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幼児の読字学習に及ぼす絵の対提示の影響

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(1)

幼児の読字学習に及ぼす絵の対提示の影響

著者 今井 靖親, 田中 かおり

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

35

1

ページ 231‑242

発行年 1986‑11‑25

その他のタイトル The Effects of Frequency of Picture

Presentation on Learning to Read in Young Children

URL http://hdl.handle.net/10105/2155

(2)

幼児の読字学習に及ぼす絵の対提示の影響

今 井 靖 親・田 中 かおり*

(奈良教育大学心理学教室) (昭和61年4月30日受理)

文字学習入門期の児童向けあるいは幼児向けの本には、必ずといっていいはど文字または文に、

それと関連した内容の絵が添えられている。これは一般通念として絵の対提示が読字学習を促進 すると考えられていることのあらわれであろう。心理学の研究領域でも幼児の文理解においては、

絵の対提示が有効であることが実験的に確かめられている(例えばRusted & Coltheart, 1979、

柴田、 1981)。

しかし、文字や単語の読みを学習する際の絵の対提示効果については、さまざまな結果が報告 されている。

Samuels (1967)は、 4つの単語(boy, bed, man, car)の読みを、 (1)単語だけが書かれたカ ードを提示する群、 (2)単語の上にそのものの単純な線画が描かれたカードを提示する群、 (3)単語 の上にそのものと他のものが描かれたカードを提示する群、に分けて学習させた。その結果、 (1) 群が(2)、 (3)群より有意に成績がよかったことから、彼は絵は読字学習を妨害するという結論を下

している。

杉村(1974)が、学習材料に漢字と片仮名を用いて同様の実験を行ったところ、 Samuels (1967)と同じく、絵が読字学習を妨害するという結果が得られた。この結果について彼は次の 3つの観点から考察を加えている。

(1)絵の呈示によって、幼児の興味は高められるが、読みの学習にとって重要な文字への注意が 弱められる(2)対連合学習の見地から、絵のない場合は呈示された単語に対して幼児自身のイメ

ージを伴った音が適合され(単語と音+イメ‑ジの連合)、そのイメ‑ジが単語と音の連合を促 進する。しかし、絵のある場合は、単語と絵に対して音が適合され(単語+絵と音の連合)、絵 が単語と音の連合を抑制すると考えられる。 (3)刺激般化の原理からみて、絵のある群では学習試 行とテスト試行の刺激事態が異るため成績が悪くなる。

上記の(1)に対して今井(1979)は、これらの実験は、絵と文字を同時に提示しているため、学 習者の注意が文字と絵に分散してしまったのではないかと考え、絵を提示してから文字を提示す るという継時提示法で絵の効果を検討する実験を行った。その結果から、絵は読字学習を妨害も 促進もしないということが確かめられた。

福原(1981)は、文字を先に提示し、次に絵をつけ加え、そのまま両方を提示するという方法 による実験から、今井(1979)と同様の結果を得ている。

次に、同じく上記の(2)に対して、松崎・磯崎・上野・古城(1979)らは、杉村(1974)の実験 で学習材料として用いられた単語は、幼児が既に知っている単語であったために、その単語を具

* 境在奈良教育大学附属幼稚園

231

(3)

象化して意味理解を助けるという絵の機能が十分に生かされず、絵による妨害が生じたのではな いかと考えた。そこで個々の被験者について知っている単語(高熟知語)と知らない単語(低熟 知語)を調べ、それを漢字で表記した材料を用いて、継時提示法で絵の効果を検討する実験を行

った。その結果、高熟知語では、絵は読字学習を妨害したが、低熟知語では、妨害も促進もしな いということが確かめられた。

今井(1983)は上記の松崎ら(1979)の実験について、 (1)被験者によって学習材料が異なるこ と、 (2)1群の被験者がわずかに12名であること、の不備な点を指摘した。そこで、予備調査によ り、学習材料を統制し、各群の被験者を20名として実験を行った。

