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直接染料堅牢性に関する研究〔第五報〕染料の吸収 される限度についての一考察 2
著者 稲垣 和子
雑誌名 奈良学芸大学紀要
巻 5
号 2
ページ 171‑176
発行年 1955‑12‑25
その他のタイトル Studies on the Substantiality of the Direct Dye‑stuffs. (No.5) A Consideration on the Limit of Dyes Absorption. 2
URL http://hdl.handle.net/10105/4995
U71J
直接染料堅牢性に関する研究〔第五報〕
染料の吸収される限度についての一考察 2
稲 垣 和 子 (家政学教室) (昭和30年10月1日受理)
Kazuko INAGAKI: Studies on the Substantiality of the Direct Dye‑stuffs. (No.5) A Consideration on the Limit of Dyes Absorption. 2
I 緒 言
直接染料の堅牢性に関し,染料の吸収限度を知る必要がおこり,先に〔第四報〕染料使用量と 染液量の点より考察したが,今回は浸透剤使用及び助剤使用量及び染着時間とその経過に関して の染料吸収率の変化を考察してみた。以下その結果を報告する。
I 試料の作製
(1)染料Diamme sky Iヲ・lue FF (c) Components ‑
Dianisidme
Ammo naphthol
Zl disulphoiiic acid 2S (alk)
\ Amino naphthol
disulphor】ic acid 2S (alk)
C34H34N60]6S4Na4
使用染料は塩析法により十分精製したものである OH基2個, NH2基2個, S03Na基4個 からなりMW‑892.52,染料中の灰分51.f である。
(2)供試布
綿布 手織金巾 密度 28×32 (1cm平方について) 目方 0.0093gr ( Icm平方について) 厚さ 0.185mm
綾織綿布 密度 20×26 (1cm平方について) 目方 0.0352gr (1cm平方について) 厚さ 0.686mm
供試布は染色実験前に精練漂白処理をなす。 (第≡報,供試布,精練漂白の項参照) 本文実験結果記載には,手織金巾をA布,綾織綿布をB布とする。
β)供試助剤
Na3S04, Na3C08, Inad使用。 (何れも化学用純品使用) 紘)供試浸透剤
ロー下池,モノゲン,ネオゲソ,ノイブソY,セソデ‑ル使用。
(172) fill h i. Rl 千
∬ 実験び結果考察 (1)浸透剤使用と染料吸収率の関係
染料使用量 3% (何れの場合も生地に対して3%使用一定する)O 染色温度 98 C‑100‑C。
染色時間 60分。
助剤使用量 NaSO4 (15%), Na3CO3 (2: 。 染 液 量 1 :20
染 色 布 A布 一枚の大きさ 8cm平方。目方0.6gr。
B布 一枚の大きさ 8cm平方。目方2.3gr。
染 色 液 蒸溜水使用 染色容器 恒温槽使用
染色方法 直接染料基準染色方法に依るO 浸 透 剤 ロ‑ 下 池(1
モノ ゲン(1 ネオ ゲソ(1 ノイゲンY (1 セソプール(1
1、U‑.i一l.純頓こ,
上記の浸透剤をそれぞれ染色液中に入れて染色する。尚,この他全然浸透剤を使用しないで前 記同様染色した場合の吸収率,及び30‑C‑50‑Cの温湯に12時間浸潰して同様染色した場合の吸 収率も測定する。
・染料吸収率測定(節‑衣,第一図,第二表,第二図) 染色残液濃度をデュボスク比色計で測定する。
数値は10回測定の平均値である。
節一 問
0 5 0
3 2 ウ ー
染 料 吸 収
率へ糸の=方に対する〆)
一
・
j
‑
.
