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西山学報 33 (19850330) 01日下 俊文「法華経における方便思想」

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(1)

NII-Electronic Library Service

便

  目

 

一 、 は じ め に 二 、

種 な る

便

の 意 義 三 『 法 華・

』 の 方 便 思 想 の

色 四 、 譬

に み ら れ る 方 便 思 想 の

色 五 、 方 便 品 六 、 ま と め 一

 

 

 

 

  初 期 仏 教 時 代 に は 思 想 判 断 の 範 疇 が 「 真 と 妄 」 と で 考 え ら れ て お り 真 実 か 非

か ( ホ ン ト か ウ ソ か ) で

理 さ れ て き た よ う で あ る 。 し か る に

時 代 に な る と 真 実 と

な ら ざ る も の と い う 二 つ の 判

の ほ か に 、

実 で も な い が 虚 妄 で も な い と い う 権 仮 、 方 便 の 判 断 が

り 入 れ ら れ て き た 。 先 に 発 表 し た 『 小 品 般

』 や 『 大 品 般 若 』 に 見 ら れ る 方 便 思 想 に は 分 類 す れ ば い ろ い ろ の

の が 見 ら れ る が 、 そ の 中 心 は 化 他

便 、 施 造 方 便

巧 方 便       法 華 経 に お け る 方 便 思 想 一

1

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(2)

      西   山 学 報 と い う が 如 き

便

で 、 そ れ は

に 入 る た め の 手 段 、 「 真

と 区 別 さ れ な が ら 、 真 実 へ 向 っ て 進 も う と す る 意 志 を 持 ち 且 つ 動 き 出

手 段 ・ 施 設 ・

法 で あ ・ た ・ し か る に 『 大 智 度 論 』 に な る と 「

便 」 と い う が 如 き 真 実 即 方 便 の 思 想

み ら れ る の で あ る 。 さ ら に 『

経 』 で は

便

を も っ て 真 実 以 上 の も の と す る

便 の 思 想 が 強 調 さ れ て い る の で あ る 。 そ こ で 『 法 華 経 』 に 見 ら れ る

便 の 用 語 が ど の よ う に 用 い ら れ て い る か を 検 討 す る と 、 鳩

羅 什 訳 『 妙

蓮 華 経 』 に は 百

回 の 方 便 の 用 例 が あ っ て 、 種 種 な る 意 義 に 用 い ら れ て い る 。 ま ず こ れ ら を 『 小 品

若 』

 

『 大 品

』   『 大 智 度 論 』 の 分 類 と 比 較 し て

不 す る と 次 の 如 く で あ る 。 − 権

 

 

 

便

2

 

 

 

便

3

 

他 方

4

前 三 に 通 ず る 方 便

5

 

仮   方   便

6

大 品 独 自 の 方 便

7

智 度 論 独 自 の 方 便

8

法 華 経 独 自 の 方 便 合 計 小 品 般 若 三 九 八 七 十 六 』 一 ゴ 七 三 大 品 般 若 五 九 五 九 五 王 四 七 十

1

五 :五 二 四 〇 大 智 度 論 六 五 四.四 一訊翻 一 ノ 丶 _ 六 1 三 六 八 二 四 三 二 法 華 経 ○ ○ 五 六 亠 ノ丶 四

iO

− 」 四 三 一 一 〇   こ の 表 で 見 ら れ る よ う に 『 法 華 経 』 に は 、

 

『 小 品

』 で 多 く の 用 例 が み ら れ た 権 巧 方 便 や 『 大 品 般 若 』 や 『 大 智 度 論 』 で

く の 用 例 の あ る 施 造 方 便 虚 仮 方 便 な ど は 見 ら れ な い の で あ る 。 こ の 小 論 で は 『 小 品 般 若 』 や 『 大 品

 

『 大 智

論 』 に み ら れ た 用 例 に も 注 意 を 払 い な が ら 『 法

経 』 の 方 便 思 想 の 検 討 を す す め た い と 思 う 。

(3)

NII-Electronic Library Service 二  

な る

便

  『 法 華 経 』 は 周 知 の よ う に

後 二 分 さ れ て 、 そ の

は 第 二 方 便 品 を 中 心 と す る 一

思 想 が 説 か れ て い る 。 こ れ は 三 乗 を 開 い て 、 一 乗 に

入 す る と い う 。 い わ ゆ る 迹 門 の 開 三 顕 一 で あ り 、 後

は 第

六 如 来 寿 量 品 を 中 心 と し て 仏 の 寿

の 無 量 を 説 き 明 か す い わ ゆ る 本 門 の 開

で あ る 。 ま た こ れ ら の 叙 説 に お い て 方 便 の 用 語 が 用 い ら れ て い て 、

便 は 『 法

経 』 に お い て は 重 要 な 用 語 と な っ て い る 。 そ し て 「 開 三 顕 一 も 開 迹 顕 本 も 、 す べ て

便 と い                                             う 思 想 に よ っ て そ の 真 理

が 基 礎 づ け ら れ て い る 」 の で あ る 。   ま ず 『

経 』 に み ら れ る 方 便 の 用 例 に 添 っ て そ の 意 義 を み て ゆ き た い 。

 

『 法 華 経 』 に は 『 小 品

』 や 『 大 品 般 若 』 な ど で 見 ら れ た 、

薩 が 作 仏 す る ま で よ く

る と こ ろ の 方

便

、 二 乗 を 取 る こ と な く 作 仏 に 至 る ま で 護 る と こ ろ の 方

便

巧 方 便 ) や 、 空 観 と 密 接 に

連 し て

い ら れ る 方 便 ( 施

方 便 ) 、

 

悪 魔 が 用 い る

便

( 虚 仮 の 方 便 ) な ど は 見 ら れ な い の で あ る 。 一

3

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

 

1

 

経 』 の 中 で

い ら れ る 方 便 の 用 例 中 、

に 最 も

い も の は 化 他 方 便 で あ る 。 即 ち こ れ は 仏 が 衆 生 を さ と り へ

く て だ て と し て の 方 便 利 益 衆 生 の た め に

い ら れ る 方

便

で あ る 。

二 方 便 品 に は 、   一 切 の

の 如 来 、 無 量 の

便 を 以 っ て 、 諸 の 衆

脱 し て 、 仏 の 無 漏 智 に 入 れ た ま は ん 。

し 法 を 聞 く こ と 有             ひ と   ら ん

は 、 一 り と し て 成 仏 せ ず と い う こ と 無 け ん 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      (

正 九 、 九 上 ) と い い 、 ま た

草 喩 品 に は 、  

来 は

法 の 王 な り

し 所 説 有 る は

虚 し か ら

一 切 の

に 於 い て 、 智 の

便 を 以 っ て

を 演 説 す 。 其       法 華 経 に お け る 方 便 思 想

(4)

      西   山 学 報   の

説 の 法 は 、 皆 悉 く 一 切 智 地 に 到 ら し む 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 九 、 十 九 上 ) と い う 。 こ れ ら の 例 の 如 く 仏 の 化 導 の 方 便 が 説 か れ て 、 そ の

便 に よ っ て 衆 生 は こ と ご と く 仏 の 智 慧 に 到 る と い う 。                                                   す な わ ち 仏 は 「

便 を 以 て 、 汝 を 引 い て 仏 慧 に

か し む 」 と い う の で あ る 。 ま た

五 薬 草 喩

に は 次 の よ う に い う 。  

種 種 の

喩 を 以 て 、 仏 道 を 開 示 す 。 是 れ 我 が

便 な り 。 諸 仏

然 な り 。

 

 

 

 

( 大 正 九 二 〇 中 ) と い う 。 す な わ ち 化 他

便 は 、 仏 が い ろ い ろ な 因

喩 を 用 い て 仏 道 を 説 き 、 人 び と を

便 で あ っ て 、 こ の 方 便 に よ っ て 「

を し て 発 心 せ し め 、 漸 漸 に

し て 、 仏 道 に 入 ら し め 」 る の で あ る 。   ( 五

六 回 )  

