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ATP 高感度検出 SBP- ルシフェラーゼによる

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(1)

平成 17 年度

広島大学理学部物理科学科 卒業論文

SBP- ルシフェラーゼによる ATP 高感度検出

広島大学理学部物理科学科 1479062K

三好修平 光子物理学研究室

2006

2

28

(2)

概 要

全ての生命体が保有しており,個体の保持に必要なエネルギー物質であるアデノシン三 リン酸

(ATP: adenosine tri-phosphate)

の検出は,細菌など目に見えない微生物の高感度 モニタリングシステムが構築できるとして近年注目されている.その中でも,発光酵素ル シフェラーゼとホタル由来の発光物質ルシフェリンを用いた方法が簡便かつ高感度であり,

食品衛生現場などで広く用いられている.

ルシフェラーゼがルシフェリン

1

分子を取り込み,

ATP1

分子を使って酸化反応させ,

1

子を放出する.その光子を,

1

光子検出が可能な固体光検出器

(APD: avalanche photodiode)

で検出することにより,原理的に微生物

1

個体までの検出感度向上が可能となる.しかし ながら,

APD

の構造上,集光効率の向上が非常に困難であるため,通常は光検出器とし て光電子増倍管を使用することが多い.そのため,現状では微生物

1

匹レベルでの検出ま で到達していない.

そこで本研究では,シリコンに結合するタンパク質

(SBP: silica-binding protein)

とル シフェラーゼを結合させた

SBP-

ルシフェラーゼをシリカコア光ファイバー断面に結合さ せ,ファイバー断面で発光を起こさせることにより,

APD

検出での集光効率向上を図っ た.また,シミュレーション計算を基に集光効率の高い光ファイバーの形状を求め,その 結果に基づいて実験を行った.

実験の結果,集光効率は向上させることができたが,いくつかの原因で検出効率を向上 させるには至らなかった.また,

Michaelis-Menten

の式による解析から,大径ファイバー での

APD

とのカップリング効率が低いことと,ターンオーバーレートが他の文献と比べ

2

桁低い結果を得た.これらについては様々な改善策が考えられるため,

ATP

検出感度の 大幅な向上の実現可能性が高い結果となった.

(3)

目 次

1章 序論 3

1.1 ATP

検出の意義と現状

. . . . 3

1.2

研究目的

. . . . 4

2章 検出システム 6

2.1 ATP

と発光試薬

. . . . 6

2.1.1 ATP

による発光プロセス

. . . . 6

2.1.2 Michaelis-Menten

機構

. . . . 7

2.1.3 ATP

サンプルと発光試薬について

. . . . 8

2.2

光ファイバーと

APD . . . . 9

2.2.1

光ファイバーの構造

. . . . 9

2.2.2 APD

の光検出原理

. . . . 10

2.2.3 APD

の特徴

. . . . 10

2.2.4 APD

の信号処理

. . . . 12

2.2.5

計測値の処理

. . . . 12

3章 シミュレーション計算 13

3.1

計算方法

. . . . 13

3.2

計算結果

. . . . 15

3.3

検討

. . . . 15

3.4

考察

. . . . 17

4章 検出数の時間依存性 20

4.1

セットアップ

. . . . 20

4.2

作製法

. . . . 20

4.3

実験方法

. . . . 21

4.4

実験結果

. . . . 21

4.5

考察

. . . . 22

5章 バイオセンサー作製法の最適化 23

5.1

切断方法・洗浄溶液の比較

. . . . 23

5.1.1

作製法

. . . . 23

5.1.2

実験方法

. . . . 23

5.1.3

実験結果

. . . . 24

5.1.4

考察

. . . . 25

(4)

5.2

時間の比較

. . . . 25

5.2.1

作製法

. . . . 25

5.2.2

実験と結果

. . . . 26

5.2.3

考察

. . . . 26

6章 光ファイバー選択実験 28

6.1

作製法

. . . . 28

6.2

実験のセットアップと方法

. . . . 28

6.3

実験結果

. . . . 28

6.4

考察

. . . . 29

6.4.1

コア径の比較

. . . . 29

6.4.2

他の実験との比較

. . . . 29

6.4.3 Michaelis-Menten

の式による解析と考察

. . . . 30

6.5

問題点と改善策

. . . . 33

6.5.1

ターンオーバーレートについて

. . . . 33

6.5.2

カップリング効率について

. . . . 34

6.5.3

固定ルシフェラーゼについて

. . . . 35

7章 球面凹ミラーを用いたATP検出 36

7.1

セットアップ

. . . . 36

7.2

作製法・試薬

. . . . 37

7.3

実験方法

. . . . 38

7.4

実験結果

. . . . 38

7.5

考察

. . . . 38

8章 結論 40

謝辞 42

参考文献 43

付録 44

(5)

第 1 章 序論

1.1 ATP 検出の意義と現状

医療が発達してきた今日,日本では微生物による感染症で命を落とす者は少なくなって きている.しかし,死者が多数出た大阪府堺市の小学校における大腸菌

O-157

の集団食中 毒は記憶に新しい.加熱処理などの感染予防法が確立されていても,目に見えない微生物 を数匹レベルで発見することは困難なのが現状である.

