GIRLS und PANZER 地獄ハ謳ウ
snake710
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︻ あ ら すじ ︼
エルヴィン﹁ガルパンにHELLSING成分注入したら面白いん
じゃね
?﹂
左衛門佐・おりょう﹁﹁それだぁー
!!﹂﹂
カエサル﹁まじでやるの
?﹂
エルヴィン﹁短編集でやるつもり︑ちなみにあらすじのような台本
形式じゃない﹂
おりょう﹁物語形式じゃなくて︑場面切り抜きぜよ﹂
左衛門佐﹁物語的に難しいからな・・・・・﹂
カエサル﹁・・・・・大丈夫か︑これ
?﹂
目 次
│││││││││││││││││││││││最後の大隊
1
││││││││││││││││││││││││主と下僕
7
│││││││││││││││││││││孤児院の神父
15
最後 の大 隊
﹃戦車道﹄
それは古来から続く乙女の嗜みである︒良妻賢母を育てるため世
界中で行われる︒﹁戦争の技術﹂から﹁競技の技術﹂へと変化した︒
嘗てのような戦争から隔絶され︑確固たる安全性が確立された今日
において戦車による闘争は娯楽と成り果てた︒
今日における戦争は高度化と安全性を考慮した無人兵器に転換さ
れ︑人を乗せて運用する有人戦車はコストパフォーマンスが高く︑人
件費や維持費の低い発展途上国のみ限定された︒そして︑戦争は低程
度紛争のみに限定され︑先進国における軍は無人機を運用する人員の
みになり︑無人兵器が戦場の主役と成り代わる︒
この時代の変化は戦車道だけではなく﹁空戦道﹂や﹁戦艦道﹂︑﹁歩
兵道﹂を生み出すこととなった︒
しかし︑人はそれでもなお闘争を求める︒
そこは薄暗い一室であった︒行き届いた空調によって中は快適で
あったその部屋には1台の液晶テレビによって周囲を照らし続けて
いる︒そのテレビの前には椅子に座る小太りの男と背の高い男が2
人そのテレビをじっと見据えていた︒
それは第63回戦車道全国高校生大会1回戦の様子である︒近年
戦車道を復活させた県立大洗学園と戦車道の強豪校︑サンダース大学
付属高校との戦いであり︑圧倒的な兵力差と武装の違いから当初の予
測では大洗学園の惨敗であると誰もが予想した︒しかし︑サンダース
高の一両が撃破され︑予想は覆された︒さらに︑隠されていたサン
ダースのフラッグ車が大洗の車両に発見され︑大洗は総力を挙げてこ
れを撃破せんと大挙して押し寄せたのだ︒類を見ないその鬼ごっこ
はサンダースの救援によってさらに混沌と化し︑勝負の行方が分から
なくなってしまったのだ︒
しかし︑大洗の車両は次々と撃破されていき︑起死回生とばかりに
隊長の乗るⅣ号戦車が射撃のしやすいエリアにそれ︑それをサンダー
スのFirefly中戦車によって狙われた︒追いかけるフラッグ
車がⅣ号戦車のキルゾーンに入った瞬間︑そしてFireflyの射
程内に入ったその時︒Ⅳ号戦車の砲撃が命中する︒さらに砲撃直後
にFireflyの砲撃によりⅣ号戦車にも命中する︒
試合会場は一瞬にして沈黙が支配し︑戦っていた彼女らも動きが止
まる︒
そしてM4A1シャーマン中戦車の砲塔の上に立った白旗を見た
審判が判定を下した︒
︵大洗学園の勝利
!!!︶
特設観客席の歓声と大破した大洗の学生の歓声がその大会会場を
包み込み︑感情の爆発がその場を支配する︒ある者は歓喜し︑ある者
は咽び泣く︒歓喜と悲哀が入り混じった試合会場はテレビ画面から
でもひしひしと伝わった︒
﹁ははっはっははっはっは
!強いな大洗︒あのシャーマンがボロ雑巾
みたいじゃないか﹂
一撃でエンジンを仕留めた大洗のIV号戦車の砲手に対して小太
りの男は賞賛に値すると拍手を送る︒それは偶然や奇跡といったも
のではなく︑積み重ねられた経験︑技術による成果である︒戦場には
偶然や運と言ったものが存在しないわけではない︒しかし︑大半の結
果は経験や積み重ねられた事項が勝敗を左右する︒
椅子に座りそれを見ていた男は見事な精密射撃に歓声を送った︒
﹁やっぱり強いなあいつは︒べらぼうに強いな︑存外に強いな
!﹂
﹁も︑も申し訳ありません︒やはり・・・やはり私どもは・・・﹂
横の白衣を着る奇妙なメガネを掛けた男は人差し指を噛みながら︒
苦悶の表情を浮かべながら謝罪の言葉を口にするが︑小太りの男はそ
れを制す︒
﹁否
!馬鹿を言うな︒むしろ大成功に近い﹂
テレビを消し︑満足そうな笑みを浮かべた男はゆっくりとした動作
で足を組み︑指を重ね合わせて笑みを浮かべた︒
﹁あの西住に対してあのサンダースは一定の戦果を挙げたのだ︒それ
は驚くべき英雄の抒情詩だ︒・・・西住みほ︑それはもはや西住流戦
車道ではない戦車道︒すなわち彼女は短い間に西住流に対抗できる
本懐に指を掛けたのだ︒
乙女を構築し
乙女を兵装し
乙女を教導し
乙女を編成し
乙女を兵站し
乙女を運用し
乙女を指揮する
彼女らこそ大洗学園﹃Oarai Panzerkorps﹄
!!!
