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第 54 回神奈川腎炎研究会 図 1 図 4 図 2 図 5 図 3 図 6 101

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症  例

症 例:64歳,女性 主 訴:視力低下,下肢浮腫 現病歴:2009年7月末に両下肢浮腫が出現 し,2週間で体重が10㎏増加。夜間呼吸苦を認 めるようになり8月5日近医を受診。収縮期血 圧200mmHgの高血圧,尿蛋白4+,尿潜血±, 低アルブミン血症と高コレステロール血症を認 めネフローゼ症候群と診断。利尿薬,降圧薬 (ARB,Ca拮抗薬),抗血小板薬にて加療され, 体重は13㎏減少し,血圧は130/70mmHgとなっ た。また,9月頃から両側視力の低下を自覚。 次第に増悪し,眼科にて腎性網膜症,高血圧眼 底,黄斑浮腫と診断された。2010年1月より浮 腫の増悪と体重増加を認め2月23日当院紹介受 診。受診時,血圧154/64mmHg,尿蛋白3+,尿 蛋白定量10.7g/gCr,潜血+,血清アルブミン 2.6g/dl,尿素窒素24 mg/dl,クレアチニン 1.46 mg/dlを認め,3月1日精査のため入院。 既往歴:12歳 腎疾患(詳細不明)で1年間 入院,高血圧(詳細不明) 家族歴:父-食道癌,長兄-食道癌,次兄-高 血圧,五兄-腎疾患(詳細不明) 生活歴:飲酒 なし,喫煙 なし 身体所見:身長 156 cm,体重 55.8 kg,BMI 23,体温 36.6 ℃,血圧220/84mmHg,脈拍70/ 分整,意識清明,眼瞼結膜貧血あり,眼球結膜 黄疸なし,口腔粘膜正常,肺野清,心雑音なし, 腹部異常所見なし,両下肢浮腫あり,両側視力 の低下(右0.03/左0.01) 腎生検所見:光顕所見では糸球体が26個含 まれ,9個が全節性硬化に陥っていた。 糸球体のメサンギウム領域は拡大し巣状分節 性にメサンギウム領域が類円状に拡大し細胞成 分の乏しい結節性病変を呈していた(図10)。 また,一部の糸球体毛細血管の内皮下腔は拡大 し,血漿成分の染み込みと思われる滲出性病変 が認められ,ボウマン嚢基底膜とボウマン嚢 上皮細胞との間にも同様の病変を認めた(図 11)。尿細管基底膜はびまん性に肥厚していた。 細動脈には,内膜の浮腫状肥厚を認めた(図 12)。 蛍光抗体法では,IgG,IgA,Fibrinogenが糸 球体基底膜に沿って線状の発光を示していた が,その他の免疫グロブリン,補体の発光は認 めず,κ,λも陰性だった(図13)。DFSによ るアミロイド染色は陰性だった(図14)。 電子顕微鏡所見では,メサンギウム基質の著 明な増加と糸球体基底膜の肥厚を認めたが,明 らかな高電子密度物質の沈着やアミロイド線 維,その他の線維性構造物は認めなかった。

