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日本的商慣行 一その論理と独占禁止法上の扱い一

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日本的商慣行

一その論理と独占禁止法上の扱い一

Japanese Trade Practices on Distribution Systems:

the Logic and the Anti−Monopoly Law

小宮路雅 博

1 はじめに      取引慣行・商慣行が検討の姐上にのせられた わが国の国内流通が非効率的,非合理的,   (但し,ここでいう取引慣行は後述するよう 閉鎖的,参入抑止的であり,外国製品にとっ   に流通取引にだけ限定されるものではないの てNTB(Non−Tariff Barrier)をなしている  で, SIIでの取引慣行・商慣行は正確にはよ との指摘がこれまでしばしばなされてきた。   り広い視野で取り上げられている)。

これは「日本的流通システムNTB論」とで    この時期,大店法や酒税法がわが国の流通 もよべるが,わが国流通へのこうした指摘は,  の閉鎖的・参入抑止的である証拠(いわばバー はじめは流通近代化論の文脈で行われ,後に   ド参入障壁)とされ,(日米交渉上の)象徴 諸外国から貿易不均衡の改善や市場開放の観   的役割を与えられて共に運用改善・規制緩和 点でなされてきたものであり,更に内外価格   を内外から厳しく求められたのは周知の通り 差問題消費者利益の重視,規制緩和と独占   である。また,SIIではわが国の取引慣行・

禁止政策の強化,競争政策の国際的ハーモナ   商慣行にっいていわゆる「global standard」

イゼーションの諸潮流とも結びっいて論じら   ないし「Anglo−American standard」とは異 れている。       なる固有のものがあり,いわばソフト参入障

日本的流通システムNTB論が適切なもの   壁をなしているとの指摘がなされた。このよ であるかにっいては賛否両論があるが,焦点   うなSIIで取り上げられ,以降特段の注目を となるのは概ね次の3っであり,歴史的にも  集めるようになった日本的もしくは日本的と この順で問題とされてきている。        目される取引慣行・商慣行は「日本的取引慣

①マクロ視点からの流通構造(小規模零細性,  行」・「日本的商慣行」とよばれる。

流通多段階性など)       SII以降,わが国の取引慣行について,「不

②大店法を中心とする政府の流通関連規制    公正な日本的取引慣行」が語られることが多

③取引慣行・商慣行       い。取引慣行は売買,貿易,商取引の際にあ ところで1989年から90年にかけて行われた   る集団内で一般に受容されている規範やルー SII(Structural Impediments Initiative)は,  ルであり,時にしきたりや習わしとして暗黙 幅広い領域での協議であったが,流通分野に   のうちにまたはっきりと意識されずに定着し 関しては2国間協議において(個別分野は別   ているものである。不公正の定義は必ずしも にして)わが国の国内流通システムの全体を   明確ではないが,取引慣行はしばしば外部か 国際的視点から問題としたおそらく初めての   らは容易に理解しがたく,集団内ルールを理 機会であった。ここではもはや,わが国の流   解したり学んだりしようとしないものにとっ 通構造そのものは問題とされず,政府規制と   ては不合理,排他的,参入抑止的に感じられ

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る場合があるだろう。これにっいては,少な   いので独占禁止法は結局のところ全体として くとも独占禁止法上の違反行為,または違反   流通に常に大きな関わりを持っている。今こ 行為となる可能性が高い取引方法が慣行とし  れをふまえた上で,流通取引においてとりわ て行われているのであれば,これらは不公正   け独占禁止法の問題領域となっていることが な取引慣行と判断される一ものと考える。     らにっいて整理すると以下のように区分する

ここで(日本的)取引慣行・商慣行の概念   ことができるだろう。

と区分にっいて述べておきたい。これらは明  ①主にメーカーを主体とする問題領域1:垂 確でないことも多いが,両者を一応次のよう    直的価格制限

に分けておくこととする。      ②主にメーカーを主体とする問題領域2:垂

①取引慣行:必ずしも流通取引に限定せず,    直的非価格制限

一般的な意味合いで指摘されるもの。民間  ③主に大規模小売業者を主体とする問題領域 企業の調達慣行・政府慣行1等を含むこと  ④輸入総代理店制における問題領域

もある。日本的取引慣行としては,系列取    日本的とされる商慣行はこの①〜④の中に 引,互恵的取引,取引契約・条件の曖昧性,  それぞれ分散して見出される(尤も④は通常 人的関係の重視,長期継続的取引,信頼性   そのまま日本的商慣行とされる)。本稿では,

原則やplus sum原理2に基づく問題解決・   この領域区分の枠組みに基づき,商慣行を検 コンフリクト解消等があげられる。     討していくこととする。以下では①〜④の順

②商慣行:流通取引における個々の具体的慣   に説明し,それぞれ関連する商慣行を取り上 行として指摘されるもの。流通取引慣行,   げ,併せて周辺の事柄も論じる。また,独占 流通商慣行と表現されることもある。日本   禁止法上の扱いについては必要に応じて,不 的商慣行としては,建値制,リベート制,   公正な取引方法の一般指定,「流通・取引慣 返品制,派遣店員制などの労務提供,協賛   行ガイドライン」等を参照する。

金・押付け販売等,多頻度小口(定時)配    なお,「流通・取引慣行ガイドライン」

送,輸入総代理店制などが挙げられる。    (Distribution Systems,Business Practices この理解では,取引慣行は商慣行の背景原   Guidelines)について若干述べておく。こ 理としても用いられることになる。例えば,   れは「流通・取引慣行に関する独占禁止法上 返品制を支えるのは曖昧な仕入契約・条件で   の指針」(1991年3月)の通称であり,事業

ある,恣意的なリベート供与は取引上の人的   者間取引,流通取引,市場アクセスに関する 結びつきを重視する為である,労務提供は取   さまざま事柄にっいて独占禁止法上どのよう 引の継続性を何よりも重要と考えるからであ   に取り扱われるかを包括的に扱ったものとし る,等々の説明がなされる。ここでは取引慣   てこの領域で現行,最も頻繁に参照されるも 行は商慣行の基盤をなしているとみなされる。  のとなっている。また,その策定は直接には

