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生体機能再生・再建学講座 歯科保存修復学分野

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(1)

構造色発色システムを応用した

新規コンポジットレジンの色調適合性に関する検討

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座 歯科保存修復学分野

小野 瀬里奈

Color compatibility of newly developed composite resin using structural color system

Serina Ono

(令和元年 12 月 4 日受付)

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

生体機能再生・再建学講座 歯科保存修復学分野

(主任:吉山 昌宏教授)

本論文の一部は,以下の学会において発表した.

・第 149 回 日本歯科保存学会秋季学術大会(2018 年 11 月 1 日,京都)

・第 150 回 日本歯科保存学会秋季学術大会(2019 年 6 月 28 日,石川)

(2)

【諸言】

近年,Minimal Intervention(MI)の概念1)の普及により接着性コンポジット レジン修復の応用範囲が拡大している.コンポジットレジンは審美性に優れて いるが,天然歯の色調には個人差があり,また歯種や部位により異なるため2-

4),歯質とコンポジットレジンの色調を適合させるのは容易ではない.さら

に,コンポジットレジンは残存歯質や口腔内の背景色の影響を受ける半透明性 材料であることがシェードテイキングを困難にする一因となっている5-8.単 一のシェードのみで色調適合性が得られない場合レイヤリングテクニックが推 奨されるが,その操作は煩雑で熟練した技能を要する9-11)

最近トクヤマデンタル社より構造色による発色を応用したコンポジットレジ

ンECM-001(以下ECM)が開発された.構造色とは,色素や顔料による発色

とは異なり,物質の微細構造に基づく発色である.光の干渉,回折および散乱 が関与し12),微細構造により生じた特定の波長光が色として認識される.構造 色による発色は,経年劣化する色素や顔料による発色と違い色調適合性の長期 的な持続が期待でき,色素不用のために低環境負荷・省材料13)であることから さまざまな材料への応用研究が進められている.ECMはフィラーの構造色に よる発色により残存歯質の色調を再現し,単一のペーストで歯質との色調調和 を目指している.本研究ではECMの臨床応用を目的とし,色調適合性の検討

を行った.

(3)

【材料ならびに方法】

1. 使用材料

本研究に使用したECMおよび市販の光重合型コンポジットレジンを表1に

示す.光重合型コンポジットレジンとしてECM(トクヤマデンタル,東

京),エステライトΣクイック(トクヤマデンタル,東京,以下ΣQ)A3,ク

リアフィル マジェスティESフローLow(クラレノリタケデンタル,東京,以

下ES)A3,ビューティフィル フロー プラス X F00(松風,京都,以下BF)

A3を用いた.歯面処理剤としてボンドマーライトレス(トクヤマデンタル,

東京)を使用した.人工歯は,ベラシア SA アンテリア S5(松風,京都)の

A1,A2,A3,A3.5シェードを使用した.

2. 実験方法

1)V級窩洞に対する色調適合性(実験①)

A1,A2,A3,A3.5シェードの人工歯にV級窩洞を形成した.窩洞は人工歯

の唇側歯冠中央歯頚側1/3の位置に直径4mm,深さ2mmの円柱状窩洞とし,

形成にはダイヤモンドポイントFG テーパーシリンダー 109R(松風,京都)

と,ベベル付与にダイヤモンドポイント ラウンド 440S(松風,京都)を使用 した.歯面処理として,ボンドマーライトレスのA液及びB液を等量混合し,

窩洞に塗布,乾燥後, ECMをA1〜A3.5のシェードの人工歯の窩洞に充填

(4)

し,光照射器ペンキュアー2000(モリタ製作所,京都)にて20秒間光照射を

行なった.充填後の人工歯を37℃脱イオン水中に24時間保管し,コンポマス

ター CA No.13S(松風,京都)およびスーパースナップ ミニポイント(松

風,京都)を用いて研磨した.研磨直後,充填1ヶ月後,充填3ヶ月後にカラ

ー写真撮影を行ない,分光色差計SE6000(日本電色工業,東京)を使用して

L*値,a*値,b*値を測定するとともにコントロールとECM充填部の色差

(ΔE)を算出した.測色時には背景色として標準白色板および標準黒色板(村 上色彩技術研究所,東京)を用いた.コントロールは窩洞形成前の人工歯とし た.ΔEは以下の計算式を用いて算出した.

