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金属系先進耐熱材料の新造形技術 に関する調査研究報告書 ―要 旨―

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(1)

システム技術開発調査研究 16−R−6

    金属系先進耐熱材料の新造形技術 に関する調査研究報告書

      ―要  旨―

      平成17年3月

        財団法人  機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会        

        委 託 先 株式会社 超高温材料研究所

(2)
(3)

わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸 条件は急速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、

教育等、直面する問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます 多様化、高度化する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であ ります。 

このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人 機械システ ム振興協会では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、経済産業 省のご指導のもとに、機械システムの開発等に関する補助事業、新機械システム普及 促進補助事業等を実施しております。

特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先 端技術、あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要があ りますので、当協会に総合システム調査開発委員会(委員長 放送大学 副学長 中 島尚正氏)を設置し、同委員会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究 事業を民間の調査機関等の協力を得て実施しております。

この「金属系先進耐熱材料の新造形技術に関する調査研究報告書」は、上記事業の 一環として、当協会が株式会社 超高温材料研究所に委託して実施した調査研究の成 果であります。

今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が 一つの礎石として役立てば幸いであります。

平成17年3月

        財団法人 機械システム振興協会

       

(4)

は じ め に

持続可能な 21 世紀社会の構築に向けての最も重要なキーワード「環境」と「エネルギ ー」に対して、材料、特に耐熱材料は極めて重要な関わりを持っております。

 地球環境問題に関連してたCOP3が1997年に京都で開催され、「地球温暖化防止のため の京都議定書」が議決されました。この議定書で、先進各国の温暖化効果ガス(CO2等)排出 量の削減目標を取り決めました。CO2排出量世界1位の米国 (2000年で24.4%) の離脱、世 界第2位の中国(2000年で12.1%)の削減目標が決められていないなどの問題はあるものの、

2008〜2012年の間に1990年対比のCO2排出量の削減目標を義務づけております。  2004

年11月にロシアが議定書を批准したことにより、2005年2月16日には発効した。 

 日本の温室効果ガスの削減目標は▲6%ですが、現状ですでに8%も増加しており、実質 的な削減量は▲14%にも達することとなり、各種のメディアによれば目標達成は極めて難 しいと見られております。具体的な施策として、短期的に最も効果が期待されているもの として「環境税の導入」、「排出量取引(京都メカニズム)」があり、次いで「新エネルギ ー開発」、「消費電力の少ない家電製品開発等の省エネルギー」が挙げられております。

長期的展望にたった今後の研究開発が必要な項目としては、「発電効率の向上」、「大気 中CO2の削減」などがあります。 

  国内におけるCO2排出量の30%強は発電関連であり、その内の99%が火力発電施設から排 出されております。火力発電における平均の熱効率は40%程度であり、今後この熱効率を さらに一層高めることが必要です。このためには、カルノーの定理から明らかなようにタ ービン入口温度の高温化を図る必要があります。 

 金属系先進耐熱材料の材料開発は、国家プロジェクトなどで種々研究されておりますが、

その製造技術に関する研究は殆ど行われておりません。(株)超高温材料研究所においても  Nb合金、Cr合金、Nb‑Al‑Si系やTi‑Al系の金属間化合物などの材料開発の研究を行いました が、材料特性評価用の試料はインゴットなどから切り出したものを用いておりました。 

 そこで、早稲田大学の中江秀雄教授が長年ご研究されてきました「金属材料の鋳造技術 に関する研究」を基に、大学、独立行政法人、企業等の学識経験者により「新造形技術調 査研究委員会」を結成して、Ni基超合金より耐熱性・耐久性に優れた特性を持ち、かつ現 用の製造技術(主に鋳造法)が適用できる可能があり、早期の実用化が期待される「金属系 先進耐熱材料の新造形技術に関する調査研究」を実施しました。本調査報告書はその成果 をまとめたものです。 

本調査研究の成果が、関係各方面の参考資料にとどまらず、わが国のエネルギー産業の 発展はもとより、耐熱材料をご利用頂く産業機械及びその他産業の発展にも大きな貢献を 果たすものと期待しております。 

末尾ながら、委員各位にはご多忙な本務にもかかわらず、絶大なるご協力を賜りました。

ここに深甚の謝意を表します。また本調査研究の推進に際しましてご指導を賜りました経 済産業省 産業技術環境局 技術振興課、並びに格別のご高配を賜りました財団法人 機械シ ステム振興協会の関係各位に深甚の謝意を表します。

平成17年3月

      株式会社  超高温材料研究所

(5)

                  目          次

序 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ i

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  ii

目 次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  iii

1.調査研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  1

2.調査研究の実施体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  2

3.調査研究成果の要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  5 3.1 金属系先進耐熱材料の最近の動向と課題に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3.2 金属系先進耐熱材料の鋳造技術に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 3.3 金属系先進耐熱材料の新造形システムの課題抽出と対策 ・・・・・・・・・・・・・ 15 3.4 金属系先進耐熱材料の実用化に向けての課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 4.調査研究の今後の課題及び展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 4.1 今後の研究課題(新造形技術の提案) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 4.2 展 開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

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1.調査研究の目的

 地球環境問題に関連した「地球温暖化防止のための京都議定書」が2005年2月16日に 発効することとなり、化石燃料起因CO2発生量の削減が急務の課題となっている。日本国 内における二酸化炭素排出量は運輸、民生などの分野も多いが、全体の30%強は発電関連 が占めている。そこで、火力発電施設では燃料の転換、発電効率の一層の向上等が図られ ている。

火力発電における発電効率の向上には、燃焼ガス温度の高温化、すなわち、ガスタービ ン入口温度の上昇が不可欠である。このため、燃焼器、ガスタービン動・静翼等の高温部 材用として、