ただ困難ながらも,微生物を検出する手法は確実に進歩している.以前は,大腸菌など の微生物が存在しているかどうか,検査したい場所を拭き取り,寒天培地に接触させ,数 日間かけて培養し,それを観察し微生物の存在を確認していた.今日では,全ての生物が 保有しているエネルギー物質アデノシン三リン酸

(ATP: adenosine tri-phosphate)

と反応 して発光する試薬を用い,光電子増倍管

(PMT: photo multiplier tube)

等で光を検出する ことによって微生物を検出する方法が一般的に利用されている.全ての生物は

ATP

を持っ ているが,生物が死滅するとその生物が持っていた

ATP

は急速に分解されてしまう.つ まり

ATP

を検出すれば,そこに何かしらの今生きている生命体が居ることが分かるので ある.

この

ATP

検出は培養が必要であった従来の方法と比べて,高感度でかつ迅速に微生物 を検出することが可能である.さらに培養時間を省くことにより,他の部分の微生物の繁 殖を抑えることができる.

ATP

検出法の中でも,ホタル由来の発光酵素ルシフェラーゼと 発光物質ルシフェリンを用いた方法が簡便かつ高感度であり,食品衛生現場などで広く用 いられている.しかし市販の

ATP

検出器では,大腸菌

1000

10000

匹レベルの

ATP

出感度しか到達していない.この感度は,食品現場や医療現場などで,実際上十分である とは言い難く,大腸菌

1

匹レベルで検出可能な方法の開発が望まれている.

(6)

1.2 研究目的

昨年度の研究では,

1

光子検出が可能なパーキンエルマー社のアバランシェフォトダイ オード

(APD: avalanche photodiode) (

1.1)

に試料を直付け

(

集光効率〜

0.02%)

する事 により,大腸菌

60

匹レベルの

ATP

を検出したことを確認した.

(

1.2)

1.1:

アバランシェフォトダイオード

(SPCM-14)

1.2:

直付け検出

単一光子検出可能な

APD

は,ノイズを抑えるために,検出面が非常に小さく設計され ているのが特徴で,このことが集光効率の向上を難しくしている.逆を言えば,集光効率

2

桁向上させることができれば,大腸菌

1

匹レベルの

ATP

検出が可能となると考えら れる.

一般的に集光にはレンズとミラーを使用した方法が用いられる.生物発光は一様に放射 されていると考えられており,凹ミラーを用いた集光が最も簡単で単純な方法である.

ところで

(

1.1)

は,集光に凹ミラーを用いた光学系で,集光の効率と結像点での像の 大きさを,発光領域の大きさに対する倍率として示したものである.倍率が高くなれば,

結像点での像が大きいことを意味するため,検出面の小さい

APD

では,検出効率を低下 させるものと考えられる.ところがこの表によると,集光効率を重視すれば倍率が高くな り,倍率を重視すれば集光効率が落ちてしまう.したがって,試験管の溶液全体を発光さ せた場合,発光領域すなわち光源を点とした時の集光効率が高くても,倍率が高ければ光 源からの発光量すべてを検出面でとらえることができなくなる.

そこで本研究では,シリコンに結合するタンパク質

(SBP

1

: silica-binding protein)

ルシフェラーゼを結合させた

SBP-

ルシフェラーゼをシリカコア光ファイバー断面に結合 させ,ファイバー断面近傍で発光を起こさせることにした.それにより,発光領域の大き

1SBPはシリコンに結合するタンパク質の総称だが,諸事情により詳細は記述できない.

(7)

曲率

R[mm]

倍率 集光効率

[%]

100 3.07 0.276

120 2.56 0.243

150 2.04 0.200

200 1.53 0.146

250 1.23 0.110

300 1.02 8.40

×10−2

400 0.767 5.28

×10−2

500 0.613 3.58

×10−2

600 0.511 2.57

×10−2

700 0.438 1.92

×10−2

800 0.383 1.49

×10−2

1000 0.307 9.71

×10−3

1500 0.204 4.39

×10−3

10000 0.0307 1.00×10

−4

1.1:

球面凹ミラーの曲率半径と,その時の倍率と点光源の時の集光効率

さを小さくし,ファイバー断面からの距離も小さくなる.光ファイバーの開口数

(N.A.:

Numerical Aperture)

0.22

とすると,

(

1.1)

より,断面で起きた発光の約

1.2%

を収集 できる.

集光効率

=

集光できる立体角

全立体角

= 2π

¡

1

cos

¡

sin

−1 N.A.n ¢¢

4π (1.1)

この値は,大きさを無視した点光源の場合であるが,直付けの集光効率と比較して

60

倍の大きさを持つため,有力な方法の

1

つと考えられる.そこで本論文では,まず実際の 大きさでシミュレーション計算を行い,計算結果を基に集光効率の高い光ファイバーの形 状や最適なミラーの形状を求めることにした.結果に基づいて実験を行い,

ATP

濃度の 限界値を明らかにするとともに,その値を改善するための検討を行うことにした.

(8)

第 2 章 検出システム

2.1 ATP と発光試薬

2.1.1 ATP

による発光プロセス

ATP(

2.1)

は,

DNA

の構成塩基であるアデニンとリボースと呼ばれる糖から成るア デノシンと言う物質に,

3

つのリン酸が結合したものである.前述の通り,

ATP

は全ての 生物に含まれており,個体の保持に必要なエネルギー物質である.

2.1: ATP

の構造式

ATP

のリン酸は細胞内

(

水溶液中

)

でそれぞれ−に電離し,お互いに斥力が働くためエ ネルギー的に不安定な高エネルギーリン酸結合が切れる.

(

2.1)

ATP

ADP + P + 1.7[kJ] (2.1)

結合が切れる際にエネルギーが放出され,そのエネルギーが生物の生命活動に用いられ る.また,ホタルや電気うなぎなど発光・発電する生物は,発光や発電する際に

ATP

利用している.

