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東北大学工学部材料科学総合学科工業数学 II( 小原 ) 5. ベクトル解析 1 ベクトル解析は ベクトル値関数の微分積分学を展開する数学の分野の一部であるが もともとは電磁気学など物理の法則などを表記するために生まれたものである 曲線を表現し解析するために また力学への応用にも役立つ スカラー場と

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5.ベクトル解析1

ベクトル解析は、ベクトル値関数の微分積分学を展開する数学の分野の一部であるが、もともと は電磁気学など物理の法則などを表記するために生まれたものである。曲線を表現し解析するため に、また力学への応用にも役立つ。スカラー場とベクトル場に関連した物理学的に重要な概念とし ては、主にベクトル(場)の微分を用いて示される勾配(𝑔𝑔𝑔𝑔)、発散(𝑔𝑑𝑑)、回転(𝑔𝑟𝑟)がある。 5-0.【復習】ベクトルの基礎 a) 座標系 直交座標系 直交座標系とは、互いに直交している座標軸を指定することによって定まる座標系のことである。 3 次元空間の直交座標系は空間内で互いに直交する 3 本の数直線 𝑥軸、 𝑦軸、𝑧軸を決めることに よって定められる。平面上の座標の概念を確立したルネ・デカルト(René Descartes)の名をとっ てデカルト座標系とも呼ぶ。 3 次元空間におけるデカルト座標系が右手 系であるとは、右手の親指・人差し指・中指 を直交するように曲げたときに、親指を𝑥軸に、 人差し指を𝑦軸に、中指を𝑧軸に合わせられる ことをいう。通常は右手系の直交座標系が用 いられることから、右手系を正系とも呼ぶ。 極座標系(平面極座標系, 二次元極座標系,円座標系) 円上の点を表すのに便利である。直交座標系から極座標系への変換は 𝑥 = 𝑔 cos 𝜃, 𝑦 = 𝑔 sin 𝜃 と表すことができる。それぞれの座標系の単位ベクトルの間には次の 関係式が成り立つ。

�𝒆𝒆𝑥𝑦� = �cos 𝜃sin 𝜃cos 𝜃sin 𝜃� �𝒆𝒆𝑟

𝜃� Fig. 5-2 極座標系 球座標系(球面極座標系) デカルト座標系から球座標系への変換は 𝑥 = 𝑔 sin 𝜃 cos 𝜑 𝑦 = 𝑔 sin 𝜃 sin 𝜑 𝑧 = 𝑔 cos 𝜃 と表すことができる。それぞれの座標系の単位ベクトルの間には次の 関係式が成り立つ。 �𝒆𝒆𝑥𝑦 𝒆𝑧

� = �sin 𝜃 cos 𝜑 cos 𝜃 cos 𝜑sin 𝜃 sin 𝜑 cos 𝜃 sin 𝜑 −cos 𝜑sin 𝜑 cos 𝜃 −sin 𝜃 0 � � 𝒆𝑟 𝒆𝜃 𝒆𝜑� Fig. 5-3 球座標系 (a) 右手系 (b) 左手系 Fig. 5-1 デカルト座標系の右手系と左手系

(2)