素晴らしい
!科学部顧問
!﹂
﹁感謝の極み
!﹂
小太りの男が言うと︑白衣の男はその目に狂気を宿しながら歓喜の
返事をする︒
﹁では諸君
!﹂
その声とともに一室は揺れ動き︑機械音が部屋を満たした︒
﹁楽しい楽しいショーもひとまずお開きだ︒そろそろ帰ろうじゃない
ホーム 船か︒愛しきへ﹂
暗がりの一室は巨大な昇降機と化し︑機械音を立てながら上がって
いく︒上がった先は黒森峰の校章を床一面に描かせた巨大な艦橋
だった︒艦橋の窓から見える大空と遥か下に見える情景は先ほどま
で戦車道と歩兵道の合同大会があった大会会場である︒
理事会 オペラハウス﹁艦長
!回頭の用意だ︒急げよ︑のご老人達がお待ちかねだ︒
くれぐれも急げよ︒きっと怒り心頭で顔を真っ赤にしているだろう
からな﹂
黒森峰海戦道を履修者が着用する軍服を着︑尉官の階級章を持つ艦
長らしき男は苦笑する︒周りには副艦長︑航海長が控えており彼らも
同様に笑み
を浮かべた︒
学園長 少佐殿﹁成程︑それはまさしく一大事ですな︒急行いたします︒
!﹂
﹁取舵用意
!フラッペン起動
!﹂
艦長が命令し︑航海長や操舵手が動き始める︒
﹁取り舵用意︒フラッペン起動﹂
﹁全フラッペン起動確認︒高度よし︑取り舵20
!﹂
命令を遂行するべく︑操舵手によって方位が定まり︑艦橋内に重低
音のプロペラ音が響く︒彼らが乗るのは巨大な飛行船︒漆黒の十字
を校章とする黒森峰学園艦のうちの一隻である︒その大きさは従来
の飛行船の大きさを遥かに超え︑装甲が装備されたそれはただの飛行
船ではなく︑飛行巡洋艦という名前が相応しい︒
﹁目標︑黒森峰女学院︒・・・行くぞご老人方︒私の邪魔をする奴が何
百 何千 何万 何億死のうが知ったことじゃない︒否
!私の前に
立ちはだかるものは皆殺しだ﹂
小太りな男︑学園長と呼ばれた男は笑みを浮かべながらとんでもな
いことを口にする︒それに誰も気を止めることなどしない︒
彼らは黒森峰女学院付属男子高等学校の生徒とその教員達︒帰還
する彼らは黒森峰女学院の戦車道を応援するサポーターであった︒
全国高校歩兵道大会において常に優勝校として威厳と尊敬の念を誇
示するため活動してきた彼ら︒
彼らを畏怖と嘲笑と尊敬を込め﹃親衛隊﹄と呼び︑彼らは自身のこ 最後の大隊 ミレニアムとを﹁﹂と呼んだ︒
主と 下僕
嘗て失われた多くの貴族階層の家々は常に内部崩壊の危機に晒
されていた︒特に重要な役職を持つ貴族は家族の中で内紛の起こる
危険性を秘めている︒それは古今東西の貴族社会においてみられる
ものであり︑時には父と子︒兄と弟︑姉と妹が争うことがあった︒そ
こには富と名誉︒権力が存在し︑外からの圧力などによって権力闘争
が多発する︒フランス革命以降の近代において︑貴族階級の激減と市
民階層の急激な発展によって家族間の内紛は徐々に無くなった︒
しかし︑生き残った名家や資本家などの上流階層などは時にして旧
時代の血みどろの肉親同氏の骨肉の争いが行われることもあった︒
薄暗く︑蜘蛛や鼠が巣くうダクトを10代前半の少女が息を潜め︑
通風孔の隙間から外を覗き見る︒
﹁どこだい
?どこにいるんだい
?可愛い可愛い姪っ子︒私の可愛い フロイライン お嬢さん姪っ子︒可愛い可愛い私の︒﹂
そこには中年のゲルマン系イギリス人の男が姪っ子を探している
ようであった︒しかし︑その手にはあってはならない名設計者ブロー
ニング氏が手掛けた9mmブローニング・ハイパワー拳銃が握られて
おり︑彼の周囲には黒いスーツにサングラス︑そして銃火器で武装し
た男たちが控えていた︒
﹁聖グロリアーナ女学院戦車道
Royals Horse Guard 近衛騎馬隊﹁﹂と呼ばれるに相応しい部
隊の隊長を継し︑うら若き乙女︒ダージリン︑君は何も分かっていな
い・・・﹂
愛称で呼ばれた少女︑ダージリンは狂気と沙汰としか見えないその
