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法意識 の多重構造 を探 る

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(1)

法意識 の多重構造 を探 る

法意識の多重構造を探 る

一元

1。

は じめ に

本稿 は、法意識調査 のデータを参照 しなが ら、質問紙調査 による法意 識研究の可能性 と限界 とを探 る試みである。法意識研究の意義 について 簡単 に検討 した後、具体的な調査データを参照 し、国際比較研究 におい てその類似性 と多様性 を、人々の意識 と行動の論理的側面 と非論理的(直 感的)側面の関係で明 らかにする方向を示唆する。

2.法意 識質 問紙 調査 の意 義 と限界

法意識研究 は、 日本社会特殊論 ともか らんで、おおいに関心 を持たれ てきた。川島武宣教授 の一連の『日本人の法意識』研究 はい まで も大 い に参照 されているし、1960年代以降の社会科学方法論 における行動科学 の影響 も受 けて、川島テーゼを踏 まえて大規模 な世論調査手法 による実 証研究 もなされた。 日本文化会議が1970年代 に行 った 日本人の法意識研 究がその例である。 これ らの研究 は現在で も、 日本の法意識研究 におい て、頻繁 に引用 されている。しか し、その後、社会調査方法による大規模 な法意識調査 を正面課題 に掲 げた調査研究 はあまり行われていない1ヽ

その理 由の一つは、調査方法論上の限界である。調査票や電話インタ ビューによる大規模 な意識調査、いわゆる世論調査であつめ られたデー

‑1(314)一

(2)

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

夕は、 コンピュータを用いる数量的分析 になじむので、世界的に法意識 研究 において多用 されてきた といえる。

しか し、この研究方法 には、次のような限界があると指摘 されている。

社会調査法の観点か らは、質問紙調査で は調査設計(仮)に基づ く質問 群 によって構造化 されている枠組内で回答 をひ き出す ことしかで きない し、それが とくに「 ワンショッ ト」調査だ とそこで仮説が検証 されてい て もそれ 自体 の信頼性が低い、な どと批判 される。法 についての世論調 査 な どは、通俗的結論 を強調 してメディアを通 じて報道 され、それが人々 の間での主観的認識 を強化 し、 さらに法 システムの運動 に影響 を及ぼし ている

(2)。

そして、認識論的な側面か ら、 この方法が「客観性・ 中立性 を標榜す る近代科学の認識枠組」0を前提 としているゆえに、ポス トモダンの立場 か らの批判 もされている ヽこの論点 は本稿の課題 を越 えるので、これ以 上 は触れないが、国家法 を中心 とす る法 システムは社会的に制度化 され ている部分が大 き く、定型的な質問紙調査が適切 な場合 も少な くない と 筆者 は考 えている。いずれにせ よ、調査方法の問題 は、方法 自体 の一般 的優劣の争いではな く、ある対象 にどの方法でアプローチするのが妥当 か という問題であ り、間き知 らずの折衷主義」

151が

求 め られているとの指 摘 に とどめてお こう。

いま一つの理由は、調査対象の不確定性である。法意識 といって もそ の意味す るところは多様 である

0。

アメ リカにおいては、具体的な法規定 や法制度 に対する「意識」を探 る研究が多 く、法知識研究 は伝統的にヨー ロッパでの法意識研究の特色の一つであつた

K71。

これに対 し、日本文化会 議の調査研究 は、主 に法観念 とい うべ き抽象 レベルの高い法意識研究 を 対象 としていた

0。

六本佳平の整理 に従 えば、法 システム全体や法規範、

そして法機関 を含む具体的表象 としての法 に対 しての法意識 は「法知識」

「法意見」「法態度」に分類 され る。 これ と区別 され る形で抽象的表象 と

(3)

法意識の多重構造を探る いえる観念像 としての法 に対 しての「法観念」が考 えられている

0。

これ

まで、調査法調査 をもとにす るような経験的研究 において、 これ ら二者 の峻別が十分 になされていた とはいえないのではないだろうか。

これ らの問題 を背景 として、法意識研究の実践的意義 も問いなおされ ているといってよいだろう。具体的な立法作業の前提 として社会意識の 状 況 を探 るた めの調 査 は、政府 関係 に よって もた びた びな され て い (10。 これは先 にふれた六本の整理 によれば、「法意見」にあた るもので ある。それ以上の抽象的なンベルでの法意識(法観念)研究 は、社会研究 の一環 として位置付 けられなければならない。 ここでいう社会 とは、人 の交通のある社会空間すべてを指すが、実体的に とらえれば、国家であ り、地域社会であ り、職場や学校 な どの組織 であ りえる。国際化が進み、

インターネ ッ トが普及 して空間の意味 はそれだけ薄れてきているあるい は変容 してきているとはいえ、司法権力が、あ くまで国民国家の一機関 として組織 されているのであるか ら、国家社会 を単位 として法社会学の 観点か ら国際比較 をす る意義 はい まだ決 して小 さ くはない と考 え られ る。社会の多様性 は、国民国家の内部 においても当然存在する。少数民族 が独 自の法意識や法文化 を持 っていることはいうまで もないだろう(11ヽ

日本や東アジアの法意識が「遅れている」 とい う図式、すなわち近代 主義的な理論枠組の限界 も指摘 されてきた。国家共同体 を単位 とする国 際比較 に意義 を認 めるとすれば、次 にどの ような理論的仮説で比較 を行 うのか とい うことが問われ るのである。 したがって、 これは国際的な比 較研究の意義 をめ ぐる重要な論点で もある。近代主義的図式 に立てば、