本稿では「日本的商慣行」にっいて主たる   SIIに基づきなされたものである。 SIIではわ ものを取り上げ考察する。また,不公正な取   が国政府は流通・取引慣行にっいての独占禁 引慣行に関する上述の観点に基づき独占禁止   止法上の取り扱いを明らかにすることが求め 法上これらがどのように扱われるかにっいて   られ,最終報告(1990年6月)でその為のガ

も若干の検討を行なうものである。       イドライン策定を公取委が行うことを日本側 措置として約束したものである3。「流通・取 2.流通取引における独占禁止法の問題領域   引慣行ガイドライン」は,このように直接的

さて,流通活動もまた経済活動に他ならな  には貿易不均衡の改善や市場開放の視点で策

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小宮路:日本的商慣行       71

定が要請されたものであり,この点が公取委    さまざまな事柄に出荷後も強い関心を寄せ の他の指針,考え方類とは異なる際立った特    ている。歴史的な観点では前世紀の終わり 徴となっている。こうした経緯から「流通・   から今世紀初頭にかけてメーカーによる自 取引慣行ガイドライン」は日本的取引慣行・   社製品流通への関心の高まりがアメリカに 商慣行についての公取委の(SIIを受けた)    おいて生まれ,これが同国におけるmarke一 見解表明という側面を持っているわけであ   tingの発生を促したことが理解されている。

る4。       メーカーの関心の中には自社製品がいか なる価格で卸・小売業者によって再販売さ 3.主にメーカーを主体とする問題領域1:   れるかということが含まれる。これは言わ

垂直的価格制限       ばメーカーの最大の関心事となっており,

さて,主にメーカーを主体とする問題領域    メーカーに垂直的価格制限を行わせる動機 は総じて垂直的制限(vertical restraints)    となる。

として独占禁止法上理解されるものである。     垂直的価格制限はメーカーが自社製品の これはメーカー(時には商社や総代理店など   流通における価格形成,とりわけ小売価格 の卸)が流通の川下にある卸・小売業者の事    の形成に強い関心を持っことを反映してい 業活動を拘束し制限しようとすることをいう。   るが,言うまでもなく独占禁止法上は流通 拘束・制限はメーカーが自らの都合の良いよ    業者の自由な価格設定を妨げ,そのプラン うに行うこともあり(この意味ではメーカー    ドの価格競争(ブランド内競争)を減少・

の一方的な行為である),流通業者の求めに   消滅させるものであるので,正当な理由の 応じて行うこともある(この場合は相互的な    ある場合(っまり委託販売である場合や適 行為である)。従って,メーカーを主体とす    用除外となる場合)を除き,通常は再販売 る垂直的制限といってもそれが行われる事由   価格維持(resale price maintenance)と にはいろいろの場合がある。       して不公正な取引方法に該当し(一般指定 垂直的制限は通例,垂直的価格制限と垂直    12項:再販売価格の拘束),同法第19条違 的非価格制限とに大別される。この区分は,    反であると考えられている。また,むしろ

「価格に基づく競争が行われていることが市    流通業者から垂直的価格制限を要請されメー 場メカニズムが健全に作用していることを何    カーがこれに応ずる時は,卸・小売段階で

よりも示している」という認識に基づくもの    の価格カルテル的効果を持つことになる である。この認識では,直接に価格を制限す    (流通業者からのこのような要請は安売り る垂直的価格制限は特別な扱いをされるべき   業者を排除する目的でなされる)。この場 であり,垂直的非価格制限は「非価格」とい    合は,水平的制限を真の目的とする垂直的

う表現でも分かるように価格にっいてではな    制限ということになる。

いその他の制限(現実にはこれらも価格制限   2)再販と一般指定12項

効果を派生的に持ち得るのであるが)として    再販は,端的には売り手(主としてメー 言わばまとめて取り扱われる。以下,ここで    カー,時には商社や総代理店などの卸)が は垂直的価格制限の観点を扱う。        自社商品にっいての再販売価格(卸売価格,

1)垂直的価格制限と独占禁止法上の取り扱    小売価格)を定あ,買い手(流通業者)に い      その価格を守らせることであり,一般指定

現代のメーカーの多くは自社の製品にっ    12項に該当し不公正な取引方法である。再 いて品質やブランド・イメージの保持など   販は具体的にはメーカーが卸売業者を通じ

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て小売業者に間接的に働きかけ,小売価格    代表的な日本的商慣行とされるものであり,

を守らせることが多い。これはメーカーに    メーカー(時には卸)が自社製品について とって,       定めた希望小売価格が実現されるように製

①企業イメージやブランド・イメージの保    品が流通し,価格形成されていくこと,ま 持の為(消費者が安売り商品のイメージ    たはメーカーが作り上げるそのような価格 を持っことを回避するため)        形成の仕組みをいう。わが国の消費財メー

②保有ブランド間の価格秩序を維持し,競    カーの多くが戦後,建値制を採用してきた 合メーカーとのブランド間競争に打ち勝    ことが知られている。現在はあくまでも参 つ為      考としての「メーカー希望小売価格」であ

③小売段階での値引き競争を放置するとや    るが,過去には建値制が堅牢に構築されて がて卸出荷価格,更にはメーカー出荷価    いたこともあり,家電等を始め多くの業界 格にまで波及するのでこれを回避する為    でこれが「定価」や「正価」として小売店

④小売段階での値引き競争を放置するとや   頭で表示されていたものである。

がて流通業者はマージンが確保できなく     建値制は消費財流通に関しては希望小売 なりその商品の取扱いを忌避するように    価格制とも表現されることがある。これは なるのでこれを回避する為         先にも述べたように多くの場合,結局はメー 等々の理由で,自社製品の小売価格が究極    カーにとっては最終的な小売価格が最大の 的には重要であって,小売価格の保持に意    関心事となるからである。しかし,この表 を払うものであるから,現実には再販とい    現においてもメーカーにとって望ましい小 うとき多くは小売価格の拘束が内容となっ   売価格の実現には小売段階だけでなく途中 ている。この意味では再販は再・再販売価    の卸段階での価格形成も必要となるので,

