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氏名 小川オガワ

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 小川

オ ガ ワ

ト モ

ヒ ロ

所 属 理工学研究科 物理学専攻 学 位 の 種 類 博士(理学)

学 位 記 番 号 理工博 第

191

号 学位授与の日付 平成

28

3

25

日 課程・論文の別 学位規則第4条第

1

項該当

学 位 論 文 題 名 将来宇宙ミッションに向けたマイクロマシン技術を用いた超軽量

X

線望遠鏡の研究(英文)

論 文 審 査 委 員 主査 准教授 江副 祐一郎

委員

教 授 大橋 隆哉

委員 准教授 柳 和宏

委員 教 授 田原 譲

(

名古屋大学

)

【論文の内容の要旨】

本文

X

線はブラックホール、銀河団、地球磁気圏などから放射されており、宇宙の高エネルギ ー現象を探る手段として確立してきた。観測において、

X

線を集光結像させる望遠鏡は必要 不可欠である。X 線望遠鏡では全反射を用いた斜入射光学系、特に

Wolter I 型という放物

面、双曲面からなる2回反射光学系が用いられる。しかし、全反射では

1 keV

X

線に対 する臨界角は数度程度と非常に小さく、

1

枚の鏡当たりの面積は小さい。そこで鏡を光軸回 りに多数配置する必要がある。一方、

X

線は大気で吸収されるため、衛星などで高高度から 観測する必要があり、厳しい重量制限が課される。そのため

X

線望遠鏡には、重量が軽く、

かつ反射面積が大きく、角度分解能が良いものが求められる。

従来の

X

線望遠鏡は、鏡を

1

枚ずつ作り、正確に配置する手法がとられてきた。鏡の製

法は、基板を直接研磨する手法、正確な母型に金属を電析する方法、Al フォイルを熱成形

する手法に大別できる。しかし、角度分解能を良くするには、剛性の高い基板で正確な形

状を実現する必要があり、重量が大きくなるという問題があった。そこで注目されている

のが微細穴光学系である。鏡を縮小し重量を削減する。縮小による反射鏡当たりの有効面

積の減少は、枚数を増やす事で対応する。私は微細穴光学系の一つとして、マイクロマシ

ン技術を用いた独自の手法を研究した。ドライエッチングを用いて約

300 µm

厚の薄いシリ

コン基板に、幅 約

20 µm

の曲面穴を開け、側壁を 反射鏡として用いる。

X

線反射鏡には

µm

スケールで約 1 nm rms を切る表面粗さが求められるため、側壁を平滑化する高温アニー

(2)

ルを加え、さらに天体からの平行光を集光するため高温で球面に塑性変形する。反射率を 上げるため Ir 膜付けを行い、異なる曲率で変形した2枚の基板を重ねれば、Wolter I 型 望遠鏡となる。

本手法では、鏡が微細なため、世界で最も軽い鏡、重量面積効率で ~10 kg/m

2 が可能で

ある。これに比する効率 (~25 kg/m

2) を達成してきているのがガラスファイバーを用いた

手法であるが、Wolter I 型望遠鏡での角度分解能が

Half Power Diameter (HPD) で約 30

分角以上と、従来の望遠鏡に比べ

1

桁以上悪いという問題があった。一方、本手法で開発 した Wolter I 型望遠鏡の試作品も、角度分解能は Full-Width at Half Maximum は約

4

分 角であるものの、

HPD は約110

分角と悪く、有効面積も理想的な場合の 69 mm

2 に比べて、

32 mm2 と低いことが分かった。そこで本研究では、これらの成因を探るため実験データを

詳細に解析すると共に、新たに構築した光線追跡計算を実験と比較し、原因を特定した。

さらに製作プロセスを改良して性能の改善を行った。

私はまず

Wolter I

型望遠鏡に使った

2

枚の変形後の基板それぞれに

X

線を照射したデー タを解析し、角度分解能劣化の要因を調べた。その結果、HPD は各基板の状態ですでに約

50-90

分角と悪く、 原因として形状精度と配置精度の

2

つが寄与していることを見いだした。

前者は、鏡表面のうねりによる反射角の広がりに寄与し、主に

pencil beam で小さな領域

X

線を照射した際の像の広がりから分かる。後者は鏡の配置ずれによる反射光の中心位 置のシフトに寄与し、光学系の一部に

X

線を照射した際の像の位置ずれから分かる。その 結果、形状精度は

HPD

で約

20-40

分角寄与し、配置精度が残りの大部分を占めると予想さ れることが分かった。そして、形状精度と配置精度や表面粗さなどの効果を考慮した、光 線追跡シミュレーションを新たに構築し、

Wolter I

型望遠鏡の有効面積を計算した所、

29 mm2

とほぼ実測値と一致することを見いだした。

すなわち、角度分解能と有効面積改善の鍵の一つは、配置精度にある。配置精度はドラ イエッチング時の穴の基板に対する垂直性や、変形時のゆがみによって決まると考えられ る。そこで私はドライエッチングの条件を見直して、穴の基板に対する垂直性のばらつき を

HPD

で約

10

分角相当に抑えた。そして、製作した

1

回反射型光学系について、配置精度 を穴の垂直性と変形による寄与を分離して調べるため、変形前後の基板に対して、

X

線照射 測定を実施し、配置精度は変形前が約

10

分角、変形後が約

20

分角となることを見いだし た。すなわち、従来からは大きく改善したが、変形プロセスにまだ改善の余地がある。

一方で、新たな

1

回反射光学系においても形状精度は

HPD

で約

20

分角と、依然として、

従来の衛星搭載望遠鏡並の

1

分角台もしくはそれ以下には達していない。そこで、私は形 状精度と鏡の表面形状測定との相関を調べ、60-100 µm のスケールの反射面のうねり (rms 粗さ)が形状を決定していると結論づけた。現在のうねりは約

10 nm rms

であるため、形状 精度を

5

分角台にするには、約

5

倍以上、改善する必要があることを意味する。

以上のように、私はマイクロマシンを用いた独自の微細穴光学系の研究を推し進め、

Wolter I

型望遠鏡の試作品で従来問題となっていた角度分解能と有効面積の原因を特定す

(3)

ると共に、

2

つの主原因である配置精度と形状精度の両方について改善の道筋を付け、本望

遠鏡を将来ミッションの搭載に近づけた。

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