• 検索結果がありません。

ソロモン・バーキンの時間研究論

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ソロモン・バーキンの時間研究論"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ソロモン・バーキンの時間研究論

三  原  泰  熙

I 序

ソロモン・バーキン(Solomon Barkin)はアメリカ繊維労働組合(the

(1)

Textile Workers Union of America)の調査部の技術担当責任者として, 国際婦人服労働組合の経営技術部長であったゴンハーグ(William Gom‑

berg)と並んで, 1940‑1950年代のアメリカ労働運動を代表するI E論を 展開した。本稿は,仏経労働組合の経験からまとめられた時間研究批判と彼 によって新しいアプローチとして提案されたベンチマーク法(bench‑mark approach)をとり上げることにする。それは鋸陸産業の労働と経済構造の

(2)

特殊性,生産標準に関する歴史的経験を背景として展開されたものであり, また労働組合サイドからの時間研究論,生産標準問題‑の取組みともいえる ものである。しかしここでは彼の時間研究批判とベンチマーク法の要点を紹 介・吟味し,それを通じて時間研究および生産標準設定問題の解明の手がか りを得ようとするものである。

註(1)繊維労働組合の技術サービス・スタッフの必要性,日的,械能,組織につい ては Solomon Barkin, "The Technical Engineering Service of an American Trade Union," International Labor Review, Vol. 61, No. 6 (June 1951) pp. 609‑636, do., "Labor Union Research

Department," Personnel Journal, Vol. 19, No. 8 (February 1941) pp.290‑299を参照。

(2)ゴンハーグは時間研究問題を産業労働の型に従って3分類しているが,その

(1)として,過程が機械ペースで自動的である産業における標準設定問題をあげ,

その典型は織紙産業としている。他の2は衣服産業とサービス産業である。披維

産業を代表する労働は半自動機械を扱う労働であり,労働者の作業は糸の切れ

(2)

1 1 2   経 営 と 経 済 たとき,椴械の故障のとき,機械が停止したときにおこなわれる。 (W i 1 1 iam Gomberg ,  "Trade  Union  and  I n d u s t r i a l   Engineering , "   W. G. 

I r e s o n   and E .   L .   Grant ,  e d s . ,  Handbook of l n d u s t r i a l   E n g i n e e r i n g   and Management ,  1 9 5 5 .   p .   1 1 4 8 ) なお繊維産業の各程労働については,

R .   Blauner.  A l i e n a t i o n   and  Freedom:  The Factory  Worker  and  His  l n d u s t r y ,  1 9 6 4 ,佐藤慶幸監訳,

w 労働における疎外と自由~

(昭和 4 6 年 〉 104‑105 頁 , 109‑114 頁参照。アメリカ繊維産業の経済杭造についてほし G.  Reynolds  and  C .   H.  Taft ,  The  E v o l u t i o n   of Wage S t r u c t u r e ,  1 9 5 6 ,  p p .   66‑68 ,  R.  B 1 auner ,前掲邦訳, 105‑109 頁参照。労働組合の 発展については, Reynolds and Taft , 。 ρ . c i t . ,  pp.  68‑70 参照。

生産標準に関する経験の事例研究としては, Sumner H. S l i c h t e r ,  Union  P o l i c i e s   and  l n d u s t r i a l   Management ,  1 9 4 1 .   Chapter XVIII ,  pp. 5 3 2  

‑559. 参照。

I I   1 1 寺問 i i i f 究批判

ノてーキンはまず既存の時間研究技法を研究し批判しているが,その目的 は,乙のような調査研究を通じて時間研究者の企画する課業の性質を明らか にするとともに,団体交渉参加者に役立つ,より満足のゆく手続の発見を促

( 1 )  

進することにあった。その批判的検討は基本的・共通な問題の検討と具体的 方法の吟味より成っている。

註 ( 1 ) Solomon Barkin ,  " D i v e r s i t y  o f  Time Study P r a c t i c e , "   l n d u s t r i a l   αnd Labor R e l a t i o l l s  R e v i e ω ,  Vol ,  7 ,  No. 4  ( J uly 1 9 5 4 )  p .   5 3 7 .   ( 1 )   共通の基本問題

f

ーキンは時間研究問題を人間努力 (humanapplication) の測定問題と して把握し,既存の具体的方法の検討に先立って共通の基本問題として時間 研究にみられる諸概念の吟味をおこなっている

o

その要点は次の如くであ る 口

1 .   人間努力の概念規定の欠除

時間研究の焦眉の基本問題とは,パーキンによれば r 人間努力の受容し

(3)

( 1 )   ( 2 )  

うる尺度,度量基準」と「客観的に決定される標準」を確立する問題であ

( 3 )  

o

そしてそのためには「具体的な人間努力の定義を結品」させねばなら ない。

人間努力の水準を測定,記録,評価する現在の方法は時間研究専門家のア イディアと実践にもとづいて展開されてきた。そのさい「時間研究実務家は 基本的に人間の努力が実際の物的産出高から区別されねばならないと考えて

( 4 )  

いる」が,彼らはその困難を感知して時間研究の実践的技法に焦点を絞り,

それによって定義と概念というやっかいな問題を柔道りすること,そして定

( 5 )  

義と概念の構成を不必要にする測定技術を発展させることを希求した。その 結果,人間努力を測定するための明白かっ正確な尺度は未だ定式化されてお らず,時間研究はせいぜい実際の経営管理上の必要を充たすのに役立つ方便 を提供するために工夫された一時の間に合せとして,プラグマチックに成長

( 6 )  

してきたにすぎない。

2 .   人間努力と速度

時間研究者は,上述の如く,人間努力と物的生産高とを区別する必要を認 めながら,その人間努力を意味するところについてはほとんど一致せず,あ

( 7 )  

るいはそれを定義する努力すらおとなわれていない。その結果として身体の

( 8 )  

動きのみに注目することになり,ほとんどの実務家が「身体の動作の速度を ( 9 )  

人間努力の水準の指標,努力の数量的に規定された水準とみなす」ことにな る

D

しかしながら I 動作の速さは人間努力の程度の記述としてはもはや耐

( 1 0 )  

えることができない」のであり,それには次の如き理由があげられている

o

それぞれの動作には少なくとも三つの異なる速度,すなわち加速されつつあ

る速度,安定した速度,遅くなりつつある速度があり,観察された速度は

J

重にこれらの速度に照らして解釈されねばならなし」また仮に人間努力が速

度によって解釈されるとしても, j i ) J 作をおこなうときに辿過する相対的困難

度によって調整されねばならない。けだし同じ努力の動作でも異なる速度で

なされることもあり,逆に同一人の同じ速度でも呉なった努力水準の乙とが

あるからである

O

そして「最近になってやっと,人間動作の5ili皮のみが人間

努力の水:准を決定するものではない,というととが認められるようになっ

(4)

経 営 と 経 済 ( 1 1 )  