ΔE=[(L1*−L2*)2 + (a1*−a2*)2 + (b1*−b2*)2] ½

L1*,a1*,b1*:コントロールのL*,a*,b*値

L2*,a2* ,b2*:ECM充填部のL*,a*,b*値

統計解析は各人工歯のシェード毎に行い,一元配置分散分析およびTukey HSD testを有意水準5%で解析した.

2) 色差計を用いたコンポジットレジンの色調評価(実験②)

コンポジットレジンはECM,ΣQのA3, ESのA3シェードを使用した.

試料の作製には厚径1mm,2mm,3mm,4mmのアクリル板の中央に直径8mm

(5)

の穴を開けたモールドを使用した.モールドにコンポジットレジンを填入し,

上下両面をKerrトランスペアレントストリップス(カボデンタルシステムズ株

式会社,東京)を介したガラス板で挟み,クリップを使用して圧接後,上面,

下面の両側から20秒間ずつ計40秒間光照射器ペンキュアー2000を用いて光照

射を行い,円柱状試料をコンポジットレジン1種類につき各3個作製した.作

製した試料は37℃脱イオン水中に24時間保管し,耐水研磨紙#600,#800,コ

ンポマスター CA No.13Sおよびスーパースナップ ミニポイントを用いて研磨

し,試料の厚さが1.0±0.05mm,2.0±0.05mm,3.0±0.05mm,4.0±0.05mmに

なるよう調整した.その後分光色差計SE6000にて,L*値,a*値,b*値を測定

した.測色時には背景色として標準白色板および標準黒色板を使用した.得ら れた測定値を用いて彩度(C値)および透明度(TP値)を以下の計算式により 算出した.

C=[(a*)2+(b*)2]1/2

TP=[(LW*−LB*)2 + (aW*−aB*)2 + (bW*−bB*)2] ½

LW*,aW*,bW*:白色背景上で測色されたL*,a*,b*値

LB*,aB* ,bB*:黒色背景上で測色されたL*,a*,b*値

統計解析は各コンポジットレジン毎に行い,一元配置分散分析およびTukey HSD testを有意水準5%で解析した.

(6)

3) 視覚的色調評価の検討(実験③)

コンポジットレジンはECM,ΣQのA3,ESのA3,BFのA3シェードを使

用した.V級窩洞は人工歯の唇側歯冠中央歯頚側1/3の位置に直径4mm,深さ

2mmの円柱状窩洞とし,III級窩洞は人工歯の遠心接触点付近に垂直的幅

3mm,近遠心的深さ4mmの唇側から舌側に抜けた裏打ちのない円柱状窩洞と

した.バーは実験①に使用したものと同じバーを使用し,試料数はV級窩洞,

III級窩洞いずれも各シェード4本ずつ計16本作製した.

全ての人工歯にボンドマーライトレスを用いて実験①と同様に歯面処理を行

った. ECM,ΣQ,ES,BFの4種のコンポジットレジンをそれぞれA1〜

A3.5のシェードの人工歯の窩洞(V級およびIII級)に充填し,光照射器ペン

キュアー2000にて40秒間光照射を行なった.充填後の人工歯を37℃脱イオン

水中に24時間保管後,実験①と同様のバーで研磨し,各コンポジットレジン

の色調適合性について視覚的に評価した.

