2020 年度 学士論文
小澤の測定誤差の実験的評価による
任意の射影測定での物理量の値についての研究
2021 年 2 月 8 日
指導教員 高橋徹 主査 飯沼昌隆 副査 岡本宏己
広島大学 理学部物理学科 4 年
B170950 小林士朗
目次
1 研究背景 3
2 量子測定理論 4
2.1
測定理論の基礎
. . . 42.1.1
密度行列
. . . 42.1.2
偏光物理量
. . . 52.1.3
量子トモグラフィー
. . . 62.1.4 POVM
測定
. . . 72.1.5
弱測定と弱値
. . . 82.2
小澤の不等式と測定誤差
. . . 82.3
測定から値を得る新しい提案
. . . 93 干渉計を使った実験 12 3.1
干渉計の光路を測定物理量とした実験提案
. . . 123.2
具体的な検証実験
. . . 154 実験 16 4.1
ビーム特性と評価
. . . 164.2
実験セットアップの構築
. . . 224.3
実験の現状
. . . 244.4
議論
. . . 254.4.1
光線行列解析の理論計算と実験データのずれ
. . . 254.4.2
明瞭度が向上しないことへの考察
. . . 265 まとめ 27 5.1
結論
. . . 275.2
今後の展望
. . . 276 参考文献 28
7 謝辞 29
1 研究背景
この研究の目的は物理量の固有値以外も含めた一般的な値を量子測定から得る方法を確立するこ とである。上記を達成するための最初のステップとして、本論文では光学系を用いた実証実験の提 案、及び実験に向けた準備状況について検討することを目的とする。
量子力学では物理量はエルミート演算子で定義され、ある量子系
Sでの物理量の測定とは固有状 態への射影であるとされてきた。なぜならば、固有状態への射影が固有値を得ることを意味するか らである。一方、最も一般的な量子測定である
POVM測定は、量子系
Sと補助系をもつれさせ、
補助系の物理量の値を測定することにより間接的に量子系
Sの統計的情報を得る測定で、固有状態 以外の状態への射影によっても実現できる。その際に量子系
Sの物理量の測定値は一般的に不明で ある。しかし、
2003年に小澤によって導入された測定誤差
[1]は
POVM測定での量子系
Sの物理 量の値の誤差
(小澤の測定誤差と呼称
)を真値と不明な測定値との差として論じている。また、測 定誤差は初期状態に依存しているため、長年議論の対象となっている。一方、
Hofmann[3]は、小 澤の測定誤差は物理的には新たに導入した補助系のデコヒーレンスとして現れることを示したが、
物理量の真値に最も近い最適な測定値が、測定のみから得られることを理論的に示した。
そこで本研究では、研究
[3]の検証のための光学系として干渉計を取り上げる。測定物理量とし
て干渉計の光路を対応させ、二つの光路に分離された光子を干渉後に測定を行う場合を考える。こ
のときに光子の偏光のデコヒーレンスが測定誤差を表すため、それを計算で確かめる。また、干渉
計での
POVM測定での二つの光路に対応する値を求め、その結果についても論じる。最後に実験
に向けた準備状況についても議論する。
2 量子測定理論
2.1 測定理論の基礎
本章の目的は本研究を理解するうえで必要な量子測定理論の基礎知識を俯瞰することである。
よって、詳細な計算はできる限り省略し、結論をまとめる形で紹介する。
2.1.1 密度行列
量子状態を記述するための最も一般的な方法である密度行列について説明する。
量子状態は基本的にヒルベルト空間内のベクトルで表現できるが、ベクトルで表現できる状態 は、系が純粋状態と呼ばれる最大の重ね合わせを持つ状態のみであり、重ね合わせの程度が低い状 態や完全に重ね合わせを失ってしまった状態は表現できない。このような状態を混合状態という。
混合状態の数学的な表現を与えるため、例として、初期状態が確率
piにしたがって純粋状態
|ψi⟩,(i= 1,2,· · ·)
が準備されるような系の状態を考える
[7]。このような系の状態は次の行列で表 現できることがわかる。
ˆ ρ=∑
i
pi|ψi⟩ ⟨ψi| (1) (1)
で定義される演算子を密度行列と呼び、系
Sの状態に関する全ての情報はこの演算子に含ま れている。この密度行列は
Tr{ρ}ˆ = 1を満たすエルミート行列であることがわかる。具体的な例 として、
H偏光を持つ光子と
V偏光を持つ光子がちょうど等しい割合で混同している系の密度行 列は
|ψ1⟩=|H⟩= (1,0),|ψ2⟩ =|V⟩ = (0,1),p1 = 1/2,p2= 1/2として次の行列によって表現で きる。
ˆ ρ= 1
2|H⟩⟨H|+ 1
2|V⟩⟨V|=
(1/2 0 0 1/2
)
(2)
また、
Sに対する物理量
Aˆの期待値は密度行列を用いて次のように表現される。
⟨Aˆ
⟩
= Tr (
ˆ ρAˆ
)
(3)
密度行列の非対角成分はコヒーレンスと呼ばれ、本質的には系を構成する状態の重ね合わせの程 度を表す項である。このことを理解するために
|P⟩ = √12(|H⟩+|V⟩)