た」と。

3 .   人間努力の標準

時間研究者に共通の傾向のーっとして,人間努力の水準なり捺年を普遍的 (

1 2 7   なもの,いつ・どこでも通用できるものとみなす傾向がある

o

時間研究のすべての手続の基礎にある仮定は,すべての任意の型の仕事に おいて努力の水準が一つの尺度で測定されるということであり,第二に,一 つの統一的シンボルがすべての型の動作における同一水準の努力を表わすの に伎用されうること,そしてこのシンボ

j

レは任志の労働者作業,条件,業績

( 1 3 )  

の差異にたいしても通用できるという仮定である

o

この場合,すべての観察

( 1 4 )  

を一つの尺度に転換する能力が仮定されている

o

そして次の段階として一組 の値のなかから標準が選択されることになるのであるが,しかしながら一つ

( 15 )  

の標準を選択するための具体的な指針はほとんど与えられていない。そこ (

1 6 )  

ではきわめて抽象的な「同義反復的な記述」しかなされていない。例えば a  norma   , l r e a s o n a b l e   performance ,  t h e   i d e a l  s p e e d  o f  movement ,  a  medium c o n d i t i o n  between e x c e s s i v e  s p e e d   and i n d o l e n  a c t i v i t y 等の 如くである

O

他方,このようなあいまいな表現にたいして標準の具体例があげられる場 合がある

D

例えば l 時間 3 マイノレの歩行 1 分間 5 0 字のタイプライティン グ , 3 0 秒間に 5 2 枚のトランプカードを 4 分類する速度を椋準とする提案,あ るいは兵士が注意、を払いながら 1 時間3.6 マイノレ行進する速度,あるいは 5 ポンドの荷物をもって l 時間3 . 0 9 マイル行進する速度を椋準とする米国陸軍 の例などである

D

この場合,それは努力水準の具体化の努力としては一応の 評価は与えられるが,しかしながら,次項の「評定」においてもふれられる ように,種々の異なる型の動作にたいする標準としては不十分である。この 点に関して,最後に「今後の研究のための質問」のなかで i 工業の標準は なされている仕事の型に関連があるにちがいない口努力の一つの定義で、本当 に十分で、あるのか?,労務者(l a b o r e r ) の努力を定型的な吉記労働者の努 力,機械工,組立労働者,熟練クラフトマン,専門職員,教員の努力と等値

( 1 百

できるのか ?J と述べている口乙の疑問から後述のベンチマーク法では,椋

(5)

準は同じ型の作業にのみ有効であるという限定がつけられ,それぞれの型の 作業にたいしてそれぞれ一つの標準がきめられるべきである,いう主張が導

き出されることになるのである

o

4 .   定義の必要性

以上の如く,パーキンは現在の時間研究の基礎の不十分さを指摘した後 に[""われわれは人間努力のより適切な概念とその努力の異なる水準の芯味

( 1 8 )  

を定義することが必要である」と述べている。そのさい彼自身はその概念と 意味の展開をおこなってはいないが,断片的には次のような記述がみられ る 。

「最近になってやっと人間動作の速度のみが人間努力の水準を決定するも

( 1 1 )  

のではないということが認められてきた J ,また,

「われわれは仕事の動作における人間的支出がエネノレギーの消費をはるか に超えていることを知っている。それは健康への影響,事故性向,成長ま たは退化,仕事の能率,個人の一時的および生泥の満足,を合むものであ

( 1 )   9 る」と。

結論として作業努力の自然単位 ( an a t u r a l  u n i t  o f   work app i 1 i c a t i o n )   はないのであって,努力を定義し測定するために必要な一辺の知識を展開す る乙とが必要であり,このような科学的な基礎づけがなければ時間研究法は 科学者と労働者の双方から攻撃を受けつづけるであろう,と結んでいる。 四

このようにパーキンが人間努力の水準と標準の普遍性を否定し,作業努力

の自然単位はないと述べているところにおいて,彼が時間研究・作業標準設

定の自然科学的・技師的接近から抜け出ようとする怠図をみることができ

o

しかし他方では,事実の客観的把握のために人間努力の定義と客観的に

決定される標準の確立の必要性を強調するのであり,その限りでは未だ技師

的発想の残浮をとどめているようである。もっともパーキンが人間努力の水

準の定義というとき,速度やエネノレギ一泊:'0 1 以外にきわめて広い包括的な内

容が怠図されていることは注目すべきである

G

とはいえ,はたしてこのよう

な定義と客観的な標準の確立が可能であるか,また必要であるかは検討を要

するであろう

O

そして彼自身が労働組合の技術サービス・スタッフの組織に

(6)

ロ 1 )

関 し て 認 め た よ う に , 一 見 技 術 的 問 題 に み え る 作 業 標 準 が す ぐ れ て 経 済 的 な 問 題 と か か わ り を も っ て い る 以 上 , 少 な く と も 技 術 的 な 内 容 の み の そ れ は 不 可 能 で あ り , ま た 不 必 要 で あ ろ う

G

註 ( 1 ) ( 2 ) Solomon Barkin ,  "Concepts  i n   the  Measurement o f   Human  A p p l i c a t i o n , "   l n d u s t r i a l   and Labor R e l a t i o n s   Review ,  Vo l .   7 .   No.  1  (October  1 9 5 3 )   p .   1 0 3 .  

( 3 )   Solomon Barkin ,  " D i v e r s i t y  o f  Time Study P r a c t i c e , "   l n d u s t r i a l   and Labor R e l a t i o n s  Review ,  Vo l .   7 ,  No.  4  ( J uly  1 9 5 4 )   p .   5 3 7 .   ( 4 )   Barkin ,  "Concepts , " 。 ρ . c i t . ,  p .   1 0 5 .  

( 5 )   Barkin ,  " D i v e r s i t y , "  o p .   c i t . ,  p .   5 3 7 .   ( 6 )   Barkin ,  "Concepts , "  o p .   c i t . ,  p .   1 0 3 ,  1 0 6 .   ( 7 )   l b i d . ,  p .   1 0 7 .  

( 8 )   パーキンは時間研究者が同元まする基本的事項,共通の信念として 4 項目をあ げている。

l .   時間研究者の第一の関心は人間努力の肉体的または手工的な形式である。

より詳しくいえば,彼ば身体の運動に内在的な身体の調整よりもむしろ観察し うる動作を扱う。

2 .   時間研究は思考または判断によって妨げられる乙とのない自動的な動作に 集中する。延長された,または複合的な精神的作業は,実際のととろ,時間研 究の範囲外である。

3 .   時間研究は人間努力から身体の勤き,または精神的・肉体的疲労を救済す ることに第一の関心があるのではない。疲労は物的産出高に作用するー要因で ある。

4 .   努力の水準は基本的ー普遍的なものと考えられている。標準はど乙でも適 用できる。 (Barkin , "Concepts , " 。 ρ . c i t . ,  p p .   106‑107.) 

( 9 )   l b i d . ,  p .   1 0 7 .   ( 1 0 )   l b i d . ,  p .   1 0 8 .   ( 1 1 )   l b i d . ,  p.  1 1 6 .  

( 1 2 )   l b i d . ,  p .   1 0 6 . 木項註 ( 8 ) 参照。

(

1 3 )   l b i d . ,  p p .   110‑111. 