2

 

に 権 巧 方 便 施 造 方 便 、

便 の 三 義 に 通 じ 、 い ず れ の 義 に も と れ る 方 便 の 用 例 が み ら れ る 。

九 授 学 無 学 人 記 品 に は 、   世

は 甚 だ 希 有 な り 我 ( 阿 難 ) を し て 過 去 を 念 は し む 。 無 量 の 諸 仏 の

日 の 所 聞 の 如 し 。 我 今 復 疑 い 無 く   し て 、 仏 道 に 安 住 し ぬ 。 方 便 を も っ て 侍 者 と

っ て 、 諸 仏 の 法 を 護 持 せ ん 。

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 九 、 三 〇 上 ) と い う 。 こ こ に み ら れ る 方 便 は 、 先 の 三 義 の い つ れ の 義 に も 通 ず る 方 便 で あ る と み て よ い と 思 う 。

 

( 六 回 )  

3

 

に 方 便 の は た ら き に 、 衆 生 の 心 を 知 る は た ら き の あ る こ と が 説 か れ て い る 。 第 七 化

喩 品 に は 、   比 丘 、 当 に

る べ し 。 如 来 の 方 便 は 深 く 衆 生 の 性 に 入 る 。 其 の 小 法 を 志 楽 し 、 深 く 五 欲 に

す る を 知 っ て 、 是 れ   等 の 為 の 故 に 涅 槃 を 説 く 。 是 の 人 若 し 聞 か ば 、

便 ち 信 受 す 。  

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

  ( 大 正 九 、 二 五 下 ) と い う 。 如 来 の こ の

便 の は た ら き に は 、 人 び と の 性 質 や

す る と こ ろ を 知 っ て 、 ま た 五

着 す る こ と を 知 っ て 、 こ れ ら の 入 び と を 利 益 せ ん が た め に て だ て を 用 い 、 浬 槃 を 説 く と い う 。 つ ま り 方 便 に 人 び と の 心 を 知 る は た ら き の あ る こ と が 説 か れ て い る 。 仏 の こ の は た ら き に よ っ て 適 切 な 手 だ て が 企 て ら れ る の で あ る 。

 

( 一 回 )

(5)

NII-Electronic Library Service  

4

 

に 方 便 に 神 通

の は た ら き の あ る こ と が 説 か れ て い る 。 第 七 化 城 喩

に は 、   方 便 力 を 以 て 、 険 道 の

に 於 い て 、 三 百 由 旬 を 過 ぎ て 、 一 の 城 を 化 作 す 。

 

 

 

 

 

 

 

 

正 九 、 二 六 上 ) と い う 。 化

の 譬 喩 に 説 か れ て い る こ の

便 の 義 は

通 の は た ら き を. 爪 し て い る が

 

『 大 品 般

』 に も こ の 用 例 は み ら れ た ・ す な わ ち 菩 薩 は 「 方 便

} 用 い て ・ 神

を 生 ず

い ・ て

の 神 通 の は た ら き が 無 け れ ば 、 衆                                         生 を 利 益 す る こ と が 出 来 な い と い う の で あ る 。 ま た 菩 薩 の 種 種 の 身 に 変 化 す る 方 便 が み ら れ る 。 こ れ も 同 じ く 『 大 品

』 に も み ら れ た 。 第 二 五

門 品 に は 観 世 音 菩 薩 が 「 方 便 之 力 」 を も っ て 、 仏 身 、 辟 支 仏 や

女 等 の 三 十 三 身 に

化 す る こ と が 説 か れ て 、 観 世 音 菩 薩 は 観 世 音 菩 薩 を 一 心 に 念 ず る 人 ぴ と に 応 え て 、 世 間 の

悩 を 救 う と い う 。

二 五 普 門 品 に は 次 の よ う に い う 。   衆 生 困 厄 を 被 っ て 、 無 量 の 苦 身 を 逼 め ん に 、 観

の 妙 智 力 能 く 世 間 の 苦 を 救 は ん 。 神 通 力 を

足 し 、 広 く

の   方 便 を

し て 、 十 方 の

の 国 土 に 、 刹 と し て 身 を 現 ぜ ざ る こ と 無 し 。

 

 

 

 

 

 

 

   

 

  ( 大 正 九 五 八 上 ) と い っ て 、

世 音 菩 薩 は 智 の 方 便 を

し て 、 十 方 の

土 に 身 を 現 じ て 、 諸 の

を 救 う こ と が 説 か れ て い る 。   ま た

に 述 べ た 「 化

一 城 」 の

便

に つ い て は

の 「

巧 な る 方 便 」 で 数 え た い と 思 う 。

 

( 四 回 ) 一

5

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

 

』 の

便

 

5

  い ま 方 便 に 神 通 力 の は た ら き の あ る と こ ろ を

た が 、 こ れ は 『 大 品 般

』 に も 見 ら れ る も の で あ っ た 。 と こ ろ が 『 法

経 』 に な る と 方 便 は

や 智 慧 力 よ り も 重 視 さ れ て く る の で あ る 。 そ の 説 示 を み る と 第 三 譬 喩 品 に は 、  

し 我

力 及 び 智

力 を 以 て 、 方 便 を 捨 て て 、

の 衆 生 の 為 に 、 如 来 の

見 、 力 、 無 所 畏 を

め ば 、 衆 生 是 れ   を 以 て 得 度 す る こ と

は ず 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正 九 、 一 三 上 中 )       法 華 経 に お け る 方 便 思 想

(6)

      西 山 学 報 と い う 。 如 来 に は 智 慧 力 神 通 力 が あ る が 、

し 適 切 な 方

( 方 便 ) に よ ら な い な ら ば 、 こ の 衆 生 を も ろ も ろ の 苦

か ら 離 脱 さ せ る こ と が 出 来 な い で あ ろ う 。

便 を 捨 て て 、 神 力

に の み

る な ら ば 、 全 て の 衆 生 を 救 い 得 な い で あ ろ う 、 と い う 。 即 ち 方 便 が 神

や 智

力 よ り 重 視 さ れ て い る の で あ る 。 こ れ は 『 大 品

』 に は 見 ら れ な か っ た も の で あ る 。 ま た 『 大 智 度 論 』 に は 「 利 他 心 よ

も 方 便 の 重 視 が み ら れ 」 た が こ の 説 と は 異 っ て い る 。 こ の 説 示 は 『

品 妙 法 蓮 華 経 』 、 梵 本 に は 同

に み ら れ る が

 

『 正 法

経 』 で は こ の よ う な 説 示 と は な ら ず 、 次 の 如 く で あ る 。

三 応 時 品 に は 、   如

、 誘 い て 道 慧 神 足 を 立 て て

権 方 便 し て 仏

を 化 現 し 仏 力 無 成 畏 を

か し む と も 、 衆 生

り 難 く 、 肯 え て   尋

せ ず 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正 九 、 七 五 下 ) と い う 。 こ の 『 正 法

経 』 の み が 鳩 摩 羅 什

ら れ る よ う な 説 示 と は な っ て い な い の で あ る 。

 

( 一 回 )  

6

 

『 法

経 』 に お い て は 一 乗 思 想 を 方

便

と い う 用 語 を 用 い て 説 い て い る 。 そ れ は 「 三

は 一 乗 の た め の

便 で あ る 」 と す る 、 い わ ゆ る 開 三 顕 一 を 説 く 方 便 で あ る 。 こ れ は 「 仏 が 方 便 智 を 以 て 三 乗 の 法

