摂食エネルギー調節による腹腔内脂肪量の変化と骨格筋特性の適応との関連性 [ PDF
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(2) により異なる。この点を考慮し、ヒトの研究で用いられ. た筋組織はすぐに液体窒素で凍結し、 分析まで-80℃で保. るニードルバイオプシー法ではなく、動物実験で用いら. 存した。切り口はステンレススチール製クリップで閉め. れるオープンバイオプシー法を用いることとした。この. られ、外側広筋に 2.5mg/kg のペニシリンを筋注射した。. 方法は同じ筋の同一部位の組織を採取でき、方法論的に. バイオプシー後の 2 週間は回復期とし、普通餌(成分は. は、より精密的である。また、身体活動は骨格筋を使い、. 12.9%脂肪、26.6%蛋白質、60.5%炭水化物、総エネルギー. エネルギーを消費し、骨格筋の酵素活性にかなり影響す. は 360kcal/100g)を与えた。その後、ラットに高脂肪食. ることから、もう一つの重要な交絡要因となっている。. (40%脂肪)を 5 週間負荷した。高脂肪食は普通餌にラ. 一般的に、ヒトに比べ、せまいケージで飼われる動物の. ードを加え、成分は 39.7%脂肪、18.5%蛋白質、41.9%炭. 身体活動量はコントロールしやすいと考えられる。その. 水化物で、総エネルギーは 439kcal/100g であった。餌と. 他、摂食量に大きい差がないことも重要である。骨格筋. 水とも自由摂取であった。体重と摂食量は 2 日に一回測. 代謝についての検討には、同じレベルのエネルギー摂取. 定した。. という前提は不可欠である。以上のことを考え、本研究. 5 週間の高脂肪食負荷後、12 時間の絶食をさせた体重. では方法論的により精密なプロトコルを実施した。小型. を測定した。その後、50mg/kg のペントバルビタールナ. ケージに 1 匹ずつ飼われたラットを用い、食による体脂. トリウム腹膜内注射で麻酔した。左下肢の腓腹筋、ヒラ. 肪蓄積に対する骨格筋の適応(特に筋酵素活性と筋線維. メ筋、長指伸筋および腹腔内脂肪(腸間膜脂肪、精巣周. 組成)を調べた。体脂肪指標は体重指標よりも重要であ. 囲脂肪、腎臓周囲脂肪)を摘出した。得られた各筋組織. るため、先行研究で用いられた体重変化量の分類基準の. と腹腔内脂肪の重量を測定した。. 代わりに、本研究では腹腔内脂肪量を分類基準として採. 高脂肪食負荷の前後に、同一個体の腓腹筋表層部から. 用した。 比較される介入群の間に摂食量の差はなかった。. 採取した筋組織において、先行研究で確定された方法に. 筋組織は同一個体の介入前後に行われたオープンバイオ. 従い、hexokinase (HK) 、β-HAD と CS の活性を測った。. プシー法で同じ筋の反対脚の同じ部位から採取されたた. 測定は温度調整可能の 6 連セルホルダー付き UV/Vis 分光. め、組織の比較可能性は保証されている。本研究の目的. 測光器(日本分光 JAS V-530)を用い、30℃で行った。. は、バイアスの少ないプロトコルを用いて、摂食変化に. 測定の変動係数は同一標本での反復測定により算出した. よる腹腔内脂肪の蓄積および減少傾向と骨格筋特性との. ところ、HK は 1.8%、β-HAD は 1.2%、CS は 1.7%であっ. 関連性を検討することである。. た。. 課題 1. 高脂肪食負荷後の腓腹筋の深層部、ヒラメ筋および長. 短期間(5 週間)の高脂肪食による腹腔内脂肪の蓄積. 指伸筋を用いて、ミオシン ATPase の染色度により、Suwa. 傾向と骨格筋の代謝特性、組織化学的特性との関連性を. らの方法で筋線維をタイプ I、IIA、IIX、IIB と IIC に分. 調べること。. 類し、筋線維組成を算出した。腓腹筋の深層部で分析に. 課題 2. 用いた筋線維数は 500 本以上であった。ヒラメ筋と長指. 短期間(4 週間)の食事制限による腹腔内脂肪の減少 傾向と血清レプチンおよび骨格筋の代謝適応との関連性 を調べること。. 伸筋では横断切片にあるすべての筋線維を数えた。 筋毛細血管も ATPase 染色法で染色した。各筋横断切 片を室温の環境で、4%ホルムアルデヒドを含む 0.1M リ ン酸バッファー(pH7.4)で処理した後、pH10.3 のプレ. 2.方法. インキュベーションを行った。その後、筋線維タイプ分. 課題1. 類と同じインキュベーションで処理した。. 被検動物としては、 Wistar 系 10 週齢雄性ラット (n=24). 統計解析:腹腔内脂肪量(腸間膜、精巣周辺、腎臓周. を用いた。飼育室は 12 時間毎の明暗サイクルで、室温は. 辺)に基づき、腹腔内脂肪が多かったラット. 20℃に設定された。ラットは小型ケージに 1 匹ずつ飼育. ( obesity-prone, OP, n=12 ) と 少 な か っ た ラ ッ ト. された。. (obesity-resistant, OR, n=12)の 2 群に分けた。すべ. 実験の手順:1 週間の予備飼育後、ラットの体重を量. てのデータは平均値±標準誤差で表示した。体重、骨格. り、50mg/kg のペントバルビタールナトリウム腹腔内注. 筋酵素活性および酵素活性の比の変化量は二元配置分散. 射で麻酔した。次に、右下肢の外側部を除毛し、70%のエ. 分析により解析した。有意差が認められた場合、Fisher. タノールで消毒した。カミソリで皮膚を 1cm ほど開き、. の PLSD 分析を行った。 体重増加量、 総エネルギー摂取量、. 腓腹筋表層部から約 100mg の筋組織を採取した。得られ. 筋重量、腹腔内脂肪量、腹腔内脂肪量/体重比、筋酵素活.
