• 検索結果がありません。

非線形光学定数の相関に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "非線形光学定数の相関に関する研究"

Copied!
88
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

0

博士学位論文

固体中のイオン拡散と

非線形光学定数の相関に関する研究

2012 年 3 月

熊本大学大学院自然科学研究科

池田 祥典

(2)

1

概要

イオン導電体におけるイオン伝導メカニズムと光学的性質の相関を明らかに することは,学術面と応用面の双方からとても重要である.固体中のイオン伝導 を化学結合論の観点から説明する結合揺らぎモデルによると,イオン伝導では原 子周りの電子雲の変化のしやすさが重要な役割を果たす.このモデルによって,

イオン伝導における光学的性質の重要性が示される.イオン導電体の光学的性質 については多くの議論がなされてきている.しかしながら,光学的性質の一つで ある非線形光学現象とイオン伝導の関係についての議論は全く行われていない.

そこでこの論文では固体中のイオン拡散と非線形光学現象についての相関を調 べることで,未だ十分な理解が得られてないイオン伝導をより深く理解すると共 に,新しい学術研究の領域を拓くことを目指す.また,この研究は,固体中のイ オン拡散によって光学的性質を操作するイオン導電体の新たな応用につながる 可能性を示唆している.

(3)

2

目次

1

章:はじめに ... 4

1. 1.

非線形光学 ... 4

1. 2.

超イオン導電体 ... 6

1. 3.

結合揺らぎモデル ... 10

1. 4.

本論文の目的 ... 11

参考文献 ... 12

2

章:非線形光学定数のモデルとイオン伝導 ... 13

2. 1.

はじめに ... 13

2. 2. Miller rule

による解析 ... 14

2. 2. 1. Miller rule ... 14

2. 2. 2. AgX-Ag

2

O-B

2

O

3ガラスにおける

Miller rule

とイオン伝導度の相関 ... 16

2. 2. 3.

まとめ ... 20

2. 3.

結合軌道論による解析 ... 21

2. 3. 1.

結合軌道論 ... 21

2. 3. 2. R

2

O-B

2

O

3ガラス(R= Li, Na, K, Rb, Cs, Ag)中の

R-O

結合の三次の感受率 ... 24

2. 3. 3. R

2

O-B

2

O

3ガラス(R=Rb, Cs, Ag)の三次の感受率の算出 ... 28

2. 3. 4. Ag

2

O-B

2

O

3ガラスが示す結合軌道論からの逸脱 ... 31

2. 3. 5.

まとめ ... 36

2. 4. BGO

モデルによる解析 ... 37

2. 4. 1. BGO

モデル ... 37

2. 4. 2. BGO

モデルと

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3ガラスの非線形光学定数 ... 38

2. 4. 3.

まとめ ... 42

2. 5. Sheik – Bahae

の式による解析 ... 43

2. 5. 1. Sheik – Bahae

の式 ... 43

2. 5. 2. Sheik – Bahae

の式とフッ素イオン導電体 ... 43

2. 5. 3. Sheik – Bahae

の式と超イオン導電ガラス ... 47

2. 5. 4.

まとめ ... 49

2. 6.

おわりに ... 50

参考文献 ... 51

(4)

3

3

章:イオン伝導と非線形光学定数のモデル ... 53

3. 1.

はじめに ... 53

3. 2.

外場に依存する電気感受率 ... 53

3. 3.

イオンの活性化エネルギーと電場に依存する電気感受率 ... 56

3. 4. NaCl

型結晶が持つ非線形電気感受率の温度依存性 ... 60

3. 5.

低周波数領域における超イオン導電体の振る舞い ... 62

3. 6.

まとめ ... 67

参考文献 ... 68

4

章:カルコゲナイドガラスの構造緩和と非線形光学定数の相関 ... 69

4. 1.

はじめ ... 69

4. 2.

ガラスの粘性挙動 ... 70

4. 3.

結合強度―配位数揺らぎ (BSCNF) モデル ... 71

4. 4.

カルコゲナイドガラスの構造緩和パラメータと非線形光学定数の相関 ... 73

4. 5.

カルコゲナイドガラスの構造緩和パラメータと平均電気陰性度の相関 ... 75

4. 6.

酸化物ガラスの構造緩和パラメータと非線形光学定数の相関 ... 78

4. 7.

まとめ ... 81

参考文献 ... 82

5

章:総括 ... 84

5. 1.

本研究のまとめ ... 84

5. 2.

今後の課題 ... 85

謝辞 ... 87

(5)

4

1 章:はじめに

1.1.

非線形光学

物質に電場を印加すると分極

P

が生じる.印加電場が弱い場合,分極は印加さ れた電場

E

に比例する.この関係は線形応答と呼ばれ,次のように表される.

E P  

(1)

. (1.1)

しかしながら,強い光,例えば高出力レーザーのような光を物質に入射した場合 には,分極は線形の比例関係から逸脱し,非線形性な応答を示すようになる

[1-4]

この場合,分極

P

 

( 1 ) E ( 2 ) E 2 ( 3 ) E 3

P    (1.2)

となり,分極に電場

E

n

乗に比例する項が現れる.ここで

χ

(n)

n

次の感受率 を表す.

今,物質に異なる

ω

1

ω

2

2

つの周波数を持つ光が入射した場合を考える.

t E

t E

t

E ( )  1 cos  12 cos  2

. (1.3)

二次の非線形光学現象に注目すると,出力は

   

  

 



 

 

t t

E E

t E

t t E

E

) cos(

) cos(

2 cos 2 1

2 1 cos 2 1

1 )

(

2 1 2

1 2

1

2 2

2 1

2 1 )

2 2 (

) 2 (

 

(1.4)

となる.