(7)

( 1 4 ) ( 1 5 )   I b i d . ,  p .   1 1 1 .   ( 1 6 )   I b i d . ,  p .   1 1 2 .   (

1 司 I b i d . ,  p .   1 1 8 . ちなみにパーキンの指摘する今後の研究のための質問の他 の 3 項は次の如くである。

1 .   規準の普遍性の主張は信じがたい。労働者間の大きな相違(肉体的条件,

性,年令,学歴,食事,文化)を考えると,かかる主張はまったくおどろくべ きである。他方,との差異は標準の選択にいかなる関連があるのか?

2 .   生活の異なるパターンは努力にいかに作用するか?仕事をしている人々の 努力とレジャー活動に従事している人々の努力との聞をいかに区別するか?

3 .   努力の標準は経済的取引の一部分である。それらが労働者の j 招待または価 値体系に合致するならば受け入れられるかあるいは黙諾される。それが一致し ないときに緊張と不安が起る。いかにして取引が最も効果的に達成されるか?

またどのようにしてこれらの観念と価値が,期待される努力水準の他の決定要 因との調和のために,定義され表現されるべきか? ( I b i d . ,  p .   1 1 8 )   ( 1 8 ) ( 1 9 )   I b i d . ,  p .   1 1 5 .  

)1

I b i d . ,  p .   1 1 8 .  

( 2 1 )   Barkin

, 日

The T e c h i c a l   Engineering S e r v i c e   o f   an  American  Trade Union , "   o p .   c i t . ,  p .   6 2 1 .  

( 2 )   時 間 研 究 技 術 の 批 判

前 述 の 如 く パ ー キ ン は 現 在 の 時 間 研 究 技 術 に 共 通 の 基 本 概 念 の 欠 除 を 指 摘 し,人間努力とその水準の定義の必要性を折摘した

D

それに続いて彼は,時 間研究者は定義と概念の構成を不必要にすべく測定技術を発展させようとし たが,明確な価値尺度を展開する乙とがなければ乙れはおそるべき企てであ り,はたして時間研究者がその目的を達成したか否かをみきわめることが必

( 1 )  

要である,として具体的な時間研究方法 (techniques) の検討をおとなって いる。さしあたりその批判の要点を要約すれば次の如くである

D

( 2 )   1 .   測定時間値の修正

初期の時間研究方式は記録された実際時間をあらかじめきめられた要因に

よ っ て 修 正 し よ う と 企 て た が , そ の 代 表 例 は メ リ ッ ク (D. W. Merrick) 

(8)

の数学的・機械的方法であった。類似の方法はたえず現われたがそれを採用 した実務家はほとんどいなかった。

その一種で最も新しい提案として統計的処理方法がある口

「標準時間値を得るために記録された時間値のたんなる統計的分析はもち ろん同様な批判をうける。(まず)使用者によって設定されたきびしい生産 標準と競争的作業条件のもとで生きのびた特定の職務の特殊な従業員の集団 から得られる時間記録はおよそ従業員全体の代表(値)でなさそうである。

(また)労働者の実際の成績はたんに彼の能力によってのみならず個人的,

肉体的,社会的,心理的諸要因によっても規定されるのであって,これらす べてが実際に発都される作業能力の比率を制限する

o

その結果,母集団より 高度に選択された標本の時間記録はそれが少数者の実際の記録を記述したと

( 3 )  

いうことを除けば,疑わしい値である

o

J そして現実に経営者はこの方法を 重視しなかった。それは経営者が実際の努力水準をより一般に受け入れられ る規準にまで高める可能性を発見するのを助ける手続を望んでいたからであ

( 4 )   る 口

2 .   評定 ( r a t i n g )

標準を見出すために実際時間値の評定がおこなわれるが,それについては 次の如く批判されている口

時間研究者が標準時間値の決定にたいして普通与える答は,実際時間値は 通常または標準として選ばれた努力の水準に調整さるべきであるという乙と である

D

しかし乙の調整をおこなう方法は種々稔々である

o

評定は一般に,

人間の忘れっぽいイメージや,評定する動作に関連のあるあるいは関連のな

( 5 )  

い標準的フィノレムから人間の身体の勤きを評定できると仮定している

o

また それは評価にすぎないのであるから,その結果は克大さの誤り,集中化傾 向,あいまいさ,個人的ムード,評定者の偏見によって影響をうけることに

( 6 )  

なる。 「賃金管理における評定の経験から,判断は評定者が達成しようとす

( 7 )  

る結果によって影響されるという重要な教訓が得られた J のであり,評定者 の規準は固定しているのではなく,集団的・環境的要因によって,とりわけ

( 8 )  

監督者によって左右され影響をうけるのである

o

(9)

これらの評定に関する批判は既に多くの論者によって指摘されていると乙 ろであるが,時間研究実務家はこれらの批判によって動揺しておらず,それ は「目的」がまったくちがっているのであって,実務家による時間研究の目 的は事実の公正な決定ではなくて,それどころか,それがどのように達成さ

( 9 )   れるにせよ,労働者の努力の増大にあるからである

D

3 .   標準資料法と PTS

それまでの時間研究方法に向けられた批判を回避し,主観的判断を取除く ことを目指して標準資料方式 ( S t a n d a r dData s y s t e m ) や PT S ( P r e d e ‑

( 1 0 )  

t e r m i n e d  Time S t a n d a r d  s y s t e m ) が展開された

o

それがより一貫性のあ る標準と賃率設定の管理運営のより容易な方法の可能性を提供するように見

( 1 1 )  

えたからである。しかし,これら標準資料方式の展開にさいして椋拐

z

された 目標にもかかわらず1"最初の資料は既存の方法のいずれかを使用する時間

{ 1 2 )  

研究によって展開される」のであり,決して評定等における判断の要素を取 除くというスローガンがそのま〉実現されているわけではない。

劫作研究の知識の増加は,要素的人間動作のあらかじめ決定された標準時 間値の普遍的な体系としての PTS の展開を刺戟した。 PTS は人間努力の 水準の測定という既述の基本問題を解決することなく,職務の密度の高い研 究を増加させはしたが,その技法は評定や標準設定実務に多くの新しい困難 を追加し,既存の方法に新しい手続を追加し,実務家の利用しうる代替案を

( 1 3 )  

増加させたにすぎない。そして PTS に関する主要な問題点として次の 1 2 点 ( 1 4 )  

が指摘される。

(  i  ) それは最終時間佑に著しい影響を及ぼすとみなされた要系のみを分 離し,かくして再現できる形で動作を叙述する必要を無視することによっ て,劫作の叙述と分析の方法を過度に単純化している。

( i i )   動作は大まかに記述され,あるいはサーブリックの規定によって認 定されるだけである

o

前者の場合には観察された動作の分類は依然として判 断の問題として残る

O

後者の場合にはその記述はひとつのサーブリックを完 成するのに必要な身体の動きを区別できない。

( i i i )   休止から開始され終了する一つの独立した動作にたいする標準時間

(10)

