平成 27 年度 文部科学省
『成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業』
北海道に即した中核的林業技術者養成プログラムの開発事業
森林施業プランナー・森林総合監理士
スキルアップテキスト
【低コスト育林・環境配慮型森林施業編】
北海道大学大学院農学研究院
はじめに 本テキストは平成 27 年度文部科学省「成長分野等における中核的人材養成などの戦略的推進事業」 で北海道大学が受託した「北海道に即した中核的林業技術者養成プログラムの開発事業」の一環とし て作成したものです。 北海道林業を成長産業化するために、総合的な森林づくりのビジョンを描く森林総合監理士(フォ レスター)と、効率的な森林管理と木材生産を担う森林施業プランナー(プランナー)の育成が進め られています。フォレスターとプランナーは初級教育を終えた段階で、北海道の地域特性を踏まえて キャリアアップをはかるプログラムが必要とされています。 事業では平成 25 年度林業分野コンソーシアムおよび道内林業・林産業界の林業技術者に対する要望、 林業技術者の学びの要求を踏まえて、平成 26 年度に「集約化施業・木材流通編」のテキストを取りま とめました。 平成 27 年度事業では、北海道林業の競争力強化の喫緊の課題である低コスト化のうち、特に取り組 みが遅れている「低コスト育林」と、森林認証材など環境に配慮した木材製品の需要を喚起し、市場 における道産材の地位を確保するために「環境配慮型森林施業」についてテキストを取りまとめまし た。 テキスト作成にあたっては、北海道森林管理局、北海道、北海道森林組合連合会、北海道木材産業 協同組合連合会、北海道森林整備担い手支援センター、国立研究開発法人森林総合研究所北海道支所、 北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場、一般社団法人札幌林業土木協会等の協力を得て、森 林施業プランナー・森林総合監理士の皆さん、さらにはそのほかの林業技術者の皆さんがキャリアア ップをはかるために最適なテキストを編集することができたと考えております。 本テキストが道内の森林総合管理士・森林施業プランナーをはじめとする林業技術者の皆さんに、 広く活用されることを期待いたします。 平成 27 年 2 月 北海道大学大学院農学研究院 〒060-8589 札幌市北区北 9 条西 9 丁目
******** 目 次 ********
I. 低コスト育林 ... 1 I.I はじめに ... 1 1. 低コスト育林の背景 ... 1 2. 低コスト育林の必要性 ... 2 I.II 低コスト育林の取り組み ... 3 1. 生産事業を含めた育林コスト削減のポイント ... 3 2. 一貫作業による低コスト化 ... 6 I.III 苗木生産 ... 8 1. 林業種苗のしくみ ... 8 2. 苗木の種類(根鉢の形態別)とその特徴 ... 9 3. コンテナ苗の特徴 ... 9 4. 海外の事例(LIECO 社 オーストリア) ... 10 5. 北海道の生産状況 ... 12 6. コンテナ育苗の課題 ... 14 I.IV 植栽・育林・保護 ... 15 1. 植栽密度と育林経路 ... 15 2. コンテナ苗の植裁 ... 28 3. 植栽器具と植栽作業能率 ... 29 4. 下刈り省略によるコスト削減と植栽木の成長と形質(下刈り低減方法の検討) ... 32 5. 枝打ち ... 35 6. 森林被害の実態と対策 ... 37 I.V 一貫作業システム ... 44 1. プロジェクト研究「伐採・造林一貫システム」について ... 44 2. クラッシャ地拵えと造林システム ... 49 I.VI 参考資料 ... 51 1. 生産コストを下げるヒント ... 51 II. 環境配慮型森林施業 ... 59 II.I はじめに ... 59 1. 環境配慮型施業の背景 ... 59 II.II 生物多様性に配慮した森林施業 ... 63 1. 生物多様性とは ... 63 2. 生物多様性の基礎知識 ... 63 3. 生物多様性を保全するための基礎知識 ... 66 4. 希少種の保全 ... 666. 森林の公益的機能と木材生産の両立をめざす保残伐施業 ... 76 II.III 河畔域の保全 ... 78 1. 【基礎編】河畔林のはたらき ... 78 2. 河畔林の更新動態 ... 81 3. 【応用編】河畔林の保全および管理 ... 82 4. 魚類と河畔林のつながり ... 86 5. 水土保全と河畔林 ... 88 6. 河畔林の再生 ... 90 II.IV 路網開設と土場造成等 ... 91 1. 総論 ... 91 2. 路網の計画・調査にあたって配慮すべきこと ... 93 3. 林道・林業専用道開設で配慮すること ... 94 4. 森林作業道の開設で配慮すること ... 95 5. 路網の維持管理で配慮すべきこと ... 97 6. 土場造成で配慮すべきこと ... 97 II.V 森林計画制度と環境配慮型施業 ... 99 1. 市町村森林整備計画 ... 99 2. 森林経営計画 ... 100 3. 市町村森林整備計画等の実行管理 ... 101 II.VI 参考資料 事例 ... 102 1. 事例1 素材生産事業体による自主的なガイドラインの策定・認定制度の運用 ... 102 2. 事例 2 地域の森林の計画に環境配慮を盛り込む ... 103 3. 事例 3 森林認証で地域活性化 ... 104
I.
低コスト育林
I.I
はじめに
1. 低コスト育林の背景 現在、人工林材は、全国の素材の生産量の 8~9 割を占め、我が国の木材生産の中心となっています。 森林面積の 41%は人工林で、蓄積はおおよそ 2/3 を占めるようになっています。日本の人工林の多く は、第二次大戦後の拡大造林事業によって造成されました。現在は、拡大造林事業が始まってから 60 年ほど経過し、主伐期を迎える造林地が増加していて、拡大造林事業の結果を評価できる時代となり ました。では、どのように評価すればよいでしょうか?林野庁は、現在全国で 1,030 万 ha ある人工林 のうちおよそ 2/3 の 660 万 ha は、将来的にも人工林(育成単層林)として維持する計画としています。 つまり多くの人工林では、植栽木が成長し成林していて、拡大造林事業は、育林事業としては成功だ ったと評価してよいといえます。 しかし、問題がないわけではありません。まず、現在の造林地を育てる途上で生じた問題として、 生産目標の消失があげられます。全国で造林面積の大きいスギ・ヒノキ人工林は、植栽当初はおもに 柱(心持ち柱)の生産を目標にしていましたが、家屋の建築方法の変化により、それほど多くの柱材 生産が必要なくなってしまい、生産目標が失われてしまいました。また、北海道にも多いカラマツ人 工林は、坑木生産を想定していましたが、石炭鉱山が次々と閉山し、需要がなくなってしまいました。 その後どのようにして人工林を育成したかといいますと、明確な生産目標を持たずに、何となく間伐 し、何となく育てて、木材市況などに影響されながら、適期と思われる時期に主伐するという育林の 仕方になっていると思います。主伐期も、人工林造成当初は 30 年程度の短伐期が想定されていました が、現在の北海道のトドマツ・カラマツ人工林は 50~60 年で主伐される林分が多くなっています。生 産目標の消失は、育林事業の非効率化に影響しています。 また、立木価格の低迷にともない人工林林業の収益性の低下が顕著になっています(図 I.I.1)。山 元立木価格がもっとも高かったのは 1980 年ですが、現在の価格は、スギ、ヒノキとも約 1/6 に低下し、 その結果木材販売収入が減少しています。 一方、育林事業自体は、立木価格が高かった時期と同じ方法で実施されていて、木材販売収入に比 べ育林事業は高コストとなっていて、人工林事業の収益性を悪化させています。今は各種の補助金が あるので、何とか育林事業が行われている状態といえます。 今後主伐期を迎える人工林は急速に増大します。そして再造林ということが求められますが、人工 林事業の収益性を考えると、これまで行ってきた方法と同じように事業を行うことは困難です。木材 価格の上昇はあまり期待できませんので、次代の人工林事業では、木材生産事業を含めた育林事業コ ストを低減させ、収益性を向上させ、再造林を確実に進められる状況を作る必要があります。そのた め、「育林事業の低コスト化」に対応できる育林・生産技術を急いで確立する必要があります。本テキ ストでは、育林事業の低コスト化に有効で、かつ現実的に実施可能な技術について、わかりやすく解 I. I はじめにI. I はじめに