コンポジットレジンと人工歯の色調適合性の色調適合性の評価は白色あるい は黒色のアクリル板を背景として試料を置き,湿潤状態で判定した.評価は,

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯科保存修復学分野の歯科医師20名(男

性9名 女性11名,年齢26〜61歳:平均39歳,臨床経験年数1〜36年:平

(7)

均12年)がVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて実施した.すなわち,ス

ケールの右端を「満足」,左端を「不満足」と記した幅10cmスケールの任意

の位置に,人工歯とコンポジットレジンの色調適合の程度について各評価者が

視覚的に判定した位置に×印を記入し,左端からの距離を計測してVAS値と

した(図1).各評価者における評価基準は白色背景時のA3シェードの人工

歯にA3シェードのΣQを充填したものをスケール上の中央(VAS値=5)と

既定した.その他の試料は,基準の試料と比較した色調適合の程度として判定

した.また,V級窩洞およびIII級窩洞に充填した4段階のシェード(A1〜

A3.5)に対する,コンポジットレジンの差(ECM, ΣQ, ES, BF)と背景の差

(白色背景または黒色背景)を統計学的に解析した.コンポジットレジンの差 は一元配置分散分析およびTukey HSD testを,背景の差についてはt検定を用

いていずれも有意水準5%で解析した.

評価者による評価の違いを検討するために,各試料に対するVAS値をV級

窩洞:白色背景,V級窩洞:黒色背景,III級窩洞:白色背景,III級窩洞:黒

色背景のグループに集計し,評価者20人の上位1〜3位,中間7〜10位,下位

14〜16位に評価した試料とその試料を選択した評価者の割合をまとめることに

より,それらの動向を確認した.

(8)

【結果】

1. 実験①について

研磨直後,充填1ヶ月後,および3ヶ月後の試料の写真を図2に示す.右側

中切歯にのみECMを充填し,未処置の左側中切歯と比較した.研磨直後,充

填1ヶ月後,充填3ヶ月後においてA1〜A3.5すべてのシェードの人工歯(白

色背景時,黒色背景時ともに)に関しても視覚的に調和していた.また,研磨

直後,充填1ヶ月後,充填3ヶ月後およびコントロールの測色データを図3に

示す.ECM充填後のa*値とb*値はプラス値を示した.コントロールとECM

充填後のL*値,a*値,b*値を比較すると,白色背景時も黒色背景時も全ての群

において有意差を認めた.研磨直後,充填1ヶ月後,および充填3ヶ月後の

ECM充填部のΔEはA1で最も大きく9.8を,最も小さいA3.5で4.1を示し,

いずれも3.5以上を示していた.A1〜A3.5すべてのシェードの人工歯(白色背

景時,黒色背景時ともに)において,ΔEは経時的に有意差は認めなかった.

2. 実験②について

ECMの1〜4mm厚の写真を図4に,コンポジットレジンの厚みの変化によ

る測色データを図5に示す.ECMのL*値はΣQ,ESと同様の傾向を示した.

ECMのa*値は背景色に関わらず,どの厚みでもΣQ,ESと比べ有意に高い値

(9)

を示した.b*値およびC値は,白色背景時にECMがほぼ一定であったのに対

し,ΣQ,ESは厚みの増加とともに有意に低下した.また黒色背景時には

ECMは厚みの増加とともに有意に上昇したのに対し,ΣQ,ESはほぼ一定の

値を示した.ECM のTP値は他のコンポジットレジンよりも有意に高い値を示

した.

3. 実験③について

1) V級窩洞試料の色調適合評価

V級窩洞試料の色調評価の結果を表2に示す.ECMのVAS値は全てのシェ

ードの人工歯において(白色背景時,黒色背景時ともに)5.7以上を示した.

コンポジットレジンの種類の比較では(白色背景時,黒色背景時ともに)A1,

A2,A3.5シェードの人工歯に充填したECMのVAS値が,ΣQ,ES,BFと同

等もしくはそれ以上の値を示した.白色背景時と黒色背景時の比較ではほぼ全 ての群で有意差は認められなかった.ECMの白色背景時および黒色背景時の

写真を図6に示す.

2) III級窩洞試料の色調適合評価

III級窩洞試料の色調適合評価の結果を表3に示す.ECMのVAS値は,白色

背景時にはA1〜A3.5の全てのシェードにおいて8.5以上の値を示し,他のコ

(10)

ンポジットレジンと比較して同等もしくはそれ以上の値を示した.黒色背景時

にはA3.5以外のシェードでやや低下したが,6.2以上の値を示していた.他の

コンポジットレジンでは黒色背景時におけるVAS値のほうが高い値を示し,

白色背景時は低い値を示していた.白色背景時のA1シェードではΣQ,ES,

およびBFのVAS値は3.5〜5.2であった.ECMの白色背景時および黒色背景

時の写真を図7に示す.