叔父の背中を見︑震えた体を押さえるようにその場にちじこまる︒
﹁君の兄上︑いや君の父上が理事長を解任されるまで私が二十年も
待ったというのに︒・・・なのに辞め際の兄上は君に戦車道の隊長を
やらせるという︒容認しがたい決定を残していった︒それはいけな
い︒﹂
叔父であるその男はスライドを引き︑次弾を装填すると再び話し続
ける︒
﹁それはいけない︒・・・・・聖グロリアーナ女学院︑そして戦車道は
私のものだ
!﹂
彼らの足音が遠ざかっていったあと︑ダージリンは息を潜め︑音を
立てないようゆっくりとした足取りで目的地を目指す︒彼らに見つ
かれば何をされるかわからない︒震えるダージリンは心身衰弱した
父親の話を思い出す︒
﹃ダージリン・・・・・もしもの時・・・お前に危機が迫ったとき・・・・
どうしようもない敵の勢力に追い詰められた時︑地下の忘れ去られた
資料室に行け︒そこには我々︑聖グロリアーナ女学院の一つの成果が
ある︒お前を守るすべがある︒﹄
病院に入った父の言葉を思い出したダージリンは急いで地下に降
り立つと︑一目散にその地下の忘れ去られた資料室へ走っていく︒物
置として新旧の備品が混在する地下室を走り抜け︑奥の古びた資料室
と書かれた部屋へとたどり着き︑扉を開いた︒
そこには︑積み重ねられた長年の研究資料が残されていた︒
古今東西の兵器の資料︒技術強国であったドイツ国防軍の遺した
資料やかつてソヴィエトと呼ばれていた時代の軍事資料︒果ては日
本の試作戦車の設計図︒ありとあらゆる資料が納められていたそこ
は戦車道を履修する者︑軍事知識を欲するものにしてみれば宝の山で
あった︒当時の遺された書類もあり︑史料的価値があるものも存在す
るであろう︒それらはご丁寧に劣化しないようアルカリ性の大判の
封筒にて保管されており︑膨大な資料は山積みとなっていた︒
それらは戦車道の試合で必要になるだろう︒だがそうではなかっ
た︒
危機的状況は試合ではなく︑貴方の叔父による敵勢力が迫っている
ことであった︒そうなればこれらの資料は何の意味も持たなかった︒
﹁これが・・・私を守る術・・・・﹂
本心を呟きたかったが︑今この時でなければ喜んでいたであろう︒
ダージリンは足元にある資料をその憤りに任せて蹴ることはせず︑た
だ唖然とそれらを見る︒
﹁見つけたよ︑ダージリン・・・﹂
部屋に叔父の声が響き渡ると同時に撃鉄を下す独特の金属音が部
屋を再び響かせる︒ダージリンが死を覚悟した瞬間︑銃声が響き渡
り︑その衝撃でダージリンは資料の山に叩き伏せられる︒悲痛な叫び
声と共に彼女の血が資料のそこかしらに飛び散り︑硝煙がその部屋に
染み込んでいく︒不幸中の幸いか資料に埋もれた彼女の傷は肩を掠
るだけに過ぎず︑飛んで行った弾は資料室の壁にめり込んだ︒
とどめを刺そうと歩み出す叔父にダージリンは起き上がり睨みつ
けた︒
﹁叔父上・・・﹂
フロイライン お嬢さん﹁その通りだよ︒﹂
﹁・・っ
!・・貴方はそこまでして・・・そんなにまで学院長の座が欲
しいんですか
!﹂
﹁またまたその通りだよ︒フロイライン・・・君を亡き者にすれば︑私
の娘を戦車道の隊長にするだけだ︒﹂
ハイパワー拳銃を彼女の眉間に狙いをつけ︑邪悪な笑みを浮かべた
叔父は人の姿をした悪魔だった︒再び撃鉄が下げられ︑死を覚悟した
ダージリンは目を食いしばる︒
引き金を引かれようとしたその時だった︒書類の擦れる音と共に
何者かが奥の書類の山から這い出てきた︒そこにいたダージリンや
叔父︑彼の取り巻きは皆その光景に驚く︒
まるで漆黒の拘束着のような服を身に着け︑腰まで延ばされた髪の
毛は重力に逆らい︑異常なまでに白い肌は不気味さを演出させる︒そ
して奇妙なまでに真っ赤な瞳︒彼らは直感するその存在は人ではな
い︒化け物であると︒
その男は醜悪に見つめるその瞳と殺そうとする殺気︒手袋には魔
法陣のようなものが描かれ︑彼の瞳と共に赤く発光する︒その恐ろし
