148 奥 羽 大 歯 学 誌 2009
ト ピ ッ ク ス
歯科用顕微鏡 を用 いた歯内治療
口腔 内 は 狭 い空 間 で あ り,直 視 で の 観 察 に 限 界 の あ る こ と が術 者 の 苦 労 を助 長 して い る と思 わ れ ます 。 治 療 に よ っ て は 印 象 を採 得 し,模 型 上 で 確 認 す る こ と が可 能 な 内 容 もあ り ます が,歯 内 療 法 に お い て の そ れ は 困 難 で あ るた め 視 野 を拡 大 して 根 管 口 の 探 索,歯 の 亀 裂 や 破 折,尖 孔 部 な どの 観 察 お よび 処 置 に 対 応 す る種 々 の 器 具 が 用 い られ て き ま し た。 術 野 を拡 大 して 見 る た め の そ れ らは単 眼 ル ー ペ に 始 ま り複 眼 ル ー ペ へ と 改 良 さ れ, 1990年 代 に 入 っ て か ら は 実 体 顕 微 鏡 が 応 用 さ れ
る よ う に な り ま した 。 ル ー ペ で は数 倍 程 度 の 拡 大 しか 可 能 で な か った もの が 顕 微 鏡 を 用 い る こ とに よ り10〜20倍 と い う高 倍 率 で の 観 察 が で き る よ
うに な りま した 。
本 学 附 属 病 院 総 合 歯 科 診療 室 に も2台 の 歯 科 用 実 体 顕 微 鏡 が 設 置 され て お り,歯 内療 法 学 分 野 の み な らず 保 存 修 復 学,歯 周 病 学,歯 科 補 綴 学 分 野 の 歯 科 治 療 で利 用 され て い ます 。
・顕 微 鏡 の 構 造,設 置 に つ い て
歯 科 治 療 で 用 い られ て い る顕 微 鏡 の 構 造 は 双 眼 実 体 顕 微 鏡 で,一 般 の 顕 微 鏡 が 標 本 に光 を透 過 さ せ て観 察 す るの に対 し,上 か らの 落 下 光 を照 射 し て 表 面 構 造 を観 察 し ます 。 設 置 方 式 に は 天 井 か ら の 吊 り下 げ式 の もの も あ りま す が 総 合 歯 科 で は 固 定 す る こ と な く,ど こ のユ ニ ッ トで も使 用 可 能 な
よ うに 移 動 で き る もの を採 用 して い ま す 。
・顕 微 鏡 を 用 い た処 置 の 特 徴
髄 室 の 観 察 は5〜10倍,根 管 上 部 の 観 察 は10
〜15倍 ,根 管 深 部 の 観 察 お よ び 歯 根 尖 切 除 法 に お け る歯 根 切 断 面 な ど の 観 察 は15〜20倍 が 適 切 な 倍 率 と い わ れ て い ます1)。これ ら よ り倍 率 を 上 げ た 場 合 に は視 野 の 制 限 や 照 度 不 足,焦 点 深 度 の 低 下,さ らに は 小 さ な動 きで あ っ て も大 き な動 き に拡 大 され るた め,逆 に術 者 の 疲 労度 の 増 加 や治 療 効 率 の低 下 を き たす こ と に な りま す 。 ま た,治 療 は ミ ラー テ クニ ック で 行 うの で術 野 と器 具 の 空
(20)
歯科保存学講座歯内療法学分野 佐 藤 穏 子
問 的 位 置 関 係 を把 握 しづ ら く,ス ム ー ズ な 診 療 を 行 う た め に は か な りの 訓 練 が 必 要 で す 。 治 療 の 状 況 は搭 載 した デ ジ タル カ メ ラ や ビデ オ カ メ ラ な ど で 静 止 画 像 や 動 画 と して 記 録 す る こ とが で き,こ れ らの 記 録 を患 者 へ の プ レゼ ンテ ー シ ョンや 教 育 媒 体 と して 活 用 す る こ と が 可 能 で す2)。・適 応 範 囲
通 常 の 歯 内療 法 で は根 管 口 の 位 置 や 数 の 探 索, 穿 孔 部 へ の 対 応 や 根 管 内破 折 器 具 の摘 出 な ど偶 発 症 の処 置 お よ び マ イ ク ロ サ ー ジ ェ リー な ど に 用 い られ て い ます 。 根 管 の探 索 で は上 顎 第 一 大 臼歯 近 心 頬 側 に お け る第 二 根 管(MB2)の 位 置 の確 認 や根 管 拡 大 時 に そ の威 力 を 発 揮 して い ます 。 ま た,外 科 的 歯 内 治 療 に 顕 微 鏡 を 用 い る場 合 は 超 音 波 チ ッ
プ や 顕 微 鏡 と併 用 す る小 さ なデ ン タル ミラ ー(レ トロ ミラ ー)な ど マ イ ク ロサ ー ジ ェ リー専 用 の 器 具 が 必 要 とな り ます 。
総 合 歯 科 に 歯 科 用 実 体 顕 微 鏡 が 設 置 され て か ら 7年 が 経 過 し,使 用頻 度 は徐 々 に 多 く な っ て きて い ま す 。 ま た,2008年 度 歯 科 医 師 国 家 試 験 に 歯 科 用 実 体 顕 微 鏡 に 関 す る問 題 が 出 題 され,本 学 の 臨 床 実 習 に お け る学 生 教 育 に も使 用 して い ます 。 また,患 者 へ の 使 用 時 に は顔 の 上 方 に大 き な機 器 が 出 現 す る た め,当 初 は驚 か れ て お り ます が,大 学 病 院 で は こ の よ うな 機 械 を使 って 診 て くれ る な ど,患 者 に対 す る ア ピ ール 度 も大 き い とい え ます 。
文 献
1) 中 川 寛 一:顕 微 鏡 を応 用 し た歯 内 治 療.歯 内 治 療 学(戸 田 忠 夫,中 村 洋,須 田 英 明,勝 海 一 郎 編) 第3版;253‑262 医 歯 薬 出 版 東 京 2007.
2)吉 岡 隆 知,須 田英 明:新 しい 歯 内療 法,エ ン ド ド ンテ ィ ク ス21(恵 比 寿 繁 之,西 川 博 文,林 善 彦,前 田 勝 正 編) 初 版;406‑409 永 末 書 店 京 都 2001.