3) 評価者による評価の違い

V級窩洞:白色背景,V級窩洞:黒色背景,III級窩洞:白色背景,III級窩

洞:黒色背景の4グループにおいて,評価者各人が評価した上位1〜3位,中

間7〜10位,下位14〜16位の試料のリストとその試料を選択した評価者の割

合を表4に示す.全てのグループにおいて上位の評価,中間の評価,下位の評

価に,約半数以上の評価者が同じ試料を選択していた.上位に選択された試料

はほとんどがA3.5の人工歯に充填された試料であり,下位にはA1,A2シェ

ードの人工歯に充填された試料が多く認められた.

【考察】

構造色は色素や顔料による発色とは異なり,規則的に並んだ微細構造により 生じた特定の波長光が色として認識される. ECMは260nmの同一サイズの球

(11)

状フィラーを均一に配列することで構造色としての発色を生じさせ,歯の色調

を再現するよう設計された.実験②においてECMのL*値は他のコンポジット

レジンと大差ないものの,a*値とb*値はともにプラス値で赤味と黄色味の色調

を示し,黒色背景時に厚径を増すと彩度(C値)が高くなり,赤味,黄色味が 増すことが明らかとなった.

一般に従来型のコンポジットレジンでは,黒色背景時にはコンポジットレジ ン層内を通過し背景板に達した散乱光が吸収され,反射し表層に戻ってくる光 が減衰するため白色背景時と比較し暗い色調に見える.また,コンポジットレ ジンの厚径が小さいほど背景板から表層に戻ってくる反射光は多く,厚径が大 きくなるにつれてコンポジットレジン層内での拡散反射が増加し一定の厚径に なると背景色の影響を受けなくなる.

ECMで黒色背景時にC値が上昇した理由としては,構造色は微細構造のみ

で発色しているわけではなく粒子と粒子間隙に存在する物質の屈折率や周囲の 黒色度の影響も受け,ある程度散乱光を吸収し干渉光のみが抽出されることで 鮮やかな発色となる14)ためと考えられる.白色背景時には背景板に達した光は 全て反射されるため多重散乱による影響が大きくなり構造色による発色が妨げ られたと考えられる.ES,ΣQは白色背景時に厚径の増加に伴いC値が低下

し,黒背景時にはほぼ一定であった.これらのコンポジットレジンは光拡散性

(12)

を有するとされており,マトリックスレジンとフィラーの界面で生じる光の屈 折と反射のために透明性は低下しているが遮蔽性が向上していることが影響し ている15

実験①における人工歯とECMの色調適合性については,視覚的には調和し

ていたにも関わらず,測色値から算出した色差(ΔE)はいずれも3.5以上を示

した.ΔEの基準は1.0以下であればほとんど視覚的に識別できず,3.5以上で

あれば臨床的に許容できない程度の色差であるという報告があり16-18),理論上

では本研究に使用した人工歯とECMの色調は一致していないことになる.構

造色による発色は色差計のみで色調評価を行うには限界があり,測色値と視覚 的色調評価にはずれが生じていると考えられた. コンポジットレジンに関し

て多くの色彩学的研究19-27)が行われているが,そのほとんどはCIE表色系の数

値による評価であり,色差計を用いて客観的な評価として測定される.色差計 を用いた評価は客観性に優れる反面,コンポジットレジンの審美性は色相や彩 度だけでなく,光沢度や表面粗さにも左右されるため27肉眼的な印象と色差 計による色差判定とは必ずしも一致しないと考えられる.さらにコンポジット レジンの色調に対する目視での主観的評価は臨床的に有用であるが,個人差が あるため定量化や数値化することは難しくその方法は確立されていない. 以 上のことより,実験③では,ECMを含めたコンポジットレジンの視覚的色調

(13)

評価として,Visual Analog Scale(VAS)を用いて色調適合評価を行った.VAS は主観的評価のデータを連続変数として測定することで,段階別の評定と比較 し微細な差の測定が可能である28-30).歯科領域では歯痛および知覚過敏の疼痛

評価31-33や義歯の満足度評価34,35)にも使用されており,色調評価法への応用が

期待される.