い姿を見た一同は恐怖のあまり叫びながら銃を乱射する︒
﹁ば︑化け物め
!﹂
叔父︑そして取り巻き達は銃を乱射︒背後にある資料など考えもせ
ずに発射し︑貴重な資料が穴だらけとなる︒それに憤怒を掻き立てら
れたのか︑人とは思えない雄たけびを上げると取り巻きの一人を投げ
飛ばした︒取り巻きの男は壁にぶつかり腕と足をあらぬ方向へ向き︑
痛みのあまり気絶する︒銃弾はその暴れる彼に命中するかと思った
が︑やはり当たらずに逸れて行ってしまった︒
﹁なぜ当たらぬ
!﹂
取り巻き一人一人を戦闘不能にさせ︑取り巻きの持ち物であったハ
チェットを構えると目にもとまらぬ速さで叔父の手首に切りつける︒
﹁遅すぎるぞ︑人間・・・・︒それでは当たらぬし︑掠りもしない﹂
化け物と呼ばれた手には叔父の持っていた銃の弾倉と9mmの弾
丸が転がっていた︒そして銃を構えた右手に切れ目が走り︑血が噴き
出すと同時に叔父は痛みのあまり絶叫する︒
﹁雑魚め﹂
その光景に罵倒すると︑傷口を押さえて無双ぶりを見ていたダージ
リンに近づく男はまるで高貴な貴婦人に対するように腰をかがめ膝
を折った︒
﹁お怪我は御座いませんか︑お嬢様﹂
先ほどまでの殺気を放っていた男はどこへ行ったのか︒まるで女
王の謁見の様に慎み深く接する臣下のようでダージリンは戸惑いを
露わにする︒
ご主人様 マイマスター﹁ご命令を・・・・﹂
この男はただの人ではない︒ダージリンを主人と定め︑類稀なる戦
闘能力を発揮する︒それは中世の領主と臣下の関係︒絶対的な忠誠
を捧げ︑彼の者のためなら命を捧げるという熱狂的な心酔︒ダージリ
変態 紳士ンは直感した︒彼はただの人ではない︒﹃﹄であると・・・︒
﹁名前は
?﹂
至極単純な質問︒だが︑ダージリンのその決意のもとに言われたそ
の言葉何よりも重い︒そして︑漆黒の衣服に身を包んだその紳士は口
を開く︒
アーカード ARUCARD先代 お父上﹁・・・・・・︒はそう呼んでおられました﹂
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※※※※※※※※
﹁それが出会いだったんですね﹂
刻は戻り︑現代︒大洗学園との親善試合が終わってから︑ダージリ
ンにいつもついているオレンジペコはダージリンの話を聞き︑紅茶を
飲む︒
彼女たちの間柄は学院内の制度である上級生が下級生の面倒を見
る姉妹制度に由来する︒ダージリンはオレンジペコを妹として︑学院
の様々なことを教え︑戦車道でもダージリンの乗る戦車の装填手とし
て選ばれる︒そして︑ソウルネームも紅茶から来ていることから二人
の結びつきは実の姉妹以上に深いものとなっていることが窺い知れ
よう︒
﹁その後︑ダージリン隊長の叔父様はどうなったのですか
?﹂
執事 ウォルター﹁その後︑によって警察に引き渡されたわ︒引き連れていた取り
巻きはとりあえず病院行きになったわね﹂
計画的殺人として主犯のダージリンの叔父上は無期懲役︒その取
り巻きも懲役刑が言い渡された︒政治的陰謀に関与したとして聖セ
ントグローリア女学院の理事と教員の何名かも依頼辞職によって学
園艦から追放され︑心身を回復したダージリンの父は学院長から理事
長に昇格した︒その後︑内部改革とダージリンによる戦車道の育成に
よって強豪校として勢いを甦らせた︒
その力の源は旧校舎内の地下室に隠された古い資料であり︑それら
によって戦車道が強くなったといっても過言ではない︒さらに︑その
膨大な資料は学園艦内に博物館が出来るほどの値打ちの物があり︑
ダージリンの父は早速︑文書の保管を名目に博物館を建設︒戦車道関
係者を唸らせ︑学園の収入として繁栄した︒
﹁こんな言葉を知ってるかしら
?﹃銃剣で王座を築くことはできるが︑
長くは座ってられないだろう﹄﹂
﹁ん〜・・・ミハイル・ゴルバチョフ
?﹂