図 I.I.1 全国平均山元立木価格の推移(出典:森林・林業白書より)
2. 低コスト育林の必要性
人工林事業の収益性悪化の最大の要因は、前章に示したように、立木価格の低下ですが、それ以外 にも多くの原因が挙げられます。図 I.I.2 は、北海道のカラマツ人工林の収益性を示した図です。
図 I.I.2 カラマツ人工林の収益性(2,000 本/ha 植栽、I 等地、50 年主伐) (出典:北海道水産林務部による) 諸外国に比べると、まず地拵・植栽と初期保育(下刈、ツル伐り)のコストが格段に高いのが、日 本の人工林林業の特徴です。初期保育経費が高いのは植生が豊かなためなので、致し方ないところも ありますが、不必要な保育を行わないよう見直しは必要です。また、植栽も 2,000~3,000 本/ha の植 栽本数が必要なのか、あるいは低コストで効率的な植栽仕様はないかなど、検討が必要です。現在日 本各地で検討が始まっている伐採・植栽一貫作業も技術の確立が急がれます。 また、生産事業費も高コストですが、これは効率的な機械化、あるいは適切な作業システムの構築 が遅れているためです。1990 年以降高性能林業機械の導入が急速に進んでいますが、まだそれらを十 分に使いこなしているとは言い難い状況です。このことには、路網整備の遅れも強く影響しています。 日本の路網密度は、林道・作業道等を合わせて 17m/ha ですが、ドイツは 100m/ha 以上の路網が整備さ れ、林業機械の利用が効率的に行われ、木材生産コストも安価となっています。 林業の機械化は、労力の減少対策、労働安全性対策の面からも重要です。林業従事者数は 1980 年は ●植栽・下刈(3 年間) 66 万円 ●間伐事業費 114 万円 ●主伐事業費 140 万円 合計 320 万円のコスト ●これに対し、木材収入は 312 万円 補助金を加えて全体では 100 万円程度の収益
約 15 万人でしたが、減少が続き、2010 年には約 5 万人となっています。また、林業は労働災害率が 非常に高く、特にチェーンソー使用時の災害が多くなっています。機械化により少人数化、安全化を はかる必要があります。さらに、齢級別の人工林面積を平準化する必要があります。そのためには、 今後主伐林齢をばらつかせながら、かつ確実に再造林を行う必要がありますが、そのためにも育林事 業の低コスト化と林業の収益性向上が必要となります。 図 I.I.3 日本の齢級別の人工林面積と今後の推移(出典:森林・林業白書より)
I.II
低コスト育林の取り組み
1. 生産事業を含めた育林コスト削減のポイント 人工林の造成・育林過程は、図 I.II.1 が標準的です。地拵-植栽-初期保育(下刈・ツル伐り) -除伐・間伐-主伐-再造林という工程です。 図 I.II.1 人工林の造成・育林工程 (北海道水産林務部資料より改変) 現在一山型の分布(青色)を、50 年後 には二山型(茶色)、100 年後には 13 齢級以下を平準化する計画(緑色)と なっている。ただし具体策は未提案。 生産事業の作業シ ステム:効率的な 作業システムによ り低コスト生産 生産材の販売:適 切な用途へ販売 し、収入を確保す る 主伐:すべての立 木を伐採し、次代 の林分の更新をは かる 樹木間の競争を緩 和、本数調整、最 終伐採までの数回 下刈り:苗木の成 長を助けるため、 他の植生を刈り取 る 苗木を植えるため地 表面を整地し、植栽す る I. II 低コスト育林の取り組みI. II 低コスト育林の取り組み
1.1 これまでの作業の仕方 地拵:人力あるいは機械地拵。全刈りあるいは筋地拵が多い。 植栽:裸苗を 2,000~3,000 本/ha の密度で植栽。方形植え、あるいは多条(2 条、3 条) 植えが多い。植栽時期は春植えあるいは秋植え。 初期保育:一般的に 3~10 年間下刈を行う。全刈り・筋刈り。また、植栽後 1~2 度適 切な時期にツル伐りを行う。 除伐・間伐:林齢 25 年以下で行う密度調整が除伐、林齢 26~60 年に行われるのが間伐。 主伐まで数回(2~4 回程度)の間伐を行うことが多い。列状間伐か定性間伐が行われる。 主伐:林齢 50~60 年程度で行われる最終的収穫伐採。次代の更新(再造林)がはから れる。現在は一斉皆伐を避け、数回に分けて帯状などで主伐することもある。 このような施業の仕方で育林した場合、カラマツ人工林1ha を 50 年で主伐すると、そのコストが 木材販売収入を上回ってしまいます(図 I.I.2)。従って、育林工程のすべての見直しを行い、低コス ト化をはかる必要があります。 それでは、低コスト化をどのように考えたらよいでしょうか。現在はその方法を、様々なアイディ アや試行を通して、実現可能な技術として早急に確立することが求められる時期といえます。図 I.II.1 に示した工程ごとに、現在考えられる改善点について検討することにします。 1.2 地拵 できるだけ機械化をはかります。林業用クラッシャの利用も効率的です(図 I.II.2)。また、ササ の地下茎を除去し、下刈回数の低減をはかる方法の検討が必要です。 1.3 植栽 植栽密度の検討が必要で、今後は低密度植栽が増えると予想されます。ただし、単に苗木代の問題 として考えず、主伐までの育林(間伐)計画を考慮して植栽密度を設計することが必要です。 また、植栽仕様については、植栽後の様々な施業で林業機械を利用することを前提とした仕様も要 検討です(図Ⅰ.Ⅱ.3)。さらに植栽時期の分散化には、コンテナ苗の利用も効果的であり、コンテナ 苗専用の植栽器具による植栽功程のアップも重要となります。コンテナ苗植栽器具については、今後 試行と改良が必要です。 図 I.II.2 林業クラッシャ(鶴居村) 図 I.II.3 当初から機械道を設定した植栽仕様の例 (北海道水産林務部資料より)
1.4 初期保育 下刈経費の負担が大きいので、下刈期間を短縮できるような地拵法の確立が必要です(ササの地下 茎除去)。また、1 年間の下刈回数と時期についても検討が必要で、出来るだけ年 1 回刈り以下とする 技術の確立が望まれます。 下刈期間の短縮には、初期成長の速い苗木も有効で、グイマツF1やカラマツ類等がその候補となり ます。ミヤコザサ地帯では、林業用クラッシャの利用による下刈期間短縮の可能性もあります(図 I.II.2)。低密度植栽の場合、林冠閉鎖時期が遅れるため、下刈完了後のササ群落の再生は、天然更新 する樹木類の侵入・成長を抑制する効果が期待できます。 1.5 除伐・間伐 上述したように、低密度植栽では除伐が必要となる場合があるかもしれません。このためにも、で きるだけ作業のしやすい植栽仕様とする必要があります。 間伐については、とにかく生産コストの安価な作業システムを採用しなければなりません。 林業専用の高性能機械による作業システムは一般に生産性は高いのですが、機械の減価償却費が大 きいため、生産性が高い=生産コストが安いとは限りません。経験的には、生産コストの低減には工 程数を減少させることの効果が大きいことが多いと思います(最低限の機械・人員による作業システ ム)。北海道の民有林の場合比較的傾斜の緩い林分が多いので、基本的には車両系の作業システムが適 しています。ただし、車両系システムには適切な路網開設が必要です。一企業体で、複数の作業シス テムが可能なほど林業機械を保持するのは経済的な負担が大きため、事業規模にもよりますが、レン タル機の利用により常に最適な作業システムにより間伐を行うことも考慮すべきと思います。 個人の森林所有面積は大きくない場合が多いので、事業地の集約化・事業の集約化は重要な問題で す。複数事業を一度に行うことにより、機械類搬送費の削減、適切な路網開設と作業システムの選択 などが可能となり、生産コストの縮減が期待できます。