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糖尿病からみて

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(1)

㌔A・小児保健の現状と課題提言

糖尿病からみて

東京女子医科大学東医療センター小児科

    杉 原 茂 孝

臨はじめに

 糖尿病には1型,2型,その他の特定の機序,疾 患によるもの,妊娠糖尿病などがあり,その病因は さまざまである。1型はほとんどが自己免疫疾患で あり,肥満を伴う2型は生活習慣病の1つと考えら れる1・2)。わが国では学校検尿の普及によって,2 型の多くと1型の一部が毎年発見されている。しか

し,その治療およびフォロー状況は,一部の地域 を除き十分に把握されていない。小児慢性特定疾患 治療研究事業(小恩事業)に登録されたデータは,

全国レベルの情報を得るために非常に貴重である。

本稿では平成13~19年に小慢事業に基づいてコン ピューターに登録された糖尿病の全症例を対象とし て,解析した結果を示す。この解析結果から小児糖 尿病の現状と課題について考えてみたい。

臨小計事業の糖尿病患者の登録状況

 小雪事業が平成17年に法制化された。糖尿病に関 しては以下に示すように大きな変更点が3点挙げ られる。1)登録年齢が18歳未満から20歳未満に引 き上げられた。2)登録病名の記載が細分化され,

MODYなどの遺伝子異常によるものも登録される ようになった。3)食事・運動療法のみで内服薬や インスリン治療のない2型糖尿病が登録から外れ た。従って,法制化前後の変化についても注意して 解析する必要がある。

 新規=登録の1型糖尿病:登録症例数は,平成13~19 年では年間521~632例であり多少の変化はあるもの の大きな変化はない。新規登録の2型糖尿病も215

~319例で大きな変化はない(図1)。

 継続登録症例では,1型は平成13~16年に2,847

~3,045例であるのに対しt平成17~19年には3,759

~4,033例と増加がみられる。2型は平成13~16年 に720~753例で,平成17~19年には765~804例とわ ずかに増加している。つまり,継続1型の症例数の 増加が顕著である(図1)。この原因を解析するた めに,平成15~19年の継続登録1型糖尿病の登録時 年齢の分布を調べたところ,平成17年以降,18歳と 19歳の登録症例数の大幅な増加がみられていた。す なわち,全国的に登録年齢が18歳未満から20歳未満 に引き上げられたことにより。継続1型の登録数が 著明に増加した。

 法制化に伴い,食事・運動療法のみで経口血糖降 下薬の内服やインスリン治療のない2型糖尿病が登 録から外れた。図2に示すように,2型継続例では,

平成17年からHbAlc 6%(JDS値)未満の登録症例 が平成16年までの半数以下に減少している。この現 象は,登録基準の変更によりHbAlcの良い症例が 登録されなくなったことを意味する。それに伴い,

相対的にH:bAlcの高い症例の比率が上昇している。

図1に示すように,平成17年以降新規2型の登録数 はわずかに減少したものの,2型全体の登録数は減 少していない。

幽 1型および2型糖尿病患者における肥満度

東京女子医科大学東医療センター小児科

〒116-8567東京都荒川区西尾久2-1-10

 1型であれ2型であれ,肥満はインスリン抵抗 性を惹起する因子と考えられる。5~17歳の新規

1型登録例でみると,肥満度20%以上が平成15年 13.8%,16年11.6%,17年6.4%であり減少傾向が みられた。平成15~17年登録1型継続例について,

性別年齢別に肥満の頻度を検討すると,男子では15

(2)

42 小児保健研究

 4,500  4,000

      一←新規1型  3,500

      +継続1型

2 3,000

      一←新規2型 癒2・500

      一・sw・”継続2型 娯2,000

調1,500  1,000   500

   0     13年   14年  15年  16年   17年   で8年  19年

 図1 1型,2型糖尿病の新:規および継続登録症例数の年次推移(平成13~19年)

  1.00

 0.90  0.80 超 070

§0.60  0.50s

彗 ・・4・

⑲ 0.30

 0.20  0.10  0.00

13年継続14年継続15年継続16年継続17年継続18年継続19年継続        登録年度

   図2 継続登録2型糖尿病のHbAlc(JDS値)の年次推移

E 12.0・一20.0

團9.0~11.9

一 8.Ot-8.9

一 7.0・一Z9

囲6.0~6.9 一 4.0’v5.9

年は15歳(16.7%)に,16年は12歳(16.8%)と16 歳(15.1%)に,17年は17歳(20.0%)に肥満が多かっ た。女子では,15~17年とも14~17歳で肥満が16.4

~24.9%と高頻度にみられた。思春期女子で肥満の 頻度が高くなる傾向があり注意が必要と考えられた

(図3)。13~17歳女子について肥満度とHbAlcの 関係をみたところ,有意な関連はなかった。従って,

肥満を伴う1型糖尿病女子が,必ずしもコントロー ル不良というわけではないようである。

 2型糖尿病については,肥満との関連が日本小児 内分泌学会の全国調査からも報告されている3)。5

~17歳の患者について平成17年登録例でみると,2 型継続例では肥満度20%以上が68.5%を占めた。平 成18年は65.2%であった。平成13~16年登録継続例 で肥満は61~67%あり,肥満の改善傾向はみられて