欧米の法意識 は成熟 してお り、東アジアの法意識 は遅れているあるいは 未熟であるとい うことになる。西欧や北米の法のあ りかたに「追 いつい てい く」 とい う図式 は、法が社会の産物であるとい う法社会学の根本的 命題 とも、一面で対立す る。 その反面、西洋法が継受 され、国際化が進 み、それにもとづ き社会制度が整備 され、法律家の養成 も進んだ段階の

‑3(312)一

(4)

法政研究 9巻 2号 (2004年)

社会の間にはなん らかの類似性 も見出せ よう。 しか し、東アジア諸国

/

地域の法意識 は、西欧や北米 と異な り、特殊であるとい う主張 も、また、

特殊ではな く共通す る要素が大 きい という主張 も、論理的には等価であ る。 ここで も再 び計測すべ き法意識 とは何か という問題が現れて くるの である。こうした多様性 と類似性 をどう整序づ ければいいのであろうか。

本稿 は、 この問題 に取 り組 むための一つの ヒン トとして、観念 として の法 に対する直感的・ 情緒的反応 と、具体的法制度や紛争 における論理 的反応 とを比較 し、多様性がむしろ前者 に偏在 しているのではないか と いうことを示そうとするものである。

これ との関連で付言すれば、理論枠組 としての人間観の整序 も必要で あ る と考 える。い ささか単純化 して述 べれ ば、合理 的選択(Rational Choice)と して人々が規範的判断や行為 を行 っているのか、情緒的直感 的にそれ らを行 ってい るのか とい う点である。 この枠組 自体 は、調査法 を問わず問題 とな りうるものである。前者 は合理的選択理論ないし公共 選択論の前提 とす る合理的経済人 をモデル とするし、後者 は大衆社会論 が前提 とするような「非合理的」な人間像 を前提 とす る。 もちろん人間 行動 にはその双方の要素が同時 に機能 していると考 えられ るので、 これ らは実体的概念 とい うよりは計測概念であることはい うまで もない。以 下 において、各種 の調査 データによって、多様性 と類似性、そして直感 的反応 と論理的反応 との間の関係 を探 ってい こう。

(1)意識研究に限らず、より広 く実証研究まで視野に入れれば、例えば、日本社 会特殊論の中心的論点の一つである日本的取引慣行に関して、日本 とアメ リカ合衆国の実証的比較研究がされている。内田貴、北山修悟、中田裕康、

ジョン・ヘイリーらによる「共同研究・継続的取引の日米比颯

1)〜 (7)」

N

BL』M627、

629、 630、 631、 632、

641(1997〜

1998)。

この研究では、企業 に対する調査票調査 とインタビュー調査が併用されている。

(5)

法意識の多重構造を探る (2)世論調査は、マスメディアを通 じて、現代人にとってなじみの深いものであ

る。それゆえに、世論調査の結果がわた したちに及ぼす再帰的影響 も看過 し えない。た とえば、マスメディア と世論 との関係 は政治学における投票行動 論 (Voting Beha宙 or)で アナウンス効果 として研究 されている。

(3)和 田仁孝『法社会学の解体 と再生』弘文堂

(1996)、

140‑144頁 。

(4)もちろん、大規模 な全国サ ンプルの意識調査は費用や時間コス トの面か ら、

個人研究者が簡単 に実施 しうるものではない。また、日本では公的研究資金 を得て収集 された調査データがパブリック ドメインに入 らず、個人 に帰属 した ままになっているという問題 もある。 この点につき、谷岡一郎『「社会 調査」のウソ』文藝新書

(2000)、

194頁 以下参照。

(5)佐藤郁哉『フィール ドワーク』新曜社

(1992)、

65頁以下。

(6)よ り広 く「意識」自体 についても理論的検討が必要であるが、 ここでは指摘 のみに とどめてお く。そのささやかな試み として藤本亮「法意識 と法行動の 間」和田仁孝・樫村志郎・阿部昌樹編『法社会学の可能性』法律文化社

(2004)。

六本佳平『法社会学』有斐閣

(1986)、

200頁に1980年 代中葉 までの代表的研 究が紹介 されている。

(3)六本佳平『法社会学』有斐閣

(1986)、

217頁 参照。

(勁

この分類 は、前掲・六本『法社会学』、193頁 に表の形で まとめられている。

なお、その表では「法観念」は「法意識

(2)」

して表記 されているが、そこに 付記 されている「法観念」という表記 を本稿ではとる。筆者な りにこの分類 に従 って法意識の下位区分 を例示すれば、生活 ゴ ミの分別収集の条例 につ いて、条例の存在 さらに内容 を知 っている

(法

知識

)、

さまざまな価値観か ら 分別基準が妥当あるいは不当だ と判断 している

(法

意見

)、

分別 してゴ ミを 出す際によいことをしていると思った り面倒だけどしかたない と思った り する

(法

態度

)と

い うことになろう。これに対 して法観念 は、本稿で も扱って いる「法的解決をします といわれるとどんな感 じが しますか」といった質問 にみられるような、漠然 と「法」という言葉が用いられる場合 に該当する法

‑5(310)一

(6)

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

の表象=法イメージといえる。

00たとえば2001年 8月 5日付で、夫婦別姓制度導入をめぐる「内閣府」の調査 結果が日本のマスメディアに流れた。夫婦別姓に42%が賛成し、これは「初 めて」反対派を上回った。1976年以来数年おきに類似調査が「政府の手に よって」なされている。こういう調査結果は、立法の現場で、当該立法の妥 当性の根拠 として用いられていくのである。

