九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
タシテンガタ VR キョウザイ ノ カイハツ オ ヨビ コウカテキナ カツヨウ ニ カンスル ケ ンキュウ
瀬戸崎, 典夫
早稲田大学人間科学学術院
https://doi.org/10.15017/16974
出版情報:Kyushu University, 2009, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
第 4 章
多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.1 本章の目的
第 2 章において,3 次元立体視による多視点型太陽系 VR 教材を開発した.第 3 章におい て,VR 教材は生徒の興味や理解の向上を促進し,教育現場で使用される可能性が示唆され た.
一方,教員にとって 5000×2000(mm)の大型スクリーンによる提示装置は,移動や設置 の時間において負担となる要素である.移動,設置の時間短縮を考慮すると,スクリーン サイズを小型化することが可能であれば,教員の負担を軽減することができる.しかしな がら,スクリーンを小型化することによって VR 教材の特色である没入感や臨場感が軽減さ れる恐れがある.
観察者にとって,好ましい観視距離や観視画角は画面サイズに依存し,画面サイズが大 きくなると共に大きくなる[54].臨場感効果は,画角が 20°近辺から誘導が生じ始め,80°
~100°以上で飽和状態になることが明らかになっている[55].また,スクリーンのサイズ による適応人数や標準適視距離は,プロジェクタの輝度や適視範囲角度によって理論上算 出することができる.
多視点型太陽系 VR 教材は,移動・設置が可能であり,多様な状況下にある教育現場に持 ち込んで使用することを想定している.実際の教育現場で VR 教材を用いることを考慮する と,理想的な人数や適応範囲での提示ができるとは限らない.また,一斉授業を想定する と,全ての学習者に対して均一の臨場感を与えるための画角を提供することも困難である.
そこで,第 2 章で開発した多視点型太陽系 VR 教材を用いて,通常の授業を想定した授業 実践を行い,スクリーンサイズの違いによって学習者や教員に与える印象について調査す る.調査の目的は,多視点型太陽系 VR 教材の効果的な学習効果を検討する際に用いるスク リーンサイズを選定することとである.
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.2 質問紙による事前調査
4.2.1 評価方法
調査時間や設置場所を考慮すると複数のスクリーンを学校に持ち込み,調査することは 困難である.そこで,教員が望むスクリーンのサイズを明らかにし,教室に持ち込むスク リーンの数を限定することを目的として事前調査を実施する.
調査対象は,教員 45 名であった.調査用紙は,筆者が作成し,2006 年 8 月 20 日~2006 年 8 月 31 日に実施した.VR についての説明を調査用紙に記載し,表 4-1 に示すように質問 紙中に提示システムの概略図を掲載した.選択肢について文章による説明は記載せず,概 略図を用いた視覚的な情報のみで授業に適したスクリーンサイズを 1 つ選択するよう回答 を求めた.調査の実施についての詳細を表 4-1 に示す.
対象:教員 45 名(小学校 18 名,中学校 14 名,高等学校 12 名,養護学校 1 名)
実施日:2006 年 8 月 21 日~2006 年 8 月 31 日 回答時間:指定なし
調査方法:調査用紙を e メールにて配布および,電話による口頭回答 調査用紙作成:筆者
表 4-1 質問紙による事前調査について
註 調査用紙を付録 2(調査用紙 11)に掲載
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.2.2 結果
「スクリーンの大きさ」について教員 45 名(小学校 18 名,中学校 14 名,高校 12 名,養 護学校 1 名)から回答を得た.45 名の教員は,これまでに VR 教材を用いた授業をみたこと がなかった.表 4-2 は,調査結果をしめす.χ2検定の結果,人数の偏りは有意であった(χ
2(3)=24.48,p<.01).「教卓幅より大きい」程度か「黒板より小さい」程度が適したスクリーン のサイズであると回答した教員が多かった.VR 教材を見たことがない教員はあまり大きす ぎず,移動や設置の容易さを優先していることが示唆された.