の純粋状態で構成される系
S1と
|H⟩、
|V⟩の半々の混合状態からなる系
S2を密度行列の観点から比較しよう。それぞれの密 度行列を
ρˆ1、
ρˆ2とし、表現の基底として
|H⟩、
|V⟩を選べば
ˆ ρ1=
(1/2 1/2 1/2 1/2 )
ρˆ2=
(1/2 0 0 1/2
)
(4)
となる。両者の相違点は非対角成分
1/2であるが、これは
S1の密度行列を定義
(1)にしたがって
計算した際に現れる項、
|H⟩⟨V|、
|V⟩⟨H|の係数であり、この項は
|H⟩、
|V⟩の重ね合わせ状態の
外積からしか生じない。以上から最大コヒーレンスを持つ状態と一般的な状態との非対角項との差 は、重ね合わせの程度を表していることになる。この非対角項であらわされるコヒーレンスが何ら かの原因で小さくなる現象をデコヒーレンスと呼ぶ。
本研究では、結果的に小澤の測定誤差を補助系のデコヒーレンスとして評価する。次章で説明す る干渉計では、誤差の評価のためデコヒーレンスを測定することになる。
2.1.2 偏光物理量
電磁波はマクスウェル方程式から導かれる電磁場の波動方程式から横波であることが示され、そ の互いに直交する振動方向を
H偏光、
V偏光と呼ぶ。電磁波は波動であるが、単一光子も偏光を 持つことが実験的に知られている。ところで、光子はボソンであるため大きさ
1のスピンを持ち、
それによって
-1,0,1に対応した
3つの量子状態を基底に持つ。しかし、屈折率が一様な空間中では 光子の横振動モードしか現れないため、自由度は
2と考えることができる。そのため電磁気学か らの類推によって、光子の各偏光に対応する状態を
|H⟩、
|V⟩と対応づければ光子の量子状態は
2準位系として取り扱うことができる。また、
|H⟩の線形結合をとった別の基底を
|P⟩、
|M⟩、
|R⟩、
|L⟩
として次のように定義する。
|P⟩= 1
√2(|H⟩+|V⟩),|M⟩= 1
√2(|H⟩ − |V⟩) (5)
|R⟩= 1
√2(|H⟩+i|V⟩),|L⟩= 1
√2(|H⟩ −i|V⟩) (6)
これは、パウリ演算子の基底に対応しており、これらの基底を固有値
±1の固有状態であるとすれ ば、偏光物理量を次のように定義できる。
ˆSHV ≡ |H⟩⟨H| − |V⟩⟨V|=
(1 0 0 −1
)
(7)
SˆP M ≡ |P⟩⟨P| − |M⟩⟨M|= (0 1
1 0 )
(8)
SˆRL≡ |R⟩⟨R| − |L⟩⟨L|=
(0 −i i 0
)
(9)
本実験では、光子の偏光物理量を測定する。それぞれの状態の物理的な意味は、
|P⟩は水平方向 から
45°、
|M⟩は水平方向から
135°の直線偏光、
|R⟩は光子の進行方向から見て右回り円偏光、
|L⟩
は光子の進行方向から見て左回り円偏光を表す
(図
1)。偏光物理量の測定とは
|H⟩、
|V⟩も含
めてこれらの状態へ射影したときの確率分布を得ることである。
図
1: (偏光物理量の物理的意味。電磁波が紙面奥から手前に向かっている状況を想定。
H偏光は
V偏光と、
P偏光は
M偏光と直交している。回転している矢印は右回り円偏光である
R偏光を表 す。
L偏光は左周りの円偏光を表す
(L偏光は省略
)。
)2.1.3 量子トモグラフィー
量子状態が不明な系に対しては様々な物理量の期待値を実験的に測定することによって、系の密 度行列を推定することができる。これを量子状態推定または量子トモグラフィーという。光子の密 度行列は偏光物理量の期待値を用いて
ˆ ρ= 1
2
( 1 + ⟨SˆHV⟩ ⟨ˆSP M⟩ −i⟨SˆRL⟩
⟨ˆSP M⟩+i⟨ˆSRL⟩ 1− ⟨SˆHV⟩ )
(10)
と表現できるので、偏光物理量の測定から実験的に密度行列を推定することができる。
光子の初期偏光状態の準備は偏光板を用いることで容易に制御できるので、本実験では測定する 系の初期状態を
P偏光の純粋状態
ˆ ρ1=
(1/2 1/2 1/2 1/2 )
(11)
に選び、測定によって変化した密度行列をトモグラフィーすることによって、偏光のデコヒーレン
スを求める。
2.1.4 POVM測定
従来、量子力学での物理量の測定とは系の状態をエルミート演算子の固有状態へ射影するするこ とであると考えられてきた、実際にはより広義の測定概念を考えることができる。
この概念を理解するにあたり、まず全ての測定が持つ普遍的な性質について考える。測定とは被 測定対象の系とは別に用意した測定系と、被測定系との間に相互作用させ、測定系を介して測定値 を引き出す行為であると考えられる。この測定に対して得られる測定結果
mとその集合を
Mと し、量子状態
ρˆの系に対して測定を行ったとき、測定結果
mが得られる確率を
P r(m|ˆρ)と定め る。このときに
POVM要素
Eˆmを考えることが可能であり、次式で定義される。
P r(m|ˆρ)≡Tr(ˆρEˆm) (12)
ただし
Eˆmは
∑mEˆm≡ˆI
を満たす非負行列である。
POVMは一般的な測定を表すため、測定結 果
mを与える確率
P(m)は、
