九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ヒトコホートおよびマウスを用いた年齢に関連する エピジェネティック修飾についての比較研究
岩谷, 千寿
https://doi.org/10.15017/1931734
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(理学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式3)
氏 名 : 岩谷 千寿
論 文 名 :Comparative study of age-associated epigenetic modifications using human cohorts and mouse models
(ヒトコホートおよびマウスを用いた年齢に関連するエピジェネティック修飾についての比較研究)
区 分 :甲
論 文 内 容 の 要 旨
エピジェネティクスは、DNA メチル化やヒストン修飾により遺伝子発現を制御することで生命現 象にダイナミックな変化を許容する機構である。様々な先行研究において、環境要因等の影響を受 けたエピジェネティックの変化が、生活習慣病に関わっていることが報告されている。
我々はヒト一般住民集団480名より得た末梢血由来DNAとイルミナメチレーションアレイを用い た全エピゲノムスキャンを実施した。そして、解析結果には、加齢性黄斑との関連がある
ELOVL2
や骨粗しょう症の感受性遺伝子であるFHL2
、がんや腫瘍化との関連が報告されているTRIM59
、 2型糖尿病の感受性遺伝子として報告があるKLF14
遺伝子領域を含んでいた。その結果をふまえ、本研究では、マウスを使用し、それぞれの遺伝子領域について、個体追跡や臓器特異性など解析し た。その結果、
Elovl2
とKlf14
に関しては、臓器特異性を検出したが、Fhl2
,Trim59
については 臓器特異性をはじめ、ヒトで観察された年齢依存的なメチル化の増加を検出しなかった。さらに、Klf14
のみメチル化上昇と相関する発現の減少が認められたため、肥満型糖尿病モデル(db/db
)マ ウスとヘテロ型(+/db
)マウス及び高脂肪食負荷を行ったC57BL/6j
マウスを使用し、分子生物学 的手法によってKLF14
遺伝子領域のエピジェネティックバイオマーカーとしての可能性を検討す ることとした。使用したマウスそれぞれの DNA メチル化変化を大脳、小脳、心臓、肺、脾臓、肝臓、膵臓、腎 臓、精巣上体白色脂肪(脂肪組織)、大腸、末梢血について臓器別に検討した。その結果、腎臓、肺、
脾臓、脂肪組織、大腸、末梢血が肥満型糖尿病と有意に相関してDNAメチル化レベルが上昇した。
同時に、加齢の影響を検証するために 4週令と 50 週令を比較した。その結果、脂肪組織と血液は 肥満型糖尿病と加齢両方の影響を受け易いことが示唆された。さらに我々は、Quantitative reverse transcription PCR法にて白色脂肪と末梢血における
Klf14
遺伝子と関連遺伝子の発現を検討した ところ、DNAメチル化レベルの解析結果と相関した変化を認めた。それら関連遺伝子には、Klf14
下流の遺伝子のみならず、炎症性の遺伝子も含まれており、Klf14
のメチル化上昇に伴い、脂肪組 織の炎症が上昇することがわかった。そこで、フローサイトメトリーを使用し、脂肪組織の特に間 質細胞について炎症性解析を実施した。その結果、Il12をはじめとした炎症性サイトカインの上昇 を認めた。本研究により同定された
KLF14
遺伝子領域におけるDNAメチル化レベル変化は、加齢のエピジ ェネティックバイオマーカーとなるのみに留まらず、脂肪組織の炎症状態を反映するエピジェネテ ィックバイオマーカーとしての可能性が示された。また、KLF14
遺伝子領域におけるDNAメチル 化レベルの変化が、種を超えて再現性が認めたことから、生命システムにおいて重要な生理的機能を有することが明らかとなった。今後、エピゲノム変化と肥満型糖尿病の関連を理解するための重 要な情報を提供すると考えられた。