等 を 施 設 す る 」 と い う 権 巧 方 便 で あ る

『 小 品

』 等 に 於 い て

し た 権 巧 方 便 と

の も の と の 違 い は 仏 の

よ り 見 る 立 場 と 、 方 便 を

け て 導 か れ る 衆 生 の 方 よ り 見 る 立 場 の 違 い で 義 は 同 一 で あ る 。 さ て 『 法

経 』 は 三

は 一 乗 の 方 便 で あ る と い う い わ ゆ る 「 三 乗 方 便 、 一

真 実 」 を 第 二

便 品 に は 次 の

に 説 い て い る 。   諸 仏 は 方 便 力 を 以 て 、 一 仏

に 於 い て 、

し て 三 を 説 き た ま う 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 九 、 七 中 )   十

仏 土 の 中 に は 、 唯 一 乗 の 法 の み 有 り 、 二 も な く 三 も な し 、 仏 の 方 便 説 を 除 く 。

 

 

 

 

 

 

( 大 正

、 八 上 ) な ど と い う 。 三 乗 は 一 乗 の 方

便

で あ る と い う が こ の 三 乗 の 説 か れ る 理 由 は 機 根 の 不 同 の 故 で あ る と い う 。 こ の と

(7)

NII-Electronic Library Service こ ろ を

二 方

便

品 に は

の よ う に い う 。   釈 迦 文 、 第 一 の 導

、 是 の 無 上 の 法 を 得 た ま へ ど も 、

の 一 切 の 仏 に 随 っ て 、 方 便 力 を 用 い た ま ふ 。 我 等 も 亦

  最

第 一 の 法 を 得 れ ど も 、 諸 の 衆 生 類 の 為 め に 分 別 し て 三 乗 を 説 く 。 小 智 は 小 法 を 楽 っ て 、

ら 作 仏 せ ん こ と を   信 ぜ ず 。 是 故 に

便 を 以 て 、 分 別 し て 諸 果 を 説 く 。          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ( 大 正

、 九

) と い う 。 ま た

喩 品 に は  

方 便 を 以 て 、 三 界 の 火 宅 よ り 衆 生 を 抜 済 せ ん と し て 、

に 三 乗 の 声 聞 、 辟

仏 乗 を 説 く

略 、 汝 速   や か に 三 界 を 出 で て 、 当 に 三 乗 の 声 聞 辟 支 仏 、 仏 乗 を 得 べ し 、 我 今 汝 が 為 に 此 の 事 を 保

す 。 終 に 虚 し か ら ず 。   汝 等 但 当 に

精 進 す べ し 。 如

是 の 方 便 を 以 て 、

生 を 誘 進 す 。

是 の 言 を 作 さ く 汝 等 当 に 知 る べ し 、 止 の   三 乗 の 法 は

是 れ 聖 の 称 嘆 し た ま う 所 な り 。 自 在 無 繋 に し て 、 依 求 す る 所 無 し 是 の 三 乗 に

じ て 、 無 漏 の 根 、   力 、 覚 、 道 禅 定

脱 、 三 昧 等 を 以 て 、 而 も 自 ら

楽 し て 、

便

ち 無 量 の

穏 快 楽 を 得 べ し 。 (

正 九 、 十 三

) と い う 。 三

は 衆 生 の 素 質 の 相 違 に よ っ て 説 か れ る の で あ り 、 三

そ れ ぞ れ の 立 場 が 称 嘆 さ れ る の で あ る 。 も し た だ 一

に 教 え を 説 け ば 、 諸 の 欲 染 が あ っ て 、 貪 著 が 深 い 者 は 信

し な い で の で 、 仏 は 衆 生 の 性 質 や

す る と こ ろ を 知 っ て 、 諸 法 を 説 く 。 そ れ 故 に 方 便 し て 三 乗 を 説 い て 三 界 の

悩 を 出 脱 せ し め る 、 と い う 。 こ の   乗 三 乗 に つ い て は 『 小 品 般

』 に 於 い て も 説 か れ て い る 。 即 ち 『

品 般 若 』 に は

利 弗 と 須 菩 提 の 問 答 の 中 で 仏 の 説 く 三 乗 の 差 別 に つ い て 語 り 真 如 平 等 の 立 場 よ り 見 れ ば 差 別 な し と 云 う 。 す な わ ち 「 如 中 に 三 乗 人 有 る べ き や 不 や 。

し く は 声

仏 ・ 仏

な り 」   と 問 い ・ こ れ に 答 え て 「 如 中 に 三

の 差

有 ・ ・ と 無

 

と い ・ て 、 真

の 立

り す れ ば 声 聞

、 仏 乗 の 差 別 は な い 、 と い う の で あ る 。 こ れ は 『 大 品

 

智 度 論 』 、 ま た 『 勝 天 王 般

に 於 い て も 同 様 に 説 か れ て い る ・ し か し ・ 疋 の 三 乗 が

便 で あ る と は 『 小 品 般 若 』 な ど で は

及 し       法 華 経 に お け る 方 便 思 想 一

7

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(8)

      西   山   学 報 て い な い の で あ る 。 そ れ が 『 法

経 」 に 至 る と 三 乗 は

便 で あ り 、 衆 生 の 機 根 の 利 鈍 に し た が っ て 説 か れ た

調

機 の た め の 教 で あ っ て 、 究 極 的 に は 一 乗 に よ っ て 仏 果 を 得 る と い う の で あ る 。   「 般

経 に は 、 声 聞 を 誘 引 し て 、 三 乗 同

脱 を 説 く よ う な 問 題 意 識 は ま だ 生 じ て い

 

か ・ た の で あ ろ う ・ 『 法

経 』 第 七 化

喩 品 に は 次 の よ う に い う 。   た だ 仏 乗 を 以 て 滅

を 得 、 更 に 余 乗 な し 、 諸 の 如 来 の 方 便 の 説 法 を ば 除 く 。

の 比 丘 、

し 如 来 、 臼 ら 涅 槃 時 到   り 、 衆 又 清 浄 に 信 解 堅 固 に し て 空 法 を 了 達 し 、 深 く 禅 定 に 入 れ り と

り ぬ れ ば 便 ち 諸 の 菩 薩 及 び 声 聞 衆 を 集 め   て 、 為 に 経 を 説 く 。

間 に 二 乗 と し て 滅 度 を 得 る こ と 有 る こ と 無 し 。 唯 一 仏

を も っ て 滅 度 を 得 る の み 。                                                                                     ( 大 正 九 、 二 五 下 ) と い う 。 つ ま り 三

は 方 便 で あ っ て 、 一 乗 が 真 実 で あ る と い う 。 同 じ く 第 七 化

喩 品 に は 、  

し 衆 生 但 「

を 聞 か ば 、 即 ち 仏 を 見 ん と

せ ず 、 親 近 せ ん と 欲 せ じ 。 便 ち 是 の 念 を 作 さ く 仏 道 は 長 遠 な り 。                     い ま   久 し く

苦 を

け て 乃 し 成 ず る こ と を 得 べ し と 、 仏 是 の 心 の

弱 下 劣 な る を

っ て 、 方 便 力 を 以 て 、 中 道 に 於 い   て 止 息 せ し め ん が

の 故 に 二 涅 槃 を

く 。                        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 九 二 六 上 )                                                                                                     と い っ て 、 二 乗 が 得 た 「 所 得 の 涅 槃 は 真 実 に 非 ず 。 但 是 れ

便

の 力 を も っ て 、 一 仏 乗 に 於 い て 分 別 し て 三 を 説 」 い た も の で あ る と い

す な わ ち =

は 方 便 に し て

ず と い う の で あ る ・ い ま 『 法 華 経 』 は ・ の 方 便 の 法 門 を 開 き 真

を 示 す と い う 。 第 二 方 便 品 に は 、   如 来 出 で た る

以 は 、 仏 慧 を 説 か ん が 為 の 故 な り 。 今 正 し く 是 れ 其 の 時 な り 。 中 略 、 諸 の 菩 薩 の 中 に 於 い て 、 正   直 に 方 便 を

て て 、

無 上 道 を 説 く 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 九

上 ) と い う 。 第 十 法

品 に は 、   一 切 の 菩 薩 の

羅 三

三 菩 提 は 、 皆 此 の 経 に 属 せ り 。 此 の 経 は 、 方 便 の

を 開 い て 、 真 実 の 相 を 示 す 。

(9)