1 2 0   経 営 と 経 済 値は,それが全体の動作の一部分で、ある動作には適用できない。信頼できる 標準時間値は独立した明確な動作にたいしてのみ設定できる。

( i v)  前以って決定される時間値は産業において再現する動作に適用でき るだけである

O

しかしこのような繰返しは,もし時間標準が真に独立した動 作にのみ適用されるべきであるとすれば,滅多にない。

(v)  (時間)値は限られた有効性しかもたない。けだしそれらは代表的 でない労働者集団から得られたものであるから,それを他の集団に迎用する には時間値の大きな修正か集団そのものの性質の大きな調整を必要とする

O

(v i )   乙の技法は普通の l 時間研究よりも一回人間努力の概念の明確化を要 求する,というのは,時間値はそれが得られた最初の資料 ( o r i g i n a ld a t a )  

にまったく関係のない情況に適用されるのであるから。

( v i i )   この方式は新しい情況に機械的に応用するのは適当ではなくて,最 も熟達した分析を要求する

o

カテゴリーと指示は客観的な量的な尺度によっ てではなく言葉によって表現されており,その結果,広範な誤りと個人的 差異の機会が生ずる。作業の現実にたいして適応がなされなければならな

し 、 。

( v i i i )   旧方式の適用においては存在しなかった新しい判断の要素がこの技 術の使用において導入される

D

旧評定方法では一つの粗雑な評価がなされて いたところに今やその数は大きく倍加されている

D

( i x)  技法適用の表面的な容易さが不適当な利用を促進する。

(x)  動作選択の誤り,あるいは時間値の事離が互に相殺されるというこ とを前提とすることはできない。

( x i )   これらの方式を適用した結果に関する多くの調査は,各方式が相異 なる,しかも一貫しない結果を生みだすことを証明した。個々の方式によっ て規定された人間動作の時間値で互に一致するものはほとんどない。

( x i i )   1  E技師たちは一般に,これらの方式が時間研究の代替手段を提供

し,あるいは時間研究に内在する困難を克服できると確信していない。若干

の人々は「最も正確な手続は各職務について時間研究を行なうことであろ

う」という結論を下している口

(11)

要するに r それらは時間研究の実践的方法に新しいアプローチを提供 し,職務の詳細な記述には貢献したが,しかしそれらは既存の手続の実践的

U 日

適応にすぎず,その科学的な資格を前進させなかった」のみならず1"それ らは標準設定手続を多くの新しい技術的ステップによって複雑にし,その結

( 1 6 )  

果,技術の神秘性と労使の交渉の困難を増大した」のである

o

4 .   要素時間の調整,余裕について

│時間測定と評定あるいは標準資料法や PTS によって通常時間 ( n o r m a l t i m e ) が算出されるが,しかし通常時間はたんに適格な作業員が普通のテン

ポで作業をおこなう場合の作業の所要時間にすぎない。したがって中断なし に一日中そのテンポで作業をおこなうことはできない。通常時間に加えて作 業者の私的必要時間,休息時間,自分がコントローノレできない原因による遅 延にたいする時間が必要である

O

そこで普通の実務では通常時聞にさまざま な余裕時間 ( a l l o w a n c e ) を加えることがなされる

D

これらの余裕時間の算定には程々の方法が提案されている

o

しかし,例え ば疲労時間については,ワーク・サンプリングや全日調査によって休息時 間,作業中断の度数,産出高の記録等が調査されているが,不幸にもその結 果は疲労余裕時間の大きさにほとんど示唆を与えることにはならなかった。

( 1 7 )   けだし生産高は多くの他の要因によっても影響をうけるからである。また不 可避の遅れにたいする余裕時間についてもそれを設けるか否かについてさえ 一致していない。このような現状において一部の時間研究者は皮肉にも,余 裕を継続的に使用する乙とによって標準時間測定の全努力が無駄骨折りにな

1 1 8 )  

ってしまう乙とに気づいているのである

o

それゆえパーキンは「その目的と するところは,これらの値(通常時間位)を実際の就業時間や作業現場の条

( 1 9 )  

件に適応させることである」と述べている。

5 . 小 括

以上の如くパーキンは既存の時間研究の検討をおこない,そこから次のよ

うな結論を導いている

o

多数の時間研究技術者によって展開された新しい方

法においても,時間研究の基礎的諸問題と諸困難の源泉は十分に検討され

ず,根本的にはそれらは古典的な時間研究手続を標準資料方式や PTS の数

(12)

1 2 2   経 営 と 経 済 値体系へ延長したにすぎず,それらは共 l 己最初の時間研究資料からの抽象で あり,せいぜいそれが抽出されたもとの時間研究と同程度の良さをもつにす ぎない。時間研究技師はそれによって作業標準設定の独占的コントローノレを 保持できる新しいアプローチを追求し,それを利用する経営者は組合が団体 交渉権を放棄することのできない領域において一方的判断を行使しているこ

。 とが明らかになる,と口

このパーキンの時間研究批判において注目すべきは,時間研究の基礎をな す基本概念と測定尺度の欠除していることを軸として時間研究そのもののも つ一方性が指摘されていることである

D

基本概念が確立していないために,

その測定と標準には多くの判断の要素が入り込み,そして時間研究は時間研 究者の判断にもとづき,それを定式化したものである

o

それゆえ時間研究を 受け入れることは時間研究者の一方的判断に服することになるロしたがって 経営者が一方的・独断的に時間研究を行なう場合はいうまでもなく,たとえ 労使共同の時間研究においても,あるいは労使がそれぞれ時間研究をおとな いその結果をつき合せても,時間研究がお乙なわれるかぎり,その一方性は

白 1 )

変らない,というのである

C

乙のように時間研究を根本的に否定したパーキンは作業標準設定問題の乙

( 2 2 )  

の現状にたいして二つの代替案を提起する。

第一は,人間努力と業積の測定に関する適切な科学的情報,ならびに各作 業における人間努力の水準の適切な選択のための経済的条件,個人的・社会 的価値の計算方法,の平行的発展を待つことである

O

第二には,とはいえその場の職務問題は処理しなければならない。そして そのー案は,時間研究技術者の行使する一方的判断を克服するために考案さ れ繊維産業で有効性が実証されたベンチ・マーク法(bench‑markapproach)  である。

註 ( 1 ) S o l o r n o n   Barkin , 

H

Di v e r s t i y  o f   T i r n e ‑ s t u d y   P r a c t i c e , " 。 ρ c i t . ,  p .   5 3 7 .  

( 2 )   マンデノレ (MarvinE .   Mundel)は乙れも評定 ( r a t i n g )の一つに包括し

ている

O

彼によれば評定の方法は,1.数学的なもの。 2 . 判断を要するもの,

(13)

に大きく分けられている。 (M. E .   Mundel ,  Motion and Time Study ,  3rd  e d .   1 9 6 0 ,山内二郎監訳・千住鎮雄・関根智明・川瀬武志・佐久間章行訳,

『動作・時間研究の理論と実際~

4 6 2 頁参照〉

( 3 )   Barldn ,  " D i v e r s i t y , "  o p .   c i t . ,  p .   5 3 8 .   ( 4 )   I b i d . ,  p .   5 3 9 .  