c
m
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モ ノ ゲ ン ロ ー ト 油
温 渉 産 班
B 布 A 布
ノ セ イ ン ナ ‑r'
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ン Y ル
直接染料堅牢性に関する研究第五報
参考の為,温湯に浸漬した場合の時間と染料吸収率の関係を示すと次の如く結果が出た。この 場合の供試布はA布のみを用いた。
表二罪
・0分ii 2叫 30分i 4吟 505> 60分 払x% te.8/0 45.r巨6.6% ・汀.人̀′ ・!蝣>.:サ・
繊維には細かい空隙があって,その中の空気が水と置き換えられるまでは随分な時間がかかるo 乾いた布をすぐ染液につけても,布の表面が染着されるだけで中の方まで染料は入っていかない。
十分染料を吸収させるためには,染める前に長時間温湯に浸潰するか,浸透剤を用いる事が必要 となる。第一表,第一図は浸透剤を用いた場合の吸収率との関係,第二表,第二図は温湯に浸漬 した場合の時間と吸収率の関係を示したもので,第一図に依ると, A布(薄地) , B布(厚地) を比較すると,染料の吸収に大分差のある事がわかる。又,使用した五種類の浸透剤は,何れも 大差がない様であるが,浸透性大なるものから順位をあげると,ロ‑ト池,モノゲン,ネオゲ
ソ,ノイゲンY,センデールの順になっている。尚,モノゲンが染料分散剤として作用する事に ついては, Ⅳ結論中に記述したO又,第二図に依ると,温湯中に浸活する時間の長い程,吸収率
大なる結果が出た。(2) Nad 使用量と染料吸収率の関係 染料使用量 濃色 5%,
淡色 1%, 染色温度 98‑C‑IOOoC, 助剤使用量 Na2SO4 1596,
Na2CO3 1%, Nac1
15^, 2096, 25%, 30%,
の六種類。
染 液 量 1 :20
染 色 布 一枚の大きさ 8cm平方。
A布 目方 0.6gr。
B布 目方 2.3ォr。
染 色 液 蒸潜水使用 染色容器 恒温槽使用
染色方法 直接染科基準染色方法に依る。
・染料吸収率測定(第三表,第三図)
染色残液濃度をデュボスク比色計で測定する。
数値は10回測定の平均値である。
(174)
ll‑.‑.∴
稲 垣 和 子
Nacl使用量 o*
染料吸収率
10*1 15%│ 20%
旗色 a.5* 37.3'l 48.4%
25%; 30y 53.8*1 56.2*1 58.6*
淡色1 30.8* 50.77 61.8%│ 72.1*「79.1*│ 82.8yI 82.8%
第三図の結果 Naclを助剤として使用する場合, 15‑ が適当である事を示している。濃 色と淡色を比較した場合は,一般に淡色は吸収率が良いので,適宜に助剤を減らす事も差支えな いと考えられる。この場合,助剤は吸収を良くするためのものであるから,必要量を全部入れな
くても,好みの色に染ったら中止してよい。染色堅牢度‑の影響は大差がない。
(3)染着時間と経過に対する染料吸収率の関係
染料使用量 3% (何れの場合も生地に対して3%使用一定する)。
染色温度及び染色時間 I 50‑Cより染色開始して沸騰後60分
n 80‑Cより染色開始して沸騰後60分 の二種類。
助剤使用量 Na2SO4 1596, Na,.C03 2;
染 液 量 1 :20。
染 色 布 一枚の大きさ 8cm平方 目方 0.6gr。
染 色 液 蒸潜水使用 染色容器 恒温槽使用
染色方法 直接染料基準染色方法に依る。
・染料吸収率測定(第四表,鱒四囲)
染色揮液濃度をデ3・ボスク比色計で測定する。
数値は10回測定の平均値である。
第四図の結果工, Ⅲ何れも沸騰後60分の染料 吸収率を比較すると,染料は高温では染着が早 いが,いきなり高温の染液に繊維を入れて染め ると,或る程度まで急激に染っても,すぐに吸 着率が下ってきて,吸収しなくなり,結局の吸 収量は,低温から徐々に温度を上げて染める場 合より少くなる事がわかる。又,先に染液に浸 った部分に急に染りつくので,むら染の原因と もなる。故に,低温から徐々に染めるか,又は