NII-Electronic Library Service                                                                                       ( 大 正 九 、 三 一 下 ) と い っ て 、   「 開 三 顕 一 」 の 開

を 表 し て い る 。 す な わ ち 「 三 乗 の 区 別 を 立 て る こ と に よ っ て 、 や が て 大 乗 へ 人 々 を

き 入 れ る と い う 、 仏 陀 苦 心 の 巧 み な 方 便 が あ る 。 し か し 、 こ こ で は さ ら に 一 歩 を 進 め て 、 三 乗 が す べ て つ い に は

す る こ と を 明 ら か 嘸 」 し て い る の で あ る ・

の 方 便 の

は み な 弄 引 真 実 の た め の も の で あ ・ て ・ 方 便 の 巧 に よ っ て 真 実 が 顕 わ れ 、

こ の 真 実 を 開 顕 す る と い う の で あ る 。 つ ま り 「 二 乗 が 仏 に な る こ と が で き る と い う 、                                                                                                         仏

に 未 だ 嘗 て 知 ら れ な か っ た 真 理 は 「 方 便 」 と い う 思 想 に よ っ て 始 め て 明 ら か に さ れ る こ と が で き た の で あ る 」 「 法 華 経 が 三 乗 を 方 便 と す る こ と に よ っ て 開 顕 し た → 乗 は … 畧 … 小 乗 に 対 す る

乗 で は な く 、 小 乗 と 大 乗 と の 対 立                     を 越 え た 大 乗 で あ る 」 と い う こ と が で き る 。   ま た こ の 巧 み な

便 は 、 如 来 の 力 、 無 所 畏 よ り 重 視 さ れ て い る 。 第 三 譬 喩 品 に は   ( 如 来 の ) 力 、 無

畏 有 り と 雖 も 、 而 も 之 を 用 い ず 、 但 智 慧

便 を 以 て 、 三 界 の 火 宅 よ り 衆 生 を 抜 済 せ ん と し て 、  

に 三 乗 の 声 聞

仏 仏 乗 を 説 く 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 九 、 = 二 中 ) と い う 。 如 来 は 三 界 の 火 宅 よ り 衆 生 を 済 わ ん が 為 め に 方 便 し て 三 乗 を 説 く が こ の 三 乗 は そ れ ぞ れ の 意 義 が 認 め ら れ る 。 同 じ 第 三

に   汝

速 か に 三 界 を 出 で て 、 当 に 三 乗 の 声 聞

仏 、 仏 乗 を 得 べ し 。 我

汝 が 為 に 此 の 事 を 保 任 す る 。 終 に 虚 し   か ら じ 。

 

   

 

                             

 

   

 

   

 

   

 

            ( 大 正 九 、 = 二 中 ) と い う 。 こ の 「 三 乗 に 乗 じ て 」   「 無 量 の 安 穏 快 楽 を 得 べ し 」 と い っ て 、 如 来 は 初 め こ の 三 乗 を 説 い て 衆 生 を 引 導 し て 、 然 る 後 に 、

を も っ て 衆 生 を 度 脱 す る の で あ る 。 つ ま り 「 声 聞 や 縁 覚 を し り ぞ け て 、 →

が 立 て ら れ る の で は な く 、 声 聞 が 声 聞 の ま ま で 修 行 し て い る こ と が 、 そ の ま ま 「 汝 等 所 行 、 是 れ 菩 薩 道 」 と 、 菩 薩 の 行 に 止 揚 せ ら       法 華 経 に お け る 方 便 思 想 一

9

一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(10)

      西 山 学 報                                                                         れ 、 菩 薩 行 の 中 に 生 か さ れ て い く と い う 形 で 、 三

が 一

に 統 摂 さ れ る の で あ る 。 」 三 乗 の 教 え は 一 仏 乗 に 於 い て

一 さ れ 、 価 値 づ け ら れ て 、 三 乗 の

そ れ ぞ れ の 意

が 認 め ら れ る 。

 

「 声 聞 の 立 場 、 縁 覚 の 立 場 、 菩 薩 の 立 場 こ                                                                             の 三 つ の 立 場 は そ れ ぞ れ 存

意 義 が あ り 、 そ れ ぞ れ コ

」 の 世 界 を 目 指 す も の で あ り 」 、   三 乗 即 一

の 教 が 示 さ れ る の で あ る 。   ( 十 九 回 ) 四  

に み

れ る

便

 

7

 

に 火 宅 三 車 、

者 窮 子

、 医 師 な ど の

ら れ る 方 便 思 想 は

意 さ れ る べ き で あ る 。 こ れ は

便

を も っ て

以 上 の も の と す る 、 い わ ゆ る

便 の 思 想 が 強 調 さ れ て い る か ら で あ る 。 い ま

を み な が ら そ こ に 説 か れ て い る 方 便 の 用 例 を 見 、 そ の 思 想 を

し た い と 思 う 。 周 知 の よ う に

三 譬 喩 品 に 説 か れ る

宅 三 車 の

え は

で あ る 。                                                                                       富 裕 で 高 齢 の 老 長 者 が 大 邸 宅 に 住 ん で い た 。 そ こ に は 出 入 り ロ は 一 つ の 門 が あ る だ け で あ っ た 。 ま た 堂 閣 は 朽 ち   て い た 。 あ る 日 こ の 家 に 四 面 よ り 火 が 起 っ た 。 長

は ひ と り 宅 外 へ 逃 れ 出 た が

宅 の 中 に は

く の 子 供 た ち が   遊 び 戯 れ 、 東 西 に 走 り 楽 し み に ふ け っ て い て 、 こ の

が 燃 え て い る と は 知 ら ず 気 が つ か な か っ た 。 長 者 は こ の   子 供 た ち を

い だ す た め に (

ら の 腕 の 力 を 用 い ず に ) 子 供 た ち に 呼 び か け た 。 こ の 家 は 燃 え て い る 。 焼 か れ 、  

難 に 会 っ て は い け な い か ら 、 出 て 来 な さ い と 。 し か し 子 供 た ち は そ の 呼 び か け を も 理 解 せ ず 、

に も と め な い   で 嬉

し て い た 。 長

で あ る 父 は も し 子

た ち が

へ 出 な け れ ば 、 必 ず 焚 か れ る で あ ろ う と 考 え 子 供 た ち を こ   の 火 難 か ら

う た め に 巧 み な 方 便 を 設 け る の で あ る 。 長 者 は 子 供 た ち が 何 を

し て い る か を 既 に 知 っ て お り そ   の 性 格 の 傾

も 見 分 け て い て

の 珍 玩 奇 異 の も の に は 必 ず こ こ ろ を 向 け る で あ ろ う と 知 っ て 、 子 供 た ち に

(11)

NII-Electronic Library Service   う 。   「 お 前 た ち が あ そ び 、 好 み 、 望 ん で い た 羊 車 鹿 車 、 牛 車 な ど が 、

門 の 外 に 置 い て あ る 。 皆 こ の 家 か ら 出   て 来 な さ い 。 お

た ち が

す る

の も の を 私 は あ げ よ う 」 と 。 火 宅 の 内 で 戯 れ る 子

た ち は

の 説 く 所 を 聞 い て 、   そ の 願 い が 適 え ら れ る の で 、 競 っ て 火 宅 を 出 て 来 た 。

者 は 子 供 た ち に 羊 車 、 鹿 車 牛 車 の 三 車 で は な く 、 等 一   の 大 車 を 与 え た の で あ る 。 こ の

車 は 子 供 た ち の 「

望 に 非 ら ざ る 」 と こ ろ の も の で あ っ た が こ の 大 車 を   得 て 、

曽 有 な る こ と を

た の で あ る 。 こ の

喩 を 語 っ た あ と 釈

は 、 舎 利 弗 に こ の 長 者 の 行

に 虚 妄 が

っ た か 否 か を 問 わ れ る 。 す な わ ち 、   舎 利 弗 、 汝 が 意 に 於 い て 云 何 。 是 の 長 者 、 等 し く

子 に 珍 宝 の

車 を 与 ふ る こ と 寧 ろ 虚 妄 有 り や 否 や 。 舎 利 弗   言 く 。 不 な り 。  

 