表 4-2 「スクリーンの大きさ」についての調査結果
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.3 スクリーンサイズの検討
4.3.1 小型スクリーンの製作
事前調査の結果を基に図 4-1 に示す小型スクリーンを製作した.小型スクリーンの組み 立て手順について述べる.スクリーンは偏光タイプのソフトスクリーン(スチュワート社 製 投影部サイズ 2000×700[mm])を使用し,塩化ビニールのパイプをフレームとして使用 している.フレームは分解することができ,12 本のパイプから構成される.本スクリーン は 1 名で 15 分程度あれば組み立てることができる.基本構造は,大型スクリーンと同様で ある.
表 4-3 に必要な塩化ビニールパイプとジョイントチーズの詳細を示す.塩化ビニールの パイプは差し込むだけで連結することができるため,特別な工具や技能は必要としない.
図 4-1 小型スクリーン
【塩化ビニールパイプ(内寸 15mm,外寸 25mm)×12】
3000mm×1,2500mm×1,2000mm×2 1050mm×2,950mm×2,550mm×4
【T 型ジョイントチーズ(内寸 25mm,外寸 35mm)×10】
表 4-3 塩化ビニールパイプとジョイントチーズ
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
外枠のフレームは,図 4-2 に示すように 8 本の塩化ビニールパイプで構成されており,8 つの T 字型ジョイントチーズによって連結する.塩化ビニールを連結する際には道具を必 要としない.
さらに,連結した外枠フレームに偏光タイプのソフトスクリーンを設置する.ソフトス クリーンの外周にはリングが接着されており,結束ロックにてフレームと結合させる.結 束ロックによって,閉め具合を調整できるためスクリーンの形状に伴った柔軟な対応が可 能である.また,小型スクリーンは外枠フレームとスクリーンを結合してしまえば,運搬 の際には,スクリーンを設置した状態で移動可能である.
ソフトスクリーンの重量を塩化ビニールのフレームで支えるために,図 4-3 に示すよう に 3320mm の塩化ビニールパイプを弓形に曲げ,テンションバーとした.スクリーンの背面 部分にテンションバーを差し込み,反発力を利用してソフトスクリーンを上に押し上げる.
×8
1500mm 550mm
950mm 550mm
図 4-2 フレームの構成
2000mm
図 4-3 テンションバー
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さらに,中央部分が垂れてしまわないように,図 4-4 に示すように,3000mm のパイプを 弓形に曲げ,2000mm のパイプと連結し,背面テンションバーとする.背面テンションバー とスクリーンフレームの上部,弓型に設置したテンションバーを結束させ,上に押し上げ る.
図 4-5 に示すようにスクリーンの前方上下の塩化ビニールパイプの両端部分に S 字フッ クを用いて針金を張ることでU字の形状を保つ.
図 4-4 背面のテンションバー
×2
3000mm
2000mm
図 4-5 S 字フックと針金の設置
S S
S 字フック 針金
針金
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4.3.2 授業実践
授業実践は,2006 年 12 月 26 日に山口県立熊毛北高等学校にて実施した.参加型公開授 業であったため,熊毛北高等学校の生徒 6 名に加え,小学生 17 名,中学生 14 名を高校に 招いて実施した.参加型公開授業であったため,事前募集による希望者として,近隣の小 学生,中学生は参加した.また,児童・生徒に加え,熊毛北高等学校の教員 4 名および,
児童・生徒を引率してきた小学校教員 4 名,中学校の教員 1 名,本研究に関して知識を有 しない大学教員 1 名が授業に参加した.なお,第 2 章で開発した多視点型太陽系 VR 教材を 使用し,筆者が操作することで授業を行った.授業内容は,VR 教材を用いた太陽系の惑星 の紹介と月の満ち欠けについてであった.