これらの先行研究に関する結果と考察をまとめてみると次のようになる。

①絵が文字と同時に提示されるために、絵と文字とに被験者の注意が分散されるわけではない (松晴ら、 1979),

㊤高熟知語では、単語の表示する対象物のイメージを幼児が容易に形成できるため、絵は単 語の意味理解を補うという本来の機能を発揮する必要がないばかりか、むしろ過剰で不必要な 刺激となり、幼児の注意を分散させ、文字と音声の連合を抑制してしまうのではないか(今井、

1983 。

④低熟知語では、使用された単語の熟知度が低すぎた場合には、幼児にとって、ほとんど無意 味綴りに類似した学習材料となるため、そこへ絵という情報が与えられたとしても、絵は単語を 熟知化するという機能を発揮しえない。むしろ過剰な刺激となって、幼児の注意を分散させる

(今井、 1983)。

上記の①、 ④については妥当な解釈であると考えるが、 ④については、新たな解釈をつけ加え たい。まず今井(1983)は上記の③で絵の機能として、熟知化(familiarization)ということば を用いているが、熟知化については、 Kauslerは「経験の種々な頻度を産み出す人工的な手段で ある」と定義している(福沢、 1976)。福沢(1976)も熟知化とは実験上の操作であると考え、

それに基いて種々の実験を行っている。このように「熟知化」の定義はあいまいであり、必ずし も一致した概念として用いられてはいない。そこで本研究では絵の機能については、 「熟知化」

を用いず、松崎ら(1979)のいう、単語を具象化して意味理解を助けるというはたらきと考えた

IE

さて、次に低熟知語を用いた場合、絵は,この単語を具象化して意味理解を助けるという機能 を発揮しえなかったのか、ということについて考えてみたい。辻本(1983)が再生テスト、再認 テスト、概念テストの3つの査定方法で、今井(1983)と同様の実験を行ってみたところ、概念 テストでは低熟知語において絵の効果が認められた。また今井ら(1983)は読字学習の際、低 熟知語よりも高熟知語を用いる方が有効であることを実験的に確かめている Steinberg 山田 (1977)の実験においても、有意味語を用いた読字学習の重要性を強調している。これらのこと から、今井(1983)の実験の低熟知語においては、ある時点までは、絵によって単語の意味が具 象化され、読字学習が促進された。しかしそれ以後は、高熟知語を用いた学習と同じように、絵 の対提示は過剰な刺激となり、文字一音声の連合が抑制された。そのため読字学習が妨害され、

結果的に促進効果も妨害効果も認められなかったと思われるのである0

以上のように、読字学習における絵の対提示の促進機能を、単語の意味の具象化であると仮定 した場合、その機能を働かせるために、試行ごとの絵の対提示は必要なのであろうか。ひとたび 絵によって単語の意味が具象化され、その具象化されたものが読字学習に有効に働くのであれば

(4)

その後の絵の対提示は、文字一音声の連合を抑制する刺激として働くのではないかと考える。特 に、高熟知語を用いた学習では、このような傾向が強いと思われる。

絵の対提示が以上のように機能しているのであれば、絵の対提示回数を変えることによって、

読字学習に及ぼす影響が異なることが予想されるo

そこで本研究では、絵の対提示回数が読字学習に及ぼす影響について検討するため、新たに絵 の対提示回数を変数とした実験を行う。

具体的には、絵を対提示しない統制群と、すべての試行で絵を対提示する群及び部分的に絵を 対提示する群の2つの実験群をつくり、相互の比較を行う。部分的に絵を対提示する群では、単 語の意味の具象化は早い時期がよいと思われるので、本実験では、学習開始時とその後の2回の み絵の対提示を行う。

また、前述したように、高熟知語と低熟知語では絵の機能の仕方が異なると思われるので、単 語の熟知度も要因に組み入れる。

さらに、絵による単語の意味の具象化の機能をより明確にするため、本研究では、単語の熟 知皮は低いが、絵の熟知度は比較的高いものを低熟知語として、学習材料に選定する。なお Samuels (1976)、松本(1984)の単純画と複雑画を用いて絵の効果を検討した実験によると、