b) ベクトルの内積(スカラー積) 𝒂 ∙ 𝒃=‖𝒂‖‖𝒃‖𝑐𝑟𝑐 𝛾 (𝒂𝟎, 𝒃𝟎のとき) 𝒂 ∙ 𝒃= 0 (𝒂𝟎または𝒃𝟎のとき) ここで、𝛾𝒂, 𝒃が同じ始点をもつときにそれらのなす角。 𝒂 ∙ 𝒃= 0 → 直交(𝒂⊥𝒃のとき) 𝒂 ∙ 𝒃= 𝑔1𝑏1+ 𝑔2𝑏2+ 𝑔3𝑏3 �𝒂 =𝑔1𝒊+ 𝑔2𝒋+ 𝑔3𝒌, 𝒃= 𝑏1𝒊+ 𝑏2𝒋+ 𝑏3𝒌のとき� ベクトルの射影 直線ℓ(𝒂方向)に垂直に差す光によってベクトル𝒃が直線に映す 影を射影(正射影)と言い、その大きさ𝑃は‖𝒃‖|𝑐𝑟𝑐 𝛾|で表される。 𝑃 =‖𝒂 ∙ 𝒃‖‖𝒂‖ =‖𝒃‖|𝑐𝑟𝑐 𝛾| Fig. 5-4 射影 c) 正規直交(正規直交基底) 単位ベクトル { 𝒆1, 𝒆2, 𝒆3, ⋯ 𝒆𝑁}について、これらがすべて互いに直交しているとき、正規直交 (正規直交基底)と呼ばれる。 例えば、𝑥𝑦𝑧方向の単位ベクトルをそれぞれ、i、j、k とする。i、j、k は全て方向を持った 量である。ベクトルの内積は、平行なベクトルがどれだけあるかを考えるもので、同じ単位ベクト ルの積は、 𝒊 ∙ 𝒊=𝒋 ∙ 𝒋=𝒌 ∙ 𝒌 = 1 とする一方、垂直な単位ベクトル(異なる単位ベクトルと)の積は、 𝒊 ∙ 𝒋=𝒋 ∙ 𝒊=𝒋 ∙ 𝒌=𝒌 ∙ 𝒋=𝒌 ∙ 𝒊 = 𝒊 ∙ 𝒌 = 0 とすべてゼロにする。 d) ベクトルの外積(ベクトル積) 二つのベクトル𝒂, 𝒃から一つのベクトルをつくる積を定義する。外積またはベクトル積と呼ぶ。 𝒗=𝒂×𝒃 �𝒗は𝒂, 𝒃にともに垂直で、𝒂, 𝒃, 𝒗の順で右手系の3つ組を形成する方向� 𝒂 × 𝒃 = 𝟎 �𝒂, 𝒃が同一方向もしくは反対方向、あるいは𝒂, 𝒃のうちどちらかが零ベクトル� ‖𝒗‖ = ‖𝒂‖‖𝒃‖ sin 𝛾 �𝒗の大きさ=𝒂, 𝒃を隣接辺とする平行四辺形の面積。𝛾は𝒂, 𝒃のなす角� ベクトル積の成分表記 𝒂 × 𝒃 = �𝑔𝒊1 𝑔𝒋2 𝑔𝒌3 𝑏1 𝑏2 𝑏3 � = �𝑔𝑏2 𝑔3 2 𝑏3� 𝒊 + � 𝑔3 𝑔1 𝑏3 𝑏1� 𝒋 + � 𝑔1 𝑔2 𝑏1 𝑏2� 𝒌 = (𝑔2𝑏3− 𝑔3𝑏2)𝒊+ (𝑔3𝑏1− 𝑔1𝑏3)𝒋+ (𝑔1𝑏2− 𝑔2𝑏1)𝒌 デカルト座標系の右手系で単位ベクトルを考えると、 𝒊 × 𝒊=𝒋 × 𝒋=𝒌 × 𝒌 = 0 (ベクトルのゼロ) 𝒊 × 𝒋=𝒌 (向きと符号に注意、以下同じ) 𝒋 × 𝒌=𝒊 𝒌 × 𝒊 = 𝒋 𝒋 × 𝒊= − 𝒌 𝒌 × 𝒋= −𝒊 𝒊 × 𝒌 = −𝒋

(3)