被験者である児童・生徒,教員は図 4-7 に示すように,一方のスクリーンを用いた授業 を 15 分間受けた後,もう一方のスクリーンを用いた授業を 15 分間受けた.大型スクリー ンによる授業を受けた後に小型スクリーンによる授業を受けた児童・生徒は 21 名,小型ス クリーンによる授業を受けた後に大型スクリーンによる授業を受けた児童・生徒は 16 名で あった.教員は,自由に 2 つのスクリーンを比較しながら授業に参加した.なお,2 回行わ れた授業は同様の内容であった.被験者は,それぞれのスクリーンによる授業を受けた後 に 2 つのスクリーンを比較し,提示した天体コンテンツを用いた場合の設問について回答 した.
比較するスクリーンは,製作した小型スクリーンと既存の大型スクリーンを用いた.表 4-4 に大型スクリーンと小型スクリーンの比較表を示す.制御 PC,プロジェクタ,液晶ペ ンタブレットは,第 2 章で述べたものと同一のものを使用し,第 2 章で開発した多視点型 太陽系 VR 教材によって 3 次元映像を提示した.なお,大型スクリーンと小型スクリーンで
図 4-7 スクリーン検討の流れ
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
スクリーンサイズの検討は図 4-6 に示す実験環境で行われた.2 つのスクリーンを一つの 教室内に設置し,学習者はそれぞれのスクリーンの前に着席して授業を受けた.視点の異 なる 2 つの映像を制御 PC から出力し,映像分配器を用いて大型スクリーンと小型スクリー ンに同様の映像を提示する.それぞれのスクリーンに,各 2 台ずつの DLP プロジェクタを 用いて映像を提示する.操作 PC は,LAN ケーブルによって制御 PC に接続されている.さら に,操作 PC は液晶ペンタブレットに接続されており,タッチペンを用いて簡単に操作でき るようになっている.操作の際,制御 PC の一方の映像が提示された教師用モニターをみな がら授業を進行する.スクリーンに投影された映像は,偏光メガネを用いることによって 3 次元立体視が可能である.
プロジェクター
操作用PC
大型スクリーン
制御PC 映像分配器 映像分配器
教師用モニター
プロジェクター LAN ケーブル
大型スクリーン 小型スクリーン サイズ(縦×横) 200×500 (cm) 70×200 (cm)
投影距離 約210(cm) 約80(cm)
使用レンズ 広角固定レンズ 広角固定レンズ
設置時間 20 分 15分
設置人数 2人 1人
表 4-4 大型スクリーンと小型スクリーンの比較
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.3.3 評価方法
教員 10 名(小学校 4 名,中学校 1 名,高校 4 名,大学 1 名),児童・生徒 37 名(小学生 17 名,中学生 14 名,高校生 6 名)を対象に「スクリーンの見え方」に関する調査を実施し,
上記と同様の教員 10 名を対象に「授業での活用」に関する調査を実施した.教員による比 較は人数による偏りがあったため,それぞれの人数を足し合わせ,「教員」というカテゴリ ーにした.表 4-5 に調査の実施についての詳細を示す.
「スクリーンの見え方」に関する設問項目を表 4-6 に示す.「興味」,「意欲」,「立体感」,
「没入感」,「見易さ」の設問に対して大型スクリーンと小型スクリーンについてそれぞれ 4 件法で回答した.「非常にそう思う」を 4 点,「そう思う」を 3 点,「そう思わない」を 2 点,「ま ったくそう思わない」を 1 点として平均値を算出し,2 つのスクリーンを比較した.
「教材への活用」に関する設問項目を表 4-7 に示す.「適用」,「興味」,「理解」,「進行」,
「準備」の設問に対してどちらのスクリーンがよいかを「大型スクリーン」,「小型スクリ ーン」,「どちらでも良い」の選択肢から回答した.さらに,それぞれのスクリーンの提示 人数について「1~10 人」,「11~20 人」,「21~30 人」,「31~40 人」,「それ以上」,の 5 つ の選択肢から回答を求め,設置時間について「3 分以内」,「3~5 分」,「5~8 分」,「8~10 分」,「それ以上」の 5 つの選択肢から回答を求めた.また,大型スクリーンと小型スクリ ーンそれぞれの特徴について自由記述による回答を求めた.