CD法意識国際比較研究会「中国人の法意識‑1995年 全国調査

(五 )」

『ジュリス ト』

1188、

49‑63頁では、少数民族の法意識の特徴について検討している。

ただし、用いたデータは国際比較を前提 としたものであり、中国の少数民族 間の比較を前提 としたものではないため、少数民族サンプルが少な く、分析 には限界がある。

3.調査 デー タにつ い て

本稿 でその一部 を扱 うデータは以下の とお りである。調査名 の後 ろの ( )内の表記 は本稿で用いる略称である。

韓国国民法意識調査研究(韓国法意識調査)(1)

実施主体 :韓国法制研究院 実施年 :1991

有効サ ンプル:全国サ ンプル、2000ケース(層化サ ンプル

)

中国全国法意識調査(中国法意識調査

)。 )

実施主体 :国 際法意識比較研究会(共同代表加藤雅信名 古屋大 学教授、マイケル・ ヤングジ ョージワシン トン大学 ロースクール・ディーン)と北京社会科学院法学研究 所 日本法研究セ ンター

実施年 :1995年

有効サンプル:全国サンプル、4996ケース(層化多段サンプリング

)

(7)

法意識の多重構造を探る 日本法意識調査

(日

本法意識調査)0

実施主体 :国 際法意識比較研究会 実施年 :2000年

有効サンプル:全国サンプンレ、1050ケース(層化多段サンプリング

)

アメ リカ合衆国法意識調査(米国法意識調査

)④

実施主体 :国 際法意識比較研究会 実施年 :2001年

有効サンプル:全国サンプル、1000ケース(層化多段サンプリング

)

契約意識22ヵ

/地

域比較調査(契約意識調査)0

実施主体 :国際法意識比較研究会 実施年 :1994〜 2001年

有効 サンプル:学生サ ンプル、16903ケース(22か/地域の大 学の法学生 と商学生の授業サ ンプル。原則 とし て専門科 目を履修 した ことがあると考 えられる 2年生以上が対象である。本稿では法学部生サ ンプルのみを扱 う

)

(1)青木清「資料・韓国法制研究院『国民法意識調査研究』」『南山法学』第16巻 第二・四合併号

(1993)。

この調査については、調査報告書からのデータの引 用にとどまるが、筆者 もメンバーとして加わっている法意識国際比較研究 会が収集した他の調査については直接データの分析を行っている。本稿の ためにデータ利用を許 していただいた法意識国際比較研究会のみなさまに この場を借 りてお礼申しあげる次第である。

(2)法意識国際比較研究会・ 中国社会科学院法学研究所 日本法研究センター

「『中国人の法意識』調査基本報告書」『名古屋大学法政論集』第180号

(1999)。

法意識国際比較研究会「中国人の法意識=一九九五年中国全国調査

(一

)〜

(五

)」『ジュリス ト』

1169、 1172、 1173、 1178、

1188の各号。法意識

‑7(308)一

(8)

法政研究9巻 2号 (2004年

)

国際比較研究会「中国法意識スケー リング(1)(20完

)」

『名古屋大学法政論 集』第183号 、第184号

(2000)

(3)法 意識国際比較研究会「『日本人の法意識』調査基本報告書」『名古屋大学法 政論集』第187号

(2001)

(4)法意識国際比較研究会「『米国人の法意識』調査基本報告書」『名古屋大学法 政論集』第193号

(2002)

(5)このプロジェク トの日本データ分については、「特集・ 日本人の契約観 と法 意識」『ジュリス ト』1096号 、1996年 。本稿では、国際比較の観点か ら、収 集 したデータの うち調査設計 に合致するサンプルのみを分析対象 としてい る。そのため、 この「特集・日本人の契約観 と法意識」の論稿で用いたデー タセ ッ トは、本稿で用いているデータセ ットのうちの 日本分サ ンプルセッ

トととは、サンプル数等が異なっている点 を留意 されたい。

4.法への嫌悪感

関係が ぎ くしゃ くした相手か ら、「法的 に解決 します」とか「法的手段 を とります」 とか告 げられ ると身構 えて しまうとい うのが、 日本社会 に 典型的な態度である と考 えられている。「期限 までに入金がない場合 は法 的手段 をとります」 とい うのは、督促状 の決 まり文句で もある。 この場 合、法的手段が何 をさすのかは、発話者 に とって も、必ず しも明確でな いが、それは ともか くこの言回 しはバ リエーションを持 ちなが らよ く使 われている。 さて、 こうした場面では、法的解決 とい う語 を、発話者 は ある意味でのお どしとして用い、受話者 は否定的なニュアンスでそれを 受取 ると想定 される。 トラブルにあたっての「法的解決」 という言葉 に 対す る感情的反応や、社会生活上、法的なるものを避 けるべ きか どうか

とい う質問群 について検討 してみよう。

関連 して、 まず電器店の杓子定規 な契約 どお りの対応 についての質問

(9)

法意識の多重構造を探る の回答 をみてみよう。中国、 日本、米国を比較 した場合の各質問の回答 は 【図

1】

の とお りである。保証期間終了直後の修理 について修理代の 請求があった場合 にどう思 うか という質問に対 して、「融通が きかない

とい うグループに着 目す ると日本が41.4%、中国が25.6%、米国が34.1%

と、融通が きかない と思 う傾向に違いがみ られる。

次 に取引相手か ら紛争時 に「法的に解決 します」 と言われた ときの感 想 について個別 に同意か否か をたずねた質問 についてみてみよう。【図

2】

にみるように「合理的だ」とい う感想 については、「そう思 うJと「 ど ち らか といえばそ う思 うJグループを合計 して比較す る と、 日本が60.