1

2のように入射した周波数の

2

倍の周波数を持つ光が出力される 現象を第

2

高調波発生と呼ぶ.一方,

1

2

)

のように入射した光の周波数の和が 出力される現象を和周波発生,

1

2

)

のように入射した光の周波数の差が出力さ れる現象を差周波発生と呼ぶ.

(6)

5

次に三次の非線形光学現象に注目する.簡単のため,物質に

t E

t

E ( )  sin 

(1.5)

の光が入射した場合を考える.このとき,分極

P

  

 

 

E t E t E t t

P       sin 3 

4 sin 1

4 2 3

cos 1

sin

(2) 2 (3) 3

) 1

(

(1.6)

となる.E3の項から周波数

ω

の光が誘起されることが分かる.ここで

のように,入射した周波数の

3

倍の周波数を持つ光が放出される現象を第

3

高調 波発生という.また

ω

の項に注目すると,

) 4 (

sin 3 4

3

(3) 2 (1) (3) 2

) 1

(

E E t E E t

P

 

 

 

 

 

     

(1.7)

となる.ここで電場に依存する感受率

χ(E)を

2 ) 3 ( )

1 (

4 ) 3

( E   E

   (1.8)

と定義する.屈折率

n

と電気感受率

χ

の関係から

2 2 0

) 3 ( 0

1 3 1

) ( 4 )

( E

n n E

E

n      

(1.9)

となる.

χ

(3)

n

0より

n(E)

I n n n E

n E

n

2 2

0 ) 3 (

0

2

) 3

(    

 

 

 

(1.10)

となる.ここで

n

2は非線形屈折率と呼ばれる.三次の非線形光学過程から誘導さ れる,屈折率が光電場の二乗

E

2,又は光強度

I

に比例する現象は光カー効果と呼 ばれる.この効果は,結晶に入射する光の強度分布によって,屈折率の大きさに も分布を持たせることができる.レーザー光の強度は通常,中央が強く,中央か ら離れるにつれて弱くなるガウス分布の様な広がりを持つ.

n

2の大きな物質にレ ーザーを入射した場合,屈折率はガウス分布のように中央部が大きく,周辺部が 小さくなる.そのため凸レンズ的振る舞いを示し,レーザー光の集光が行なわれ る.この現象は自己収束現象と呼ばれ,非線形光学定数の測定に用いられる.光

(7)

6

ではなく,非線形光学素子に電場をかけた場合に生じる屈折率変化は,電気光学 カー効果と呼ばれる.

以上のように,非線形応答では入射した光の周波数と異なる周波数を持つ光が 放出される.この他にも,光パラメトリック過程と呼ばれる,和周波発生の逆過 程の現象があり,高調波発生や和周波発生などと共に,レーザー光で使用できる 波長領域の拡張に使用されている.電気光学カー効果は,電場によって焦点距離 が変化するため,焦点可変レンズとして利用されている.また,光カー効果は,

高速の屈折率変化を用いた光高速スイッチや光高速シャッターなどにも利用さ れている.

最近では,非線形光学特性の大きな物質の探査のために,様々な実験が行なわ れ,理論が展開されている.非線形光学定数を見積もるための理論も,バンド理 論や結合論の観点から多数提案されている.提案されている幾つかの理論の紹介 は第

2

章で行う.

1.2.

超イオン導電体

固体中をイオンが高速で拡散する物質群はイオン導電体と呼ばれる.

1839

年に ファラデーが固体中のイオン拡散を観測してから,百数十年経過した現在までに,

様々な基礎研究や応用研究が行なわれてきた.イオン導電体の特徴は融点より低 い温度において高いイオン伝導度を発現する点にある.イオン導電体の中でも,

特に大きなイオン伝導度を持つ物質,目安としてはイオン伝導度が

10

-3

S/cm

を超 える物質を超イオン導電体と呼ぶ.超イオン導電体のイオン伝導度は時に,液体 状態でのイオン伝導度を超える場合もある.

イオン導電体において,電荷を運ぶイオンは可動イオンと呼ばれる.可動イオ ンの種類も多岐に渡り,銀イオン,銅イオン,リチウムイオン,ナトリウムイオ ン,アルミニウムイオン,酸素イオン,フッ素イオン,塩素イオンなどがある.

このようにバラエティーに富んだ可動イオンをもつイオン導電体は,その可動イ オンの違いによって様々な応用が行なわれている.身近な例としては,二次電池

(8)

7

や燃料電池,ガスセンサー等が挙げられる.イオン導電体とイオン拡散現象を研 究対象とする研究領域は固体イオニクスと呼ばれ,Fig. 1.1 に示すように多分野 にまたがる研究領域をもつ.そのため,イオン導電体は学術的観点と応用的観点 の双方から盛んに研究されている.

代表的な超イオン導電体に銀イオンが固体中を拡散する

AgI

がある.

Fig. 1.2

Ag

ハライドが持つイオン伝導度の温度依存性を示す[5].AgCl,AgBr と異な り,

AgI

146

℃で急激にイオン伝導度が上昇していることが分かる.このとき,

AgI

は低温相の

β

相から高いイオン伝導度を示す高温相の

α

相に相転移する.α 相でのイオン伝導度は融点付近で,固体であるにもかかわらず,液体中のイオン 伝導度より大きな値をとる.

Fig. 1.1. Research areas of solid state ionics.

(9)

8

Fig. 1.2. Behaviour of ionic conductivity in Ag halides [5].

また,AgIのように,転移によって高いイオン伝導度を持つようになる物質の 他に,超イオン導電ガラスやイオン導電性ポリマーのように,室温でも高いイオ ン伝導度を持つ物質も数多く存在する.参考として

Fig. 1.3

に様々な形態のリチ ウムイオン導電体が示すイオン伝導度の温度変化を示す[6].