対象:教員(小学校 4 名,中学校 1 名,高等学校 4 名,大学 1 名)
児童・生徒(小学生 17 名,中学生 14 名,高校生 6 名)
実施日:2006 年 12 月 26 日 回答時間:10 分
調査方法:2 つのスクリーンによる授業後に実施および,回収 調査用紙作成:筆者
表 4-5 スクリーンサイズの検討についての調査の詳細
註 調査用紙を付録 2(調査用紙 12,13)に掲載
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.3.4 結果
(1)スクリーンの見え方に関する結果
大型スクリーンと小型スクリーンによる授業を受ける順序がスクリーンサイズの評価に 影響を及ぼすか検討した.授業を受けた順序を第一要因(被験者間比較),スクリーンサイ ズを第二要因(被験者内比較)として二要因分散分析を行った.その結果,全ての設問項 目において交互作用は有意ではなかった(興味:F(1,35)=0.00 n.s., 意欲:F(1,35)=1.25 n.s.,立体感:F(1,35)=0.02 n.s.,没入感:F(1,35)=0.92 n.s.,見易さ:F(1,35) =1.50 n.s.). 結果から授業を受けた順序はスクリーンサイズの評価に影響を及ぼさないことが明らかに なった.
図 4-8 にスクリーンの見え方に関する主観評価の結果を示す.教員と児童・生徒を第一 要因(被験者間比較),スクリーンサイズを第二要因(被験者内比較)として二要因分散分 析を行った.結果から,全ての設問項目において交互作用は有意ではなかった(興味:
表 4-6 スクリーンの見え方に関する設問項目 設問項目 興味 みていておもしろかった
意欲 このような教材を授業で使用したい(教員)
このような教材をつかった授業をうけてみたい(児童・生徒)
立体感 地球や月が目の前にあるように立体的にみえた 没入感 まるで宇宙にいるようにかんじた
見易さ 地球や月の様子がみやすかった
表 4-7 教材への適用に関する設問項目 設問項目
適用 今回お見せした,教材を提示するにはどちらのスクリーンが適し ていると思いますか
興味 どちらのスクリーンが生徒の興味をひくと思いますか
理解 どちらのスクリーンが生徒の理解度を向上させると思いますか 進行 どちらのスクリーンが授業を進行しやすいですか
準備 自分で準備することを考えたらどちらのスクリーンがよいですか
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
そこで,第一要因の主効果についての分析を行った結果,全ての設問項目において有意 ではなかった(興味:F(1,45)=0.02 n.s., 意欲:F(1,45)=2.01 n.s., 立体感:F(1,45)=1.32 n.s., 没入感:F(1,45)= 0.02 n.s., 見易さ:F(1,45)=2.19 n.s.).結果から,スクリー ンサイズに対して教員と児童・生徒にスクリーンの見え方の差はないことが明らかになっ た.
第二要因の主効果について分析を行った結果,「立体感」,「没入感」,「見易さ」の設問に おいて大型スクリーンは小型スクリーンと比較して平均値が有意に高かった(立体感:
F(1,45)=10.62, p<.01, 没入感:F(1, 45)=18.97, p<.01, 見易さ:F(1,45)=7.34, p<.01). 大型スクリーンは小型スクリーンと比べて広視野角で立体映像をみることが可能であるた め,より高い没入感を与える.また,大型スクリーンでは提示される映像が大きくなるこ とから立体感も高くなり,見易さも向上したことが示唆された.一方,「興味」,「意欲」の 設問においてスクリーンサイズによる有意な差はなかった(興味:F(1,45)=1.69 n.s., 意 欲:F(1,45)=2.12 n.s.).結果から,興味や意欲の向上にスクリーンサイズは依存しない ことが明らかになった.