両者の間には有意な成績の差は認められなかった。従って、絵の単純性及び複雑性と被験者の注 意の分散は必ずしも関係があるとは言えないと考えられる。ただし、松本(1984)の実験で使用 された複雑画では、その中のどれが学習すべき単語を表した物であるのかわかりにくい。そこで 本研究では、学習すべき単語を表す物には色を塗り、提示する際、指でそれを指し示すようにし て、絵による単語の意味の具象化の機能を発揮させるように配慮する0

この他の先行研究には、被験者の読字能力を要因に組み入れた場合、読字能力の高い者より 低い者のほうが、読字学習において絵の影響をより強くうけたという結果を報告したものがある (Willows, 1978),従って本研究では、被験者の配置の擦、各群の読字能力がほぼ等しくなるよ うに配慮する。

本研究の結果の予想は次のとおりである。 (1)高熟知語で学習する場合は、絵の対提示をしない 郡と2回対提示する群が、毎回対提示する群よりも読字学習の成績はよいだろう(2)低熟知語で

学習する場合は、絵を2回対提示する群が他の2群よりも読字学習の成績はよいだろう。

I

予 備 調 査

本研究では、被験者と学習材料の要因を統制した実験を行うために、次のような方法で本実験 の前に、被験者の読字力調査と、単語と絵の熟知度調査を実施した。

1.被験者の読字力調査

し\1万法

被験者 平均年齢5歳7か月の幼稚園児141名。

材料 読字力調査カード:国立国語研究所(1972)の「調査文字カード(ひらがな)」と「調 査文字カード(カタカナ)」を使用した。どちらも4.7cmx6.7cmの白色の厚紙16枚で、明朝 体で書かれた平仮名または片仮名が3文字ずつ並べられている。平仮名及び片仮名は、それぞれ 清音45文字、招音1文字、計46文字である。

手続き 調査は個別に行った。まず被験者に、クラス名と氏名を尋ね、次に読字力調査カード

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を示し、読めるか否かを尋ねた。

(B)結果

平仮名46文字、片仮名46文字について、 1文字1点を与え、 92点満点として採点し、この成績 を被験者の読字力とした。

2.単語と絵の熟知度調査 (A)方法

被験者 保育園の5歳児29名(男児17名、女児12名)。年齢の範囲は5歳3か月から6歳2か 月、平均年齢は5歳8か月であった。

材料 ①単語リスト:清音2文字からなる名詞の中から、小武内による幼稚園児の熟知語嚢表 (福沢、 1970)及び辰己(1983)、辻本(1984)の単語の熟知度調査の結果を参考にして、幼児 がよく知っていると思われる単語10個と、幼児があまり知らないと思われる単語13個、合計23個 の単語を選んで作成したリストである。

④絵カード:上記の23単語の彩色画をそれぞれ、 13cmx19cmの画用紙に描いたものである。

手続き 調査は個別に行った。まず被験者にクラス名と氏名を尋ね、次のような教示を与え た。

単語の熟知度調査 ① 「これからお姉ちゃんがいくつかのことばを言いますから、知っている か知らないか教えてね。」といい、 23単語について順次質問した。そして、この質問に対して

「知っている」と答えた者には、さらに、 ㊨ 「それはどんなものですか。」と質問した。

絵の熟知度調査 ④ 「これから見せる絵の中で、お姉さ申んの指すものについて、知っている か知らないか教えてね。」と言い、絵カード23枚を順次提示し、質問した。そして、単語の熟知 度調査と同様に、 「知っている」と答えた者に、 ④ 「これはどんなものですか」と尋ねた。

この時の材料である単語リスト、絵カードはすべてランダムに提示した。

(ち)結果

結果の処理は次のように行った。 ①、 ④について、 「知っている」と答え、さらに③、 ④につ いてもその内容を正しく答えた者のみに、 1点を与えた。 29人の被験者の得点を合計し、各々の 単語または絵の正答率を求め、これを「熟知度」とした。

以上の結果に基き、単語、桧、ともに熟知度の高い2単語「カサ」、 「イス」を「高熟知語」と して、また単語の熟知度は低いが、絵の熟知度は比較的に高い2単語「オノ」、 「キネ」を「低熟 知語」として、本研究の学習材料を選定した。