(3) 性の変化量、筋線維組成、毛細血管インデックスの比較. 群及び中間群(Medium 群, n=10)に群分した。腹腔内脂. には対応のないt-検定を用いた。 最終体重と腹腔内脂肪. 肪量が明らかに異なる MF 群、 LF 群と CL 群の 3 群の間に、. との関係は相関分析を用いて相関係数を計算した。全て. 体重、体重減少量、腹腔内脂肪、腹腔内脂肪/体重比、レ. のデータ解析は Statview5.0(SAS Institute, Cary, NC). プチン、レプチン変化量、骨格筋酵素活性、骨格筋酵素. で行い、統計の有意水準は 5%未満とした。. 活性変化量について、 一元配置分散分析を用い解析した。. 課題 2. 有意差が認められた場合、Tukey-Kramer の Post-hoc テ. 被検動物は Wistar 系 15 週齢雄性ラット(n=31)であ. ストを行った。 腹腔内脂肪の Medium 群のデータは食事制. った。飼育室は 12 時間毎の明暗サイクルで、室温は 20℃. 限群内の介入前後の比較(対応ある t-検定)に用いられ. に設定された。ラットは小型ケージに 1 匹ずつ飼育され. た。 相関分析は腹腔内脂肪の Medium 群を含むすべてのラ. た。. ットで行った。食事制限開始時の相関分析にはすべての. 実験の流れ:1 週間の予備飼育後、ラットの体重を量. ラットのデータを用いた。介入後の相関分析は食事制限. り、50mg/kg のペントバルビタールナトリウム腹腔内注. 群と CL で別々に行った。 本実験のすべてのデータは平均. 射で麻酔した。尾部の先端を切断し、約 4ml の血液を採. 値±標準誤差の形で表示した。データ解析は. 集し、圧迫止血した。右下肢の外側部を除毛し、70%のエ. Statview5.0(SAS Institute, Cary, NC)を用い、統計. タノールで消毒した。カミソリで皮膚を 1cm ほど開き、. 的な有意水準は 5%未満とした。. 腓腹筋表層部から約 100mg の筋組織を採取した。得られ た筋組織はすぐに液体窒素で凍結し、 分析まで-80℃で保. 3.結果. 存した。 切り口はステンレススチール製クリップで閉め、. 課題 1. 外側広筋に 2.5mg/kg のペニシリンを筋注射した。 バイオ. 高脂肪食負荷後、OP ラットは OR ラットより有意に腹. プシー後の 2 週間は回復期とし、普通餌(成分は 12.9%. 腔内脂肪が多く、体重が重いが、2 群の総エネルギー摂. 脂肪、26.6%蛋白質、60.5%炭水化物、総エネルギーは. 取量には差がなかった。高脂肪食負荷後、OP の骨格筋β. 3.6kcal/g)を与えた。その後、24 匹のラットにベース. -HAD と CS 活性が有意に上がった(図 1) 。OR では同じ結. ライン摂食量の 60%の食事制限(18g/d, 64.8kcal/d)を. 果が得られなかった。OP のβ-HAD 活性の変化量は OR よ. 4 週間負荷した。 残りの 7 匹のラットはコントロール (CL). り有意に大きかった(図 2) 。脂質代謝の割合を表示する. 群とし、自由摂食させた。水の摂取は 2 群とも自由であ. β-HAD/CS は OP のみに増えた。しかし、骨格筋腺維組成. った。体重は週 1 回測定し、記録した。4 週間の食事制. と毛細血管指標には有意差が認められなかった。. 限負荷後、12 時間の絶食をさせ、50mg/kg のペントバル ビタールナトリウム腹腔内注射で麻酔した。尾部の先端 を切断し、約 4ml の血液を採集した。バイオプシーの対 称部位、すなわち左下肢の腓腹筋表層部の筋組織および 腹腔内脂肪(腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪、腎臓周囲脂肪) を採取した。得られた筋組織と腹腔内脂肪はそれぞれの 重量を測り、記録した。 実験前後に採取された血液サンプルから、レプチンは Rat Leptin RIA キ ッ ト ( Linco Research Inc., St. Charles, MO, USA) 、血糖は YSI 2300STAT 血糖分析器、 遊離トリヨードサイロニン(FT3)は Advia Centaur 測定. 