生物が生存していると細胞内で

ATP

は活発に生成されるが,生物が死滅すると急速に

ATP

は分解されてしまう.この事から,試料中に

ATP

が存在していれば,同時に生きて いる生物も存在していることが分かる.つまり,

ATP

を検出する事が出来れば生物を検 出できると言うことになる.

本研究では,発光酵素ルシフェラーゼとホタル由来の発光物質ルシフェリンを用いて

ATP

を検出する.ルシフェラーゼがルシフェリン

1

分子を取り込み,

ATP1

分子を使って ルシフェリンを酸化する.酸化されたルシフェリン

(

オキシルシフェリン

)

は励起状態にあ り,基底状態に遷移する際に

1

光子を放出する.

(

2.2)

1ATP

1

光子を放出するために必要なので,定量的に

ATP

の数を測定することができる.

(9)

2.2:

ルシフェリンの発光過程

2.1.2 Michaelis-Menten

機構

酵素を

E

,基質を

S

,中間錯体を

X

,生成物を

P

としたときに,反応式を

(

2.2)

と表 すことができる.

E + S * )

k1

k−1

X * )

k2

k−2

E + P (2.2)

k

±nは反応係数を示す.このような酵素による反応系を

Michaelis-Menten

機構と呼ぶ.

また,反応が

Michaelis-Menten

機構に従うとき,

Michaelis-Menten

の式

(

2.3)

によ り,この反応の反応速度

(

単位時間当たりのイベント数

)

を表すことができる.

V = V

k·

[S]

K

m

+ [S] (2.3)

V

kは最大反応速度,

K

m

Michaelis

定数,

[S]

は基質の濃度である.

ルシフェリン・ルシフェラーゼによる発光反応では,酵素

E

がルシフェラーゼ,基質

S

ATP

とルシフェリン,生成物

P

はオキシルシフェリンである.今回の実験では,ルシ フェリンが

ATP

に比べて大量に存在するので,ルシフェリンの濃度は反応速度への寄与 が小さく,基質

ATP

の濃度のみが反応速度に寄与すると見なせる.また,

k

−n '

0

であ り,

k

1

k

2に対して非常に速く反応が進むので,発光反応の反応速度は

k

2に大きく依存 する.

横軸を

ATP

の濃度,縦軸を反応速度として

(

2.3)

をプロットすると,

(

2.3)

のよう な形となる.

Michaelis-Menten

の式を用いて解析を行うためには,反応速度の

ATP

濃度依存性を調 べる必要がある.そのため,実際の実験では,それぞれの

ATP

濃度に対する単位時間当 たりの光子数を測定した.実験については後に述べる.

(10)

2.3: Michaelis-Menten

の式

(V

k

= 10

4

[1/sec]

K

m

= 10

−4

[M])

2.1.3 ATP

サンプルと発光試薬について

実際の

ATP

測定では,ルシフェリンが含まれる溶液と

ATP

サンプル溶液を混ぜあわ せ,用意した試料溶液に

SBP-

ルシフェラーゼがついた光ファイバーを浸すことによって 行われる.

ATP

を濃度別に測定するために,異なる濃度の

ATP

サンプル溶液を用意する.

今回の実験では,

ATP

サンプルとして

Roche

社の

ATP Bioluminescence Assay Kit CLS II

に同梱されている

ATP standard

を用いた.粉末状の

ATP

1000[µ`]

の蒸留水で希釈 することで,

16.5[mM]

のモル濃度

([M]=[mol/`])

のサンプルを得る.そのサンプルを

10

1

10

8倍に蒸留水希釈した希釈系列を用いた.発光試薬の

SBP-

ルシフェラーゼは溶液中 に混入されて供給される.この試薬溶液に光ファイバーの端面を浸し,しばらく放置させ ることで,ルシフェラーゼの結合した光ファイバー端面を得ることができる.ルシフェリ ン溶液も蒸留水にルシフェリンを溶かした状態で供給される.

これらの

SBP-

ルシフェラーゼ溶液,

20[mM] D-

ルシフェリン溶液,洗浄に用いる

TBS

1 呼ばれる溶液及び発光反応用バッファ2については,広島大学大学院先端物質科学研究科 分子生命機能科学専攻細胞工学講座研究室で作製された物を使用した.

ATP

検出にあた り,ルシフェリン溶液と,

ATP

サンプル溶液を混合させて作製される試料溶液

(

以下,試 料と呼ぶ

)

100[µ`]

作製する際には,以下の

(

2.1)

の容量で作製した.

10×

バッファはバッファ溶液を蒸留水で

10

倍に希釈したものを示している.

バックグラウンドを調べるときは,

ATP10[µ`]

の代わりに蒸留水

10[µ`]

を加えた試料を 作製した.

SBP-

ルシフェラーゼを光ファイバーに結合させる際には,

SBP-

ルシフェラーゼ溶液に ファイバー先端を浸し,それぞれの実験に合う時間

3

6

℃で3安置した.

1TBS組成:250[mM] Tris-HCl pH7.41.5[M] NaCl

2バッファ組成:250[mM] Tris-HCl pH7.850[mM] MgCl2

3最適な安置温度は4℃であるが,当研究室では36℃の保冷庫しか設置していなかった為,36℃で 安置した.

