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外部化された屋内空間に関する研究

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芝浦工業大学大学院理工学研究科建設工学専攻 2012年度修士論文 中間梗概

外部化された屋内空間に関する研究

建設工学専攻 me11023 大塚 弘樹 建築設計研究 指導教員 赤堀忍教授

1. 本研究に関して

1.1 研究背景

日本は戦後から1960年代の高度経済成長期にかけ急速に都市 開発がすすみ標準的で均質な都市パターンが出来上がってしま った。このころの都市開発は経済や産業上の理論にのみ基づく ものであり、場所性や歴史性に関する関心は皆無であった。

その後、経済が高度経済成長期を脱し安定成長、さらに1990 年代のバブル崩壊後の低成長下となった現在では、物理的な豊 かさが確保され事で、社会的要求が変化した。そこで、都市の アイデンティティが重要視されるようになっている。ヴァルタ ー・ベンヤミンの言葉を借りれば、その都市のアイデンティテ ィはオープンスペースによって創出される。

一般的に「都市のオープンスペース」として扱われるのは純 粋な屋外空間が主である。しかし、それはかならずしも屋外空 間ではなくパサージュやアトリウムという形で建物内部にまで 及んでいる。特に最近では、「渋谷ヒカリエ」の貫通通路や

「丸の内ビルディング」のアトリウムのようなきわめて外部空 間に近い質の内部空間を持つ建物が増加している。

1.2 研究目的

本研究は都市開発によって生まれた都市建築を対象とし、現 代の都市において増加してきた逆空間という都市のオープンス ペースについて、いかに計画され、いかに都市との関係性持っ ているかを事例の分析を通して明らかにすることで、都市のア イデンティティの創出方法について言及することを目的とする。

2. 基本概念

2.1 逆空間について

「逆空間」とは、芝浦工業大学赤堀研究室において、2000年 ごろから研究の中で使われている言葉であるが明確な定義はさ れていない。過去の研究では共通して純粋な屋外空間を逆空間 として捉え研究の対象とされてきたが、各研究ごとに微妙に異 なる解釈をされてきた。そこで本研究における逆空間の定義を ここで明確にする。

「空間」とは極めて一般的に言えば、建築空間とは床・壁・

天井といった具体的な要素により境界境界を引くことで「内 部」を規定する。それが空間化である。これに対し、建築によ

って屋内化された領域を外部空間のように扱うことを「逆空間 化」であると定義する。つまり「外部化された内部空間」が逆 空間である。都市のオープンスペースを「外部化された内部空 間」と再定義することは都市のオープンスペースの解釈を広げ る可能性を秘めている。

2.2 都市建築

「都市建築」とは既に定義されているようで規定概念の定ま っていないものであるが、「都市に存在する建築」と同義では ない。建築行為が単体、集合体に関わらず都市との関係におい て自らの形態を持つ建築である。

本論における「都市建築」とは、私的領域と公的領域が相互 に規定し合いかたちづくられた建築のことである。

3. 逆空間の把握 3.1 ポシェについて

本研究ではポシェによる逆空間の把握を試みる。ポシェとは、

建築空間の読み取りを早くするために、建築物の外郭あるいは分 厚い壁を黒く塗りつぶしたり、斜線を入れる一種の輪郭描法を指 す言葉として使われる。つまり、建物の空間と認識できる部分以 外の部分(残余部分)を黒く塗りつぶす技法である。ポシェを用い ることで建築の三次元的なボリュームのデザインを二次元の抽象 を通して読みとること、表現することができる。この技法は、17 世紀に端を発するエコール・デ・ボザールにおいて使われていた ものであり、ボザール教育の真髄であったローマ大賞においても、

「ポシェによって基本概念が伝わり、イメージされる空間が真に 質の高いものであるか」が評価基準になっていた。しかしこの言 葉は、エコール・デ・ボザールの解体とともに死語と化していっ た。

3.2 ポシェの再評価

この言葉は建築家ロバート・ヴィンチューリが「建築の多様 性と対立性」の中で取り上げたことで再生した。彼はこの著書 の中で建築と都市の空間事象を読み取る有効な手段の一つとし て「ポシェ」を取り上げている。彼は残余部分は都市のスケー ルにおいてもありうるものだとし、ポシェについて言及するこ とでその意味を拡大させた。

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芝浦工業大学大学院理工学研究科建設工学専攻 2012年度修士論文 中間梗概