      ①Ni基超合金の耐用温度の向上(第4世代合金、ODS合金等)      ②高融点金属(Cr, Nb, Ir合金等)

     ③金属間化合物(MoSi2, Nb3Al)      ④セラミックス(SiC, Si3N4)

     ⑤セラミックス基複合材料(SiC/SiC, C/C, MGC) 等の各種の先進耐熱材料が研究されている。

 現在広く使用されている Ni 基超合金のタービン翼は複雑形状で、かつ冷却のための中 空構造が用いられており、生産性に優れた溶解−鍛造法、或いは溶解−鋳造法で製造され ている。これに対し、先進耐熱材料は耐熱性・耐久性に優れているが、融点が高く高温加 工が困難であり造形性(製造性)が劣っているため、未だ Ni 基超合金を置き換えるに至 っていない。

 一方近年、セラミックス鋳型を用いた Ti 合金(融点:1670℃)の精密鋳造技術(ロスト ワックス法)や、レーザー光を用いた鉄系粉末の光造形技術が開発されている。これらの 造形技術の性能を更に向上すれば、従来造形が困難であった先進耐熱材料の新しい造形技 術へと適用できる可能性があり、現状の Ni 基超合金の生産性に匹敵する新製造技術が開 発できると期待される。

 そこで、本調査研究では、Ni基超合金に匹敵する生産性が期待される金属系先進耐熱材 料について、低コスト化・高効率化等の生産性に優れた新造形技術及び本技術を活用した 生産システムに関する調査研究を行う。

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2.調査研究の実施体制

 本調査研究は、財団法人 機械システム振興協会の委託を受け、株式会社 超高温材料研 究所内に設置した「新造形技術調査研究委員会」が担当した。当委員会は、金属系先進耐 熱材料の製造技術、特性、応用等の分野に造詣の深い産学官の学識経験者で構成され、さ らに事務局として株式会社 超高温材料研究所のスタッフ(研究員)も加えて運営された。

財団法人 機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会        

      委  託

株式会社 超高温材料研究所  

事務局      

新造形技術調査研究委員会

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総合システム調査開発委員会委員名簿

        (順不同・敬称略)

   委員長  放送大学      中 島 尚 正       副学長

                   

      委  員  政策研究大学院大学   藤 正   巌       政策研究科

      教授

   委 員  東京工業大学            廣 田   薫       大学院総合理工学研究科

   知能システム科学専攻       教授

   委 員  東京大学       藤  岡  健  彦         大学院工学系研究科     

      助教授

   委 員  独立行政法人産業技術総合研究所   太 田 公 廣       産学官連携部門

        コーディネータ

   委 員  独立行政法人産業技術総合研究所    志 村 洋 文       産学官連携部門 

   シニアリサーチャー

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    金属系先進耐熱材料の新造形技術調査研究委員会委員名簿

      (順不同・敬称略) 委員長 中江 秀雄 早稲田大学 理工学部 物質開発工学科

      教  授 委 員 辻川 正人 大阪府立大学大学院 工学研究科 物質系材料工学分野

      助教授

委 員 三輪 謙治 (独)産業技術総合研究所 サステナブルマテリアル研究部門

      総括研究員 委 員 田村 至 (独)物質・材料研究機構 材料研究所 超耐熱材料グループ

特別研究員

委 員 緒方 隆志 (財)電力中央研究所 材料科学研究所 構造材料評価領域

リーダー 委 員 田中 徹 石川島播磨重工業(株) 技術開発本部

技師長 委 員 水田 明能 川崎重工業(株) 技術研究所 材料研究部 構造材料グループ

      グループ長 委 員 芝田 智樹 大同特殊鋼(株) 技術開発研究所 プロセス研究部 鋳造凝固技術研

究チーム      チーム長

委 員 溝上 芳史 (財)次世代金属・複合材料研究開発協会

      専務理事

研究員 田中 良平 (株)超高温材料研究所

      技術顧問

研究員 堤  喜治 (株)超高温材料研究所 岐阜研究所

      所  長

研究員 山本 雅章 (株)超高温材料研究所 山口研究所 非金属材料研究室

      室  長 研究員

(事務局)

藤根 道彦 (株)超高温材料研究所 岐阜研究所 耐環境特性研究室

      室  長

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3.調査研究成果の要約

 先進耐熱材料の利用によって飛躍的な発展が期待される分野には、「エネルギー・環境 分野」と「航空・宇宙分野」がある。現用のNi基超合金はすでに耐用温度限界近くで使用 されており、Ni基超合金より高温で優れた特性を有する金属間化合物、高融点金属合金、

セラミックス、及びこれらをマトリックスとする複合材料などの先進耐熱材料の早期実用 化が切望されている。

 火力発電における発電効率の向上、及びそのための先進耐熱材料の研究開発は、図3−

1に示すように、色々と実施されてきた。しかし、その研究対象は材料開発であり、製造 技術に関する研究は極めて少ない。本調査研究ではこの点を鑑み、金属系先進耐熱材料の 造形技術の現状と課題について、調査研究した。図3−2は研究された金属系先進耐熱材 料とその特徴から要求される製造システム、及び製造技術の研究開発課題の概要を整理し たものである。以下に、調査研究の成果を取りまとめた。

3.1   金属系先進耐熱材料の最近の動向と課題に関する調査

 はじめに先進耐熱材料の研究開発の必要性を地球温暖化対策の視点から整理し、その研 究開発動向及び造形技術の開発動向について調査した。

(11)