                             

 

   

 

   

 

   

 

          ( 大 正 九 、 一 三 上 ) と い う 。

弗 は 釈

の こ の 問 い に

し て 、 長 者 の こ の 行 為 に は 虚 言 を 語 っ た こ と に は な ら ず 、   「 虚 妄 な し 」 と 答 え て い る 。 長 者 の 方 便 を 設 け る 心 は 、 子 供 た ち を 火 難 よ り 救 わ ん が た め に あ り 、 火 宅 よ り 抜 済 す る と い う 目 的 を 達 し た か ら に は 、 た と へ 最

の 一 車 を 与 え ず と も 虚 妄 の 罪 は な く 、 ま し て 宝 の 大 車 を 与 え た の で あ る か ら 言 う ま で も な い と い う 。 仏 は こ の 答 え に 対 し て 、 印 可 し て 次 の よ う に 言 わ れ る 。   仏 舎 利 弗 に 告 げ た ま わ く 。

哉 善 哉 、 汝 が 所

の 如 し 。 舎 利 弗 如 来 も 亦 復 是 の 如 し 。

 

( 大 正 九 、   = 二 上 ) と い う 。 仏 は 長 者 の こ の

に 虚 妄 の な い こ と を 可 と し 又 如 来 の 方 便 に 於 い て も 同

に 虚 妄 の な い こ と を 説 く の で あ る 。 こ の

え の よ う に 、 長 者 は 身 手 に 強 い 力 が あ り な が ら こ れ を 用 い ず 、 方 便 を 用 い て 、 初 め 三 車 を も っ て 子 供 た ち を 誘 引 し て 、 火 宅 か ら

し 、 そ の あ と で 彼 ら に 珍 宝 の 大 車 を 与 え た 。 こ の よ う に 如 来 も 神 通 、 無 所 畏 を そ な え な が ら こ れ を 用 い ず 方 便 を も っ て 三 乗 の 声 聞 、

支 仏 、 仏 乗 を 説 き 、 衆 生 を 誘 進 し て 、 三 界 の 火 宅 よ り 衆 生 を 抜 済 す る 。 そ の あ と で 大 乗 の 法 を 与 え る の で あ る 。 長 者 の こ の 行 為 に 虚 妄 の 咎 が な い よ う に 、 如 来 に も 、 初 め 三       法 華 経 に お け る 方 便 思 想 一 11 一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(12)

      西 山   学 報

を 説 い て 衆 生 を 引

そ の あ と で 大 乗 を 与 え て 涅 槃 に い ら せ る こ と は 、 虚 妄 の 咎 が な い と い う の で あ る 。   こ の 譬 喩 の

に 『 法 華 経 』 特 有 の

便 思 想 が 窮 え る の で あ る 。 そ れ は 仏 の 衆 生 に 対 す る 慈 悲 の あ ら わ れ で あ り そ の 方 便 の は た ら き は 真 実 以 上 の 善 巧 の 作 用 と し て 説 か れ て い る の で あ る 。 ま た 第 四 信 解 品 の 長 者 窮 子 の

喩 に 於 い て も 同 様 の

便 思 想 が 説 か れ て い る の で こ れ を み た い と 思 う 。 幼 い 童 子 が

と 別 れ て 諸

を 周

窮 困 し て い た 。 父 は そ の 間 四

に 子 を 探 し 求 め る が 見 つ か ら ず 、 一

に 舎 宅 を 造 っ た 。

業 は 繁 盛 し 多 く の 下 男 使 用 人 を 使 い 豪

と な っ た 。 窮 子 は 諸 国 を 歩 き ま わ っ て い る う ち に 父 の 住 す る 町 に き て 、 父 の

に 到 っ た 。 窮 子 は 父 と は 知 ら ず 、 そ の

姿

が 豪 貴

厳 で あ る さ ま を 見 て 、 国 王 か

臣 か と 思 い 、 逼 迫 さ れ る の で は な い か と ふ と 思 い 急 い で 立 ち 去 っ た 。

者 は こ の 窮 子 を 見 て わ が 子 で あ る と 知 り 、 使 者 を つ か わ し て 追 い 捉 ら へ て 来 る が 、 窮 子 は こ れ が 父 の 使 い で あ る と 信 ず る こ と は で き ず 大 声 を 張 り あ げ

き 叫 び 恐 怖 に お ち い っ た 。 そ こ で 長 者 は 他 の 方 法 を 考 え て 、 子 を 誘 引 し よ う と す る 。 長 者 は 窮 子 を 引 き よ せ る た め に 巧 み な 方 便 を 設 け る 。 す な わ ち 威 徳 な く 体 力 も 貧 弱 な 者 を つ か わ し て 、   「 汝 を 雇 い た い 」 と 言 わ し め る 。 窮 子 は 喜 び こ の

し い 二 人 と 共 に 来 っ て 糞

を 除 い 、

舎 の 掃 除 の

事 を す る 。 長 者 は 汚 れ た 衣 を 着 て 子 の 所 に

き 話 し か け た 。 あ る 時 次 の 様 に 語 っ た 、

 

「 今 よ り 汝 を

が 子 の よ う に し よ う 」 と 。 二 十 年 を 経 て 、 家 事 を

ら せ

物 の 出 入 を 示 し て 、 皆 令 知 せ し め た 。 窮 子 は こ の 時

ら 貧 し い 事 を お も う た 。 ま た 父 は 子 の 心 が 漸 く 広 大 に な っ た 事 を 知 っ て 、 財

を 与 え よ う と し て 、 親 族 国 王

臣 、 刹

居 士 を あ つ め て 語 る 。   「 こ れ は 我 が 子 で あ り ま す 。 我 を 捨 て て 他

へ 行 っ て 五 十

を 経 た が 子 を 見 て よ り こ の か た 己 に 二 十

が 過 ぎ た 。

我 が 所 有 の 舎 宅 人 民 等 す べ て こ の 子 に ゆ ず り ま す 」 と い う 。 子 は

曽 有 の 思 い を い だ く の で あ る 。

(13)

NII-Electronic Library Service こ の 譬 喩 の あ と 、 仏 も ま た こ の 長 者 の よ う で あ る と い う 。 そ れ は 富 め る 長 者 の 方 便 の よ う に 、 子 の 志 の 低 く

っ て い る こ と を 知 っ て 、

便 力 を 以 て 、 そ の 心 を 柔 伏 し て 、 し か る の ち 適 当 な 時 に 一 切 の 財 宝 を ゆ ず る よ う な も の で あ                           ね が る 。 仏 も ま た 是 の 如 く 、 小 を 楽 う 者 で あ る こ と を よ く

っ て 、

便 力 を 以 て 、 そ の 心 を 調 伏 し て 、 そ の 後 に

の 大 智 を 教 え た ま う の で あ る 。

の 窮 子 が 無 量 の 宝 を 得 た よ う に 、 我 等 は 先 の 所 望 に 非 ざ る も の を 今 自 ら 得 た の で

曽 有 の 思 い に

た れ た の で あ る 。 是 の 如 く 仏 の 方

便

に は 相 手 に

じ て 法 を 説 く 、 対 機 の 方 便 ( 説 法 ) が み ら れ る の で あ る 。 こ の よ う に 「

便 と は 真 実 と 区 別 せ ら れ な が ら 、 真

け ら れ 真

へ 至 る 必 須 の

程 で あ る こ と が 知                                                                       ら れ る の で あ っ て 、

