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医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻

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Academic year: 2022

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(1)

氏 名 授 与 し た 学 位 専攻分野の名称 学 位 授 与 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文の題目 論 文 審 査 委 員

田頭 龍二 博 士 歯 学

博甲第6603号 令和4年3月25日

医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

マウス 長管骨損傷モデルにおける間葉系幹細胞とマクロファージ の相互作用

沢 禎彦

教授 上岡 寛 教授 稲葉 裕明 准教授

学位論文内容の要旨

【緒言】

近年,自然免疫反応や組織恒常性維持などの司令塔として知られるマクロファージが,創傷治癒過程 において炎症から免疫調節,組織再生連関に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている.炎症 や,外的要因による組織損傷の際,最初に好中球や

T

細胞などとともにマクロファージが炎症局所に集 積し,T 細胞などに由来する炎症性サイトカインが不活性型マクロファージ(M0)を炎症性マクロファ ージ(M1)に活性化する. 創傷治癒が進むにつれ,M1は抗炎症性マクロファージ(M2)へと極性を変化 させることで組織修復を促進するとされ,M1から

M2

への極性変化こそが組織再生の起点ではないかと 考えられている.一方で,多分化能を有する間葉系幹細胞(MSCs)は,組織再生の要として注目され,

数多くの組織再生工学や再生医療に応用されてきた.過去の報告では,

MSCs

も創傷治癒局所に集積する ことが明らかにされているが,創傷治癒過程において前述のマクロファージとどのように関わり,組織 再生が誘導されるのかについてはほとんど知られていない.そこで本研究では,マウス長管骨創傷治癒 モデルを用いて,

M1, M2,そして MSCs

が組織損傷・再生の場で経時的にどのように出現し,マクロファ ージを実験的に枯渇させた場合には,創傷治癒がどのように変化するのかについて検討した.また,こ の際に生じていると思われる,M1,M2と

MSCs

の相互作用の分子基盤を

in vitro

にて検討した.

【方法】

全身麻酔下でマウス(C57BL/6J, 6週齢メス)に直径

1mm

のラウンドバーを用いて大腿骨腹側皮質 骨に穿孔することでマウス長管骨創傷治癒モデルを作製した.骨欠損作製

5,7,10

日後に頸椎脱臼に て安楽死させ,大腿骨を

4%パラフォルムアルデヒドにて固定し,以降の実験に使用した.マイクロ CT

解析による骨組織治癒の評価,ならびにヘマトキシリン・エオジン染色,TRAP 染色,マッソントリク ロム染色にて組織形態学的解析を行い,M1,M2, MSCs,骨芽細胞の経時的な分布を,それぞれ抗

CD80

抗体,抗

CD206

抗体, 抗

PDGFR抗体, 抗 RUNX2

抗体を用いた蛍光免疫染色にて検出した.また,実験

的マクロファージ枯渇群として,骨欠損作製の

24

時間前にクロドロン酸内包リポソーム(12.5 mg/kg)

を腹腔内投与し,生理食塩水投与群を対照群として,創傷治癒の状態を比較した.さらに,マウス骨髄

由来の

MSCs

M1,M2

を,それぞれカルチャーインサートを用いて間接共培養し,M1における炎症性

サイトカイン(

Tnf-a, Il-1b, Il-6, iNos

),M2における抗炎症性サイトカイン(

Il-10, Tgf-b

),な らびに

MSCs

の免疫調節能に関連する遺伝子(

Hgf, Tgf-b , Fas-1, Il-2

)の発現変化を

real time RT-

PCR

法にて解析した.各データの統計学的有意性は, 二元配置分散分析, 一元配置分散分析または独立

t

検定を実施した.

(2)

【結果】

マイクロ

CT

解析の結果,対照群およびクロドロン酸投与群の両群ともに骨欠損作製後,経時的に骨 量が回復したものの,クロドロン酸投与群では骨欠損作製

5

および

7

日後に,対照群と比較して明らか な骨再生の抑制が観察された.同様に,ヘマトキシリン・エオジン染色ならびにマッソントリクロム染 色においても,両群ともに経時的な骨組織の治癒が観察されるものの,クロドロン酸投与群では皮質骨 の封鎖が不完全で,骨髄中には未成熟な骨梁が観察された.さらに蛍光免疫染色による

RUNX2

陽性骨芽 細胞ならびに

TRAP

染色による

TRAP

陽性破骨細胞も,クロドロン酸投与群では陽性細胞数が有意に減少 したことが観察された.また,CD80陽性

M1

は,観察期間中,生理食塩水投与群では骨欠損作製

5

日後 に最も多く観察され,その後減少した.クロドロン酸投与群では,骨欠損作製

5

日後では,対照群と比 較して著明に少ない

CD80

陽性

M1

細胞が観察され,7日目でわずかに増加し,その後減少した.一方,

CD206

陽性

M2

は,対照群では欠損作製

7

日後にピークを迎え,10日後に減少したが,クロドロン酸投

与群では

10

日後まで増加する傾向が観察された.

PDGFR陽性 MSCs

は,両群ともに骨欠損作成後経時的 に陽性細胞数が減少したものの,群間に有意な差は認められなかった.

MSCs

M1

M2

In vitro

間接共培養すると,

M1

が発現する炎症性サイトカイン遺伝子である

Tnf-

a,Il-1b , Il-6, iNos

などが強く発現阻害されるだけでなく,M2が発現する抗炎症性サイトカイン遺

伝子である

Il-10

が発現促進された.同時に,

MSCs

M1

M2

を間接共培養することによって,

MSCs

が 発現する遺伝子である

Hgf

Il-2

Fas-l

Tgf-b

が発現促進された.さらに,

MSCs

M1

の共培養では,

M1

MSCs

が発現する

M2

誘導性サイトカイン遺伝子である

Il-4

および

Il-13

の発現を促進し,M1から

M2

への分極を強力に誘導している可能性が示唆された.