(1)金属系先進耐熱材料の新造形技術開発の必要性

 現在、大気中のCO2濃度は約380ppmである。このまま何も対策を立てなければ2100

年には700〜1000ppmに達し、地球の平均気温が5℃上昇して地球環境が破壊されると予

想されている。そこで、これを450〜550ppmのCO2濃度に安定化させるための研究開発 と即効的な規制が進められている。

  1997年に京都で開催されたCOP3の「地球温暖化防止のための京都議定書」が、2005 年2月16日に発効した。これは先進各国のCO2等の温室効果ガス排出量の削減目標を取 り決めたものであり、2008〜2012年における1990年対比の排出量の削減目標を義務づけ ている。日本の削減目標は▲6%であるが、現状ですでに8%も増加しており、実質的な削 減量は▲14%にも達する。

日本の CO2排出量は約12 億トン-CO2/年で、世界第4位(2000年で5.2%)である。因 みに1位は米国:24.4%、2位は中国:12.1%、3位はロシア:6.2%である。国内の CO2

排出量はエネルギー起因が全体の92%を占め、しかも、CO2排出量の1/3が発電関連から 排出されいるため、その削減は緊急の課題となっている。

 京都議定書の目標達成に向けて具体的方策の策定が進められており、研究開発が進めら れている項目も含めて整理すると、図3−3のようになる。即効的な効果が期待されるもの は「環境税の導入」、「排出量取引(京都メカニズム)」であり、次いで「新エネルギー開発」、

「消費電力の少ない家電製品開発」等である。「発電効率の向上」、「大気中CO2の削減」

については、長期的展望に立った今後の研究開発が必要な項目である。

 先進耐熱材料を最も必要とする「エネルギー・環境分野」、「航空・宇宙分野」では、カ ルノーの定理*から、タービン入口温度の高温化により熱効率を一層向上することが可能で あり、CO2排出量を大幅に抑制できると期待されている。

[参考]*カルノーの定理:熱効率η=(TH−TL)/TH

ただし、TH:高温(K)、TL:低温(K)

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1)エネルギー・環境分野での役割

 国内でのCO2排出量の30%強は発電関連であり、その内99%が火力発電施設から排出 されている。火力発電の平均熱効率は 40%程度であり、発生熱量の 60%は海水や空中に 捨て、多量のCO2を排出していることとなる。

①大型ガスタ−ビン発電設備での熱効率の改善

 熱機関の効率向上には、一般に作動ガスの温度と圧力の上昇が必要である。ガスタ−ビ ンと蒸気タ−ビンを組み合わせた複合サイクル発電(以下ではCC発電と略記する)を適 用し、ガスタ−ビン入口温度(TIT)を高めれば、現状の発電効率 40%台を大幅に改善でき る。ガスタ−ビンの燃焼器や動翼・静翼に使用されている Ni 基超耐熱合金は、融点が

1350℃前後であり、すでに1500℃にも達するTITでは容易に溶融してしまうばかりでな

く、1000℃でも強度が低下して使用に耐えない。そこで、複雑な冷却構造をそれぞれの部

品に作り込み、金属温度を 800℃程度にまで下げて使用している。

  Ni基超合金よりも優れた先進耐熱材料が開発され、タ−ビン部材の冷却が不要となれば、

同じ1500℃のガス温度(TIT)でも熱効率は5%程度向上させることが可能である。燃料の

天然ガス (以下ではLNGと略記する)への転換を含めれば、火力発電起源のCO2発生量 を大幅に減らすことができる。

②大型火力CC発電における二酸化炭素排出量削減の試算

 現用火力設備1基を熱効率55%の超高効率LNG-CC発電設備と置換すると、熱効率の 向上とLNGへの燃料転換との相乗効果で、CO2排出量は平均54%削減できる(石油火力 からの転換で46%、石炭火力からの転換では61%)。

 火力発電設備の発電電力量実績は約 5,000億kWh(2000年)で、平均熱効率40%である。

(13)

全火力発電設備の10%を同一発電能力で熱効率55%の超高効率LNG-CC設備に置換すれ ば、熱効率の向上とLNGへの転換によって、日本の全CO2排出量は1.6%(≒0.54×0.10

× 0.99×0.30)も削減可能である。

 発電設備の更新は大きな投資が必要なため容易ではないが、現用の発電設備の10%だけ でも老朽化した非効率な設備を55%の高効率設備に置換すれば、それだけで日本の全CO2

排出量の1.6%を削減できることになる。

 従って、Ni基超合金より耐用温度の高い金属系先進耐熱材料の無冷却タービン翼が実用 化できれば、更に大きなCO2排出量削減効果が期待できる。

2)航空・宇宙分野での役割

 航空・宇宙分野ではさらに優れた先進耐熱材料に対する大きなニ−ズがある。航空機の ジェットエンジンは発電用のガスタ−ビンと同じ構造である。燃料コストの削減、高速化・

大型化による大量輸送のニ−ズがあり、より高性能な先進耐熱材料の開発が求められてい る。

 宇宙分野では、先進耐熱材料の開発に期待していた日本版無人スペ−スシャトル HOPE-X」の開発が中断・凍結されたが、近い将来には、スペ−スプレ−ンや「再使用ロ ケットの開発計画が具体化・明確化されるものと考えられる。

3)金属系先進耐熱材料の早期開発の必要性

 このような大きなニ−ズを持つ先進耐熱材料の研究開発は、始まったばかりといっても 過言ではない。耐熱材料の開発から実用化には、信頼性確立などのためかなり長い期間を 要する。現在、民間旅客機のジェットエンジンの第1段および第2段動翼に普通に使われ ている単結晶超合金は1960年代に開発されたが、軍用機への実用化が1980年代初め、民 間機への導入が1980年代終わりであり、実に20年以上を要している。