ただし、5ha 程度の事業集約ではなく、20ha 程度以上、出材量 1,000m3程度以上の集約化で大きな効果が期待できます。また、公道を自走できる 機械類(例えば農業用トラクターの利用)も低コスト化には有効といえます。 除・間伐時には、残存木の損傷をできるだけ抑えることが肝要です。幹を損傷しないのは勿論です が、根系の損傷にも留意する必要があり、そのためには、林業機械が林内を走行する作業路は、必要 最低限でかつ固定化する必要があります。残存木の損傷は腐朽の原因となります。さらに、労働安全 の面からも木材生産事業の機械化は必要です。 林業での労働災害はチェーンソー使用時がもっとも多く、伐採・造材作業を機械化するだけでも防 ぐことができる労働災害は多いと考えられます。 1.6 主 伐 造材作業における低コスト化のための改善点は、間伐の場合と同じです。ほとんどの場合、主伐は 皆伐によりますから、林内作業が基本で、適切な作業システムを利用することにより効率のよい安価 な作業が可能と考えられます。それだけに、如何に生産コストを下げ、収益性をあげるかが重要とな ります。 主伐後は次代の更新をはかることになりますが、今後は天然更新の可能性も検討すべきです。ただ I. II 低コスト育林の取り組み
ような生産材が収穫可能で、また、いつ収穫できるかということに関して予測が困難で、計画的な管 理・施業が難しくなります。 北海道の人工林の場合、ササの稈高の低い地域のトドマツ人工林で、天然更新によりトドマツ林分 を更新させることができる可能性があります。また、帯状皆伐などにより、針葉樹の更新を期待する という方法も考えられますが、これらについては現在検討中であり、技術として確立には至っていま せん。さらに、販売面での努力・工夫により、収益を増大させることも必要です。おそらく主伐での 収益により再造林を行うことが多いと思いますので、主伐事業の収益性をあげることは重要といえま す。 2. 一貫作業による低コスト化 最近試行され始めた人工林育林コストの低減策として、主伐から植栽までを連続的に行う一貫作業 とよばれる方法があります。この方法は、再造林のコストを低減させるため、平成 21~24 年に九州で 行われたのが最初の試みで、再造林コスト(地拵・植栽・下刈)を 35%程度削減できたという実証例 があります。ここ数年九州と北海道の国有林で、事業規模での実証が試みられています。しかし、技 術的にはまだ実証試験の段階といえ、今後検討しなければならない課題が多い状態です。 一貫作業の基本的な考え方は、主伐作業と植栽を同時に行うことによって、伐採作業に使用した機 械を地拵や苗木運搬に利用し、一連の作業を効率的かつ安価に行うことができるということです(図 I.II.4)。伐採に使用したベースマシンにグラップルヘッドを換装することで地拵に利用でき、また、 フォワーダにより苗木運搬を行うことができます。加えて、伐採に用いる機械類が稼働しない時間を 利用して植栽作業を進めると、機械の効率的な運用と人員作業の効率化をはかることができます。さ らに、コンテナ苗を用いることで、通年いつでも植栽が可能となり、作業時期を選ばずに実施できま す。 しかし、わずか5年ほど前に試行された新しい技術・考え方ですので、未解決の課題は山積してい ます。先ず、主伐作業ですが、伐採後に行う地拵・植栽作業を如何にスムーズに行うことができるか を考慮しながら行う必要があります。具体的には、枝条処理をどのように行うかということです。枝 条整理の仕方によっては、ほとんど地拵を行わずに植栽ができるという可能性も考えられます。枝条 整理が適切だと地拵作業量の軽減につながるでしょう。全木集材の場合は枝条整理が容易になります。 また、伐採作業従事者が、地拵や植栽を行うことができるということも重要です。 上述したように、伐採作業と地拵・植栽作業を同時並行的に行うことができれば、機械・人員の運 用上無駄がなくなり、生産性向上と低コスト化が期待できます。これまでは伐採を行う作業班と植栽 を行う作業班は別々であり、相互が業務を入れ替えるということはなかったと思いますが、今後は各 作業員が伐採から植栽までのすべての作業を行うことができるようにしなければなりません。
図 I.II.4 一貫作業の基本的な考え方(出典:森林総合研究所資料より) コンテナ苗の利用についてですが、北海道ではトドマツもカラマツもコンテナ苗の価格は、普通苗 (裸苗)に比べ高価です。このため、苗木代対策として低密度植栽が考えられていますが、植栽本数 を減らすだけでは効果は限定的です。一貫作業で地拵までを行い、植栽は裸苗が利用できる時期に行 うという考え方も可能と思います。コンテナ苗は植栽時期をあまり選びませんが、成長に関しては裸 苗より優れているとは限らず、今後の検討が必要です。 下刈については、北海道ではササの再生に対する処理と、初期成長に優れた苗木や大苗の使用によ り、下刈期間を短縮するという考え方がよいと思います。 このように一貫作業については課題が山積していますが、今後急速に主伐対象林分が増大してきま すので、これらの課題は早急に解決あるいは対処が必要です。その解決方法は、当然現実的に実施可 能な技術として提示されなければなりません。事業規模での試行を進めながら、可能な限り技術とし ての普及を早急にはかっていくことが望まれます。 伐採 搬出 地拵 植栽 下刈 間伐 成林 ポイント1 一貫作業システム 伐採から植栽までを同時 に行うことで、地拵えで 約1/6~1/9、植栽で約 1/3 の低コスト化が可能 です。 ポイント2 コンテナ苗 通年植栽が可能なコンテナ 苗は、一貫作業システムに 不可欠で、植栽作業の低コ スト化および作業の通年で の平準化に貢献します。 ポイント3 下刈回数削減 隔年で下刈りを実施する場 合、植栽木の成長は2割程度 低下します。回数の削減は それを許容できるかどうか で判断します。 ポイント4 シカ被害の軽減 大苗の植栽と植栽後初期の 下刈りを行わないことで、 シカ柵なしでシカ食害を軽 減できる可能性があります。 ポイント5 再造林コスト予測 伐採前から再造林コストお よび収支の予測をすること で、場所に見合った適切な 施業方法を選択できます。 I. II 低コスト育林の取り組み
I.III
苗木生産
1. 林業種苗のしくみ 林木は植栽から伐採まで長い期間を要し、それまでには適宜費用をかけて管理する必要があります。 これら成果を左右する林業種苗(以下種苗)の選択は、大変重要です。一般に、種苗は産地・系統が 明らかで、そのような種苗を適地に植栽することが大切です。かつては「守っ子ダネ」といわれる子 守女性が生け垣などから採種・生産した苗が広く流通し、結果として不成績造林地が広がったことが あります。これらの反省から 1939 年に林業種苗法が制定され、1970 年の改定を経て現在に至ってい ます。林業種苗法は「指定採種源制度」「生産事業者の登録制度」「配布用種苗の表示制度」といった 3つの柱で構成されています。つまり「どのような種」を用いて「誰が作った」のかが「わかる」種 苗を造林に用いることとなっています。 図 I.III.1 林業種苗の安定供給のしくみ(出典:林野庁資料より) 林業種苗を安定的に供給する仕組みは図 I.III.1 に示したとおりです。これらの仕組みは大きく2 つの事業に分けられます。「林木育種事業」は、採種源の整備やそれらの遺伝的改良をする部分です。 北海道ではクリーンラーチなどがこの事業で生み出されています。 一方、種子の不足やカラマツの育種種子が得られないなどの問題もあります。「林業種苗事業」は計 画生産に資する仕組みで、都道府県単位で需要側と供給側とが一堂に会する需給調整協議会を設置し、 需要見込みから生産計画が立てられ、それを受けて生産者に計画量の種子が配布され苗木が生産され ます。このように計画生産されている樹種を「需給対象樹種」といい、北海道ではカラマツ・エゾマ ツ(ここではアカエゾマツ)・トドマツ・グイマツ雑種F1およびスギの5樹種です。 その他の樹種、特に広葉樹などは需給対象樹種ではなく、自由に採種・生産・移動がされています。 一部樹種(ブナなど)には移動の際に配慮が必要なものもありますが、現在は生産者と需要者の裁量 に任されています。