論文内容要旨
論文題名
Relationship between retention forces and stress at the distal border in maxillary complete dentures : Measurement of retention forces and finite-element analysis in individual subjects
(上顎全部床義歯の維持力と床後縁の応力との関係:被験者ごとの維持力 測定と有限要素解析)
掲載雑誌名
The Journal of Prosthetic Dentistry (投稿中)
専攻分野(科目)高齢者歯科学 氏名 小川貴正
内容要旨
【背景】 上顎全部床義歯の維持力測定を行った研究は数多くあるが,こ れらの装置を用いても上顎全部床義歯の維持力発生に関する生体力学的 要件は明確化することが出来ない.
【目的】 上顎全部床義歯の維持力発生に関する生体力学的要件を解明す ることを最終目的とし,三次元有限要素解析を用い,上顎全部床義歯の維 持力の推定が可能であるかを検証することを目的とした.
【方法】 被験者は先行研究で上顎全部床義歯の維持力測定を行った被験 者
12
名(男性6
名,女性6
名,平均年齢77.5
歳)とした.各被験者の上 顎全部床義歯のレプリカ義歯をスキャニングレジンを用いて製作した.レ プリカ義歯をコーンビームエックス線CT
で撮影し,三次元有限要素解析 ソフトを用いて三次元有限要素モデル(義歯部,粘膜部,シーネ部)を制 作した.荷重部位は先行研究と同様に,牽引部位を義歯後縁から5 mm
前 方の正中部(P),加圧部位を左右中切歯切縁部の中間部(IE),右側第一小臼 歯の頬側咬頭頂部(PC)と設定した.荷重量は咬合平面に対して垂直に10
N
とした.解析領域は縦幅を粘膜部後縁から1.5 mm,横幅を両側ハミュ
ラーノッチ間とした.粘膜部後縁の湾曲に対応するため,解析領域の横幅 を5
つの小領域に分割した.各荷重条件下で,最も高い最大主応力を示し た小領域の値を各被験者の代表値とした.発生した最大主応力と義歯維持 力との関係を比較検討した.【結果】 各測定部位の最大主応力の応力分布は被験者ごとで同様の分布 状況となった.測定部位
PC
は測定部位P
よりも有意に小さな最大主応力 を示し( P < 0.05 ),測定部位IE
は各測定部位と有意な差は認められなか った.先行研究で維持力間に相関関係の認められた測定部位P,IE
に関 して最大主応力においても同様に相関関係が認められた( P < 0.05 ).義歯 維持力の低かった測定部位は,最大主応力が高く測定された.【結論】 更なる条件設定が必要であるが,三次元有限要素法を用い,上 顎全部床義歯の維持力推定を行える可能性が示唆された.