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第 6 章 光ファイバー選択実験 28

6.4 考察

6.4.1 コア径の比較

先に述べたように,シミュレーション計算では,コア径が大きいほどイベント数は高かっ たが,ファイバーとAPDのカップリングでロスが生じる.φ1.0[mm]ではイベント数は高 いものの,カップリングの際のロスが大きい為,φ0.2[mm]レベルの検出数しか得られな かったと考えられる.

また,φ0.4[mm]では,ロスに対してコア径による発光数の向上が大きかったため,他

のコア径に比べて高い検出数が得られたと考えられる.

6.4.2 他の実験との比較

この実験でのφ0.4[mm]ファイバーの最高感度は,1.65×10−9[M]であった.他の実験結 果,例えばガラス棒にルシフェラーゼをつけた場合1 の最高感度は1×10−8[M]であり,ガ ラス板にルシフェラーゼをつけた場合2の最高感度は5×10−8[M]である.今回の実験での 最高感度は,それらの実験と比べて遜色のない結果となった.ただ直付け検出3の最高感 度5.5×10−11[M]と比べると,2桁低い感度となった.

固定ルシフェラーゼを使った場合,他の実験ではルシフェラーゼがついている面積が 100[mm2]程度であるのに対し,本実験でのφ0.4[mm]ファイバーにSBP-ルシフェラーゼ

1参考文献[9]

2参考文献[14]

3参考文献[17]

が結合している面積は0.126[mm2]である.本実験では1光子検出可能なAPDを使用し ているが,他の実験は1光子検出不可能なPMT(光電子増倍管)を使用している.本実験 ではルシフェラーゼの絶対数は少ないが,検出器の感度向上や集光効率の向上により,検 出感度をほぼ同じレベルまで向上させていると考えられる.

6.4.3 Michaelis-Mentenの式による解析と考察 Michaelis定数の導出

この実験では,反応数(光子数)を全てカウントすることはできないので, Michaelis-Mentenの式(式2.3)に検出効率αを掛け合せた(式6.1)を用いて解析を行う.

Vα= αVk·[S]

Km+ [S] (6.1)

α=ε·εc·εAP D (6.2)

(ε:集光効率,εc:光ファイバーとAP Dのカップリング効率,εAP D :AP Dの検出効率) この実験でのVkは(式6.3)と表せる.

Vk=β·NLuc=β·s·σLuc (6.3) µβ:ルシフェラーゼ1分子あたりの最大反応速度,NLuc:ルシフェラーゼの個数

s:コア面積,σLuc:ルシフェラーゼの密度

(図6.1)のプロットを,Michaelis-Mentenの式に検出効率を掛けた(式6.1)でフィッティ ングすると,(図6.2)〜(図6.4)のようになった.

フィッティングから最大の反応速度αVk,Michaelis定数Kmを求めると,それぞれの値 は(表6.2)のようになった.

コア径[mm] 0.200±0.004 0.400±0.008 1.00±0.02 αVk[cps] (6.45±0.05)×104 (2.04±0.01)×105 (4.633±0.009)×104

Km[M] (4.0±0.1)×10−5 (4.00±0.08)×10−5 (4.00±0.03)×10−5 表面積[mm2] (3.14±0.09)×10−2 (1.26±0.04)×10−1 (7.8±0.2)×10−1

表 6.2: フィッティングから求まった値

他の実験4でのMichaelis定数は10−6〜10−5[M]なので,他の実験とほぼ同じような値 となった.

4参考文献[14][16]

図6.2: Michaelis-Mentenの式によるフィッティング(φ0.2[mm])

図6.3: Michaelis-Mentenの式によるフィッティング(φ0.4[mm])

図6.4: Michaelis-Mentenの式によるフィッティング(φ1.0[mm])

APDとのカップリング効率

φ0.2[mm]のときの光ファイバーとAPDのカップリング効率の値と,φ0.2[mm]φ0.4[mm]

φ1.0[mm]の固定ルシフェラーゼの絶対数の比は表面積比になることの2つを仮定して,不

明であるφ0.4[mm]φ1.0[mm]のカップリング効率を求めることができる.

(式6.2)(式6.3)より,

αVk=ε·εc·εAP D·β·s·σLuc (6.4)

εc= αVk

ε·εAP D·β·s·σLuc (6.5) εεAP DβσLucがコア径によらず一定とすると,それぞれのコア径でのカップリング効 率ε(φ)c は,(式6.6)と表される.シミュレーション計算よりεはコア径によらず0.042,技 術資料より650[nm]の光においてεAP D = 0.65である.

ε(φ)c =k·αVk(φ) s(φ)

µ

k= 1

ε·εAP D·β·σLuc

(6.6)

ε(0.4)c ε(0.2)c =

αVk(0.4) s(0.4) αVk(0.2)

s(0.2)

= 0.793 (6.7)

ε(1.0)c

ε(0.2)c =

αVk(1.0) s(1.0) αVk(0.2)

s(0.2)

= 0.0288 (6.8)

ここでφ0.2[mm]のカップリング効率ε(0.2)c = 0.95と仮定すると,(式6.7)(式6.8)より,

それぞれのコア径でのカップリング効率をε(0.4)c = 0.753,ε(1.0)c = 0.0273と見積もること ができた.

φ0.4[mm]のカップリング効率は75[%]程度と十分大きいが,φ1.0[mm]では3[%]未満

となった.また,αが求まったことにより,最高反応速度Vkを求めることができる.求め た値を(表6.3)にまとめる.

コア径[mm] 0.200±0.004 0.400±0.008 1.00±0.02

ε(φ)c

ε(0.2)c

1 0.793 0.0288

εc[%] 95(仮定) 75±2 2.7±0.1

α (2.59±0.08)×10−2 (2.056±0.005)×10−2 (7.5±0.3)×10−4 Vk[1/sec] (2.49±0.08)×106 (9.95±0.05)×106 (6.2±0.2)×107

表6.3: フィッティングパラメータとカップリング効率

ルシフェラーゼ1分子あたりの最高反応速度

次にαVkが求まったことにより,ルシフェラーゼ1分子あたりの最大反応速度βを求 めることができる.広島大学大学院先端物質科学研究科分子生命機能科学専攻細胞工学講 座研究室において,σLuc = 15×10−12[mol/cm2] = 9.03×1010[1/mm2]という結果が得 られたので,その結果をそのまま適用すると,

β = 8.76×10−4[1/sec] (6.9)

という値が得られる.

この反応の場合,β1 = 8.76×104[sec]がターンオーバー(1つのルシフェリンがルシフェ ラーゼ内で発光してから,発光が可能な状態まで戻る時間)と考えられる.

また他の実験5によれば,β = 0.125[1/sec]であり,本実験のβと2桁異なった結果と なった.この2桁の違いも含めて,今回の実験の問題点と改善点について次節で述べる.

ドキュメント内 ATP 高感度検出 SBP- ルシフェラーゼによる (ページ 31-35)

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