(11)

溶液 容量

20[mM] D-

ルシフェリン

2.5[µ`]

10×

発光反応用バッファ

10[µ`]

ATP

サンプル

10[µ`]

蒸留水

77.5[µ`]

試料

100[µ`]

2.1:

試料作製の容量

2.2 光ファイバーと APD

2.2.1

光ファイバーの構造

光の伝送に用いられる光ファイバーは,屈折率の高いコアの部分と,屈折率の低いクラッ ドの部分により構成されている.屈折率が高い領域

(n

1

)

から低い領域

(n

2

)

へ光が角度

φ

で入射するとき,

n

1

n

2

sin φ

1 (2.4)

の条件を満たすと屈折を起こさず,全反射を起こす.

(

2.4)

コア内を全反射していくことで,光がファイバー内を少ないエネルギー損失で伝播して 行く.

2.4:

光ファイバーの光の伝播

光がファイバー内で全反射を起こし伝播するかどうかは,ファイバー断面での入射角度で 決まる.入射角度の条件を表すファイバー固有の値を開口数

(N.A.: Numerical Aperture)

と言い,

(

2.5)

と書くことができる.開口数とは光学系への最大入射角度を表すもので ある.

N.A. = n sin θ (2.5)

光ファイバーの開口数は,コアとクラッドの屈折率で表すことができる.

(12)

スネルの法則より,

n sin θ = n

1

sin θ

0

(2.6)

三角関数の関係から,

sin ( π

2

φ) = cos φ

0

= π

2

φ) (2.7)

(

2.4)

より,

sin φ =

nn2

1 だから,

n

1

sin θ

0

= n

1

cos φ = n

1 q

1

sin

2

φ = n

1 s

1

n

22

n

21

=

q

n

21

n

22

(2.8)

n sin θ =

q

n

21

n

22

(2.9)

と,

(

2.9)

のように表すことができる.すなわち,光ファイバーの開口数は,コアとク ラッドの物質で決まってしまうことが分かる.

また,今回は用いないがレンズの開口数は,レンズ径を

φ

,焦点距離を

f

とすると

(

2.10)

と書くことができる.

N.A. = φ

2f (2.10)

2.2.2 APD

の光検出原理

アバランシェフォトダイオードは,

p-n

接合された半導体に光子を吸収することにより 電流を発生させる光検出器である.

n

領域に対して

p

領域に逆バイアス電圧を印加するこ とにより,接合部にキャリアが希薄な空乏層が生じる.逆バイアス電圧を増大させること により空乏層の電場も高くなり,空乏層を横切るキャリアは他の電子を荷電子帯から伝導 体に蹴り上げるほどの運動エネルギーを得る.

(

2.5)

のように入射光子が電子正孔対

AB

を生成すると,その電子

B

は空乏層により加速され,新たに電子を荷電子帯から伝導体 に蹴り上げる運動エネルギーを得る.その電子もまた空乏層を横切り,新たに電子を伝導 体に蹴り上げる.このようになだれ式に起こる電子の増倍を,電子なだれ増倍

(electron avalanche multiplication)

と呼び,この増倍を利用したフォトダイオードをアバランシェ フォトダイオードと呼ぶ.

2.2.3 APD

の特徴

今回使用したパーキンエルマー社の

SPCM-14

は,

1

光子検出が可能な

APD

である.

APD

は小型軽量で扱いやすく,外部からの電気的ノイズの混入に強い.さらに光電面を 冷却しているため,暗電流によるダークカウントは

50

100[cps]([cps]=[count/sec])

であ る.一般的な光電子増倍管の検出効率が

10%

程度であるのに対して,

SPCM-14

の検出効 率は波長

650[nm]

の光に対して

65%

である.

しかし,ダークカウントによるノイズを抑えるために検出面を

φ175[µm]

と小さくして いる.また,冷却による幾何学的構造により発光光源と直接接触させることが不可能であ る.高い検出感度を持っているにもかかわらず,このことが集光効率を向上させることを 困難にしている.

(

2.6)

(13)

2.5: APD

の光検出原理

2.6: APD

の検出面付近の構造

(14)

2.2.4 APD

の信号処理

今回使用した

APD(SPCM-14)

の出力信号は

TTL

パルス信号である.

APD

から出力さ れた

TTL

パルスを

TTL/NIM LEVEL ADAPTER

NIM

信号に変換した後,

80MHz Scaler

とストップウォッチを用いて計測した.

(

2.7)

2.7: APD

の信号処理

2.2.5

計測値の処理

ルシフェリンの発光反応は,一定の確率で起こっている.一定確率で起こる事象の一定 時間内の計測は,ポアソン分布に従い統計的な揺らぎを伴う.このような計測では,計測 値の平均を

N

とすると,揺らぎ

∆N

∆N =

N

と表される.

今回の実験では,

APD

のダークカウント及び,蒸留水中の

ATP

による発光をバックグ ラウンドとした.また,それぞれの条件で数回測定を行った.

ルシフェリンの発光数は,経過時間ともに指数関数に比例して減衰するので,減衰が見 られる時は指数関数によるフィッティングから外挿し,外挿した値を検出数とした.フィッ ティングができない場合は,最大値を検出数とした.その理由はあとから述べる.

実際の計測数を

N

1,バックグラウントを

N

2,計測時間を

t

,計測回数を

m

とすると,

単位時間当たりの

ATP

サンプルによる発光数

n

及び

∆n

は,

(

2.11)

(

2.12)

と表す ことができる.

n = N

1

N

2

t

±

∆n (2.11)

∆n =

s

N1

t

+

Nt2

mt (2.12)

(15)

第 3 章 シミュレーション計算

光ファイバーの切断面に

SBP-

ルシフェラーゼを結合させた状態で,光学系の最適化を 行うために,光ファイバーの径のサイズと,ミラーの曲率半径やサイズをパラメータとし て,シミュレーションを行った.