POVM要素を初期状態に作用させることで計算することができる。
重要な定理として任意の
POVM測定は量子系
Sに加え、測定装置の状態について記述する測定系
(プローブ系
)を用意することによって、必ず実現可能であることが示される
[7]。よって、現在の 所、最も一般的な測定概念の定式である。
図
2:量子測定の包含関係と間接測定モデルの模式図
2.1.5 弱測定と弱値
初期状態が
|ψ⟩にある量子系
Sの物理量
Aˆの測定を考える。フォンノイマンの測定モデルでは、
物理量
Aˆと測定系の物理量
(例えば運動量
)を強く結合させて、測定系の物理量の正準関係にある 物理量
(例えば位置
)を測定すると、測定系の確率分布は物理量
Aの固有値の確率分布と等しいこ とが示される。その一方、量子系
Sの反作用を無視できる程度に弱く結合させて、量子系
Sの終 状態
|m⟩の選択の下で測定系の物理量の分布を測定すると、その期待値は次式の実部と等しくなる ことが理論的に示される。
Am= ⟨m|A|ψ⟩ˆ
⟨m|ψ⟩ (13)
(15)
式で示される複素数の値を弱値と呼び、弱値の実部、または虚部を得る測定を弱測定と呼 び、
Aharonov[2]らによって初めて提唱された。一般的には弱値は初期状態
|ψ⟩と終状態
|m⟩の間 の中間状態の情報を与える値と認識されているが、その物理的意味については未だに議論が続いて いる。文献
[4]、
[5]によれば、小澤の測定誤差を最小にする値と弱値の実部との一致から、
POVMの測定結果
mの真値に最適な測定値が弱値の実部であると主張している。
2.2 小澤の不等式と測定誤差
先ほど説明した
POVM測定では、目的とする物理量
Aˆを持つ量子系に対して測定系を相互作 用させ、測定系の物理量の変化を読み取ることによって
Aˆに関する統計分布を得ることを考えた。
この状況下で量子系
Sの二つの非可換な物理量
Aˆ、
Bˆの片方の測定を行うと他方の物理量の測 定結果を乱してしまう。この効果を擾乱といい、擾乱の大きさは初めに測定した物理量の測定誤差 とトレードオフの関係にある。これは測定の不確定性関係と呼ばれており、一般的に知られている 量子状態が持つ分散の不確定性関係
(ロバートソンの不等式など
)とは異なる種類の不確定性関係 である。測定の不確定性関係は様々な形で提唱されているが、代表的なものとして小澤の不等式
[1]がある。
今、量子状態
ρˆの量子系に対し、物理量
Aˆの情報を得たいとき、測定系で測定結果
mが得られ たとする。このときに、この測定結果に対応する
Aˆの測定値
Amがあるとすれば、
Aˆと測定系で 得られた
Amの差、つまり測定誤差を表す量として次の量を数学的に定義することができる。
ε2(Am)≡Tr {
(Aˆ −AmˆI)Eˆm(Aˆ −AmˆI)ˆρ }
(14)
この式を
mについて総和をとった次の量を小澤の測定誤差という。
ε2(A) =ˆ ∑
m
ε2(Am) (15)
また、このユニタリー発展によって他方の物理量
Bˆは
B(t)ˆへと変化するが、この差のオペレー
ターを次に定義する。
Dˆ ≡Bˆ ⊗ˆI−M(t)ˆ (16)
この演算子を擾乱演算子といい、この演算子の二乗平均の平方根を擾乱と定義する。
η(B)ˆ ≡√⟨
Dˆ2
⟩
=
√⟨
(Bˆ ⊗ˆI−B(t))ˆ 2
⟩
(17)
測定誤差と擾乱に加え、量子系の状態が持つ不確定性である
σ(A)ˆ、
σ(B)ˆの測定誤差も含めた不 確定性関係として次の不等式が成り立つ。
ε(A)η(ˆ B) +ˆ ε(A)σ(ˆ B) +ˆ σ(A)η(ˆ B)ˆ ≥ 1 2|⟨[
A,ˆ Bˆ
]⟩| (18)
この関係を小澤の不等式という。
測定誤差は量子系の初期状態に依存することは定義より明らかであるが、測定誤差とは真値と測 定値の差であるから、測定装置にのみ依存するはずである。量子系の初期状態に依存する誤差は測 定装置の較正が意味を持たないため物理的にどう評価してよいのかが不明である。
このことから、測定誤差はこれまで
3状態法と呼ばれる方法と弱測定を用いた方法で評価されて いる。
3状態法とは量子系の初期状態が既知かつ制御可能な条件下での評価法である。本来、物理 での測定とは未知の状態の情報を得る行為であるが、この方法は初期状態が既知で十分に制御でき ることを前提とした測定である。このような問題は、測定誤差が初期状態に依存することに由来す る。また測定誤差は物理量の真値と測定値の差を意味するが、真値が何か不明なままである。
以上の理由から、小澤の不確定性関係の正しさは実証されているが測定誤差の解釈や実験的に評 価については未だ議論の対象である。
2.3 測定から値を得る新しい提案
研究
[3]は通常の
POVM測定に新たな補助系を付加することで初期状態の情報を用いずに測定 誤差が直接実験から評価できることやその物理的意味を理論的に明らかにした。この方法はいかな る未知の初期状態に対して評価可能である。またこの方法により、測定誤差をゼロにする値を測定 値から得ることができる。その一方、測定誤差は真値と測定値の差を表すから、これは物理量の正 確な値が測定から得られたことを意味する。この節ではこの提案について紹介する。
