染色後染着状態を調べるために,染色堅ろう度試験を 行い結果を表3に示した,何れの染布もメーカー表示の の堅ろう度と比べて,ほとんど差がなかった.
4.実験方法
4−1 試布の玉3年間保存試験
1977年に染色した布を1990年まで13年間20±1℃,65
±1%R.H.の恒温恒湿室に光を遮断して保存した.
4−2 劣化促進試験
1990年に染色し,染色直後に染布をカーポンアーク灯 光照射試験を行った.
。照射試験機:JIS−L− 0824 一 1988染色堅ろう度試 験用
カーポンアーク灯形耐光試験機
松山 しのぶ・ト部 澄子
表2 使用染料
染 料 色 染 料 名
硫化赤C.1.Sulphur Brown 12
青C.1.Sulphur Blue 7 緑C.1.Sulphur Green 14 黄C.1.Sulphur Yellov 4
−llClslhrBlack1
ナフトール 赤 青 緑 黄 黒
C,1,Azoic C。1,Azoic C。1.A20ic C.1.A20ic C.1.Azoic
Coupling Coupling Coup聖ing Coupling Coupling
Component Component Component Component Component 7 4 36 5 13
染 料 色 染 料 名
接 ・ 青 緑 黄 黒
C.1.Dlrect C.1.Direct C.1.Direct C.1.Direct C.1.Direct
Red 79 Blue 200 Green 33 Ye夏lo騨 44 Black 38
反
N青
緑黄 黒
C.1,Reactlve C,1,Reactive C.1.Reactive C.1.Reactive C.1,Reactive
Red 2 Blue 4 Green 6 Yellow 7 Black 9
青緑黄
黒
C。1.Vat Blue 4 C.1.Vat Green 2 C.1.Vat Yello胃 2
匿ikethren Direct Black BS pdr.
表3 試験布の染色堅ろう度試験結果
耐
光
堅ろう度汗堅ろう度
性 アルカリ性
汚染 変色 汚染
摩擦堅ろう度 洗濯堅ろう度
酸 絹綿絹
綿 汚染 乾燥 乾燥 湿潤 湿酒 変色
メーカー 」一カー ノーカー
汚染絹
綿 変色 変色
メーカー
染 料 色
1 2 2ヨ22砲 2 り幽 3 3司4ヨ弓 に﹂ 686
C553
1
而↓而づ5
﹂触 ﹂陽 4
4
34司 司 00 00 33 ヨ
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﹂隅 ﹂陽 ﹂﹃
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2
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﹂﹃ 遭噸 ﹂冊弓 ヨ06 り6 2 5凹56詞而55而づ﹂触 ﹂﹃ 4﹃刈うづ而49り ﹂鰯 ﹂¶ ﹂稽︻﹂ ︻﹂ 5 ︻﹂ 覧d
一3 −5 2−3
3
3−4 4−5 4−5 2−3 3−4 4−5 2 3−4
1−23−4 1−2 52
4−54−5
54−5
3−4 5 4−54−5
4 4
3−−4 4 4−5
4 3
54−54−5
5 5 5 5 5 5 5 5 5
54−5 5
1−2 2 3−4
1 1
5 5 5 3 3 4
4
﹂﹃ く﹂3 3 3 q 一 3 ﹂隈赤青緑黄黒
直
接
にσ くり 貫U に﹂ 藍﹂
︻﹂ ︻﹂ ︻0 ︻0 ︻U雨↓づ54
﹂鰭 ﹂陽 ﹂﹃
︻0 ︻﹂ 環り 駕り 貫﹂
赤青緑黄黒
反
応
7 00 7 ﹂陽 00
にσ ︻U ︻U くり ︻﹂