オレンジペコはどっかで聞いたことがあるフレーズに考えるが︑思
い出すことができない︒すると︑ダージリンは微笑んで回答を言っ
た︒
﹁ボリス・エリツィンよ︒私や父が何かしなくても︑横暴なやり方では
反発を招くわ︒私たちはもっと優雅にことを運ぶべきね﹂
﹁意外です︒ロシアの格言がでるとは・・・﹂
ロシア方面のボキャブラリーが乏しいオレンジペコは悔しそうに
俯き︑﹁要勉強ね﹂とオレンジペコの苦手な分野が分かったのがうれし
いダージリンは後ろに控えていた執事を呼んだ︒
﹁ウォルター︑アーカードは
?﹂
後ろに控えるのは初老のイギリス人であった︒後ろ髪を紐で纏め︑
片眼鏡をつけた古風なステレオタイプな老執事であるが︑長身な体躯
とすらりとした姿勢︒そして︑異常なまでに鋭い眼光と物腰︒それは
歴戦の兵士にも似た風格を併せ持っていた︒彼は女学院内でも有名
であり︑ダージリンの私生活をサポートする傍ら︑闇家業に従事して
いるのではないかともっぱらの噂であった︒
そんな老執事ウォルターであったが︑オレンジペコ︑ダージリンの
カップに追加の紅茶を注ぐと微笑みながら答えた︒
﹁はい︑アーカード様は現在︑御当主様と共に博物館で文書整理を行っ
ております︒何分︑膨大な資料がありますので﹂
ダージリンの父︑聖セントグローリア女学院の現理事長は昔から軍
事文書や秘密資料など買いあさるのが好きなイギリス人であった︒
古今東西の軍事資料を集め︑学院内の学道に反映できればよいと考え
ていたが︑やはり趣味と実益を兼ねたものであったのは娘の目からし
ても明らかであった︒叔父に付け入る隙を与えたのは高額な軍事資
料を購入したことにダージリンの母であり︑愛妻に愛想を付かされ出
て行ってしまったからで︑心身衰弱してしまい︑ダージリンが叔父に
殺されかけ︑アーカードに救われてから︑ダージリンの父は更生して
愛妻とも仲直りを果たした︒ただ︑仲直りの条件として出された︑す
べての軍事資料の開示とそれを学院に売るという条件であり︑ダージ
リンの父は涙ながら資料を女学院に半分を寄贈︒半分を格安で売却
することになった︑そしてアーカードは非常勤講師と学院に設置され
た軍事資料の図書室の専属司書として働くことになった︒
現在では︑軍事文書購入は諦め︑膨大な量になったそれらの資料を
整理しており︑何故か司書の免許を持つアーカードがそれを整理して
いる︒オレンジペコはアーカードが何者なのか全くわからなかった︒
何度か聞いてみても︑ダージリンにははぐらかされてしまう︒
﹁ウォルターさん︑アーカードさんって一体何者なんですか
?﹂
オレンジペコの問いかけにウォルターは苦笑を漏らす︒
﹁何者と言われましても・・・そうですなぁ︒さっきの話の通りでござ
います︒異常な戦闘能力と御当主に任された資料整理︒正直申し上
げますと︑あの悪趣味な赤いコートとハットは普通の人間ならば着ま
せん︒そして︑資料の片隅に置いてある﹃魔法少女﹄を題材にした漫
画や怪しげなゲーム・・・・・・それらを統合して話しますに・・・
紳士 ヘンタイ彼の者はとしか言えませんな﹂
﹁あ・・・はは・・・﹂
なんとも言えない表情のオレンジペコ︒それはそうだろう︒彼女
から見てアーカードはかなりの美形である︒異常な程白い肌の色や
奇抜な真っ赤なコートやハットを除けば︑女子は黄色い叫び声をあげ
ることであろう︒加えて言うなら奇抜なファッションセンスは一部
の女子から好評らしく︑アーカードファンクラブなるものを結成して
おり︑崇め奉られている︒そんな様子や彼の性格を知れば失望するこ
と請け合いだろう︒
オレンジペコも知りたくなかったであろうアーカードの秘密︒
実は黒森峰女学院の理事長とも隠れた趣味で交流があり︑秋葉原に
繰り出すこともあったりするがまた別の話︒
ダージリンはジョン・マクレーン並の大冒険の果てに助けてもらっ