まず、求めたい物理量
Aˆを含んだ量子系
Sとその統計分布を引き出すための
2準位を準備する。
量子系
Sに用意した補助系をエンタングルメントさせ、その系をモニター系と呼ぶ。このときモニ ター系の初期状態は物理量
Xˆの固有状態を準備する。物理量
Xˆとはパウリ演算子
ˆσxを意味し、
偏光であれば
SˆP Mに対応する。測定の大前提として、量子系
Sの状態は未知であるが、測定装置 であるモニター系は全て既知であり、制御可能としている。
量子系
Sとモニター系のエンタングルメントはモニター系と結合させる物理量を
Zˆとし、両者
の相互作用の強さを
ϵとする。ただし
ϵは量子系の初期状態をあまり壊さないように弱くする。な
ぜならば、後に行う
POVM測定に影響を与えないようにする必要があるからである。その結果、
系は次のユニタリー変換を受ける。
UˆSM = exp {−iϵ
ℏ(Aˆ ⊗Z)ˆ }
(19)
このとき量子系
Sに対して
POVMを行うと、
Sの状態は一般に初期状態から変更を受けるが、こ こでモニター系の状態変化は密度行列の非対角成分の減少として現れる。これはつまりデコヒーレ ンスのことである。ここで測定結果
A(m)を大きさに持つユニタリー変換でモニター系にフィー ドバック
(デコヒーレンスを
0にする操作
)を施す。フィードバックのユニタリー変換は次のよう に記述される。
UˆZ(m) = exp (−iϵ
ℏ(−A(m))Zˆ )
(20)
この場合、モニター系の初期状態は
Xˆの固有状態、すなわち純粋状態であるから密度行列の非 対角成分は
0であるが、測定値
A(m)が
Aˆの固有値も含め適当ではない値でフィードバックされ るとデコヒーレンスは
0にならない。この戻りきらない非対角成分の減少量が測定値
A(m)での 小澤の測定誤差の二乗に比例する。非対角成分を測定するためには
σxの平均値を求めればよいの で、その平均値を
∆Xとすると、
∆X= 2(ϵ ℏ)2∑
m
ε2(Aˆm) (21)
ここでフィードバックする前にモニター系の状態をトモグラフィーによって密度行列を評価すれ
ば、モニター系の状態を元に戻すフィードバックを見出すことができる。このときデコヒーレンス
が
0になるから、測定誤差を
0にするような測定値
A(m)を見出したことになる。測定誤差を最小
にする測定値が真値に最も近い測定値であるという考え方に基づけば、最適な測定値が研究
[3]で
提唱された実験方法から得られることになる。しかも、この方法では、量子系
Sの初期状態につい
て何も言及していないため、単にモニター系のトモグラフィーから量子系のいかなる初期状態につ
いても物理的の値及び対応する測定誤差を得ることができる。
図
3: POVMにおける測定誤差の評価法の概念図
3 干渉計を使った実験
3.1 干渉計の光路を測定物理量とした実験提案
前節図
2の測定系を実験的に検証するために考案した光学系を図
3に示す。この光学系におい て、量子系
Sはビームスプリッタ
1(BS1と略
)を通過した後の経路、測定系
(Eˆs(m))は
BS2を通 過した後の経路、モニター系は光子の偏光状態に対応している。光子の偏光状態は容易に制御でき るので今回は
P偏光の純粋状態
|P⟩に設定する。干渉計の光路の測定を考えると、
BS透過側の 状態を
|1⟩、固有値が
+1、反射側の状態を
|−1⟩、固有値が
-1とすれば、どちらの光路を通ったか を表す測定物理量
Aˆは
Aˆ =|1⟩⟨1| − |−1⟩⟨−1|であらわすことができる。さらにこの二つの光路 の線形結合をとった状態
|m= 1⟩ = √12(|1⟩+|−1⟩)
、
|m=−1⟩= √12(|1⟩ − |−1⟩)
で測定するこ とを考えれば、これは
m = +1、
m =−1での
POVM測定と同じ結果になる。この測定の切り 替えは
BS2を取り外せば、光路
|1⟩、
|−1⟩での固有状態への測定に対応、
BS2をおけば
|m= 1⟩、
|m=−1⟩
での射影測定に対応している。
)) (a)射影測定 (b) POVM測定
図
4:研究
[2]の検証セットアップ
量子系の初期状態が
|ψ⟩、モニター系の初期状態が
|ξ⟩であるとき合成系の初期状態はエンタン グルメントしていないので両者のヒルベルト空間のテンソル積で表現でき、
|ψ⊗ξ⟩ini ≡ |ψ⟩ ⊗ |ξ⟩と表現することできる。光路の初期状態
|ψ⟩は
BS1によって
α : βに分けられる
(ただし
α2+β2= 1)。また光子の偏光状態は偏光板によって
P偏光に選ぶ。よって合成系の初期状態は
=α|1⟩ ⊗ |P⟩+β|−1⟩ ⊗ |P⟩ (22)
合成系の状態は光路
|1⟩と光路
|−1⟩に置かれた
HWP1,2(光子の偏光状態を変化させる光学素子
によって次の式で記述されるユニタリー変換を受ける。
Uˆ1=U(θˆ r) =−i
(sin(θr) cos(θr) cos(θr) −sin(θr)
)
, (23)
Uˆ−1=U(ˆ −θr) =−i