e)ベクトルの 3 重積 内積と外積を組み合わせた3つのベクトルを3 重積という。例えば、(i) ( 𝒂 ∙ 𝒃)𝒄、(ii) 𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄)(iii) 𝒂 × (𝒃 × 𝒄)などがある。 (i) ( 𝒂 ∙ 𝒃)𝒄 𝒂 ∙ 𝒃 = 𝑘おくと𝑘𝒄(←ベクトル𝒄の実数倍(スカラー倍))となるだけである。 (ii) スカラー3 重積:𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄) ベクトル𝒂とベクトル𝒃 × 𝒄の内積なので、この結果はスカラー(実数)になる。よって 𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄)の形の3重積をスカラー三重積という。𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄)= (𝒂,𝒃,𝒄)と表すこともある。 𝒂= [𝑔1,𝑔2,𝑔3]、𝒃= [𝑏1,𝑏2,𝑏3]、𝒄= [𝑐1,𝑐2,𝑐3]のとき、 (𝒂,𝒃,𝒄)= 𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄)=�𝑏𝑔11 𝑏𝑔22 𝑔𝑏33 𝑐1 𝑐2 𝑐3 � と計算できる。 さらに次式が成り立つ。 (𝒂,𝒃,𝒄) = (𝒃,𝒄, 𝒂) = (𝒄, 𝒂,𝒃) =−(𝒂,𝒄,𝒃) =−(𝒃,𝒂,𝒄) =−(𝒄, 𝒃,𝒂) またスカラー3重積の絶対値|𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄)|は、𝒂,𝒃,𝒄を3辺に もつ右図(Fig. 5-5)のような平行 6 面体の体積𝑉を表す。 平行6 面体の体積:𝑉 = |𝒂 ∙ (𝒃 × 𝒄)| Fig. 5-5 平行 6 面体の体積と スカラー3 重積 (iii) ベクトル 3 重積:𝒂 × (𝒃 × 𝒄) ベクトル𝒂とベクトル𝒃 × 𝒄の外積なので、この結果はベクトルになる。よって𝒂 × (𝒃 × 𝒄)の形 の3重積をベクトル三重積という。一般に、𝒂 × (𝒃 × 𝒄)(𝒂 × 𝒃) × 𝒄である。 また、次式が成り立つ。 𝒂 × (𝒃 × 𝒄) = ( 𝒂 ∙ 𝒄)𝒃 − ( 𝒂 ∙ 𝒃)𝒄 (𝒂 × 𝒃) × 𝒄 = ( 𝒂 ∙ 𝒄)𝒃 − ( 𝒃 ∙ 𝒄)𝒂 𝒂 ∙ (𝒃 ∙ 𝒄)(←ベクトル𝒂とスカラー𝑘 = 𝒃 ∙ 𝒄の内積!?)や𝒂 × (𝒃 ∙ 𝒄)(←ベクトル𝒂とスカラー 𝑘 = 𝒃 ∙ 𝒄の外積!?)は存在しない。 f) 面積ベクトル 右図(Fig. 5-6)に示すように空間内にある平面を定め る。この平面上に閉曲線𝐶で囲まれる図形𝐷とし、その面 積を𝑆とする。ここで図に示すように、閉曲線に沿って回 る向きを定めたとき、これにより進む右ねじの向きを、 この平面の正の向きと呼ぶ。 このとき、平面に垂直で大きさ1 の正の向きのベクト ルを単位法線ベクトルと呼び、𝒏と表すことにする。そ してさらに、この𝒏に面積𝑆(スカラー量)をかけたもの が面積ベクトル𝑺と定義する。 面積ベクトル:𝑺 = 𝑆 𝒏 Fig. 5-6 V=|a·(b×c)|

(4)

Fig. 5-7 に示すように、単位法線ベクトル𝒏と𝑥軸、𝑦軸、𝑧軸の正の向きとなす角度をそれぞれ𝛼、 𝛽、𝛾とおくと、𝒏の各成分は次のように方向余弦で表すことができる。

𝒏 = [cos 𝛼 , cos 𝛽 , cos 𝛾]

(ここで、0 ≤ 𝛼 ≤ 𝜋, 0 ≤ 𝛽 ≤ 𝜋, 0 ≤ 𝛾 ≤ 𝜋) 従って、面積ベクトルの成分表示は、

𝑺 = 𝑆 [cos 𝛼 , cos 𝛽 , cos 𝛾] = [𝑆 cos 𝛼 , 𝑆 cos 𝛽 , 𝑆 cos 𝛾]