Fig. 1.2

Fig. 1.3

示すように,物質のイオン伝導度は,温度上昇と共に上昇していく.多くのイオ ン導電体のイオン伝導度

σ

i

 

 

 

K T

E

B a i

0

exp

 , (1.11)

に従う.ここで

σ

0は定数,

K

Bはボルツマン定数,

E

aは活性化エネルギーである.

この式はアレニウスの式と呼ばれ,この式に従う物質群をアレニウス型のイオン 伝導を示す物質と呼ぶ.一方,

Eq. (1.11)に従わない振る舞いを示すものを非アレ

ニウス型イオン導電体と呼ぶ.このように,イオン導電体には様々な可動イオン 種をもつものが存在し,イオン伝導度の温度依存性も物質によって異なる.

(10)

9

なぜ固体中を電子より圧倒的にサイズが大きいイオンが拡散していくのか.そ の理論的背景を理解するために,固体中のイオン拡散を説明する数多くのモデル が提案されている.一般的に,イオン輸送のメカニズムは様々な要因が重なり合 った結果として生じるものであることが分かっている.本研究では固体中のイオ ン伝導と構造,化学結合を結びつける『結合揺らぎモデル

[7]

』を用いて,物質の 非線形光学現象とイオン拡散についての開拓的な議論を行う.

Fig. 1. 3. Temperature dependence of the ionic conductivity in typical lithium ion conductors including crystals (C), glasses (G), liquid(L), ionic liquid (IL), polymers (P) and gels

(Ge)[6].

(11)

10

1.3.

結合揺らぎモデル

超イオン導電体がなぜ融点より遥かに低い温度で大きなイオン導電性を示す のか,この特異な性質を化学結合の観点から説明するモデルの一つとして,結合 揺らぎモデル[7]が提案されている.このモデルでは,イオンを動かす力場は局所 的な化学結合の不安定性,例えば,共有性結合からイオン性結合への変化によっ て生じると考える.代表的な超イオン導電体である

CuI

CuBr,AgI

がもつ

Phillips

のイオン度

f

iは,共有性が支配する

4

配位とイオン性が支配する

6

配位の

境界線

f

i

=0.785

付近に分布する.AgI を例に考える.この物質は

146℃で低温相

β

相から高温相の

α

相に相転移し,高いイオン伝導度を示すようになる.

146℃

以上では,

Fig. 1.4

で示すように,通常

4

配位である

Ag

イオンが超イオン導電相 では結合の揺らぎによって

6

配位の位置も占めるようになる.Fig. 1.4に示す高 温相の構造の観点から,Ag イオンが取りうる多くの準安定位置があることが分 かる.Ag イオンはこれらの位置を渡り歩き,高いイオン伝導を生み出すと考え ることもできる.

結合の不安定性により生じた可動イオンは,周囲の電荷配置に影響を及ぼし,

分極を誘起する.この分極は近隣原子に影響を及ぼし,更なる結合の不安定性が 連続的に誘起される.以上のような状況が固体中の広い範囲に広がると,イオン は相関をもって運動するようになり,高いイオン伝導度をもたらすようになる.

Fig. 1.5

は,この概念を図式化したものである[9].

Fig. 1.4. Available sites for silver ions in AgI and the bond fluctuations

(12)

11

Fig. 1.5. Concept of the bond fluctuation model [9].

上記のモデルから,イオンの伝導と電子分極には密接な関係があることがわか る.故に,イオン伝導についての理解を深めることを目的とするとき,イオン導 電体の分極について考察を行うことはとても大切である.また,イオン伝導は低 周波数領域での現象であるが,結合揺らぎに関与する電子は高周波数領域の作用 にも応答する.従って,イオン導電体の光学的性質はイオン伝導と密接に関係す ることが予想される.

1.4.

本論文の目的

結合揺らぎモデルから,イオン伝導と電子分極に相関があることが予測され,

イオン導電体の光学的性質については多くの議論がなされてきている.しかしな がら,光学的性質の一つである非線形光学現象とイオン伝導の関係についての議 論は全く行われていない.そこで本論文では,固体中のイオン拡散と非線形光学 現象についての相関を調べることで,未だ十分な理解が得られてないイオン伝導 をより深く理解することを目指す.

(13)

12

参考文献

[1]. 中西

八郎, 中村 新男, 小林 孝嘉, 梅垣 真祐 (編集), 有機非線形光学材料

の開発と応用, シーエムシー出版 (1991)

[2].

黒沢宏, 入門 まるわかり非線形光学, オプトエレクトロニクス社 (2008)

[3]. 黒田和夫,

非線形光学, コロナ社 (2008)

[4]. 平尾一之,

那須弘行, 田中勝久, 非晶質フォトニクス材料, 裳華房 (2003)

[5].

星埜禎男

,

超イオン導電体 物理学最前線

28,

共立出版

(1991)

[6]. J. Kawamura, R. Asayama, N. Kuwata, O. Kamishima, Physics of Solid State Ionics, Eds. T.Sakuma, H.Takahashi, (Research Signpost, Kerala, 2006) 193.

[7]. M. Aniya, Solid State Ionics 50 (1992) 125.

[8]. J. C. Phillips, Bonds and Bands in Semiconductors (Academic Press, 1973).

[9]. M. Aniya, Rec. Res. Devel. Phys. Chem. Solids 1 (2002) 99.

(14)

13

2 章:非線形光学定数のモデルとイオン伝導

2.1.

