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問題点と改善策

ドキュメント内 ATP 高感度検出 SBP- ルシフェラーゼによる (ページ 35-38)

第 6 章 光ファイバー選択実験 28

6.5 問題点と改善策

ここでφ0.2[mm]のカップリング効率ε(0.2)c = 0.95と仮定すると,(式6.7)(式6.8)より,

それぞれのコア径でのカップリング効率をε(0.4)c = 0.753,ε(1.0)c = 0.0273と見積もること ができた.

φ0.4[mm]のカップリング効率は75[%]程度と十分大きいが,φ1.0[mm]では3[%]未満

となった.また,αが求まったことにより,最高反応速度Vkを求めることができる.求め た値を(表6.3)にまとめる.

コア径[mm] 0.200±0.004 0.400±0.008 1.00±0.02

ε(φ)c

ε(0.2)c

1 0.793 0.0288

εc[%] 95(仮定) 75±2 2.7±0.1

α (2.59±0.08)×10−2 (2.056±0.005)×10−2 (7.5±0.3)×10−4 Vk[1/sec] (2.49±0.08)×106 (9.95±0.05)×106 (6.2±0.2)×107

表6.3: フィッティングパラメータとカップリング効率

ルシフェラーゼ1分子あたりの最高反応速度

次にαVkが求まったことにより,ルシフェラーゼ1分子あたりの最大反応速度βを求 めることができる.広島大学大学院先端物質科学研究科分子生命機能科学専攻細胞工学講 座研究室において,σLuc = 15×10−12[mol/cm2] = 9.03×1010[1/mm2]という結果が得 られたので,その結果をそのまま適用すると,

β = 8.76×10−4[1/sec] (6.9)

という値が得られる.

この反応の場合,β1 = 8.76×104[sec]がターンオーバー(1つのルシフェリンがルシフェ ラーゼ内で発光してから,発光が可能な状態まで戻る時間)と考えられる.

また他の実験5によれば,β = 0.125[1/sec]であり,本実験のβと2桁異なった結果と なった.この2桁の違いも含めて,今回の実験の問題点と改善点について次節で述べる.

βの導出において,仮定が現実と一致していなかった.

固定ルシフェラーゼを用いる場合は通常の溶液中とは異なるため,ターンオーバーレート が低くなる可能性を否定できないが,今回は2番目の可能性が高いと思われる.導出の仮定 については,σLucが今回の実験とは異なっていた可能性がある.σLuc= 9.03×1010[1/mm2] は,細胞工学講座研究室において実際に測定されたものである.測定条件・SBP-ルシフェ ラーゼの結合条件の違いから,σLucの値が2桁程度変わってくる可能性は少なくはない.

σLucの値が本実験より2桁程度高くなる条件を見出すことができれば,その条件により感 度の向上が見込める.具体的には,SBP-ルシフェラーゼをガラスに結合させる際の溶液 のpHを上げることで,結合をしやすくなることが確認されている.

また,ターンオーバーレート低下が別の方法などで確認されたときには,ターンオー バーを速める酵素が発見されているため,それを使用することで改善が見込める.

6.5.2 カップリング効率について

φ1.0[mm]ではファイバーとAPDのカップリング効率は3[%]未満であった.φ1.0[mm]

ファイバーのコア面積の大きさを活かすためには,APDとのカップリング効率を改善し なくてはならない.

しかしながら,ルシフェラーゼの絶対数の比が面積比になっていない可能性もある.そ の場合は,論理的にφ1.0[mm]ファイバーのコアに,ルシフェラーゼが十分結合していな いということになる.バイオセンサー作製の最適化はφ0.2[mm]ファイバーで行っており,

φ0.4[mm]φ1.0[mm]ファイバーでは最適な条件でセンサーを作製していなかった可能性

は否定できない.

カップリング効率を向上させる方法としては,カップリングレンズを用いて,φ1.0[mm](N.A.=0.48) ファイバーからφ0.2[mm](N.A.=0.22)ファイバーへのカップリングをする方法がある.(図

6.5)のようにφ1.0[mm]側をバイオセンサーとし,φ0.2[mm]側をAPDとカップリングさ

せる.

図6.5: カップリングレンズを用いたファイバーカップリング

カップリングレンズを用いたファイバー同士のカップリング効率は,最大で50[%]程度 である.今回のφ1.0[mm]とAPDとのカップリングロス(〜3[%])を考えれば,大幅な感 度の向上が見込める.

ルシフェラーゼの個数比と面積比が異なっている場合は,φ0.4[mm]φ1.0[mm]ファイ バーにおいてもセンサー作製法の最適化を行う必要がある.それにより,σLucを大幅に向 上できる可能性が高い.

6.5.3 固定ルシフェラーゼについて

本実験は他の固定ルシフェラーゼによる実験と比較すると,ルシフェラーゼの絶対数が 少ないが,集光効率や検出器の検出効率で絶対数の少なさを補っていると考えることがで きた.逆を言えば,バイオセンサーの最適化によってSBP-ルシフェラーゼの絶対数を増 加させ,最高感度の向上が見込めることになる.

しかしながら,この固定ルシフェラーゼを用いた方法は,検出数を下げかねない次の要 因を含んでいる.固定ルシフェラーゼを用いていない場合は,ルシフェラーゼ・ATPとも に溶液中を移動しているので,ルシフェラーゼがATPを捕捉する時間は短くて済むと考 えられる.しかし,ルシフェラーゼを固定すると,ATPしか自由に移動することができ ず,固定していない場合よりATPを捕捉するまでに時間がかかってしまう.ATPの濃度 が低い場合には,結果的に検出数のピーク値が下がってしまうことが考えられる.

仮にこの寄与が大きいのであれば,ATPの局所的な高密度領域を人工的に作り出すな どの改善策が必要になる.

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