方   法

実験計画 2×3の要因計画が用いられた。第1の要因は単語の熟知度(高熟知語、低熟知 語)であり、第2の要因は絵の対提示回数(0回、 2回、 8回)である。

被験者 幼稚薗児132名(男児71名、女児61名)。年齢の範囲は5歳1か月から6歳2か月、平 均年齢は5歳7か月であった。平均年齢、平均読字力、男女の数がほぼ等しくなるように配慮し て表1の6群をつくった。

材料 学習材料は、予備調査により選定された清音2文字からなる次の4単語である。

高熟知語:カサ、イス。低熟知語:オノ、キネ。

学習させる文字はすべて人工文字とする。従って、いずれの群も同じ文字を学習することにな

(6)

表1各群の平均年齢と平均読字力 w‑m・m

(ft:;W!)巴望EEj玩 (1)高熟知語・絵提示0回群

(2)高熟知語・絵提示2回群 (3)高熟知語・絵提示8回群 (4)低熟知語・絵提示0回群 (5)低熟知語・絵提示2回群 (6)低熟知語・絵提示8回群

7 7 7 7 7 7

in in u} in m in

S

  I D   N   N   O l   と U

e S   S   C O   ( D   S   N

in in m in in in

園画「君図1文字カードの例      図2 絵カ ードの例 る。学習試行及び、テスト試行のカードとして次のものを用いた。

①文字カード:6cmx6cmの白い厚紙に、古代文字(日向、 1972)を参考にして作製した人 工文字「AJ 「罪」 「q̲」 「rT」を黒ペンで書いたもの(図1参照)0

④絵カード:10cmx12cm の白い厚紙にカサ、イス、オノ、キネの彩色画を描いたもの(図 2参照)0

③補助用カード.・文字を覆うものとして、 6.5cmx6.5cmの白いカード2枚と絵を覆うため の10.5cmx12.5cmの白いカード1枚。

手続き 実験は個別に行った。まず被験者にクラス名と氏名を尋ね、 「これからお姉ちゃんと いっしょに、 ○○ちゃんの知らない遠い国のおもしろい文字を覚えようね」と教示を与えた。そ の後の学習試行、習得テストは次のように行った。

(1)高・絵0群 「AJ 「万」の2つの文字カードを並べ、片方ずつ補助用カードで覆い、 「こ れは"カ" (または"サ'')と読みます。言ってみて下さい」というような教示を与え、各文字4 秒ずつ提示し、その読みを模倣させた。その後、補助用カードを取り除き、 「あわせて̀̀ヵサ"

と読みます。言ってみて下さい」と教示を与え、この1組のカードを8秒間提示し、同様に読み を模倣させた。イスについては、 「q̲」 「n」のカードを提示し同様の実験手続きで行った。こ のような手続きで学習試行を1回行った後、 「覚えている文字があれば読んで下さい」と教示を 与え、文字カードを1文字4秒間ずつランダムに提示し、被験者が読めるかどうかをテストした。

以上のような学習試行と習得テストを交互に8回繰り返した。

(2)高・絵2群1、 2試行目は、まず絵カードを提示し、その中の学習すべき単語を描いた部 分を3秒間指し示す。次に絵カードを補助用カードで覆い、高・絵0群と同様にして文字を学習

させ、習得テストを行った。 3試行目からは、文字のみを提示して、学習試行を行った。

(3)高・絵8群 すべての試行で、高・絵2群の1、 2試行目と同様の手続きで文字を学習させ た。

(7)

(4)低・絵0群、 (5)低・絵2群、 (6)低・絵8群では、 「AJ 「万」を"オ''"ノ"、 「q̲」 「rT」

香"キ''"ネ"と読ませ、それぞれ(1)高・絵0群、 (2)高・絵2群、 (3)高・絵8群と同様の手続き で、学習試行と習得テストを行った。

最後に、単語理解テストとして、学習した2単語について、 「○○とはどんなものですか」と 尋ね、被験者に答えさせた。

結   果

結果の処理は次のように行った。習得テストにおいて、被験者が正しく読めた場合に1点を与 え32点満点とした。習得テストにおける被験者の誤りの中で、学習した文字のなかのある文字の 読みが他の文字に対してなされた場合の数を、各被験者の侵入数とした。単語理解テストでは、