 このように耐熱材料の実用化には、非常に長期間を要する。これまでに国家プロジェク トで、材料の研究開発、即ち、候補材料の選定は行われたが、部材の製造性、コスト等を 考慮した研究は殆ど行われていない。そこで、現用の Ni 基超合金の製造技術(鋳造技術) が適用でき、機械的特性面からも早期実用化の可能性が高いと考えられる金属系先進耐熱 材料の製造技術(造形技術等)開発を含めたプロジェクトを早急に立上げて研究を推進する 必要がある。

(2)先進耐熱材料の開発動向

  Ni基超合金の融点は1350℃前後で、実用上の耐用温度は1000℃前後と言われている。

一方、ガスタービン入口温度(TIT)は20〜25℃/年で上昇し、すでに1500℃近くにも達し ており、一層のTIT向上は極めて厳しい状況にあると考えられている。

 このような背景において、各種の先進耐熱材料の研究開発は進められてきた。金属系(Ni 基、Nb基、Ti 基、Cr 基、Ir 基合金)、金属間化合物系(Ti-Al、Ni-Al、Nb3Al、Mo-Si)、

セラミックス系、複合材料系が代表的な先進耐熱材料であり、これらの開発経緯、実機へ の適用状況、強化機構、高温強度特性、変形・破壊特性、耐食・耐酸化性に関する研究動 向ならびに製造加工技術の現状について調査した。

  Ni基超合金には長時間クリープ特性の把握、合金設計手法の開発、大型翼製造技術の開

(14)

発・改良等の課題があるが、これらの特性の大幅な向上は望めないような状況に至ってい る。金属系先進耐熱材料は優れた高温特性を有しているものの、高温クリープ強度、延性、

破壊靭性、き裂進展抵抗などの向上、耐高温腐食・耐酸化性の向上、添加固溶元素の最適 化、焼結処理条件の最適化等の多くの研究開発課題がある。

(3)造形技術の開発動向

  Ni基超合金は図3−4に示すように、その要求特性の厳しさにより、製造方法が鍛造法 から鋳造法へと変化している。金属系先進耐熱材料を鍛造法で製造するには、インゴット (マスターヒート)の製造と加工性、鍛造金型の耐用温度など多くの課題があり、むしろ、

Ni基超合金と同様の溶解−鋳造法の方が実現の可能性は高いと考えられる。なお、Cr, Mo, W等の高融点金属の多くは、一般に粉末焼結法で製造されているが、これらはいずれも難 加工性であり、比較的大形の複雑形状品を製造することは難しいと考え、あえて調査対象 から除外した。

 鋳造は古い造形技術であるが、最近ではナノ転写が可能、金属基複合材料の製造への適 用等、先端的な造形技術へと変貌しつつあり、現産業構造には不可欠な技術となっている。

しかし、高融点で活性な金属が多い金属系先進耐熱材料の鋳造については、鋳型材の耐熱 性と化学的安定性、超高温用溶解炉、鋳型の予熱、鋳造方法等の解決すべき多くの課題が ある。

 一方最近、複雑形状品の造形技術として、3次元 CAD を用いた積層造形法:Rapid Prototyping (RP)が注目されている。これはレーザ光、インクジェット法等を用いて粉末

図3-4  Ni基超合金の耐熱温度の推移     (合金・製造方法の推移を含む)

(15)

を積層的に焼結する技術であり、3次元プリンター式に粉末を積層造形して、設計図から 直接的に製品を製造することができる。すでに、鋳造模型やセラミックス鋳型の作製に一 部適用されており、精密部材の造形では、積層造形特有の段差解消や成形精度の向上等の 課題があるものの、全体的には寸法精度の向上、薄肉鋳造品の製造、短納期・低コスト化 等、鋳造技術に革新的な変化をもたらすと期待されている。

 金属粉末のRP焼結法としては、大容量のレーザで直接焼結する「直接RP法」と樹脂 コーティング粉末を焼結する「間接RP法」がある。現在は間接RP法が中心で、比較的 低融点の金属の焼結に利用されている。しかし、納期短縮等のニーズから「直接RP法」

の研究開発が進められており、早期実用化が期待されている。現状では、レーザ出力が不 足しているので金属系先進耐熱材料への適用は困難であるが、レーザ出力の向上等により 高融点金属粉末や ODS 合金粉末の直接造形が可能となれば、画期的な造形技術として用 途拡大が期待できる。

(4)鋳造技術に関する特許調査

 金属系先進耐熱材料の造形技術に関する国内特許及び外国特許を調査した。ロストワッ クス法等のセラミックス鋳型を用いた精密鋳造技術の特許は、Ti合金、TiAlについては日、

米、欧で出願されているが、その他の高融点金属系では見あたらなかった。

  Ti 合金鋳造用セラミックス鋳型材質には、「黒鉛系」、「熱力学的に安定な材料(CaO,

ZrO2, MgO, Al2O3, Y2O3, ムライト等)」、「内層のコーティング/内張り」、「金属、金属化

合物(炭化物、窒化物)を添加した材料」等が利用されている。また、鋳造システムとして は、「雰囲気制御」と「遠心鋳造、減圧吸引鋳造等の与圧鋳造」に関するものが多く、溶解 設備とのマッチングは重要な課題である。

 なお、高融点金属系では金型を用いて精密鋳造する可能性もあるが、これについては日 本特許が1件出願されているに過ぎない(特開2004-114060)。

3.2   金属系先進耐熱材料の鋳造技術に関する調査

 現在ジェットエンジンや発電用のガスタービンに広く実用化されているNi基、Co基超 合金や、高融点で活性な金属の内、唯一実用化されているTi合金、TiAl の溶解−鋳造法 について、その開発動向を調査した。

 現用のNi基超合金の実用化に際しては下記のような努力が払われており、既に第4世 代単結晶超合金(①+②)まで開発されている。

①高温強度に優れた耐熱合金の開発(図3−4参照)

