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(1)

「語口支1

本稿では︑古筆源氏物語の最初の巻である﹁空蝉﹂巻を取り上げる︒

︵注6︶当該本は︑﹁尾州家本に近い別本の一種﹂︑﹁陽明家本と桃園文庫本と

︵注7︶︵注8︶

の中間﹂と言われ︑陽明文庫本と﹁同一祖本を有する﹂とされる︒

︵注9︶﹁あまり厳密ではなく︑本文を固定化する意図を持た﹂ずに書写さ

れた当該本を︑以下︑全翻刻を行なった上で定家本系の大島本と比較

し︑異同のある箇所が他のどの本文に近いのかをみていく︒その過程

で︑特異な本文があった場合には考察を加えた︒ ︵注I︶鹿児島大学附属図書館が所蔵する玉里文庫本の古筆源氏物語は︑鎌倉時代から南北朝時代に書写されたものと考えられている︑全一五帖︵﹁空蝉﹂﹁花宴﹂﹁賢木﹂﹁須磨﹂﹁関屋﹂﹁絵合﹂﹁松風﹂﹁玉霊﹂﹁初音﹂﹁野分﹂﹁藤裏葉﹂﹁若菜下﹂﹁夕霧﹂﹁匂宮﹂﹁紅梅﹂︶の取り合わせ本である︒当該本については︑徳光澄雄が書誌調査および本文の傾向を

︵注2︶調査し︑新美哲彦が﹁空蝉﹂巻に焦点を合わせて陽明文庫本と比較し

︵注3︶︵注4︶

ている︒また︑伊藤鉄也が画像をサイトに掲載している︒しかし︑徳

光論の書誌に疑問点があったため︑拙稿二本において書誌情報を再調

︵注5︶査した︒ はじめに 玉里文庫本﹃古筆源氏物語﹂﹁空蝉﹂巻を読む

キーワード︾玉里文庫︑古筆源氏物語︑ ︻凡例︼一・改行箇所や和歌の書式は原本のままとし︑丁数とその表裏︑行数

を付記した︒

一・原本に用いられている変体仮名は︑すべて現行の平仮名に統一し

た︒ただし︑原本の平仮名中に片仮名を混用した箇所は︑片仮名

を平仮名に改めた︒

一・ミセケチは︑現状では文字に二本線を引いている︒このため翻刻

では︑ミセケチを︑取り消し線で示した︒

一・傍記は︑該当する文字の横にそのまま示した︒

一・補入記号のない補入は一一で示し︑補入記号のある補入は︿﹀

で示した︒

一・各丁の翻刻の後に載せた異同は︑当該本と一致するものがある場

︵注⑩︶合にはその諸本を漢字一字で示した︒このとき︑定家本系︑河内

本系︑別本全てが一致する場合には︑それぞれ園回団とのみ示

した︒定家本系︑河内本系の中の何本かが一致する場合には︑そ

れぞれの系統の文字を示した後に一致する諸本を漢字一字で示

す︒なお︑別本に属する諸本はこの限りではない︒また︑一致す

空蝉巻︑独自本文 武藤那賀子

(2)

︵注Ⅱ︶|丁オモテ︵六七六左︶

lねられたまはい①剣訓刈捌剃副Ⅵ引調

2ちにてわれは.詞制割引Ⅵ川口魁くま

3れてもならはぬをこよひなむはし

4めて④間割剤刈りdしりぬれははつか

5しうてえなからふましくこそおも

6ひなりぬれ⑤uのたまへはなみたをさへ

7こほしてふしたりいとらうたしと

8おほすてさぐりの興引刺剴別剖馴句判洲

9にてかみの⑦

Ⅲけはひの⑳口 にてかみのG

①園横池肖三︑回陽飯麦阿②桃

③ナシ︒

﹇参考﹈園﹁かく人に﹂︑回﹁また人にかく﹂︑陽飯麦阿﹁また

かう﹂

④桃

⑤ナシ︒﹇参考﹈園回圃﹁なと﹂

⑥同一陽

﹇参考﹈桃﹁ちひさくほそやかなるにて﹂

⑦祠当陽麦桃 るものがない場合には﹁ナシ﹂とし︑近い本文があった場合︑その本文を﹇参考﹈に掲げた︒

いとしもなか慾らさりし

けはひの3にかよひたるも思なしにや 一丁ウラ︵六七七右︶

1あはれなりあなかちにか魁つらひ

2たとりよらむも人わるかるへくまめ

3やかにQ到刎uとおほし角珂洲Ⅷ叫到れい

4のやうにものたまひまつはさ③可よ

5ふかくいてたまへは9割割はQwu割

9にけるとおもふに⑲到川可やかてつ

皿れなくてやみなましもうからまし 8・刺︒

6

7みノ︑ならす⑥側削引uと思に御消息

①陽麦阿桃②阿黒桃③回④ナシ

﹇参考﹈園回圃﹁このこ﹂

⑤同一陽飯

*ただし︑ウ音便化していないのは当該本のみ︒

⑥阿黒陽麦桃

⑦同当飯麦阿桃⑧阿黒麦 ⑧園秀

﹇参考﹈園三﹁#燕にかょひたる﹂︑回﹁さまもにかょひたる﹂

う〆〜しくいとをしとおも

もたへて③穏斗劇⑨矧剖副u引司川

女もな

(3)