格の拘束であるが,卸価格の拘束も含め通    建値の仕組みが小売段階だけでなく流通段 常,再販売価格の拘束と総称されている。    階全体に関わることにはかわりがない。ま また,小売価格の監視,安売りを理由と    た,生産財についても建値制は多く採用さ する出荷停止,リベートのカットなどの制    れており,メーカーだけでなく(輸入)総 裁措置といった維持を確保するようなさま    代理店などの卸が行なう場合もある。

ざまな売り手の拘束的行為を再販売価格維     建値制の下ではメーカー希望小売価格を 持行為(再販行為)とよび,維持にっいて    100%ないし10割としてそこから逆算する の拘束的条項を盛り込んだ契約を再販売価    形で卸・小売の仕入価格,販売価格,メー 格維持契約(再販契約)とよぶ。再販の持    カーの出荷価格が定められる。各段階での っブランド内競争の消尽効果の一方でブラ   価格の秩序を定めることが「値を建てる」

ンド間競争の促進効果が(主にいわゆるシ    として建値の語源となったとされる。この カゴ派経済学の観点で)強調されることも   ようなメーカーの作り上げた価格形成の秩 あるが,わが国を含め各国で再販の強い競    序の中で取引が行われている。また,建値 争阻害性が認識されており5,反トラスト   制では卸・小売の各段階でのマージン率を 法上もその行為自体でper se illega1と考    メーカーが保障する形になっている。ここ えられているのが通常である。        では商業者は仕入れ値に自己の自由な裁量 3)建値制の概要       でマージンを乗せて売価を決定するリスク

垂直的価格制限・再販との関連では,建    テイカーとしての商人6であるよりもメー 値制が常に問題とされる。建値制は,最も    カーの販売代理人としての色彩の濃いもの

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小宮路:日本的商慣行      73

となっている。わが国では消費者もまた,    より個別的。自主的に希望小売価格や建値 メーカーの希望小売価格を基準に売価の高    が採用された結果であれば,この状態が違 低(値引きの程度)を判断するのが通常の    法とされることはない。流通業者には,独 購買習慣となっている。       自に価格設定する自由もあるし,同時にメー 建値制がこれまで維持されてきた背景に    カーによる希望小売価格や建値の通りに価 は,メーカーの末端小売価格維持への意欲    格設定をする自由もあるからである。

と,流通側が独自の売価決定を放棄して言   5)建値制の変容とNPP,オープン・プラ わば緩やかな価格カルテル的効果を持っ建    イス化

値制を受け入れてきたことがあげられる。     なお,90年代に入ってこれまで言わば堅 流通業者にとっては,建値制の下では(少    牢に構築されてきた建値制が急速に変容し なくとも建値制が採用されている品目にっ    っっあることが指摘される。これは以下の いて)厳しい価格競争を回避でき一定のマー    ような情勢の変化によるものと考えられる。

ジン率が保障される。メーカーの創り出し   ①90年代初頭に各種ディスカウンターが伸 た秩序の中で,緩やかな競争が支持されて    張し,これにGMSや専門量販店も加わっ きたものということができる。また,消費     て,価格破壊の名の下に流通側が価格決 者の購買の判断基準としても機能してきた     定権をメーカーから奪い取る気運が高まっ

ものである。      たこと。

4)建値制と独占禁止法      ②それゆえ,建値制はもはや流通サイドで 建値制と独占禁止法との関連は,建値制     は必要とされず,流通業者による自由な を流通業者が個別的・自主的に支持する限     価格形成が支持されてきたこと。

りにおいて再販には該当しないと解される。   ③メーカーにとっても,リベートの支給が しかし,メーカーは建値制と他のさまざま    複雑になるなど建値制の維持の為の調整 な垂直的非価格制限を組み合わせているの     コストがむしろ重い負担となり,取引の が通常であり,これらは建値維持の報酬や    簡素化が求められるようになったこと。

制裁として機能しがちであるので,建値制     これにより,相対的にメーカーのチャネ は基本的に再販に容易に転化し得る性格を     ル・リーダーシップが弱体化したこと。

持っている。これについては「流通・取引   ④建値制で予定された小売価格と実売価格 慣行ガイドライン」第2部第一の考え方に    との乖離が広がり過ぎたことにより,そ

もあるように「希望小売価格や建値は流通     れまで消費者がメーカー希望小売価格に 業者に対し単なる参考として示され」てお    漠然と抱いていた正当性が揺らいだこと。

り,これを流通業者が自由に採用するので   ⑤メーカーにとってもメーカー希望小売価 あれば拘束性が無く,その限りにおいて再     格を大幅に下回る実売価格が常態化する 販に当たらず独占禁止法違反とはならない     ことは,ブランド・イメージの保持の点 と解される。このように建値制と再販を区     からみても望ましくなく,このような状 別するものは拘束性があるか否かである    況下で建値制を無理に保持することは結

(と言っても両者の間のグレーゾーンは幅     局,ディスカウンターに値引基準と値引 広いものであり,個別の判断は,もちろん    表示という集客手段を与えるだけである 案件毎に公取委が下すことである)。上記     と認識されてきたこと。

からすれば,当該商品の再販売価格が均一    ⑥また,乖離が景表法第4条第2号に該当 の水準となっていても,これが流通業者に     する「不当な二重価格表示(unfair

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double pricing)」として問擬されかね    で採用されることもあるが,より特徴的な ない水準にまで拡大してきた為,メーカー    のはオープン・プライス制への移行が時に,

にとっても流通業者にとっても放置でき    メーカーが価格形成だけでなく,他の側面 ない状況になったこと。      でももはや流通段階に関与しなくなること 現在,建値制を手直しする動きや取組み    を意味することである。メーカーはオープ が幾っかの業界やメーカーにみられる。品    ン・プライスを採用した品目については,