②高温クリープ強度を向上する製造技術の開発(図3−4参照) (鍛造法→普通鋳造法→一方向凝固鋳造法→単結晶鋳造法)

③動翼・静翼の冷却システムの開発と改良(図3−5参照)

④遮熱コーティング(TBC)の開発と改良(図3−6参照)

タービン入口温度(TIT)は 20〜25℃/年で上昇し、すでに 1500℃近くにも達している。

Ni基超合金の融点は約1350℃であり、冷却システムやTBCを利用してもすでに耐用限界 温度に近く、現状以上のTIT上昇は極めて難しい状況にある。

(16)

[中子の構造例]   [冷却孔]   [内部冷却構造]

 

図3−5 ガスタ−ビン動翼の冷却構造  

ジルコニアセラミック  断熱層 (250μm) 

NiCoCrAlY金属  接合層 (150μm) 

タービン翼(超合金) 

図3−6 遮熱コ−ティング(TBC)の組織例 

(17)

 タービン翼等に広く実用化されているNi基、Co基超合金は、要求される材料特性から、

鍛造や切削加工が困難なため、ロストワックス法で作製したセラミックス鋳型を用いて溶 解−精密鋳造法で製造されている。この方法には、鋳型の熱制御が可能で、鋳造品の品質 に優れ、生産性が比較的高いなどの特徴がある。製造工程別に模型やコアの作り方、模型 の組立て、造型、脱模型、焼成、溶解と鋳造、後処理および検査などの現状技術、及び等 軸晶(EQ)翼、一方向凝固(DS)翼、単結晶(SC)翼の現状の製造方法などを調査した。

タービン翼は、冷却機能の高性能化や品質保証の厳しさなどのため、細心の注意と最先端 の精密鋳造技術で製造されているが、低歩留まり−高コストという問題を抱えている。な お、高融点金属の溶解−鋳造には、Ni基、Co基超合金の製造技術の応用あるいはその延 長線上の技術の適用が可能と考えられる。

 現製造工程における課題を、鋳造欠陥の生成シミュレーション及び許容欠陥の判定基準 などから抽出した。RP 法による模型、コア、鋳型等の製造が注目されているが、実用化 には現用品と同等以上の品質、生産性、価格での製造技術の開発が望まれる。鋳造欠陥の 生成シミュレーションに関しては、実際に偏析が生じる場合のシミュレーションを可能に し、偏析が生成しない鋳造条件(DS条件、SC条件)の解析を可能にする必要がある。

 金属系先進耐熱材料のTi合金(融点1670℃)、TiAl(融点1480℃)、Nb3Al(融点2060℃)の溶 解−鋳造法の研究は、Ni基超合金と類似の溶解−精密鋳造法により既に行われており、比 較的低融点のTi合金、TiAlは一部実用化されている。いずれもロストワックス法で製造し たセラミックス鋳型を用いており、溶湯/鋳型間の反応抑制、及び湯廻り不良、引け巣、

ガス欠陥等の鋳造欠陥の低減が主要な研究課題となっている。 

 高融点で活性な金属の内、唯一実用化されている Ti 合金、TiAl 鋳物の製造方法は、

EB(VAR)溶解−遠心鋳造法、コールドクルーシブル溶解−減圧吸引鋳造法であり、非汚染 溶解と加圧鋳造が必要とされている。鋳型にはロストワックス法で製造した Y2O3, ZrO2, CaO等の材質が利用されているが、αケース生成の問題があり、欧米では金型鋳造も研究 されている。高融点金属の鋳造では、鋳型との温度差が大きく凝固が速いので、湯廻り不 良、ガス欠陥、引け巣などの鋳造欠陥が生じやすい傾向にあり、また肉厚鋳物、大形鋳物 の鋳造では、溶湯−鋳型間の反応が懸念される。Ti 合金鋳物においても、高価格(特に、

鋳型材料)、信頼性への不安、大形化の限界という問題があり、限られた用途向けの製品が 多い傾向にある。航空機用部材などの高級品への適用では、鋳物の品質保証のため、多く の後処理(HIP、ケミカルミリング)が必要であり、大形品製造のためには、造型方法や反 応性の低い鋳型の開発が不可欠と考えられる。 

  図3−7、図3−8は実用化されているTi合金、TiAlの溶解−鋳造システムであり、表 3−1及び図3−9は製品例である。現状技術では、比較的薄肉の小物が多く製造されて いる。図3−10はNb3Alのタービン翼の鋳造例であり、遠心鋳造法の適用で湯廻り不良が 低減している。このように、これらの技術は未だ研究開発段階であり、以下のような多く の技術的課題がある。 

     ①溶融金属と鋳型との反応防止 

     ②湯廻り不良、肌荒れ、ガス欠陥等の鋳造欠陥の低減       ③大形鋳物の製造と溶解−鋳造システムの最適化       ④多様な寸法、形状仕様への対応 

     ⑤低コスト化 

     ⑥品質保証と信頼性の向上 

(18)

 図3−7 コールドクルーシブル溶解 図3−8 真空アーク溶解−

     −減圧吸引鋳造システム  遠心鋳造システム 表 2.2‑3 主な Ti 鋳物(開発品含む) 

部   品  材  質  用  途  現 状  ゴルフクラブヘッド Ti‑6Al‑4V  レジャー  生産中  タービンローター TiAl  自動車エンジン 生産中  バルブシステム Ti‑6Al‑4V 大型バイク  生産中 

ヒンジ Ti‑6Al‑4V マウンテンバイク 実用化  スキューバダイブ部品 純 Ti、Ti‑6Al‑4V レジャー  実用化 

排気バルブ TiAl 自動車エンジン 試験中  スワラー TiAl 航空機エンジン 開発中  タービンブレード Ti‑6Al‑4V、TiAl 航空機エンジン 開発中 