進行性の視力低下とネフローゼ症候群を呈した

結節性糸球体硬化症の一例

古 谷 昌 子  佐 野   隆  若 新 芙 美

酒 井 健 史  鎌 田 真理子  林   みゆき

村 野 順 也  内 藤 正 吉  内 田 満美子

坂 本 尚 登  鎌 田 貢 壽         

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図1 図2 図3 図4 図5 図6

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図7 図8 図9 図10 図11 図12

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図13 尿一般 pH 5.5 比重 1.025 蛋白 (4+) 蛋白定量 9.4g /日 潜血 (1+) 糖 (1+) 尿沈渣 RBC 1-4 /HPF WBC 1-4 /HPF 円柱(硝子2+,顆粒1+,上皮 1+,脂肪1+) 尿生化学 NAG 72.4 U/L α1‐MG 62.4 mg/dl β2‐MG 977 mg/dl 動脈血液ガス分析(room air) pH 7.382 PCO2 42.5 Torr PO2 81.5 Torr HCO3 -24.7 mmol/l BE -0.4 mmol/l SO2 96.2 % 血算 WBC 7.800 /μl neut 67.9 % eosi 2.6 % lymph 25.3 % mono 3.7 % baso 0.5 % RBC 3.37×106 /μl Hb 10.1 g/dl Ht 29.8 % Plt 36.7×104 /μl 凝固 PT 10.5 sec APTT 36.3 sec Fib 767 mg/dl FDP 12.9 μg/ml Dダイマー 5.03 μg/ml 生化学 TP 5.4 g/dl Alb 2.6 g/dl T.bili 0.3 mg/dl UN 28 mg/dl Cr 1.54 mg/dl UA 5.4 mg/dl GOT 32 IU/l GPT 19 IU/l ALP 204 IU/dl LDH 389 IU/l CPK 798 IU/l Amy 70 IU/l T.Cho 544 mg/dl TG 473 mg/dl LDL-C 407 mg/dl Na 142 mEq/l K 4.7 mEq/l Cl 110 mEq/l Ca 8.4 mg/dl P 3.7 mg/dl HbA1c 4.7 % Glu 100 mg/dl 免疫 CRP 0.02 mg/dl IgG 490 mg/dl IgA 212 mg/dl IgM 119 mg/dl C3 148 mg/dl C4 61 mg/dl CH50 62 mg/dl 抗核抗体 <40 倍 抗DNA抗体 <2.0 IU/ml 抗SS-A抗体 陰性 抗SS-B抗体 陰性 抗GBM抗体 <10 EU ループスアンチコアグラント 陰性 MPO-ANCA <10 EU PR3-ANCA <10 EU 血 中 免 疫 電 気 泳 動:Acute inflammatory disorder 尿中免疫電気泳動:Bence Jones Protein 陰性 内分泌 TSH 8.55 μIU/ml FT3 1.44 pg/ml FT4 1.13 ng/dl 75gOGTT 前 83 mg/dl 60分 129 mg/dl 120分 134 mg/dl 画像・生理機能検査 胸 部XP: 心 胸 比52%, 縦 隔, 肺野に異常陰影なし 心電図:洞調律,I,aVL,V4-6 にST-T変化あり 眼底所見:左右の眼底に多発細 動脈血管瘤,静脈の硬化病変, 動脈の高度狭窄,著明な網膜浮 腫,視神経乳頭の発赤を認め, 高血圧による眼底所見に一致す る。 腹部エコー:腎腫大あり。腎 長 径 右126×52mm, 左123× 60mm。 肝・膵・脾に異常なし 入院時検査所見