玉里文庫本「古筆源氏物語」 「空蝉」巻を読む

二丁オモテ︵六七七左︶

1しゐていとをしき御ふるまひの円洲引

2ならむもうたてあるへしよきほと

3に2てかくてとちめてんと一燭おもひなす

10 9

5は心つきなしと卿剰剖剖馴別則馴洲引かく

6てはえやむましうおむ心にか︑り⑤旬 4物からた︑ならすなかめかちなり君

7人わるくおもほし月利到創訓引dこ

8きみにいと⑦到訓刺qうれたくも阿判引酬

⑨⑧⑦⑥⑤④③②① ⑩回圃 ⑨ナシ

﹇参考﹈園﹁おほしこりにけると﹂︑回﹁おもほしこりにけりと﹂

こりにしをしゐておもひかへせと心

にしたかはすぐるしきを目引刎劇剖刈別刷

同︺陽麦阿桃

ナシ

ナシ

ナシ而署陽 回圖園御横池﹇参考﹈三﹁ほとに︿て﹀﹂ナシナシ

①うしなども思ひて絶えぬべき気色ならば︑かばかり我に従ふ心なら

︵注哩︶ば︑副訓劉掛川なむと思うたまへえて︑︵帯木①七二〜七三︶

②当該箇所︵ただし︑玉里文庫本﹁古筆源氏物語﹂のみ︶

③なほかかる歩きは軽々しく危なかりけりと︑いよいよ思し懲りぬべ

し︒︵空蝉①一二八︶ とくに注目したいのは︑当該本の八〜九行目にかけての﹁おもひこりにし﹂という言葉である︒この本文は︑他の諸本にはなく︑当該本独自のものである︒傍線で示したように︑この箇所は﹁思ふ﹂に関する言葉の異同が多い︒しかし︑﹁おもひこる﹂という言葉は︑この直前にも出てきている︒一丁八〜九行目にかけての﹁おもほしこりにける﹂という言葉がそれである︒この場面は︑空蝉が︑頑なに源氏を拒む自分自身に対して︑源氏が﹁思ひ懲る﹂状態にあるのではないかと考えている場面である︒対して︑当該箇所は︑源氏が空蝉を﹁思ひ懲る﹂という場面である︒そもそも︑﹁思ひ懲る﹂﹁思し懲る﹂という言葉は用例が六例と少ない︒ この箇所の定家本系大島本の本文を掲げる︒なお︑傍線を引いた箇所は︑当該本との違いを示す︒

しひていとほしき御振る舞ひの綱飼剣引引劃もうたてあるべし︒よ

きほどに︑かくて閉ぢめてむ﹂と思ふものから︑ただならず︑な

がめがちなり︒君は︑心づきなしと副判胤倒洲創︑かくてはえ止む

まじう御心にかかり︑人悪ろく則矧判胤鯏叫矧︑小君に︑﹁いとつ

らうも︑うれたうも制国淵鯏到倒︑

(4)

④人の恨みも負ふまじかりけり︑といとどあやふく思し懲りにたり︒

︵葵②七六︶

⑤おほかたのあはればかりは思ひ知らるれど︑いと心憂きことと思ひ

懲りにしかば︑いみじうなむつつましき﹂とて︑さらに書いたまは

ず︒︵柏木④二九三

⑥あいなくわづらはしくものしきやうに思しなりて︑またとも御覧じ

入るることもなかりけり︒あいなくそのことに思し懲りて︑やがて

おほかた聖にならせたまひにけるを︑︵宿木⑤四六○︶

﹁恩ひ懲る﹂﹁思し懲る﹂が使われるのは︑男女関係においてのみで

あることがわかる︒その意味では︑当該場面も例外ではない︒思う人

に対して懲り懲りであるという意味合いであることは言うまでもな

い︒では︑なぜ︑当該本はこの箇所を﹁おもひこる﹂という言葉にし

たのであろうか︒先にも述べたように︑この直前の場面の空蝉の心内

語の﹁おもほしこる﹂とこの箇所は対応している︒だが︑直前の場面

であるため︑少々冗長なようにも思える︒ここで︑今一度︑定家本系

大島本との異同を見ておく︒今度は︑右に当該本の本文を傍記する︒

右のうち︑大島本では﹁たえざらむ﹂となっている箇所が﹁かさな しひていとほしき御振る舞ひの紗が鋤郡評辞もうたてあるべし︒よきほどに︑かくて閉ぢめてむ﹂と思ふものから︑ただならず︑ながめがちなり︒君は︑︑心づきなしと誹棚雛郡糀恥かくてはえ止むまじう御心にかかり︑人悪ろく緋肌祁邸熱叫印︑小君に︑﹁いとつらうも︑うれたうも激硫郡恥輔蠅︑ らむ﹂となっているのは︑河内本系諸本と陽明文庫本である︒それ以外の異同は全て︑当該本独自のものである︒源氏が自身の振る舞いを﹁やめることができない﹂とするのが大島本で︑﹁重ねてしまう﹂とするのが河内本系諸本・陽明文庫本・当該本である︒やめることができないのと︑何度もしてしまうというのでは︑後者の方が頻度が高い︒続いて︑源氏が自分の心を﹁思ふものから﹂とする大島本に対し︑当該本は﹁おもひなすものから﹂と︑なんとか決心しようという源氏の意思を強調する︒さらに︑源氏が気にくわないと﹁思しながら﹂とする大島本に対して︑当該本は﹁おもほすものから﹂とする︒双方ともに敬語表現ではあるが︑直前にも﹁ものから﹂という言葉があるため︑当該本の本文はやはり冗長である︒また︑源氏が体裁が悪いと﹁思い気にかかる﹂とする大島本に対し︑当該本は体裁が悪いと﹁悩む﹂とする︒﹁思ひわぶ﹂と﹁わづらふ﹂ではどちらの方がより悪いのかは定かではない︒しかし︑﹁わぶ﹂と﹁わづらふ﹂では﹁わづらふ﹂の方が意味合いが悪くなる︒さらに︑ここの場面での﹁思﹂のつく言葉は全て源氏の﹁思﹂である︒以上のことから︑当該本では︑河内本諸本・陽明文庫本と同じ﹁かさならむ﹂という言葉が用いられた後に︑冗長とまでいえる言葉があえて選択され︑空蝉との状況が︑いっそう源氏にとっては思い悩む状況であったとする本文になっており︑その最後の箇所で﹁おもひこる﹂という︑直前の場面と呼応する言葉が使用されたといえる︒二丁ウラ丁ウラ︵六七八右︶1劃おりQ副みて対面Ru劇︲判りたは2かれとのたまひわたれはわつらはし

(5)

玉里文庫本「古華源氏物語」 「空蝉」巻を読む

10 9 8 7 6 5 4

︲11.■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■3けれとか固る③すちにても④

﹇参考﹈囿七﹁のとゃかになるころ﹂︑回宮尾平大︑陽桃﹁の

とやかなるころ﹂

⑨同署陽飯麦阿⑩ナシ *ただし︑﹁すちにて﹂︒﹁すちにても﹂は当該本のみ︒④ナシ

﹇参考﹈園﹁のたまひまっはす﹂︑陽﹁の給はするは﹂︑

たますは﹂︑桃﹁のたまひめぐらす﹂⑤ナシ

⑥園肖三︑回⑦ナシ③ナシ

③②① をさなきにいかならむとおほせと に我車にて興到司矧制到創訓q劃 ゆふやみのみちたとj︑し9割まきれ なとして女とち②Ⅷuのとやかなる⑧剛剖 まちわたるに紀伊守国にくたり をさなき心ちにいかならんをり⑥口と のたまふはうれしく6おもほえけり