9%、 米国が65.6%であるのに対 し、中国が82.9%と 開 きがある。【

3】

の「人情がない」という感想 については、 日本が「そう思 う」方向に偏 っ た分布 をしていて、「 どち らか といえばそう思わないJと「そう思わない」

グループの合計が16.9%な にの対 し、中国は44.1%、米国は43.7%と なっ ているのが目立つ。【図

4】

の「不快だJと いう感想 について もこれ と同 じようなイ頃向がみ られ る。「 どち らか といえばそう思わないJと 「そう思 わない

│グ

ループの合計 は、日本が22.196、 中国が40.3%、 米国が52.7%

である。

韓国の類似質問は、質問形式が違 うので直接比較で きない。「合理的だ

J

とい う感想 を選択 した者が もっとも多 く約3分の 1を 占める。「不快だ」、

「人情がない」 を合計すると58.0%に なる 【図

5】

同 じ形式で質問 した 日本、中国、米国 を比較 した場合、 日本の方がや や法嫌 いの程度が高い といえよう。中国では否定的感想 に同意 しないグ ループが一定数み られたい

)。

韓国では否定的な感想 を選択 した者が過半 数 を占める。

一般 に論 じれば、法 に対 して どの程度の法嫌悪度 を有す るか否かは、

法的紛争解決 と他の社会的な紛争解決 システム とのあいだの主観的なイ メー ジの違 いであると同時に、「法」の当該社会の社会規範中で有す る位

‑9(306)―

(10)

法政研 究9巻 2号 (2004年

)

□融通がきか

な い

■ どち らとも い えない

□ 当然だ

爾 そう思わな

Elそう思わな

い、どち ら か とい えば

□ どちら とも い えない

■ そう思う、

どち らか と い え

│ゴ

□ そう思う

 

   

保証期間直後の修理代金請求

   

 

   

 

法 的解決、合理 的 ?

(11)

法意識 の多重構造 を探 る

爾 そう思わな

EIlそ

う思わな

い、どち ら か とい えば

□ どち らとも い えない

■ そう思う、

どちらか と いえ

│ゴ

□ そう思う

圏 そう思わな

Elそう思わな

い、どち ら か とい えば

□ どち らとも い えない

■ そ う思 う、

どち らか と い えば

□ そ う思 う

 

   

 

   

 

法的解決、人情 を欠 く?

   

 

法的解決、

 

不快 ?

‑11(304)一

(12)

法政研 究9巻 2号 (2004年)

望ましい

  

合理的だ

  

人情がない

  

不快だ

韓国「法的解決」への印象

置 、 と くにその直感 的 な有効性感党 に もよって左右 され るであ ろ うこと を強調 したい。 つ ま り、法的紛争解決 を告 げ られ て も、 その解決が合理 的 で望 ましい もので あ る とい う肯定 的認知 と対応 す る と可能性 と、法的 手段 に主観 的 な有効性 が認 め られず、 いわ ば法的手段 を採 られ て も別 に 痛 くもか ゆ くもないか ら、 どうぞ ご自由 に とい う意識 と対応 す る可能性

もあ る。

い さ さか この点 を敷衛すれ ば、悪質 な金融業者 の取 り立 てに、債務者 が業 を煮や して法的手段 に訴 えてや る と告 げて も、金融業者 は痛 くもか ゆ くもないであ ろ う。 さらに、非合法 の1裏社 会Jで 公式 の法規範 をまっ た く尊重tノない こ とが 当然 の場合 は、法 に従 うことはいわ ば二 の次 であ る。 これ らは極端 な例 であ るが、 それ ゆ えに、あ る共 同体 での法 のあ り 方 を照 らし出す事例 で もあ る。

中国社 会が社会主義体制 であ り(2)、 日本 や韓 国 とその国家統 制 や社会 統制 の あ り方が異 な る点 を考 えれ ば、 中国の人々の「法嫌 いJのあ り方

26.9

(13)

法意識の多重構造を探る が異なっていることも納得がい くであろう。ヽ

さて、これらの質問群は、人々の直感的な、「法的解決」という言葉に 対する反応を計測したものといえる

0。

その背景事情を探ることは別の機 会に譲り、ここでは少なくとも日本と中国の間で、「法的解決」に対する感 想の持ち方が異なっている点 を確認 して、次節では、契約遵守意識 に対す る「われわれ意識」 というやはり直感的な要素の影響 をみてみよう。

(1)中国調査は、中国国家統計局の職員が戸別訪問して行う方法で為されたた め、たてまえ的な方向への回答のバイアスがある可能性がある。

(2)関連 して、中国の「法制」と「法治」の違いについては、

(座

談会

)「

依法治 国一政治腐敗の克服 と法制のグローバル化を目指して」愛知大学現代中国 学会編『中国

21』

Vol.12(2001)、 7‑52頁。特に19頁以下。

(3)中国人の社会価値観が、アジアの他国よリアメリカのそれに近いという、実 証データに基づいた指摘がある。千石保/丁謙『中国人の価値観一変わ りゆ

く社会意識 とライフスタイル』サイマル出版会

(1992)、

160頁以下。

(4)これらの質問群を合計 してスケールとして平均値を比較 した場合、日本の 方が全体 としてやや高い「法嫌悪度」を示している。

5。

長期契約遵守意識にみる「われわれ意識」の反映

ここで紹介す る契約意識調査は、ス トー リーを読 ませて、その間には さみ込 まれている紛争当事者 に対す る評価 を尋ねる質問A〜Hに回答 し て もらう形 になっている。いささかやや こしいので、質問票 にあるス トー リー と質問の要点 を簡略 にして示 してお こう。調査票では質問A〜Hに ついて、