はじめに

アモルファス物質のように光学的等方性の高い物質は,反転対称性を持つため,

二次の感受率

χ

(2)が観測されない場合が多い.しかしながら三次の感受率

χ

(3)は気 体,液体,固体に関わらずあらゆる物質で観測される.そのため,ガラスが持つ 最も大きな非線形光学定数は

χ

(3)となる.よって,一般的なガラスの分極を考え る際には

χ

(1)

χ

(3)に注目すればよい.

3 ) 3 ( )

1

( E E

P    

(2.1)

この章では,非線形光学定数の理論的記述で用いられる

Miller rule [1],結合軌

道論 [2],Boling, Glass, Owyoungらのモデル(BGOモデル) [3],Sheik-Bahaeの式

[4]を使ってイオン導電体の非線形光学定数について議論を行う.

(15)

14

2.2. Miller rule

による解析[5]

2.1.1. Miller rule

結合揺らぎモデルから,超イオン導電体は大きな電子分極率を持つことが予測 される

[6]

.この予測に基づき,固体中のイオン拡散と非線形光学定数の相関に関 する研究を行った.まず超イオン導電体の非線形光学定数が他の物質と比較して どのような性質を示すかを説明する.

χ

(1)

χ

(3) の間には,Miller rule [1]と呼ばれる半経験的な関係がある.

  ( 1 ) 4

) 3

(  

  (esu), (2.2)

ここで

α

は定数である.この関係は結晶における三次の感受率の見積もりによく 使われる.以下では,数多くの実験から求められているホウ酸ガラスの

χ

(1)

χ

(3) を,Miller rule を用いて比較し,超イオン導電ガラスとその他のガラスの性質の 違いを考察することで,超イオン導電ガラスの特徴を取り出す.

Fig. 2.1

はホウ酸ガラスの

χ

(1)

χ

(3)の関係を示す.光学定数の実験データは[7-9]

から得た.本研究において,Fig. 2.1

Miller

係数

α

を使うことで分析される.

図から,多くのホウ酸ガラスで

α

の値は

1×10

-10

3×10

-10の間にあることが分か る.しかしながら,高いイオン伝導を示すガラスには次の性質がある.

1. R

2

O-B

2

O

3

(R=Li,Na,K,Rb,Ag)ガラスの χ

(3)は他のガラスより小さい.し かしながら,これらのガラスは大きな

α

の値を持ち,Miller rule から逸脱す る.それに加え,これらのガラスがカチオン導電体であることは興味深い.

2.

超イオン導電ガラスである

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3 ガラス(X=Cl,Br,I)は高い非線 形光学定数を持ち,加えて大きな

α

を持つ傾向がある.AgX-Ag2

O-B

2

O

3ガラ スの

α

はドープされた

Ag

ハライドの量と共に増加する.またその増加率は

Cl<Br<I

の順に大きくなる.これらの傾向は AgX-Ag2

O-B

2

O

3ガラスのイオ

ン伝導度[10]で観察されている傾向との類似点が多い.

(16)

15

(17)

16

10 -4

2 4 6

10 -3 8 2 4 6

10 -2 8

i (298K)

(c m/ S)

10 -13

2 3 4 5 6 7 8 9

10 -12

2 3 4 5 6 7 8 9

10 -11

(3) (esu)

(AgCl)x-(Ag2O-B2O3)(1-x) (AgBr)x-(Ag2O-B2O3)(1-x) (AgI)x-(Ag2O-B2O3)(1-x)

x=0.5

x=0.4

x=0.5

x=0.3 x=0.4

x=0.3

x=0.3

x=0.4

Fig. 2.2. Relationship between the ionic conductivity σ

i

[10] and the third-order susceptibility χ

(3)

[9] in AgX-Ag

2

O-B

2

O

3

glasses.

Fig. 2.1

は,超イオン導電体の結合揺らぎモデルの予想通り,超イオン導電ガ

ラスは大きな非線形光学定数を持つことを示している.

Fig. 2.2

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3

ガラスが示す三次の感受率

χ

(3)とイオン伝導度

σ

iの関係を示す.

Fig. 2.2

から

σ

i 増加と共に

χ

(3)も増加することが確認できる.

2.2.2. AgX-Ag

2

O-B

2

O

3ガラスにおける

Miller rule

とイオン伝導度の相関

非線形光学現象は高い周波数帯での物理現象であるため,電子による寄与が大 き い . し か し な が ら

Ramesh

Srinivasan

は 電 子

-

イ オ ン 相 互 作 用 を 含 む

Three-Dimensional Two-Coupled Anharmonic Oscillator (AHO) Model

を提案し,χ(3) を導出した [11].

(18)

17

 

 

 

 

i ) 1 ( i e

) 1 ( e 3

e 3

3 )

1 ( e 3 ) 0

3

(

12 ( ) ( ) ( )

)

( e

B e

A e

N

 

 

, (2.3)

ここで下付き

e

i

は電子とイオンからの寄与であることを表す.e は電荷,N は単位体積当たりの電子の数である.Aは電子が感じる調和ポテンシャルからの ずれ(非調和ポテンシャル項)を与え,Bはイオン変位に影響する電子-イオン相互 作用を表す.光学的な周波数帯では,通常

χ

i (1)

<< χ

e (1)であるため,Bを含んでい る項は無視される.しかしながら,異なった結合が共存するとき,Bの値は増大 することが確認されている[11].例えば,

KCl

Cd

2+

Mn

2をドープした物質が 示す

B

の値は,KCl単体が示す

B

の値よりも

10

5倍大きい.この振る舞いは,結 晶中に異なる結合形態が形成されることで生じた結合の揺らぎが,周辺の電荷配 置に影響を与え,電子-イオン相互作用を表す

B

項が増加した結果であると考え られる.

AHO

モデルから,結合の不安定性によって

B

が増加し,

Miller rule

から のずれが生じることが分かる.