3.1 計算方法

(

3.1)

のように,ルシフェラーゼの光軸方向の長さを

5.0[nm]

SBP

の長さを

2.0[nm]

に固定し,光ファイバーのコア径

Φ

F

[mm]

・開口数

N.A.

,球面凹ミラーの径

Φ

M

[mm]

と曲

率半径

R[mm]

,ルシフェラーゼの中心から球面凹ミラーまでの距離

d[mm]

をパラメータ

とした.また,

SBP-

ルシフェラーゼはコア上に付着するので,高さ

5.0[nm]

・直径

Φ

F

[mm]

の円柱を発光領域としシミュレートを行った.シミュレートには行列によるレイトレース 1を用いた.乱数発生は,

Mersenne Twister

2を使用した.

3.1:

シミュレーションの数値設定

発光領域の体積中のランダムな点から,ランダムな方向に光子が

1

つ出る.その内

コアに当たる かつ ファイバー内を伝播する角度を持つ光

ミラーに当たる かつ 反射光がコアに当たる かつ 反射光がファイバー内を伝播する 角度を持つ光

この

2

つのカウント数を,発光領域から出た全光子数で割ったものを集光効率とした.ま た,プログラムのフローチャートを

(

3.2)

に示す.

1行列による光路計算(詳細は付録参照(P.44))

2広島大学大学院理学研究科数学専攻 松本 眞,山形大学 西村 拓士

(16)

3.2:

プログラムのフローチャート

(17)

3.2 計算結果

結果は

(

3.3)

(

3.5)

のようになった.

3.3:

コア径と集光効率の関係

M

=1.5[mm]

R=1[mm]

N.A.=0.22)

シミュレーションの計算結果から,コア径の大きいファイバーを用いた方が集光効率が 高いこと,開口数が高いファイバーを用いた方が集光効率が高いこと,曲率半径の小さい 球面凹ミラーを用いることで高い集光効率が得られることが分かった.また,コア径に対 して球面凹ミラーの径が大きければ,ミラーの近傍と曲率半径程度離れた点に集光効率の 高い位置があることが分かった.コア径に対して球面凹ミラーの径が小さい場合は,

f =

R2 と表される球面凹ミラーの焦点付近で集光効率がピークとなることが分かった.

3.3 検討

入手可能な光ファイバーやミラーの形状,サイズを考慮したときの条件は以下の数値の とおりとなった.この条件の下では,集光効率は

(

3.6)

のようになった.実験には用い ないが,比較のためにコア径

0.1[mm]

の集光効率も示す.

ミラー径

15[mm]

ミラー曲率半径

10[mm]

開口数

0.48

また,

SBP-

ルシフェラーゼはコアに結合するので,ルシフェラーゼの個数は

(

3.6)

コアの面積倍したものに比例する.発光数もルシフェラーゼの個数に比例するので,

(

(18)

3.4:

開口数と集光効率の関係

M

=0.1[mm]

R=1[mm]

Φ

F

=1[mm]

d=0.1[mm])

3.5:

ミラーの曲率半径と集光効率の関係

M

= 1.5×R[mm]

Φ

F

=1[mm]

N.A.=0.48)

(19)

3.6: N.A.=0.48

のファイバーのシミュレーション結果

3.6)

をコアの面積倍し,コア径

0.1[mm]

の検出数を

1

として規格化をすると

(

3.7)

のよ うになった.この結果だけ見ると,コア径

1.0[mm]

が最もよくなった.しかしながら光ファ イバーと

APD

との結合を考慮すると,今回使用した

APD

は,コア径

0.1[mm]

の光ファ イバーとの結合に最適化されているため,実際結果は異なると考えられる.実験について はあとの章で述べる.

また,ミラーを用いないときの集光効率を計算したところ,

N.A.=0.48

ではコア径に寄 らず

4.20[%]

となった.

3.4 考察

ミラー径が大きい時に集光効率の高い距離が

2

点ある事について考える.一般に集光効

ε

は,

ε = ε

M ·

ε

N A·

ε

ΦF

で表される.このとき

ε

M はミラーに当たる確率,

ε

N Aはコアの断面から光ファイバー内 に入る確率,

ε

ΦF はコアに当たる確率である.

ε

を計算するにあたり,

ε

N A

ε

ΦF

1

にしたときの

ε

ε

M

ε

N A

1

にしたときの

ε

ε

M

ε

ΦF

1

にしたときの

ε

それぞれ計算した.計算は以下の条件で行った.

Φ

M

=15[mm]

R=10[mm]

Φ

F

=1.0[mm]

N.A.=0.48

,発光はミラー側のみとした.結果を

(

3.8)

に示す.

(20)

3.7: (

3.6)

をコアの面積倍したもの

3.8:

集光効率の

2

つのピークが何に寄与しているか

(21)

Condensing

 は上記の条件での集光率を示したものであり,

ε = ε

M·

ε

N A·

ε

ΦF ある.

Hit mirror & N.A.=1

 は

N.A.=1

とした時の集光率

(

コアに当たった割合

)

を示し ており,

ε = ε

ΦF

M

= ε

N A

= 1)

に対応したものである.

Hit mirror & core dia.=∞

 は

Φ

F

=

での集光率

(N.A.

から求まる角度以下で 断面の座標に戻った割合

)

を示しており

ε = ε

N A

M

= ε

ΦF

= 1)

に対応したもので ある.

Hit mirror

 はミラーに当たった割合を示しており,

ε = ε

M

N A

= ε

ΦF

= 1)

に対 応したものである.