「WISC‑R知能検査」の下位テスト「単語」における採点法を参考にして、被験者の回答の内 容により、 0点‑2点で採点しヾ計4点満点とした。

各群の習得テストの平均得点と標準偏差は表2に示した。これをもとにして、単語の熟知度の 高低と絵の対提示回数(0、 2、 8)とを被験者問の要因とする2×3の分散分析を行った。

その結果、単語の熟知度の主効果は有意にならなかったが、絵の対提示回数の主効果は、

F(2, 126)‑3.18、.05<♪<.10で有意な傾向がみられた。そこで誤差項(MSe‑U.67)を用い て主効果の検定を行ったところ、絵の対提示回数0回群が8回群よりも*‑2.021、 #‑126、 p<

.05, 2回群が8回群よりもt‑2.67、 #"‑126、 P<.01セ有意に成績がよかった。

単語の熟知度と絵の対提示回数の交互作用は有意にならなかった。しかし、試みに分散分析に おける誤差項(MSe‑44.67)を用いて、単純効果の検定を行ってみたところ、次のような結 果が得られた。単語の熟知度ごとにみると、高・絵0群が高・絵8群よりも有意に成績がよく (*‑2.39、 df‑126、 p<‑05)、低・絵2群が低・絵8群よりも有意に成績がよかった(f‑2.16、

#"‑126、 p<.05)。また低・絵2群は低・絵0群よりも成績のよい傾向がみられた(7‑1.69、

df‑126、.05<p<.10)。絵の対提示ごとにみると、高・絵0群よりも有意に成績がよかった (*‑2. 14、 #‑126、 /K.05),

次に試行において群間に差があるかどうかをみるために、各群の習得テストの成績を2試行 ずつ合計したものを1ブロックの成績として、各ブロックの平均得点を求めた(図3)。そして このブロックを被験者内要因として、 2 (単語の熟知度) ×3 (絵の対提示回数) ×4 (ブロッ ク)の分散分析を行った。ブロックの主効果が有意であったので、誤差項(AfSe‑1.90)を用

表2 各群の平均得点と標準偏差

(8)

,        2         3         4

ブ ロ ッ ク

図3 各群のブロックごとの平均得点

いて主効果の検定を行ったところ、すべてのブロックの問に有意差が認められた(1と2 :i‑

5.95、 df‑378、 /K.01、 2と3 :*‑3.06、 df‑378、p<‑01、 3と4 :*‑3.42、 df‑378、p<

.01)。ブロックの主効果はブロックが進むにつれて、習得テストの成績がよくなったことを示し ている。

単語の熟知度とブロック、絵の対提示回数とブロック、及び単語の熟知度と絵の対提示回数と ブロックの交互作用は有意ではなかった。しかし念のため、各群ごとの成績の伸びを見るために 上記の分散分析の誤差項(MSe‑1.90)を用いて、 6群それぞれについてブロック間の成績の差 の検定を行ってみた。その結果、高・絵0群ではブロック1と2、 3と4の問に、高・絵2群で はブロック1と2、 2と3の間に有意な成績の伸びが認められた。低・絵0群ではブロック1と

2、 3と4の問に、低・絵2群ではブロック1と2、 3の間に、低・絵8群ではブロック1と2 の問に有意な成績の伸びが認められた。

次に侵入数について習得テストの成績と同様に各群の平均侵入数、標準偏差を求め(表3)、 2 (単語の熟知度) × 3 (絵の対提示回数)の分散分析を行った。

その結果、単語の熟知度、絵の対提示回数の主効果がそれぞれ、 F(1、 126)‑6.40、 p<.01、

F(2、 126)‑4.00、 /K.05で有意であった。そこで誤差項(Ms?‑36.69)を用いて、絵の対提

(9)