阿黒陽同当陽 園池秀肖三︑回桃祠崇陽飯

飯﹁の

三丁ウラ︵六七九右

1Q利洲引u制② ︵六七九右︶

三丁オモテ︵六七八左︶

1さのみもえおほしのとむ到詞u洲刎

2いふなりひるよりにしの興側対卿Ⅵ刺

3刎給て翻剛潤うたせ給といふさてむ

4かゐ国たらんをみはやと⑤

10 9 8 7 6 5 4 3

2けれはさりけなきすかたに︽鯉しなして

①園御横池秀肖三︑回陽飯桃

②阿黒陽桃

③回宮尾平大︑陽飯

④陽*補入を本文として取り込んだ場合に一致︒⑤回

⑥阿黒陽飯⑦ナシ 門なとさ︑ぬさきにといそきおはす人みぬかた§H割ひきいれておろしたてまつるわらはなれはとのゐ人なちもことにみいれつくいせうせす心やすし﹀東のつまとに一たて一身倒剖たてまつりてわれはみなみのすみのま③刎かうした︑きの︑しりていりぬこたちあらはなりと⑥Ⅷ剖割刈刷劉倒qⅦ︒あつきに

おろさせたま

おもほし ると

(6)

四丁オモテ︵六七九左︶

10 9 8 7 6 5

3川到捌州刷いとよく月利畑勧酬測副例馴

2

1まきるへき几帳なともあっけれは

6めと塾め興呵剥利川刈刷こきあやの

7ひとへかさねなめりなにゞかあらむ

8うへにきてかしらつき劇馴詞副利刈口 4てゐ会5人や⑤

⑧⑦⑥⑤④③②①

陽回桃陽ナ回ナ面

同当

てやをらあゆみいて魁簾のはさま

にいりたまひぬ@コ割司刎いりつる

かうし・劃またさ笛ねはひまみゆる

によりて西さまにみとをしたま

へはこのきはにたてたる屏風⑱の

はしのかたをした蚤まれたるに

にやqみなうちかけてとりやりなとてゐたりもやのQはしらにそはめる 七宮尾大平︑陽

ナシ

陽飯桃

陽飯麦阿

一b心にかかる人ならむとまつ 八〜九行目の﹁かしらつきほそやかにてちゐさき人﹂は︑﹁頭つき細やかにて小さき人﹂﹁頭つき細やかに︑手小さき人﹂の双方の解釈が考えられるだろうか︒四丁ウラ︵六八○右︶

lらむ人丹矧到わさとQ引見ゆましう

2もてなしたりてつきもやせj〜にて

3いたくひきかくしためりいまひとり 9てちゐさき人のものけなきすかた皿そしたるかほなとはさしむかひた

①回七宮尾大︑陽

②回七宮大︑陽③ナシ

﹇参考﹈同︾陽﹁火ちかうてゐたり﹂

④而当陽飯桃⑤飯

﹇参考﹈同﹈陽﹁わか心にかくる人ならんと﹂︑麦阿﹁わか心か

くる人﹂︑桃﹁わか心か︑る人ならむ﹂⑥桃⑦陽桃

7 6 5 4

は舟酬劃制洲剴H刺割引可刎

みゆしろきうすもの塾ひとへか

さねふたあゐのこうちきたつもの

ないかしろにきなして紅の翻倒洲 こりなく 一ハ

(7)

玉里文庫本「古筆源氏物語」 「空蝉」巻を読む

五丁オモテ︵六八○左︶

1かしけにつふノ︑とこえて身引到刈

2かなる人のかしらつきひたひつき

8はおもふらめとおかしうみたまふ

9こ鼠ちそなをしつかなるけをそへ

皿はやとふとみゆるかとなきにはある 7ところなく 4ちなり9洲糾いとふさやかにてなか5くはあられと母副引引洲倒かたの程6.叫剖きよけにすへて・刺制州刹判副

3 10 9 8

①園秀︑回宮尾 ①回圃②ナシ③同一陽桃④ナシ⑤ナシ⑥ナシ ナシナシナシ まのこし月酬引側酬刺副きはまてむねあらはに回可引uはうそくなるもてなしなりいとしろくお﹇参考﹈回﹁あらはにすこし﹂*むねナシ

かた

言葉ではなかったことがわかる︒なお︑﹁柏木﹂巻の夕霧の外見は﹁丈 一行目の﹁そる秘か﹂については︑辞書類に立項されていない︒試

みに︑同じ本文を持つ河内本をもとにした注釈書である﹃紫明抄﹄﹃河

海抄﹂を見てみると︑﹁尖﹂の字をあてている︒﹁尖﹂には︑﹁小さい﹂

という意味がある︒﹁そろろか﹂ではなく﹁そぞろか﹂の本文を持つ

諸本が圧倒的に多いが︑﹁そぞろか﹂も﹁源氏物語﹂以外には用例が

見えず︑﹁源氏物語﹂においても他には﹁柏木﹂巻にしか出てこない︒

﹁柏木﹂巻では︑夕霧の姿を﹁直衣姿いとあざやかにて︑丈だちもの

ものしうそぞろかにぞ見えたまひける﹂︵柏木④三四○頁︶としてい

る︒この箇所は異同が多いが︑﹁そぞろか﹂のみをとりあげると︑次

のようになる︒

そる︑か逼定家本・榊原本ろ︑か園定家本・榊原本

そ画ろか 回高松宮家本・尾州家本・為氏本◇鳳来寺本御物本・保坂本

︑ろか園大島本・横山本・陽明家本・肖柏本・三條西家本

回平瀬本・大島本

国冬本・麦生本・阿里莫本

このことから︑﹁そろろか﹂であれ﹁そぞろか﹂であれ︑一般的な

⑦⑥⑤④③②

同﹈陽

同︺陽ナシ﹇参考﹈陽﹁さはらかにて﹂

園秀肖三︑回陽麦阿

園池︑陽飯桃﹇参考﹈上記以外の諸本﹁いとねちけたる﹂

(8)