集合管(マフラー) Ti‑6Al‑4V  二輪車  開発中  大型ローター Ti‑6Al‑4V マイクロ発電機 開発中 

腕時計ケース 純 Ti  装飾品  開発中 

配管バルブ 他  Ti‑6Al‑4V  化学プラント、精錬  開発中  人工骨、歯根 他  Ti‑6Al‑4V 他  生体部品  開発中    実用化:商業生産されたが、現在ではほとんど製造されていないもの。 

  試験中:実用試験段階    開発中:製品開発段階

(19)

図3−10 ロストワックス法によるNb-Al合金の精密鋳造品 E  図3−9代表的な Ti 鋳造品 

A:ゴルフクラブ  B:タービンローター  C:バルブシステム  D:集合管 

E:排気バルブ C

B A

(20)

3.3  金属系先進耐熱材料の新造形システムの課題抽出と対策

 金属系先進耐熱材料に最も期待されることは、「普通鋳造により製造された等軸晶・無冷 却構造部材」がガスタービン翼等に適用できることである。そこで、このような視点にた って溶解−鋳造システム、凝固現象、鋳造シミュレーション等の視点から、金属系先進耐 熱材料の造形システムの可能性を調査した。

 超合金(Ni系、Co系)では、主に高周波誘導溶解−精密鋳造システムが用いられている。

図3−11はタービン翼の一方向凝固鋳造装置及び鋳型の例である。Ti合金、TiAlでは、

雰囲気制御、熱効率の点からコールドクルーシブル溶解法が、鋳造には低比重のため遠心 力や減圧吸引力のような外部力付与を併用した精密鋳造法が用いられている。図3−12 はコールドクルーシブル炉を用いた反転出湯・加圧鋳造法の原理図である。

 高融点金属(Cr系、Nb系、Ir 系)ではアーク溶解、電子ビーム溶解、誘導溶解、コール ドクルーシブル溶解など多種な溶解法が用いられている。高エネルギーの溶解法(アーク、

電子ビーム)ほど消費エネルギーは大きくなり、高コストとなる懸念があるので、迅速な溶 解−鋳造システムの構築が必要である。高融点金属の精密鋳造の例は見あたらなかったが、

溶湯と鋳型との反応の抑制が最大の鍵と考えられる。なお、タービン翼のように非常に高 度な特性と信頼性が求められる製品に対しては、鋳造技術のほかに、結晶粒微細化制御技 術、一方向凝固における粒界制御技術、単結晶凝固制御技術等、要求特性に応じた鋳造凝 固システムの開発等が必要と考えられる。

 超合金の精密鋳造技術や金属系先進耐熱材料の状態図・凝固現象を踏まえて、高融点材 料の注湯温度や凝固時間、シェル鋳型や中子材料とそれらの実用耐熱温度について検討し た。酸化物系の鋳型候補材としては2500℃以上の融点を持つCaO, HfO2, ZrO2の3種類 が考えられる。これらでシェル鋳型を作製すれば、2000℃程度の鋳造温度を必要とする耐 熱材料の普通鋳造は可能と考えられる。しかし、鋳造温度が2000℃を超える場合には、図 3−13に示すような金型鋳造、或いは金型表面へのコーティングの検討が必要と予想さ れる。

 現状の鋳造シミュレーション技術により、形状不良、凝固収縮による欠陥の予測は、溶 湯温度、固相率、限界流動固相率、新山パラメータ等を用いることにより、ほぼ予測でき るが、ガスに起因する欠陥及び介在物による欠陥の予測は困難である。一方向凝固・単結 晶鋳造シミュレーションでは、結晶方位のずれ、異結晶・等軸晶の発生、フレッケル欠陥、

結晶粒幅の粗大化等の鋳造組織の欠陥予測が不可欠であり、Cellular Automaton 法とフェ ーズフィールド法により行われている。また、多数個を同時に鋳造する場合には、輻射に よる冷却の影響を高い精度で予測することが重要であり、鋳型材の物性値や境界条件の最 適化が必要である。しかしながら、Cr, Nb, Ir等の高融点金属系では、このようなシミュ レーションに必要な物性値、パラメータ、境界条件が殆どわかっていない。鋳造技術の研 究開発期間の短縮には、シミュレーション技術は極めて有効な手段であるので、物性値、

パラメータ、境界条件等のデータ採取を早期に実施する必要がある。更に、現状の鋳造シ ミュレーションソフトで、金属系先進耐熱材料の欠陥形成メカニズム、組織予測等が可能 かどうかの検証も必要である。

(21)

図3−13 水平回転式遠心鋳造金型

図3−11  Ni基超合金の一方向凝固鋳造       タービン翼の製造システム

図3−12 コールドクルーシブ溶解炉/

      反転出湯・加圧鋳造システムの原理図

(22)

3.4  金属系先進耐熱材料の実用化に向けての課題

 金属系先進耐熱材料の実用化における最大の関心事は、「無冷却のガスタービン翼が、普 通鋳造法で製造できるかどうか」という点である。もし実用化できれば、下記のような効 果が期待でき、大幅なCO2排出量削減が可能と期待される。