(−sin(θr) cos(θr) cos(θr) sin(θr) )
(24)
ここで
θrは量子系とモニター系のエンタングルメントを作る相互作用の強さを意味し、この大き さは量子系の状態を壊さないように小さな値に設定されている。その結果、合成系は下記に示すよ うなエンタングル状態となる。
|ψ⊗ξ⟩=α|1⟩ ⊗Uˆ1|P⟩+β|−1⟩ ⊗Uˆ−1|P⟩ (25)
この状態に対して光路物理量
Aˆの測定を行い、測定値の分だけ偏光状態にフィードバックをかけ てから偏光の測定を行うことによって、フィードバック後のデコヒーレンスを理論的に計算する。
このとき、光路を表す測定値として固有値を得たと仮定してモニター系にフィードバックをかけ る。この場合について固有状態への射影測定と
POVM測定の二つの場合について計算する。
射影測定では補助系の測定基底は
|1⟩,|−1⟩であるので、合成系の状態と内積をとると各固有状態 へと射影されたときの偏光状態になる。光路
|1⟩,|−1⟩での偏光状態を
|P1⟩、
|P−1⟩とすれば以下 のように記述できる。
|P1⟩=⟨1|ψ⊗ξ⟩=αUˆ1|P⟩ (26)
|P−1⟩=⟨−1|ψ⊗ξ⟩=βUˆ−1|P⟩ (27)
この偏光状態に光路物理量の測定値が固有値であると仮定したフィードバックをかける。フィー ドバックのユニタリー変換は測定値を
Amとしたとき次のよう表現できる。
UˆF B(Am) = exp (−iϵ
ℏAmZˆ )
=−i
(sin(Amθr) cos(Amθr) cos(Amθr) −sin(Amθr)
)
(28)
光路
|1⟩の偏光状態に
Uˆ†F B(Am= 1)、光路
|−1⟩の偏光状態に
Uˆ†F B(Am= 1)を作用させれば、
フィードバックされた後のモニター系の状態をそれぞれ、
|P1F B⟩、
|P−1F B⟩とすれば
|P1F B⟩=Uˆ†F B(Am= 1)|P1⟩=α|P⟩ (29)
|P−1F B⟩=Uˆ†F B(Am=−1)|P1⟩=β|P⟩ (30)
よって、固有状態への射影測定を行った後での各光路
|1⟩,|−1⟩での
PM偏光の期待値
⟨SˆP M
⟩
1
⟨
、
ˆSP M⟩
−1
は
⟨ˆ ⟩
⟨ |ˆ | ⟩ 2
⟨SˆP M
⟩
−1= ⟨P−1F B|ˆSP M|P−1F B⟩=β2 (32)
となるので、光路全体での偏光物理量
SP Mの期待値は
⟨ˆSP M
⟩
=
⟨ˆSP M
⟩2 1+
⟨SˆP M
⟩2
−1=α2+β2= 1 (33)
初期偏光状態は
P偏光であるから
ˆSP Mの期待値は
1であるのでデコヒーレンスは
1−⟨ SˆP M
⟩
= 0 (34)
つまり、
ε2(A) = 0ˆであるので、測定誤差が最小値をとっていることが確認できる。つまり、こ のときの真値は固有値に一致していると言える。
次に
POVM測定の場合を考える。測定基底を
|m⟩ = √12(|1⟩+|−1⟩)
、
|m⟩= √12(|1⟩ − |−1⟩)
として同様の計算をすればデコヒーレンスは、結合の強さ
θrが非常に小さいことを考慮して
1−⟨ SˆP M
⟩⋍4θr2= 2×2θ2r (35)
と求まる。
(23)式より、
POVMでの測定誤差は
ε2(A) = 2ˆとなり、
0にならないことがわかる。
それでは、測定値を一般に固有値に限定しないとき、測定値
Amはどう表現できるのだろうか。
POVM
でのフィードバックをかける前の偏光状態
|P1⟩、
|P1⟩は
|P1⟩= α
√2
U(θˆ r)|P⟩+ β
√2
U(−θˆ r)|P⟩ (36)
|P−1⟩= α
√2
U(θˆ r)|P⟩ − β
√2
U(−θˆ r)|P⟩ (37)
であるので、測定値
Amの大きさでフィードバックをかけると
|P1F B⟩=UˆF B(−Amθr)|P1⟩ (38)
|P−1F B⟩=UˆF B(Amθr)|P−1⟩ (39)
となるが、デコヒーレンスが最小となるのは
|P1F B⟩、
|P−1F B⟩が
P偏光の純粋状態と一致する ときであるので、
|P1F B⟩ = |P⟩、
|P−1F B⟩ = |P⟩の連立方程式を各々解くと、光路
|m= 1⟩、
|m=−1⟩
での物理量の真値は次のように求まる。
A1= α−β
α+β (40)
A−1= α+β
α−β (41)
果たして、この結果は弱値と一致しているのだろうか。弱値の定義式は
(15)式で与えられてい るが、この定義において、量子系の初期状態を
|ψ⟩ =α|1⟩+β|−1⟩、測定の終状態は
POVMの 測定基底
|m= 1⟩= √12(|1⟩+|−1⟩)
、
|m=−1⟩= √12(|1⟩ − |−1⟩)
測定物理量は光路物理量
Aˆと すれば、
POVMのそれぞれのラベル
m = 1,-1に対し、
Am=1= α−β
α+β (42)
Am=−1= α+β
α−β (43)
となり、デコヒーレンスに最小値を与えるときの測定値と弱値の計算結果は等しいことが確認で きた。
3.2 具体的な検証実験
物理量の値の評価について、固有状態への射影測定と
POVMの二つの場合に対して行う。この