だち﹂がものものしく﹁そぞろか﹂に見えると言っている︒一方︑当

該本は︑﹁つふI︑とこえてそる獄かなる人のかしらつきひたひつき

ものあさやかにはなやかなるかたちなり﹂とあることから︑﹁そる︑

かなり﹂は﹁人のかしらつきひたひつき﹂にかかっているとわかる︒

﹁そる︑かなり﹂を注釈書の﹁尖﹂で解釈すると︑空蝉は︑身体はふ

くよかで頭全体が小さく︑はっきりとした顔立ちで華やかな容貌だと

いうことになる︒同様に︑夕霧の容姿も︑身長があり︑体つきがしっ

かりしているために頭全体が小さく見えると解釈できるため︑齪酪は

生じない︒つまり︑﹁そる︑か﹂﹁そ︑ろか﹂は﹁頭全体が小さいこと﹂

を意味する言葉であると解釈できるのである︒

三行目﹁ものあさやかにはなやかなる﹂は︑定家本系では﹁ものあ

さやかにまみくちつきいとあひきやうつきはなやかなる﹂となってお

り︑﹁まみくちつきいとあひきやうっき﹂の一五字分が多い︒二行目

最後の﹁ひたひつき﹂と﹁あひきやうっき﹂の﹁つき﹂が同じである

ことから︑目移りした結果の共通の脱文であろうと考えられる︒しか

し︑﹁つき﹂で目移りしたのであれば︑﹁ものあさやかに﹂が混入する

のは首肯できない︒一方︑麦生本・阿里莫本では︑﹁ものあさやかに

まみくちつきいとあひきやうっき﹂の二二字がない︒こちらは︑﹁つ

き﹂で目移りした結果の脱文で間違いないと考えられる︒

七行目﹁むへこそはおやのになく﹂は︑定家本系では﹁おかしけな

る人とみえたりむへこそおやのよになく﹂となっている︒﹁おかしけ

なる人とみえたり﹂の一二字が抜けているという点では陽明文庫本︑

桃園文庫本も同じであるが︑﹁こそ﹂﹁よになく﹂の箇所に違いがある︒ 五丁ウラ︵六八一右︶

lましこうちはて︑けちさす①樹

二行目﹁にきわ︑しく﹂は︑大島本では﹁きはぎはと﹂となってお

り︑さらにこれは当該本のみの異同である︒この箇所は軒端荻の性格

を表している︒なお︑六丁オモテ一○行目にも︑軒端荻の性格を﹁に

きわ︑しくあいきやうっき﹂とある︒このため︑軒端荻に対して﹁に 29こ︑ろとくみへて⑬にきわ魁しく3さうとけはおくの人はいとしつか8およひをか︑めてとをはたみそ9よそなと角洲劉則剖句さまいよのゆけ皿たもたとjrlしかるましう9糾馴たと

7 6 5 4

①桃

②同一陽③ナシ

④同一⑤園平︑陽⑥回

⑦園御横池秀肖三︑同一団

⑧同一陽桃 けりすみの⑯ところ/〜いくらノーと

にのとめてQまち給へそこはちに 1

こそあらめこのわたりのこふを

嶋なといへといてこのたひはまけに にのとめて⑬

(9)

玉里文蹴本「古兼源氏物語」 「空蝉」巻を読む

六丁オモテ︵六八一左︶

lしへなく国ちおほゐてさやかに きわ画し﹂という言葉を使用することに不審はない︒なお︑大島本の﹁きはぎはとさうどく﹂が喧しさを表すのに対し︑当該本の﹁にきわ︑しぐさうどく﹂は︑陽気さを表す︒同様に︑一○行目﹁みゆ﹂は︑大島本では︑﹁みゆ﹂の後に﹁すこししなをくれたり﹂の一文がある︒この一文を持たないのは当該本だけではないが︑﹁にきわし﹂を使用し︑﹁すこししなをくれたり﹂の一文をなくしていることから︑当該本では軒端荻の人物像を艇す表現が削除されているといえる︒

9 8 7 6 5 10

3をのつからそはめもみゆめすこ 2もGみえねとめをしつけたまへれはjb①

4しはれたる心ちして2はな徹とあ

④③②① へきさましたりにきわ覇しくあい る人よりは心あらむ興刈めと勧めつ いといたうもてつけてこのまされ たつれはわるきによれるかたちを にほはしきところも③割引馴詞いひ さやかなるところなくねひれて

阿黒陽飯

回七尾大

岡﹈陽

同︺陽 陽飯桃

七丁オモテ︵六八二左︶ 六丁ウラ︵六八二右︶

1きやうっき①制制判u割刷いよj︑ほ

2こりかにうちとけて鼻列剖わらひ

2とはまた樛したまはいことなれは 1ちとけたるiありさまかいまみな

10 9

7なつましかりけりとおほすみたま

8ふかきりの人はうちとけたる世

6

5さまなり角到剛到仙叫Wdおほしなから 4みえてさるかたに興劉制判り割人 3なと身矧割引刈刺剃鯏州凶にほひおほく

①同一陽②ナシ③ナシ

﹇参考﹈園﹁そほるれは﹂︑回陽飯﹁そほれゐたり﹂

④同黒陽飯桃⑤ナシ

﹇参考﹈陽﹁あはつけいに﹂︑桃﹁あいつけし﹂

⑥同呉陽飯

⑦同当陽飯桃 ⑯これもまめならぬ御心はおもひはなくひきつくろひGそはめるうはへをのみこそみたまへかう︑

(10)

七丁ウラ︵六八三右︶

1とする円到刎剖劉割剖削なとてかあなた

2にかへりはへりなはたはかりはへ

3りなむときこゆさもなひかし

4つへきけしきにこそはあら

5めわらはなれともの篭角帆刈矧人

6のけしき③劃みつへくしつまれる

7をとおほすなりけり丹剛翔うち

lO

9て 7によりゐたまへりいとかたしけなし8とおもひてれいならぬひとはへり 3なに心もなくさやかなるはいとをし

6 5 4

①同一陽桃

②同一陽桃③回

④同一麦阿⑤ナシナシ 陽桃 ゆれはさてこよひもやかへしてん なから9剴判洲口みたまはまほしきにこ君いてくる④割到乱すれはやをらいてたまひぬわたとの魁とくち

﹇参考﹈園﹁えちかふもより侍らす﹂

而当陽飯﹁えちかふもより侍らすときこゆれは﹂ ﹇参考﹈園﹁人のありさま﹂

陽桃

八丁オモテ︵六八三左︶

lす①口洲このみかうしはさしてむと

2てならすなり興刈川Ⅵしつまりぬなり

3いりて③割剛たはかれとのたまふ

4この恥鐘産の8Ⅵu割はたわむ 一行目﹁とする﹂と﹁とのたまへはなとて﹂の間には︑定家本系︑

河内本系では﹁いとあさましうからうこそあへけれ﹂の一六字が入る︒

この脱文は当該本のみの異同である︒

6いひあはせむかたQ制なくて興刈制0

7剃引訓創針到剥川い﹀れたてまつらんとおもふ 5ところ角到なく⑥ 8はてつるにやあらむうちそよめ9く身倒dして人J1あかる︑︒刎削︲酬皿なりわか君はいつくにおはしま

①ナシ

②陽麦阿桃

③同︺陽飯

④ナシ﹇参考﹈諸本﹁こ﹂⑤ナシ

﹇参考﹈諸本は﹁心ちして﹂かあるいは﹁うちそよめきて﹂と

なっている︒⑥回

まめたちてあれは

(11)