5 に﹂ に﹂ に﹂ ︻﹂
qU 5 ﹁∪ くり くU
5 魔﹂ 5 5 ζU
口﹂ ︻0 員U 魔U 魔﹂5555而 4
33弓団日 り6 0り 90
4 ︻﹂ ﹂﹃ ︻U 魔U
︻﹂ 5 にり ︻﹂ ︻U
︻﹂ にり ︻﹂ ﹁U 質U
う︻﹂ ︻﹂ ﹁U に﹂ 4
﹂り に︾ に﹂ 二U ﹂働5555づ 4赤青緑黄照 V at
5 5
4−5 5 5 5 5
4−5 5 5 5 5
4 5 5−6
3 7
一 555 4
に﹂ ζU にU 罠り にσ
にσ ︻﹂ ︻﹂ ︻﹂ にり
4ゐ 4
ヨ弓
0乙 06
﹂触 つ0 魔﹂ に﹂ 幌︾弓322
00 ?り 00 2 り0 1 1 り055う55 455而55 45 くU に﹂ 魔り ロリ55而55 4551555 4雨55554
3司団4ゐ り0 り0 4
2−34−5 4 3−44−5 4 4−5 4 4
4 44−5
4−53−4 4
・3−4 43 5
4 5
に﹂ ︻U ﹃り く﹂ ︻﹂而5555
雨5555 〇6 ﹂陽 ﹂陽 ﹂﹃ 卿 4 一 一 一 3 藍﹂ ︻り 鑑り 4
赤冑緑黄無 4
硫
化
55づ55 4
唱 函 ︻﹂ 二U =り﹂﹃ 4
而 4
︻﹂ ︻﹂ ︻σ ︻﹂ ︻﹂
赤青緑黄黒
ナフトール
(128)
スタンダードフェドメータ FA−2D 型(スガ試験機KK製)
。照射時間:20,120,200,500時間
。照射エネルギー測定器:太陽電池式照度計SA−U−
37(スガ試験機KK製)
。照射エネルギー:2.05MJ/㎡/h
。照射方法:布を白い厚紙に取り付け図1のように調 整した
一}
@試
@布 鼈
一一
@試
@布
鼈
一}
@試
@布
黶@ 岬
←
針金を通す
←厚紙(白色)
図1 試験布の照射方法
糸で縫い付ける
5.測定項目
13年間保存した試布(4−1)および劣化促進試験の 試布(4−2)にっいて損傷の状態および色変化を調べ
るために次の測定を行った.
5−1 強力・伸度測定
布のたて糸,よこ糸を張力をかけないように抜き,そ れぞれ10本を測定,平均値を測定値とした.
・試験機:中型引張試験機TUM−In−100 (KKオリエンテック製)
。測定条件:表4に示した.
表4 引張り強伸度試験測定条件
促進試験 促進試験 1977年染色分
20,120.200時間 500時間 たて糸 よこ糸 100皿m 50mm 100ロロ 50ロ回 200皿皿/min 1000ロロ/口in 200口皿/min 100ロ田/ロin 50皿皿/皿in 100ロロ/min
5009 5009 500g
(スガ試験機KK製)
。測定項目:XYZ, Yxy, Va b 4 E, H・
V/C
5−3 分光反射率曲線の測定
・試験機:323型日立自記分光光度計 (日立製作所KK製)
試験長
チセートスピード へ,ドスピード フルスケール
5−2 測色
・試験機:カラーコンピューターSM4型
3.試 験 結 果 6−1 引張り試験結果
(1)13年間保存の場合
1977年に染めた試料の対照を100として,強力・伸度 比で図2に結果を示した.たて糸より,よこ糸の強伸度 変化が大きいことが結果に見られた.強力比で各試料が 対照より低下した値が見られるのは,伸度比の60%低下 の影響で,繊維が硬くなり伸びる弾力性を欠き劣化した 結果であると考えた.色相別に観察すると強力比は,緑 色染布が各部属とも低下が少なく,赤色が劣っていた.
伸度比では多くの試料が大きく低下した中で,ナフトー ル染料が各色とも殆ど対照と変わらなかった.ナフトー ル染料の染色方法は,下漬剤による染色は強いアルカリ 浴であるが室温で短時間染色し,顕色剤も繊維への影響 は少ない.このような染色操作が繊維に及ぼす影響を少
くしたものと考えた.