とき、モニター系のトモグラフィーを行い、フィードバックの大きさから真値
Amを求める。この
場合は、同じ初期状態で真値を比較するために、
BA2の正確な再設置が必要になる。これによっ
て求めた真値と弱値の予想値を比較する。
4 実験
4.1 ビーム特性と評価
3
章で提案した干渉計の実験を行うための光源としてレーザーを用いる。レーザー光は完全な平 行光線ではなく、ある特定の場所
(ビームウエストと呼ぶ
)で集光後、進行とともにビームサイズ が広がる性質
(ビームの角度広がり
)を持つ。このとき、ビームウエストのサイズと角度広がりは トレードオフの関係にある。したがって実験環境に応じて、ビームサイズの広がりと角度広がりを 調整する必要がある。本実験では光源として波長
810 nmの半導体レーザーを使用する。レーザー 光の電場はマクスウェル方程式から導かれる電場の波動方程式に対し、近軸近似を行うことによっ て得られる方程式に進行方向軸に対し垂直な断面での強度分布がガウシアンになるような解を仮定 することによって次のように求められる。
E(r, z) = 1
√ 1 + (zz
0)2 exp
{
−itan−1( z z0
)− r2
w(z)2 +i kr2 2R(z)
}
(44)
位相の部分を無視して、実部のみに注目すれば電場は定数を
E0として以下のように表現できる。
E(r, z) =E0exp {
− r2 w(z)2
}
(45)
ここで
w(z)はビームサイズを表し、最小ビーム半径を
w0、ビームウエストの位置からビームサイ ズが
w0の
√2
倍になる距離の二倍をレイリー長
Lといい、理想的なガウスビームからのずれを表 す
M2を考慮すれば、ビームサイズは次のように表現できる。
w(z) =w0
√
1 +M2(z−z0)2
L2 (46)
本実験では射出口からの距離に対するビーム強度を測定することによって、ビームサイズ
w(z)をfフィッティングにより求める。これにより、距離に対するビームサイズの関係が測定できれ
ば、式
(46)を用いることで
M2、レイリー長、ビームウエストの座標をフィッティングパラメー
タとして、ビームウエストを求めることができる。
図
5:ビームプロファイラによる強度分布の測定
ビームプロファイラによって得られたビーム強度の空間分布を次に示す。
図
6: (進行方向に垂直な二つの軸
x,yに対するビーム強度分布。
1 pixel = 6.4μ
mである
)ビームサイズは
x方向、
y方向の二種類あるが、研究
[7]より
x、
y方向ともに理想的な
M2に対し 誤差
5%以内であったため、今回は
x方向のビームサイズのみを考える。上記の強度分布を
y方向に 全て足し合わせ、フィッティングパラメータを
α(z)としてガウス分布
I(r, z) =I0exp(−α(z)x2)
で最適な
α(z)optを数値的に求める。一方、
xに対するビーム強度分布は
x方向の電場の二乗に比 例するので、式
(45S)よりガウスビームの強度は定数を
I0として、次のように表現できる。
I(r, z) =I0exp (
− 2r2 w2(z)
)
(47)
この両者の比較によって、位置
zでのビームサイズを次のように求めることができる。
w(z) =
√ 2
(48)
強度
30 mWのビームのいくつかの位置
zでのフィッティング結果よりビームサイズは次のよう に得られた。
50 100 150 200 250
0.18 0.20 0.22 0.24 0.26 0.28 0.30 0.32
z(mm)
w(mm)
図
7:ビームウエストの実験結果とフィッティング関数 点が実験データ、破線がフィッティング 関数を表す。
25cm
の結果についてはビームプロファイラの飽和により、データが取れなかったため、
NDフィ ルターで減光したうえで強度分布を測定した。
フィッティングの結果より、レーザーのレイリー長は
142.5 mmであることがわかった。した
がって、
142.5mmの長さではレーザーはほぼ平行光線とみなせることができる。干渉計のサイズ
をその長さに収めることが理想であるが、技術上困難であるので、凸レンズを用いることによって
レイリー長をできる限り伸ばす。
図
8:レンズによるビームの変換
ガウスビームのレンズによる変換は幾何光学においてよく知られた光線行列解析によって評価す ることができる。凸レンズ通過後のレイリー長は入射前のレイリー長
Linput、焦点距離
f、ビーム ウエストの位置と凸レンズの距離
d1を用いて次のように求まる。
L= Linput
(1−df1)2+ (Linputf )2 (49)
Linput
は定数であるから、
Lは
fと
d1の関数となる。焦点距離は実験的には連続に変化させる
ことは難しいので、
10cm、
20cm、
30cmで固定して
d1についてプロットする。
図
9:光線行列解析から予想されるレイリー長の理論値
この結果から焦点距離
30 cmの凸レンズをビームウエストの位置から
30cm離れた位置に置く
ことにより、