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考 察

本症例では,進行性の視力低下とネフローゼ 症候群を呈し,腎生検にて糸球体に結節性硬化 病変が認められた。糸球体に結節性硬化病変を 呈する疾患としては①糖尿病性腎症②膜性増殖 性糸球体腎炎③アミロイドーシス④軽鎖沈着症 ⑤イムノタクトイド糸球体症⑥細線維性糸球体 腎炎⑦フィブロネクチン腎症⑧Ⅲ型コラーゲン 腎症⑨高安病⑩チアノーゼ性先天性心疾患⑪ Cystic fibrosis⑫特発性結節性糸球体硬化症が挙 げられる。本症例では,明らかな糖尿病歴や糖 尿病性網膜症の所見がなく,75g経口糖負荷試 験も正常であり,糖尿病性腎症は否定的と考え られた。また,低補体血症やM蛋白血症など の血清学的異常も認めず,腎生検組織のアミロ イド染色は陰性で,蛍光抗体法では,補体や軽 鎖の沈着も認めなかった。電顕にても明らかな 高電子密度物質やアミロイド線維などの線維性 構造物も認められず,特発性結節性糸球体硬化 症が考えられた。 特発性結節性糸球体硬化症の臨床的特徴をま とめた報告(文献1,2)では,60歳代の発症 が多く,高血圧や喫煙歴,高脂血症,肥満が多 く認められている。また,2007年Samihらは, 非糖尿病・喫煙者の結節性糸球体硬化症につ いて報告し,喫煙によるAGE(Advanced glyca-tion end-products)の形成や酸化ストレスの誘導, 血管新生,腎内血行動態の変化がサイトカイン の誘導や高血圧などを介して細胞外基質の増加 をもたらし結節性病変を形成するとの仮説を提 唱している(文献3)。 本例では,喫煙歴はなく,また,進行性の視 力低下と高血圧に基づく網膜病変を合併してい るという特徴があったため,結節性糸球体硬化 症と網膜病変の合併例を調べたところ,本例を 含め10例が報告がされていた。10例の平均年 齢は74歳で,男性7例,女性3例であった。網 膜病変は,高血圧性3例,微小動脈瘤3例,出 血1例で,糖尿病性と診断された症例が3例で あった。糖負荷試験は正常6例,境界型が4例 で,糖尿病歴は2例に,糖尿病の家族歴は3例 に認められ,10例中9例に高血圧を認めた。喫 煙の有無が確認出来たのは本例を含め2例のみ で,2例とも喫煙はなかった。尿蛋白は0.5~18g/ 日,平均7.4g/日と多く,血清Cr値は1.4~7.6mg/ dl,平均2.7mg/dlで,不明の1例を除いて全例 に腎機能障害を認めた。 今回,我々は進行性の視力低下を伴う特発性 結節性糸球体硬化症を経験した。特発性結節性 糸球体硬化症に合併した網膜病変の多くは高血 圧による変化であり,本症例も同様の所見で あった。本症例の網膜病変については,腎生検 で認められた細動脈病変と同様の血管病変が網 膜にも生じた可能性が考えられた。

まとめ

◦ 進行性の視力低下を伴う特発性結節性糸球体 硬化症を経験した。 ◦ 特発性結節性糸球体硬化症に合併した網膜病 変の多くは高血圧による変化であった。 ◦ 腎生検で認められた細動脈病変と同様の血管 病変が網膜にも生じた可能性が考えられた。 参考文献 1.Human Pathology;2002 2.Human Pathology;2008 3.J Am Soc Nephrol 18;2007