図 1.高脂肪負荷前後の酵素(HK、β-HAD、CS)活性。. システム、遊離脂肪酸は Bio Majesty JCA-BM1650 測定器. *は同じ群の高脂肪食負荷前との有意差 (p<0.05) を示す。. により分析した。 介入前後に、同一個体の腓腹筋表層部から採取した筋. 課題 2. 組織で、HK、β-HAD と CS の活性を測った。測定方法は. 介入によって、制限群の腹腔内脂肪量は普通食群に対し. 課題 1 と同じであった(63-65) 。. て有意に低値を示した。また、LF 群と MF 群の腹腔内脂. データの解析:腹腔内脂肪量(腸間膜、精巣周辺、腎臓. 肪量にも有意差が観察された。介入前の骨格筋酵素活性. 周辺)に基づき、食事制限ラットを腹腔内脂肪が多かっ. 及び血清レプチン濃度は LF、MF、CL 群の間に有意差が認. た群(MF 群, n=7)と少なかった群(LF 群, n=7)の 2. められなかった(図 3) 。しかし、レプチン濃度とβ-HAD.
(4) ギー過剰と不足により、実験動物の骨格筋酸化系酵素 活性が腹腔内脂肪量の変化とともにパラレルに適応す ることが本研究のデータから明らかとなった。エネル ギー摂取の過剰もしくは不足による腹腔内脂肪が多く 蓄積もしくは減少したラットは骨格筋酵素活性の変化 も大きかった。骨格筋酵素活性におけるこの適応の違 いは内臓脂肪型肥満あるいは減量傾向をもつ個体の代 謝特徴かもしれない。の現象はレプチンの作用で説明 できる。課題 2 で観察された介入後レプチンと骨格筋 図 2.高脂肪負荷による筋酵素(HK、β-HAD、CS)活性. 酸化系酵素活性とのパラレルな変化およびレプチンと. の変化量。 *はOP 群とOR 群との有意差 (p<0.05) を示す 。. 腹腔内脂肪、レプチンと骨格筋酸化系酵素活性との有 意な正相関はレプチン関与の仮説を支持している。レ. (図 4A) 、CS 活性との間に正相関、一方、HK/β-HAD と. プチンのこの脂肪蓄積への抑制的な作用は生体のエネ. の間に負の相関が認められた。 介入後、 LF 群の HK、 β-HAD、. ルギーバランスを維持しようとするポジティブの作用. CS 活性及び血清レプチン濃度は CL 群と比べて有意に低. を果たす。本研究のデータはレプチンと骨格筋酵素活. かった(図 3) 。食事制限ラット(n=21)において、腹腔. 性との関連性についてのはじめての報告である。. 内脂肪量及び血清レプチン濃度とβ-HAD(図 4B) 、CS 活. ヒトの研究でも、血中レプチンレベルと骨格筋酸化. 性、β-HAD/CS との間に有意な正相関が認められた。更. 系酵素活性は体重および体脂肪の変化とパラレルに適. に、β-HAD 活性とレプチン濃度の変化量の間にも有意な. 応することが報告されている。したがって、本研究で. 相関が認められた(図 4C) 。. 見られた現象はヒトでも起こると考えられる。. 4.考察 課題 1 のデータから、骨格筋線維組成および毛細血管 形態が肥満傾向の規定要因である仮説は否定された。短 期間の HFD 介入による腹腔内脂肪量の多かったラット と少なかったラットの筋線維組成の違いは 3 種類の骨 格筋で認められなかった。肥満者で見られた高いタイプ II 線維の割合は肥満傾向の規定要因というより、むし ろ肥満とともに生じた変化の結果かもしれない。 エネルギー摂取量変化の初期段階において、エネル. 図 3.CL 群、MF 群、LF 群の介入前後の骨格筋酵素活性 *. は食事制限後の CL 群との有意差(p<0.05)を示す。. 図 4.A 介入前全てのラットのレプチンと骨格筋β-HAD 活性との相関(n=28);B 介入後食事制限ラットのレプチンと 骨格筋β-HAD 活性との相関(n=24);B 食事制限ラットのレプチン及び骨格筋β-HAD 活性の変化量との相関(n=21).
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