Fig. 5-7 単位法線ベクトルと方向余弦に よる成分表示

Fig. 5-8 図形𝐷の正射影とその面積

ここで、

|𝒊 ∙ 𝑺| = 𝑆|cos 𝛼|, |𝒋 ∙ 𝑺| = 𝑆|cos 𝛽|, |𝒌 ∙ 𝑺| = 𝑆|cos 𝛾|

は、図形𝐷をそれぞれ𝑦 − 𝑧平面、𝑧 − 𝑥平面、𝑥 − 𝑦平面に正射影したものの面積を表す。 例えば、𝒂と𝒃の外積𝒂×𝒃は面積ベクトルである。𝒂と𝒃を 2 辺にもつ平行四辺形を図形𝐷とし、図のような回転の向きを与 えると、図形𝐷に直交し、この平行四辺形の面積をノルム(大 きさ)とする正の向きのベクトルが𝒂×𝒃だからである。 Fig. 5-9 外積と面積ベクトル 例えば、𝒂×𝒃 = �−2, 3, −√3�の場合、𝒂と𝒃を 2 辺にもつ平 行四辺形𝐷の面積𝑆は、 𝑆 = ‖𝒂×𝒃‖ = �(−2)2+ 32+ �−√3�2 であり、𝒂×𝒃 = �−2, 3, −√3�の各成分の絶対値が、この𝐷を 𝑦 − 𝑧平面、𝑧 − 𝑥平面、𝑥 − 𝑦平面に正射影した図形の面積を表 す。

(5)

5-1.ベクトル関数の微分 a)スカラー関数とベクトル関数 スカラー関数:空間にある領域の各点で定義された関数(座標系の選び方に無関係な実数) 𝑓(𝑃) = 𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧) (5.1) ベクトル関数:空間内の点の集合(曲線、曲面、空間領域など)の各点P にそれぞれベクトル𝒂(𝑃)が与 えられるときの関数 𝒂(𝑃) =𝒂(𝑥, 𝑦, 𝑧) = 𝑔1(𝑥, 𝑦, 𝑧)𝒊+ 𝑔2(𝑥, 𝑦, 𝑧)𝒋+ 𝑔3(𝑥, 𝑦, 𝑧)𝒌 (5.2) (5.2)式で表される𝑥, 𝑦, 𝑧のように複数の独立変数(スカラー)をもつものを多変数ベクト ル関数、1つの独立変数をもつものを1 変数ベクトル関数という。 1 変数ベクトル関数とは、例えばパラメータ(独立変数)𝑟に対して、その従属変数は各成分が𝑟の関 数となるベクトルのことで、𝒑(𝑟)などと表される。 𝒑(𝑟) = [𝑥(𝑟), 𝑦(𝑟), 𝑧(𝑟)] = 𝑥(𝑟)𝒊 + 𝑦(𝑟)𝒋 + 𝑧(𝑟)𝒌 (5.3) このパラメータは、媒介変数や助変数とも呼ばれる。 【例題5-1】 図に示すように、空間における剛体B の回転は角速度ベクトル𝝎によって記述で きる。ここで、𝝎は回転軸の方向であり、その始点から終点に向かって見た場合に時計回りに回転 するようにとる。𝝎の大きさは回転の角速度 ω、すなわち、剛体 B の 1 点の線速度(接線速度)を 回転軸からその点までの距離で割った値に等しい。すなわち、 P を B 中の任意の点とし、回転軸から P までの距離を𝑔とすれ ば、P の速さは𝜔𝑔である。P の位置ベクトルを𝒑 =𝑥𝒊+ 𝑦𝒋+ 𝑧𝒌 とし、z 軸(𝒌方向)が回転軸で、𝝎が正の z 方向を向くように 座標系を選んだとき、P の速度ベクトル関数𝒗を求めよ。 (解法) 𝑔 = ‖𝒑‖ sin 𝛾 𝜔𝑔 = ‖𝝎‖‖𝒑‖ sin 𝛾 = ‖𝝎 × 𝒑‖ 剛体の回転方向を考慮すると、 𝒗 = 𝝎 × 𝒑 ここで、𝒑 =𝑥𝒊+ 𝑦𝒋+ 𝑧𝒌とし、z 軸(𝒌方向)が回転軸で、𝝎が正の z 方向を向くように座標 系を選んだので、𝝎 = 𝜔𝒌であるから、 𝒗 = 𝝎 × 𝒑 = 𝜔𝒌 ×(𝑥𝒊+ 𝑦𝒋+ 𝑧𝒌)= 𝜔(−𝑦𝒊+ 𝑥𝒋) (ちなみに、成分表記すると𝒗 = [−𝜔𝑦, 𝜔𝑥]) b)1変数ベクトル関数の微分 微分の定義: 𝒑(𝑟) = 𝑙𝑑𝑙 ∆𝑡→0 𝒑(𝑟 + ∆𝑟) −𝒑(𝑟) ∆𝑟 (5.4) デカルト座標系では、𝒑(𝑟) = [𝑝1(𝑟),𝑝2(𝑟),𝑝3(𝑟)] = 𝑝1(𝑟)𝒊+ 𝑝2(𝑟)𝒋+ 𝑝3(𝑟)𝒌 とした場合 𝒑′(𝑟) = [𝑝1′(𝑟), 𝑝2′(𝑟), 𝑝3′(𝑟)] = 𝑝1′(𝑟)𝒊+ 𝑝2′(𝑟)𝒋+ 𝑝3′(𝑟)𝒌 (5.5) 𝒑′(𝑟)は、𝑔𝒑 𝑔𝑟や 𝑔𝒑(𝑟) 𝑔𝑟 などと表すこともある。 Fig. 5-10