Fig. 2.1

Fig. 2.2

に示された結果を解析するために,Miller ruleからの逸脱が どのように AgX-Ag2

O-B

2

O

3 ガラスに影響を与えるか,化学結合論の観点から議 論しなければならない.しかしながら,ガラスのようなアモルファス物質におけ る結合性の議論は困難を伴う.なぜならば,ガラスは多元素,構造不規則性,組 成依存性を持つため,一意的にガラス中に存在する結合のイオン度を決定するこ とができないからである.この困難を克服するため,平均電気陰性度

χ

m を用い て議論を行う.

χ

mはガラスの化学組成と構成比から計算され,超イオン導電ガラ スの中距離構造やイオン伝導度

σ

iに影響を与えることが示されている[12].

A, B,

C, …を元素, x, y, z,…をそれらの組成比とし,ガラスの化学組成式が A

x

B

y

C

z

…と

書ける場合,平均電気陰性度

χ

m

A B C1 /( )

m

x y zz

y

x  

   

 (2.4)

で与えられる.

Eq. (2.4)は Sanderson

によって提案された二元系における電気陰性 度の平均化[13]の操作を,多元系に拡張したものである.この原理はイオン-共有 性結晶における結合の形成を理解するために非常に有効であることが示されて

(19)

18

いる.

Fig. 2.3

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3ガラスの

α

χ

mの関係を示す.Fig. 2.3から

χ

mの減 少によって,

α

が増加することがわかる.これは

χ

mの減少によって,電子の束縛 力が弱くなり,そのために生じた電子雲の変化のし易さの増加に起因すると理解 できる.言い換えると,

χ

mの減少によって分極し易い環境が物質に備わったこと を表す.また

Ag

ハライドの濃度の増加に伴い,χmの減少が生じている点も興味 深い.

Ag

ハライド結晶は高い銀イオン伝導度を持つことで知られている物質である.

Ag

ハライド結晶では,共有性とイオン性の結合性が共存していることが確認さ れている.そのため,Ag ハライドのドープによってガラス中に結合の揺らぎが 生じるサイトが増加する.Ag ハライドのドープによってイオン伝導し易い環境 が形成されるということは,電子雲の変化のし易さが増加し,電子-イオン間の 相互作用も増加することが予想できる.

8

6

4

2

0

 (10 -1 0 esu)

2.7 2.6

2.5 2.4

2.3

m

(AgCl)

x

-(Ag

2

O-B

2

O

3

)

(1-x)

(AgBr)

x

-(Ag

2

O-B

2

O

3

)

(1-x)

(AgI)

x

-(Ag

2

O-B

2

O

3

)

(1-x)

x=0.5

x=0.4

x=0.5

x=0.3

x=0.4

x=0.4 x=0.5 x=0.3 x=0.3

Figure 2.3. Relationship between the average electronegativity χ

m

and the Miller

coefficient α in AgX-Ag

2

O-B

2

O

3

glasses.

(20)

19

一方,

AHO

モデルで論じられたように,

Miller

係数

α

の増加は電子ポテンシャ ルの非調和項

A

と電子-イオン相互作用の項

B

の値の増加に起因する.つまり

α

χ

mの減少で増加し,

Fig. 2.3

はこのことを確認する.

Fig. 2.4

AgX - Ag

2

O-B

2

O

3

ガラスの

σ

i

α

の関係を示す.高いイオン伝導度を持つガラスが大きな

Miller

数を持つことが分かる.これはこれまでの議論の結果と矛盾せず,イオン伝導し 易い物質は大きな非線形光学定数を持つことを示している.

しかしながら誤解を避けるために,

Fig. 2.4

で示された傾向は全てのガラスで 成り立つ訳ではない事を言及しておきたい.これまでの考察から,

Fig. 2.3

Fig.

2.4

に示されたような傾向を示すガラスは,大きい

B

の値を持っていると予想で きる

Ag

ハライドを含むガラス,すなわち結合揺らぎの過程によって特徴づけら れるガラスであると言える.

8

6

4

2

0

 (10 -1 0 esu)

10 -4

2 3 4 5 6 7

10 -3

2 3 4 5 6 7

10 -2

i (298K) (s/cm)

(AgCl)

x

-(Ag

2

O-B

2

O

3

)

(1-x)

(AgBr)

x

-(Ag

2

O-B

2

O

3

)

(1-x)

(AgI)

x

-(Ag

2

O-B

2

O

3

)

(1-x)

x=0.5 x=0.4

x=0.5

x=0.3

x=0.4 x=0.3

x=0.3

x=0.4

Fig. 2.4. Relationship between the ionic conductivity σ

i

and the the Miller coefficient α

in AgX-Ag

2

O-B

2

O

3

glasses.

(21)

20 2.2.3.

まとめ

この節では,イオン導電ガラスの非線形光学定数とイオン伝導度の相関について,

Miller rule

と結合揺らぎモデルの観点から議論を行い以下の結果を得た.

o

イオン導電ガラスは三次の感受率

χ

(3)と一次の感受率

χ

(1) を関係づける

Miller rule

から逸脱を示す.

o

超イオン導電ガラスとして知られている

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3

(X=Cl, Br, I)

ガラス は大きな

Miller

係数

α

を持つ.

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3ガラスにおける

α

の組成依存 性はイオン伝導度の組成依存性と類似している.

o AHO

モデルから,

Miller rule

からの逸脱は電子の非調和性と電子-イオン相互 作用の増大に起因することを示唆し,結合の揺らぎとの関係を議論した.さ ら に , 平 均 電 気 陰 性 度 を 用 い る こ と で , 電 子 の 束 縛 力 の 減 少 が

AgX-Ag

2

O-B

2

O

3ガラスのイオン伝導性と非線形光学定数の増加に影響を与え

ることを示した.