1.強

く賛成か ら

5.強

く反対の5段階で回答 を求めている。

・ 価格変動の激 しい商品の国際長期契約締結

‑13(302)一

(14)

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

・ 市場価格の下落 を受 けて買手の価格再交渉要求

・ 売手の再交渉要求の拒絶

質問

このような商品に長期契約 は無謀である 質問

買手の価格再交渉要求 は当然

質問

売手 は硬直的す ぎる

・ 買手の受領拒否の構 え

質問

買手の受領拒否 の構 えについて賛成か反対か

・ 買手の受領拒否の実行

・ 長期の混乱 を経て売手が価格再交渉 に応 じる

・ 価格 を下 げて再契約

質問

買手の受領拒否実行 は賛成で きない 質問

買手の受領拒否実行 は道徳的に卑劣である 質問

売手が価格改定 に応 じたのはバ カげている

・ 買手 は実 は倒産の危機 にあった ことを開示

質問

倒産の危機であつたのな ら受領拒否 も仕方ない

この調査 において、ス トー リーの中で契約内容の改訂 を求めて「受領 拒否」 を行 うのは「買手」側である。 したがって、契約 を事情 の変更 に より守 らなかったのは「買手」であ り、その限 りにおいて、契約規範か ら逸脱 した側が「買手」である。

ところで、 この調査で用いた調査票 は、ス トー リーの中で用い られて いる国

/地

域名 とそれにあわせて商品を変 えた り、 さらに売手側 と買手 側の国名 を入れ替 えた りして、い くつかのバージ ョンを作成 し、実際の 調査で はそれ らをランダムに用いている。そ こで これ らのバージ ョンを 調査国/地域が「買手」の場合 と「売手」の場合 にわけて、各質問の回 答平均値を比較したのが、次の 【

1】

である。この表では、値の大き い方が「契約を守る方がよい」という方向に揃うように、上記の質問

E

(15)

自国が買手颯 自国が売手0 ③―

t― test

日 本

A:長

朝 契 約 無 謀

2.32 2.48 0.16

B:買手値 引 申入 自然 ‑0̲03

丁 嘉

:富

:領 拒 否 姿 勢

3.35 3.42 0.07

:富 合 実 行 反 対

(r

3.21 3.16 ‑0.05

F:冒

実 行 卑 劣

(

2̲96 2.70 ‑0̲26

G:帯

ヨ 承 評 F,オ か

(r 2.24 2.24

H:買

[ ξ E「

A :長

期 裂 絢 無 謀 0。 13

B :富

手 値 弓 !申 入 自 然

2.39 2.74 0.35 C :売

手 熊 度 硬 直 的

D:富

手 予 領 拒 否 姿 勢

2.92 3.42 0.50

E:買手拒否 実行 反対(r

F:買手拒否実行耳劣【

F

2.60 2.89 0.29

:売

手 値 引 承 諾 ば か (r

2.03 2.33 0.30 :冒

手 倒 産 危 険 不 可 辞

2.05 2.18 0.13

台 湾 .:長

期 契 約 無 課

2.30 2.29

U.Ul

B:冒

申入 自然

2.55

c:「

帝三 硬 直 的

D:買

月 1否 姿 勢

3.51

0。 19

E:富

L確 含 夫 何 反 対

(r, 2.66 2.79

0。 13 買 モ:拒

否実行卑劣(r) 2̲46 2̲66

(」 i  .  π

=

=lE51月 K:浩 は 力ゝ tr

0.16

H:富 [

=倒 産 危 険 不 可 う

Z.30 2.28 ‑0.02

中 国

A:長

期 翼 約 無 謀

1.99 2.21 0.2

B:冒

引 申入 自然

C::竜

:度 硬 直 的

0.47

I夏

=受

領 JL合 姿勢 3.63 0.47

2.43 2.82 0.39 2.36 0.41 G :売

手 値 引承 諾 ば か

(r) 2.02

層罫三 l僣 ]産 危 険 不 可 避

香 港

A:長期 契約無謀 2.45 2.41 ‑0.04

B :買

手 値 り 1申 入 自然

3.04 3.34 C::電

l態

度硬 直 的 3̲19

D:買

[ 1合 姿 勢

3.81 0.41 :富

拒 否 実 行 反 対 (r

3.34 3.70 0.36

:冒 丁隻摯4暉

(r

Z.bb

G:帯

手 値 弓I承訴 ば か

fr

H :買

手 倒 産 危 険 不 可 盤

ア メ リ カ

A:長

1舅 裂 約 網 照

:菜 2.7 2.54 ‑0.22 B :冒

手 値 弓 l申 入 自 然

2.85

Z.ソ 4

c:,需

三l態

度硬 直 的

D:買

E 二 否 姿 勢

E:富 [ TE合

実 行 反 苅 (r

3.29

0。

27

F:富

LTE含 芙 何 早 劣 trリ

2.59 2.70 0.11

売 手 値 弓 1承 諾 ば か (r

1.97 2.06

買手倒産 危 険不可避 2.49 Z.bb

'P<.05 *'P<.005 *キ ,P<.001

法意識の多重構造を探る

契約意識調査 にみる買手バージ ョンと売手バージ ョン

‑15(300)一

(16)

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

か らGの値 を逆転 してある。 この調査 は、その目的のひ とつ として法学 生 と商学生か らデータ収集 を行 っているのだが、 ここでは、比較 を厳密 にするため、法学部生のサ ンプルのみで比較 している。

