<総 説>
メダカ胚発生中の脳で起こる
放射線誘発アポトーシスのin vivoイメージング
東京大学大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻動物生殖システム分野 保田隆子*、尾田正二、三谷啓志
はじめに
発達中の中枢神経は放射線に対して特に高感受性であることが多数報告されており(1, 2)、発 達中の脳を放射線から守ることは重要な課題として認識されている。そこで放射線による発生中 の脳に対する発達神経毒性を評価するため、本研究を始めた。
脊椎動物の中で最も遺伝学が進んでいるのはマウスであるが、マウスの胚は子宮内で発生する ので脳の発生異常を調べるのは容易ではない。そこで、体外で発生し、胚の大きさが小さく卵殻 が透明なため、脳の発生を生きたまま全体的に把握できる利点を有するメダカを用いて、発生中 の脳に対する放射線影響を調べることにした。脊椎動物の脳の基本設計は、魚類の段階ですでに 完成しており(3)、魚類は脊椎動物の基本的体制を保持している。そのため、いわゆる「単純な モデル脊椎動物」としてゼブラフィッシュ(コイ目)、トラフグ(フグ目)、メダカ(メダカ目)
が現代生物学に登場するようになった。
メダカの脳の基本的構成に関しては人間のそれと変わるところはないが、脳の形態は大いに異 なる。ヒトで巨大に発達する終脳(大脳半球)は、メダカでは比較的小さい。しかし、硬骨魚の 終脳には哺乳類の大脳皮質の機能に相当する部位が存在することが判明している(4)。また、メ ダカの脳発生過程は、基本的に哺乳類のそれと同様であることが石川らの研究結果(5, 6, 7)よ り明らかになっている。
メダカの脳で最も良く発達しているのは、人間の上丘に相当する視蓋(中脳背側部)であり、
哺乳類の大脳半球と同様著しく発達した層構造をもつ皮質様構造として成長する(8)。このこと は、メダカにとって視覚情報が生存上大きな意味をもっていることを意味している。そこで本研 究では、メダカ胚の脳の中でもこの視蓋に着目し、放射線影響を調べた。
ヒト胎児の脳に対する放射線影響は、広島・長崎の疫学調査より、器官形成期が終了し大脳皮
キーワード:発達神経毒性、メダカ胚、アポトーシス、アクリジンオレンジ、放射線
放射線生物研究 46(1),2011 P15 ~ 29
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