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討  論

古谷 症例は,64歳の女性。主訴は視力低下, 下肢浮腫です。現病歴です。2009年7月末に 両下肢浮腫が出現し,2週間で体重が10kg増 加しました。夜間呼吸苦を認めるようになり, 8月5日,近医を受診しました。収縮期血圧 200mmHgの高血圧,尿蛋白(4+),尿潜血(±), 低アルブミン血症と高コレステロール血症を認 め,ネフローゼ症候群と診断されました。利尿 薬,降圧薬,抗血小板薬にて加療され,体重は 13kg減少し,血圧は130/70mmHgとなりました。 また9月ごろから,両側視力の低下を自覚,次 第に増悪し,眼科にて腎性網膜症,高血圧眼底, 黄斑浮腫と診断されました。2010年1月より浮 腫の増悪と体重増加を認め,2月23日当院紹介 受診となりました。  受診時血圧154/64mmHg,尿蛋白(3+),尿 蛋白定量10.7g/g・クレアチニン,潜血(+), 血清アルブミン2.6g/dl,尿素窒素24mg/dl,ク レアチニン1.46mg/dlを認め,3月1日精査のた め入院されました。  既往歴です。12歳のときに,詳細不明ですが, 腎疾患で1年間入院しております。発症時期な どは不明なのですが,高血圧も認めております。 家族歴では,父が食道癌,兄弟に食道癌と高血 圧と腎疾患を認めます。生活歴では,飲酒,喫 煙共ありませんでした。  入院時身体所見です。身長は156cm,体重は 55.8kg,BMIは23でした。血圧は220/84mmHg と上昇しており,胸腹部に異常所見はありませ んでした。両下肢浮腫と両側の視力低下を認め ました。  入院時検査所見です。尿所見では,蛋白(4 +),蛋白定量1日9.4g,潜血(1+),糖(1+), 尿沈渣では,赤血球が1 ~ 4/HPF,白血球が1 ~ 4/HPF,多彩な円柱を認めました。尿生化で は,Mgとα1M,β2Mの上昇を認めました。 動脈血圧ガス分析は異常ありませんでした。血 算では,正球性の正色素性貧血を認め,凝固系 はfibrinogen,FDP,D-dimerの上昇を認めまし た。  生化学では,低蛋白,低アルブミン血症, UN28mg/dl,クレアチニン1,54mg/dlと腎機能 障害を認めました。LDH,CPKの上昇,高脂 血症を認めました。随時血糖は100でした。 HbA1Cは4.7%です。免疫ではIgG,補体の低 下などはありませんでした。抗核抗体などの自 己抗体はすべて陰性でした。血中免疫電気泳動 は急性の炎症性変化で,M蛋白血症などは認め られませんでした。尿中免疫電気泳動も異常あ りませんでした。糖負荷試験は正常型でした。  入院時胸部レントゲンと心電図です。CTRは 52%と軽度の心拡大を認めました。肺野に異常 所見は認められませんでした。心電図は,洞調 律でⅠとaVLとV4,5,6にST-T変化を認めま した。  眼底所見です。左右の眼底所見では,多発の 毛細動脈血管瘤,静脈の硬化病変,動脈の硬化・ 狭窄,著明な網膜浮腫,視神経乳頭の発赤を認 めました。これらの所見は高血圧の眼底と一致 するものでした。   エ コ ー 所 見 で す。 腎 サ イ ズ は 右 が126× 52mm,左は123×60mmと腫大傾向でした。ネ フローゼ症候群と腎機能障害精査目的で,第3 病日に腎生検を施行いたしました。  HE染色とPAS染色を示します。糸球体の mesangium領域は拡大していました。上の糸球 体の中央部分にはmesangium領域が類縁状に拡 大しており,細胞成分に乏しい結節性病変を認 めました。また,所々癒着や泡沫細胞を認めま した。ボーマン嚢壁の肥厚も認められました。  PAM染色とMasson染色を示します。結節性 病変に接して内皮下腔の拡大,血漿成分の染 み込みと考えられる滲出性病変を認めました。 ボーマン嚢基底膜とボーマン嚢上皮細胞の間に も同様の沈着物を認めました。尿細管基底膜は 瀰漫性に肥厚しておりました。  滲出性病変と結節性病変で占められた糸球体 のそばの細動脈には,内皮膜の浮腫状の肥厚が