韓国 と中国で売手バー ジ ョンと買手バージ ョンの間の平均値 の差が相 対的に大 き く、統計的に有意な差 を示す質問数 も多い。 また、 この両国 においては、調査国/地域が「買手」の場合の方が値が低 くなっている 点 に注 目されたい。つ まり、調査国

/地

域が「買手」であるバージ ョン に回答 した学生群の方が、「売手」であるバージ ョンの調査票 に回答 した 学生群 よ りも、契約逸脱 を許容す る傾向が示 されている。 自国

/地

域 の 企業 に「仲間意識」 を持つ必然性 はないはずであるが、契約の枠 を逸脱 したのが 自分の国

/地

域 なのか、他の国/地域 なのかによって反応が異 なっているのである。

こうした契約規範 を含む法規範 を遵守すべ きか否か とい う決断に直面 す る場面 はさまざまであ り、 このデータはあ くまで国際長期契約 という 文脈での質問票調査のデータである点 に留意す る必要がある。 しか も、

勉学途上の学生 を対象 とす る調査であ り、現実社会の取引 に直接関わっ ている者 を対象 としているわけではない。 もちろん、彼 らは法律 を学ん でいるのだか ら、なにが しかの リーガルマイン ドを身 につけつつある者 が対象であ り、その点で一般国民 とは異なる反応 を示す ことも十分考 え

られ る。

日常生活 とある程度距離のあるこの ような取引においてす ら、そして 一般国民 よリリーガルマインドが身近であると考 えられる法学生の間で も、 このように「われわれ」に対す るひいきがみ られ るのである。 した が って、 より「われわれ意識」 に直面 した場面や一般国民の間では、規 範的判断が「われわれ意識」 に引っ張 られている可能性 は小 さ くない と 考 える。

で は、あまり差のみ られないその他の国はこの「われわれ意識」が弱

(17)

法意識の多重構造を探る いのであろうか。残念 なが らこの調査データか らはこの点 についての解 答 は得 られない。 この ような買手が 自国

/地

域 なのか、他国/地域 なの か による反応の違いは、おそ らく「国民」観念の違 いか ら考 えることが で きるか もしれない。 これは共同体 としての国家が、ひ とび とに とって 有す る意味 と関係す るものである。 また、 トラブル にあたって、 その原 因や責任 を自己に帰すか、 自己以外 に帰すか という「 自己高揚」「 自己卑 下」とい う社会心理学的特性 にも関係 しているか もしれないくり。これ らに ついては指摘だけにとどめ、 さらに分析 を進 めよう。

(1)社会心理学の知見では、なんからの失敗について日本人はアメリカ人に比 べて「自己高揚」

(失

敗を課題自体や他者のせいにして自己評価を下げない

)

ではなく「自己卑下」の傾向を強 く示すとされる。北山忍・高木浩人・松本 寿弥「成功 と失敗の帰因:日本的自己の文化心理学」日本心理学会編 らい理 学評論』Vol.38、 247‑280頁

(1995)。

このような傾向もこうした反応の違 いに影響 していると思われるが、これがアジアに共通のものであるのか日 本特有の傾向であるのか興味深いところである。

6.法的解 決手段 に対 す る態度

なん らかの もめごとにまきこまれた り、紛争状態 に陥った時に、その 解決のためにとることが可能 な手段 は、何 もしない ことを含 め、多数存 在する。「何 も裁判 まで しな くて も」とい う表現 は、 さまざまな民事訴訟 を提起 した時 に、当事者だけか らだけでな く、周囲か らもよ く聞かれ る 率直な感想である。 ある紛争状態 においてなん らかの行動 をとる当事者 に対 して、周囲の人間 は、それが妥当であるか どうかの判断をしている。

それは紛争の性質 と紛争解決手段の特徴 を総合 して判断 されていると考 えられ る。紛争の性質 は、時系列的にも展開過程 に応 じて変化 してい く

‑17(298)一

(18)

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

であろうし、その対象 となっていることが ら、両当事者 の人間関係 な ど により、なん らかの類型的な判断が されていると思 えるのである。

日中米の法意識調査では、「友人間の金銭貸借 の債務不履行 をめ ぐる争 い」「電器店 と消費者の間での電気製品の瑕疵 をめ ぐる紛争」「交通事故 の損害賠償 をめ ぐる争い」 という三つの仮設事例 を提示 し、その当事者 (順に債権者、消費者、被害者)が「何 もしない」「有力者への相談」「法 律専門家への相談」「民事調停 あるいは

ADR機

関」「裁判」といつたそれ ぞれの行動 をとることに対する評価 を「望 ましい」か ら「望 ましくない」

までの5段階でたずねている。 これ らの仮設事例 は、人間関係 とい う点 でみれば、紛争以前か らの密接 あるいは継続的に存在す る関係、売買行 為 によ り形成 された関係、事故 による紛争 によって生 じた関係 とい う違 いがある。 また、その当事者の とる行動の種類 については、後三者が法 的な リソースヘのアクセス となっている。

これ らの合計15の質問 に対す る回答 について、国別 に因子分析

(Fac‐

tOr Analysis)を行 った。因子の固有値 (Eigen Value)が 、1.0を越 えてい るか、説明 された分散の累積%が50%を越 えているか、各国共通 の因子 数で分析で きないかな どを総合的 に判断 して、4因子 を析出 した。国 ご とに4因子 (Factor)で分析 して、各項 目(Item)について絶対値 の大 きい 因子負荷量(Factor Loading)を強調表示 した ものが、【