( 5 )   I b i d . ,  p . 5 3 9 .   r 多くの場合,……これまでに提案された穏々の方法では,

同じ基本的な手順をふんでいる。すなわち,観測者はレイティングをおこなう 際,次に述べる 2 つの段階をふまなければならない。

1 .   時間観察者は,観測中の作業の困難さを判断し,その作業が,もし観測者 が基礎として使用している標準作業の定義によって定められた条件の通りに お乙なわれているとすれば,どのようなものであるべきかというイメージを 頭に浮かべなければならない。

2 .   観測者は上の第一段階において形成されたイメージと,観測している実際 の作業ぷりとを比較し,それを定量的に評価しなければならない。 J (M. 

E .   Mundel ,邦訳前掲書, 4 6 4 頁,および同4 8 5 頁。傍点一三原〉

( 6 X 7 ) ( 8 )   Barkin ,  "Di v e r s i t y , "  o p .   c i t . ,  p .   5 3 9 .   ( 9 )   I b i d . ,  p .   5 4 2 .  

側 この方式のアイディア,要素動作時間のハンドブックの構想は時間研究を工 夫した F .W.テイラーにおいてすでにみるととができる。 ( F . W. Taylor , 

"A Piece Rate  System ,  Being a  Step toward P a r t i a l   S o l u t i o n  o f   the  Labor Problem , "   C .   B .   Thompson ,  e d .   S c i e n t i f i c  Management ,  1 9 1 4 ,  P .   6 5 3 ,  p .   6 5 8 ,)なおパーンズ C R . M. Barnes) は公表された方 式として 9 方式について,初めて採用された年,初めて公表された文献,参考 文献,資料の最初の入手方法,開発者名の一覧表を掲げている。 (R. M. 

Barnes ,  Motion and Time Study ,  4rh  e d .   1 9 5 8 ,大坪直訳『動作・時間

研究~

452‑453 頁参照)

U l )   Barkin ,  " D i v e r s i t y , " 。 ρ . c i t . ,  p .   5 4 2 .   r 合成時間標準は,きわめて多

数の作業を直接時間研究して得たデータをもとにして合成した時間標準であ

る。これらの時間研究によって得たデータを伎う方が個々の時間研究によって

得たデータを伎うよりも,より一貫した標準を得ることができる。 J (M. E .  

Mundel ,邦訳前掲:古, 5 8 9 頁。傍点一三原)

(14)

1 2 4   経 営 と 経 済 U   l 2 Barkin ,  "Diversity , "  o p .   c i t . ,  p . 5 4 3 .パーンズはその一覧表において 最初の資料の入手方法をあげている(前掲註1 0 . 参照 ) 0 r すべてのことが語ら

れ,なされるとき,レペリングは除去されなかった。すなわち,それは基礎資 料のなかに存在する。 J (W.  Gomberg ,  A Trade Union Time Study ,  2nd  e d .   1 9 5 5 ,  p . 2 2 4 . )  

U 3 )   Barkin ,  "Diversity , "  o p .   c i t . ,  p .   5 4 4 .   U 4 )   l b i d . ,  pp.  544‑545. 

U 5 ) U 6 )   l b i d . ,  p .   5 4 5 .  

u n   l b i d . ,  p .   5 4 6 .   U 8 )   l b i d . ,  p .   5 4 7 .  

U 9 )   l b i d . ,  p .   5 4 6 . 例えば,マンデノレは「特殊あるいは,異常」な条件に関す る例をあげて, r 以上のような余裕時間は,容易に理解できるように,団体 交渉の議題として取りあげるのに全くふさわしい問題である」としている。

(M. E.Munde1 ,前掲邦訳, 5 6 1 頁)

)1

Barkin ,  "The Bench‑Mark Approach t o  Production Standards , 

" l n d u s t r i a l  and Labor R e l a t i o n s  Review ,  Vo1 1 0 ,  No.  2 CJanuary 1 9 5 7 )   p .   2 2 3 .  

( 2 1 )   r たとえ組合職場委員が経営側時間研究者と共に参加し,そのドグマを受け 入れるように招待されるとしても,その規準は依然として『先生』によって一 方的に決定され,規定されたドグマである。 J ( l b i ・ d . ,p .   2 2 5 )  

( 2 2 )   C f .   Barkin ,  " D i v e r s i t y , " 。ρ. c i t . ,  p .   5 4 9 .  

E  ベ ン チ マ ー ク 法

ノマーキンは時間研究の既存の方式を批判して人間努力測定に関する基礎的 科 学 的 知 識 の 展 開 が な さ れ る ま で の 暫 定 的 な 代 替 案 と し て ベ ン チ マ ー ク 法 (bench‑rnark approach)を提案した。それは「古典的な時間研究技術にた

( 1 )   いする労働者の不平と経営者の失望にたいする答として企画された」もので ある。

註 ( 1 ) Solomon Barkin ,  "The Bench‑Mark Approach t o   Production 

Standards , "   l n d u s t r i a l   and Labor R e l a t i o n

Review ,Vo l .   1 0 ,  No.  2 

(15)

( J a n n a r y   1 9 5 7 )   p .   2 2 2 .   ( 1 )   基本的課題と新しいアプローチ

既述の如く,ノ

f

ーキンは時間研究を批判して,その基礎的概念と定義の火 除と,それを軸として時間研究自体のもつ一方的性格を指摘した。そして この時間研究に内在的な一方性にこそ彼は基本的問題が存するとみるので ある。すなわち「基本的挑戦は現行の一方的手続にとって代る共同の道具

( 1 )  

( a   j o i n t  i n s t r u m e n t ) を展開すること」であり,作業測定プログラムを認 めるにあたって組合が受け入れる乙とのできる基礎的前提は r 人間努力の

( 2 , 

実際的な標準は協約に定められた手続に従って展開されうる」という乙とで ある。そして新しい制度や方式が受容されるための基本的条件として次の 3

( 3 )   点が列挙されている

o

(  i  )  その方法 ( t e c h n i q u e s ) が労働者と組合がもっている公正な測定の 観念に合致していること

o

( i i )   支払と労働投入との比例的関係が継続して維持されること

D

時間研 究が実際に採用した技術的基準は産出高一一一支払関係であり,それは労働投 入とはゆるやかにしか関述していない。

( i i i )   材料または作業条件などの生産諸条件の変化にたいして管理迩営制 度があらかじめ備えていること

o

在来の時間研究はその究用と密度の高い観 察の維持の困難のゆえに職務そのものを無視し,方式自体を悪化させたから

D

このような一般的,基本的条件に合致し,しかも時間研究技術に固有の障 碍を克服するものとしてベンチマーク法が提案される。既 l こ述べられた人間 努力とその測定に関する科学的知識の少なさによって課せられる限界は,す

( 4 )  

でに信用のなくなった解決法を組み直すだけでは克服されず,根本的に新し い見地に立たねばならないというのである

o

ベンチマーク法においては,労使は人間努力を照合する水準一一現段階で は主観的であるにせよーーの必要性を認め,それによって同一工場内あるい は産業内の類似の設備における作業での労働投入を評価できるモデル職務,