(22)

21

2.3.

結合軌道論による解析

2.3.1.

結合軌道論

Harrison

によって提案された結合軌道論によれば,三次の感受率は原子間の結

合性に大きな影響を受ける

[14]

Lines

は結合軌道論に基づき,

M(metal)

イオンと

X(non-metal)イオン間の結合軌道に電場 E

を印加した状況を考え,線形[15]およ

び非線形光学定数

[2]

を導出した.

M-X

間の結合軌道

|b

0〉を

M

イオンの原子軌道

|h

M〉と

X

イオンの原子軌道 |hX〉の線形結合で表し,

X X M

M

h u h

u

b

0

  , (2.5)

と書くと,結合軌道のエネルギーE

0 0

0 H b

b

E  , (2.6)

となる.また結合軌道に電場が印加された場合のエネルギーEは,電場によって 生じた結合軌道の変位を考慮することで,

x xb

efE H

b

E0

x

0 , (2.7)

となる.ここで

f

は有効振動子強度を表す.電場が印加された場合のエネルギー と印加されていない場合のエネルギーの差から,n次の結合軌道感受率が導出さ れる.

  

0 ) ( 0

n

n x n

b

E

b x x e

b  . (2.8)

以上の方法で導出された結合毎の線形感受率

χ

b(1)は,

2 3

2 2

2 2 3 2 )

1 (

2 1

1 )

1 (

4 

 



 

 

 

 

 

  d

R d S

d S V S e

M b

 

, (2.9)

となる.一方,三次の感受率

χ

b(3)

D R d

d S

d S V S

d e

M b

2 3

2 2 3

2 2 2

2 5 4 )

3 (

2 1

1 )

1 (

32 

 



 

 

 

 

 

  

 

, (2.10)

(23)

22

となる.ここで

2

2

2 2 2

2

2

1

1 2 1 5

2 1 1

10 1 5

4  

 

 

 

 

 

 

 

M

M

R

d S

S R

d S S

D    

, (2.11)

である.d は原子間の結合長,RMはカチオンの半径,e は電子の電荷,S は結合 間のオーバーラップの度合い,α

M-X

結合の結合性を表すパラメータである 共有度を表す.αは結合間の共有エネルギーV2と極性エネルギーV3を用いて次の ように書ける.

2 3 2 2

2

V V

V

  , (2.12)

2

2

M 1 S

V   , V

3

E

0

1  S

2

. (2.13)

Eq. (2.13)は,結合間の V

2

V

3が,結合が持つ共有エネルギーMと極性エネルギ

ーE0に結合のオーバーラップの度合い

S

の情報を含んだものであることを示す.

M

E

0

S

はそれぞれ結合の性質を表し,以下のように定義される.

S h

h M

h H h

E h

H h h

H h

X M X

M

X X

M M

0

,

0 0

0

(2.14)

このように,結合軌道論から導出された

χ

b(1)

χ

b(3)

M-X

が持つ結合の性質から 大きな影響を受けることが分かる.Fig. 2.5

Fig. 2.6

は結合の共有度

α

の変化に よって

χ

b(1)

χ

b(3)がどのように振る舞うのかを示す.

Fig. 2.5

から,α の増加と共に

χ

b(1)が増加していることが分かる.これは共有性

の増加と共に波動関数の重なり合いが増し,光学遷移し易い状況が形成された ことを反映している.しかしながら,Fig. 2.6が示すように,χb(3)

χ

b(3)と異なり,

興味深い振る舞いを示す.それは

χ

b(3)

α=0.5

付近でピーク値を示す点である.

この特性は,結合が共有性でもなく,イオン性でもない中間の性質を持つ場合,

χ

b(3)の増大が予測されることを意味する.そのため,χb(3)の増大は結合が中間的 な値をとるとき生じやすい結合の揺らぎによる電子雲の変化のし易さの増大に も影響を与えていると考えられる.結合論の観点からイオン伝導と非線形光学 定数の相関を解き明かすヒントがここに隠されている.そこで,この節では

(24)

23

Lines

の結合軌道論を用いて,イオン伝導しやすいガラスとし難いガラスの非線

形光学定数について考察を行う.

Fig. 2.5. Relation between the linear bond orbital polarizability χ

b(1)

and the covalency α.

Fig. 2.6. Relation between the third-order bond orbital polarizability χ

b(3)

and the

covalency α.

(25)

24

2.3.2. R

2

O-B

2

O

3 ガラス

(R= Li, Na, K, Rb, Cs, Ag)

中の

R-O

結合の三次の感受率

Fig. 2.7

R

2

O-B

2

O

3ガラス

(R= Li, Na, K, Rb, Cs, Ag)

が持つ三次の感受率

χ

(3)の組 成依存性を表す [16].第

2

2

節において,

R

2

O-B

2

O

3ガラス(R=Li, Na, K, Rb, Cs,

Ag)は大きな α

を持ち,Miller ruleから逸脱を示すものが多いことを示した.また,

これらのガラスはカチオン導電体として知られているものも多い.そのため比 較的単純な組成を持つこれらの系で,イオン伝導性と非線形光学定数との相関 を見ていく.結合軌道論の観点から,R2

O-B

2

O

3ガラス中の

R-O

結合の三次の感 受率を求めるためには,第一に,R-O 結合の結合性を求めなければならない.

しかしながら,ガラスが持つ不規則な構造から,結合軌道論を用いて

R-O

結合 の結合性を決定することは困難である.そこで,R2

O-B

2

O

3 ガラスについて,『R

O

に六配位で囲まれており,その結合長は一定である』という仮定を取り入れ る.このように

R-O

結合を定めることで,六配位を持つ結晶での結合軌道論を 適用でき,結合性について議論できる.R-O結合の結合長は[17-19]から得た.