Ⅲの様に染液が50′,Cになった時に繊維を入れ て,温度を上げ,沸騰後60分染めた場合,これ で吸収は殆ど限度に達しているO
(4)染着時間と水洗に対する染色堅年度
染料使用量3% (何れの場合も生地に対して3%使用一定する)Q
蝣・fc 押Ii.'il.間
直接染料堅牢性に関する研究第五耗
(175)
染色温度 98cC‑100つC染色時間 30分,60分,90分, 120分, 150分,180分,210分,240分,270分 300分,の十種類。
助剤使用量 Na2SO4 15S, Na3CO3 2 染 液 量 1 :20。
染 色 布 一枚の大きさ 8cm平方 目方0.6gr。
染 色 液 蒸溜水使用。
染色容器 恒温槽使用。
染色方法 直接染料基準染色方法に依る。
・染色堅牢度測定(第五衰 第五図)
日本工業規格染色堅牢度試験方法JIS K4002に従って測定した。次に測定の方法を日本工業 規格から抜粋し記す。
○水に対する堅牢度試験
①試料の作製 可検染布の大きさほ長さ10cm,巾5cm,添付布は白色木綿(サヲV金巾第5 号5cm平方)でこれを隣接配列し,可検染布と重ねて縫合せる。
⑧試験方法 試料の重量(添付布をも含む)に対し50倍量の蒸潜水をとり,これに試料を室 温で30分と15時間にそれぞれ浸漬し,取出して乾燥する。
⑨判 定
尚試料の重量の50倍量の蒸溜水中に流出された染料分量を測定する。
第五表
分
染 色 時 間(沸騰時間)
V・ l
・;'「 二'!・i
15時間
浸 褒
B 莞岩諸芸
数値は10回測定の平均値である。
ir..7 1言,
[
(176)
桔 Jli 不日 十第五図の結果により,染着時間と水洗に対す る染色堅牢度は,植物性繊維の場合は,吸収が 限度に達してからも,なお長時間沸騰をつゞけ ていると,水洗に対する堅牢度の増してくる事 がわかる。
90 120 ISO 180 210 240 270300
沖 陣 時 間
分
Ⅳ 結 論
以上,染料の吸収される限度について,二三実験したところ次の如き結果を得た。
(1)染料を十分吸収させる為には,浸透剤を染液中に入れる事がのぞましいO温湯に浸漬しても 若干の効果はあるが,前者に比して幾分少ないo特に厚地綿布の染色には浸透剤を必要とす る。温湯中に浸漬する場合は時間の長い程吸収率も大である。モノゲンの染料分散性について は,厚地織物染色の場合に重要な役割をなすが,モノゲンの量により染料は凝集の方向をとる 場合もあるので注意しなくてはならない。その辺の事情はSmith氏1)3)が報告しており,ラクリ ルサルフェートの0.]添加では染料は分散され 0.25 添加では逆に.凝集の傾向にあるo
叉食塩の濃度小の時には,染料の吸収量に相当な変化がある。活性剤無添加では食塩0.03N で吸吸最大であるが,活性剤の存在では0.02Nの時に最大を示す.活性剤の添加はこの濃度で は染料を分散させるよりもむしろ凝集を起しており,それにも拘らず実際に得られた染色物は 非常に均一である。これは申すまでもなく浸透剤によるものである。
(2) Naclを助剤として使用する場合,淡色では15%内外,濃色では25%内外の濃度が吸収率か らいって最適である。
(3)染着時間と経過に対する吸収率は,染着物を染液の50へC以下の頃から入れて染めはじめ,沸 騰後も60分は必らず染めると,吸収は殆んど限度に達する事が出来る。
(4)染着時間と水洗に対する染色堅牢度は,吸収が限度に達してもなお長時間沸騰をつゞけた場 合,水洗に対する堅牢度が増加してくる。
この他,染料構造の類似している他の色彩の染料に於て,同様の実験を行ってみると,染料の 吸収される限度についても色彩上興味ある結果が出ているが,次回の機会にゆずる事にする0
本実験を行うに当り,御指導並びに御便宜をいただいた奈良女子大学家政学部,披多腰ヤス博 士,美和正忠教授に心から感謝の意を衷するものである。
参 考 文 献