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認められました。  蛍光抗体法です。IgGと,IgA,フィブリノ ゲンは糸球体基底膜に沿って,線状に発光して おりました。その他の免疫グロブリン,補体や, κ,λは陰性でした。  DFSによるアミロイド染色は陰性でした。  電顕です。mesangium基質は増加しており, 糸球体の基底膜の肥厚を認めました。高電子密 度物質や,アミロイド線維,その他の線維性構 造物はありませんでした。  本症例は糸球体に結節性病変を認めており, そのような病変を示すものとしては,スライド に示すようなものが挙げられます。本症例は, 糖尿病の既往歴がなくて,糖尿病性網膜症もあ りませんでした。糖負荷試験は正常だったので, 糖尿病性腎症は否定的でした。また,低補体や M蛋白血症など,血清学的異常所見もありませ んでした。腎生検のアミロイド染色も陰性でし た。蛍光抗体法では,補体や軽鎖の沈着はなく て,電顕でも高電子密度物質や線維性構造物は なくて,以上のことから,特発性結節性糸球体 硬化症と診断いたしました。  特発性結節性糸球体硬化症の23例と15例に 見られる臨床的特徴をまとめたものでは,発症 年齢は60歳代が多くて,高血圧,喫煙,高脂 血症,肥満などが多く認められました。  2007年サミュエル(?)らが,糖尿病でな い喫煙者の結節性糸球体硬化症について報告し ております。喫煙によって,AGEの形成や酸 化ストレスが誘導されて,血管新生や腎内血行 動態の変化が起こり,サイトカインの誘導や高 血圧などを介して,細胞外マトリクスが増えて, 結節性糸球体硬化症を発症するという仮説を立 てています。本症例では,喫煙歴はなくて進行 性の網膜病変と高血圧に伴うものを合併してい るという特徴を持っていました。  特発性結節性糸球体硬化症と網膜病変の合併 を調べたところ,本症例を含めて10症例があ りました。年齢は29歳から64歳,平均年齢は 74歳でした。男性は7例,女性は3例です。網 膜症は糖尿病性が3例,高血圧性が3例,微小 動脈瘤が3例,出血が1例でした。OGTTは正 常型が6例で,境界型が4例でした。糖尿病歴 は2例で認め,家族歴は3例で認めました。高 血圧は10例中9例と多く認められました。喫煙 歴は確認できたのは2例のみで,2例とも喫煙 歴はありませんでした。尿蛋白は0.5から18g, 平均7.4gと多く見られました。血清クレアチニ ンは1.4から7.6,平均2.7と不明例のほかはす べて腎機能障害を認めました。  まとめです。進行性の視力低下を伴う特発性 結節性糸球体硬化症を経験しました。特発性結 節性糸球体硬化症に合併した網膜病変の多く は,高血圧による変化でした。腎生検で認めら れた細動脈病変と同様の血管病変が,網膜にも 生じた可能性が考えられました。  本症例の診断と病態につきまして,ご教示お 願いします。 平和 ありがとうございました。全体を通して, 臨床所見,それから病理の所見を含めて,特に 臨床所見を中心にご質問がございますか。  確認なんですけれど,この人は蛋白尿はいつ からあったんですか。蛋白尿,最初に2009年 の7月のときにはすっかり悪くなって,むくん でいたんですが,その前の健康診断とかには近 くの先生にかかられていた? 病歴で蛋白尿, その他,高血圧のこととか,何か情報はありま すか。 古谷 検診はレントゲンぐらいしか受けていな くて,尿所見とか,血圧データなどは一切なく て,これになってから初めて受診されたという かたちですので,はっきりとは分からないです。 平和 ご質問はございませんか。 山口 尿検査のところで,尿糖が(1+)と書 いてありますけど,あれは随時出ていたんじゃ なくて,時々という意味ですか。 古谷 時々です。 山口 時々ですか。 古谷 はい。で,尿細管障害も認められていた ので,それに伴う腎性尿糖ではないかと考えて