(没入感)
(立体感)
(見易さ)
(意欲)
(興味)
3.8
3.5
3.7
3.6
3.5 3.7
3.8
3.8
3.3
3.6 3.6
3.4
3.2
2.7
2.9 3.6
3.6
3.5
2.9
3.4
1 2 3 4
平均値
大型スクリーン 小型スクリーン
大型スクリーン 小型スクリーン
大型スクリーン 小型スクリーン
大型スクリーン 小型スクリーン
大型スクリーン 小型スクリーン
**
**
**
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
(2)授業での活用に関する主観評価
図 4-9 に「授業での活用」に関する主観評価の結果を示す.「適用」についてχ2検定の結 果,人数の偏りは有意であった(χ2(2)=9.80,p<.01).「興味」についてχ2検定の結果,人 数の偏りは有意であった(χ2(2)=7.40, p .05).「理解」についてχ2検定の結果,人数の偏 りは有意ではなかった(χ2(2)=3.80,n.s.).「進行」についてχ2検定の結果,人数の偏りは 有意傾向であった(χ2(2)=5.6, .05<p<.10).「準備」についてχ2検定の結果,数の偏りは 有意であった(χ2(2)= 10.40,p<.05).
質問紙法による事前調査の結果とは異なり,本研究で用いた教材において,教員は小型 スクリーンよりも大型スクリーンの方が適したスクリーンサイズであると感じたことが明 らかになった.天文分野のようにスケールの大きな題材を用いた分野において,大型スク リーンはまるで宇宙に立っているような没入感を与え,生徒の興味を引きつけることが示 唆された.一方,授業の進行や準備において大型スクリーンがよいと回答した教員はおら ず,小型スクリーンは準備時間や授業進行の負担を考慮すると大型スクリーンと比較して 適したスクリーンサイズであることが示唆された.また,理解の向上を促すような分野であ れば小型スクリーンでも十分であることが示唆された.
図 4-10 に大型スクリーンと小型スクリーンの「提示人数」についての人数分布を示した.
まず,大型スクリーンに対する回答ついてχ2検定を行った.結果から,人数の偏りは有意 図 4-9 教材への適用についての調査結果
8 7 3
1 3 6
6 2
1
4 8
0
1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
適用 興味 理解 進行 準備
割合
大型スクリーン どちらでもよい 小型スクリーン
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
った.次に,小型スクリーンに対する回答結果についてχ2検定を行った.結果から,人数 の偏りは有意であった(χ2 (4)=16.0,p<.01).小型スクリーンについて 20 人以上でも提示 可能であると回答した教員はおらず,尐人数の生徒を対象とした授業が好ましいことが示 唆された.
図 4-11 に大型スクリーンと小型スクリーンの「準備時間」についての人数分布を示した.
まず,大型スクリーンに対する回答結果ついてχ2検定を行った.結果から,人数の偏りは 有意ではなかった(χ2(4)=4.0,n.s.).次に,小型スクリーンに対する回答についてχ2検定 を行った.結果から,人数の偏りは有意ではなかった(χ2(4)=5.0,n.s.).準備時間につい ての考え方は教員によって異なることが明らかになった.装置の構造上,ある程度の準備 時間を要することは許容されるが 10 分以内で準備できるような教材が好ましい.
6 6
4
1 2 1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
大型スクリーン
小型スクリーン
割合
1人~10人 11人~20人 21人~30人 31人~40人 それ以上
図 4-10 提示人数についての調査結果
1
1
3
4 1
2 4
3 1
0% 20% 40% 60% 80% 100%
大型スクリーン
小型スクリーン
割合
3分以内 3分~5分 5分~8分 8分~10分 それ以上
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
表 4-8 に教員が自由記述によって回答した大型スクリーンと小型スクリーンの長所と短 所を示す.
大型スクリーンは没入感や臨場感を与えることができ,迫力ある映像を提示することが できるため生徒の興味をひきつけることができる.また,多人数に対応した一斉授業を行 うことができる.しかし,設置場所が限定され,準備時間がかかり 1 人で組み立てること ができない等の短所がある.
一方,小型スクリーンは準備時間の短縮や持ち運びが容易になる等の長所がある.また,
一斉授業で理解できなかった児童・生徒に対する補完授業や,VR 教材による教員の模擬授 業に使用する等,大型スクリーンにはない用途が考えられる.しかし,尐人数向けで細か い点が分かりにくい等の短所がある.