(6)

c)曲線を表すベクトル関数 曲線のパラメータ(媒介変数)表示 座標空間内の曲線 C は、パラメータ(媒介変数、または助変数)を用 いて、曲線上の動点 P の原点 O に関する位置ベクトル Fig. 5-11 曲線のパラメ ータ表示 Fig. 5-12 曲線C の接線 (ベクトル関数の微分) 𝒑(𝑟) = [𝑥(𝑟),𝑦(𝑟),𝑧(𝑟)] = 𝑥(𝑟)𝒊+ 𝑦(𝑟)𝒋+ 𝑧(𝑟)𝒌 (5.3) で表すことが出来る。ここで、位置ベクトルの微分は曲線 C 上の動点 P における接線ベクトルである。 曲線Cの接線: 𝒑′(𝑟) =𝑔𝒑 𝑔𝑟 = 𝑙𝑑𝑙∆𝑡→0 𝒑(𝑟 + ∆𝑟) −𝒑(𝑟) ∆𝑟 (5.6) 𝒑′(𝑟) = [𝑥′(𝑟),𝑦′(𝑟),𝑧′(𝑟)] = 𝑥′(𝑟)𝒊+ 𝑦′(𝑟)𝒋+ 𝑧′(𝑟)𝒌 �𝒑′(𝑟)を𝒑̇(𝑟)と表すこともある。 パラメータ𝑟に時間という物理的な意味を持たせると接線ベクトル 𝒑′(𝑟)は、動点 P の時間𝑟における速度ベクトル𝒗(𝑟)を表す。つまり、 速度ベクトル𝒗(𝑟) =𝒑′(𝑟)、速さ𝑑(𝑟) =‖𝒑′(𝑟)‖となる。 曲線の長さ パラメータ𝑟が、𝑟1≤ 𝑟 ≤ 𝑟2の範囲で変化するとき、動点P の描く曲線 の長さ𝑐は、 曲線の長さ: (弧の長さ) 𝑐(𝑟) = � ‖𝒑′(𝑟)‖ 𝑡2 𝑡1 𝑔𝑟 = � �𝑥′(𝑟) 2+𝑦′(𝑟)2+𝑧′(𝑟)2 𝑡2 𝑡1 𝑔𝑟 (5.7) 𝑐は𝑟の関数であるが、𝑟に換わるパラメータとなりうる。(5.7)式は、物理的には「速度を積 分したら(移動した)距離になる」ことを意味しており、𝑐を弧長パラメータともいう。 曲線C 上を移動する動点 P の速度ベクトルの大きさ: ‖𝒗‖ =‖𝒑′(𝑟)=𝑔𝑐 𝑔𝑟 (5.8) 【演習問題】 (5-1) 𝑥 −𝑦平面上で原点 O を中心に半径𝑅を描きながら反時計周りに角周波数𝜔で等速回転する 粒子P の速度ベクトルおよび加速度ベクトルを示せ。 (5-2) 次の関数をパラメータ表示で示せ。 (a) 𝑥2+ 𝑦2= 1, 𝑧 = 𝑥2 (b) 𝑦 = 𝑥2, 𝑧 = 𝑥3 (5-3) 式(5.7)を用いて、半径𝑔の円の円周の長さを求めよ。