この結果をみると今回の結果では,大きな

2

つのピークはコアに当たる割合が大きく寄 与していることが分かる.

(22)

第 4 章 検出数の時間依存性

ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応は時間とともに進行するため,検出数は測定時での 反応経過時間に依存する.そのため,まずは検出数の時間依存性を調べることにする.こ の結果から,測定を反応後いつ行うのが良いか知ることができる.

4.1 セットアップ

クリーンルームの暗箱に

APD

,試験管立てを設置した.

APD

5.00[V]

の電圧をかけ,

ファイバーの切断面を試料の入った試験管に浸け,ファイバーと

APD

FC

コネクタで 接続し計測を行った.

(

4.1)

4.1: ATP

検出のセットアップ概略図

4.2 作製法

光ファイバーは

φ0.4[mm]

N.A.=0.48

のマルチモードファイバーを用いた.

光ファイバー端面にルシフェラーゼを結合させる場合,まず光ファイバーを切断し断面 を洗浄する.次に

SBP-

ルシフェラーゼ溶液にファイバー断面を浸け,

SBP-

ルシフェラー ゼが十分に結合するまで安置する.

(23)

この実験では工作用カッター

(

以後,カッターと記述する

)

で切断後,エタノールでファ イバー先端を洗浄したのち

10×TBS

で洗浄した.

SBP-

ルシフェラーゼには

10[min]

浸け た.

SBP-

ルシフェラーゼを結合させた光ファイバーを,以下バイオセンサーと呼ぶ.

4.3 実験方法

作製したバイオセンサーを,

0.05%

の界面活性剤

(Tween20)

を含んだ

10×TBS

2

洗浄し,

10×TBS

1

回洗浄した後,測定を行った.測定はバイオセンサー先端を,試料

が入った試験管に浸けて,

30[sec]

後から測定を開始した.

1

回の計測後

2

回目の計測を行 うときは,バイオセンサー先端を

10×TBS

2

回洗浄してから計測を行った.

ATP

の測定前に,バックグラウンド測定用の

ATP

が含まれていない試料で

30[sec]

の測 定を最低

3

回行った.それぞれの測定間は

10[sec]

空けた.

ATP

の測定では,

10[sec]

測定 し,

10[sec]

空け,それを

15[min]

繰り返した.濃度は,

1.65

×

10

−5

[M]

1.65

×

10

−7

[M]

の計測を行った.

4.4 実験結果

ATP

濃度が

1.65

×

10

−5

[M]

での結果は

(

4.2)

のようになった.

4.2:

発光反応開始からの経過時間に対するカウント数

(1.65

×

10

−5

[M])

y = Ae

τt

+ y

0

(4.1)

τ = 258

±

3

(24)

A = (2.75

±

0.01)

×

10

3

y

0

= (2.153

±

0.008)

×

10

3

(

4.1)

でフィッティングすると減少を特徴付ける速度τ1は,2581

[1/sec]

となった.なお この値は,濃度やファイバー断面に結合しているルシフェラーゼの個数によっても変わる ものと予想される.

ATP

濃度が

1.65

×

10

−7

[M]

での結果は

(

4.3)

のようになった.

4.3:

発光反応開始からの経過時間に対するカウント数

(1.65

×

10

−7

[M])

濃度が高い際は,計測開始直後から時間経過による検出数の減少が見られた.濃度が低 い際には,計測開始直後は検出数が増加し,数分後に減少し始めた.

4.5 考察

これらの結果から,ルシフェラーゼが試料中を拡散している

ATP

をとらえるまでに,

一定の時間がかかっていることが予想される.濃度が高い時にはセンサーを浸けた直後に

ATP

をつかまえ,検出数が減少すると考えられる.濃度が低い時には,

ATP

が拡散によっ て光ファイバー端面に到達するまでに時間がかかり,十分な量が到達するまでは検出数が 増加していき,その後に検出数が減少していくと考えられる.

したがってこれ以降の計測は,検出数が時間と伴に減少しない場合は,検出数の最大値 をその濃度での検出数とした.また減少する場合は,指数関数でフィッティングして外挿 した最大数をその濃度での検出数とした.

(25)

第 5 章 バイオセンサー作製法の最適化

バイオセンサーの作製にあたり,光ファイバーのコア径を一定にして

ファイバーの切断方法

ファイバー切断面の洗浄溶液

SBP-

ルシフェラーゼ溶液にファイバー切断面を浸ける時間

を変え,それぞれの検出数を比較することで,これらの最適化を行った.

5.1 切断方法・洗浄溶液の比較

5.1.1

作製法

光ファイバーは

φ0.2[mm]

N.A.=0.48

のマルチモードファイバーを用いた.バイオセ ンサーは,まず光ファイバーを切断し洗浄し,

SBP-

ルシフェラーゼ溶液に浸け安置する.

作製法を比較する為に,

(

5.1)

のように

A

E

のバイオセンサーを作製した.

表中のクリーバとはファイバー切断用のカッターである.クリーバを用いれば,工作用 カッターよりファイバーの切断面が滑らかになる.

センサー 切断方法 洗浄溶液

SBP-

ルシフェラーゼに浸けた時間

[min]

A

クリーバ エタノール

30

B

クリーバ

10×TBS 30

C

カッター エタノール

30

D

クリーバ

10×TBS 30

E

カッター

10×TBS 30

5.1:

作製法比較の為のバイオセンサー作製法

5.1.2

実験方法

セットアップは

4.1(P.20)

と同じである.