し て あ っ て も な く て も よ い よ う な も の で は な い の で あ る 」

N工 工一Eleotronlo  Llbrary  Servloe

ま た

に 化

で は 、 方 便 は ど の よ う に 用 い ら れ て い る で あ ろ う か 。

七 化

喩 品 に は 、 多 く の 人 々 が 毒 獣 が

く 、 水 草 も な い 険 悪 な 道 を 、 五 百 由 旬 離 れ た

に あ る 珍 宝 の 処 に 行 こ う と し て い た 。 こ の 人 人 の 中 に } 人 の 聰 慧 明 達 の 者 が い た 。 彼 は こ の 険 道 の 通 塞 の 相 を よ く 知 り 、 多 く の 難

を 救 済 し て い た 。 道

の な か ば に 至 る と 人 人 は 皆 疲 倦 し て き た 。 そ し て

に 言 っ た 。   「 我 等 は 疲 極 し 、 進 む こ と が 出 来 な い 。

は な お 遠 い 。 こ こ か ら 退 き 還 ろ う と 思 う 」 と 。 彼 は こ の 人 人 が 退 い て 大 珍 宝 を 失 わ ん と す る の を 知 っ て 方 便 を

じ て 、 神 通 力 を 出 し て こ の 険 道

三 百 由 旬 す ぎ た 所 に 一 城 を つ く り 出 し た 。 そ し て 人 人 に 向 っ て 言 う 、

 

「 皆 さ ん

き 退 し て は い け ま せ ん 。 あ の 城 に 入 っ て 休 息 し な さ い 。 す る こ と が あ る な ら お や り な さ い 。 そ し て

ら ぎ を 得 な さ い 。 」   と 。 人 人 は そ の 城 に 入 り 、 最 終 の 目 的 地 に 着 い た と の 想 い を 生 じ

ら ぎ の 想 い を 得 た 。

は 化 城 を 作 っ て 人 人 を

人 人 の

労 が 回

し た の を 知 っ て 、 こ の 化 城 を 消 し た 。 そ し て 人 人 に 語 っ て 「 さ あ 、 皆 さ ん ゆ き ま し ょ う 。 宝

近 に あ り ま す よ 。 実 は こ の

は 私 が

さ ん

を 休

さ せ る た め に つ く り 出 し た 化

に す ぎ ま     法 華・ 経 に お け る 方 便 思 想 一

13

(14)

      西   山  

報   せ ん 」 と い っ た 。 す な わ ち こ れ は 私 が 人 人 の 疲 労 の す が た を 知 っ て 、 引 き 返 さ せ ま い と し て 作 っ た 化

で す か ら   こ れ は 私 の 巧 み な 方 便 な の で す 。 さ あ

さ ん 一 緒 に 真 実 の 目 的 地 で あ る 宝

へ 行 き ま し よ う 、 と い う の で あ る 。 こ の 化 城 の 譬 喩 の あ と に 、

 

「 如 来 も 亦 復 是 の 如 し 」 と い う 。 如 来 も 亦 巧 み な

便

に よ っ て 、

生 を 休 息 さ せ る た め に 二 つ の 涅 槃 の

地 を 説 き 休 息 す れ ば 一 仏 乗 に 乗 じ て 、 仏 慧 に 引 入 す る の で あ る と い う 。 如 来 は 方 便 力 を

っ て 劣 等 な も の を 喜 ぶ も の の た め に 理 解 し 信 じ う る 涅 槃 を 説 き た ま う が 、 し か し そ の 「 所 得 の 涅 槃 は 真

に 非 ず 」 と い う 。 そ れ は 彼 の

師 が 人 人 の 休 息 の 為 に 大 城 を 化

す る が 、 そ の

は 実 に 非 ざ る が 如 き も の 、 と い う の で あ る 。 如 来 の 方 便 は 人 び と の 能 力 に 応 じ て 、 相 応 し い 安 息 を 与 え て 、 つ い に 仏 慧 に 導 く の で あ る 。

に 良 医 の 譬

を み よ う 。 第 十 六 如 来 寿 量 品 に は 次 の よ う に

か れ て い る 。

の 病 を 治 す こ と が 上 手 な 医 師 が 住 ん で い た 。 彼 に は 多 く の

子 が い た 。 あ る 時 こ の 医 師 は 他

へ 出 か け て 行 っ た 。 そ の 間 に

子 た ち は 毒 薬 を 飲 ん で 悶 乱 し て い た 。 そ の 息 子 た ち の 中 に は 本 心 を 失 っ た

も あ り 失 な わ な い 者 も あ っ た 。 こ の 時 そ の 父 は 他

か ら 帰 り 子 供 た ち の 苦

を み て 、 よ き 薬 草 を 和 合 し 色 香 美 味 皆 具 足 す る 良 薬 を 作 り 、 子

た ち に 与 え て 服 せ し め た 。 そ の 内 本 心 を 失 わ な い 者 は 、 こ の

薬 を 見 て 服 し た 。 す る と 病 は こ と ご と く 愈 え た 。 し か し

心 を 失 っ た 者 は 毒 気 が 深 く 入 っ て い る の で そ の 薬 を 与 え る が 肯 え て 服 さ な か っ た 。 父 は

れ ん で

便

を 設 け て こ れ ら の 子

た ち に 此 の 薬 を 服 せ し め ん と す る の で あ る 。 す な わ ち 父 は 子 供 た ち に 言 う 。 「 汝 等 よ 、 私 は 衰 老 し て 死 期 が 迫 っ て い る 。 よ き 薬 を こ こ に

め て 在 く 欲 す る な ら ば 、 こ の 薬 を 服 し な さ い 。 」 と い っ て 、 他

立 っ た 。 他

に 至 っ て 使 を 遣 わ し て 、

め る 息 子 た ち に 「 汝 の 父 已 に 死 す 」 と 告 げ さ せ た 。 こ の 時 子 供 た ち の 心 は 大 い に 憂 悩 し 、

に 悲 感 を い だ い て 、 心 つ い に 醒

し て 此 の 薬 を 取 っ て 、 こ れ を 服 し た 。 す

(15)

NII-Electronic Library Service                                                                                       ま み   る と 毒 は み な 愈 え た 。 そ の

は 子 供 た ち の 苦 患 が 差 え た こ と を 聞 い て 、

り 来 っ て 子 供 た ち と 見 え た の で あ る 。 こ の

喩 の あ と 、 仏 は こ の 良 医 の な し た 方 便 に 虚 妄 の 罪 が あ っ た か 否 か を 問 わ れ る の で あ る 。  

の 善 男 子 、 意 に

い て 云 何 。 も し 人 の 能 く 此 の

医 の 虚 妄 の 罪 を 説 く こ と 有 ら ん や 不 や 。   不 な り 。 世

 

 

   

 

   

 

   

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

   

 

( 大 正 九 、 四 三 中 ) と 答 え る 。 仏 は さ ら に つ づ け て 、   「 仏 も 亦 是 の 如 し 成 仏 し て 已 来 、 無 量 無 辺 百 千 万 億 那

他 阿 僧 祇 劫 な り 。 衆 生 の 為 の 故 に 、 方 便 力 を 以 て 当 に 滅 度 す べ し と 言 う 。

よ く 法 の 如 く 我 が 虚 妄 の 過 を 説 く 者 有 る こ と 無 し 」 と 説 か れ る 。 つ ま り 良 医 が 善 巧 な る 方 便 を も っ て 、 毒 を 服 し た 子 供 た ち を 治 す た め に 、 生 き て い る の に 死 ん だ と 告 げ て 、 子 供 た ち を 治 し た よ う に 、 仏 も ま た 顛 倒 し た 者 を 導 く た め に 涅 槃 に 入 い る こ と が な い の に 、 涅 槃 に 入 っ て み せ る の で あ る と い う 。 こ の 巧 み な

便 に つ い て 、 虚 妄 の 咎 の な い こ と を 説 い て い る の で あ る 。   こ れ ら の 譬 喩 火 宅 三 車 、 長 者 窮 子 化 城 、 良 医 の