(5-4) 円らせん 𝒓(𝑟) = 𝑔 cos 𝑟𝒊+ 𝑔 sin 𝑟𝒋+ 𝑐𝑟𝒌 において、(a, 0, 0)から(a, 0, 2πc)までの長さを求 めよ。

(7)

5-2.スカラー場とベクトル場の微分:勾配、発散、回転 a)スカラー場とベクトル場 スカラー場:平面または空間領域𝑫(定義域𝑫)の各点𝑃におい て、それぞれスカラー𝑓(𝑃)が与えられる領域 例)温度場 𝑇(𝑥, 𝑦, 𝑧)、圧力場 𝑝(𝑥, 𝑦, 𝑧) ベクトル場:平面または空間領域𝑫(定義域𝑫)の各点𝑃におい て、それぞれベクトル𝒂(𝑃)が与えられる領域 例)電場 𝐄(𝑥, 𝑦, 𝑧)、磁場 𝐁(𝑥, 𝑦, 𝑧) 、 流束場 𝒗(𝑥, 𝑦, 𝑧) 場とは?)物理量が空間の各点ごとに決まり、空間分布を持 っているものを場と呼ぶ。 Fig. 5-13 気圧(スカラー場)と 風向き(ベクトル場) 上の例のように、スカラー量、ベクトル量が時間に依存しない場のことを、定常場と呼ぶ。実 際には温度分布は時々刻々変化していくもので、物理量が空間座標だけではなく、時刻 𝑟 にも依存 し𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧, 𝑟)𝒂(𝑥, 𝑦, 𝑧, 𝑟)と表されるような場合を、非定常場と呼ぶことがある。 【例題5-2】 重力場は典型的なベクトル場である。質量 𝑀および 𝑙2 質 点間の距離を𝑔、万有引力定数を 𝐺とすれば、その質点間に働く引力の大きさは 𝐹 =𝐺𝑀𝑙𝑔2 で与えられる。この場合の重力ベクトル関数𝑭を求めよ。 (解法) 質点𝑀の座標を原点O とすると、𝑀 → 𝑙のベクトルは𝒓、重力ベクトル𝑭は𝒓の逆向きである。 ‖𝑭‖ =𝐺𝑀𝑙𝑔2 𝑭 = ‖𝑭‖‖𝒓‖ = −−𝒓 𝐺𝑀𝑙𝑔3 𝒓 b)スカラー場の勾配 勾配( 𝑔𝑔𝑔𝑔 ) 微分可能な空間のスカラー関数を𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧)とする。関数𝑓𝑥, 𝑦, 𝑧方向にそれぞれ勾配を持つ。こ の3つの勾配を成分とするベクトルを𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓と定義する。 𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓 = �𝜕𝑓𝜕𝑥,𝜕𝑓𝜕𝑦,𝜕𝑓𝜕𝑧� =𝜕𝑥𝜕𝑓𝒊+𝜕𝑓𝜕𝑦𝒋+𝜕𝑓𝜕𝑧𝒌 (5.9) 𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓は、関数𝑓の勾配と呼ばれ、微分演算子(ハミルトン演算子)(ナブラ)を用いて 𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓 = ∇𝑓 � ∇=𝜕𝑥𝜕 𝒊+𝜕𝑦𝜕 𝒋+𝜕𝑧𝜕 𝒌� (5.10) と表記される。