表3 各群の平均侵入数と標準偏差 絵 の 提 示 回 数 0 回    2 回    8 回

全  体

示回数の検定を行ったところ、桧の対提示回数8回群が0回群よりも有意に侵入数が多く(t‑

2.76、 df‑126、♪<.05)、また8回群は2回群よりも侵入数の多い傾向がみられた(*‑1.90、

df‑126、.05<K.10)。

最後に単語理解テストの各群の平均点を求めその差についてt検定を行った。その結果、低・

絵0群が、低・絵2群および低・絵8群よりも有意に成績が悪かった。さらに低熟知語を学習し た群において、理解テストで0点の者と、 4点の者それぞれの習得テストの平均点を求め、その 差についてt検定を行ったところ、 *‑2.00、 df‑U、 /<.05で有意差が認められた。

議   論

本実験の目的は、幼児の読字学習に、絵の対提示回数が、どのような影智を及ぼすかを検討す ることであった。

その結果、絵の対提示回数8回群が、 0回群および2回群よりも読字学習の成績が惑いという ことが明らかにされた。

絵の対提示回数0回群を絵なし群、 8回群を絵あり群とみなすと、本実験の結果は、絵のな い群のはうが、絵のある群よりも読字学習の成績がよかったという、 Samuels (1967)、杉村

(1974)、今井(1983)ら従来の実験結果と一致する。

しかしながら、本実験において、絵の対提示回数8回群よりも2回群の方が読字学習の成績が よく、また2回群と0回群との間に有意差がみられなかったことから、必ずしも絵の対提示が読 字学習を妨害するとは言えないことが明らかにされた。

また本実験では、絵の対提示回数8回群の侵入数が他の2群よりも多いという結果も得られて いる。これは読字学習において絵を対提示した場合、単語と桧の両方に対して音が適合される (杉村、 1974)ので、学習すべき音声自体の記銘は比較的容易であるが、文字一音声のみの連合 は抑制されたことが原因だと考えられる。特に絵の対提示回数8回群が2回群よりも侵入数が多 かったことから、絵の対提示回数が多いほど、上記のような傾向が強いと思われる。習得テスト の成績において、絵の対提示回数8回群が2回群より悪く、 2回群と0回群に差がないという本 実験の結果はこのような傾向を反映しているのではないだろうか。

次に学習材料における熟知度の要因を含めた場合、本実験では次のような結果が得られた。

(1)絵の対提示回数0回群においては、高熟知語を用いたほうが、低熟知語を用いるよりも、読 字学習の成績がよかった。

(10)

(2)高熟知語を用いた場合には、絵の対提示回数8回群のはうが読字学習の成績がよかった。

(3)低熟知語を用いた場合には、絵の対提示回数2回群が、 8回群よりも成績がよく、また0回 群と比べても成績がよい傾向が認められた。

まず上記の結果(1)は、今井(1983)の研究結果と一致している。彼は、 「幼児が既に熟知して いる単語を学習材料として用いた場合、その単語音から想起される単語の表示対象のイメージの はたらきで、読字学習における文字一音声の連合が促進される。」と説明している。つまり、高 熟知語を用いた場合には、被験者は、提示された単語に関する既習のイメージを新たに学習すべ き音声と単語の形態とに結びつけ、一種の媒介として、文字一音声の対連合に利用しうるわけで ある。それに加えて、単語固有の音声は被験者にとって既習のものなのであるから、それらを記 銘に利用することも可能である。

これに対して、低熟知語を用いた場合には、既習の単語のイメージが媒介として有効に使用で きないため、文字一音声の連合が無意味材料の対連合学習に近似したものとなり、学習の難度が 高まると考えられる。

このように、読字学習の際に絵の対提示をしない場合には、媒介としてはたらくイメージのつ くりやすさの差異、言い換えれば言語材料の熟知度の差が、読字学習の成績に影響を及ぼしたと 思われる。

次に、結果(2)は、松崎ら(1979)、今井(1983)の結果と一致している。今井(1983)も考察 しているように、学習材料に高熟知語を用いた場合には、それらは既に幼児の知っている単語な のであるから、絵の対提示は単語の意味を具象化するという本来の機能を果たさず、むしろ被験 者の文字に対する視覚的、聴覚的注意を分散させるだけで、文字一音声の連合すなわち読みを妨 害させる結果になったと思われる。