紳士 ヘンタイたのが︑だとは知りたくなかったのだろう︒存外︑彼女の強かな
処は父やアーカード︑そして何故かたまにやってくる黒森峰理事長と
も面識があるためかもしれない︒
それらを忘れ去ろうとするようにオレンジペコは砂糖とミルクを
増し増しにして紅茶を飲む︒想像や妄想は限りなく甘く︑現実は生姜
紅茶のように辛かった
孤児 院 の神父
吸い込まれるような青く清々しい空︒晴れ晴れしいその空と木々
の香りに交じって潮風そよぐような天気︒西ヨーロッパ︑イタリアに
風景になりそうな建築様式の建物の門には︑フェルディナントルーク
孤児院と書かれていた︒
よく︑孤児院であれば問題は付き物であるが︑そこの管理や教育を
している大人は非常に熱心であるのか︑その孤児院では子供の笑い声
が度々響いている︒良い学校や孤児院などの教育機関であれば︑休み
時間には子供の笑い声や遊んでいる様々な音が聞こえる︒たまに︑そ
れが耳障りであると言う地域もあるものの︑大抵は微笑ましく見てい
ることが常であろう︒
平和で健やかな成長をする子供であっても︑たまに友人とぶつかり
喧嘩することも稀にある︒これはいかに教育しようとも人とのぶつ
かり合いは無くせぬものである︒そんな喧騒を聞いた教育者はその
子供たちの喧嘩を取りやめさせる︒
﹁コラーッ
!二人ともやめなさ〜〜い
!!!﹂
孤児院で響き渡るのは︑孤児院を管理する大柄な神父であった︒慈
愛と労わりを併せ持つ神の代理人として宗教業務を行う彼は子供を
叱る一人の養育者であった︒大柄な頼りがいのある彼の容姿は他所
からみれば少々厳ついものの︑孤児院の子供たちは﹁神父さま﹂と呼
び︑親しまれている︒決して殴ったりはせず︑優しい神父として子供
たちの父として親しまれている︒だが︑戦場や裏社会︑勘のいい人間
なら彼の容姿に真っ先に気づくだろう︒そして彼の動きや気配など
で必ず分かるはずだ︒
顔の傷や無駄のない動き︒そしてこちらが彼をじっと見つめれば
視線を感じ︑にこやかに挨拶をする裏腹にこちらの状態を鑑みる目つ
き︒
どれしも︑神父たる者がやって良い者ではない︒堅気の者がやるし
ぐさではない︒
﹁一体︑どうしたというのです
?﹂
子供たちは叱られ︑事の顛末を話してそれを神父は聞いていく︒喧
嘩の原因は一方が本を汚し︑それを見た本の所有者の子供が殴り喧嘩
に発展してしまったのだという︒そう説明しているうちにふつふつ
と双方の怒りがこみ上げていき︑再び殴り合いの喧嘩に発展しそうに
なる︒
﹁なんだと︑こいつ
!﹂
﹁やるのか︑てめぇ﹂
﹁やめなさ〜〜い
!!!﹂
神父の一喝によって双方の殴り合いはストップとなる︒
﹁暴力を友達に振るうなんて・・・・いけません
!そんなことでは天国
へは行けませんよ〜﹂
﹁神父様
!ごめんなさい﹂
﹁ごめんなさい
!﹂
敬虔な信者であれば︑悪いことをすれば天国へ行けない︒これを言
われれば忽ち自分たちが悪いことをしたのだと自覚する︒孤児院は
信仰を重んじており︑世界最大の宗教である彼らは孤児院の子供たち
を温かく迎え入れている︒彼らもまた信仰を重んじ︑その行為を反省
し︑神父へ頭を下げた︒神父は安心の表情を浮かべながらため息を吐
くと︑すぐに笑顔になって彼らへ説法を唱えた︒
﹁いいですか
?暴力を振るってよい相手は化物共と異教徒共だけで
す﹂
この孤児院にいるどれだけの子供たちがそれに気づくだろうか︒
多分︑気づかないであろう︒神父の笑みはまるでその挙げた相手を嘲
笑うかのような聖職者がやってはいけない笑みだった︒もちろん︑
言っている言葉も神父とて見逃せない言葉である︒だが︑子供達の常
識はこれだった︒異教徒はこちらが慈悲の心で見逃し︑化物共は打ち
倒す︒それはその神父の異常性を顕していた︒
すると︑門の向こうから二人の人物が現れる︒その人物はこの孤児
院の院長とアンツィオ高校神学科を受け持つ老年の教師と不機嫌そ