ベンチマークに同窓して協定を結ぶ。この同志された職務は他の作業や作業

(16)

条件が比較される尺度(gauge)となる。それは 1E技術者が職務評価制度に ( 5 )  

おいて採用している手続と同じである

O

次に問題となるのは労使それぞれの提案をどのようにして形成するからで ある

o

パーキンによれば,彼らが自らの提案を形成する方法については何の 制限もなく,時間研究資料,経験,工場の実践,その他利用しうる官、見,ア イディアを使用することができる。けだし,それを定式化する科学的方法は 基本的には存在しないので経験と判断のみが答を出すととができるだけであ

( 6 )  

るからである

D

課業 ( j o b  assignmen  t  ,作業割当量) !乙関する協定は,他の 事項l 乙関する労使の意見の差異が解決されるものと同じ方法によって,到達

( 7 )  

されねばならない,というのが彼の基本的な立場である

o

それゆえ,ベンチ マーク法は団体交渉の過程で応用される新しい時間研究技術あるいは努力の 測定技術というよりもむしろ課業に関する団体交渉の手続・方法であるとい えるかも知れない。そこからベンチマーク法は,一方では経営者にたいし て,一方的決定よりも基準職務にたいする組合と労働者の十分な理解と賛同 を得る機会を提供し,他方,組合と労働者にたいしては標準設定手続への直

( 8 )  

接的参加を達成する実践的方法を提供する,ということになる

o

古典的時間研究との顕著な相違としては, ( 1 ) 生産標準設定における主観 性を認める卒直さ, ( 2 ) 照合水準があくまで当該作業について同意された公 ( 9 )   正な一日の仕事であるという限定された性格の認識,があげられている

o

( 1 ) は判断が一方的におこなわれるのではなく,課業と生産量決定に直接利害 関係があり,それに関する知識をもちうる当事者に依存している乙との承認 であり, ( 2 ) は時間研究における標準の普遍性にたいする批判にもとづくもの である

o

註 ( 1 ) Barkin ,  "The Bench‑Mark Approach , " 。ρ c i t . ,  p  .  2 2 3 .   r 後 者 (一方的手続一三原)は団体交渉には無縁であり,そしてこの汚名は苦情処理 や円滑な昇進によるだけでは克服されえない。組合は乙のような条件ではとの 技術にたいする責任をとらないであろうし,また当然のことながらそれを期待 するととはできないであろう。 J ( i b i d )  

( 2 )   I b i d . ,  r 組合が産業範囲の出来高単価を確立し促進したところでは,彼らも

(17)

また賃率設定機構を採用してきている。 J ( i b i d . , )   ( 3 ) ( 4 )   I b i d . ,  p .   2 2 4 .  

( 5 ) ( 6 X 7 )   I b i d . ,  p .   2 2 5 .   ( 8 )   I b i d . ,  p.  2 2 6 .   ( 9 )   I b i d . ,  pp.  224‑225. 

( 2 )   ベンチマーク法の概略

ベンチマーク法による生産標準設定の手続は次の如くである。

1 .   モデノレ課業の承認と協定

ベンチマーク法ば既述の如く,まず労使が基準職務における努力水準を交 渉して協定を結び,それを比較と調整の尺度とするというものである。労使 が交渉における提案を形成する方法には制約はない。それは,人間努力の水 準を定式化する科学的方法が基本的に存在せず,経験と判断のみが答を出す ことができるだけであるからである

o

基準課業の協定のもう一つのポイント は,すべての種類と型の機械について作業グルーフ。ごとに一つの職務が選択

( 1 )  

されてモデノレ課業がきめられることである

o

ここでは異なる他の職種や職務 との比較はおこなわれず,乙の点において職務評価における基準職務の果す 役割とちがって,その比較の範囲はきわめて狭いのである。

2 .   作業任務 (workd u t i e s ) の記述

モデノレ課業が協定されると次に量的な公式が展開されねばならない。その 展開は主要な作業任務の概略を述べる職務記述(j opd e s c r i p t i o n ) をもっ てはじまる

O

その記述は時間研究が通常使用しているよりも現実的な動作の 分類を使用する。 PTS ではこのー動作を記述するのに 1 0 0 以上の基本動作 を必要とするかも知れない。このような分類をしてこそ職務を椛成する動作

( 2 )   詳の同一性を容易にしかも明確に認定することができるのである

D

繊維産業においては作業は通常,定時作業 ( s c h e d u l e dduty)  ,規則的作 業 ( p e r i o d i cduty) ,不規則的作業 (randomduty) の 3 カ テ ゴ リ ー に 分

( 3 )  

煩される。定時作業はその遂行の時刻と回数が知られており 1日または l

時間における遂行時刻が記述される

o

規則的作業とは機械のー循環が要求す

(18)

1 2 8   経 営 と 経 済 るときに遂行される活動であり,その遂行の時刻はわからないが,ほとんど の場合その起る皮数を正確に計算でき,半交替あるいはもっと短い時聞に予 測される度数が記述される

o

最後に不規則的作業は時刻も度数も予測できな いので 4 時間あるいはもっと短い時間あたりの平均度数が記述される。

3 .   作業任務の相対的関係の決定

モテツレ職務の作業活劫が確認され,それぞれの頻度が記述されると,その 度数が基準職務によって要求される作業努力の水準を量的に規定する。

次の問題は作業任務の聞の相対関係または加重要因を定式化することであ り,それによって異なる度数関係をもっ職務が基準職務の標準と比較され る。この相対関係は既述の関連から必然的に,協定された基準諸職務から拍 出されねばならない。それは異なる度数をもっ諸標準(協定された標準課 業)が等値され,その等式の係数が加重要因となり,極々の作業任務が一つ

( 4 )  

の等価体系に転換されることになる

O

当然の乙とながら,この等価体系は同 じ型の作業における職務相互間の関係において意味をもつにすぎない。乙の 等価体系の値は新しい職務の新しい基準を合成するために諸々の異なる職務 に見出される作業任務を抜き出して使用することはできなし、新しい型の作 業の基準は新しいモデル職務に関する協定から展開されうるだけである。作

( 5 )  

業任務の値には普遍的な,あるいは絶対的なものは何もなく,それは適用範 囲の限定された,相対的な関係、を表わすにすぎない。

4 .   等価作業 ( e q u i v a l e n to p e r a t i o n s ) の標準回数の決定

等価体系の協定が結ぼれると次に等価作業の標準回数が基準職務について 決定される

D

乙れが標準を選択する指針となる

o

例えばある作業要系の度数 がその標準を超えても合計等価作業(数)が標準回数を超えなければ,その 職務(課業)は合理的なものとみなされる。

5 .   機械受持台数または産出高への転換

作業者に要求される等価作業の標準回数は,それから不規則的作業の回数

(回数に加重要因を乗じた数)を差引き,機械 l 台の要求する等価作業数で

割ることによって算術的に労働者一人の機械受持台数,そしてまた産出高K

転換される

o

(19)