目によっては建値や希望小売価格を単に参    リベートの手厚い支給,売残り品の返品受 考としてのみ示し,取引の簡素化を行って    け入れ,販売員やデモンストレーター・マ 建値制そのものの維持を放棄するケース,    ネキン7の派遣等,それまで流通業者に与 建値や希望小売価格は設定するが希望小売    えていたさまざまなメリットを取り止める 価格そのものは商品パッケージや店頭に表    傾向がある。これは一面でメーカーのチャ 示しないNPP(No Print Price)が採用さ    ネル・リーダーシップがそれだけ失われる れるケース,等がある。       とみることもでき,他面でチャネル維持の

NPPは「希望小売価格非表示型建値制」   為の高コスト負担から逃れられるともみる とでもよべるものであり,      ことができる。流通業者側もこれらの失わ

①メーカーの自社製品のブランド・イメー    れるメリットとオープン・プライスから得 ジの保持の為       られる自律的な価格決定など新たに得られ

②ディスカウンターに値引表示をさせない    るメリットとを比較考量して,オープン・

為(メーカー希望小売価格から何割引き   プライス制を受け入れているわけである。

という価格表示方法を使うことができな   6)リベート制の概要

いということは,ディスカウンターにとっ    次に価格形成に関連する事柄として,リ ての販売促進や集客の為の主要手段を失    べ一ト制にっいても取り上げておく。リベー

うということである)       ト制もわが国で広く採用されてきた商慣行

③不当な二重価格表示の問擬を避ける為     と理解されている。

等の目的でなされる。また,オープン・プ     リベート(rebate)は,「割り戻し」や ライスを採用しつっ,流通業者に価格設定    「歩戻し」ともよばれ,売手が商品代金の 基準を与える為に行われることもある。こ    一部を事後的に買手に一定比率割り戻すご の場合,NPPは言わば「参考希望小売価    とをいう。リベートは一般の卸や輸入総代 格付きオープン・プライス」ということに    理店などが行うこともあるが,卸が行う場 なる。       合もその原資がメーカーによりまかなわれ オープン・プライス(Open Price)制    ているという認識において,通常は主にメー は,字義通りとすれば,メーカーが流通段    カーが主体となる事柄と理解されている。

階での価格形成には一切関与しないという     りべ一トは一定期間の取引額,数量,取 ものである。特に小売段階の値引き競争が    引条件に応じてなされ,個々の取引ではな 激しく,メーカー希望小売価格と実売価格    く売手と買手の取引全体において比率が定

との乖離が激しい家電製品,PC,自動車    められる。しかし,一方で臨時に支払われ 用タイヤ,スポーツ用品などの分野で品目    るりべ一トや特定品目の取引に関して支払 によってオープン・プライスが採用されて    われるりべ一トもあるので一概にはいえな きている。       い。リベートの率の決定もその基準が必ず オープン・プライスはNPPと同じ理由    しも明確ではないこと,支払い自体が秘匿

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小宮路:日本的商慣行       75

的に行われることがしばしば指摘され,こ    11項,13項)としている(同第3−2(2))。

の点でとりわけこのようなリベートに不慣    ②著しく累進的なリベート:累進的なリベー れな外国企業にとって参入抑止的に機能し     ト(累進リベート)は,例えば数量リベー ているとされることがある。多くの業界で     トを供与する際に,一定期間の流通業者

リベートの支払いが常軌的に行われている    の仕入高にっいてランクを設け,ランク ことを日本的商慣行ととらえ,リベート制     毎に累進的な供与率を設定するものであ とよんでいる。      る。「ガイドライン」では,「累進的なリ 7)リベート制と独占禁止法       べ一トは,市場の実態に即した価格形成

リベートの供与そのものは,独占禁止法     を促進するという側面を有するものであ 上は何ら問題とはならない。しかし,「流     るが,その累進度が著しく高い場合には,

通・取引慣行ガイドライン」第2部第3一     自社製品を他社製品よりも優先的に取り 2(1)から判断すれば,       扱わせる機能を持」ち,「市場における

①再販売価格維持行為をはじめ,流通業者    有力なメーカーがこのようなリベートを の事業活動の制限や拘束,差別的取扱い     供与し,これによって流通業者の競争品 の実効性を確保する手段となっていると    の取扱いを制限することとなり,その結 き       果,新規参入者や既存の競争者にとって

②或いはリベートを差別的に供与する行為    代替的な流通経路を容易に確保すること それ自体が,流通業者の事業活動の違法     ができなくなるおそれがある場合は不公 な制限と同じ機能を持っとき         正な取引方法に該当し,違法となる」

は,それぞれの類型において不公正な取引    (4項,11項,13項)としている(同第 方法として違法となる。これらは一般指定     3−2(3))。

では4項(取引条件等の差別的取扱い),11   ③帳合取引の義務付けとなるようなリベー 項(排他条件付取引),12項(再販売価格     ト:これは帳合リベートと呼ばれるもの

の拘束),13項(拘束条件付取引)に該当     で,メーカーが小売業者に直接或いは するが,「流通・取引慣行ガイドライン」     (卸を通じて)間接にリベートを供与す にもあるように,とりわけ問題類型となる     る際に,当該メーカー製品の仕入高のう ものは次のリベートである。      ち,特定の卸売業者からの仕入高のみを

①占有率リベート:これは流通業者の一定    計算の基礎とするものである。こうした 期間における取引額全体に占める自社製     リベートは,帳合取引の義務付けとして 品の割合や流通業者の店舗に陳列されて     の機能を持っことがあるが,「ガイドラ いる商品全体に占める自社製品の陳列の     イン」では「このような機能を持っリベー 割合に基づいて供与されるリベートであ     トの供与によって当該商品の価格が維持

る。「ガイドライン」では「市場におけ     されるおそれがある場合には不公正な取 る有力なメーカーが占有率リベートを供     引方法に該当し,違法となる」(4項,

与し,これによって流通業者の競争品の    13項)としている(同第3−2(4))。

取扱いを制限することとなり,その結果,  8)リベートの意義と建値制等

新規参入者や既存の競争者にとって代替     さて,リベートの本来の目的は販売促進 的な流通経路を容易に確保することがで    であり,この目的で用いられるものと考え きなくなるおそれがある場合は不公正な    られるが,実態としてはここから更に進ん 取引方法に該当し,違法となる」(4項,   でさまざまな意味合いを持っている。今こ