2. 苗木の種類(根鉢の形態別)とその特徴 コンテナ苗を述べる前に、現在流通している苗木の種類とその特徴についてまとめます。現在流通 している苗木を根鉢の形態で大きく分類すると、裸苗、根巻苗、ポット苗に分けることができます。 以下にそれぞれの特長を述べます。 裸苗は広く林業種苗で用いられる苗木の形態です。根の周りの土を振るい落とした状態 ですので、植栽可能期間が短く、乾燥に弱いことが欠点です。一方で、適期植栽が可 能な場合は、多くの苗木をコンパクトにして運搬できること、苗木代が安いなどが最 大のメリットです。 根巻苗は、露地栽培された苗木を根の周りの土壌が落ちないように掘り取り、ジュート 資材などで巻き根鉢を保護したもので、苗木の移植後の活着をよくする効果がありま す。根鉢に十分な土がついているため乾燥に強く、大きな樹木の移植にも対応できま す。しかし、苗木の出芽時期などは掘り取り作業が出来ない、根鉢が大きく重いとい ったことが欠点として挙げられます。 ポット苗は、ビニールポットに苗を移植、または直播および直挿しし、一定期間養成し たものです。出荷時に根を痛めることがないので活着もよく、植栽時期を選びません。 一方で根鉢部分が大きく重量がかさむ、一定期間以上ポットで養成すると根が絡んで 締め付け(ルーピング現象)が起きます。ルーピングした苗木は成長が悪く、風倒す る可能性があります。根巻苗もポット苗も広く緑化工事などで使用されています。 低コストを考えると、一般的に同じ規格の苗木であれば、裸苗、根巻苗、ポット苗の順で苗木単価 は高くなる傾向があります。これは、裸苗を根巻する、もしくはポットに移植し潅水設備のある圃場 で養成するといった経費が掛かり増しになっているためと考えられます。一例として、公共工事の資 料である積算資料H26.3 月号では、カラマツ 50cm 根巻苗は 700 円(造林用裸苗 78.2 円)となって います。 3. コンテナ苗の特徴 コンテナ苗とは、マルチキャビティコンテナなどの容器で養成された苗のことです。ポット苗の欠 点であったルーピングをしにくい構造で、根鉢部分もコンパクトで軽いのが特徴です。一定期間以上 マルチキャビティコンテナ内で養成されているため出荷前に根にダメージがなく、裸苗と比べて植栽 可能期間が長く、活着・初期成長がともに良いと言われています。また、施設栽培であるので、最近 苗畑で頻発している気象害を受けにくいといった利点もあります。一方で、潅水施設やコンテナ容器 など、初期投資が莫大であるなど、生産者には重荷になっています。また、コンテナ苗はくずれない 根鉢成形と軽さが重視されることから用土はココピートなど購入培土が主体となります。 I. III 苗木生産
I. III 苗木生産
写真 I.III.1 LIECO 社のコンテナ (左からモミ用スリット、カラマツ用スリット、トウヒ用リブ、播種用リブ) 日本では 2008 年に国産マルチキャビティコンテナ JFA-150、JFA-300 の生産が開始されました。こ れらはリブ型コンテナと言われ、コンテナ内側に縦方向に細長い突起(リブ)があるのが特徴です。 生育上苗木の根はリブに沿って下降しコンテナ下部が解放されているために空気に触れて根切りされ ます(空気根切り)。2014 年よりヨーロッパでも実績のあるサイドスリット型コンテナも国内生産が 開始されました。これは、コンテナの側面に縦に細長く穴(スリット)の開いた形状で、この部分で も空気根切りされるため、このコンテナで生産された苗木は成長が良く植栽後の発根および成長も良 いといわれています。 4. 海外の事例(LIECO 社 オーストリア) 北海道山林種苗協同組合では2012年にオーストリアのLIECO社を訪問して、多くの知見を得ました。 その概略を説明します。LIECO 社を視察先として選んだ理由は、モミ、トウヒ、カラマツといった北 海道に似た樹種の生産を行っているということと、北欧や北米と違い規模が比較的小さく、管理上長 日処理などを行わず設備が簡易と思われたためです。 オーストリアの面積は、北海道とほぼ同じの 84,000 ㎢。天然更新のイメージが強いですが、年間の 苗木の植栽本数は3,500 万本となっています(北海道は 2,000 万本)。LIECO 社の母体は、LIECHTENSTEIN 公国で苗木生産のほかに山林経営(20,000ha)、ワイナリーの運営もしています。現在の出荷量は 500 ~650 万本で、国内シェアの 20%を目指し、新しい苗畑の開設など毎年出荷量で 20~30 万本の増加を 見込んでいるとのことでした。
養成の仕方については、カラマツ、トウヒでは小さいコンテナに直接播種、発芽率の低い場合は複 数粒播種し2本以上出たところは間引きます。播種は春から夏にかけて、樹種や産地別に3回程度行 います。播種直後は育苗ハウスに入れて管理するために 170 万本育成できる巨大なハウスが2棟あり ます。その後大きなコンテナに移植を行い、養成して出荷という流れです。モミについては発芽率が 低いため、2 年生苗木を移植するということでした。コンテナはカラマツ、モミはスリット型コンテ ナを、トウヒはリブ型コンテナを使用しています。養成年数はカラマツ 1-1(苗齢表記は日本式にし ています。数字の間の“-”は移植を意味します)、モミ 2-2、トウヒ 2-1 でトウヒが1年早い他は 北海道と同じ苗齢でした。培土は、ピートモスとパーライトを 9:1 の割合で混ぜたものを使っていま す。播種用はピートモスの繊維の短いものを、移植用にはピートモスの繊維の長いものをと使い分け をしています。培土の充填、播種、潅水、苗木の移動などが機械化され、移植、除草、その他人手の 必要な部分の作業は外国人労働者に頼っているとのことでした。9.5ha の圃場に 300 万ユーロ(3.9 億円、1ユーロ 130 円換算)の設備投資をしているとのことでした。 写真 I.III.3 出荷風景 (出典:LIECO 社カタログより) 出荷はコンテナ容器のまま行い、それが苗木にストレスをかけない最良の方法とのことでした。出 荷規格はカラマツで 30~60cm、トウヒで 25~55cm と幅があり、苗木の大きさより種子の産地および コンテナ養成期間(一定以上長くコンテナで養成すると苗木の品質が著しく落ちるため)を重視する とのことでした。苗木価格は裸苗が 0.35~0.40 ユーロに対しコンテナ苗は 0.70~0.80 ユーロで2倍 程度でした。しかし、コンテナ苗の特徴を伝え、その特徴が十分発揮できる苗木を供給することによ って、森林所有者は再造林の際の選択肢の一つとしてコンテナ苗を選び、その使用量も増加し続けて いるとのことでした。 I. III 苗木生産
5. 北海道の生産状況 北海道のコンテナ苗の生産への取り組みは 2009 年よりスタートしています。当初6社で生産を開始 していますが、現在の生産者数は 24 社と大幅に増加しています。しかし、生産可能本数(コンテナ容 器保持数)を見ますと、25 万本以上が1社、5万本以上が3社、1万本以上が8社で、半数が1万本 以下の試験栽培的に取り組んでいる状況です(図 I.III.2)。容器はマルチキャビティ JFA-150、 JFA-300、Mスター200、300、LIECO 社 310、390、東北タチバナのスリット型コンテナ 150(数字はコ ンテナ容量)と多岐にわたっています。これは、本州などでスギを主体とした育苗方法の試験報告は されていますが、トドマツなど北海道の樹種に関する育苗方法が確立されていないためです。 図 I.III.2 生産者別生産可能本数(2015 年) 2015 年6月末の育苗本数は、555,000 本となっていますが、2015 年度出荷見込み数は 116,400 本と なっています(表 I.III.)。ここでトドマツ、アカエゾマツは2年間養成するため出荷に対応する苗 木の数量は育苗本数の半分に歩留まりをかけた本数となります。この数字から 2015 年度はトドマツで 若干数、カラマツ類で大量の残苗があることになります。苗木不足と言われていましたが、供給量が 需要量を上回ったといえます。出荷先は国有林が多く全体の 83%を占めています。 表 I.III.1 樹種別育苗本数と出荷本数 樹 種 トドマツ アカエゾマツ カラマツ グイマツ 広葉樹 計 育苗本数 346,000 40,000 142,000 20,000 7,000 555,000 出荷見込み数 62,200 11,400 39,300 3,200 300 116,400 コンテナ育苗の方法については、大規模化、機械化をはかっている生産者の事例を中心に説明しま す。この生産者は、現在 255,000 本のコンテナ苗を生産しています。50~100 万本の生産を目標に機 械化省力化を進めています。コンテナ養成期間1年の樹種は JFA-150、2年の樹種は JFA-300 を使用 することを基本にしています。当初は、Mスターでの試験生産もしましたが、機械化に対応しにくい などの理由から、マルチキャビティを中心に使用しています。近年はスリット型コンテナも開発・販 0 50 100 150 200 250 300 A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X 生産本数 ( 単位:千本) 生産者 生産者別可能本数
