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フランス語の部分冠詞について
著者 内田 茂
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 30
号 1
ページ 155‑160
発行年 1981‑11‑25
その他のタイトル Sur l'article partitif du francais
URL http://hdl.handle.net/10105/2401
arauniv.Educ,V。l.急猪。.1(cul書霊s。c.)濫
フランス語の部分冠詞について
内 田 茂 (奈良教育大学フランス語教室)
(昭和56年4月30日受理)
1冠詞の分類
フランス語の冠詞は、定冠詞、不定冠詞、部分冠詞の三種に分けるのが慣例である。この内、
定冠詞(le, la, les)はラテン語の指示詞Meに、不定冠詞(un, une)はラテン語の数詞unas に由来するが(ただし、現在不定冠詞の複数形とされる desは、後述する通り de と定冠詞 複数形のIes との結合から生じたもので、本来の複数形 uns, unesは15世紀末までに消滅し たCD)、部分冠詞(du, de la, des)は部分を表わす小辞de (de partitif)と定冠詞との結合によ って作られたものである。このように、部分冠詞は成立の事情からも、また機能の面からも特殊 なものと見られ、説の分れるところであって、部分冠詞を独立した冠詞の一種と見なさない文法 家もある。
たとえばGrammaire de I Acadとmiefrangaiseでは、 「二種の冠詞がある.部分を示す意味 (sens partitif)でも用い得る定冠詞と不定冠詞とである。」として部分冠詞を定冠詞に従属させ
「前置詞deに先立たれると定冠詞は物体の一部分を示すことができ、その場合はpartitifと 呼ばれる。」と説明されている(2)。また、 GREVISSE も冠詞の種類として定冠詞と不定冠詞の二 つを挙げるが、いわゆる部分冠詞は「形態上は定冠詞に、意味上は不定冠詞につながり得る」と
して、部分冠詞を不定冠詞の‑変種(variete)と見なしている(3)。部分冠詞は一般に「数えら れないものの若干量を表わす」と説明され、限定されないものや不特定のものを示す名詞の前に 用いられて、不定冠詞の価値をもつのであるから、 GREVISSEのこの説明はきわめて適切であ
ると言えよう。一方、 WAGNER‑PINCHONは冠詞として三種の形態を挙げながらも、定冠詞
・不定冠詞と並べて「冠詞du, dela」とし、 「部分冠詞」の名を用いていない。これは、いわゆ る部分冠詞としての du, de laを「部分を示すde+定冠詞」と見なして、 partitifという語を 独立した冠詞の一形態の名称にすることを避けているためと解される(4)。
さらに、辞典についてみても、部分冠詞duを独立の見出し語とせずに前置詞deの用法の 一部として説くものが多い。言いかえれば、部分冠詞は定冠詞や不定冠詞に比較すると、原語辞 典でも仏和辞典でもどく簡単にしか扱われていないということになる。形態上は定冠詞に従属さ
せるとしても、そこで重要な意味をもつdeについての説明がはなはだ不十分であるように思 われる。
2 小辞deの糠能
部分冠詞を構成するdeは一般に「部分を示すde」 (de partitif)と呼ばれ、前置詞deの‑
用法として説明されることが多い。しかし場代フランス語において、
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II mange du fromage, (彼はチーズを食べている。)
のduはやはり冠詞であって、筆者の想像ではフランス人の言語意識でもそこに前置詞の存在は 認め難いのではないかと思われる。しかしこの「部分を示すde」が定冠詞以外の限定辞たとえ ば所有形容詞や指示形容詞の前につくことがあって、
IIa mange de notre pain et bu de ce vin.(5) (彼は我々のパンを〔少し〕食べて、そ のワイン〔の一部分〕を飲んだ。)
のようになる。さらにまたこれが不定冠詞単数形の前lとっいて、
Jaibu June liqueur que je ne connaissais pas.(6) (私の知らないリキュールを〔少し〕
飲んだ。)
のように使われることがある。この不定冠詞は、名詞が形容詞節によって限定されているために 現われたのであって、話し手にとって特定のものである(しかし聞き手には未知のものである)
ことを示す不定冠詞である。このような不定冠詞を松原秀治氏は「差別不定冠詞」と呼び、任意 のものに無差別に用いられる「無差別不定冠詞」と区別している(7)。すなわち、上例のリキュー ルはある一種の特定のリキュールであって、種類を問わない任意のリキュールでないことは明き らかであろう。目の前に出されたそのリキュールの全量を飲んだのではないことをdeが示して いるO このようなdeの機能を、 「物質の一部分を示す」と説いて、
du fromage‑une partie du fromage
と解釈することは容易であろうが、実際の発話でune partieが省略されたとみるのではなく、
部分を示す機能がdeに内在していると解する方が妥当であろう。
ここで問題になるのは、部分冠詞を構成する deと、前記のdenotre painなどにおけるde とが同じかどうかということであるが、これについてGREVISSEは、
Buvez de notre vin. (うちのワインを飲みなさい。)
Donnez‑moi de la liqueur de votre cave et non de celle du voisin. (お宅の倉のリキ ュ‑ルを少し下さい、お隣のではありませんよ。)