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こでリベートを取り上げているのは特に垂    競合メーカーから防衛する為にも用いられ 直的価格制限・建値制との関連においてで   ている。この為にリベートの支払いはしば あるので,先ずこの観点から若干述べる。    しば複雑であり,時に秘匿される。

建値制は予あメーカーが価格形成を設計    以上のようにリベートおよびリベート制 する点で言わば硬直的なシステムである。    は建値制との関連で把握される側面を持っ

これはしばしば事前の設計通りに事が運ば    ている。

ないことが生ずることを意味する。っまり,    なお,リベートはさまざまな意味合いを 建値制で予定されたメーカー希望小売価格    持っていることを先に述べた。リベート制 を大幅に割り込む売価でしか売捌けないこ   は建値制との関連だけでなくいろいろのと ともあるわけであるが,しかし,そうなる    らえ方ができる。これらにっいても次に示 かは実際に販売してみなければ分からない。   しておく。

そこでもし,上手く行かなければ事後的に   ①流通業者の行う値引きとの関連でマージ リベートを支給し,実質的なマージン補填     ンとして支払われるリベート。リベート を行うわけである(建値制はすなわちマー    はメーカーにとって何より販売促進の為 ジン保障であることを想起されたい)。こ    に行われる。その為に数量リベートに累 れについては事後値引きでも良いのである    進がかけられていることがある(先にあ が,それではメーカーは自ら建値による価     げた累進リベート)。この時,メーカー 格秩序を壊してしまうことになる。このよ     は自社製品を多く流通段階に押し込むご うにリベート制とは,一方で建値制を維持     とができ,流通側もこれを値引きの原資 しつっ,建値制の硬直性を調整する為の役     とすることができる。要するに仕入れ値 割を担っている。この点で建値制はメーカー    ないしそれを下回る価格で販売しても良 が創り上げる「表の価格形成」であり,リ    いわけで,この時,リベートは容易にマー ベート制は「裏の価格形成」という意味を     ジンに転化する。この場合,メーカーの 持っている。       構築した建値制はその実質において既に

また,リベートは建値制における各流通     崩壊しているが,メーカーにとってリベー ルート毎の見かけ上の平等性確保の手段と     トが有効な販促手段である限り,また,

しても機能する。っまり,メーカーは見か    流通業者にとってそれがマージンである け上の出荷価格を同じにすることで,特定    限り,リベート制を手直ししたり簡素化 の小売業態(例えば量販店)での当該メー     したりすることへの抵抗が強まる。なお,

カー製品の低価格販売の責任を他の小売業     著しく累進的なリベートが競争品の取扱 態(例えば系列の中小零細小売店)から問     い制限として機能し,新規参入者や競争 われないようにする。ここではメーカーと    者にとって代替的な流通経路を容易に確

(系列卸と中小零細小売からなる)流通業    保できなくなるおそれがあるときには,

       「

メの利益共同体としての流通系列があり,     不公正な取引方法に該当し違法となるこ メーカーにはこの共同体の主宰者としての     とは前述の通りである。

責任があるとみなされている。出荷価格は   ②メーカーが要求する垂直的制限を受け入 各ルート同一にし,現実の取引条件の違い    れる報酬として支払われるリベート。こ は,リベートで事後的に調整する。この場     のことは受け入れない場合にはリベート 合,真の出荷価格は極めて不透明になる。     率を低くしたり,支払わないことも生じ このようなりべ一トの機能は,流通業者を     得ることを意味する。この場合,垂直的

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小宮路:日本的商慣行       77

価格制限(再販売価格の拘束)の実効手    られる。これらは日本的商慣行としてそれ 段として機能している等の態様によって,   それ,専売制,テリトリー制,帳合制(一 一般指定4項,12項,13項等に該当する    店一帳合制)等とよばれることがある。い

ことがある。       ずれも後述する流通系列化の具体的な内容

③メーカーから流通業者へ支払われる事後    を構成している。

的な利益分配としてのリベート。この場    独占禁止法の観点では,垂直的価格制限 合,メーカーと(系列卸・中小零細小売    (再販)とは異なり,垂直的非価格制限は からなる)流通業者の利益共同体として    一般にそれ自体で直ちに違法とはされない の流通系列があり,メーカーはこの共同    (但し,価格競争を阻害するような非価格 体の主宰者として利益分配をとりおこな   制限を除く。これらは原則として違法であ

う。       る)。垂直的非価格制限は一方で競争促進

④いわゆる払込制から発達したものとして   効果があるから,阻害効果を比較考量して の性格において支払われるりべ一ト。す    判断されるが,阻害性が見逃せない場合や なわち,商品代金の一部に預かり金的な   他の違法行為を支える手段となっていると 要素があり,これが事後的にリベートと    きは,問擬の対象となる。例えば,取引の して分配される。この場合,メーカーと    相手方である流通業者の自律的な事業活動

(系列卸・中小零細小売からなる)流通    を不当に拘束しメーカーにとって都合の良 業者の利益共同体としての流通系列があ    いものに一方的に制限するものである場合 り,メーカーはこの共同体の主宰者とし    や垂直的価格制限(再販)の実効性を確保 て予め販売不振等に備え,資金を一旦プー    する手段となっている場合には,それぞれ ルしておく。これが事後的に分配される    の類型において不公正な取引方法として違 と解釈される。      法とされる。一般指定の類型としては,11 項(排他条件付取引),12項(再販売価格 4 主にメーカーを主体とする問題領域2:   の拘束),13項(拘束条件付取引)等が該

垂直的非価格制限      当する。

独占禁止法上の問題となる第2の領域はメー   2)流通系列化の概要

カーや時には卸売が行う垂直的非価格制限で     メーカーの行う垂直的制限はしばしば日 ある(以下,主体をメーカーに集約する)。    本的なとらえ方において「流通系列化」と 垂直的制限のうち,価格に関するものでない    呼ばれることがある。流通系列化に対して ものを総称して,垂直的非価格制限とよぶ。    は垂直的価格制限(再販行為)としての側 一般論としては,垂直的非価格制限は垂直的    面も問題視されることがあるが,ここでは 価格制限の実現の手段として採用されたり,    主に垂直的非価格制限の観点でとりあげる。