6 . 適 用

同種の作業において作業条件が異なるとき標準は異なる機械受持台数,異 なる生産量として現われるとしても,協定された 1 時間あたりの等価作業総 数は同等に維持され,労働者にたいしてなされる努力の要求は標準化され る

o

経営者が,例えば,すぐれた自動的清掃装置を工夫したり,効率的な統 制プログラム,不規則的作業を減少させるすぐれた製造方法を発展させるな らば,これらの条件は機械の清掃作業を削減したり,機械の停止を少なく し,あるいは機械一台あたりに要求される等価作業数を低くする。それゆえ 能率的工場では,標準の等価作業数に合致させるならば,一作業員に割当て られる機械受持台数は条件のよくない工場よりも高くなる

D

この場合l こ経営 者はより高い作業割当と生産量によって直接的かつ即時的利益を得ることに なる。かくしてベンチマーク法はより安定した作業をもたらし,それによっ て高い機械受持台数を確保するための努力として,職務,原材料,作業条件

( 6 )  

を研究する刺戟としても役立つ。ここから「この方法の一つの本質的価値は ベンチマークが同じ企業の他の工場,工場群に適用されうること,それゆえ

( 7 )  

に全地域にわたって安定化機能を果すことができるというところにある」と いわれるのである口

7 .   管理 ( a d m i n i s t r at i o n )  

ベンチマーク法には現実的な作業割当量の決定に加えて維持・管理におけ

( 8 )  

る長所がある

O

( 9 )  

その主たる長所は維持管理の低コストである

o

基準を他の類似職務に適用 することは容易でありその励行が労働者と監督者の共通の関心となるので時 間研究におけるような専門的訓線を受けた係員は不要である。けだし1"ベ ンチマークとの照合 ( b e n c h‑mark t e s t ) は客倒的であるから判断の問題は

( 1 0 )  

回避される

o

紛争は度数の決定に解消される」からである。度数の決定のみ であるから労働者は速やかに手慣れた手続によって度数をチェックする方法 を習得できる

o

また彼らをこのような記録をとるように説得することも容易 である

o

というのは,それが彼らに仕事の支配者たる実感と仕事の統制力を

( 1 1 )  

与えて追加的な満足源となるからである。

(20)

1 3 0   経 営 と 経 済 度数が標準回数を超過すするときには苦情が職長または職場委員に捉出さ れ,組合と会社の調査委員 ( c h e c k e r ) の共同調査がおこなわれ,結果が双 方に提出される

O

そして可能な次の 4 方法のうちの一つの処置がとられる。

(  i  ) 条件が逝常の条件に戻るように作業割当を減らす。助手の配置また は問題を起す機械を停止することによって

D

( i i )   超過度数に応じて収入を増加させる。

( i i i )   調整がすぐに可能であれば変更しない。

( i v )   負担超過が短期的に耐えられる程度ならば,修正手段が有効になる まで作業割当の増加にたいしてボーナスを支給する。

このようにベンチマーク法のもとでは時間研究とは対照的に椋準・作業割 当量の不断の監査が可能になる。遂行されている操作の数は容易に数えるこ とができ,労使は直ちに負担超過 (ove r 1 oad) あ る い は 負 荷 不 足 ( u n d e r ‑ l o a d ) の程度を知ることができる

o

すべての人々が手続を理解し調整は直ち

に有効になる。ここから I ベ、ンチマーク法は労働者が作業標準設定におい て知識をもつことができ,また団体交渉権を行使することができるように企

日 2 )

画されている」といわれるのである。

註( 1 ) Cf ,  Solomon Barkin ,  "The Bench‑Mark Approach , "   o p .   c i t . ,  p .   2 2 5 .  

( 2 ) ( 3 )   I b i d . ,  p .   2 2 6 .   ( 4 )   I b i d . .   p. 228. 

( 5 )   I b i d . ,  p .   2 2 9 .   ( 6 X 7 ) ( 8 ) ( 9 )   I b i d . .   p .   2 3 2 .   U O ) U1 )   I b i d . ,  p .   2 3 3 .   U 2 )   I b i d . ,  p .   2 3 4 .  

( 3 )   適用範囲と限界

繊維産業ではベンチマーク法は時間研究実務家ではなくて経営者が作業割

当決定の責任を負っている工場において最も普及しており,また強い組合が

あって労働者が公式の時間研究の原理は受け入れるととを好まないが,労使

(21)

双方に受容される作業測定方法の必要を認めている工場において最もよく適

( 1 )   ( 2 i  

用されている。しかし織維産業における組合組織率はきわめて低いのである から,この方式の普及の程度はそれほどではないと推定される。そこでパーキ ンも,この方式の「ー居の拡大は,組合の成長,ならびに経営者によってお こなわれる標準の変更にたいして苦情を訴えるという防衛的任務に代えて作 業割当の決定への労働者の直接的参加を促進することを希望する組合執行委

( 3 )  

員の存在にかかっている」と付加している

D

この方式は,パーキンによれ ば,織維産業に限られることなく,作業者が一群の半自動機械を運転する他 産業の作業にも,また小さな細目の変更によって標準が変更されねばならな い作業にも適用可能である

O

この方式は基本的な生産過程がかなり安定して いるところでは製品や細目の変更があっても利用できるが,職務を構成する 作業任務が不断にかつ急激な変化を受けるところでは利用することができな ( 4 )  

い。これは,ベンチマーク法に限らず,ある水準を標準として,それから公 式を導き出し,個別交渉,取引に代えて他に適用しようとする「標準化方 式」が一般にもつ限界である

o

註( 1 ) Solomon Barkin ,  "The Bench‑Marl

Approach , " 。ρ c i t    , . p .   2 3 5 .   ( 2 )   1 9 5 0 年中葉において南部の撒維産業の労働協約適用者は 1 5 9 6 を超えないと推

定された。 (Reynoldsand Taft ,  o p .   c i t . ,  p .   7 0 ) プラウナーによれば 撒維産業の組合組椴率は 2 5 9 6 弱であり,南部の労働協約適用者は 16% である。

(Robert Blauner ,前掲邦訳. 1 0 9 頁 , 1 3 0 頁)

( 3 ) ( 4 )   Barkin ,  "The Bench‑Mark Approach , " 。 ρ c i t . , p .   2 3 5 .  

