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(水溶液プロセスによる金属酸化物薄膜の低温合成に関する研究)

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Academic year: 2021

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A Study on Low−Temperature Synthesis of Metal Oxide Films via Aqueous Solution Route

(水溶液プロセスによる金属酸化物薄膜の低温合成に関する研究)

山 火   智

論 文 の 内 容 の 要 旨

金属酸化物は工業的に有用な材料であり、その薄膜は様々な分野で応用されている。現在の先端 技術には、高品質・高機能の金属酸化物薄膜が必要不可欠であり、そのような高度の要求を満たす

ために、薄膜材料と共に薄膜作製技術も発展してきた。しかしながら、現在の薄膜作製技術は大量 のエネルギーの消費と放出を伴う環境負荷の大きいプロセスである。一方、最近、溶液を利用した ソフト溶液プロセスが環境に優しい材料合成法として提案されている。特に、水溶液プロセスは、常 圧・常温付近の温和な条件下における材料合成が可能な低エネルギー・低環境負荷プロセスである。

このような水溶液プロセスによる金属酸化物薄膜の合成に関する報告は数多いが、得られた薄膜の ほとんどが準安定相またはアモルファス相であった。したがって、それらは低温合成法として報告

されているにも関わらず、目的の結晶性金属酸化物を得るためには熱処理が欠かせなかった。また、

結晶性の金属酸化物を直接得ることができた場合でも、その生成条件や生成メカニズムは十分には 理解されていなかった。本研究では、常圧・常温付近の温和な条件の水溶液を利用し、二酸化チタ

ン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)の結晶性金属酸化物薄膜の基板上への直接析出を試み、その生成条件およ び生成機構を熱力学的に解明することを目的とした。

第1章では、本研究の背景について述べ、水溶液プロセスによる金属酸化物薄膜の合成に関する 過去の研究例について概説した。

第2章では、気相および液相中の薄膜形成過程における核生成・成長に関する基礎的理論につい て述べ、さらに、加水分解、縮合、錯形成などの水溶液中におけるカチオンおよびアニオン種の挙 動を電気陰性度均等化の原理に基づいて説明している。

第3章では、水溶液プロセスによる結晶性TiO2薄膜の基板上への直接析出とその結晶形の制御に ついて述べた。より低pHの水溶液中においてはルチル相が、より高pHの水溶液中においてはアナ ターゼ相が形成された。ルチル相およびアナターゼ相はTi(IV)の水溶液のpHとTi濃度に支配され る固相と溶解種の間の熱力学的平衡条件にしたがって形成されることが明らかになった。また、水 溶液中の共存種や基板の特性はTiO2の析出過程や結晶の巨視的および微視的形態に影響を及ぼすこ

とが見出された。

第3章で確立された結晶性TiO2薄膜作製技術を利用して、テンプレーティングによりフォトニッ

(2)

ク結晶のようなTiO2の周期構造体を作製し、水溶液プロセスの応用の一例として第4章で示した。

第5章では、水溶液プロセスによりウルツ鉱型ZnO薄膜を合成し、その成長に必要とされる条件 について詳細に述べた。Zn(Ⅱ)の水溶液中で生成する結晶相は主に水溶液のpHにより決定され、ウ ルツ鉱型ZnOはpH>9.Oの水溶液中において形成されることを明らかにした。また、薄膜の形成に 必要不可欠な不均一核生成は、水溶液のpHと錯化剤の濃度を調整することにより得られる低過飽和 状態により引き起こされ、さらに、ZnOの結晶核との親和性が高いundercoatの導入により促進され

ることを見出した。

第6章では、各章で得られた内容を基に、水溶液プロセスによる結晶性金属酸化物薄膜の直接成 長の本質について総括した。本研究により、常圧・常温付近の温和な条件の水溶液中における結晶 性金属酸化物薄膜の直接析出には、結晶相を生成する環境、準安定相の生成を抑制し不均一核生成

を引き起こすための低過飽和度、そして不均一核生成を促進する表面が必要であることが明らかに なった。

以上

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