九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
卵巣漿液性境界悪性腫瘍に類似した非浸潤性増殖様 式を示す卵巣高悪性度漿液性腫瘍
今村, 紘子
http://hdl.handle.net/2324/1654714
出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (2)
(別紙様式2)
氏 名 今村 紘子
論 文 名 Ovarian high-grade serous carcinoma with a noninvasive growth pattern simulating a serous borderline tumor
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 前原 喜彦 副 査 九州大学 教授 岩城 徹 副 査 九州大学 教授 橋爪 誠
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
卵巣漿液性境界悪性腫瘍(以下 SBT)は低悪性度漿液性腺癌の前駆病変で、形態 学的には非浸潤性の増殖様式と低異型度の核異型が特徴的である。
一方、多くの病理医は、高異型度の核異型を示すが弱拡大で境界悪性腫瘍のよう な非浸潤性増殖(以下 HG-noninv)を示す卵巣漿液性腫瘍を、経験的に通常の高悪 性度漿液性腺癌(以下 HGSC)であるとみなしている。しかしながら、このような腫 瘍の分子生物学的特徴は確立していない。
本研究は、その分子生物学的証拠を明らかにすることを目的としている。
検討は、高異型度で非浸潤性増殖様式(HG-noninv)を示す卵巣漿液性腫瘍37 例、うち36例は典型的な浸潤を伴ったHGSC成分(以下HG-inv)と共存した腫瘍
(以下HGSC with HG-noninv)、1例は完全にHG-noninvのみから成る腫瘍(以 下pure HG-noninv)を用いて行った。
結果、組織学的には、全てのHG-noninvで高い核分裂活性を認め、3例のHG- noninvを有する腫瘍に漿液性卵管上皮内癌を認めた。免疫組織化学染色では、
HG-noninvのほとんどにおいてp53異常発現が見られ、多くにおいてIMP3高発 現、p16過剰発現、MIB-1高標識率、PAX2低発現が見られた。分子生物学的には、
pure HG-noninv、13例のHGSC with HG-noninvでTP53遺伝子変異を認めたが、
KRAS/BRAF遺伝子変異を認めるものは1例もなかった。また、レーザーマイクロ ダイセクション法を用いて、1例にHG-noninvとHG-invで同一のTP53遺伝子変 異を検出した。HG-noninvの免疫組織化学的、分子生物学的特徴は典型的な浸 潤性HGSCに類似し、SBTのものとは異なっていた。
以上より、SBTに類似した細胞学的に高異型度なHG-noninvの増殖様式は、真 のSBTではなくHGSCの形態学的スペクトラムに含まれると考えられる。
以上の成績は、この方面の研究に知見を加えた意義あるものと考えられる。本論 文についての試験は、まず論文の研究目的、方法、実験成績などについて説明を求 め、各調査委員より専門的な観点から論文内容、及びこれに関連した事項について 種々質問を行ったが、いずれについても適切な回答を得た。
よって、調査委員合議の結果、試験は合格と決定した。