な ど に 見 ら れ る

便 思 想 は 、 ま こ と に 仏 の

生 に 対 す る 慈 悲 の あ ら わ れ で あ り そ の は た ら き は 真

以 上 の 善 巧 の

用 と し て 説 か れ て い る の で あ る 。 真 実 な る も の へ 導 き 入 れ る た め に 、 真

に 非 ざ る も の ( 手 だ て ) を 用 い て 真 実 に 導 き 入 れ る と い う 善 巧 な る

便 が 説 か れ て い る 。 こ こ に 方 便 を も っ て 真

以 上 の

の と す る

便 の 思 想 が み ら れ る の で あ る 。 こ こ に

乗 仏 教 の 方 便 思 想 は そ の 究 極 点 に 達 し た と 考 え ら れ る の で あ る 。   ( 二

二 回 )  

8

  こ れ ら の

に 七 波 羅 蜜 が 説 か れ て 、 『 正 法

経 』 を

く 諸 本 に

七 「 方 便 波 羅 蜜 」 の 用 例 が 見 ら れ る 。 ( 一 回 )             五

 

 

 

便

 

 

『 法 華 経 』

二 方 便

は 、

 

『 正 法 華 経 』 に は 善 権 品 と 翻 訳 さ れ て い る が 、     法 華 経 に お け る 方 便 思 想 そ の

に は い ず れ も

便 品 で あ 一 15 一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(16)

      西   山

 

学 報 る 。 こ の

便

品 は 開 三 顕 一 の 開 会 思 想 が 説 か れ る て い が 、 な ぜ こ の

は 真 実 品 と せ ず 方 便 品 と 呼 ば れ 称 さ れ る の で あ ろ う か 、 つ ま り 三 乗 説 は

便 で あ り 一 乗 が 真

で あ る こ と を 顕 し た 品 で あ る か ら こ の 品 は 方 便 品 と 称 さ ず 真                                                                           実 品 と さ れ る べ き で は な か ろ う か と 思 わ れ る 。 佐 藤 哲 英 氏 は 『 続 天 台 大 師 の 研 究 』 の 中 で 北

に お け る 法

経 研 究 の

向 を

じ て お ら れ る 。 そ の 中 に

谷 大 学 図 書 館 所 蔵 の 敦 煌 出 土 の 『 法

経 疏 』 の 写 本 に つ い て 論 及 さ れ て 、 方 便

が 引 か れ て い る 。 こ こ に は こ の 問 題 が 論 じ ら れ て い る の で 全 文 を 引 か せ て も ら う 。 次 の 通 り で あ る 。             リ     サ パ   ヲ   シ   7       ト     ハ ス     ノ       イ ニ   シ       晶   ス     ト     ツ テ     ニ   ス ガ   ヲ   ニ     ス ル   方 便

。 従 レ

作 レ

。 応 レ 言 二 真 実 品 一 。 彰 二 三 乗 権 道 竟

 

旡 7 有 レ 実 故 称 二 方 便 一 。 従 二 所

一 作 レ

故 。 称 二

便     ト   品 【 也 。    F ス     ノ       ヲ モ ッ テ     ツ テ   ヲ   ス   ト         フ     ト       ト ハ     ニ シ テ     ル ノ       ニ     ナ リ   ニ

 

巧 智

 

  。 分 レ 一 為 レ 三 。 亦 言 二

便 一 。 三

 

進 趣

 

Q 入 二 於 一

 

。       昌   ラ     リ     ハ   昂 シ テ       ハ     ナ ル                     ノ                     ニ   レ       ナ リ       ヘ テ     7 ハ       ト       レ ハ   レ       ニ シ テ   方 便

有 二

実   而 理 虚  

一 。 霊

丈 六 三

。 実 是 其 虚

 

。 唱   言 二 是

一 。 此

 

 

而 理 虚   ナ   リ     也 。     ヲ   リ ト ハ   ハ     シ テ    ハ     ナ ル                                         レ ハ         ナ リ       レ ハ         ナ ル モ       昌     レ       ナ ル カ             フ       ト                                                             。 此 是 言 虚

 

。 実 是 権 道

 

故 。                                                                                               言 二 理 実 一  

有 二

 

 

理 実

 

者 一 。 霊 山 一 唱 丈 六 三

。 斯   是 権 道   也 。     ラ   リ ト ハ   モ   モ   ニ   ナ ル           フ ル ト コ ロ ノ     ハ   ハ   シ   ヲ           ク   ム ル   ニ           ニ  

二 言 理 倶 実 者 } 。

 

 

一 乗 言 顕 レ 理 。 彰

相 永 息 故 。 言 理 倶 実 也 。 こ こ に 見 ら れ る よ う に 、 方 便 品 の

は そ の 教 説 よ

を つ け る の な ら ば 、 真 実 品 と 言 う べ き で あ る と い っ て い る 。 こ の 品 が

実 品 と せ ず 方 便 品 と 称 さ れ る の は

道 は つ い に

な き こ と を 彰 わ す こ れ を 方 便 と 称 し 、 こ の 破 せ ら る る 方 に 従 っ て

を 作 す の で 方 便 品 と 称 す る と い っ て い る 。   ま た 鳩

門 下 の 道 生 は 『 法

経 疏 』 に こ の

題 に つ い て 論 じ て い る 。 方 便 品 題 釈 に は 次 の 様 に 言 う 。

(17)

NII-Electronic Library Service   昔 、 迹 を 三 乗 に 晦 ま す 。 群

是 を 謂 う 、

一 実 を 顕 さ ん と 欲 す と 示 す に 真 正 を 以 て し 非 を 以 て 是 を 明 か す 。   故 に 方 便 を 標 し て 品 と

R

す 。 既 に 昔 の 三 乗 を 指 し て 方 便 と 為 す 。 所 以 は 一 顕 な り 。 茲

に 言 わ ず し て 自 ず か ら 顕   る 。

し 一 乗 品 と 云 わ ぱ 理 冖 な る べ く に

た り 。

に 方 便 と

う 。 乃 ち 絶 歎 之 致 を 表 す な り 。                                                                   ( 卍 続

二 乙 、 二 三 、 四 、 三 九 九 右

) と い う 。 っ ま り 方 便 品 は 、 三 乗 の 方 便 説 を も っ て 一 乗 の

実 を 顕 さ ん と し て い る か ら 、

 

「 非 を も っ て 是 を 明 か す 」 と い う 方 便 の 義 を 取 り 入 れ て 一 乗 品 と は せ ず に 方

便

品 と し た の で あ る 。   「 真 実 で あ る 一 乗 は 不 真 な る 三 乗 と は 無 関                                                                           係 な 位 置 に 立 つ 独 立 の も の で は な く そ れ の 否 定 を 通 じ て お の ず か ら 顕 現 す る

界 」 で あ る 。 こ の 破 せ ら る る 方 に 従 っ て 名 付 け ら れ た と す る の で あ る 。   次 に

法 雲 の 『 法

記 』 に

い て も こ の 問 題 が 述 べ ら れ て い る の で こ れ を 見 た い 。 法 雲 は 梁 の 三 大 法 師 と 称 さ れ

や 吉 蔵 さ ら に 我 が 国 の 聖 徳

子 に 影 響 を 与 え て い る 、 そ の 法 雲 は 『

華 義 記 』 の 方 便

の 題 釈 で 次 の よ う に 言 っ て い る 。  

し 理 に 従 っ て 名 を 立 つ れ ば 、 応 に 実 相 品 と 言 う べ く 、 方 便 品 と 言 う べ か ら ず 。 只

日 、 此 の 経 は 正 に 昔 日 の 三   乗 の 教 は 是 れ 方 便 な り と 顕 す 。 方 便 と は

だ 三 乗 の 教 に し て 昔 日 の 時 に 当 る 。

 

 

 

 