631.5 mmのレイリー長を確保できることが予想できる。よって、このいちに凸レン
ズを固定し、凸レンズから測った距離
d2に対するビームサイズの測定を行う。ビームサイズの測
定は先ほど同様、強度分布の測定から求まる。ビームウエストの実験結果とフィッティング結果を
以下に示す。
50 100 150 200 250 300 350 400 0.445
0.450 0.455 0.460 0.465
d2(mm)
w(mm)
図
10:凸レンズ通過後のビームウエストの結果 点が実験データ、破線がフィッティング関数を表す。
このフィッティングから凸レンズ通過後ビームウエストの位置は凸レンズから
160.5 mm,のレ
イリー長は
775.0 mm、
M2は
1.006であることがわかった。しかしながら、理論値の
631.5 mmとのずれが
140mm程あるので、ビームサイズの実験結果と、光線行列から求まる理論的なビーム
サイズの比較を行った。
0 100 200 300 400 0.40
0.42 0.44 0.46 0.48
d2(mm)
w(mm)
図
11:ビームサイズの理論値、実験値の比較。点が実験データ、破線が理論値を表す。
この結果から理論値と実験データから求まるビームウエストの位置が
140 mmずれていること がわかった。よって、平行光線とみなせる長さはレンズから測って
545.0mmであるが本測定の目 的は干渉計サイズに対し十分なレイリー長を確保することであり、今回、構築する干渉計の光路の
サイズは
520mmであるため、干渉計内では平行光線とみなせるのでこのレイリー長のもとで実験
を行う。
4.2 実験セットアップの構築
測定誤差を評価するための詳細なセットアップを以下に示す。
図
12:測定誤差を評価する光学系
ここで各偏光素子の役割について説明する。
(1)
凸レンズ
:ビームの形状を成形することにより、干渉計のスケールに対し十分なレイリー長を確保するため の素子である。本実験では焦点距離
30cmのレンズを用いた。
(2)
偏光板
:光子の偏光状態を偏光板が指定する偏光状態に変化させるための素子。モニター系の初期状態を
P偏光の純粋状態に準備するために用いた。
(3):BS1
、反射鏡
干渉計の骨格であり、量子系
(光路
)の状態を準備。
(4):
半波長板
1,2:光子の偏光状態を変化させるための光学素子。本実験では、量子系とモニター系のエンタングル メントを形成するために用いた。
(5)ND
フィルター
:量子系の状態
|ψ⟩=α|1⟩+β|−1⟩を
α、
βの比を変えるための素子。吸収度の異なる
NDフィ ルターを複数準備することにより、量子系の初期状態を変化させることで、物理量の値の初期状態 依存性を見る。
(6)BS2:
リセッタブルプレートに固定することによって、測定方法を固有状態への射影測定、固有状態以
外への射影測定かを選択することができる。
(7)
半波長板
(3,4)、
PBS(1,2)ˆSHV
、
SˆP Mを求める。
PBSは
H偏光は透過、
V偏光を反射する光学素子であり、この素子の 組み合わせにより、偏光物理量
SˆHV、
SˆP Mの期待値を求めることができる。
半波長板は二つの直交する軸の偏光成分に位相差
πをつける性質を持ち、偏光の基底を
|H⟩,|V⟩として、次の行列で表せる。
Uˆ =−i
(cos 2θr sin 2θr
sin 2θr −cos 2θr
)
(50) θr
とは
H偏光と半波長板の指定する軸となす角度である。
このことから、
θr= π8に設定すれば、
P偏光は
H偏光へ、
M偏光は
V偏光へ変化させることが できる。この光子を
PBSに入射させれば確実に
P偏光と
M偏光を識別することができる。
H偏 光と
V偏光の識別は
θr = 0に設定すればよい。
図
13:偏光状態の識別
二つの直交する偏光状態を区別することができれば、この識別を多数回行えば確率変数に偏光物 理量の固有値
±1をとり、統計分布を作成すれば
⟨SˆHV
⟩
、
⟨ SˆP M⟩
が実験的に求まり、式
(10)よ りモニター系の密度行列を推定することができる。
(8)
ファイバー結合器
光子の個数をカウントする素子。これによって偏光物理量の統計分布と光路物理量の統計分布を 作成することができる。
4.3 実験の現状
本実験を行なう上で、高い干渉計の精度が必要であり、干渉計の精度を評価する指標として明瞭 度
Vという物理量がある。最も強めあったときの強度を
Imax、最も弱めあったときの強度を
Iminとすると次のように定義される。
V = Imax−Imin
Imax+Imin
(51)
研究
[3]では明瞭度
V = 1を想定しているが完全に
1を実現することは不可能であるため、今回 の実験では
V ≥0.9を目安に干渉計を調整している。現段階では
V = 0.78まで調整している。
4.4 議論
4.4.1 光線行列解析の理論計算と実験データのずれ
ビーム特性の評価の図
[7]について、凸レンズ通過後のレイリー長は理論計算結果では
631.5 mmであり、実験データのフィッティングから