本研究ではA3シェードの人工歯にΣQのA3を充填した試料を色調適合の

基準値(VAS値=5)としたところ,ECMの評価は全ての試料で5.7以上であ

り視覚的な印象と合致していた.一方で,ECMはV級窩洞では白色背景時と

黒色背景時の色調適合性に有意差を認めなかったが,III級窩洞では黒色背景時 に色調適合性が低下した.ECMは透明度が高いため背景色の影響を受けやす

く,本研究におけるIII級窩洞では唇側から舌側に抜けた裏打ちのない窩洞と

したため,窩壁,窩底の歯質が欠損し拡散反射光が減少することによる明度の 減少が要因となっている.

V級窩洞ではすべてのコンポジットレジンにおいて,白色背景時と比較し黒

色背景時にVAS値が上昇する傾向を示した.人の色調識別能力は同一色相,

彩度内であれば単純な明度の比較となるため36,色の相違に敏感になる.歯 質の色調は白背景に近いため,白色背景時ではコンポジットレジンと人工歯の

(14)

明度差を敏感に知覚し,背景色の違いが色調適合性の評価に差を生じさせたも のと推察された.

また,A3.5シェードではすべてのコンポジットレジンにおいて高い色調適合 性を示した.シェードテイキングには明度が大きく関与しており37),彩度が上

昇するほど明度の比較が困難になる36.A1シェードと比較しA3.5シェード

では色弁別閾が上昇し,彩度の高いシェードではより色調が適合しているよう に見えたものと考えられる.本研究では明度差に重点を置き無彩色である白色 および黒色背景を用いたが,臨床応用するにあたり口腔内を想定した色相や彩 度の背景色での観察の必要性が示唆された.

評価者ごとのVAS値の変動は各人の色弁別閾,値の振り幅および好ましい

と判断する色調に差によるものと考えられる.しかし,表4に見られるように

本研究では上位の評価,中間の評価,下位の評価に,約半数以上の評価者が同 じ試料を選択していた.したがって,色調の適合および不適合の判断は評価者

間で概ね一致していたといえる.評価の上位はほとんどがA3.5の人工歯に充

填された試料であり,特にV級窩洞における上位3位の試料の選択率はいずれ

も80%以上であった.低位に選ばれた試料はほとんどがA1,A2シェードの人

工歯に充填されたものであった.

(15)

本研究において,ECMはすべてのシェードの人工歯に対し,基準としたΣQ

と同等以上の色調適合性を示し単体で優れた色調適合性を有することが示され た.今回,A1~A3.5シェードの抜去歯を確保するのが困難であったため人工歯 を使用したが,人工歯は天然歯の構造とは異なるために,窩洞からの拡散反射 光が異なる可能性も考えられ,天然歯さらには口腔内での色調適合性の検討が 今後の課題である.構造色発色コンポジットレジンはチェアタイムやテクニッ クセンシティブを減少させ,容易な審美的修復を実現することで患者,術者の 負担軽減が期待される.人間の視覚判断は単純な物体の反射光だけではなく観 察者自身の色弁別閾の差や観察環境など様々な影響を受けるため,色差計と肉 眼での判定には差が生じ,色調適合性の評価として十分ではない.VAS値は肉 眼で認識することのできる情報を反映し,視覚的な色調評価法となり得ること が示唆された.

【結論】

本研究では,構造色による発色を応用したコンポジットレジンであるECM

の色調について検討した結果,以下の結論を示した.

(16)

1. ECMはA1〜A3.5シェードの人工歯に対し,単体で優れた色調適合性を示し

た.

2. ECMは透明度が高く,背景色による影響を受けるため,唇側から舌側に抜

けた裏打ちのない窩洞の場合など,窩洞の形態を考慮して選択する必要があ る.

3. VASによるコンポジットレジン修復の色調適合評価について検討した結果,

VASは実用的な評価方法の1つとなる可能性を示した.