①TIT向上によるガスタービンの熱効率の向上←Nb合金のクリープ破断強さから評価し た耐用温度は、Ni基単結晶合金より+380℃優れていると推定される。

②無冷却化による冷却空気量の低減

③中子製造コスト低減−セラミック中子成形用金型費、中子材料費、検査費不要

④製造工程の省略によるコスト低減−中子除去工程、中空構造検査工程省略

⑤凝固工程の簡略化−サイクルタイムの向上による生産性向上

⑥欠陥発生率の低減−中子、一方向凝固組織に起因する欠陥が発生しない。

⑦歩留まり向上によるコスト低減

そこで、実用化に向けての技術的課題を、システムとユーザーの視点から調査研究した。

 各種金属はその特性を利用して、種々の形状に加工され、幅広く利用されている。各種 金属材料の造形技術を表3−2に整理した。

 鉄鋼を始め多くの量産金属材料は、インゴット鋳造品を鍛造・圧延して、板、棒、線材 等に加工されている。しかし、高温強度が高く、機械加工性の低い金属系先進耐熱材料へ の適用は難しく、複雑形状品は一般に鍛造−機械加工で製造されている。

 一方、Mg, Al合金などの低融点金属材料では、溶湯から直接最終形状品を製造できるダ イカスト法、レオキャスト法などが用いられている。これは、金属鋳型を用いて溶湯を加 圧成形する方法であり、生産性と歩留まりに優れた造形技術であるが、現状では低融点金 属が対象であり、高融点金属への適用は難しい。

 高融点金属材料では、比較的延性能の高い Ti, Nb, Ta等を除いて、粉末焼結法、或いは 粉末焼結−鍛造−機械加工法が多く利用されている。しかし、高融点金属には高強度で難 加工性のものが多く、鍛造や機械加工が難しいという問題がある。また、粉末焼結法のみ では、機械的特性が十分に発現できないので、タービン翼のような厳しい環境で使用され る部材への適用は困難であり、本調査研究が対象としている金属系先進耐熱材料への適用 はいずれの方法も難しいと考えられる。

(23)

 金属系先進耐熱材料には高融点で活性な金属を含むものが多く、一般に機械加工性に乏 しいので、高温特性に優れた複雑形状品を、効率的に製造する方法は限定される。既にNi 基超合金やTi合金などの複雑形状品の製造に適用されている溶解−精密鋳造法は、歩留まり 向上と機械加工を最小限とすることが可能であるので、金属系先進耐熱材料の造形技術と しては最も優れた方法と期待できる。溶湯/鋳型間の反応防止等多くの技術的課題はある が、実用化できる可能性は高いと考えられる。

 なお、スプレーフォーミング、光造形は新しい技術であり、金属系先進耐熱材料へ適用 できる可能性は有ると思われるので、別途詳細に検討する必要がある。

 金属系先進耐熱材料(高融点金属、貴金属、金属間化合物等)の溶解技術としては、高出 力溶解炉、溶解ルツボとの反応防止、加圧/真空溶解、炉内雰囲気制御、歩留まりの向上 等が必要であり、これらを満足する最も優れた溶解炉としてはコールドクルーシブル溶解 炉が考えられる。この溶解炉は極めて大きい電源容量を必要とするので、大形化が最大の 課題と考えられるが、(株)神戸製鋼所が 500kg-Ti/ch までは可能との研究成果を報告して いる。一方、高融点で活性な金属系先進耐熱材料の複雑形状品、中空品等への造形技術と しては、ロストワックス法等で作製したセラミックス鋳型を用いる精密鋳造法が最も実現 の可能性が大きい。これは既にTi 合金、TiAl合金、Nb-Al合金等へ適用した研究例が報 告されており、鋳造欠陥低減のために鋳型材質、鋳造方案、鋳型予熱温度、加圧鋳造、凝 固速度制御等が検討されている。金属系先進耐熱材料の鋳造では、溶湯と反応しない鋳型 材の開発が不可欠である。すなわち、高融点で活性な金属と反応しにくい鋳型材料や、セ ラミック鋳型の製造方法の開発が必要である。また、セラミック鋳型が適用できない場合 も考えられるので、金型を用いた精密鋳造技術の研究も必要と思われる。更に、鋳物特有 の湯廻り不良、ガス欠陥、引け巣等の鋳造欠陥が、金属系先進耐熱材料では従来品以上に 懸念されるので、これらの欠陥を無くすための鋳型構造、鋳造方案、鋳造条件等の最適化 や、量産対応、鋳造品重量・寸法等の幅広い仕様への対応が可能な溶解−鋳造システムの 開発が必要である。

 他方、ユーザーの立場から金属系先進耐熱材料の実用化のステップを検討すると、まず 基本設計段階から適用部位を選定し、設計に必要な材料データをそろえて設計者に具体的 な提案ができる体制を整える必要がある。次いで、実用化に向けて下記のような顧客対応 の技術課題を解決する必要がある。

 ①耐熱材料の要求特性としてはクリープ強度の向上が代表的な指標であるが、その他に高 温酸化、高温腐食、高サイクル疲労、熱疲労等のデータも必要である。

 ②機器等の設計における技術課題としては、材料特性データの採取・蓄積がある。製造側 と使用側の複数企業の参加によるデータベースの構築が不可欠である。

 ③製造工程での技術課題としては、生産性向上と低コスト化がある。特に低コスト化対策 としては、方案歩留まりと良品歩留まりの向上が不可欠である。

すなわち、材料データベ−スの構築、材料規格の整備、超高温域での材料特性の評価手法 の整備(機械的特性、耐環境特性等)等の材料特性に関する課題を解決すると共に、安定し た高品質の原材料の確保、熱処理条件の検討と高温化への対応の検討、機械加工性の評価、

表面処理技術・補修技術の検討、高品質化と品質保証(非破壊検査)技術の検討と規格化 等の製造技術面の整備・確立が必要である。

(24)

 なお、金属系先進耐熱材料には、Tiを含めてNb, Mo, Wのように高温での耐酸化性に 劣る金属が多く、その適用を危ぶむ声がある。しかし、1500℃を超える超高温下での使用 が期待されるタービン翼向けの先進耐熱材料には、耐酸化性に優れた材料は見あたらない のが現状である。このため、いずれの材料を選定してもコーティングによる耐酸化機能の 付与は不可欠であり、製造性やコスト面に優れた材料が優先的に適用されると考えられる。

