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I. IV 植栽・育林・保護

6.3 虫 害

1) カラマツ穿孔性害虫 被害実態

カラマツを枯らす穿孔性害虫としてカラマツヤツバキクイムシがあります。被害はたいてい風 雪害や食葉性害虫の発生、間伐後の伐倒木放置と関係します。なお、主に内樹皮を食べるため材 質にはほとんど影響しません。カミキリムシ類やゾウムシ類の幼虫は皮つき丸太に穿孔し材質を 劣化させます。林地や山土場のほか製材工場土場で発生します。

対 策

カラマツヤツバキクイムシの防除には、風雪木や伐倒木を早期搬出整理することが基本です。

搬出できないときは農薬散布等の防除を行います。生立木被害が発生した場合は、幹先端の枯損 した木、傾斜木、被圧木など樹勢の衰えた木は、被害を受けやすいので、できるだけ伐倒搬出し ます。カミキリムシ類やゾウムシ類は、卵から成虫になるまで1から2年間かかるため、丸太の 搬入から製材までの期間を短くすることで予防できます。農薬散布は材内の幼虫には効果が低い ですが、被害を受けていない丸太への散布は予防効果があります。

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2) カラマツ食葉性害虫 被害実態

カラマツ林の主な食葉性害虫は、マイマイガ、ミスジツマキリエダシャク、カラマツハラアカ ハバチ、カラマツイトヒキハマキ、カラマツツミノガ、ニホンカラマツヒラタハバチなどがあり ます。これらは数年から 10 年程度の間隔で大発生し1~2年で終息する害虫が多いですが、カラ マツハラアカハバチやニホンカラマツヒラタハバチは 10 年近く長期発生することがあります。

対 策

葉の食害が 70%を超えると成長が減退しますが、すべての葉を失っても木が枯死することは まれです。ただし、葉の食害により衰弱した木をカラマツヤツバキクイムシが加害し枯損を引き 起こすことがあります。カラマツヤツバキクイムシの被害を誘発しないために、伐倒木は早期搬 出することが重要です。

写真 I.IV.9 トドマツオオアブラムシ(左)と寄生状況(右)(写真提供 林業試験場 原秀穂氏)

3) トドマツオオアブラムシ 被害実態

トドマツでの被害は幼齢のトドマツ単純林、特に開放地に多いです。造林後2~3年内に侵入・

定着、造林後6~7年くらいが発生のピークとなり、被害は樹高が2m 前後になるまで続きます。

被害木は成長が阻害され、連年多数の寄生を受けると枯死します。二次的にトドマツがんしゅ病 を誘発し枯死するものも少なくありません。木が小さいほど枯死しやすいです。春夏に温度が高 い地域で枯死被害の危険が大きく、道北内陸部・道東内陸部・道央・道南に危険地域があります。

対 策

薬剤(エチルチオメトン粒剤・ジメトエート粒剤)を散布します。散布は6月上中旬ころまで に実施します。寄生木だけでなく全木を対象に、枝張りの範囲内に散布します。発生を予防する には、林内に帯状または小面積に造林します。

4) ツガカレハ 被害実態

トドマツにおいて、ときに大発生しますが、被害は極めてまれです。食害により成長が阻害さ

れ、食害が激しいときは枯死します。

対 策

冬季に幹にポリエチレンなどのテープを隙間なく巻くことで、春の幼虫の登攀を阻止できます。

下草より高い位置に巻き、周辺の他の樹木にも巻きます。幼虫や食害が目立つ場合、冬季にテー プ巻を行い、翌年の被害を防止します。

5) オオトラカミキリ 被害実態

トドマツ人工林での激しい被害は胆振・上川・後志・渡島・桧山地方で確認されています。人 工林被害は局所的ですが、激害林分での被害本数率は林齢 30~40 年程度で約 20~50%に達しま す。被害木は平坦地や緩斜面、特に沢沿いの林縁に多く、また、樹勢が衰えた林や手入れの遅れ た林に多いです。被害木は最小で林齢 22 年、胸高直径8cm。被害は胸高直径 14cm になると急激 に増加します。被害は幹の高さ約2~5m の範囲に多いです。被害により材質が劣化し、まれに 枯死、幹折れを引き起こします。また、被害部位から腐朽が進行します。

対 策

林分を健全に育て、被害木は除去します。枝打ちによる駆除が期待できますが、効果的な方法 は未確立です。激害が確認されている地域では、被害が発生しやすい立地環境での造林は避けた 方がよいでしょう。

●参考文献

・北海道立林業試験場.『カラマツ人工林施業の手引』.北海道立林業試験場.(2007)

・北海道立総合研究機構林業試験場.『トドマツ人工林施業の手引』.北海道立総合研究機構 林業試験場.(2014)

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