【謝辞】

稿を終えるにあたり,御懇切なる御指導と御校閲を賜った岡山大学大学院医 歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻 歯科保存修復学分野 吉山昌宏教 授に深甚なる感謝の意を評します.また,研究を遂行するにあたり,終始御指 導,御鞭撻を賜りました岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 機能再生・再建 科学専攻 歯科保存修復学分野 大原直子講師に謹んで感謝の意を表します.

最後に,様々な面に渡りご協力くださいました岡山大学大学院医歯薬学総合研 究科 歯科保存修復学分野の諸先生方に深く御礼申し上げます.

(17)

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36) 赤澤智津子, 小山慎一, 日比野治雄, 大嶋辰夫, 長尾徹:色相と彩度の異な

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37) 宮崎真至:コンポジットレジン修復の臨床的ポイント.国際歯科学士会日

本部会雑誌 47,73-78,2016.

(22)

【図表の説明】

表1 使用したコンポジットレジン

表2 V級窩洞の試料の色調評価の結果

大文字のアルファベットは行毎の統計解析結果を,小文字のアルファベットは 同一試料における白黒背景色の統計解析結果を示している.同一の文字は有意 差がないことを示す.

表3 III級窩洞の試料の色調評価の結果

大文字のアルファベットは行毎の統計解析結果を,小文字のアルファベットは 同一試料における白黒背景色の統計解析結果を示している.同一の文字は有意 差がないことを示す.

表4 VAS評価により上位,中間,下位を示した試料のリストとその試料を選 択した評価者の割合

図1 VAS色調評価に使用したスケール

図2 ECM充填後の経時的比較

図3 時間経過におけるECMの測色データ

アルファベットは各人工歯シェード毎の統計解析結果を示しており,同一文字 は有意差がないことを示す.

図4 各厚径のECMディスク

図5 各コンポジットレジンの厚径変化による測色データ

アルファベットは各コンポジットレジン毎の統計解析結果を示しており,同一 文字は有意差がないことを示している.

図6 V級窩洞にECMを充填した白色背景時および黒色背景時の写真

図7 III級窩洞にECMを充填した白色背景時および黒色背景時の写真

(23)

表1 使用したコンポジットレジン

品名 製造者 シェード フィラー マトリックスレジンの主成分 コード

ECM-001 トクヤマデンタル ユニバーサル

シリカジルコニアフィラー 有機複合フィラー

UDMA,TEGDMA その他

ECM

エステライト Σクイック

トクヤマデンタル A3

シリカジルコニアフィラー 有機複合フィラー

Bis-GMA,TEGDMA,

カンファーキノン,ラジカル増幅剤,

着色剤,その他

ΣQ

クリアフィル マジェスティ ESフローLow

クラレ ノリタケデンタル

A3 表面処理シリカフィラー

表面処理バリウムガラス,TEGDMA,

その他メタクリル酸系モノマー,

光重合触媒,安定剤,

着色剤,その他

ES

ビューティフィル フロー プラス X F00

松風 A3 S-PRGフィラー

ガラス粉,Bis-GMA,Bis-MPEPP,TEGDMA,

反応開始剤,着色剤,その他

BF

(24)

表2 V級窩洞の試料の色調評価の結果

A1 A2 A3 A3.5

ECM 5.7±2.2 Aa 6.5±1.8 Aa 6.8±2.4 Aa 7.1±2.0 Aa 6.0±1.7 Ba 6.6±1.9 Ba 9.5±0.7 Aa 9.5±0.8 Aa

ΣQ 3.1±2.2 Ba 4.3±2.2 Ba 4.2±1.4 Ba 5.5±1.8 Bb 5.0±0.0 Ba 5.2±1.4 Ca 8.7±1.1 Ba 9.1±0.9 Aa

ES 5.1±1.7 Aa 5.8±1.9 ABa 6.6±1.9 Aa 6.7±1.4 ABa 7.1±1.3 Aa 7.6±1.1 ABa 9.3±0.7 ABa 9.4±0.8 Aa