しかしながら、予想(2)に反して、本実験では絵の対提示回数による読字学習の成績の差はみら れなかった。そこでブロックごとの成績の伸びを調べたところ、高・絵0群では、ブロック1と 2、 3と4の間に、高・絵2群では、ブロック1と2、 2と3の間に成績の伸びが認められたが 高・絵8群ではどのブロックの間にも、成績の伸びは認められなかった。このことから、試行ご

との絵の対提示は、読字学習における成績の継続的な伸びを妨げていると考えられる。

次に結果の(3)において、低・絵0群と、低・絵8群とを比較した限りでは、松崎ら(1979)、

今井(1983)の結果と一致している。このような結果、すなわち、低熟知語の読字学習において 絵の対提示なしと、毎回対提示ありとの条件間には、成績に有意差が認められない、という結果 については、従来の研究では、絵の対提示は、読字学習を妨害も促進もしない、と結論づけられ てきた(例えば今井、 1983)。しかし、今回本実験において、新たに加えられた、低・絵2群が 他の2群よりもよかったことから、次のような解釈が可能だと考えられる。

低・絵2群も、低・絵8群も、絵によって当初の無意味綴りに近い単語の意味が具象化され、

文字‑音声の連合に媒介として有効に働いた。しかしながら、低・絵8群では、上記のように絵 が有効に機能した後にも、絵の対提示が継続されたために、あたかも最初から高熟知語を用いた 場合のように、絵の過剰な対提示は、学習者の文字に対する注意を分散させる結果になった。そ れに対して、低・絵2群では、絵の対提示がなくなった後は、学習者は絵によって具象化された ものを媒介として利用し、文字一音声の対連合学習に集中することができた。本実験ではこうし た学習過程の差が両群の成績の差になってあらわれたと考える。

なお、これに関してブロック間の成績の伸びを調べてみたところ、高・絵8群ではどのプロッ

(11)

クにも成績の伸びがみられなかったのに対して、低・絵8群では、ブロック1と2の間に成績の 伸びがみられた。このことは、絵の対提示が、高熟知語を用いた場合と同じように読字学習に妨 害的にのみ働いたのではないことを示唆している。また、低・桧2群、低・絵8群ともにブロッ ク1と2の間で成績の伸びがみられたが、ブロック3と4の間では、低・絵2群のみに成績の伸 びがみられた。低・絵2群と低・絵8群の読字学習の成績の差は、低・絵2群のブロック3と4 の間における成績の伸びによると考える。

最後に、本実験終了後に行った単語理解テストでは、 (1)低・絵2群と低・絵8群の間には成績 の差がなく、この2群が、低・絵0群よりも有意に成績がよかった。 (2)単語理解テストの成績上 位者のはうが、下位者よりも読字学習の成績がよかった。

上記の結果(1)は、絵の対提示が、単語の意味を具象化するという点では、低・絵2群、低・絵 8群ともに有効であったことを示している。また結果(2)は、被験者が、学習すべき単語の意味を 理解したことが、読字学習を促進した事実を示していると思われる。

要   約

本研究では、幼児の読字学習において、絵の対提示回数がどのような影響を及ぼすかを検討し た。

被験者は、平均年齢5歳7か月の幼児132名であった。彼らの年齢、男女の数、読字数がほぼ 等しくなるように考慮して、 (1)高熱知語・絵提示O回群、 (2)高熟知語・絵提示2回群、 (3)高熟知 語・絵提示8回群、 (4)低熟知語・絵提示0回群、 (5)低熟知語・絵提示2回群、 (6)低熟知語・絵提 示8回群の6群に分けた。材料は、予め幼児を対象にして行った単語と絵の熟知度調査の結果か ら選定された、高熟知語、低熟知語、それぞれ2単語ずつである。学習試行は、 (1)、 (4)群では文 字のみを、 (2)、 (5)群では、最初の2試行のみ文字に絵を継時提示しながら、 (3上(6)群では、すべ ての試行で文字に絵を継時提示しながら、実験者が文字及び単語を読みあげ、被験者に模倣させ た。テスト試行では、 6群とも文字のみを提示して被験者に読ませた。学習1試行、テキスト1 試行が交互に8回行われた。