E 吟 r w ミ

パーキンの時間研究論は,要するに,まず既存の時間研究方式には人間努

力の測定と標準に関する基礎的科学的知識が欠けていること,時間研究は時

間研究者の一方的・主観的・怠:立的判断にもとづいて公式化されるものであ

りながら客観的科学的であるという装いをもって提案されていること,それ

ゆえに時間研究の結果にもとづいて団体交渉を行なうことや経営者の設定し

た作業標準にたいする苦情提出というのでは十分でなく,本質的に一方的性

(22)

経 営 と 経 済

格をもっ時間研究は否定されねばならないこと,そして手続の出発点から団 体交渉によらねばならず,かっその迩用にも労働者が直接に参加して団体交 渉権を行使しなければならないこと,であり,これが彼の基本的立場である

o

そしてこの立場を実現する方法としてベンチマーク法を提起した。

ベンチマーク法の手続上の特質は一つの「標準化」であり,労使によって 承認された作業標準から作業標準決定の基準を抽出して公式化し,個々の標 準決定およびその交渉において,また個々の取引に代えて適用しようとする ものである。したがってそこにはこのような「標準化」に一般に伴なう限界 が存在する口またベンチマーク法は一つの標準化「方式」とはいえ,パーキ ン自身が指摘しているように,新しい時間研究方式・諒業決定の技術という よりもむしろその考え方, 接近方法 ( a p p r o a c h ) に特徴があるといえる

o

そこでは時間研究方式の公式化と結果ー→団体交渉あるいは共同の時間研究 や時間研究方式の交渉に代えて,団体交渉ー→結果の公式化という順序の転 換がおこなわれ,団体交渉が前回に押し出されている

O

他方,結果としての標準の大きさのみをみるならば,公式化と交渉の手続 の順序の相違にもかかわらず,それほどの差異はないようである。けだし,

既に時間研究の批判においてふれられているように,時間研究の過程におい て,動作の分割と分類,評定において判断が介入するのであり,さらに余裕 時間の決定においては通常時間値を実際の作業現場の条件に適応させること がおこなわれるのであるから,結局のところ現状に合致し,受容されるよう な標準を生み出す公式が制定され,あるいは交渉されることになるからであ る

D

余りにも実際の条件からかけはなれた作業標準を生み出す公式と標準 は,団体交渉の過程において,また実際の適用と管理の過程において修正さ れざるを得ないであろう

O

このようにみるならば,作業標準が団体交渉の主

( 1 )  

題となるところでは,時間研究によってもベンチマーク法によっても,結果

としての作業標準には大きな差異はないといえる口ちなみに両者の手続にみ

られる差異は職務評価の点数法と要素比較法の相違に類似している。要素比

較法では,合理的な,あるいは労使が妥当であると承認した職務の賃率から

要素ウェイト(金額で表示されている)を導き出すのにたいして,点数法の

(23)

場合には,教科書に現われた手続のみを追えば,評価要素の各等級の点数は まったく窓意的に,主観的に決定されたかの如く見えるが,実際には試行 錯誤的にあるいは統計的手法を使って現実の職務賃率格差を反映し,それと

( 2 )  

矛盾しない点数配分,要素ウェイトが採用されているのである

o

乙のように 見るならば,時間研究もベンチマーク法と同じく一つの「標準化方式」であ るといえよう

O

また時間研究とベンチマーク法の相違として,時間研究が要素動作の時間 値の普遍性を主張し,その体系をあらゆる型の作業に適用しようとするのに 対して,ベンチマーク法では等価作業体系は同種・類似の作業にのみ適用さ れるという限定が課せられている点があげられている

D

しかし後者の場合 にも,異なる作業任務の等価作業への還元という別の問題が生す、る口さらに 作業任務の構成が異なる作業に適用する場合には,程度のちがいはあれ,パ ーキンが否定した普通性の問題が出てくるであろう

o

このようにべンチマーク法においても時間研究と同じく程々の問題を内蔵 しているのであるが一一パーキン自身はそれを認めた上で暫定的な策として 提起している一一,それが作業標準設定において,作業者の努力水準の統ー という観点から展開され,それを組合の成長をまって産業全体に拡大適用 し,それによって産業の安定をはかることを可能にする方式として工夫され た点,および作業標準の設定と管理において団体交渉と労倒者の直接参加を 前面に押し出している点は十分に評価さるべきであろう

o

また時間研究の検 討において基礎的概念の欠除を指摘し,それを軸として時間研究の批判が展 開されている点も看過できないであろう

D

以上ノ'{‑キンの時間研究論を検討してきたが,残されている問題は,パー キンの指摘した基本問題,人間努力の測定と標準に関する科学的知識の必要 性であり,換言すれば,労使が承認する作業椋準,努力の水準の大きさ,あ るいは一方的な標準設定の場合には受容される根咋の大きさがどのような水 準であるのか,それを規定する要因はいかなるものであり,それらはどのよ

( 3 )  

うな関係にあるのか,ということである

o

時間研究やベンチマーク法が一つ

の標準化方式であるかぎり,基準となる作業椋準が何らかの形で存在しなけ

(24)

経 主 ? と 経 済

れ ば な ら な い の で あ り , そ れ ゆ え に こ の 問 題 は , ど の よ う な 方 式 や 手 続 を と る に せ よ , そ の 前 提 と な る 基 礎 的 問 題 で あ る と い え よ う

C

註 ( 1 ) 労働組合の交渉力が生産標準設定が団体交渉の議題であることを経営者に認 めさせるほど強くないところでも,生産標準は事実上,現場段階 (operating l e v e l ) において非公式 ( u n o f f i c i a l l y ) ではあるが交渉されていることが知

られている。これは例えば自動車産業の多くの餌誠でみられるところである。

(W.  Gomberg. "Union Attitudes toward l n d u s t r i a l   Engineering , "  

P e r s o n n e l ,  Vo l .   2 4 ,  No. 6 (May 1 9 4 8 )   p .   4 4 9 , )  

( 2 )   拙稿, r 職務評価の性格に閲する一考察 J W 経営と経済』郊 111 号(昭和4 3 年 1 月)参照。

( 3 )   この問題は時間研究者によってはほとんどとり上げられていないが,マンデ

l

レは「標準時間の定義」において, r 社会的基礎」を示唆し,作業速度に生理

的上限,生理的下限,社会的上限,社会的下限があり,それに経済的な局面が

加わるととを指摘している。 (M. E .   Mundel ,前掲邦訳, 401‑402 頁参

照。)また労働協約に現われた定義の例を引用しているが(前掲邦訳 4 0 3 頁 ) ,

それは既にパーキンが標準の普遍性につい指摘したのと同じく,きわめてあい

まい,かつ抽象的であって問題の解明には不十分である。したがってさらに具

体的にそれがどのように適用され,また苦情がいかなる要因をどのように考慮

して処理されたか,ということまで検討することも必要であるように思われ

る 。

参照

関連したドキュメント

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における

 そこで、本研究では断面的にも考慮された空間づくりに

行列の標準形に関する研究は、既に多数発表されているが、行列の標準形と標準形への変 換行列の構成的算法に関しては、 Jordan

規定された試験時間において標準製剤の平均溶出率が 50%以上 85%に達しな いとき,標準製剤が規定された試験時間における平均溶出率の

こうした背景を元に,本論文ではモータ駆動系のパラメータ同定に関する基礎的及び応用的研究を

留学生 して人間形成されていると感じて 歴史都市・金沢にある大学ならで 積極的に関わろうとする姿に感

世界的流行である以上、何をもって感染終息と判断するのか、現時点では予測がつかないと思われます。時限的、特例的措置とされても、かなりの長期間にわたり

「海洋の管理」を主たる目的として、海洋に関する人間の活動を律する原則へ転換したと