玉里文庫本「古誰源氏物語」 「空蝉」巻を読む

八丁ウラ︵六八四右︶

1うしには几帳そへてはへりと

2きこゆさかしされともQdおかし

3うおほせとみつとはしらせしいと

4をしとおほして夜ふくることの

5こ︑ろもとなさをのたまふ②引例到刺

10 9

8なりけり紀伊守のいもうともこ

四行目の傍記﹁あれきみ歎﹂は後筆だと考えられる︒

⑪⑩⑨⑧⑦⑥⑤④③②① なたにあるかわれに叫洲Ⅷ判引割引剣︒

ナシ

﹇参考﹈ 阿黒陽飯同︾陽桃同当陽同﹈陽飯同呉陽飯桃回圃飯麦阿桃*補入後の文が一致同一陽

回﹁いかてかさることはし侍らん﹂ いかてさることはへらむ

にまるはねたらむ洲団剖剣列﹃劃団とてた︑みひろけてふす﹂︑河内本

系と陽明文庫本では﹁このさうしくちにねたらむ洲剖剖剖剖劃宙とて

ふす﹂となっている︒二重傍線部は定家本系︑河内本系︑陽明文庫本

で一致している箇所︑波線部は定家本系のみの本文である︒とくに︑

小君の独り言に焦点化すると︑当該本では﹁風吹く通りに﹂と周囲へ

の言い訳のようになっているのに対し︑定家本系・河内本系・陽明文

庫本では﹁風吹き通せ﹂と周囲の意見は関係ないといわんばかりの言

い方になっているという違いがあるとわかる︒ 七行目から八行目にかけての﹁この障子くちにねたらむ風ふくとをりにとてふしぬ﹂は独自本文である︒定家本系では﹁このさうしくち J19こたち$ばひんかしの⑦酬到刊副⑩ねたるへし︿と﹀はなちつる③ ひさしに

8

6劃はq副引到たゞきているみな人I︑

局I④①園御横池秀肖三︑回陽飯麦阿

②園肖三︑回陽飯麦阿③ナシ*諸本は﹁つまとを﹂

④同写陽桃*ただし︑河内本系は﹁みな人ねにけり﹂⑤ナシ

⑥阿黒陽飯桃⑦同呉桃

⑧同当陽桃 む風ふくとをりにとてふしぬ

ねにけりGこの障子くちにねたら

あまたわらはもこ

(12)

九丁オモテ︵六八四左︶

lなたにいりてふしいれはとはかり

2そらねして火あかきかた①刎②開副ひ

3ろけてかけほのかなるにやをらいれ

4たてまつるいかにそおこかましき

5こともこそとおほすにいとつ魁ま

6しけれとみちひぐま︑にもやの几

7帳のかたひらひきあけていとやをら

8いり給とすれとみなしつまれるよの

9御そのけはひ3のやわらかなるしも

皿いとしるかりけりをむなはさこそ 一○行目は河内本系・桃園文庫本とともに﹁こなた﹂となっている

が︑定家本系では﹁そなた﹂となっている︒この直前の文は︑﹁こた

ちはひんかしのひさしにあまたねたるへし﹂である︒﹁寝たるべし﹂

と推量しているのは語りの主体であろうか︒とするならば︑戸を開け

てくれた子どもが﹁こなた﹂に入って臥す︑という当該本では︑語り

の主体は源氏の傍ではなく︑女房たちのいる廟ということになるだろ

︑︽ノ○

③②①

回回回

陽陽陽 飯麦

九丁ウラ︵六八五右︶

一○丁オモテ︵六八五右︶

1るけはひのいとかうはしう︑ちにほ

2ふにかを鼠①剖刈州引測罰q口ひと

3へうちかけたるき丁の角引割封剥到口

4剥刈剛くらけれと③引到矧判引創割 1わすれ給を9列刺川副割引判におもひ2なせとあやしく豊詞刎判創到則刎u3ことを心にはなる︑劉醐なきころにて4興判削剥割引Ⅷ劃ねられす︒馴剖ひるは5なかめよるはねさめかちなれは6春ならぬこのめもいとなくなけか7しきにこうちつる君こよひは8こなたにといまめかしう︑ちかたら9ひて倒刺刈刎割Ⅵ創劉わかき人はなにⅢこ︑ろなくいとよく③判岡引引刺科川か秘

⑦⑥⑤④③②①

陽桃

圃七宮尾大︑陽

同︺陽

陽飯桃

陽飯桃 一一一

(13)

玉里文庫本「古錐源氏物語」 「空蝉」巻を読む

一○丁ウラ︵六八六右︶ 5たまふけはひいとしるしあさまし6うおほえてともかくも興掛判訓剴刺調7すす︑しなる劉例ぺ刷副引引判劇副8きてすへりいてに興科別君はいり9給てた︑ひとりふしたるを心やす皿く

3しけはひよりはてあたりものj︑しく 2をしやりてよりたまへるにあり

1 5 4

6↓uかはりたるをみあらはし給てあ

7さましうこころやましけれとひし

さましうこころやましけれとひと

︑LI〃h■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■︲ず■■■■■■■■■■■■■■

たかへとたとりて侭みえむ

価いとお ⑧⑦⑥⑤④③②①おほゆれと②おほゆれと⑫ おもほしもよらすか

﹃jしいきたなきさまなと⑥のあやしく

こか ふたりはかりふしたる

回封驍囿驍回驍

﹇参考﹈諸本は﹁けり﹂

﹇参考﹈諸本は﹁おほす﹂

陽飯桃

︑ぬを

三行目﹁てあたり﹂という言葉があることにより︑暗闇で視界が閉

ざされていることが強調されている︒同様のことは︑一○丁オモテ七

行目﹁ひとへのをとせぬ﹂︵陽明文庫本・桃園文庫本﹀にもいえる︒

なお︑七丁オモテ五行目﹁こ君いてくるをと﹂︵河内本系・麦生本・

阿里莫本︶︑七丁ウラ九行目﹁うちそよめくをとして﹂︵当該本独自本

文︶と︑当該本では﹁音﹂という言葉を三か所に使用している︒いず

れも暗闇で視界が閉ざされているか︑視点人物から見えていない場所

での場面である︒当該本では︑垣間見から軒端荻への夜這いまで︑常

に一部ないし全部の視界が閉ざされ︑﹁見えていない﹂ことが強調さ

れた本文となっている︒

|一丁オモテ︵六八六左︶

1かる慰こゞろ①制副州倒かひなくおこに

10 9

①回圃

②麦阿桃

③陽飯桃

④同異陽飯桃

⑤ナシ*諸本﹁みえむも﹂

⑥同当陽飯⑦ナシ

﹇参考﹈桃﹁あやしう﹂ ましうあやし︒qおもふへしほいの人をたつねよらむもかはかりの

一一一一

(14)