( 大 正 三 三 、 五 九 二 上 ) と い っ て 、 こ の 方 便 品 は 理 に

っ て 名 を 立 て る な ら ば 、

相 品 と 称 す べ き で 、 方 便 品 と す べ き で は な い と い う 。 し か し 法 雲 は 方 便 品 と 名 づ け ら れ る 所 以 を 次 の よ う に 「、 貢 っ て い る 。 ま ず 方 便 品 に つ い て 、   此 の 品 は 則 ち 両 義 あ り 。 一 に は 則 ち 今 の 真

か す 。 二 に は

ち 昔 は 是 れ 方 便 な り と 顕 す 。                                                                                 ( 大 正 三 三 、 五 九 二 上 ) と い っ て 、 そ の 義 を 明 か し そ の 品 名 に つ い て は 、       法 華 経 に お け る 方 便 思 想 一 17 一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

(18)

      西   山 学 報  

日 の 一

の 解 を 得 れ ば 則 ち 、 是 れ 門

に 入 る な り 。 只 昔 日 の 教 是 れ 方 便 な る こ と 有 る に 由 り 、

日 は 是 れ   真 実 な り と 顕 出 す る こ と を 得 。 此 れ は 則 ち 是 門 従 り 義 を 出 す な り 。

に 此 の 品 顕 さ る る に 従 っ て

を 得 る を 知 る   故 に

便

と 名 つ く る な り 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 大 正 三 三 、 五 九 二 中 )                                                                       @ と い う 。 す な わ ち 「 此 の

は 、 顕 さ る る に 従 っ て

を 受 け 名 づ け て 方 便 と す る 」 と い う の で あ る 。   道 生 や 法 雲 な ど の 学

便

品 の 題 釈 に 於 い て 「 真 実 品 」   「 一 乗 品 」

 

「 実 相 品 」 な ど と す べ き も の で あ る の に 何 故 に 「 方 便 品 」 と さ れ て い る か を 是 の 如 く

釈 し て い る 。 ま た 横 超 慧 日 氏 は こ こ を 「 ま こ と に 考 え て み れ ば み る ほ ど 方 便 の 意 義 は 大 き い と

わ ね ば な ら ぬ 、 一

を 明 し 仏 の 究 極 理 想 を 明 し た こ の

便 品 が 本 来 な ら ば

品 と 名 づ け ら れ そ う で あ る の に 真 実 品 と 言 わ ず し て

便 品 と

づ け ら れ た 、 そ こ に 却 っ て 仏

に お け る 方 便 思 想 の 深                                         い 意 味 が 示 唆 さ れ て い る の を

ず る の で あ る 」 と い わ れ る の で あ る 。 六

 

ま と め   以 上 の べ た と こ ろ を 要 約 す る と 次 の 如 く で あ る 。

1

 

『 法 華 経 』 に は 方 便 の 用 語 が 百 十 回 使 わ れ て 、 そ の 用

中 最 も

い も の は 化 他 方

便

で あ る ( 五 十 六 回 ) 。   ま た 『 小 品

 

 

『 大 智 度 論 』 な ど で み ら れ た  

巧 方 便 、

施 造 方

便

 

虚 仮 の 方 便 な ど の 用 例   は 見 ら れ な い 。

2

  権 巧 方 便 、

造 方 便 、 化 他

便 の 三 義 に 通 ず る 方 便 の 用 例 が 見 ら れ る 。   ( 六 回 )

3

  方 便 に 衆 生 の 心 に 思 う と こ ろ を 知 る は た ら き が 見 ら れ る 。   ( 一 回 )

4

 

方 便 に 神 通 力 の は た ら き や 観 世 音 菩 薩 な ど の 変 化 身 の 用

が 見 ら れ る 。

 

( 四 回 ) 一 一

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NII-Electronic Library Service

5

便

通 力 や 智 慧

よ り も 重 視 さ れ て 説 か れ て い る 。

 

( 一 回 )

6

  『 法

経 』 に お い て 一 乗 思 想 を 方 便 と い う 用 語 を 用 い て 説 い て い る 。   る と す る 。   ( 十 九 回 ) つ ま り 三 乗 は 一 乗 に 入 る た め の 方 便 で あ

7

 

火 宅 三 車 、 長 者 窮 子 、 化 城 良 医 の 譬 に み ら れ る 方 便 思 想 は 注 目 す べ き も の で あ っ た 。  

以 上 の も の と す る い わ ゆ る 善 巧 方 便 の 思 想 が み ら れ た 。

 

( 二

二 回 )

8

便

波 羅 蜜 の 用

が 、

 

『 正 法 華

』 を 除 く

に 見 ら れ る 。

 

( 一 回 ) こ れ は

便 を も っ て 真

9

 

や 光 宅 寺 法 雲 な ど に よ っ て 、

 

『 法 華 経 』

便 品 は 「 真 実 品 」   「

相 品 」   コ 乗 品 L と す べ き で あ る が 、 こ   の

は 所 顕 に 従 っ て 名 づ け ら れ て い る と 、

さ れ て い る 。   な お 『 法 華 経 』 に お い て 、 善 巧 方 便 の は た ら き が

か れ て

仏 教 方 便 思 想 は そ の 究 極 点 に 達 し た 。 こ れ ら の 方 便 思 想 を 中 国 の 浄 影 寺 慧 遠 や 天

大 師 智 顕 は ど の

に 受 け 取 っ て い る の だ ろ う か 。 こ れ ら は

後 に 残 さ れ た 検

課 題 で あ る 。   註   横 超 慧 日 『 法 華 経 序 説 』 ( 法 蔵 館、 昭 和 五 十 年 四 月 ) 三 〇 頁 。         上 田 義 文 「 働 大 乗 仏 教 思 想 史 に お け る 「 法 華 経 」 の 位 置 」 ( 『 法 華 経 の 成 立 と 展 開 』 平 楽 寺 書 店、 一 九 七 四 年 十 } 月 ) 三 五       六 頁 。 ま た 本 田 義 英 「 法 華 久 遠 偈 」   『 三 教 授 頌 寿 記 念 東 洋 学 論 叢 』 平 楽 寺 書 店、 昭 和 二 七 年 二 月 ) 三 六 五 頁 に は 「 法 華 経 そ       の も の が 目 的 と す る 宗 教 的 な 面、 即 ち 方 便 施 設 の 本 願 的 願 業 の 面 」 と い っ て 同 趣 旨 を 述 べ ら れ る 。         『 妙 法 蓮 華 経 』 巻 三 大 正 九、 二 六 下 。 『 摩 訶 般 若 波 羅 蜜 経 』 巻 二 六 、 大 正 八 四 」 ○ 中 。 拙 稿 「 方 便 思 想 の 展 開 」 矼 、 大 品 般 若 の 方 便 思 想 を 中 心 に ( 『 西 山 学 報 』 29 号 ) 五 四 頁 。 坂 本 幸 男 「 地 論 宗 の 方 便 論 に つ い て 」 ( 『 干 潟 古 稀 記 念 論 集 』 九 州 大 学 文 学 部 印 度 哲 学 研 究 室 昭 和 三 十 九 年 六 月 ) 三 四 八 頁 。 『 小 品 般 若 波 羅 蜜 経 』 巻 六 。 大 正 八 、 五 六 三 下 。 『 小 品 般 若 波 羅 蜜 経 』 巻 六 、 大 正 八 、 五 六 三 下 。 渡 邊 楳 雄 「 勝 天 王 般 若 経 に 於 け る 法 華 経 の 準 備 」 ( 『 仏 教 学 の 諸 問 題 』 岩 波 書 店 、 昭 和 十 年 六 月 ) 五 八 一 頁 以 下 参 照 。 平 川 彰 「 開 三 顕 一 の 背 景 と そ の 形 成 「 ( 『 法 華 経 の 思 想 と 基 盤 』 、 平 楽 寺 書 店 一 九 八 〇 年 二 月 ) 一 四 〇 頁 。 ま た 勝 呂 信 静 法 華 経 に お け る 方 便 思 想 一

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一 N工 工一Eleotronlo  Llbrary  

参照