また、建築史家のコーリン・ロウは「コラージュ・シティ」

の中で都市は「構築されたソリッド」と「構築されたヴォイ ド」によって組織化されるという観点をヴィンチューリのポシ ェの再評価から導いている。

18世紀の測量士ジョバンニ・ノリによる白と黒だけで描かれ たローマの地図は都市のパブリックな場は街路や広場だけでは なく、見方によっては建物内部がパブリックな場であることを この地図は教えてくれる。

この地図では、都市というスケールにおいて私的領域である 建物そのものが一種のポシェとなって公的領域の読み取りを助 けている。このように都市における私的領域をポシェとしてと らえる概念が「アーバン・ポシェ」である。

このアーバン・ポシェという概念を現代の都市に用いること で逆空間を捉えることができる。

3.3 アーバンポシェと日本の都市について

日本の都市と西洋の都市は全く異なる考え方のもとに出来上 がっている。その違いは建物の構造の違いによるものである。

西洋の建物は組積造であり、敷地境界上に壁が建つ。そのため 建物は敷地に隙間を残さず隣接している。建物のエッジがオー プンスペースの領域を規定しているのである。これに対し、日 本の建築は木造であり、建物は敷地境界からわずかにセットバ ックして建てられている。建物のエッジが必ずしもオープンス ペースの領域を規定しているわけでなく、多くの隙間を日本の 都市は持っている。西洋の都市においては、「地」と「図」に よる塗り分けにより、オープンスペースを明確にすることが可 能であるが、隙間の多い日本の都市ではオープンスペースを浮 き彫りにすることはできない。

しかし、最近の再開発では街区そのものが敷地となっている 街区型再開発が多くなっている。このため建物が隣接すること で生まれるオープンスペースの領域をあいまいにする隙間を持 たない。さらに、敷地境界からセットバックして生まれる外部 空間は公開空地、つまり公共領域として扱われることが多い。

そのため、本来は日本の都市を把握するのに適さないアーバ ン・ポシェであるが、先述したような街区型再開発における建 築においては有用なものであるといえる。

4. 事例分析

丸の内・日本橋・汐留・品川における都市建築を対象として 事例を分析する。

各地域の特徴的な逆空間をもつ事例を分析することで、その 可能性を探る。また、地域ごとの比較を容易にするために対象

事例の機能は、オフィス・商業施設からなる都市建築に限定す る。

まず、選定した地域ごとに開発についてまとめていく。その 後、選定した事例についてアーバンポシェによる塗り分けを行 うことで、逆空間の読み取りを明確にする。 その際、私的 領域を黒く塗りつぶしていく。私的領域とはその建築において、

第3者が侵入できないエリアを指す。逆に、「白」として残る公 的領域は第3者が侵入可能なエリアを示している。この塗り分け と地域ごとの開発に関する資料から各事例ごとに考察を行って いく。

5. 展望

5.1 ポシェについて

3章でポシェについて論述するが、アーバンポシェについて

より具体的に記述していく。例えば、ル・コルビジェの図面にも ポシェを見ることはできる。古典主義批判から生まれたモダニズ ムの先駆者である彼が、古典主義建築を理想としたボザールの表 現手法を用いたことは、ポシェがいかに、空間表現、空間把握の ための技法として優れていたかを示している。近年では、團紀彦 は自身が提唱するユニヴァーサルフォム論において、地形と建築、

あるいは建築と建築相互をつなぎとめるミディアム(媒介物)を説 明するおのとして、ポシェをとりあげ、その解釈を広げている。

その中で、アーバンポシェを用いて現代の都市を解釈すること の有用性を示していく。

5.2 事例分析について

今後、先述した対象地域について事例分析を進めていく。その なかで示す、各地域の開発概要をより詳細に調査することで、各 建築の逆空間に関する考察に活かしていく。

5.3 考察について

事例分析の結果から、都市開発における逆空間によるアイデン ティティの創出について述べるが、現状では逆空間の立体化、イ ンフラ整備と連携した逆空間の整備、逆空間の広域化、複雑化が 予測される。これらは都市の巨大化という批判的に捉えられがち な側面が生み出した逆空間のあり方ではないだろうか。つまり、

逆空間による都市のアイデンティティ創出は現代都市の開発に適 した方法のひとつであるといいえるのではないだろうか。

参照

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