その結果、絵の対提示回数8回群が0回群、 2回群よりも読字における学習成績が悪く、 0回 群と2回群の問には有意な成績の差はみられなかった。

これらの結果より、予想どおり読字学習における絵の対提示は、必ずしも読字学習を妨害しな いことが示唆された。

上述の結果に関しては、次のような解釈がなされた。

読字学習において絵を対提示した場合、単語と桧の両方に対して音が適合されるため、学習す べき音声自体の記銘は容易であり、また絵によって学習すべき単語の意味が具象化され、文字一 音声の連合の媒介として有効に利用される。しかしながら、ひとたび音声が記銘され、また読字 学習に有効な媒介が形成された後は、絵の対提示は、視覚的に過剰な刺激となり、文字一音声の 連合を抑制するはたらきを示す。最初の2回のみ絵を対提示した群に比べて、すべての試行で絵 を対提示した群(絵の対提示回数8回群)の方が絵の対提示が、過剰な刺激として読字学習に影 響を及ぼし、成績の伸びを低下させた。また、絵の対提示回数2回群と0回群の成績に差がなか ったことから、絵の対提示回数2回群は、上記のような過剰な刺激にならなかったといえる。

本研究では、絵の対提示回数2回群を新たに要因として組み入れたが、従来の研究結果と同様

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に、絵の対提示自体が、読字学習を促進するという結果は得られなかった。しかし、学習材料別 にみた場合、低熟知語については、絵の対提示回数2回群が、他の2回群より成績がよい、とい

う興味ある結果も得られた。

引 用 文 献 福原寿子1982 読字学習に及ぼす絵の効果 奈良教育大学卒業論文.

福沢周亮1970 幼児の言語 東京、日本文化科学社.

福沢周亮1976 漢字の読字学習‑その教育心理学的研究一東京 学燈社.

日向数夫1972 古代文字 東京、グラフィック社.

今井靖親1979 幼児の読字学習における指導法の検討一片仮名と漢字の学習難易度と絵の呈示効果一読 書科学、 23、 97‑104.

今井靖親1983 仮名の読字学習に及ぼす絵画化と言語化の効果 教育心理学研究 31、 203‑210.

今井靖親・今井道子1983 幼児における片仮名の読みと学習難易度要因の検討 奈良文化女子短期大学紀要

14、 126‑134.

国立国語研究所1972 幼児の読み書き能力 東京、東京書籍.

松本隆行1984 幼児の読字学習に及ぼす絵の効果 奈良教育大学卒業論文.

松崎学・磯崎三善年・上野徳夫・古城和敬1979 幼児の読字学習における絵対提示の効果 日本教育心理学 会発表論文集、 774‑775.

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辻本后泰子1983 幼児の読字学習に及ぼす絵と単語の熟知度の効果 奈良教育大学卒業論文.

Willows, D. M. 1978 Individual differences in distraction by pictures in a reading situation. Journal of Educational Psychology 70, 837‑847.

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The Effects of Frequency of Picture Presentation on Learning to Read in Young Children

Yasuchika Imai and Kaori TANAKA

{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 30, 1986)

The purpose of this investigation was to examine the effects of frequency of picture presentation on young children s learning to read.

The subjects were 132 children whose average age was 5: 7. 0n the basis of the age, the male‑to‑female ratio, and the number of hiragana and katakana letters they could read, they were assigned to one of the following six groups: high familiarity words ‑ no picture presentation, high familiarity words ‑ picture presentation twice, high familiarity words picture presentation eight times, low familiarity words ‑ no picture presentation, low fam‑

1liarity words ‑ picture presentation twice, and low familiarity words ‑ picture presentation eight times.

Each subject was taught to read two arti丘cial words (four arti丘cial scripts) for eight trials by a study‑test method.

For the scripts in the words the performance in the no picture groups and picture presentation twice groups was better than that in the picture presentation eight times groups. For the scripts in the words there was no significant di庁erence between the no picture presentation groups and picture presentation twice groups, but for the scripts in the words with low familiarity the performance in the picture presentation twice groups

was better than that in other groups.

The finding suggests that pictures have a facilitating effects on learning to read words

with low familiarity.

参照

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