② カーボンアーク灯光照射による試布の場合 1990年に染めた試料の対照を100として,強力・伸度 比で変化の状態を示した.図3は対照(未染色布)と赤 色染布の場合である.試験布の強力は照射時間の増加と ともに変化し,500時間照射で比較値が50〜60まで低下 した.照射120時間まで急激に比較値60まで低下し,200 時間で比較値80にもどり,照射500時間までそのまま一 定であった.この伸度変化の形は全ての試料が同じ傾向 であった.赤色試料の伸度の測定結果は未染色の場合と 大差はなかった.この場合もナフトール染料試料の強力・
伸度変化が少なかった.図4の青色試料のうち反応,硫 化染料の試料は500時間照射で強力が著しく低下し,反 面Vat,ナフトール染料の試料は変化が少なかった.伸 度はよこ糸の測定値のバラッキが目立った.図4の緑色 試料はVat,反応染料による試料のよこ糸が500時間照 射で強力低下が大きく,伸度は照射時間が増しても対照
と変わらなかった.
図5は黄色,黒色試料の場合で,黄色のVat,硫化試 料の強力低下は最も大きく500時間照射試料の比較値は
葭︸ C㊦蛎・7袈醸申
1 − l lI − 1ー ー ー I l 曝 9 1布 ー 1 ー
ーllllll−51ー﹂ーーllI
ー 1 − l l EDCBA
曜ーllーーO ー 醒 鵬 ー 1 ー 曜 − 璽 ロ ー
1 ー ー I l I1 ーー ーー111111 − 1− 1聾18布 I l I 1 1董−ー1−lII −1染 1 − 1 − I l EDCBA
l I − 1
ー I I I ーー − ー 1 ー
ー 置蟹ーー ーlIー8−Il−lIiー量ll−18布 − 1 − l l l l1 1 1 − 1 1 1 躍 ー
l l ーー量I I EDCBA
量 ー ー ー l l
層ー 1 − 1 − 6雇 ー − 1 ー
l l ー ー ー I l ll l l l l I l − I I − l I
1 − 8 1 1 EDCBA
ー l I − l I− l 1 1 1
ー ー 8 ー ー ーー ー ー 置 1
I l l l I − 1E −1ーー1−11−11
薯麺1ー ー 1D llIIー EDCBA
屡− 躍1ー
璽 I I匿181 1 接応就化外 直反V硫ナ ーlIーーA ABCDE
未染色布 ーーーー11 臨 − 耀 l l 1 1 ー
釦
鶴40 20 00 80 60 60 40 20 00 80 60 40 201 11 1 1 1 1基 −←
蟹 R 纈ヨ 遡 冊︸
図N 一ω笹謡霜勲跳爆針㊦罵ご・書淘瀕へぽ
︵一ωO︶
140
120
ヨ
as 100
量
80 60 40
未 染 色 布
0
20 120200
\\\
伸 度
たて糸 一一 謔ア糸
140
120
遡100
旦
80 60 40
照 射 時間
\\\\︑\こ
レ難.
50020 120200
赤 色 染 布
020 120200
500
,O /\
・/ ̲ _// O 一く
/ 、一_
、一▲
蕊、 〉幽一一
\ ●
☆\
ミ警垂
\,A/$ 一・・
O直接染料
●反応〃
☆Vat〃
△硫化〃
▲ ナフトール 〃
50020 120200 500
照射 時 間
図3 カーボンアーク灯光照射による強力・伸度の変化(未染色布・赤色染布)
冊ヤ
●
過
●
松山 しのぶ・卜部 澄子
青 色 染 布 140
0−一一一〇 伸度
▲ \ /o
\\\\▲ V −一よこ糸
6°
\● △硫化
▲ナフトール 〃40 △
07 20 120200 500 20 120200 500
射時間 奔〜〜〜〜__
、▲
1 \ 1
緑色染布 \ ノ
120 \ノ
60 \\
\\●
\ 40
09」一一一⊥一一一一一一一一一一一一一
20 120200 500 20 120200 500 照 射 時 間
図4 カーポンアーク灯光照射による強力・伸度の変化(青色染布・緑色染布)
(132)
140
120
u100
R 80
60
40
●
黄 色 染 布
蔓N\
NX ミこ\
0 20 120200
8
︑︑ ▲▲Oこ\
!「J☆ill
︑oへ /
ジ『
一一よこ糸
〃
難〃〃〃帥 ト離縦力
O●☆△▲
140
120︶il
e 100
80
60
40
照 射 時 間
50020 120200
黒 色 染 布
☆☆▲
\ 爆☆2▲會θ\ミ雲
⑳︷29婁O▲
020
500
120200 50020 120200 500
照 射 時 間
図5 カーポンアーク灯光照射による強力・伸度の変化(黄色染布・黒色染布)
松山 しのぶ・ト部 澄子
16
14 12 10 田
「 8
6 4 2
未ABCDE ABCDE
染
色 赤色染布 青色染布 布
ABCDE ABCDE ABCDE
緑色染布 黄色染布 黒色染布
図6 13年間保存による試験布の色変化(AE)
30以下であった.しかし反応,ナフトール染料試料の変 化は比較的少なかった.伸度は直接染料試料の異常値が 見られ黄色試料は全て伸度が落ちた.黒色試料は,各試 料間のバラツキが少なく,強力は硫化直接,反応染料 の試料が低下した.伸度は直接染料試料がやや低下した が,他試料の測定値は揃っていて,バラッキが少なかっ
た.