作製したバイオセンサーを,

0.05%

の界面活性剤を含んだ

10×TBS

2

回洗浄し,

10×TBS

でもう

1

回洗浄した後,測定を行った.測定はバイオセンサー先端を,試料が入った試験 管に浸けて,

30[sec]

後から開始した.

1

回の計測の後,続けて計測を行う場合は,バイオ センサー先端を

10×TBS

2

回洗浄したあと続けて計測した.時間の経過とともにルシ

(26)

フェラーゼの活性が落ちてしまう可能性があるので,

A

B

C

D

E

の計測を同日 に行った.

ATP

測定前に,バックグラウンド測定用の

ATP

が含まれていない試料で

30[sec]

の測定 を最低

3

回行った.それぞれの測定間は

10[sec]

空けた.

ATP

濃度の濃い順に測定を行った.

5.1.3

実験結果

指数関数

(

4.1)

によるフィッティングの様子を

(

5.1)

に示す.

5.1:

センサー

A

の外挿の様子

(1.65×10

−4

[M])

τ = 85.2

±

0 A = (2.35

±

0)

×

10

3

y

0

= (1.91

±

0)

×

10

3

経過時間を外挿し,経過時間

0[sec]

のときの値を検出数とした.濃度依存性をグラフに したものが

(

5.2)

である.

(

5.2)

から分かるように,切断にカッターを用いたセンサーでは高い検出数を得やす いことが分かった.また洗浄法に関しては同日に測定を行った

A

B

を比較すると,エタ ノールで洗浄したセンサー

A

が,

TBS

で洗浄したセンサー

B

に比べやや検出数が高かった.

(27)

5.2:

それぞれのセンサーの

ATP

濃度に対する検出数

5.1.4

考察

カッターを用いて切断すると,クリーバーを用いたときより切断面が粗くなると考えら れる.断面が粗いことによって実効的な表面積が大きくなり,結合した

SBP-

ルシフェラー ゼの絶対数が多くなると考えられる.

洗浄法に関しては,若干エタノールでの洗浄の方が検出数は高いが,

TBS

SBP-

ルシ フェラーゼとシリコンの結合を阻害することはない為,エタノールで洗浄し十分揮発させ

た後,

10×TBS

で洗浄すると言う方法を採ることにした.

また,

B

D

は同じ方法でセンサーを作製しているにもかかわらず,検出数が大きく 異なっていた.これは,切断に関する再現性が低い事が起因していると考えられる.した がって,

SBP-

ルシフェラーゼが結合した数は,ファイバーの切り口の断面の微細構造に大 きく依存すると考えられる.

5.2 時間の比較

5.2.1

作製法

光ファイバーは

φ0.2[mm]

N.A.=0.48

のマルチモードファイバーを用いた.

SBP-

ルシ フェラーゼがコアへの結合に必要な時間を調べる為に,

(

5.2)

のように

F

I

のバイオセ ンサーを作製した.切断面の再現性を可能な限り高くするために,クリーバを用いて切断 した.

(28)

センサー 切断方法 洗浄溶液

SBP-

ルシフェラーゼに浸けた時間

[min]

F

クリーバ エタノール→

10×TBS 10 G

クリーバ エタノール→

10×TBS 30 H

クリーバ エタノール→

10×TBS 60 I

クリーバ エタノール→

10×TBS 120

5.2:

時間比較の為のバイオセンサー作製法

5.2.2

実験と結果

実験方法は

5.1.2(P.23)

と同じである.

F

H

I

は同日に計測を行った.

ATP

濃度依 存性の結果は

(

5.3)

のようになった.

5.3:

それぞれのセンサーの

ATP

濃度に対する検出数

5.2.3

考察

浸ける時間が

30[min]

のセンサー

G

の検出数が,他に比べて低かったのも,切り口の微 細な構造が他のセンサーと異なっていた為と考えられる.

30[min]

のときのデータを除い て,この結果から検出数の濃度依存性をプロットしたものが

(

5.4)

である.この結果を みると,

SBP-

ルシフェラーゼ溶液に光ファイバーを浸しておく時間は,

60[min]

以上あれ ば十分であることが分かった.ただし,

10[min]

でも比較の実験を行うときは,同じ条件 が満たされればよいので,実験によっては

SBP-

ルシフェラーゼに浸ける時間を

10[min]

した.

(29)

5.4: SBP-

ルシフェラーゼに浸けた時間に対する検出数

(30)

第 6 章 光ファイバー選択実験

シミュレーションでは,コア径

1.0[mm]

の光ファイバーのイベント数が最も高かった.

しかし,今回使用した

APD

は,コア径

0.1[mm]

のファイバーとの結合を前提に光学系が 最適化されているため,太いファイバーでは

APD

のカップリングの際にロスが生じる.コ ア径の大きなファイバーを扱うほど,特にロスが大きくなると考えられる.カップリング 部の詳細が公表されておらず,正確な集光効率を計算で求めることができない為,実際に ファイバーのコア径を変えて測定を行った.

6.1 作製法

光ファイバーは

φ0.2[mm]

φ0.4[mm]

φ1.0[mm]

N.A.=0.48

のマルチモードファイバー を用いた.バイオセンサーは,まず光ファイバーを切断し洗浄する.次に

SBP-

ルシフェ ラーゼ溶液に浸け安置する.

コア径による寄与を比較する為に,

(

6.1)

のようなバイオセンサーを作製した.