結果から,スクリーンのサイズは教材の内容や提示人数,設置場所によって使い分ける ことが肝要であるが,VR 教材の特徴である没入感や臨場感を考慮すると.
表 4-8 スクリーンの特徴
長所 短所
大 型ス ク リ ーン
・没入感(大)
・臨場感(大)
・迫力がある
・生徒の興味をひく
・多人数に対応
・広い空間の認識に適応
・準備時間がかかる
・設置場所が限られる
・持ち運びが困難
・1人で組み立てられ ない
・解像度が低い
小 型 ス クリ ー ン
・準備が容易
・どこの教室でもよい
・持ち運びが容易
・手軽
・解像度が高い
・小さくても立体的に見える
・迫力に欠ける
・尐人数向き
・細かい点が分かりにくい
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
4.3.5 考察
大型スクリーンは没入感や臨場感を与えることができ,迫力ある映像を提示することが できるため,生徒の興味をひきつけることができる.一方,小型スクリーンは準備時間の 短縮や持ち運びが容易になる等の長所があり,一斉授業で理解できなかった児童・生徒に 対する補完授業や,VR 教材による教員の模擬授業に使用する等,大型スクリーンにはない 用途が考えられる.以上の結果から,スクリーンのサイズは教材の内容や提示人数,設置 場所によって使い分けることが肝要であることが示唆された.
しかしながら,観視距離や観視画角が均一にできない授業実践においても,大型スクリ ーンは小型スクリーンと比較して没入感や立体感を与えることが明らかになった.また,
多視点型太陽系 VR 教材に関して 8 割の教員は,大型スクリーンが適していると回答し,小 型スクリーンが適していると回答した教員は 1 割であった.
そこで,VR 教材として没入感や臨場感などの特色を重要視し,多視点型太陽系 VR 教材の 効果的な学習効果を検討する際に大型スクリーンを用いることとした.
4.4 まとめ
本章では,開発した多視点型太陽系 VR 教材を用いて,通常の授業を想定した授業実践を 行い,スクリーンサイズの違いによって学習者や教員に与える印象について調査すること で,多視点型太陽系 VR 教材の効果的な活用方法を検討する際に用いるスクリーンサイズを 選定することを目的とした.
まず,質問紙による事前調査を行い,結果を基に小型スクリーンを製作した.既存の大 型スクリーンと小型スクリーンを学校の教室に設置し,授業実践を行うとともにスクリー ンサイズについて評価した.結果から,以下の点が明らかになった.
・ 大型スクリーンは小型スクリーンと比較して,教員や児童・生徒に没入間や立体感を与 え,見易さを向上させる.
・ 天文分野のようなスケールの大きな分野において大型スクリーンは小型スクリーンと 比較して,児童・生徒の興味を向上させることができ,適したスクリーンサイズである と教員は感じた.
・ 小型スクリーンは大型スクリーンと比較して準備時間や授業進行の負担を考慮すると
第 4 章 多視点型太陽系 VR 教材におけるスクリーンサイズの検討
教員は感じた.
・ 理解の向上を促すような分野であれば小型スクリーンでも十分であることが示唆され た.
以上の結果から,没入感や立体感を重要視し,一斉授業を実施するのであれば大型スク リーンを使用し,尐人数を対象とした補習授業などで用いるのであれば,準備や授業進行 の負担を考慮して小型スクリーンを用いるなど,教材の内容や提示人数,設置場所によっ て使い分けることが肝要であることが示唆された.
一方,本研究の目的は,多視点型太陽系 VR 教材の効果的な活用方法を明らかにすること である.したがって,教材をどのように使用すれば児童・生徒の学習効果を向上させるこ とができるかを検討することが重要である.
そこで,大型スクリーンが没入感や立体感を向上させ,多視点型太陽系 VR 教材において 使用するスクリーンとして適しているとの印象を重要視し,教材の効果的な活用法を検討 する際には,大型スクリーンを使用することとした.