いない。肥満を伴う2型糖尿病では,経口血糖降下 薬も多く使われるようになっているが,生活習慣の 改善による肥満の改善が最も重要であることは変わ らない。小慢事業のデータは,肥満の改善がいかに 難しいかを物語っている。

』小1曼事業からみた糖尿病患児の   血糖コントロール状況

 平成19年の継続登録1型糖尿病の年齢別HbAlc の分布を図4(男子),図5(女子)に示す。1型 糖尿病患者では男女とも15~17歳でHbAlc 9%以 上の頻度が最も高い(男子31.5%,女子36。9%)。

すなわち,中学・高校生で一部血糖コントロールが 悪化する。

 平成19年の継続登録2型糖尿病の年齢別HbAlc

(3)

       40.0        35.0        30.O       A 25.0       琶        20.0       懸15.0        10.0         5.O

        O.O op. E. wr. wn. LtX.L . n 一L en一 . L-

       10歳11歳12歳13歳14歳15歳16歳17歳全体        9歳

      8歳        7歳        6歳       5歳

      年 齢

 図3 小児慢性特定疾患事業への平成15~17年継続登録の1型糖尿病患者における年齢別肥満症例1の頻度

…㎜㈱㎝㎜㎝㈱㎝脚㎝㎝

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■平成15年女子

」平成16年女子 ス成17年女子

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  0~5歳  6~8歳  9~11歳  12~14歳 15~17歳 18~20歳        登録時年齢(歳)

図4 継続登録1型糖尿病男子のHbAlc(JDS値)の年齢別分布(平成19年)

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         15~1!歳 18~20歳

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0~5歳  6~8歳  9~11歳  12~14歳        登録時年齢(歳)

図5 継続登録1型糖尿病女子のHbAlc(JDS値)の年齢別分布(平成19年)

(4)

4 小児保健研究

の分布を図6(男子),図7(女子)に示す。2型 糖尿病患者では,男女とも18~19歳でHbAlc 9%

(JDS値)以上の頻度が最も高く(男子47.6%,女 子43.6%),高年齢ほど血糖コントロールの悪い症 例の頻度が高くなる(男子p<0.01,女子p<0.05)。

臨考

 平成19年では,1型糖尿病が4,637例,2型糖尿 病は1,058例登録されており,小慢事業の登録デー タは,膨大かつ貴重なデータといえる。特に,平成 17年の法制化後,1型糖尿病,2型糖尿病,および その他の病型についても正確な入力が増加し,デー

タの精度は向上していると考えられた。このデー タは,糖尿病患者数の年次変化,血糖コントロール

の全国レベルでの現状把握に有用であると考えられ

た。

 HbAlcによる血糖コントロール状況の検:討では,

1型,2型とも継続登録例の約3分の1がHbAlc 9%以上であった。1型,2型とも十代後半に非常 にコントロールが悪くなるという実態が明らかと なっている。その状態が継続すれば,5~10年後に は重大な糖尿病合併症が発症することは疑う余地が ない。小児・思春期糖尿病治療の手引きや治療ガイ

ドラインの作成が,世界的にもわが国でも進められ ている1・4)。これらガイドラインを利用し,日本各 地域で思春期から十代後半の糖尿病患者に対する治 療戦略の立て直しが必要と考えられる。

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  9歳未満   9~11歳   12~14歳   15~17歳   1i 8~20歳       登録時年齢(歳)

図6 継続登録2型糖尿病男子のHbAlc(JDS値)の年齢別分布(平成19年)

t  α  α  α  α  0  α  0  0。 α  0 00@90 80 70 60 50 40 30 20 10 00

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  9歳未満   9~11歳   12~14歳  15~17歳  18~20歳       登録時年齢(歳)

図7 継続=登録2型糖尿病女子のHbAlc(JDS値)の年齢別分布(平成19年)

(5)

      文   献

1)日本糖尿病学会編小児・思春期糖尿病管理の手引き    改訂第2版,南江堂,東京,2007.

2)日本小児内分泌学会糖尿病委員会編集 こどもの1型   糖尿病ガイドブック.東京:文光堂,2007.

3) Sugihara S, Sasaki N, Amemiya S, et al. on behalf   of the Committee for the Medical treatment of Child-

  hood-Onset Type 2 Diabetes Mellitus, The Japa一

  nese Society for Pediatr. ic Endocrinology. Analysis of   weight at birth and at diagnosis of childhood-onset   type 2 diabetes mellitus in Japan. Pediatr Diabetes,

  2008 ; 9 : 285-290.

4) ISPAD Clinical Practice Consensus. Guidelines 2009   Compendium. Pediatric Diabete$ 10 (Suppl. 12),

  2009.

参照

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