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います。 平和 質問ありませんか。 重松 臨床的に,糖尿病は否定できるのです か? 完全に。 古谷 先ほども申し上げたように,血液検査な どは今まで受けていなかったので,過去がどう かと言われるとちょっと分からないのですけ れども,網膜病変なども認められていなくて, 来たときになるんですけれども,OGTTは正常 だったので,ないんじゃないかとは考えていま す。 平和 昔,太っていたということはありますか。 古谷 体重も,いろいろ質問はしているんです けれども,ちょっと記憶があいまいなところが あってしっかりとは取れないんですけれども, 体重の増減もそんなには,ここで10kg増えた 以外には,そんなに増減はなかったようです。 平和 近医に8月5日に行かれて,血圧200な んですが,そのときの拡張期血圧は幾つですか。 古谷 すみません。拡張期がちょっと分からな いんです。 平 和  そ の と き に, 悪 性 高 血 圧 あ る い は accerelated hypertensionという状態ではなかった でしょうか。 古谷 すみません。詳細が分からないんですけ ど。 平和 ほかに,ご質問,コメントありますか。 山口 そうすると,先生たちの結論は,喫煙は この方はないですよね。 古谷 喫煙はないです。 山口 そうすると,高血圧でああいう病変がで きると考えられるんですか。 古谷 ちょっとほかの理由が見当たらないの で,そこら辺がどうなのかなと考えています。 平和 実は,ご主人がすごいヘビースモーカー とか,そういうことはないですか。 古谷 ちょっと,受動喫煙歴も,申し訳ないん ですけど取れていないんです。 平和 分かりました。ほかにご質問やコメント はありませんでしょうか。なければ,病理の先 生,よろしいですかね。じゃあ,最初には,重 松先生。 重松 病理診断名としてidiopathic glomerular sclerosisという診断をつけるのは,嫌なんです よね。だから,何か原因を特定したいと思うの ですが,この症例は本当に糖尿病らしいですよ ね。本当にもう困っちゃったですね。 【 ス ラ イ ド01】 と も か く,25のglomerulusが あって,七つがglobal sclerosisになっています ね。弱拡大で見て分かるように,mesangiumの expansionは非常に強いし,強い動脈硬化があ るし,それから尿細管のbasement membraneも すごく厚くなっています。こういう変化は,み んな糖尿病に見られる変化なので,非常に解析 困難を感じるわけです。 【スライド02】まず,最初にこの浸み込み病変 です。どこかにボーマン嚢と接点を設けて,そ こから糖化蛋白とか,いろいろな浸み出し,あ るいは滲み込みになるような液性滲出物が出 てくるということです。それから,ここには foam cell化した細胞があります。 【スライド03】ここにhyaline cap様の病変,糖 尿病と言えないので,hyaline cap様の病変があ る。それで,ここは,capsular drop様の変化が あるしそこにfoam cellが入り込んでいます。 【スライド04】これはfoam cellがhyaline cap様

のところにたまっているところだと思います。 ここは少し古くなってきたcapsular drop様の変 化です。線維が増えてきています。 【スライド05】ボーマン嚢の下に入る浸み込み 病変というのは,これはすごいもので,これの 滲み込みはずっと尿管極から尿細管のところま で入っていくわけです。そして,ここには動脈 がありますけれども,動脈にも浸み込み病変が 中膜に強く起こっています。 【スライド06】これは,ボーマン嚢の下に浸み 込んだところに線維が増えてくる。一応,ここ ままだと,fibrous crescentというふうなかたち になるんでしょう。線維が増えて,一応はここ で病変としては進行が停止しているんだろうと