BF 5.0±1.9 Aa 5.7±2.1 ABa 7.0±1.9 Aa 7.2±1.6 Aa 7.5±1.3 Aa 7.9±1.2 Aa 9.6±0.5 Aa 9.5±0.7 Aa

(25)

表3 III級窩洞の試料の色調評価の結果

A1 A2 A3 A3.5

ECM 8.7±1.1 Aa 6.2±1.9 ABb 8.7±1.3 Aa 7.1±1.6 ABb 8.8±1.1 Aa 7.5±1.3 Bb 8.5±1.4 Aa 9.0±1.2 Aa

ΣQ 3.5±1.6 Ca 4.9±1.6 Ba 4.4±0.9 Cb 5.9±1.9 Ba 5.0±0.0 Cb 6.1±1.6 Ca 9.1±0.9 Aa 9.3±0.9 Aa

ES 5.2±1.4 Ba 6.4±1.4 Aa 6.0±1.5 Bb 7.8±1.1 Aa 7.8±1.3 Ba 8.1±1.1 ABa 8.8±1.1 Aa 9.2±0.9 Aa

BF 4.7±1.6 Bb 6.5±1.8 Aa 6.7±1.6 Bb 8.3±1.2 Aa 8.5±1.3 Aba 8.7±1.3 Aa 8.8±1.3 Aa 9.0±0.8 Aa

(26)

表4 VAS評価により上位,中間,下位を示した試料のリストとその試料を選

択した評価者の割合

下位 中間 上位

コンポジットレジン コンポジットレジン コンポジットレジン

V ΣQ A1 85 BF A2 65 BF A3.5 100

白色背景 ΣQ A2 60 ES A3 60 ES A3.5 85

ES A1 40 BF A3 55 ECM A3.5 80

ECM A3 55

V ΣQ A1 85 ES A2 75 BF A3.5 95

⿊⾊背景 ΣQ A3 65 ECM A3 60 ECM A3.5 90

ΣQ A2 50 ECM A2 55 ES A3.5 90

ES A3 50

BF A3 50

III ΣQ A1 95 BF A2 65 ΣQ A3.5 70

⽩⾊背景 ΣQ A2 65 ES A3 60 ES A3.5 55

BF A1 50 BF A3 55 ECM A3.5 45

ECM A2 55 BF A3.5 45

ECM A1 45

III ΣQ A1 70 ES A3 80 ΣQ A3.5 90

⿊⾊背景 ΣQ A2 50 ES A2 70 ES A3.5 80

ECM A1 45 BF A2 55 ECM A3.5 60

ECM A3 55

(27)

図1 VAS色調評価に使用したスケール

(28)

図2 ECM充填後の経時的比較

(29)

図3 時間経過におけるECMの測色データ

(30)

図4 各厚径のECMディスク

(31)

図5 各コンポジットレジンの厚径変化による測色データ

(32)

(33)

図6 V級窩洞にECMを充填した白色背景時および黒色背景時の写真

(34)

図7 III級窩洞にECMを充填した白色背景時および黒色背景時の写真

表 1  使用したコンポジットレジン    品名  製造者  シェード  フィラー  マトリックスレジンの主成分  コード  ECM-001  トクヤマデンタル  ユニバーサル  シリカジルコニアフィラー  有機複合フィラー  UDMA,TEGDMA その他  ECM  エステライト   Σ クイック  トクヤマデンタル  A3  シリカジルコニアフィラー 有機複合フィラー  Bis-GMA,TEGDMA,  カンファーキノン,ラジカル増幅剤,  着色剤,その他  ΣQ  クリアフィル   マジェスティ
表 2 V 級窩洞の試料の色調評価の結果
表 3 III 級窩洞の試料の色調評価の結果
表 4    VAS 評価により上位,中間,下位を示した試料のリストとその試料を選 択した評価者の割合  下位  中間  上位  コンポジットレジン    %  コンポジットレジン  %  コンポジットレジン  %  V 級  ΣQ A1  85  BF A2  65  BF A3.5  100  白色背景  ΣQ A2  60  ES A3  60  ES A3.5  85  ES A1  40  BF A3  55  ECM A3.5  80  ECM A3  55  V 級  ΣQ A1  85  E
+7

参照

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