二丁ウラ︵六八七右︶

1にもおもひまとはすQ刺刈uu引刈

10 9 8

6⑤瑚剴副割川副uいとおほえす⑥刻剃洲u7きにあきれたるけしきにてなに 御こ︑ろあさ︑Q劉刎かしやうl︑ 4

2こそおもはめと興掛制剛剖Ⅷ列引口

3かのおかしかりつるほかけならは③Ⅷ

①同当陽飯桃②ナシ

﹇参考﹈桃﹁おほすうちに﹂③ナシ

﹇参考﹈同﹈陽飯﹁いか種はせむとおほしなる﹂④回

⑤而当陽桃⑥回⑦ナシ

﹇参考﹈陽﹁いとをしけなるけしきもなし﹂︑麦阿﹁いとをしき

けしきもなう﹂︑桃﹁いとをしけなるところもなし﹂

⑧同当陽飯桃 もなし世中をまたQu引刺ほとより はされはみたるかたにてあえか か魁せむとおもほしなるもわるきの心ふかくGいとをしけるにけしき

五行目﹁世をつ︑む﹂という言葉があるが︑一二丁ウラ六行目にも

﹁よつ猫む﹂とあること︑また︑この箇所は﹁世をつ︑む﹂とする諸

本が多いことから︑当該本の本文が特異なわけではないといえる︒

一○行目﹁けれと﹂の後に︑定家本系には﹁またいとわかき心地に

さこそさしすきたるやうなれと﹂の二四字がある︒直前の﹁けれと﹂

10 9 8 7 6 5 4 3 2

①回

②園御池秀肖三③回④回

⑤同一陽飯桃

⑥園池秀肖三︑回⑦陽

⑧同当陽飯⑨ナシ uと②制判副馴倒剖いかにして③洲刈るそとのちにおもひめくらさむも いかにして倒洲川

たまふをおもひたとらむ人は心え

つへけれとg刺しもおもひわかす わか翻馴刺刷刷ことにもあられと月洲刎つらき人のあなかちに科凹をつ駒むもさすかにいとをしけれはたひ/︑の御かた愛かへに.似つけたまひしさまを③叫出測刊制剤剴倒u

(15)

玉里文庫本「古筆源氏物語」 「空蝉」巻を読む

と﹁なれと﹂で目移りした結果の脱文であると考えられる︒

八〜一○行目﹁おもひいてたまふれいににすはしたなきこ園ちして

よふかくいてたまふ﹂は︑定家本系では﹁いてたまふ﹂の目移りのた

めであろう二四字の脱文があり︑﹁おもひいてられ給﹂となっている︒ 一二丁オモテ︵六八七右︶

1にくしとはなけれと御心とまるへき

2ゆへもなき心ちしてなを身引刎うれ

3たき人のこ︑ろをいみしう卿判引剛

4すいつくにはひまきれてかたく

5なしとおもひゐたらんかうしう

6ねき③刈刎側はありかたきものを

9

8れかたう⑤ 7とgおもほすにしもあやにくにまき

①ナシ﹇参考﹈諸本﹁かの﹂﹁あの﹂ 10

②ナシ﹇参考﹈諸本﹁おほす﹂

③阿黒陽飯

④同﹈陽飯桃

﹇参考﹈園御横池秀肖三﹁おほすにしも﹂

⑤同一陽桃

⑥園肖三︑

にすはしたなきこ︑ちしてよふ一か一く おもひいてたまふれいに

回宮尾平大︑陽飯麦阿 わか

2さすかになさけJ︑しく9列引刈

8 7 6

3きりをきたまふ人しりたること

4よりもかやうなるはQ到刷到甥句剖 二丁ウラ︵六八八右︶1やかなるけはひもあはれなれは

10 9

5わさになむ国かし⑨刎人もいひける

三丁オモテ︵六八八左︶

1なむわすれてまちたまへよなと

2なをr︑しく①召かたらひ・刺剥剖馴副

3人のおもひはへらんことの③

4うあやしきになむえきこえさす ①陽②回③園肖︑同一陽④同一陽飯⑤同一陽⑥ナシ﹇参考﹈諸本﹁人ノ\も﹂⑦桃

たさるへき阿刈川Ⅵゆるされしかしと まかすましうなんありけるま にしも9割引刺馴刺刈削⑤︒︲刈引口え あひおもひ給へよつ透むことなき

おもふにかねてよりむれいたく

はつかし

(16)

三丁ウラ︵六八も

1とhソていて①

︵六八九

7わつらはしくてまろそといらふよ

8中に魚叫刺そありかせ給ふとさか

9しかりて9判割矧剴到剴H則いとに

皿く︑てあらすこ国もと⑧口いつる参 しかりて9判割矧剴到剴H則いとに

く︑てあらすこ国もと⑧口いつるそ 69洲刈刷たそとおとる#〜しくとふ・刷刮

5 4 3 2 10 9 8 7

5ましきとうらもなくいふなへて

6ひとにしらせはこそあらめこの興引刺

⑤④③②①

うしろめたく興捌刈副叫可ねけれはふとおとろきぬとをやをらをしあくるにおいたるこたちのこゑにて にふしたるをこしおとろかし給 さかめるうへ人につたへてきこえんけしき興劃なくもてなしたまへなといひをきてかのぬきすへしたるとみゆるうすころもを

回回回陽回

陽陽陽 桃飯

四丁オモテ︵六八九左︶

10 9 8 7 6 5 4 3 2 1

③②①

桃回桃

①ナシ②ナシ

﹇参考﹈回﹁こ君かみちにふしたるををしおとろかし給ふ﹂

③而当桃④陽

⑤同当陽飯桃

⑥ナシ*河内本系︑別本は﹁こはなそ﹂⑦回

⑧阿黒陽飯

て君を蚤しいてQたてまつる暁ちか

き月くまなくさしいて鼠ふと人

のかけ画刎みえけれはまたおはす

るは③刈利そととふ曾切引利Ⅵ釧馴な

めりけしうは角矧刷割引副おもとのたけ

たち働剰刎割といふたけたかき人の

つねにわらはる蚤をいふなりけりお

い人これ︒︒つらねて角珂刎qとおもひ

て③叫剥制乱硴酬たまひなむといふ/︑

われもこのとよりいて堅くわひし ︑ノ

(17)