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思います。 【スライド07】このボーマン嚢の下の浸み込 み病変というのは,ずっと尿細管のproximal tubuleのところへ進んでいっています。糖尿 病のときに,基底膜が異常に厚くなる。例え ば,恐らくこういうところは,浸み込んでいっ たものが一緒に固化して,hyalinosis様になっ て,異常な厚い尿細管の基底膜になる,そうい う構図が想像されます。ここではfoam cellが, glomerular tip lesionみたいなかたちで形成され ています。 【スライド08】ここもものすごいのです。foamy になった細胞がついていて,そしてこれは尿管 極から外に広がっています。ここにご覧のよう に,尿細管の上皮を上に押し上げて,基底膜と の間にここに浸み込み病変が及んでいるという ことです。 【スライド09】急性の血管再構築に向う変化が やっぱりこの症例でも見られまして,mesan-giolysisが,こういうふうな結節病変のほかに, また出てきております。 【スライド10】この血管が,ここら辺はちょっ と血管ができているようですけれども,血管再 構築が壊れてしまったところは,また元のよう な浸み込み病変になっております。ここでは, foam cellが入り込んでいます。 【スライド11】こんなふうに結節病変がどんど んできてきます。そして再構築血管は一部で きるんだけど,結局それが使えなくて,mesan-giumの内部のほうに押し込められて,また外 側に血管再構築を試みるという,その悪性サイ クルというか,病変が進行しています。ここに mesangiolysisを起こしたところに,再構築血管 が出ているようなところがちょっと出ておりま す。 【スライド12】最終的にはhyalinosisみたいなか たちで,固まってしまう場合もありますけれど も,この症例では,まだフレッシュな浸み込み で病変がどうも進行しているということです。 そういうことで,この患者さんの糸球体病変が, ある程度進行性であって,喫煙と高血圧の組み 合わせがあると,先ほど演者が出された図の1 番左に喫煙があって,途中で高血圧が加わって, glomerulus sclerosisを起こしてくるという構図 ができあがるんです。この人の場合には長年の 強い高血圧ということで,それだけでこの結節 病変が本当にできたかどうか。  この方は68歳のお年になるまで,あまりちゃ んとした検査を受けておられなかったので,原 因をidiopathicというふうにしてしまうことに は,なかなか難しいところがあります。けれど も,何とかしろと言われれば,やはり演者のおっ しゃるようにidiopathic glomerular sclerosisとい うふうにせざるを得ないと思いました。 平和 ありがとうございました。山口先生,お 願いします。 山口 いつも,前の回も何か似たような症例で, 重松先生と逆に,僕はもう糖尿病性腎症しか考 えられないと。その原因は臨床で探していただ くという,私の立場はそういうことになってし まいます。喫煙がないということで,腎性網膜 症というのが,糖尿病性の網膜症と区別ができ るのかという問題もあるようには思います。 【スライド01】やはり,弱拡で見て,先ほどあ りましたように,糖尿病の病変のすべてが,こ の組織にはある。典型的な例なんです。ですか ら,学生に見せても全然問題がない,糸球体硬 化,糸球体が大きくなって,それでcapsularに 肥厚して,それから,尿細管極のところから染 み込みが広がって,それから細動脈硬化症が非 常に顕著で,一部はこういうようにlipid,脂質 の成分が動脈壁内に沈着があるというようなこ とですね。それから尿細管間質,尿細管系の萎 縮傾向もだいぶ広がってきております。 【スライド02】ちょっと,これは弱拡で,ちょ うど髄放線のところに少し炎症があるというよ うなことです。糸球体がこの辺に存在している わけで,ちょっと普段見られないような尿細管 の染み込み病変が髄放線に沿って,こういうと ころで,尿細管上皮が管腔がなくなって,周り

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に白く浮き出ております。それで,これは,ど うも染み込み病変なんですね,髄放線に沿って。 ですから,尿細管極から出て,近位尿細管から 近位尿細管の局部まで,染み込み病変が広がっ ているという,普段ちょっと私も初めての経験 です。そこまでinsulationが広がった病変とい うのは,あまり見なかったです。 【スライド03】PASで見ますと,細動脈の硝子 化は全周性で,efferenceのほうにまで及んでい ます。やはり,nodularな結節性の病変。それ から,idiopathic nodular glomerulus sclerosisの場 合は,糸球体の病変が比較的uniformであると いう特徴があります。ですから糖尿病は1個1 個の糸球体がみんなバリエーションがあって, みんな違う。ですから,こういう硬化して,あ るいはinsulativeな滲出性の変化が強いもの, あるいはほとんどdiffuse regionだけで,あまり nodular regionのない糸球体,そういうように 非常にバリエーションがあるというのが,idio-pathic nodular glomerulus sclerosisと,糖尿病性 のmesangial nodulができてくる場合の違いがあ るというようなことが言われています。 【スライド04】それで,先ほどちょっとこうい うnodular regionがありますが,私が注目した のはここです。何か抜けてしまっているところ があるんです。これは,ちょうど集合管がここ にありますので,髄放線の尿細管上皮,あるい は外側に何かPASが抜けてしまっているんで, 何だろうというふうに最初思っていました。 【スライド05】Massonで見ますと,insulativeな ものは,こういうように見えているんです。白っ ぽいざらざらした感じ。硝子物とはちょっと違 うんです。それで,これが尿細管の上皮がずっ とliningしているんです。実は,本来の基底膜 の外側にあります。ここにややブルーでざらざ らしたものがたまっているんです。これが,実 はここから染み込んだものが,どんどん尿細管 の基底膜の周囲に広がって,髄放線部の近位尿 細管の恐らくstraight portionにまで及んだ病変 だろうというふうに私は思っております。こう いうhyaline cap様の病変ですね。 【スライド06】あちこちから染み込みがあって, 細動脈の硝子様の変化も際立っております。 【スライド07】これです。何だろうと思ったん です,最初は,これ。そうしたら,尿細管上皮 がちょっと残っています。後で銀が出ますが, ここに本来の基底膜が,TBMが残っています。 それで,このざらざらしたものが,恐らく染み 込んだものがどんどん。ですから,最終的には, もちろん tubularに,こちらはたまっている蛋 白が間質に出てしまっている病変であります。 【スライド08】銀で見ますと,こんな状態です。 本来の尿細管上皮がここへ残って,新生の基底 TBMができて,外側にあるのが既存のTBMで す。ですから,内腔が非常に狭小化している病 変です。ここも似たようなものかもしれませ ん。こういうところもそうだろうと思います。 ですから,それが髄放線に沿って,あちこちに insulationが非常に顕著に起きていたというこ とになると思います。 【スライド09】IgGがわずかに出ているかなと いうことだろうと思います。IgAもちょっと出 ているんです。linearパターンです。