価格制限の効果を派生的に持ち得る側面を持っ     さて,流通系列化はそれ自体単独の行為 ている。       ではなく,メーカーが卸・小売に対して,

1)垂直的非価格制限と独占禁止法上の取扱    さまざまな垂直的制限とそれを可能にする い      メリットの供与が継続して行われ,そのよ さて,メーカーの行う流通業者に対する    うな関係が長期にわたり固定化しているこ 垂直的非価格制限にはさまざまなものがあ    とを総体的にとらえるものである。流通系

る。代表的には,競合品の取り扱いの制限    列化の範囲や強度にっいては幅広い多様性 販売地域の制限,取引先の制限などがあげ    があり,業界毎にまたメーカー毎に態様の

(10)

差異がある。      れを専売制と呼び,流通系列化の主要な構 語感としては流通系列化は,極めて日本    成要素とみなされている。

的印象を持っている。しかし,系列化が実    専売制は,メーカーと流通業者との契約 際に小売段階にまで及んでいるのは自動車,   に基づくこともあり,そうでないこともあ ガソリンスタンド(SS)8,新聞販売所,家    る。例えば,わが国の自動車流通では,各 電,化粧品の分野であり,このうち強固に    メーカーの看板を掲げた「ディーラー 構築されているといい得るのは自動車,ガ   (dealer)」と呼ばれる自動車小売業者がそ

ソリン位のものである。この点では一般に   れそれのメーカーの特定車種を専売してい いわれるほどわが国の流通において流通系    る。これはメーカーとディーラーの間に専 列化は普遍的なものではない。但し,卸段    売を義務付ける契約があるわけではなく慣 階までに限れば家電,OA機器,食品,ト   行として行われているわけであって,ディー イレタリーなどの分野でメーカー設立の販    ラーが専売を自ら選択して販売活動を行っ 社ないしメーカー毎に色分けされた代理店・   ていることになる。言うまでもなく,自動 特約店網が構築されており,必ずしも固定    車販売は,商品の性質上,一度販売すれば 的ではないものの確かにメーカーによる卸    顧客との関わりは一切ないというものでは 売段階の専属チャネル化が進行していると   なく,点検や整備,修理などで継続的にディー いえる。      ラーと購入顧客との関わりが生ずる。その

また,ある業界やメーカーの流通系列化    為,点検・整備・修理の技術的水準を維持 そのものが独占禁止法上違法ということは    することや補修品の円滑な供給の観点でも あり得ず,そこで行われる特定の垂直的制    専売には合理性がある。この点を反映して,

限行為の違法性が問題とされる。また,流    EC(EU)では自動車流通(と他の幾っか 通系列化を日本的商慣行ととらえることも   の品目)にっいてメーカーによる厳格な専 あるが,流通系列化そのものは上記の説明    売や販売地域制限を容認する制度がある からしても商慣行とはみなされないと考え    (選択的流通制度9)。

られる。流通系列化を構成するそれぞれの     独占禁止法上は,(再販など他の場合と 要素が例えば,専売制,テリトリー制,帳    同じく)専売契約があろうとなかろうと,

合制(一店一帳合制)等として商慣行とみ    そのような制限の実効性が確保されている なされる。以下これらにっいて述べる。     かで判断される。「流通・取引慣行ガイド 3)流通業者の競合品の取扱いに関する制限    ライン」は「市場における有力なメーカー

(専売制)      が競争品の取扱い制限を行い,これによっ これは,メーカーが流通業者に対して競    て新規参入者や既存の競争者にとって代替 合メーカーの製品を取り扱うことを制限す    的な流通経路を容易に確保することができ

るものである。自社製品のみの取り扱いを    なくなるおそれがある場合には不公正な取 義務付けたり,流通業者の取扱能力の限度    引方法に該当し,違法となる」(第2第二 に近い取引数量の義務付けをすることで競    2−(2))としている1°(一般指定11項また 合品を排除することもある。このとき,当    は13項)。

該メーカーの製品のみ扱うときは専売とな   4)流通業者の販売地域に関する制限 り(専売店),複数メーカーの製品をいろ     流通業者の販売地域に関する制限は,メー いうと扱うときは併売とよばれる(併売店)。   カーが直接或いは卸売業者を経由して,各 専売を商慣行として制度的に行うとき,こ    流通業者の販売地域割り当てを行うことで

(11)

小宮路:日本的商慣行      79

あり,商慣行としてはテリトリー制とよば   5)流通業者の取引先に関する制限

れる。テリトリー制を地域外顧客への(消     流通業者の取引先に関する制限は,商慣 極的)対応を容認するオープン・テリトリー    行としては帳合制或いは一店一帳合制とよ 制と厳しく制限するクローズド・テリトリー    ばれることがある。

制とに分けることがある。      「流通・取引慣行ガイドライン」では,

「流通・取引慣行ガイドライン」では,    流通業者の取引先に関する制限を次のよう 流通業者の販売地域に関する制限を次のよ   に区分している(第2第二4−(1)①〜③)。

うに区分している(第2第二3−(1)①〜④)。   ①帳合取引の義務付け:「メーカーが卸売

①責任地域制:「メーカーが流通業者に対    業者に対して,その販売先である小売業 して,一定の地域を主たる責任地域とし     者を特定させ,小売業者が特定の卸売業 て定め,当該地域内において,積極的な    者としか取引できないようにする」。、