774 mmと求まったことから理論と実験との間に 何かしらの差異があると考えられる。この差異はビームサイズをフィッティングした際のパラメー タの誤差によるものか、あるい何かしらの系統誤差のどちらかに起因すると考えられる。そこで、
強度のフィッティングによるビームサイズの誤差をカイ二乗によって評価した
[6]。カイ二乗は実 験によって得られたデータ列
{(xi, yi)},(i= 1,2, ...N)と
x、yの間の理論曲線
y=y(xi|{aj})と の差が、分散
σiの正規分布に従うと仮定したときに、次のように定義される。
χ({aj})≡
∑N i=1
(yi−y(xi|{aj}))2
σ2i (52)
{aj},(j= 1,2...M)
は理論曲線を決定するためのパラメータである。このとき、最適なパラメー タとはカイ二乗を最小にするときの値であると定められ、これにより、実験データと最も整合する 理論曲線が得られる。以上の解析をビームの強度分布に適応し、理論曲線
I =I(x)をビームサイ ズ
w(z)、強度の係数
I0、ピーク位置
x0、バックグラウンド
Bをパラメータとして次のように仮定 し、カイ二乗を各データから求め、最適化する。
I(x|w, I0, x0, B) =B+I0exp {
−2(x−x0)2 w(z)2
}
(53)
また、信頼区間を
68%とした際のパラメータの誤差はパラメータの数が
4つであるとき、最適化
されたカイ二乗
χ2minの値を約
4.72増加させるときの各パラメータの変化量に等しいことが数学
的に知られている
[6]。以上の理論もとづいてzを変化させたときのビームサイズを誤差付きで評
価できる。その結果を以下に示す。
図
14:カイ二乗によるビームサイズの誤差評価 信頼区間
68%の誤差
強度分布のフィッティングパラメータは非常に小さい誤差を持ち、相対誤差が
10−3のオーダー であることがわかる。よって、光線行列解析のずれはフィッティングによるものではなく、何かし らの系統誤差によるものであると考えられる。
4.4.2 明瞭度が向上しないことへの考察
次に干渉計の明瞭度が
0.9まで上がらない理由を考察する。
一つ目に、ビーム断面の形状とビームの偏光状態が干渉計の各光路で異なっている可能性がある ことである。断面の形状は反射鏡の表面の傷により変化しうるため、反射後、再びプロファイラで 形状を確認することが必要である。また、反射によって理想的には
P偏光は
M偏光へ、
M偏光は
P偏光へ変化するが、現実には楕円偏光へ変化するため、このことも明瞭度が上がらない原因であ ると考えられる。そのため必要に応じて
14
波長板を置くなどの修正が必要になる。
二つ目は光軸、ビームスプリッタ反射鏡の調整のずれが影響を与えていることである。光軸や
ビームスプリッタの調整は微調ねじを用いずに調整したため無視できない誤差を含んでいると考え
られる。
5 まとめ
5.1 結論
今回の研究では、研究
[3]の検証のための光学系を提案し、その光学系における測定誤差の評価、
及び物理量の値の評価法を理論的な計算から示すことに成功した。また、干渉計構築に向けた基礎 的なビーム形状の分析や光線行列によるビーム形状のデザインを行った。実験では干渉計の構築 や、ファイバー結合器の調整など課題が残る形となったが、本研究での結果をもとに干渉計の調整 と値の評価を引き続き行いたい。
5.2 今後の展望
今後の展望として、干渉計の構築後、まず準備段階としてコヒーレント光でのトモグラフィーを
行いたい。というのも、上述の一連の理論は単一光子検出を前提としているため、より精緻なファ
イバー結合器の調整を要とされる。そのため、この測定の足がかりとして、コヒーレント光での準
備実験が当面の目標である。
6 参考文献 参考文献
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[4] Michael J. W. Hall. Prior information: How to circumvent the standard joint-measurement uncertainty relation. Phys. Rev. A, Vol. 69, p. 052113, May 2004.
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Experimental evaluation of nonclassical correlations between measurement outcomes and target observable in a quantum measurement. Phys. Rev. A, Vol. 93, p. 032104, Mar 2016.
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石坂智 小川朋宏 河内亮周 木村元林正人
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.共立出版
, 2012.[8]