の例を挙げて、これらの場合には「de は前置詞の価値を完全に保持して、関係概念を示してい る」と述べ、
Buvez du vin, de la bifire. (ワイン、ビールを飲みなさい。)
の例では、 「deはもう何の関係概念も示してはいない。」と述べている(8)。すなわちGREVISSE はdeに続く限定辞に区別の根拠をおいているようで、 「名詞が何か特別の意味で捉えられ、冠 詞が特殊な限定を示す時」にはdeが前置詞の価値を保持し、 「名詞が一般的意味で捉えられる 時、 deは部分冠詞を構成する。」(9)と説く。
たしかに、 de laliqueur de votre caveのIa とde la bi6reの1a とは同じではない。前者 は名詞が「特定」のものであることを示し、後者はいわゆる「総称」の定冠詞である。しかし、
定冠詞のもつ別々の機能に基いてdeを区別することができるかどうか、筆者にはなお疑問が残 るのであるが、いずれにしても「部分を示すde+定冠詞」は、定冠詞の機能にかかわりなく部 分冠詞と見なさざるを得ないのではないかと思われる。そして「部分を示すde」に続く限定辞 が定冠詞以外の場合でも、 deそのものの機能には違いがないと筆者は考えたい。
Tresor de la languefranqaiseでは部分冠詞が独立した見出し語として立てられていて、そ こに次のようなBALZACの例が見られるC10)。
Vous feriez mieux de nous dormer de votre vin de Bordeaux. (お宅のボルドーワイン
を少し私たちに下さった方がいいですよ。)
また、 Grand Larousse de la langue frangaise においても、 「定冠詞以外の限定辞の前では de だけが現われて部分を示す価値をもつ」と説明され、次の例が見られる(ll)。
Jai bu de ce vin. (私はそのワインを飲んだ。)
したがって、どちらの辞典も、 deの機能に差異を認めていないと言うことができると思われる。
もっとも、小辞deに続く限定辞が指示形容詞や所有形容詞であると限定の力が強く、したが って名詞との結びつきもいっそう強いと見ることができよう。部分を示すdeはこの時「限定辞 +名詞」の全体にかかるが、限定辞が定冠詞であると、 「de +定冠詞」という結合が出来上って、
形態上だけでなく機能上もdeは定冠詞と半ば融合し、両者が一体化して名詞にかかると考える こともできるであろう。
3 複数形desの同席
初級フランス語の教科書では部分冠詞としてdu, de laのみを挙げていて、複数形desを挙 げるものは現在ではおそらく皆無であろう。 「数えられないものの若干量を示す」と部分冠詞を 説明する以上、複数形を持ち出すことはできないわけで、教科書としては止むを得ないが、フラ ンス人の手になる辞典や文典の多くが、部分冠詞複数形としてdes を挙げていることについて 考えてみたい。
ただ、部分冠詞複数形は、
des epinards (ほうれん草料理)、 des confitures (ジャム)、 des rillettes (豚の挽肉料理) などのように、集合的意味をもつ複数名詞とか、複数形で用いられる物質名詞の前に限られるよ
うである。しかし desは不定冠詞複数形と同形であり、用法上も区別の困難な場合が多いであ ろう。 RATは部分冠詞の説明で、 「単数名詞につくとくく限定されない量)) (quantite ind芭ter‑
min芭e)を、複数名詞につくとくく限定されない数サ(nombre indetermine)を示す」と説明して、
Donnez‑moi des oeufs. (卵を〔いくつか〕下さい。yi2)
の例を出しているが、このdesは不定冠詞複数形と解するのが普通ではなかろうか。
ところで、不定冠詞複数形と部分冠詞複数形とは全く同一の語形であるから、不定冠詞複数形 にも、 「de +定冠詞」という成立の事情から、部分の意味を認めることができる。この点に関し てDUBOIS‑LAGANEは、 「不定冠詞複数形des と部分冠詞du は共通の価値をもつ。どちら も総体あるいは全体の一部分という概念を表わすO その用法上の違いは、不定冠詞は原則として 可算名詞(noms comptables)に、部分冠詞は非可算名詞(noms non‑comptables)にかかると いうことによる。」と述べている(13)。
複数形desが不定冠詞か部分冠詞かということは結局フランス人の言語感覚が決定すること かもしれないと思われるが、それは名詞の「数」の観念をどう捉えるかにかかわるからであり、小 辞deの機能とは別の問題であろう。むしろここで筆者は、いわゆる不定冠詞複数形も実は部分 冠詞に他ならないと考えることが必要であると思う。総称の定冠詞lesの前に部分を示すde.が ついたのであるから、たとえばdes livres と言う時、 Iivre (本)という名詞で表わされる全て の個体(それはIeslivresである)の内の不特定な数個(すなわち一部分)を表わすことになる。
上に引いたDUBOIS‑LAGANEの説明もその意味に他ならない。
しかしここで一つ注意すべきは、 desを構成するIesの機能である.前に考察したdu, de la
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の定冠詞と同様に、 desが「特定」のものであることを示す場合がある。たとえば、
J allais ailleurs, vers des pays que je ne connaissais pas,‑J. GREEN, Partir avant lejour. (私は他の所‑、自分の知らない国の方‑行こうとしていたO)
のdesはどうであろうか。形態上は不定冠詞複数形と見なさざるを得ないとしても、
II y a des livres sur la table. (机の上に〔何冊か〕本がある。)