【 ス ラ イ ド10】mesangial noduleで, 特 殊large

chainとか何かの沈着ではないように思います。 やはりGBMは瀰漫性に肥厚していまして,先 ほどのように内皮下の拡大は,そんなには顕著 じゃないようです。所々内腔が消失してしまっ ているわけですが,内皮下腔の拡大は前の症例 ではないように思います。 【スライド11】強拡大になっているのは,こ れ は 有 名 なdiabeticなfibrinolysis,mesangium matrixと増えてきますと,こういう線維状のも のが異常に増えてくるわけで,いわゆるfibri-nolysisだろうというふうに思います。特殊な filamentではないように思います。  そういうようなことで,もうadvanceの糖尿 病性腎症としか考えられないということで,臨 床的に精査していただくということしか言えま せん。以上です。

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平和 ありがとうございました。かなり厳しい コメントで,糖尿病性の病変が,典型的なもの があるんじゃないかと。ただ,当例は染み込み 病変が非常に顕著で珍しいということで,非常 に貴重な症例ではないかと思いました。  これに関してコメント,あるいはご質問ござ いませんでしょうか。どうぞ。 長浜 横浜市大の病理の長浜と申します。臨床 の先生にお聞きしたいのですが,この方は,ご 兄弟に腎不全があったんですけど,先生が調べ た範囲で,家族性の結節性糸球体硬化症という のは報告がありましたか。 古谷 調べた中ではなかったように思うんです けども,ちょっと家族性に注目して調べていな かったので。 長浜 ご家族に食道癌の方がいましたよね。そ れで,抗がん剤を使って,蛋白尿が大量に出て きたとか。 古谷 すみません。ご家族の治療歴とかまでは, 調べていないです。 長浜 ありがとうございました。何か脂質の代 謝異常とかがは,家族性にあるんだったら面白 いなと思ったんですが,遺伝学的な異常があれ ば面白いなと思いました。ありがとうございま した。 平和 ありがとうございました。ほかのご質問 やコメントはありませんか。鎌田先生,いいで すか。 鎌田 北里の鎌田です。  腎組織はちょっと見には確かに糖尿病なんで すけど,糖尿病の臨床症候が全く得られない。 わたしの外来にお嬢さんも一緒に来ています が,ほっそりした方で,全然太っていません。 家族性の糖尿病が考えられないような状況で, 困った状態です。 平和 難しいですね。ほかにご質問やコメント はありませんか。よろしいですか。  先生ありがとうございました。 古谷 ありがとうございました。

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