売されたことから徐々にスリット型に移行する予定です。 培土はココピート主体の培養土に肥料の配合されたものを使用しています。現在は、樹種に関係な くこの培土のみで生産しています。灌水は自動灌水システムで風の影響を受けにくい夜間に行ってい ます。コンテナの置き方は、かつてはベンチに懸架する方式をとっていましたが費用が掛かるため、 プラスチックトレイを逆さまにしたものの上にコンテナを置くスタイルに変更しました。肥料は、2 年目の春に化成肥料を追肥するほかは、液肥を適宜散布しています。冬期間はプラスチックトレイか ら降ろして、積雪下に置きます。寒さによる根のダメージを防ぐため外周にスタイロフォームを回し ます。 図 I.III.3 および図 I.III.4 は、トドマツ、アカエゾマツの生産工程、カラマツの生産工程を示し ています。トドマツ、アカエゾマツは2-2で出荷、カラマツは1-1での出荷となっています。カ ラマツはこれまで出荷までに3年を要すると考えられていましたので、1年短縮したことになります。 図 I.III.3 トドマツ、アカエゾマツの生産工程 図 I.III.4 カラマツの生産工程 コンテナ苗生産で最も重労働と思われるコンテナへの土詰めと植穴開けを 2014 年の生産より機械 化しました。土詰め機(ポッティングマシーン)は、施設園芸用に販売されているものをコンテナに 合うように調整して使っています。以前は、1日に 3,600 本分の土詰め作業が、機械導入で約 8 倍の 30,000 本まで 飛躍的に効率が上がりました。一方、植穴開け機(ディ プラー)により穴の成形率が上がり苗木移植効率は約2 倍になりました。しかし、苗木によっては根の形状が違 い移植しづらいものもあり、また、作業員の練度の違い も作業スピードに影響するなど、苗木移植工程がボトル ネックとなっており今後の課題です。 写真 I.III.4 導入した土詰め機 (ポッティングマシーン) I. III 苗木生産
出荷は段ボールに詰めて行います。コンテナから取り出 した苗は規格に分けて5本または 10 本ずつラップ巻きし ます。それらを移送中に崩れないように段ボールに収めま す。1箱に 300 ㏄で養成した苗木で 100 本、150 ㏄で養成 した苗木で 200 本ずつ詰めます。出荷に際しては、植栽業 者と連絡を密にとり適宜出荷を心がけます。今はまだ少量 (500 本程度)の出荷も多く、宅急便などを利用して出荷 することもあり、段ボールは宅急便に対応した大きさのも のを使っています。 写真 I.III.5 出荷は段ボールに詰めて行う 写真 I.III.6 カラマツ圃場 6. コンテナ育苗の課題 森林遺伝育種第2巻(2013)で清水邦夫氏は「コンテナ苗生産は造林コスト削減の救世主としての 期待が強いだけで、技術が確立されないまま、苗木生産者を含め関係者が右往左往しているのではな いか。先ずは、優良な苗木を安定して生産できる手法(培地、潅水、肥料等)を確立する必要がある のではないか」と述べています。北海道の現況はどうでしょうか。 コンテナ苗はいつでも植栽可能と言われますが、北海道の場合雪と氷に閉ざされる期間があります。 この期間(12~3月)を除いた8か月でいかに効率的に植えられるかを考えなければなりません。も ちろん、裸苗の植栽適期にはそちらを優先するべきでしょう。 次に、コンテナ苗の利用に関して中長期的な見通しは示せているでしょうか。海外の例でもわかるよ うに、コンテナ苗生産は林業種苗の施設型集約型栽培です。出荷見込みが立たないために設備投資が できないといったことが、生産者の半数が試験栽培的に取り組んでいる数値に表れています。また、 今後の利用見込みが年間 10 万本程度であれば、先述した生産者の機械化への投資は、過剰投資といっ たことになります。 「育林の低コスト化」や「一貫作業システム」と作業体系の中にコンテナ苗は組み込まれています が、山側との議論をする場があまりないように思われます。例えば、生産者はコンテナ苗の価格を低 減させるために試行錯誤をしていますが、その過程でカラマツは 300cc ではなく 150cc でといった小 さい容量での生産に切り替えています。一方、山側ではより大きな苗の要望や、研究機関ではより大 きな容量のコンテナの開発が行われています。苗木の需要者、供給者、そして研究者や行政が一堂に 会する場を設け、早急に方向性を出す必要があるように思われます。
I.IV
植栽・育林・保護
1. 植栽密度と育林経路 従来、北海道における人工林の植栽密度は、ヘクタール当たり 2,500 から 3,000 本が主流でした。 しかし、近年、人工林の伐採面積や植林面積が増加するとともに、再造林における植栽密度が低下傾 向にあります(図 I.IV.1 および図Ⅰ.IV.2)。植栽密度低下の主な理由には、最近の林業における低 コスト指向によるものと考えられます。植栽密度を減らすことで、苗木代や間伐回数など育林コスト が減り低コスト化につながります。しかし、植栽密度の変更は、育林コスト化だけでなく、植栽木の 成長や育林方法など様々な影響をもたらします。ここでは、まず植栽密度における一般的な考え方と、 植栽密度試験地の事例を紹介します。次に、様々な植栽密度における育林経路等をシミュレーション できる「収穫予測ソフト」の使用方法を学びソフトを用いて様々な育林経路を試してみます。 図 I.IV.1 道内植栽密度の経年変化 図 I.IV.2 低密度植栽されたカラマツ 1.1 植栽密度の考え方 植栽密度は植栽する樹種の特性や社会経済的な状況によって変えるべきものとされてきました。例 えば、通直性が劣る樹種や様々な被害を受けやすい樹種では植栽本数を多くし、集約的な林業ができ ないあるいは小径木の利用が進まない状況においては、植栽本数を少なくしたほうが有利です。樹種 特性などは時代によって変わることはありませんが、植栽から収穫までの期間が長い林業において、 植栽当初の木材需要や社会状況は変化する可能性があることを、私たちはこれまでの経験で学んでき ました。 拡大造林時は炭鉱坑木を目標としてカラマツ造林を行いましたが、現在の主要用途はパレットや梱 包材などの産業用資材となっています。林業が低迷してきた人工林の育成期には、大径材の付加価値 が高くなると予想し長伐期施業が指向されました。この方向性は合板原料が国産針葉樹へ転換したこ とにより全く間違った指向ではなかったものの、極端な大径材は付加価値向上どころか敬遠される傾 向があります。さらに、近年では東日本大震災を契機として導入された再生可能エネルギーの固定価 格買い取り制度により、全国的に木材のバイオマス利用が進もうとしています。つまり、我々は植栽 1500 2000 2500 3000 19 70 19 75 19 80 19 85 19 90 19 95 20 00 20 05 20 10 植 栽 密 度 (本 /ha ) カラマツ トドマツ I. IV 植栽・育林・保護I. IV 植栽・育林・保護