【考察および結論】

マウス長管骨損傷治癒モデルにおける創傷治癒過程では,骨欠損作製

7

から

10

日後に皮質骨が封鎖 され,その過程では

M1,MSCs,M2

の集積とともに骨芽細胞/破骨細胞の発現を認めた.これらの一連の 反応は,クロドロン酸投与によるマクロファージの枯渇で著しく阻害され,組織再生の遅延がもたらさ れることが明らかとなった.また,

in vitro

間接共培養の結果から,M1によって刺激された

MSCs

は,

局所での免疫調節に関与するとともに,M1から

M2

への分極を誘導することで創傷治癒を促進させる可 能性が示唆された.

(3)

論文審査結果の要旨

【目的】本研究では、マクロファージ枯渇付帯マウス長管骨損傷モデルを用いて組織再生における炎症性マ クロファージ、抗炎症性マクロファージおよび間葉系幹細胞の分布の変化と創傷治癒の関連性を検討し、組 織再生におけるマクロファージの役割を解明することを目的とした。

【方法】C57BL/6J(メス

6

週齢)の大腿骨をラウンドバーで穿孔して長管骨損傷モデルとした。さらにクロド ロン酸内包リポソームを腹腔内投与してマクロファージ枯渇マウスを作製し、骨組織再生の起こる術後

5・

7・10

日で安楽死させ実験に使用した。 In vivo では、骨組織をマイクロ

CT

解析、TRAP 染色およびマッソン トリクローム染色にて、また組織内細胞分布は炎症性マクロファージ(M1)、抗炎症性マクロファージ(M2)、

間葉系幹細胞(MSCs)、および骨芽細胞を

CD80、CD206、PDGFR、およびRUNX2

をそれぞれのマーカーとして、

蛍光免疫染色で評価した。 In vitro では、マウス長管骨から採取した骨髄組織から

M1、M2

および

MSCs

を抽 出、カルチャーインサート(0.4μm)を用いて

M1/2

MSCs

を共培養し、

M1

の Tnf-

、Il-1、Il-6 および iNos 産生、M2 の Il-10 および Tgf- 産生 、

MSCs

の Hgf 、 Tgf- 、 Il-2 および Fas-1 産生を指標としてこれら細胞の 活性化を

real time RT-PCR

にて評価した。

【結果】クロドロン酸投与群の骨量はマイクロ

CT

では損傷

7

日目で非投与群より有意に少なく、10 日目で は有意差を認めなかった。マッソントリクローム染色では投与・非投与群ともにアニリンブルー好染の骨組 織の増加が観察され、クロドロン酸投与群で皮質骨の不完全な再生が観察された。RUNX2 陽性骨芽細胞数な らびに

TRAP

陽性破骨細胞数はクロドロン酸投与群で対照群より有意に少なかった。CD80 陽性

M1

はクロドロ ン酸投与群

5

日目で対照群より有意に少なかった。CD206 陽性

M2

はクロドロン酸投与群で対照群より

7

日目 に有意に少なかったものの

10

日目で有意差がなかった。PDGFR陽性

MSCs

はクロドロン酸投与群と対照群 で有意差がなかった。

M1/2

MSCs

の共培養実験では、

M1

における Tnf-

、

Il-1、 Il-6 および iNos の産生が 有意に減少し、M2 における Il-10 の産生が有意に増大した。また、M1 との共培養で

MSCs

における Hgf 、 Il- 2 、 Fas-l、Il-4 および Il-13 の産生が有意に増大し、M2 との共培養で

MSCs

における Hgf 、 Il-2 、 Fas-l およ

び Tgf- の産生が有意に増大した。

【考察・結論】長管骨モデルでは、損傷部に

M1・MSCs

が集積し

M2

が増加、マイクロ

CT

解析でマクロファー ジ枯渇群が対照群と比べて損傷部の骨再生が遅延したことから、M1・MSCs の集積と

M2

の増加は組織再生に 重要な役割を果たしていると考えられた。また、マクロファージ枯渇群は対照群と比べて骨芽細胞と破骨細 胞の細胞数が減少したことから、骨代謝活性の低下が考えられた。 In vitro では、MSCs 共培養により

M1

の 活性化指標のサイトカイン産生が減少、MSCs の活性化指標のサイトカイン産生が増大し、M2 形質転換因子 の産生も増大したことから、創傷治癒において、M1 が活性化特異的サイトカインによって

MSCs

を損傷部に 集積させ、次いで

MSCs

が炎症を制御するとともに

M1

M2

に形質転換させ組織再生を促すことが考えられ た。一方、損傷部の

MSCs

はマクロファージ枯渇群と対照群で差がなかったため、

MSCs

の集積にマクロファー ジは関与しないことが考えられたが、M1 と骨芽細胞はマクロファージ枯渇群で有意に少なかったことから、

M1

MSCs

の骨芽細胞への分化を誘導する可能性、また必然的に

M1

由来の

M2

の細胞数も低下するため、組 織再生が遅延した可能性が考えられた。

本研究は、マクロファージ枯渇付帯マウス長管骨損傷モデルを用いて、創傷治癒において、M1 が活性化特

異的サイトカインによって

MSCs

を損傷部に集積させ、次いで

MSCs

が炎症を制御するとともに

M1

M2

に形

質転換させ組織再生を促すことを初めて明らかにした。この成果は、創傷治癒におけるマクロファージと間

葉系幹細胞の相互作用による組織再生メカニズムを拓くものである。よって、審査委員会は本論文に博士(歯

学)の学位論文としての価値を認める。

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