2】

から【

4】

である。

2】

の日本のデータを例にとってみよう。第3因子 と第4因子に 着目すると、「何 もしない」と「有力者への相談」への反応のそれぞれが、

3事例に共通 して、独自の因子によって説明される度合が高いことが示 されている。

また第1因子 と第2因子に着目すると、「金銭貸借」についての回答が、

電器修理や交通事故に対する回答 とは別の因子によって説明される度合 が高い。 これは、紛争当事者の関係性が、「金銭貸借」の事例の場合は従

(19)

法意識の多重構造を探る

回転後の因子行列

1'2

因 子

:な

に も し イ ―.226 ̲040

:有

力 者 に ― .062

金 銭

:法

律 専 門 : こ へ の相 談 ―。130

民 間調停 あ るい は

ADR 807

̲1199

:裁

l

器 :な に もしない

―。161 ―.00] .793

電 器

:石

力 者 に .810

雷 昂

:お 撮准猛翼軍 Flタ へ の相 談 .327 ― .092

:民間 調 停

ゝる 0ヽ

ADR

484

:裁

l

472

̲025

:な に もしない

.728

有 力 者 に

:法

律 軍

P

こに相 談 ― .119

:民

間 調 停 るい は

ADR

.298

墓 故

:裁

判 .616 ― .074

因子抽出法 :主 因子法

回転法 :Kaiserの 正規化 を伴 うバ リマ ックス法

1.5回

の反復で回転が収束 しました。

2.nation国=日

回転後の因子行列

1'2

因 子

― ̲1lК H .655 ―.250

争に相 談 ―̲031

:法

律 専 門家 へ の

627

金銭

:民

間調停 あ るい は

ADR

.692

―̲001

な に

し ―.093

目目暑

:有

力 者 に

:法律 専P

こ へ の相 談 .025

:民

間 調 停 る しゴま

ADR

―。

253

:;裁 判

I

620

― ̲〔 〕 X4 。 122

:な に もしない

―.142

:有

力 者 に .725

:お 農律 コ早 「 1 こと こ本目言炎 ― .095 .295

:民

間調 停 あ るい は

ADR

.315

事 故 :裁

.572

因子抽出法 :主 因子法

回転法 :Kaiserの 正規化 を伴 うバ リマ ックス法

1.5回

の反復で回転が収束 しました。

2.nation国=中

‑19(296)一

(20)

因 子 1

金 銭

:な

に も し な い .027 ―.409 ― .080.142

:有

力 者 に

.443

:法

への相談

.761

民間調停 あ るい は

ADR

―.096

きに も しな い ―.026 ―̲458

争に .744

電器

:法

律 専 門家 へ の相 談

電 器

:民

間調 停 あ るい は

ADR

.372

電 器

:裁

判 .555

事故

:な

に も しな い ―̲369

事 故

:有

力 者 に ― .039 ―.020

史 :ち民篠種理昇

F]塑

てに 不目記処 足 :」 民

FH器

周停 あ る い は

ADR

喜 故

:裁

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

回転後の因子行列

1'2

因子抽出法:主因子法

回転法:Kaiserの正規化を伴うバ リマックス法

1.6回

の反復で回転が収束しました。

2.nation国 名=米

前か らの「友人」であ り、電器修理 と交通事故 は、そのような トラブル 発生以前の密接な人間関係が存在 していない とい う違いによる と考 えら れる。紛争 にあたって、相手方 との関係性 を意識的あるいは無意識 に前 提 として、対応行動 をとるとい うのは、常識的な紛争過程の理解 とも合 致する(1ヽ

3】

の中国のデータでは、因子の順番は異なるが、やはり 同様の構造が示されている。

しかしながら、【

4】

にみるように米国サンプルは紛争解決方法に対 する評価 という点で、他の2国とは異なった構造を示 している。米国に おいてADRの位置が日本 と異なることや、中国の「人民調解」と呼ばれ

ADRが

居住地の行政システムと密接に関連 していることなども考え なければならない。したがって、裁判 とADRの関係や、友人関係の処理 の仕方などまだまだ探求すべき論点があるということを示 しているとい えよう。人々が、相手 との人間関係や紛争解決手段の特徴など、紛争を

(21)

法意識の多重構造を探る

総市解決手段への評価

国名

日本 米国 中国

とりま く事情 を総合的にふ まえつつ、 それぞれの事例で当事者の紛争解 決手段選択 に対する評価 を峻別 していることが考 えられ るのである。

米国のデータは、因子分析では異なるが、 ここで単純 に各紛争解決手 段評価の回答の値の平均 を比較 してみよう。【

6】

にみるように、「何 もしない」を除 くと、ほ とん どすべての項 目について、「望 ましい」方向 での回答、すなわち中央値 の3.0を越 える値 が得 られていることがわか る。 もちろん、法律家への相談、調停 あるいADR、 そして裁判の評価 に ついて各国間で違い もみ られ るが、 ここでは、それ らすべてが「好意的」

に評価 されているとい う点 に着 目しておきたい。第二者 の紛争 について の評価 とい う文脈で法的 リリースの利用が「望 ましい」 とす る好意的反 応 は、各国共通でみ られるのである。

‑21(294)一

(22)

法政研究9巻 2号 (2004年

)

(1)韓国法意識調査では、 これ と同形式の調査項 目がないので直接比較 はで き ないが、類似する質問 として、参考のため以下 を示す。回答比率 も併記 した。

「 あなたは、金銭の トラブルで裁判所で裁判 を受 けることについて どのよう にお考 えにな りますか

?」 (択

一選択

)