では、我々はどのような考え方で植栽密度を決めるべきでしょうか。社会状況の変化は予測できない とすると、できるだけ時代に関わらず普遍的なものを基準にし、植栽本数だけでなく間伐時期も含め た施業方法を検討するしかありません。拡大造林の時代には、カラマツやトドマツをどのような植栽 密度で植栽すると、何年後に間伐が必要になって、主伐時にはどのくらいの径級の丸太が生産できる というような施業指針の見通しが立ちませんでした。しかし、現在は地位指数曲線、密度管理図や収 量密度図など成長や間伐時期、収量などを予測する手法が様々開発されています。さらに、後述する 収穫予測ソフト(システム収穫表)と呼ばれるコンピューター上で、より包括的で柔軟な予測も可能 です。 図 I.IV.3 に植栽密度が施業方法に与える影響をフロー図で示しました。気象などの環境条件によ って地位は影響を受けます。ある地位の場所で植栽密度を決めると、森林を健全に維持するための間 伐林齢や間伐収穫が決まります。さらに、植栽密度は機械作業のスペースにも影響するため、作業シ ステムとも深く関わります。その結果、植栽密度は間接的に主伐林齢や主伐収穫とも関係します。こ れらのことから植栽密度は植栽から最終間伐までの育林コストに大きく影響するのです。なお、ここ での森林の健全性とは、成長量の維持、枯死木の発生回避、気象害の回避などがあげられます。適切 な時期に間伐が実施しなければ、葉量減少や枯死木発生により、個体直径や林分材積の成長が抑制さ れ、病虫害の発生が起こりやすくなり、形状比の悪化が冠雪害等を引き起こします。間伐適期の判断 には、収量比数や形状比などが利用できることもわかっています。したがって、植栽密度はそれ単独 ではなく、間伐方法や収量など施業体系の1要素として理解するべきです。 次世代の人工林造成においては、拡大造林の結果や反省から得られた技術の進歩を踏まえて行動す るべきです。将来の木材需要や社会状況の変化は予測できなくても、人工林の成長や適切な間伐時期、 収穫量などの施業体系についてはより具体的なイメージを持つことができます。後述する病虫獣害や 気象害などの森林被害についてもある程度予想がつくわけです。これらの情報を有効に活用して、そ れぞれの環境条件や事業体の経営方針などから、総合的に判断して個別林分に適した植栽密度をはじ めとした施業体系を検討することで、画一的でない地域特性に適合した施業の選択が可能になります。 図 I.IV.3 植栽密度が施業に与える影響
1.2 植栽密度試験地等の事例 (地独)道立総合研究機構林業試験場では、カラマツとグイマツの交配種であるグイマツ雑種 F1を 用いた低密度植栽による低コスト育林・造林を提案しています。グイマツ雑種 F1はカラマツよりも野 鼠害や気象害等に対する耐性が高く低密度植栽に適していると考えられています。林業試験場では、 グイマツ雑種 F1の低密度植栽の有効性を検証するために、道内各地に植栽密度試験林(美唄市、津別 町、士別市、由仁町、幕別町忠類、美幌町、東神楽町)を造成しています。植栽密度試験林のうち最 も古い美唄市の生育状況についてまとめました。これらの試験結果から、植栽密度が成長や生存など に及ぼす影響について理解しましょう。 試験林の名称はグイマツ雑種 F1施業試験林(道総研林業試験場実験林内)で、ヘクタール当たりの 植栽密度は 500、1,000、2,000、4,000、8,000、32,000 本区の6段階(2反復)が設けられています (写真 I.IV.1 および写真Ⅰ.IV.2)。このうち、32,000 本区は比較的早く雪害等により崩壊したため、 ここでは 500 から 8,000 本区の結果について紹介します。なお、いずれの試験区も 27 年生までは無間 伐で 28 年生時に反復 1 で間伐(間伐率 30%)を実施しています。地位指数は全道平均の 22(40 年生 時の上層高)よりも高い 25 です。 用いた苗はグイマツ雑種 F1実生苗です。地ごしらえは大型機械により 1984 年に実施し、翌 1985 年 に植栽しています。どの試験区も方形植栽で、苗列間は 500 本区 4.5m、1,000 本区 3.2m、2,000 本 区 2.2m、4,000 本区 1.6m、8,000 本区 1.1mです。下刈り作業は5年生まで実施しました。野鼠防 除は5、6年生時に、つる切り作業を8および 12 年生時に実施しています。つる切り除伐の作業では、 侵入した広葉樹の除伐を行っていますが植栽木の伐採はしていません。生育調査は、植栽年は樹高の み、その後は樹高、直径、枝下高を1~5年ごとに調査しています。 写真 I.IV.1 植栽密度 500 本区 写真 I.IV.2 植栽密度 8000 本区 表 I.IV.1 植栽密度試験林の 27 年生時の育成状況 植栽密度(本/ha) 500 1000 2000 4000 8000 試験区面積(ha) 0.2 0.1 0.05 0.1 0.05 平均樹高(m) 18.9 18.0 19.1 17.6 15.9 平均胸高直径(cm) 27.7 22.4 19.5 15.8 14.3 立木密度(本/ha) 445 815 1380 2000 2380 生存率(%) 89 82 69 50 30 I. IV 植栽・育林・保護
表 I.IV.1 には各植栽密度区の生育状況について示しました(反復1と2の平均値)。平均樹高は 4,000 本区までは植栽密度間で違いはありませんが 8,000 本区では、他の植栽密度区よりも樹高が低 い傾向があります。表には示していませんが 32,000 本区は、より樹高が低く 14.4mとなっています。 一般に通常の木材生産を目的とした植栽密度においては植栽密度の樹高への影響は少ないといえます が、極端に植栽密度が高い場合は樹高にも影響すると考えられます。平均胸高直径は植栽密度が高く なると低下する傾向があります。立木密度は植栽密度が低い場所ほど少ない傾向がありますが、生存 率は植栽密度が低い場所ほど高い傾向があります。林分材積は 2,000 本区で最大値(399 ㎥/ha)を示 し、500 本区(247 ㎥/ha)で最低値を示しました。 次に、林分の混み合い度を示す収量比数について経年変化を見てみます(図 I.IV.4)。収量比数は 植栽密度の高い試験区でより高い値で推移し、例えば 24 年生では 2,000 本以上の植栽密度で要間伐の 目安とされる収量比数 0.8 を超えています。収量比数と枯死率との関係をみると、収量比数が高くな ると、雪害等による枯死率が増加する傾向があり(図Ⅰ.IV.5)、0.8 を超えると枯死率の急増が観察 され、収量比数が除間伐時期の目安となることがよくわかります。また、24 年生時の胸高直径は 1,000 本以下の植栽密度では 20cm を超えており利用間伐が期待できます(図 I.IV.6)。1,000 本区では苗列 間が 3.2m なので、1伐2残の列状間伐を実施すると伐採幅が 6m 以上になるので機械作業にも十分な 幅となります。実際、1,000 本区で行ったハーベスタによる列状間伐は、アームの旋回や伐採木の木 寄せなども伐採幅の中でスムーズに実施できました(図Ⅰ.IV.7)。 図 I.IV.4 収量比数の経年変化 図 I.IV.5 収量比数と枯死率の関係 図 I.IV.6 胸高直径の経年変化 図 I.IV.7 1,000 本区での列状間伐の実施状況 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 6 10 14 19 24 27 収 量比数 林齢(年) 500本 1000本 2000本 4000本 8000本 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 枯死率 収量比数 0 5 10 15 20 25 30 6 10 14 19 24 27 胸高 直径( cm ) 林齢(年) 500本 1000本 2000本 4000本 8000本