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方向微分係数 位置ベクトル𝒑で定義される点P を起点として、単位ベクトル𝒆𝒒�𝒆𝒒� = 𝟏)によって方向が与 えられる半直線C を考える。半直線 C 上の点𝑄(𝑥(𝑐), 𝑦(𝑐), 𝑧(𝑐))の位置ベクトルを𝒓(𝑐)と定義すると、 𝒓(𝑐) = 𝑥(𝑐)𝒊+ 𝑦(𝑐)𝒋+ 𝑧(𝑐)𝒌=𝒑+ 𝑐𝒆𝒒 (5.11) となる(ここで、sは線分PQ の長さ)。 半直線C に沿った関数𝑓の微分は、次式で与えられる。 𝜕𝑓 𝜕𝑐 = 𝜕𝑓 𝜕𝑥 𝜕𝑥 𝜕𝑐 + 𝜕𝑓 𝜕𝑦 𝜕𝑦 𝜕𝑐 + 𝜕𝑓 𝜕𝑧 𝜕𝑧 𝜕𝑐 = 𝜕𝑓 𝜕𝑥 𝑥′+ 𝜕𝑓 𝜕𝑦 𝑦′+ 𝜕𝑓 𝜕𝑧 𝑧′ (5.12) 式(5.11)より、 𝒓′= 𝑥′𝒊+ 𝑦′𝒋+ 𝑧′𝒌 =𝒆𝒒 Fig. 5-14 となるので、式(5.12)は次式のようになる。 𝜕𝑓 𝜕𝑐 =𝒆𝒒∙ 𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓 (5.13) この値は、関数𝑓の勾配(𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓)の𝒆𝒒方向成 分の大きさを示しており、方向微分係数という。 【演習問題】 (5-5) 関数𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧) =𝑥2+ 2𝑦2− 𝑧2で与えられるスカラー場の勾配ベクトル𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓を求め、 (1, 2, 3)における𝒂=𝒊+ 3𝒋𝒌方向の方向微分係数を求めよ。 (5-6) 点(2, 1, 3)におけるベクトル(1, -2, 0)方向の関数𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧) =2𝑥2+ 3𝑦2+ 𝑧2の勾配と方向微 分係数を求めよ。 平面スカラー場での𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓の図形的な意味: 𝑓(𝑥, 𝑦)で与えられる平面スカラー場での図形的な意味を考え るため、右図のように𝑓(𝑥, 𝑦) = 𝑐 (𝑐: 定数)となる等位曲線(地 図における等高線をイメージしてみよう)を考える。点P2にお いて、最大傾斜方向を向くベクトル𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓が接線ベクトル𝒑′と 直交しているのが分かる。 Fig. 5-15 曲面の法線ベクトルと しての勾配 (空間スカラー場における)曲面の法線ベクトル 微 分 可 能 な 空 間 に ス カ ラ ー 関 数𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧)を 考 え る 場 合 、 𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧) = 𝑐 (𝑐: 定数)を満足するのは空間中における曲面 S で あるとする。今、曲面S 上に曲線 C(𝒓(𝑐) = 𝑥(𝑐)𝒊+ 𝑦(𝑐)𝒋+ 𝑧(𝑐)𝒌) が存在する場合、関数𝑥(𝑐), 𝑦(𝑐), 𝑧(𝑐)𝑓�𝑥(𝑐), 𝑦(𝑐), 𝑧(𝑐)� = 𝑐を 満足するので、これをsについて微分すると、

(9)