1.時間 と費用が多 くかか り、やつかいだ と考 える。 (37.0%)

2.法廷 に断つ ことは、それ自体が不名誉なことと考 える。 (13.8%)

3.自分の権利のためには、裁判 を避 ける理由はない と考 える。 (29.6%)

4.裁判 は、正義 と秩序 を求めるものだか ら避 ける理 由はない と考 える。

(19.1%)

7.契

約枠組 の 中 での交渉 と逸脱 へ の評価

さて、再び、契約意識調査 に目を向けてみよう。先 にみた、質問

B、

D、

Eの関係 をみてみることにす る。 これ らの質問 はすべて買い手 の行 動 に対する賛成か反対かの評価 を尋ねた ものである。質問Bは契約 とい う枠組 の中での交渉 についての質問であ り、質問DとEは「受領拒否」

とい う契約の枠組 を外れ る買手の意志や行動 を尋ね るものである。同 じ くデータの比較可能性 を高 めるため法学部生 に絞 つて、契約の枠組 の中 での交渉 とそれを外れる行動 に対 しての評価 との差 を一覧 にした ものが 次の 【

5】

である。回答者 ごとの質問Dと Eの平均値か ら質問Bを じた値が表の中の平均値 となる。あ らか じめ質問Eの値 を逆転 して、値 の高い方が契約遵守すべ しとす る態度が強いように調整 してある。各質 問への回答 は、最小値1最大値5の整数 をとるので、 ここに示 した指標 の最小値 は‑4、 最大値 は 4と なる。表の中の値 はすべて正の値 を とっ ているので、契約の枠組 を外れた実力行使 にかかわ る段階での評価の方 が契約 を守 るべ しとす る方向に動いていることがわかる。表の右 にある 信頼 区間は、母集団の平均値が95%の確率で この上限〜下限の範囲内に

(23)

法意識の多重構造を探る

契約意識調査 にみる契約枠組の中 と外の評価の違い

(質

D+質

E)/2‑質

問B

存す るとい うことを意味す る。下限について着 目す るとすべて正の値 を 取 っている。 したがって、母集団の差が0である可能性 は小 さい。

ここでは、契約 とい う枠組の中での「価格改定 申しこみ」 と、契約の 枠組 を逸脱 しての「受領拒否」 との間で、 これ らの国/地域 に共通す る 評価軸がみて とれるのである。ただ し、指標の絶対値 は小 さいので、 こ れが どの程度実質的な意味 を持つかについて も留保が必要である。

8。

法意識研 究 の方 向性

本稿で は、法嫌悪度、われわれ意識 の契約遵守意識への影響、法的紛 争解決手段の峻別、契約内交渉 と契約枠組逸脱行動への評価の差 とい う 点で具体 的 にデータを検討 して きた。それぞれ 目的の異 な る調査 プロ ジェク トにおいて収集 されたデータを用いた点で、本稿の分析 はあ くま で示唆的な ものに過 ぎない。 また、示 したデータ も単純 な平均値比較か

ら、因子分析の結果 まで さまざまである。

法意識 において多様性 と共 に類似性が示 されている。本稿でみて きた

度 数 平均値 標準偏差 平均値の95%信頼 区

 

限 上

 

 

1647

0。

41

  1.08

 

1.11

  

595

 

243

0。

69

アメ リカ

‑23(292)一

(24)

法政研究 9巻 2号 (2004年

)

ように、なん らかの多様性が示 されたのは、法意識 の抽象的で情緒的な 側面であ り、紛争解決制度や契約 とい う法的制度 に関する評価 とい う面 ではアメ リカ も含めて同 じような傾向が示 されていた(1ヽ

ここか ら示唆 されているのは、国際比較 における法意識の多様性 と類 似性 を整序 してい くひ とつの方向 として、法観念たる抽象的法概念 に対 する直感的ない し情緒的反応(本稿 での法嫌悪度、「われわれ意識」の影 )と、狭義の法意識た る具体的法制度・ 法規範 に対す る論理的反応(本 稿での紛争解決制度の評価や契約枠組逸脱への評価)との間の違 いであ る。 このような図式 に基づいて、直感的で非論理的側面 と論理的な側面 を識別 して比較研究 を設計 し、実施 してい くことは、法意識や法観念の 国際比較 をしてい く際の観点 として重要である と考 える。 これは歴史的 伝統の異なる西洋・ 北米社会 と東 アジア社会の比較 をす る際にも有用 な 視点 となろう。

調査法の話題 に戻れば、 このような調査票調査 においてあきらかにさ れる法意識や法観念 は、ある意味でたて まえであ り、紙 に書かれた質問 や仮設事例 に対する反応 に過 ぎず、現実社会で同 じ問題 に直面 した とき に人々が どの ように考 え、 どう行動するか とはずれがあると批判 はある 意味で正当である。 また、人間行動や判断において、情緒的な側面 と論 理的な側面 は、混在 してそれ を規定 しているのであ り、あ くまで この区 分 は計測概念 としての意義 を持つ ものである。

こうした方法論的な問題か らみて、調査票 を用いた調査が意義 を持つ とすれば、 こうした計測概念 を精緻化 したスケール(尺)を、心理学的 手法 を利用 して作成 してい く方向が考 えられる。心理学では性格や能度、

価値観 についてのさまざまなスケールが構成 され、 日々検証 されて改善 されている。 この点では、法社会学 は大 き く遅れているといわざるをえ ない。心理学や社会心理学の最新の成果 をだいたんに取 り入れた調査設 計が必要 となって くるだろう。 この ような標準化 されたスケール群が作

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