玉里文庫本「古筆源氏物語」 「空蝉」巻を読む

九行目の傍記は︑﹁ら﹂の代わりの文字であろうことが︑諸本の本

文からわかる︒

四丁ウラ︵六九○右︶

1けれ①uえはたをしかへさ禽可舞刺河川副叫刈

8 7 6 5 4 3 2 ④ナシ

﹇参考﹈園罠部のおもと﹂︑回七宮尾大﹁せうのおもと﹂︑回

平﹁けふのおもと﹂︑陽﹁小輔のおもと﹂︑飯﹁みんふ

の少納言のおもと﹂︑桃﹁少将のおもと﹂⑤回団⑥陽桃

⑦同当陽桃⑧回⑨ナシ

﹇参考﹈園回﹁いまた︑今たちならひ﹂︑陽﹁いまた︑今たち

給ならひ﹂︑飯﹁いまた︑たちならひ﹂︑麦阿﹁とくた園給ならひ﹂︑飯﹁いまた︑たちならひ﹂︑麦阿

刺創刊温刺訓刈さしよりておもとは

⑤︒H﹃酬うへにやさふらひたまひつる

おと詮ひよりはらをやみて息洵剖川調

たきにしもにはへりつるを人

すぐな︑りとてめし国かはよへま

うのほりしかと猶えたふましく とにかくれてそひたちたま 今たちならひ﹂︑桃﹁いまにた︑たちならひ﹂

一五丁オモテ︵六九○左︶

1きぬるにからうしていてたまふ①口

2猶か︑るありきは②汎副川Muq刻剰 9なむとうれふいらへもきかてあな皿はら︑いまきこえんとて⑦畑釧割引

10 9 8 7 6 5 4 3 ⑥ナシ ⑤同一飯麦阿桃 ④同一桃 ③ナシ ②回 ①同一団

﹇参考﹈桃﹁いとたえかたきに﹂

⑦回平︑桃

①桃 うかりけりといよI︑おほしこりぬへしこきみ③削御車のしりにて二条院におはしましいあり④uさまとあはめ︑洲︒割訓副訓刈かの人の心をつまはしきをしつ蚤うらみたまふいとをしくてものもきこえすいとふかうにくみたまふへかめれは おさなかりけり

(18)

一六丁オモテ︵六九一左︶ 五丁ウラ︵六九一右︶

lみもうぐおもひはてぬなとかよそ

2にてもなつかしきいらへはかりは

3したまふましき伊予の介におとり

4けるみこそなとこ︑ろつきなしと

5おもひてのたまふありつるこう

6ちきをさすかに御そのしたに

3 2 1 ひかえ たにお りのも したひ はまは しふつ うをま ちいし やとけ すわれ みひと たしま

とめ

へおや

もか

7ひきいれておほとのこもれりⅢこの

8こ君おまへにふせてよるつにう

9らみかつはかたらひ給ふあこは

叩らうたけれとつらきゆかりにこそ

①陽

﹇参考﹈圀横池秀︑回﹁このきみ﹂ ②園池秀︑③陽桃④桃⑤回⑥回

一六丁ウラ︵六九二右︶

1⑪刺刈利口もたりかの人もいかに思

10 9 8

6身ちかうならしつ︑みゐたまへ

7りこ君かしこにいきたれはあれ

5 3

4なし何 2らむといとをしけれと鱈おもほし

10 9 8 7 6 5 4

①同署陽麦阿桃②ナシ

﹇参考﹈園﹁かたノーおもほしかへして﹂ ①園横秀

きみ6まちうけていみしうのたま

ふあさましかりしにとかくま

きらはしても人のおもひけむこ

うひとかうつれるを かへすかたI〜ありて にqかきすさみ給

うつせみのみをかへてけるこの

もとになを人からのなつかしきかな

とかきたまへるをふところに ねられたまはす御す︑りいそきめしてさしはへたる御文にはあらてた魁うかみにてならひのやう

このうすころものなつかし

'戸

、、ノまことに御

1

(19)

玉里文庫本「古筆源氏物詞 「空蝉」巻を読む

四行目は定家本系では﹁かのうす衣はこうちきのいとなつかしき人

かにしめるを﹂となっている︒﹁人香﹂が﹁しめる﹂と﹁うつれる﹂

の違いである︒

七丁オモテ︵六九二左︶

1とさりところなきにいとなんわり

2なき①洲釧②側割引剃副引州倒刈をかつ

10

3個V力にくま帽す傷一人といごカー

4め給ふひたりみきにくるしう

5おもへとかの御てならひとりい

6たりさすかにとりてみたまふ

7かのもぬけをいかにいせをのあ

8まのしを興割刎制副詞判おもふも1

9ならす八と国よるっに鼻州矧刎別 まのしを興割刎制副詞判おもふもた はいかに⑥おほすらんとはつかしめ給ふひたりみきにくるしうおもへとかの御てならひとりい ③園肖︑回団④ナシ

﹇参考﹈回﹁かのうすころものなっかしうひとかうつれるを﹂

⑤ナシ

﹇参考﹈回﹁みちかくならしっ︑﹂︑飯﹁身ちかふならしっ︑﹂

桃﹁身ちかうならしつ︑﹂

⑥ナシ﹇参考﹈他の諸本﹁まちつけて﹂

①回﹇参考﹈陽飯桃﹁かう﹂

ならすいと︑よるつに鼻科刈判矧科別

にしのきみもゞの舟叫到洲川則削剥u はいかに③ 一七丁ウラ︵六九三右︶

1たなきこ︑ちして①制釧刺川にけり

2またしる人もなきことなれは人

3しれすうちなかめてゐたりこ君

4のわたりありくにつけても②釧刺

5引剣副到例刺測剖御消息もなし

6あさましとおもひうるかたもなく

7てされたるQこ国ろにも蚤のあはれなる

8劃訓uつれなき人もさこそしつ

9むれいとあさはかにもあらぬ御

皿けしきを角到制刎判りq口あり ②園池秀肖三︑回陽

﹇参考﹈園横﹁こ︑ろをさなき︿心はへ﹀を﹂︑桃﹁心おさな

きこころはへも﹂③回

④ナシ﹇参考﹈回七﹁しほたれてや﹂︑陽﹁しほなえてや﹂

⑤同﹈陽

⑥同当陽飯桃

①同当陽飯桃

②阿智陽桃③園秀︑回陽

④同当飯桃

(20)