販売活動を行うことを義務付ける」。     ②仲間取引の禁止:「メーカーが流通業者

②販売拠点制:「メーカーが流通業者に対     に対して,商品の横流しをしないように して,店舗等の販売拠点の設置場所を一     指示する」。

定地域内に限定したり,販売拠点の設置   ③安売り業者への販売禁止:「メーカーが 場所を指定する」。      卸売業者に対して,安売りを行う小売業

③厳格な地域制限:「メーカーが流通業者     者への販売を禁止する」。

に対して,一定の地域を割り当て,地域    上記の①,②はいずれも「これによって 外での販売を制限する」。      当該製品の価格が維持されるおそれがある

④地域外顧客への販売制限:「メーカーが    場合には不公正な取引方法に該当し,違法 流通業者に対して,一定の地域を割り当    となる」(同(2L(3))(13項)。従って帳合 て,地域外の顧客からの求めに応じた販    制は価格維持にっながる場合には違法とな 売を制限する」。       ると解される。③の安売り業者への販売禁 上記の①,②は「メーカーの効率的な販   止は通常,帳合制とは考えられていないが 売拠点の構築やアフターサービス体制の確    このようなものは「ガイドライン」では 保等のため」行われるものであって,③,    「当該製品の価格が維持されるおそれがあ

④に該当しない限り違法とはならないとさ    り,原則として不公正な取引方法に該当し,

れる(第2第二3−(2))。      違法となる」(同(4))(2項(その他の取引

③については,「市場における有力メー   拒絶)または13項)とされている。すなわ カーが流通業者に対し厳格な地域制限を行    ち,安売りを理由として販売禁止や出荷停 い,これによって当該製品の価格が維持さ   止をすることは,違法行為ということにな れるおそれがある場合には不公正な取引方    る。

法に該当し,違法となる」(同(3))とされ   6)小売業者の販売方法に関する制限 る11(一般指定13項)。      メーカーは直接或いは卸売業者を経由し

また,④は「メーカーが流通業者に対し   て,小売業者に対して次のような販売方法 地域外顧客への販売制限を行い,これによっ    に関する制限を行うことがある(「流通・

て当該製品の価格が維持されるおそれがあ   取引慣行ガイドライン」第2第二5−(1)① る場合には不公正な取引方法に該当し,違    〜④)。

法となる」(同(4))とされる(13項)。     ①商品の説明販売を指示する。

②商品の宅配を指示する。

(12)

③商品の品質管理の条件を指示する。     確には,仕入購買額(数量)を基盤として

④自社商品専用の販売コーナーや棚場を設   発揮する力という点では購買力はメーカー,

けることを指示する。       卸,小売のいずれもが持ち得るものである これらは,流通系列化のソフト側面の制    し,またこのような力は仕入購買額の絶対 限を代表するものであるが,商品の安全性    額によるものではでなく,購買先(納入業 の確保,品質の保持,ブランドの信用の保    者)との納入取引における相対的関係にお 持等の合理的な理由があり,どの小売業者    いてとらえられるものである。ここでは,

に対しても同じ条件となっているときには   購買力の主体が小売業者である場合を考え それ自体は独占禁止法の問題とはならない。   ているが,その購買力が高まることになる

しかし,小売業者の販売方法に関する制限    のは,次の2つの条件においてである。

が,再販価格の拘束など他の違法行為の実   ①納入業者のその小売業者への取引依存度 効性を確保するものとなっているときは違     が高い。すなわち,その小売業者の仕入 法行為の内容に応じてそれぞれ一般指定11    購買額が納入業者の取引全体に占める割 項,12項,13項に該当することがあると解     合が大きく,かつ納入業者にとって代替 される(以上同②)。       的な販売先を見っけることが困難である。

また,販売方法の制限には小売業の行う   ②小売業者の納入業者への取引依存度が低 広告・表示についての制限があるが,以下     い。すなわち,その納入業者からの仕入 のような価格に関するものは価格維持のお     購買額が小売業者の取引全体に占める割 それがある為に原則として違法(13項)と    合が小さく,かつ小売業者にとって代替 みなされている(同(3))。      的な仕入先を見っけることが容易である。

①メーカーが小売業者に対して,店頭,チ    もちろん以上のような場合,小売業者の ラシ等で表示する価格にっいて制限し,    仕入購買額はほとんどの局面で大きいもの 又は価格を表示した広告を行うことを禁    となるだろうし,こうした小売業者は通常 止すること。       は大規模小売業者である。この意味と条件

②メーカーが自己の取引先である雑誌,新   下において購買力の大きさとは多くの場合 聞等の広告媒体に対して,安売り広告や    実質的に大規模小売業者の仕入購買額(数 価格を明示した広告の掲載を拒否させる   量)の大きさである。

こと。       2)購買力の濫用と独占禁止法

さて,購買力を背景にして大規模小売業 5 主に大規模小売業者を主体とする問題領    者は,納入業者からさまざまなメリットを

域      引き出すことができる。代表的なものとし 第3の領域は小売業,とりわけ大規模小売    ては数量割引(volume discount)があげ 業を主体とする問題領域であり,主として大    られる。これは割引の代表的な存在である 規模小売業者の購買力にかかわる諸問題とし   が,通常は合理性のあるものとしてほとん てとらえられる。このことにっいて,この領    どの文化圏で受け入れられており,それ自 域の商慣行と共に説明する。      体は正常な商習慣とみなされる。しかし,

1)購買力の概念      これは良いとしても現実に購買力を背景に

「購買力(buying power)」は,大規模    引き出されるさまざまなメリットには,不 小売業者がその大きな仕入購買額(数量)    公正な取引方法として独占禁止法違反にな を基盤として発揮する力を指している。正    るものがある。これらには例えば次の行為

(13)

小宮路:日本的商慣行       81

が該当する。       考慮する。」としている(第2部第五1一

①納入業者に一方的に不利益な価格,取引    (2))。また,一般指定14項「優越的地位の 条件を強要する。具体的には,正常な商    濫用」(abuse of dominant position)各 習慣を逸脱した割引・値引(例えば1円    号の規定からすれば,

納品)を要求する(不当な買叩き),買   ①取引に関係のない商品・サービスを購入 取仕入であるにもかかわらず売れ残った     させる。例えば押付け販売。

などの理由で商品の引き取りを一方的に   ②経済上の利益を提供させる。例えば協賛 要求する(納入後の仕入形態の一方的変     金等の負担強要や販売員の派遣強要。