のdesと同じであるとは言えない。初めのdesはque以下の節で限定されたpays の内のあ るいくつかを示すはずだからである。この問題は部分冠詞単数形の場合と同じく、結局は定冠詞 の機能に帰着する。定冠詞に「特定」と「総称」の二機能がある以上、 「de +定冠詞」である du,dela,des にもそれがあることは当然であろう。 「部分」という意味は、定冠詞が「特定」
の意味の時によりはっきりと把握されると思われる。
4 龍びとして
WARTBURG‑ZUMTHORが書いているように、部分冠詞の「部分を示す価値はかなり唆味 である。」(14)部分冠詞(いわゆる不定冠詞の複数形も含めて)の機能は、小辞deと定冠詞との 両方にかかわる問題であり、本稿で試みた若干の考察からも、それははなはだ複雑であると言え る.ヨーロッパの諸言語ではごく普通の存在である冠詞を全く有しない日本語で育った我々日本 人にとって、冠詞はきわめて厄介な代物であるが、特に部分冠詞はフランス語独自の冠詞形態で あり、理解が困難であるが、上述のようにdeと定冠詞の両面から検討し、定冠詞の機能を分析
して行くことによって、部分冠詞の特質を解明することができると思われる。
注
(1)松原秀治「フランス語の冠詞」 p. 196.
(2) Grammaire de VAccdkmie frangaise, p. 35.
(3) he Bon Usage, §307
(4) Grammaire du frangais dassique et moderne, pp. 97‑98.
(5) Precis du syntaxe du frangais contemporain, p. 290.
(6) Ibid., p. 290.
(7)払原秀治「フランス語の冠詞」 p.92.
(8) Le Bon Usage, ら 326.
(9) Ibid., § 326.
(l(j) Tresor de la langue frangaise, s. v. DE2.
(ll) Grand Larousse de la langue frangaise, s. v. DE (VU).
09 Grammaire frangaise pour tous, p. 99.
0功 La nouvelle grammaire du frangais, p. 62.
(1⑬ Prkcis du syntaxe frangais contemporain, p. 289.
参考書目
DUBOIS, J., et LAGANE, R., La nouveUe grammaire du frangais, Paris, Larousse, 1973.
Grammaire de VAccadkmie frangaise, Paris, Firmin‑Didot, 1932.
Grand Larousse de la langue frangaise, 6 vol., Paris, Larousse, 1971‑1978 Grammaire Larousse du franqais confemporain, paris, Larousse, 1964.
GREVISSE, M., he Bon Usage, 10e占d., Gembloux, Duculot, 1975.
RAT, M., Grammaire frangaise pour tous, Paris, Gamier, 1965.
ROBERT, P., Dictionnaire alphab占tique et analogique de la langue frangaise, 6 vol., Paris, S∝idt占du
Nouveau Littre, 1976.
Trksor de la langue frangaise, Centre National de la Recherche Scientifique, 1971‑.
WAGNER, R. L., et PINCHON, J., Grammaire du frangais classique et moderne, Paris, Hachette, 1962.
WARTBURG, W. von, et ZUMTHOR, P., Pr占cis de syntaxe du frangais contemporain, 2eるd., Berne, Francke, 1958.
iGfl
Sur Particle partitif du francais
Shigeru Uchida
Section de la langue franqaise, University PSdagogique de Nara, Japan (Re?u le 30 avri1 1981)
On distingue tranditionnellement l'article defini, l'article inde丘ni et l'article partitif.
Larticle partitif doit etre envisage sous deux aspects differents, puisqu'il est forme par le de pertitif et l'article defini. II semble que la complexite de cet article consite dans cette formation double. II en est de m芭me de l'article indefini pluriel des. Je pense done qu'il faut remarquer la fonction de de dans l'article des et que l'article inde丘ni pluriel doit etre considere comme l'article partitif.