うな表情を浮かべ︑薄緑の縦巻ドリルの髪形をしたアンツィオ戦車道
ドゥーチェ 総帥の隊長︑安斎千代美︒またの名を﹁・アンチョビ﹂の姿が
あった︒
その光景を見た神父は目を細めると喧嘩をしていた二人を帰らせ
るため手を叩く︒
﹁よし︑じゃあ二人とも部屋に戻りなさい︒﹂
﹁﹁はーい
!神父様﹂﹂
元気よく子供たちは走っていき︑神父はそれを見送った︒手を振る
神父は視界から子供が消えていくと︑眼光に鋭く殺気が滾っていく︒
﹁何のごようでしょう
?一体どうしたというのですか
?﹂
﹁ここのところ︑歩兵道で新たな動きがあるのを知っているかね
?﹂
﹁ええ︑生徒や教師を加えた多人数殲滅戦︒男女の隔たりをなくした
あれですな
?﹂
歩兵道︒それは戦車道と同じくして出来た武道の一つである︒古
来より国家や君主を守るために軍の要とされてきた歩兵である︒そ
れが﹁競技﹂として行われ始めたのは︑古来からオリンピックや武術
の競い合う事があり︑それを総合した武術競技も史料に記されてい
る︒現在のような学生が歩兵として訓練を行い︑戦車道の様に競技化
されたのは︑つい最近の事であろう︒
ただし︑戦車道のように安全性が確立されているわけではない︒過
去においてエアガンやペイント弾が使用されたが︑どれも競技用とし
ては確実性に欠けていた︒
現在では近年開発された防弾や耐久性の高いナノカーボンを使用
した繊維によって一定の安全性が確保され︑弾頭は樹脂を主としたセ
ルロース弾やゴム弾などに変更された︒また︑車両の安全装置や戦車
との合同協議においても精度の高い電子安全装置が設置され︑より安
全な競技として確立され︑ほぼ戦車道を行う学校は歩兵道を行い始め
ていた︒また︑戦場を﹁競技﹂としたが︑各国の軍事関係者の援助に
より︑安全を考慮して成人選手の一定数参加や男女の隔たりをなくな
り︑そのマイナーな競技ではあるものの︑国の支援など潤沢に受けら
れているのが歩兵道という競技であった︒
﹁ここのところ︑聖グロリアーナ女学院で不穏な動きがある﹂
﹁ええ︑良く兵を訓練しているようですな︒﹂
聖グロリアーナ女学院は付属の男子校を持っており︑イギリス流の
紳士を育成するための学校も併設してある︒また︑男女の健全な育成
を兼ねて女学院の女生徒と男子生徒の交流もある︒
そんな男子生徒が履修するのは大半が歩兵道であった︒第二次大
戦中にイギリス軍が使用する兵装を装備して競技を行う生徒達︒そ
の中でも空挺部隊は精鋭であり︑黒森峰の精強な歩兵部隊も手を焼く
有様であった︒神父はそのことを言っているのかと思うが︑老教師は
首を振る︒
﹁違う︑新たに作られたHELLSINGと呼ばれた特務部隊だ﹂
﹁
!!・・・・・ほう﹂
老教師のただならぬ様子と新たな特務部隊の名前に聞き覚えが
あったこと︑神父は若干驚きつつも︑歩兵道連盟の発行する機関誌の
一部を思い出していた︒
流星のごとく現れた特務部隊﹁HELLSING﹂︒その実力は精
鋭兵一個中隊を上回る︒人数や装備などは全く分かっていないが︑赤
いコートを着た長身の男が精鋭一個中隊のプラウダ高校所属の部隊
を全滅させたのだという︒神父はそれを見たとき︑満面の笑みを浮か
べていたらしいが︑孤児院の子供たちの感性はずれている︒そのとき
の笑みは眼前に好敵手を垣間見る狂戦死の笑みであった︒
﹁奴らによって歩兵道の履修する高校が次々とやられている︒その兵
力差は明らかに劣っているにも関わらずだ﹂
﹁結構なことじゃないですか︒歩兵道を履修する貧弱な高校が負けた
のでしょう﹂
﹁そうでもない︑聖グロリアーナ女学院戦車道の隊長ダージリンは
知っていよう︒彼女の従僕のようだ︒その従僕・・・うまくやってい
るようだぞ﹂
老教師の言葉に神父は笑う︒
我々 切支丹﹁ハハハッ
!あんな素人集団︑に比べればまるで幼稚園だ
!
アンツィオは
!
カトリックは
!
そして﹃我々﹄は
!