6−2 色変化の測定結果
図6に見られる13年間恒温恒湿室に保存した試験布の 色変化は,未染色布は黄色化し,赤色が最も色変化が少 く(色差値平均3.5),次に青色(4。6)→黒色(4。7)
→黄色(9.4)→緑色(10.1)であった.特に青,黒 緑色試料の直接,Vat,硫化染料染布,黄色試料の反応 Vat,硫化,ナフトール,黒色の硫化染料染布のAEが 高かった.測色値から判断すると黄色染布はくすんで赤 味又は青味をおU ,緑色染布は青味が消えて彩度がおち,
青色染布は赤味を増し純度が増加した.さらに黒色染布 は青味が消えて赤褐色をおびて,くすみを持ったことが
判った.この結果から染色物は,光照射による変退色の 影響以外に長年月の間には,自然に色相が変化してゆく
ことが判った.
図7にカーポンアーク灯光照射による試料の色変化を AE値で示した.これは,各試料の耐光堅ろう度と考え られ,各染料部属の同じ色の試料の耐光堅ろう度は(表 3参照)黄色(4.5)→赤色(4.7)→緑色(4.7)→黒 色(5.3)→青色(5.8)であり,図7の色差値の平均は 黄色(46.2)→赤色(30.9)→黒色(19.9)→緑色(19.
5)→青色(15.6)で,明らかに負の相関がある.各染 料部属の中で黄色試料の染色堅ろう度が不良で,従って 色差値は高く,青色試料は全ての試料の中で色変化が少 なかった.
6−3 強力比と色差の関連
6−1,2で述べた結果を整理し,500時間光照射し た試料を,染料部属別に強力比と色差の関連を調べ,表 5に示した.各試料間の強力比にっいて有意差を調べ,
強力比が対照に比べて1/2以下に低下した染料部属試料
(134)
謄曲§θ面営購謙θ喋つへ巳臼簿賜叫融蠣
☆
△
▲
反応〃
Vat 〃 硫化〃
ナフトール 〃
一一 「染色布
o
/
o ☆ノ▲
黒色染布 O
▲
●
2 ● △☆︒/ノ O▲
金
50020 120200 5∞
☆…鯵鎚
50020
60
50
40
30山﹁ ./∠20
10
一. _一つつ☆
1ノ 1
o☆︑
50020 120200
O口臨20
間時
射
照
図↓ごー洗Y判1☆ζま猛灘πトか郵甥卦﹁θ陣糊へぽ︵﹂国︶
︵一ω⑪︶
松山 しのぶ・ト部 澄子
表5 染料部属別に見た強力比とAE
色 比較値が対照(100) 比較値が対照(100)
に比べ50以下の部属 に比べ80以上の部属 大
∠1E
→ ︑
﹂ノ
赤 硫化、反応 黄 Vat、硫化、直接 緑 反応、Vat 青 反応、硫化、直接 黒 硫化、反応、直接
直接、ナフトール 反応、ナフトール ナフトール、硫化 Vat、ナフトール Vat、ナフトール
ナフトール〉直接・反応〉硫化>Vat 直接〉ナフトール・Vat>反応〉硫化 直接・ナフトール〉反応〉硫化>Vat 硫化〉反応。直接・ナフトール>Vat 直接〉反応〉硫化・ナフトール>Vat
表6 500時間照射後の使用部属染料染布の色別強力比
色 強力比
赤黄緑青黒
50〜75 22〜82 42〜88 42〜98 40〜92
(62.5)
(52)
(65)
(70)
(66)
を劣化とみなし,強力比が対照に比べて80以上であった 染料部属試料は,劣化は少ないものとして分類した.表 中で色差を 大 としたのは,色の変化が大きかった試 料, 小 は色変化が少ないという意味で表示した.結 果から退色と繊維素材の損傷は, (例えば変退色は少な く繊維の劣化が激しいのは,硫化染料の黄色試料,変退 色が少なく繊維の劣化が少ないVat染料の青色試料,
変退色し繊維も劣化したのは,直接染料の黒色試料,変 退色しても繊維が劣化しないのはナフトール染料の赤色
試料であった)例外はあるが,耐光性が乏しく変退色し た試料は繊維の劣化も大きく,明らかに耐光堅ろう度と 繊維の劣化には正の相関が見られた.