更,不当な返品),納入後に売れ行きが   ③相手方に不利益な条件で取引する。例え 思わしくないなどの理由で納入代金の支     ば1円納品の強要。

払いを一方的に値引してしまう(納入後    ④経済上の不利益を与える。例えば,不当 の不当な値引),など。      な返品。

②納入業者に納入取引に直接関係のない利    といった行為は14項該当として不公正な取 益を提供させ,あるいは不利益を強要す    引方法となる。

る。具体的には,協賛金・協力金等の名   3)返品制の概要

目で納入業者から一律にまた取引額に応     大規模小売業者の購買力にかかわる商慣 じて負担を割り当て金銭を徴収する(協    行としては代表的なものに返品制があげら 賛金の支払強要),仕入担当者が納入業    れる。

者を対象に商品購入を割り当てて強要す    商慣行としての返品制(return of unsold る(押付け販売),販売員の派遣を要請    goods)は,商取引において商品の買手 し納入商品の販売とは直接関係のない業    が売手に売れ残り品を返品する慣行である。

務をやらせる(派遣の強要),など。     日本的取引慣行の主たるものの一つとされ 以上の行為の実効性は,大規模小売業者    ている。返品制は小売業者が買取仕入した 側から納入取引打切りを宣言ないし示唆す    (しかし,流通の金融機能により仕入代金 ることや納入業者側に取引打切りの可能性    の支払いを猶予されている)商品の売れ残 を想起させることで確保されている。これ    りや見込み違いを納入業者である卸やメー は「大規模小売業者の優越的地位の濫用    カーに返品する慣行と解するのが通常であ

(行為)」,「購買力の濫用(行為)」等と呼    る。委託仕入または消化仕入では売れ残り ばれるものである。「流通・取引慣行ガイ    品にっいて返品されることが予め了解され

ドライン」では,「小売業者が納入業者に    ているが,買取仕入においてこのような返 対し取引上優越した地位にある場合」にっ    品がなされるのは,「買取った以上,売れ

いて「当該納入業者にとって当該小売業者    残りのリスクは自らが負わねばならない」

との取引の継続が困難になることが事業経    という「買取」の言葉の本来論から言えば 営上大きな支障をきたすため,当該小売業    奇妙なこととされる。ところが通常の買取 者の要請が自己にとって著しく不利益なも    仕入ではこのような返品の可能性が残る為 のであっても,これを受け入れざるを得な    に,本当に返品はしないとの意味で「完全 いような場合であり,その判断に当たって    買取」という表現もあるほどである。また,

は,当該小売業者に対する取引依存度,当    返品は買取契約を事後的に委託販売契約に 該小売業者の市場における地位販売先の    切り替えたり,新しい商品との交換という 変更可能性,商品の需給関係等を総合的に    形を取ることもある。売手の責によるキズ

(14)

モノやサイズ違い,納期遅れなどの広義の     とである。

不良品の返品(日常語としての返品はこち   ②顧客にとって小売店頭は実際に商品と出 らを指している)とは異なり,売れ残った    会う主たる場所の一っであり,顧客は,

という理由だけでなされる返品であるので,    そこで商品の現物に自由に触れ,比較対 このようにして行われている返品制は,     照することで商品に対する決定的な情報

「良品返品制」と理解される。      をはじめて手に入れられる。この観点か 返品制によって小売業者は売れ残りのり     らすれば,メーカーは自社製品が小売店 スクを回避できるが,反面,仕入や販売が    頭で十分な量で常に陳列されていること 散漫・無計画になることがある。納入業者     や顧客に自由に比較購買させることが販 は返品されてきた商品を需要の旺盛な地域    売促進にっながると考えることが合理的 や時期に再出荷することもあり(例えばファッ    である。同時にこれは売れ残り品や陳列

ション衣料。この点で返品は需給調整に役     中の汚損等の発生をもたらすが,メーカー 立ちむしろ積極的に評価される),そのま    はこの負担を小売店に押し付けず自ら積 ま廃棄してしまうこともある(食品など)。    極的に負うようにして,自社製品の出荷 返品制の背景には,先ず第一に大規模小売    量の増大を図ってきたということである。

業者の購買力があげられるが,背景原理と    一面これは消費者にとって,返品制によっ して仕入契約の曖昧性や取引の長期継続性     て豊富で幅広い品揃えや自由気ままな買 が原因として指摘されることもある。また,    物を楽しむことができることを意味する。

大規模小売業に限らず一般小売店でも売れ   ③上記の②を背景にしたメーカーによる押 残りを理由とする返品がしばしば行われて     し込み的な販売の結果,流通在庫が常に いる。この原因としては一般小売店の小規    過剰である傾向があること。これにより,

模零細性などが指摘される。っまり,これ    流通業者が容易に売りさばけない量の製 らには売れ残りリスクを負担するだけの経     品が流通段階に常態的に滞留する可能性 営基盤がないということである。        がある。メーカーはこれを返品という形

なお,返品を受け取る側,とりわけメー    で循環させている。

カーのサイドから返品制をみた場合は,以    ④出荷実績を上げるためのメーカーによる 下の理由から返品を受け入れているものと    月末や期末の意識的な押し込み販売の結 考えられる。       果,月初めや期首に返品を受け入れざる

①現代の消費財の生産・マーケティングは    を得ないこと。

ほとんどの場合,メーカーの見込み生産・   ⑤活発な新製品導入など製品導入・廃棄の マーケティングで行われる。流通業にお     サイクルが短縮化していること。すなわ いても言わば見込み仕入,見込み販売が     ち,新製品導入のリスクをメーカーが返 行われている。見込みである以上,販売     品の形で吸収していること。この場合,

予測が外れることがしばしば生ずるが,     返品制は新製品等の参入促進効果を持っ。

このリスクをメーカー,卸,小売が各段    ⑥メーカーにとっては,建値維持や売れ残 階それぞれ応分に負担するということで     り自社商品の値崩れ回避が重要であるこ

なく,メーカー同士の販売競争や活発な     と。この場合,返品制は建値制を保持す 新製品導入を背景として,納入業者側の     る効果を持つ。

メーカーや卸,特にメーカーがこれまで   ⑦小売業が推奨販売や店頭での陳列や棚上 このリスクを専ら負担してきたというこ    での特別な取扱いをしてくれることに対

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