10

-14

2 3 4 5 6 7

10

-13

2 3 4 5

Exp 

(3)

(esu)

0.3 0.2

0.1

x xLi

2

O-(1-x)B

2

O

3

xNa

2

O-(1-x)B

2

O

3

xK

2

O-(1-x)B

2

O

3

xRb

2

O-(1-x)B

2

O

3

xCs

2

O-(1-x)B

2

O

3

xAg

2

O-(1-x)B

2

O

3

Fig. 2.7. Third order susceptibility χ

(3)

in xR

2

O-(1-x)B

2

O

3

glasses.[16]

(26)

25

六配位結晶における極性エネルギー

M

と共有エネルギー

E

0 は以下の式で見積 もることができる.

  2

0

a p c

E  

s

  , (2.15)

2

02

2

.

2 md

M   . (2.16)

ここで

E

0はカチオンの

s

軌道

ε

scとアニオンの

p

軌道

ε

paが持つエネルギー差であ り,εsc

ε

paの値は

Harrison

によって求められた値[14]を用いる.

Lines

モデルを用いて結合性を求める際に問題となるのは,パラメータ

S

の算

出である.この値は解析的に求めることが困難である.そのため,この問題を 回避し,且つ

S

の値を結合に参加する元素の情報から容易に求める方法として,

次の関係式を定義する.

  / 4 ]

exp[

1

i M X

2

X

M

h S f

h         . (2.18)

ここで

f

i

Pauling

のイオン度

[20]

を表し,元素の持つ電気陰性度の差によって結

合のオーバーラップの度合いが定義され,同一元素では

S=1

となる.また

B-O

合による非線形光学特性の寄与は無視する.これは

R

2

O-B

2

O

3ガラスの構造の類 似性を考慮し,R-O 結合のみに着目して議論を行うためである.以上の枠組み を基に,結合軌道論の観点から

R

2

O-B

2

O

3ガラス中の

R-O

結合が持つ結合性の算 出を行い,結合が持つ感受率を解析する.

R-O

結合の情報は

Eq. (2.15) - (2.18)から得られる.それらの値と Eq. (2.9)を用

いることで,R-O結合間の線形感受率

χ

b(1)が算出できる.Fig. 2.8

R

2

O-B

2

O

3 ラスの一次の感受率

χ

(1)の実験値と

R-O

結合間の線形感受率

χ

b(1)の相関を示す.

ここで

R

2

O

のドープ量は全て

x=0.1

である.その理由は,

Ag

の増加によって

Ag-O

結合が六配位でなくなり,Ag-OLong

Ag-O

Shortという二つの最近接距離を持つよ うになるからである[17].このため先に仮定した

R-O

結合が六配位であるという 仮定から著しく外れてしまう.以上のことから,R2

O

ドープ量は

x=0.1

に固定さ れている.Fig. 2.8から,R-O結合の

χ

b(1)の増加によって

χ

(1)が線形に増加してい ることが分かる.ここから,これまでに用いた仮定の妥当性が確認できる.

(27)

26 5

4 3 2 1 0

b(1)

 10

-20

0.27 0.26

0.25 0.24

(1)(0.1R

2O-0.9B2O3)

Li-O bond

Na-O bond K-O bond

Rb-O bond

Cs-O bond

Ag-O bond

Fig. 2.8. Correlation between the linear bond orbital polarizability χ

b(1)

and the measured linear susceptibility χ

(1)

in 0.1R

2

O-0.9B

2

O

3

glasses.

5 4 3 2 1 0

b(1)

 10

-20

0.7 0.6

0.5 0.4

0.3 0.2

Li-O bond

Na-O bond K-O bond

Rb-O bond

Cs-O bond Ag-O bond

Fig. 2.9. Correlation between the linear bond orbital polarizability χ

b(1)

and the covalency α of the R-O bond.

Fig. 2.9

に共有度

α

と算出された

R-O

結合間の線形感受率

χ

b(1)の関係が示され

ている.χb(1)

α

の増加と共に線形に増加していることが分かる.しかしながら,

Ag-O

結合では

χ

b(1)が大きく,他の

R-O

が示す直線から外れている.これは

Ag-O

(28)

27

結合では原子間の重なり合いを表すパラメータ

S

が他の系と比較して大きく,結 合の極性エネルギーE0が小さいことに起因している.

以上のように,結合軌道論を用いることで,

R

2

O-B

2

O

3ガラスの

R-O

結合が持 つ結合性と

χ

b(1)について議論を行うことできた.一方,Eq. (2.10)と結合の情報を 用いることで,結合毎の三次の感受率

χ

b(3)を見積もることができる.

Fig. 2.10

0.1R

2

O-0.9B

2

O

3ガラスの三次の感受率

χ

(3)の実験値と

R-O

結合の三次の感受率の

χ

b(3)の相関を示す.

Fig. 2.10

Fig. 2.8

と同様に,実験値と計算値はほぼ線形の 関係にある.そのため高次の感受率においても,計算時に行った仮定の妥当性 が確認でき,結合毎の三次の感受率

χ

b(3)が正しく得られていることが分かる.以 上のことを踏まえて,結合性と

χ

b(3)の議論を行う.Fig. 2.11は共有度

α

と結合毎 の三次の感受率

χ

b(3)の関係を表す.Fig. 2.11から

Ag-O

結合が他の

R-O

結合と比 較して,大きな

χ

b(3)を示すことが分かる.この結果を

Fig. 2.6

の振る舞いと比較 することで,大きな

χ

b(3)の起源は

Ag-O

結合が共有性-イオン性の中間の結合性を もつためであることが分かる.