コア径

[mm]

切断方法 洗浄溶液

SBP-

ルシフェラーゼに浸けた時間

[min]

0.2

カッター エタノール→

10×TBS 60 0.4

カッター エタノール→

10×TBS 60 1.0

カッター エタノール→

10×TBS 60

6.1:

コア径比較の為のバイオセンサー作製法

6.2 実験のセットアップと方法

セットアップは

4.1(P.20)

,実験方法は

5.1.2(P.23)

と同じである.

φ0.2[mm]

φ0.4[mm]

φ1.0[mm]

は全て同日に計測を行った.

6.3 実験結果

結果は

(

6.1)

のようになった.

(

6.1)

から分かるように,

φ0.4[mm]

のファイバーでの検出数が若干高く,

φ0.2[mm]

φ1.0[mm]

は大差がない事が分かった.同様の実験を繰り返したが,総じて同様な結果が

得られた.

(31)

6.1:

それぞれのコア径の

ATP

濃度に対する検出数

6.4 考察

6.4.1

コア径の比較

先に述べたように,シミュレーション計算では,コア径が大きいほどイベント数は高かっ たが,ファイバーと

APD

のカップリングでロスが生じる.

φ1.0[mm]

ではイベント数は高 いものの,カップリングの際のロスが大きい為,

φ0.2[mm]

レベルの検出数しか得られな かったと考えられる.

また,

φ0.4[mm]

では,ロスに対してコア径による発光数の向上が大きかったため,他

のコア径に比べて高い検出数が得られたと考えられる.

6.4.2

他の実験との比較

この実験での

φ0.4[mm]

ファイバーの最高感度は,

1.65×10

−9

[M]

であった.他の実験結 果,例えばガラス棒にルシフェラーゼをつけた場合1 の最高感度は

1×10

−8

[M]

であり,ガ ラス板にルシフェラーゼをつけた場合2の最高感度は

5×10

−8

[M]

である.今回の実験での 最高感度は,それらの実験と比べて遜色のない結果となった.ただ直付け検出3の最高感

5.5×10

−11

[M]

と比べると,

2

桁低い感度となった.

固定ルシフェラーゼを使った場合,他の実験ではルシフェラーゼがついている面積が

100[mm

2

]

程度であるのに対し,本実験での

φ0.4[mm]

ファイバーに

SBP-

ルシフェラーゼ

1参考文献[9]

2参考文献[14]

3参考文献[17]

(32)

が結合している面積は

0.126[mm

2

]

である.本実験では

1

光子検出可能な

APD

を使用し ているが,他の実験は

1

光子検出不可能な

PMT(

光電子増倍管

)

を使用している.本実験 ではルシフェラーゼの絶対数は少ないが,検出器の感度向上や集光効率の向上により,検 出感度をほぼ同じレベルまで向上させていると考えられる.

6.4.3 Michaelis-Menten

の式による解析と考察 Michaelis定数の導出

この実験では,反応数

(

光子数

)

を全てカウントすることはできないので,

Michaelis- Menten

の式

(

2.3)

に検出効率

α

を掛け合せた

(

6.1)

を用いて解析を行う.

V

α

= αV

k·

[S]

K

m

+ [S] (6.1)

α = ε

·

ε

c·

ε

AP D

(6.2)

(ε :

集光効率,

ε

c

:

光ファイバーと

AP D

のカップリング効率,

ε

AP D

: AP D

の検出効率

)

この実験での

V

k

(

6.3)

と表せる.

V

k

= β

·

N

Luc

= β

·

s

·

σ

Luc

(6.3)

µ

β :

ルシフェラーゼ

1

分子あたりの最大反応速度,

N

Luc

:

ルシフェラーゼの個数

s :

コア面積,

σ

Luc

:

ルシフェラーゼの密度

(

6.1)

のプロットを,

Michaelis-Menten

の式に検出効率を掛けた

(

6.1)

でフィッティ ングすると,

(

6.2)

(

6.4)

のようになった.

フィッティングから最大の反応速度

αV

k

Michaelis

定数

K

mを求めると,それぞれの値

(

6.2)

のようになった.

コア径

[mm] 0.200

±

0.004 0.400

±

0.008 1.00

±

0.02 αV

k

[cps] (6.45±0.05)

×

10

4

(2.04±0.01)

×

10

5

(4.633±0.009)

×

10

4

K

m

[M] (4.0

±

0.1)

×

10

−5

(4.00

±

0.08)

×

10

−5

(4.00

±

0.03)

×

10

−5 表面積

[mm

2

] (3.14

±

0.09)

×

10

−2

(1.26

±

0.04)

×

10

−1

(7.8

±

0.2)

×

10

−1

6.2:

フィッティングから求まった値

他の実験4での

Michaelis

定数は

10

−6

10

−5

[M]

なので,他の実験とほぼ同じような値 となった.

4参考文献[14][16]

(33)

6.2: Michaelis-Menten

の式によるフィッティング

(φ0.2[mm])

6.3: Michaelis-Menten

の式によるフィッティング

(φ0.4[mm])

図 2.2: ルシフェリンの発光過程 2.1.2 Michaelis-Menten 機構 酵素を E ,基質を S ,中間錯体を X ,生成物を P としたときに,反応式を ( 式 2.2) と表 すことができる. E + S * )k1 k −1 X *)k2k −2 E + P (2.2) k ±n は反応係数を示す.このような酵素による反応系を Michaelis-Menten 機構と呼ぶ. また,反応が Michaelis-Menten 機構に従うとき, Michaelis-Menten の式 (
図 2.3: Michaelis-Menten の式 (V k = 10 4 [1/sec] , K m = 10 −4 [M])
図 2.6: APD の検出面付近の構造
図 3.2: プログラムのフローチャート
+7

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