これらの結果から、植栽密度が 2,000 本以上になると、要間伐の目安である収量比数 0.8 を基準に すると、1回目は平均胸高直径が 15cm 以下となるため、利用間伐とするのは困難で除伐となる可能性 が高いといえます。このように、植栽密度が直径成長や収量比数に与える影響を細かく見ると、除間 伐の時期や搬出可能性などへも影響することがよくわかります。 図 I.IV.4 の収量比数の経年変化は、グイマツ雑種 F1などカラマツ類では、通常は植栽密度が下刈 り期間に影響を与えないことを示しています。カラマツ類の場合、下刈りは植生高の倍以上の樹高に なると終了します。この基準では下刈り終了時期は、カラマツでは3~5年生となります。このとき の収量比数は、植栽密度 4,000 本6年生の値をみると、0.4 となっています。収量比数は 0.8 が樹冠 閉鎖の目安なので、6年生では通常よりも高密度植栽の 4,000 本でも閉鎖していないことを示してい ます。従って、通常の植栽密度である 2,500 本植栽以下の植栽密度では下刈り終了年は植栽密度の影 響は受けないと考えられます。 近年利用が増えているバイオマスの生産という視点でこれらの結果をみると面白いことがわかりま す。極端な例として、収穫した材をすべてバイオマスに利用した場合、どの植栽密度が有利になるか 考えてみましょう。バイオマスに利用する場合は、径級による材価の違いはないとすると、収量が多 い植栽密度が有利となります。単純に考えると植栽密度が高いほど収量が多くなると思われますが、 27 年生時点での林分材積は 2,000 本区で最大にはなっているように必ずしもそうはなりません。おそ らく、より植栽密度が高い試験地で収量を最大にするためには、植栽木が枯死する前に収穫する必要 があると考えられます。例えば、最も植栽密度が高い 8,000 本区は生存率が 30%なので、27 年生まで に 70%を枯死する前に収穫することになります(表 I.IV.1)。実際にはこうした超高密度植栽、多間 伐施業は高コストであり実現は困難です。これらのことから、仮に間伐作業を実施しないバイオマス を生産目標にした無間伐施業を実施する場合は、植栽密度 2,000~4,000 本/ha で収量は最大になり、 極端な高もしくは低密度植栽は不利と考えられます。 このように、植栽密度は植栽木の樹高や直径の成長だけでなく、要間伐のタイミングや利用間伐の 可能性、林業機械の作業スペースなど様々な影響を与えます。また、今回は触れていませんが、植栽 密度によって枝の太さが異なるため節の形成や枯死の過程にも違いが発生します。さらに、年輪幅も 異なるため材の強度等の材質にも影響が出る可能性もあります。しかし、植栽密度効果の検証はまだ まだ十分ではなく、今後も様々な植栽密度試験林での調査を継続し、北海道の造林樹種における最適 な施業方法について検証していく必要があります。 1.3 収穫予測ソフトの使用方法 1) ソフトについて 林業試験場では、道内主要人工林であるカラマツ、トドマツおよび道南スギについて、様々な間伐 方法において収穫予測が可能なソフトを開発しています。ここでは、カラマツ収穫予測ソフト(以下: ソフト)について紹介します。ソフトは北海道のカラマツ人工林で、様々な間伐を実施したときの収 穫予測を行います。ソフト開発にあたっては、道内民有林約 2,700 林分(林齢 10~100 年)での樹高 や直径の調査データと、18 林分(林齢 12~76 年)で2~5年間隔で約 7,000 回直径成長量を継続調 査したデータを用い、カラマツの地位指数曲線、収量-密度図を作成し、直径成長量をモデル化する ことにより収穫予測を行っています。ソフトは林業試験場のHPで配布しています。配布ファイルに I. IV 植栽・育林・保護
2) 使用方法 ソフトの利用方法には大きく分けて2つあります。1つは標準地など対象林分の直径や樹高のデー タがある場合と、もう1つは新規植栽などデータがない場合です。これらの収穫予測のおおまかな流 れを図 I.IV.8 に示しました。ソフトは9つのワークシートから構成されています。樹高や直径のデ ータがある場合は、データから地位指数を求め、直径、林齢、標準地面積などのデータを入力します。 データがない場合は、周辺情報から地位指数を求め植栽本数を入力します。その後の操作は両者同様 で、間伐スケジュールの入力に進みます。 図 I.IV.8 収穫予測のフロー図 図 I.IV.9 収穫予測のワークシート “地位指数”ワークシート “地位指数”のワークシートで、対象林分の林齢と上層高を水色セルに入力すると、黄色のセ ルに地位指数が計算されます。ここでの地位指数は 40 年生時の上層高(1ha 当たり上位 100 本 の平均樹高)で表しています。樹高のデータがある場合に利用できます。新規植栽の場合は、近 隣の林分の値を参考にするなどで対応します。
“収穫予測”ワークシート 立木データの欄では、胸高直径と樹高のデータのあるなしとデータの入力方法を選択します(図 I.IV.9)。入力方法1では各立木のデータを直接入力します。入力方法2では胸高直径別の立木本 数を入力します。各立木のデータを直接入力する場合は、胸高直径の大きい順番に入力してくだ さい。データは 300 まで入力できますが、300 を超える場合は入力方法2を使用します。次に林 分データの欄に標準地の林齢(10 年生以降)、地位指数、面積、植栽本数を入力します。なお、 水色セルにはサンプルデータが入っています。立木データがない場合は林齢、調査面積は空欄に してください。 地位指数や植栽本数が不明な場合は、地域の標準的な値を入力してください。その際、“地位別 地域区分”のワークシートが参考になります。地位指数は対象地が特等地・Ⅰ等地 25、Ⅱ等地 21、 Ⅲ等地 17 を目安としてください。次に、間伐スケジュールのセルに2年ごとに林齢が記載されて いるので、適当な林齢で本数間伐率を入力します(図 I.IV.9)。本ソフトでは全層間伐が標準で すが、下層間伐、上層間伐も実施できます。列状間伐の場合は全層間伐を利用してください。間 伐率を入力すると林齢 80 年までの平均胸高直径、林分材積、立木密度などが表示されます。 “胸高直径別立木本数”ワークシート “胸高直径別立木本数”のワークシートには間伐前および間伐木、間伐後の胸高直径別立木本 数径級分布が表示されます(図 I.IV.10)。これにより林分の平均直径だけでなく、何センチ以上 の立木が何本収穫できるのかという予測ができます。胸高直径階は“直径階”と書かれた右どな りの水色セルを変えることで調節できます。ただし、次の末口径別丸太本数を予測したいときに は2cm で固定してください。 図 I.IV.10 “胸高直径別立木本数”ワークシート “間伐木末口径別丸太”および“主林木末口径別丸太”ワークシート “間伐木末口径別丸太本数”および“主林木末口径別丸太本数”ワークシートでは、間伐木お よび主林木の末口径別丸太本数が表示されます。 図 I.IV.11 の表で1~20 番玉までの材長や追上を指定します。ユーザーは灰色セルに材長を入 力します。旧バージョンでは、細い木も太い木も採材パターンは同じでしたが、本バージョン (ver.3.0)からは胸高直径ごとに採材パターンを変えることができるようになりました。これに より、より現実的な造材作業が再現できます。図 I.IV.11 の「表-1採材パターン」の下に対象 道立総合研究機構 森林研究本部 林業試験場 胸高直径別立木本数 地位指数 22 2 cm cm以上 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 4 cm未満 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 4 林 10 0 0 180 760 840 520 10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12 0 0 0 550 730 680 350 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 齢 14 0 0 0 260 590 640 530 210 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 16 0 0 0 60 490 570 540 380 110 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 (年) 18 0 0 0 0 340 490 510 430 260 40 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 20 0 0 0 0 180 430 460 430 330 150 10 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 22 0 0 0 0 0 270 320 320 290 180 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 24 0 0 0 0 0 190 290 310 290 230 90 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 直径階 間伐前胸高直径 末口径別丸太本数の予測を使用すると きは直径階は2cmに固定してください。 I. IV 植栽・育林・保護