遥か昔より闘争を続けてきたのですから﹂
神父は勝利を信じる眼で話す︒それは慢心したものではない︒勝
利を確信し︑絶対の勝利しか考えない狂信者の顔である︒それは聖職
者の表情とは言えなかった︒
﹁で︑私は
?記憶ではアンツィオ高校と彼らとは練習試合をする予定
はなかったはずですが・・・﹂
﹁・・・・・・今回は野試合だ﹂
﹁ほう
!!・・・すると
?﹂
老教師の言葉に神父は驚きの声を上げる︒
野試合とは歩兵道連盟が未公認な試合の事である︒学校間の練習
試合申し込みもあるのだが︑今回は毛色が異なる︒
﹁今回聖グロリアーナ女学院に宣戦布告したのはベイドリック高校
だ﹂
﹁ほう﹂
宣戦布告とは歩兵道履修高校が隠語として使う非公式な敵対を意
味する︒歩兵道は基本的にスポーツマンシップを志し︑友愛精神で相
手高校に対しても敬意を払う︒しかし︑歩兵道は過去に使用された武
器を使用する殆ど戦争と同じような競技である︒それを考えれば︑相
手高校を激しく憎むこともある︒そして今回︑ベイドリック高校は宣
戦布告という敵対意思を固め︑聖グロリアーナ女学院に対して野試合
を要請したのだ︒
﹁聖グロリアーナ女学院はその要請を受諾した︒奴らは小手調べとし
ているようだ︒我々はベイドリック高校とは旧知の仲だ︒それを
黙ってみているわけにはいかん﹂
﹁当て馬と言わんばかりに新設部隊派遣するとは︑あいも変わらず厚
顔無恥な連中ですな﹂
ベイドリック高校は北アイルランドの文化を組み入れた高校であ
り︑聖グロリアーナ女学院はイギリスの文化を取り入れている︒新設
された部隊の当て馬としてベイドリック高校を使うのだから︑舐めら
れていると言わざる負えないだろう︒
﹁奴らは勘違いしている︒聖グロリアーナ女学院が強いと思っている
ようだ︒違う我々が最強なのだ︒﹂
﹁本当に乱入しても構わないので
?﹂
神父は最後通告のように肩を震わせながら問いかける︒
﹁・・・・・・ベイドリック高校は負けるだろう︒ここで恩を売ってお
いて損はない︒同じ系列校だ︒軽んじられるわけにはいかんのだ︒﹂
老教師は振り向きざまに口を開いた︒
﹁我々は唯一絶対の神の代行者だ︒同胞を見捨てるわけにもいくま
い︒﹂
神父は受諾するかのように聖書の一節を一心に唱える︒それは狂
信者にしか見えず︑その一部始終を見ていたアンチョビは後ずさっ
た︒
﹁エェイィメンン
!!﹂
老教師はその言葉を聞き︑顔色を悪くさせたアンチョビと共に孤児
院を後にする︒
﹁先生・・・・・あの方は
?﹂
ある程度孤児院から距離を置いた二人︒そこにはアンツィオ高校
戦車道を率いてきた隊長の面影はなく︑恐ろしいものを見て恐怖する
か弱い少女であった︒老教師は首から下げた十字架を握り︑語り出
す︒
﹁彼はイタリアで神学校において歩兵道をしていたのだ・・・﹂
﹁神学校でですか
?!﹂
老教師の言葉にアンチョビは驚きの声を上げた︒なにせ神学校で
ある︒神の言葉を信者に伝え︑神に尽くす代行人である︒彼らが歩兵
道を履修しているなど何の冗談だろうかと思いたくなるのも無理は
ない︒感覚的に日本人であるアンチョビには信仰に剣や銃が必要な
のかと考えてしまう︒だが︑それはヨーロッパにおいては違うのだ︒
かつて彼の宗教は聖地を求めて各国の軍を連合させて戦いを8回に
わたって仕掛け︑日本においても一向宗が戦国大名のように覇権を
争った︒現在のような宗教に寛容な日本人には考え付かないかもし
れないが︑神のためなら死ぬことも厭わない者もいるのだ︒
﹁そうだ︒かれは世界大会でもイタリア代表として暴れまわった男
だ︒今では日本の学校の付属孤児院の管理を任された神父だがね﹂
歩兵道を履修しているものなら︑だれもが知っていよう︒その男︒
数々の武功を挙げ︑物量の差を感じさせず︑勇猛果敢に突撃をする︒
そして異常なまでの戦闘能力︒彼の獲物は|銃剣≪バヨネット≫の
み︒近接戦闘に特化した彼は歩兵道において異質であった︒
﹁なぜ・・・そんな人物が・・・﹂
アンチョビは疑問を抱くものの︑老紳士は彼女の肩を叩く︒
﹁時として安斎︒人には知られたくない事もある︒好奇心は力を得る
のに必要なものだ︒だがな︑それは身を亡ぼすかもしれない︒それを
肝に銘じておくのだぞ﹂
人の過去をほじくり返すなど︑された人から見れば不愉快極まる︒
たとえ其れが興味本位であればいい思いはしないだろう︒アンチョ
ビは諭され︑﹁すいません︑先生﹂と申し訳なく呟く︒
﹁まあよい︑道を誤ることもあろう︒大事なのは踏み出した足を元に
戻して正しい道を歩むことが肝心じゃ︒さて・・・︑学校に戻るとし
よう﹂
老教師とアンチョビはアンツィオ高校へ帰宅の途に就く︒だが︑彼
女の心には言い知れぬ不安が存在していた︒