さらに,表6に500時間光照射後の試料を各染料部属 から同じ色を抽出し,5種の染料部属の違う同じ色の試 料の強力比を単純計算で平均値(表中のカッコ内の数値)
で示した.数値が小さいものは強力が低下したもので,
黄色→赤→緑,黒→青色試料の順序で,青色試料がもっ とも劣化は少なかったものと考えた.これは,図7にみ られる光照射による試料のAE値の変化と同様の結果が みられ,このように染色試料の耐光堅ろう度が高いと,
繊維の劣化は少ない傾向があるものと考えられた.文 献3)では,反応染料で染めた綿の光劣化の実験結果を報 告しているが,例外もあるが染料の耐光性が光劣化に著
しく影響し,耐光性が減少すると劣化が増大し,耐光性 の低い染料は分解生成物を形成し,順次これが綿の劣化 に触媒作用を及ぼすことを示している,と述べている.
4.ま と め
1.13年間恒温恒湿室に保存した試料は,ナフトール 染料で染めた試料の強伸度変化が少ないことが判った.
他の試料は強力が20%以下に減少し,伸度は殆どの試料 が対照の1/2に低下して繊維の硬化が推定できた.
2.カーボンァーク灯光照射の試料は,耐光堅ろう度 と強伸度低下に明らかに正の相関が見られた.但し,例
(136)
外も見られた.これは光に刺激されて染料が繊維素材の 劣化を促進する物質に変化するのか,光自身のパワーに よるものか本実験では確かめていない.しかし染色操作 の物理化学的刺激が繊維素材に与えられて損傷の引きが ねになることが考えられた.
3.試料の光照射による色変化(∠E値)は,当然の ことであるが染料(染布)の耐光堅ろう度と負の相関が
あった.
4.染色物は光照射の影響を遮断しても長期間の間に は,それぞれの染料によって独自の色変化をしてゆくこ とが判った.
5.本実験では各染料部属の黄色が色変化,繊維の劣 化ともに最も大きく,青色染布は色変化繊維の劣化が
少なかった.
6.4種(直接,反応,Vat,硫化)の染料部属の試 験布は,長時間の保存で明らかに繊維の硬化状態が判っ たが,ナフトール染料による染布は長年月の保存でも強 力。伸度の変化が殆ど見られなかった.
謝 辞
本研究を行うにあたり,染料の提供,ご助言をいただ
いた日本化薬株式会社の外越照仁氏に感謝致します.ま た,実験にご協力下さった羽生佳子,赤沼明美,佐々木 久美姉に御礼を申し上げます.
なお,本研究は日本家政学会1992年次大会において口 答発表した.
文 献
1)M.Mckinney, ER.Broome:Ame. Dyes. R
ep.81 (1973)
2)成田時治:絹及人造繊維の性能,至文堂,pp.121 〜131,(1946)
3)Christine M., Rebecca R., karen B:Texti le Chemist and Colorist, Vol.15, Nα11, pp.2 09〜212, (1983)
4)日本化薬株式会社染料事業部技術部:日本化薬染 料便覧(第3版), (1980)
5)日本化薬株式会社染料事業部技術部:日本化薬染 料便覧(第4版), (1982)
6)社団法人有機合成化学協会編:新版染料便覧,
(1970)