本稿で確認した当該本の脱文は︑五丁オモテ三行目︑七丁ウラ一行

目︑二丁ウラ一○行目にあった︒このうち︑五丁オモテは河内本系・

陽明文庫本にも同じ脱文があるが︑残りの二か所は当該本のみのもの

である︒先述したが︑二丁ウラの脱文は﹁けれと﹂と﹁なれと﹂の

目移りによるものと考えられる︒しかし︑七丁ウラの脱文には決定的

な目移りの痕跡は見られない︒一方︑この箇所は︑当該本が﹁かへし

てんとするとのたまへは﹂とするのに対し︑陽明文庫本は﹁かへして

んとやいとあさましうこそあれとのたまへは﹂とする︒新美論文では︑

︵注螂︶陽明文庫本と当該本が同一祖本を有するとしているが︑この箇所を見

るとその限りではないといえよう︒

七丁ウラと二丁ウラの脱文は︑それぞれ一六字と二四字である︒

当該本は一行あたり一二〜一七字である︒二丁ウラの脱文が二行分

だとすると︑一行あたり一二字となる︒このことから︑当該本の柤本

は一行あたり一二〜一六字であったと考えられる︒ただし︑当該本は

そのほとんどの行が一五字前後で構成されていることから︑当該本の 一八丁オモテ︵六九三左︶

1しなからのわかみならはと︑り

2かへすものならねとしのひかたけれ

3はこの御た飼うかみのかたつか4たに

5うつせみのはにをく露のこかく

れてしのひ︐r︑にぬる魁そてかな

おわりに

︻補記︼本文の翻刻︑および掲載を許可してくださった鹿児島大学附属図書

館に深く御礼申し上げます︒ ︵注M︶祖本は当該本よりも小さいサイズのものであったのであろう︒

玉里文庫本﹁古筆源氏物語﹂﹁空蝉﹂巻の本文の特徴は︑以下の三

点である︒一つ目は︑﹁思ふ﹂に関する言葉を冗長なまでに使用し︑

源氏の苦悩を語るということである︒その極めつけは︑直前にある空

蝉が源氏の心内を慮る場面の﹁おもほしこりにける﹂に対応するかの

ように出てくる﹁おもひこりにし﹂という言葉であった︒しかも︑双

方ともに完了の助動詞・過去の助動詞を使用しており︑空蝉に逢おう

として失敗する源氏の行動に対する後悔の度合いを強いものにしてい

る︒二つ目は︑軒端荻の性格を表す本文が諸本に比べて良いものと

なっており︑さらに軒端荻を卑下する本文を削除していることであ

る︒三つ目は︑﹁音﹂や﹁てあたり﹂という言葉を使用することで︑

暗闇や垣間見によって人物たちの視界が閉ざされていることを強調し

ているということである︒以上のことから︑当該本の書写者は︑意識

的に本文を変えているといえる︒

︻付記︼本稿は︑二○一九年度武藤ゼミでの講義︵基礎演習I.Ⅱ/演習Ⅱ.

Ⅲ︶を基にしている︒各丁の担当者は以下の通り︒一丁オモテ〜二丁オモテ久保田千仁二丁ウラ〜三丁ウラ白窪怜四丁オモテ〜五丁オモテ樋口実妃

(21)

玉里文庫本「古筆源氏物甫剖「空蝉」巻を読む

注5武藤那賀子﹁玉里文庫本古筆源氏物語︵鹿児島大学附属図書館蔵︶再考︵ご﹂

今国際文化学部論集﹂第一九巻二号︑二○一八年一○月︶および﹁玉里文庫本古

筆源氏物語︵鹿児島大学付属図書館蔵︶再考︵ここ︵﹃国際文化学部論集﹂第一九

巻三号︑二○一八年一二月︶.

注6注2に同じ︒

注7伊牟田経久﹁玉里文庫本﹁源氏物語﹂︵二種︶の本文I﹁空蝉﹂﹁関屋﹂の両帖

についてl﹂﹁国語国文薩摩路﹂第二○号︑一九七六年三月︶注8注3に同じ︒ ﹁関屋﹂の両帖 注4︒源氏物語﹂原本データベース﹂︵二○二○年一月三○日一六時○○分閲覧︶

言g望苛勝巳.旦冨旦頁言①三︑句恩冒⑥涜蔦pmI﹇ロⅡのロg篭弓尻目冨陣○○○口因Ⅱg霞︐

9割呂陣目三○の同国Ⅱ鮮勺幻○○弓屋勺因Ⅱ画昌一陣の霞○三国Ⅱ寂向いまg誤邑寂因︑ま画少誤呂誤

両・誤国・課唖甸誤向﹃誤署誤醇や課両酌誤ン巽誤や国訳固四誤曽訳閏陣罰同心ご両の弓冨シ詞︻Ⅱ国邑陣○ 注3新美哲彦﹁鎌倉時代における﹃源氏物語﹂の諜写態度l空蝉巻にお

庫本と玉里文庫本を通して﹂﹁国文学研究﹂一五七巻︑二○○九年三月 の諜写態度l空蝉巻にお 注l鹿児島大学付属図番館の玉里文庫には︑﹁源氏物語﹄が二セットあス うのは︑一五帖のみのもので糊に﹁古雛源氏物語﹂とあるものである︒注2徳光澄雄﹁鹿児島大学附属図番館職玉里文庫本古誰源氏物語にっ玉里文庫本古誰源氏物語につ が二セットある

重z画詞Ⅱ三三陣田口Ⅱ目一扉目冨の三○Ⅱ骨 研究﹂二三号︑一九六七年四月

一一一一一一八七五 七六四三一○丁丁丁 丁丁丁丁丁丁ウオウ ウオウオウオラモラ

ラモラモラモ 1 1

1 1 I テ九 1

1 1 1 丁八丁

八一五一二一ウ丁ウ 丁七丁四丁一ラオラ

オ丁ウ丁ウ丁

モオラオラオ

テモ

ける陽明文 吉満友美末永楓汰伊藤沙也歌新富白窪怜樋口実妃吉満友美末永蝋汰伊藤沙也

︒本稿で扱

﹁語文

注皿ここでの源氏物語本文は﹁新編日本古典文学全集源氏物語﹂︵小学館︶を使用している.なお︑丸括弧内に︑巻名︑その下に丸で囲った数字で小学館での巻数︑

ページ数を示した︒

注肥注3に同じ︒

注陞なお︑当該本の寸法は縦一六・三噸×横一五・四mである︒ 注9注3に同じ︒注皿異同の確認には︑池田旭鑑﹁源氏物語大成﹂︵中央公論社︶を使用した︒また︑

諦本を示す漢字一字もこれに従った︒

注u九括弧内の文字は︑注4に掲げたサイトのコマ数および画像の左右を示してい

一一一

参照

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