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拡散強調画像によるプリオン病早期病変の診断能向上に関する研究

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Academic year: 2021

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分担研究成果報告書番号5

— 27 —

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)

プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 分担研究報告書

拡散強調画像によるプリオン病早期病変の診断能向上に関する研究

研究分担者:佐々木真理 岩手医科大学医歯薬総合研究所 研究協力者:山下典生 岩手医科大学医歯薬総合研究所

研究要旨 我々は拡散強調画像(DWI)を用いたプリオン病早期の客観的判定法を検討してきたが、

精度の高い定量化手法は十分確立されていない。そこで、独自の信号正規化法とマスキング法を用 いたDWI異常信号の自動検出プログラムを開発するとともに、スライス厚による精度を比較した。

本手法によって、プリオン病の早期病変を正確に検出することができ、通常の5mm 厚画像で3mm 厚画像と同等の精度で DWI 異常信号の定量評価が可能であった。本手法はプリオン病の早期診断 基準の一つとして有望であることが示唆された。

A.研究目的

MRI 拡散強調画像(diffusion weighted image:

DWI)はプリオン病の早期病変の検出に広く用 いられており、重要な診断基準の一つと考えら れている。我々は、脳実質の正常部位で表示条 件 を 正 規 化 す る 独 自 の 標 準 化 法[1]を 本 症 に 適 用し、DWIによる早期病変診断能が向上するこ とを多施設研究によって明らかにした[2]。また、

磁 場 強 度 や ス ラ イ ス 厚 の 違 い に よ る 診 断 能 の 差異を明らかにするため、プリオン病班・サー ベ イ ラ ン ス 班 合 同 画 像 委 員 会 に よ る 多 施 設 研 究を実施してきた。さらに、経時的に撮像され た DWI における早期病変の信号変化差分画像 解析法を確立することで、病変の出現・消退・

進 行 を 高 精 度 に 定 量 評 価 可 能 で あ る こ と を 示 した。

一方、DWIではEPI撮像による固有の画質劣 化が生じるため、単回撮像におけるDWI異常域 の自動検出・定量解析は容易ではない。そこで、

独 自 の 信 号 正 規 化 法 と マ ス キ ン グ 法 を 組 み 合 わせた新たな定量化法を開発し、異なるスライ ス厚の画像に適用することで、その精度を検討 した。

B.研究方法

DWI を初診時に撮像することができた早期 孤発性Creutzfeldt-Jakob (CJD)病患者4例(55– 76才、男性 2例、女性2例)と健常ボランティ アを後方視的に検討した。MRIは1.5 Tesla装置

(Signa HDxt, GE Healthcare) を 用 い 、DWI は b=1000s/mm2, matrix 128x128, FOV 22cm, スライ ス厚は 3mm厚と5mm厚で撮像した。

Isotropic DWI 画 像 お よ び b0 画 像 を 匿 名 化

DICOM形式ファイルで収集し、NifTI形式に変

換後、SPM8 (Statistical Parametric Mapping 8)を

用いて b1000 画像の信号むら補正および灰白

質・白質・脳脊髄液オブジェクトの抽出を行い、

灰白質・白質オブジェクトから作成した脳マス クを適用後に b0 画像の脳脊髄液で脳実質の信 号輝度を正規化した。さらに、平滑化と定量用 脳マスクを適用し、Z 値 2.0 以上の領域を病変 として自動抽出し、カラー表示と体積自動算出 を行った。

(倫理面への配慮)

画 像 デ ー タ は 匿 名 化 を 行 っ た 後 に 画 像 処 理 に供した。

C.研究結果

独 自 の 脳 マ ス ク 処 理 と 信 号 正 規 化 処 理 の 組 み合わせによって、単回撮像であっても、CJD 患 者 に お け る 大 脳 皮 質 お よ び 線 条 体 の 早 期 病 変を安定して自動検出することができた。自動 検出された異常域の分布は、視覚的な評価と概 ねよく一致していた(図1)。一方で、健常者では 自 動 検 出 に よ る 偽 陽 性 箇 所 は ほ ぼ 認 め ら れ な かった。

通 常 の5mm厚 画 像 と 薄 切3mm厚 画 像 の 比 較

(2)

分担研究成果報告書番号5

— 28 — では、自動検出された病変の分布や体積には明

らかな差異を認めず、通常の5mm厚画像を対象 と し て も 十 分 な 精 度 が 達 成 可 能 で あ る こ と が 示唆された(図1下段)。

D.考察

今回開発した手法によって、単回撮像のDWI に お け る プ リ オ ン 病 早 期 病 変 の 自 動 検 出 が 可 能となった。DWIは、他の撮像法にくらべ基本 画質が不良であり、アーティファクトも大きい ため、通常の手法では異常信号域の自動抽出は 困難である。今回、独自の信号正規化法と脳領 域マスキング法を組み合わせることで、安定か つ正確な自動解析を達成することができた。

一般に、薄いスライスほど病変の検出能や定 量性は向上するが、今回の検討では、ルーチン 検査で用いられる通常の5mm画像であっても、

薄切 3mm 厚画像と同等の検出能と定量性を確 認することができた。本手法は、日常診療のな かで広く使用することが可能と思われた。

今後、解析アルゴリズムのさらなる改良、多 施設研究による精度検証、解析ソフトウエアの 公開と普及を進めていきたい。

E.結論

プリオン病の DWI 早期病変を自動検出する 画像解析法を確立することで、病変の分布と広 が り を 高 精 度 に 定 量 評 価 す る こ と が 可 能 と な った。本手法は、早期プリオン病の診断基準の 指標の一つとして有望である事が示唆された。

[参考文献]

1) Sasaki M, Ida M, Yamada K, Watanabe Y,

Matsui M. Standardizing display condi- tions of diffusion-weighted images using con- current b0 images. Magn Reson Med Sci 6:133-137, 2007.

2) Fujita K, Harada M, Sasaki M, Yuasa T, Sakai K, Hamaguchi T, Sanjo N, Shiga Y, Satoh K, Atarashi R, Shirabe S, Nagata K, Maeda T, Murayama S, Izumi Y, Kaji R, Yamada M, Mizusawa H

.

Multicentre multiobserver study of diffusion-weighted and fluid-attenuated inversion recovery MRI for the diagnosis of sporadic Creutzfeldt-Jakob disease. BMJ Open 2:e000649, 2012.

F.健康危険情報

体内・体外金属の有無を確認の上通常操作モ ードで撮像しており、安全性に問題はなかった。

G.研究発表 1.論文発表

なし

2.学会発表 なし

H.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む。) 1.特許取得

なし

2.実用新案登録 なし

3.その他 なし

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