長を指定します。デフォルトでは、追い上げ 0.3m、材長4m で入力してあります。採材長を入力 すると各丸太の末口径によって入力した数字の色が変わります。例えば図 I.IV.11 では、胸高直 径 36 から 38cm の列を見ると、1番玉と2番玉は緑色です。緑色は AV 列上部を見ると末口径が 22cm 以上であることがわかります。一方、5番玉と6番玉は青色なので AV 列上部を見ると末口 径が 10cm 未満となっています。末口径別の表示色は AV 列上部に入力する値を変更することで調 整可能です。入力したときに色で末口径がわかるので、用途に適した材長で採材することが可能 です。肌色の数字は対象丸太がないことを示しています。したがって、数字が肌色になるまで材 長を入力します。“間伐木末口径別丸太本数”のワークシートでは、対象林齢を間伐実施年のリス トから入力します。採材長を入力すると、材長・末口径別丸太本数が表示されます(図 I.IV.12)。 デフォルト値以外の材長で採材したときには、ユーザー値に記載することでデフォルト以外の採 材長の丸太本数が計算できます(図 I.IV.12 のグレーのセル)。また、このワークシートでは材 価や素材生産コスト等を入力することで、素材生産における採算性の評価ができます。 図 I.IV.11 “主林木末口径別丸太”ワークシート 図 I.IV.12 材長および末口径別丸太本数 表-2 材長・末口径別本数 80年生 末口径 cm以上 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 cm未満 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 材長m 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 (既定値) 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 690 340 240 210 170 200 320 140 230 220 370 200 220 80 90 10 0 0 0 3.65 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 材長m 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 (ユーザー値) 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
図 I.IV.13 標準単価”ワークシートの入力 平成27年度 造林事業標準単価の入力・経費算出リスト 0 共通情報 斜度 平地 植生 草、笹1m以下 1 人工造林、樹下植栽等 地拵え方法 機械地拵 地拵え区分 全刈 手刈補正 なし 耕耘 なし 掻き起こし等 なし 防鼠溝 0 m 排水溝 0 m 肥料の種類 有機質 肥料量(全回合計量) 0 kg/ha 樹種 カラマツ 苗木の大きさ 1号苗 植栽密度 2500 本/ha 植え付け区分 平地・カラ類(17-22) 2 下刈 (年1回刈) (年2回刈) 下刈り回数 全刈 全刈 下刈年数 1 2 3 倒木起こし 樹高 なし 4 枝打ち、5 除伐、6 保育間伐 枝打ち1回目 打ち上げ高6m以上 枝打ち1回目本数 1000 本/ha 枝打ち2回目 なし 枝打ち2回目本数 1000 本/ha 枝打ち3回目 なし 枝打ち3回目本数 1000 本/ha 除伐回数 2 回 保育間伐1回目 なし 保育間伐2回目 なし 保育間伐3回目 なし 7 間伐 (整理) (区分) (搬出材積m3/ha) 1回目 なし 車両系 50以上60未満 2回目 なし 車両系 60以上 3回目 なし 車両系 なし 4回目 なし 車両系 なし 5回目 なし 車両系 なし 6回目 なし 車両系 なし 7回目 なし 車両系 なし 8回目 なし 車両系 なし 8 更新伐 (区分) (搬出材積) 1回目 定性 なし 2回目 定性 なし □リストから選択 ■数値を入力 I. IV 植栽・育林・保護
“標準単価算出”ワークシート 図 I.IV.14 “標準単価”ワークシートの出力 “標準単価算出”のワークシートでは、造林事業の標準単価が試算できます。ワークシート左側 の「0 共通情報」から「10 特殊地拵え」は、白色のセルはプルダウン、黄色のセルは数値入力と なっています(図 I.IV.13)。これらを入力すると右側に図 I.IV.14 のような地拵えから最終間 伐までの標準単価が算出されます。標準単価の算出欄の右には、“収穫予測”のワークシートで入 力した間伐スケジュールを反映した施業体系図も作成されています(図 I.IV.14)。間伐や枝打ち などの標準単価決定の際に参考にできます。また、標準単価の間伐における搬出材積は施業体系 図の材積よりも、造材歩留りの影響を受けるので、“間伐木末口径別丸太”での結果を参照するほ うがより的確な試算ができます。 間伐率の入力における考え方 間伐の実施林齢や間伐率の決定には様々な方法があります。このソフトでは間伐率を入力した ときの結果がすぐに横の欄に表示されるので、林分の混み合い度を示す収量比数や、間伐木の材 積、平均直径などを見ながら実施林齢や間伐率を決めることが可能です。例えば、密仕立てのよ うに収量比数を 0.7~0.8 の範囲で管理するときには、間伐前の収量比数が 0.8 を超えていたら 30%程度の間伐を実施し、収量比数を 0.7 程度にします。このとき間伐木の材積が少ないと判断 されたときには間伐率を上げるなどの調整をします。逆に予定する主伐年での収穫が少ないとき には、間伐率を落としてみます。こうした作業を繰り返し経営目標に適した間伐スケジュールを 決定します。 作成年月日 2015/5/13 地位指数 22 場所 美唄市 植栽密度 2500 本/ha 氏名 林業試験場 経費試算 (円/ha) 地拵え 174,730 掻き起こし等 0 防鼠溝 0 排水溝 0 施肥 0 苗木 195,500 苗木運搬 18,000 植え付け 111,262 下刈り 234,384 倒木起こし 0 枝打ち 183,500 除伐 155,646 保育間伐 0 間伐1回目 310,601 間伐2回目 335,167 間伐3回目 0 間伐4回目 0 間伐5回目 0 間伐6回目 0 間伐7回目 0 間伐8回目 0 更新伐 0 林齢(年) 14 18 26 40 80 野ねずみ駆除関係 0 間伐前 上層高(m) 11.9 14.3 18.0 22.0 25.6 侵入防止柵関係 0 平均直径(cm) 10.9 13.9 18.5 23.5 32.7 特殊地拵(被害木整理) 0 立木本数(/ha) 2230 1550 1080 760 540 1ha当たり経費 1,718,790 材積(m3) 129 168 245 313 509 除間伐 回数(回) 1 2 3 4 0 本数(本) 680 470 320 220 本数率(%) 30 30 30 29 材積(m3) 18 24 72 89 0 5 10 15 20 25 30 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0 10 20 30 40 50 60 70 80 上 層高(m ) 立木 本数(本/ ha ) 林齢(年) 施業体系図