15

10

5

0

b(3)

 10

-40

10 8

6 4

2 0

(3)(0.1R

2O-0.9B2O3)

10

-14

Li-O bond

Na-O bond K-O bond

Rb-O bond

Cs-O bond Ag-O bond

Fig. 2.10. Correlation between the third order bond orbital polarizability χ

b(3)

and the

measured third order susceptibility χ

(3)

in 0.1R

2

O-0.9B

2

O

3

glasses.

(29)

28 15

10

5

0

b

(3)

 10

-40

0.7 0.6

0.5 0.4

0.3

Li-O bond Na-O bond

K-O bond Rb-O bond

Cs-O bond

Ag-O bond

Fig. 2.11. Correlation between the third order bond orbital polarizability χ

b(3)

and the covalency α of R-O bond.

R

2

O-B

2

O

3ガラス中の

R-O

結合が持つ結合性と結合毎の三次の感受率の結合軌 道論に基づく考察から,結合の揺らぎ易い状況が大きな非線形光学定数を生むこ とが分かった.また

Ag-O

結合が持つ結合の二面性は,結合の揺らぎの起源とな るため,電子雲の変化のし易さが大きく,イオン伝導の引き金となる結合の揺ら ぎが発生し易い状況を与えている.以上のことから,Lines のモデルの観点から も三次の感受率とイオン伝導の相関の存在が支持される

2.3.3. R

2

O-B

2

O

3ガラス (R=Rb, Cs, Ag)の三次の感受率の算出[21]

前項では,結合軌道論に基づいて,R-O 結合毎の三次の感受率を導出した.

しかしながら,実際に観測される三次の感受率

χ

(3)を理解するためには,

R-O

合だけでなく,その他の結合についても考慮しなければならない.そこで再び 結合軌道論を基に議論を行う.結合軌道論に基づいた

Lines

の理論によれば,非 線形光学定数の三次の感受率

χ

(3)は最終的に次式のように書ける[2].

(30)

29

13 4

2 2 2 0

6 0 2

2 3 )

3

(

10

) (

) 1 ( 3

25 

 

 

E

E n

d f

L

(esu), (2.19)

ここで,fL

=(n

2

+2)/3

Lorentz

の局所場の因子, nは屈折率,E0 は振動子強度を 表す.

R

2

O-B

2

O

3ガラス

(R=Rb, Cs, Ag)

の三次の感受率の算出を

Eq. (2.19)

を用いて行 うためには,n,E0,dが必要になる.Wempleによれば

n

は,

2 2

0 2 0

) 1 (

 

E

E

n E

d , (2.20)

で与えられる [22].屈折率の周波数依存性を

Eq. (2.20)でフィッティングするこ

とで物質の振動子強度

E

0と分散エネルギーEdを得ることができる.しかしなが らガラスは不規則な構造を有するため多くの結合長が存在する. d を決定する ため,最近接距離を持つ

R-O

結合の結合長と

BO

4

BO

3ユニットの結合長の割 合から平均をとった平均結合長

d

AVを定義する. E0

n

は[16]から

d

は[17]から データをとり,Eq. (2.19)に代入することで

χ

(3)の計算を行った.

Fig. 2.12

Table 2.1

R

2

O-B

2

O

3ガラス (R=Rb, Cs, Ag)の

χ

(3)の実験値と計算値 の比較を示す.これらの結果から,Rb2

O-と Cs

2

O-B

2

O

3ガラスの

χ

(3)は計算値と実 験値の一致が良いことが分かる.一方,Ag2

O-B

2

O

3ガラスでは実験値と計算値に 逸脱が生じており,実験値の方が計算値より大きな値を示す.この差は何を表 しているのか.高温で高いイオン伝導度を持つガラスである

Ag

2

O-B

2

O

3ガラスが 大きな逸脱を示すことは興味深い点である.次項では,高いイオン伝導度を持 つガラスが結合論から期待される非線形光学定数より大きな値を示す理由につ いて考察する.

Fig. 1. 3. Temperature dependence of the ionic conductivity in typical lithium ion conductors  including crystals (C), glasses (G), liquid(L), ionic liquid (IL), polymers (P) and gels
Fig. 1.4. Available sites for silver ions in AgI and the bond fluctuations
Fig. 2.2. Relationship between the ionic conductivity σ i  [10] and the third-order  susceptibility χ (3)  [9] in AgX-Ag 2 O-B 2 O 3  glasses
Fig. 2.4. Relationship between the ionic conductivity σ i  and the the Miller coefficient α  in AgX-Ag 2 O-B 2 O 3  glasses
+7

参照

関連したドキュメント

The approach based on the strangeness index includes un- determined solution components but requires a number of constant rank conditions, whereas the approach based on

[11] ISO 23830 Surface chemical analysis -- Secondary- ion mass spectrometry -- Repeatability and constancy of the relative-intensity scale in static secondary-ion

By the algorithm in [1] for drawing framed link descriptions of branched covers of Seifert surfaces, a half circle should be drawn in each 1–handle, and then these eight half

Related to this, we examine the modular theory for positive projections from a von Neumann algebra onto a Jordan image of another von Neumann alge- bra, and use such projections

Proof.. One can choose Z such that is has contractible connected components. This simply follows from the general fact that under the assumption that the functor i : Gr // T is

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

We will give a different proof of a slightly weaker result, and then prove Theorem 7.3 below, which sharpens both results considerably; in both cases f denotes the canonical

Our method of proof can also be used to recover the rational homotopy of L K(2) S 0 as well as the chromatic splitting conjecture at primes p &gt; 3 [16]; we only need to use the