 参考までに、表3−3に各種の先進耐熱材料の耐酸化性とコーティングに関する情報を 整理した。Cr 合金、貴金属、MoSi2を除けば、いずれの金属系先進耐熱材料(金属間化合 物を含む)も耐酸化性は良くない。また、SiO2系の耐酸化保護皮膜を形成し、耐酸化性に 優れていると言われるMoSi2、SiC、Si3N4などにおいても、近年、ガスタービン翼への適 用条件下では SiO2膜が形成されず、腐食が大きいことが明らかにされており、基材を環 境から遮断するためのコーティング技術が精力的に研究されている。

  表3−4は現用のNi基超合金の遮熱コーティング(TBC)の現状と課題である。ガスター ビン翼向けの基材では、クリープ特性を向上するために、耐酸化機能を付与するクロム(Cr) の添加量を減らしている。即ち、最先端の Ni 基超合金の耐酸化性は必ずしも良くなく、

トップコート YSZ(イットリア安定化ジルコニア:YSZ)で熱遮蔽を行うと共に、ボンドコ ート(MCrAlY)で基材と環境とを遮断している。

 従って、金属系先進耐熱材料を実用化するためには、図3−14に示すように、材料(素 材)開発、製造(造形)技術開発、コーティング技術開発の研究が三位一体で推進される必要 がある。

図3−14 金属系先進耐熱材料の要素技術

(25)
(26)

4.調査研究の今後の課題及び展開

4.1 今後の研究課題 ( 新造形技術の提案 )

 

 地球温暖化防止対策として、温室効果ガスの排出量削減は急務の課題であり、経済成長 を維持しつつ実質的なCO2排出量を削減する技術開発が切望されている。CO2排出量の約 1/3は発電関連から排出されている。そこで、火力発電の発電効率を向上し、実質的なCO2

排出量削減を可能とする技術の開発が必要不可欠となっている。

 火力発電のガスタービン動翼・静翼には、現在 Ni 基超合金が用いられているが、ター ビン入口温度(TIT)は20〜25℃/年で上昇して1500℃近くにも達している。これはNi基 超合金の融点を遙かに超えており、冷却システムや遮熱コーティング(TBC)を駆使してい るものの、これ以上のTIT上昇は困難と予想されている。

 金属系先進耐熱材料(金属間化合物を含む)は、Ni基超合金より優れた高温特性と耐用温 度を有しており、しかもNi基超合金と類似の製造技術(溶解−精密鋳造法)が適用できるの で、早期に実用化が可能と期待される。この材料の「無冷却の普通鋳造タービン翼」が製 造・実用化ができれば、火力発電の発電効率の向上が可能となる。

 そこで、「金属系先進耐熱材料の新造形技術」について調査研究し、その概要を表4−1 に整理した。研究開発目標と開発すべき製造技術は以下の通りである。

①研究開発目標:金属系先進耐熱材料の持つ優れた高温特性、耐用温度を生か した無冷却−普通鋳造タービン翼の実用化を目指す。

②製 造 技 術 :コールドクルーシブル溶解−精密鋳造法が、実用化できる可 能性が最も高い。

また、金属系先進耐熱材料の実用化に向けた要素技術と期待効果を図4−1に、製造シ ステムフローと技術的課題を図4−2に整理した。図4−3は 2015 年実用化を目指した ロードマップである。

なお、主な研究課題は以下の通りである。

○反応しない精密鋳造用鋳型の開発

○コールドクルーシブル溶解システムの開発

○精密鋳造システムの開発(鋳造欠陥の低減、鋳造方案の最適化等を含む)

○鋳造シミュレーション技術の最適化

○高品質化と品質保証技術の開発

○低コスト製造技術の開発

○合金設計、高温特性の向上(組成・組織等の最適化)

○耐酸化・耐食コーティング技術の開発

○データベースの構築

○製造技術の最適化(鋳物の熱処理条件、機械加工条件等)

○信頼性評価技術の開発

(27)
(28)
(29)
(30)
(31)

4.2 展 開

 

金属系先進耐熱材料の「無冷却・普通鋳造タービン翼」の実用化を目指し、

「溶解−精密鋳造法による製造技術の開発」に関する具体的研究内容を提案し た。

また、単に造形技術の研究開発だけでなく、無冷却タービン翼の実用化に必要な関連 技術についても記載した。

 このような総合的な研究開発の推進は、産学官での共同研究が不可欠であり、更に、鋳 鉄、鉄鋼・非鉄金属、セラミックスなどの幅広い知見を活用する必要があるので、国家プ ロジェクトとして研究開発を進めることが最も良いと考えられる。

 現在、子々孫々に伝えることのできるかけがえのない地球の保全、人類の繁栄に寄与す る環境技術・産業技術が切実に求められている。地球環境問題の一環としての温室効果ガ スの削減は、COP3が目標とする2008〜2012年で終わるわけではなく、今後ますます厳し くなると考えられる。そこで、長期的な展望を持って、本調査研究で実施した金属系先進 耐熱材料による

「無冷却・普通鋳造タービン翼の実用化」

に関する研究開発が国家プ ロジェクトとして採択され、緊急に推進されることを切望する。

(32)

      ―禁無断転載―

システム技術開発調査研究 16−R−6

     金属系先進耐熱材料の新造形技術      に関する調査研究報告書

      ―要  旨―

         平成17年3月

作 成  財団法人 機械システム振興協会      東京都港区三田一丁目4番28号      TEL:03(3454)1311(代) 委託先  株式会社 超高温材料研究所

     山口県宇部市大字沖宇部573番地の3      TEL:0836(51)7007(代)  

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