ここで、r’はCの接線ベクトルなので、𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓は曲面Sの法線ベ クトルを意味する。 曲面S の単位法線ベクトル 𝒏 は、 Fig. 5-17 𝒏=|𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓| 𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓 (5.15) 曲面の接平面: 曲面S上の定点P0での接平面を考える。接平面 上の任意の点をPとし、点P0Pの位置ベクトルを𝒑𝟎𝒑とする と、接平面は次式を満たす。 𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓 ∙ (𝒑−𝒑𝟎) = 0 (5.16) スカラーポテンシャル: 空間ベクトル場𝒇(𝑥, 𝑦, 𝑧)に対して、 𝒇(𝑥, 𝑦, 𝑧) = −∇φ(𝑥, 𝑦, 𝑧) を満たす空間スカラー場φ(𝑥, 𝑦, 𝑧)が存在するとき、「𝒇はスカラ ーポテンシャルφをもつ」という。 例題(5-2)において、重力ベクトル(空間ベクトル場)には、ス カラーポテンシャルφが背後にあって、しばしば物理の世界では これを重要視する。つまり、太陽からの距離𝑔によるポテンシャφの勾配に従って、ポテンシャルの井戸の中心に向かった万有 引力を受けながら、惑星は公転している。 Fig. 5-18 万有引力のスカラーポ テンシャル 【演習問題】 (5-7) 放物面𝑧=𝑥2+ 𝑦2上の点(1, 2, 5)における単位法線ベクトルと接平面の方程式を求めよ。 (5-8) 𝑥2+ 𝑦2+ 𝑧2= 25上の点(3, 4, 0)における単位法線ベクトルと接平面の方程式を求めよ。 c)ベクトル場の発散 デカルト座標において、ベクトル 𝒗(𝑥, 𝑦, 𝑧) = 𝑑1𝒊+ 𝑑2𝒋+ 𝑑3𝒌 を微分可能とすれば、関数 𝑔𝑑𝑑 𝒗≡𝜕𝑑1𝜕𝑥 +𝜕𝑑2𝜕𝑦 +𝜕𝑑3𝜕𝑧 = ∇ ∙𝒗 (5.17) を𝒗 の発散という。 発散の概念: 流れの場(ベクトル場)は右図(a)のように一様 なものに限らず、(b)のような流れが実際にある。 発散の概念は、ベクトル場における各点(微小体 積)における流入と流出の大きさを符号付きスカ ラーの形で表すことができる要素である。 (a)一様な流れ (b)一様でない流れ Fig. 5-19 流れ場(ベクトル場)

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𝑥軸の方向を正とする流れを考え、微小空間(体 積𝑔𝑉)に斜線で示した左側の面から右側の面へ、 それぞれ流入量と流出量を考える。このとき、𝑑𝑥は 𝑥方向の単位面積当たりの流れ(流束)とすると、 �流入量�𝑥=𝑑𝑥(𝑔, 𝑏, 𝑐) ∙ 𝑔𝑦𝑔𝑧 �流出量�𝑥=𝑑𝑥(𝑔+ 𝑔𝑥, 𝑏, 𝑐) ∙ 𝑔𝑦𝑔𝑧 微小空間における𝑥方向への流入と流出の収支で ある変化量は、 Fig. 5-20 微小空間の流れの変化量(𝑥軸方向) �変化量�𝑥={𝑑𝑥(𝑔+ 𝑔𝑥, 𝑏, 𝑐) − 𝑑𝑥(𝑔, 𝑏, 𝑐)} 𝑔𝑦𝑔𝑧 =�𝑑𝑥(𝑔+ 𝑔𝑥, 𝑏, 𝑐) − 𝑑𝑔𝑥 𝑥(𝑔, 𝑏, 𝑐)𝑔𝑥� 𝑔𝑦𝑔𝑧 =�𝜕𝑑𝜕𝑥 𝑔𝑥� 𝑔𝑦𝑔𝑧1 同様に、𝑦方向、𝑧方向への変化量は、 �変化量�𝑦=�𝜕𝑑𝜕𝑦 𝑔𝑦� 𝑔𝑥𝑔𝑧2 、 �変化量� 𝑧 =� 𝜕𝑑3 𝜕𝑧 𝑔𝑧� 𝑔𝑥𝑔𝑦 従って、微小空間全体の変化量は、 �変化量�𝑉=�𝜕𝑑𝜕𝑥 +1 𝜕𝑑𝜕𝑦 +2 𝜕𝑑𝜕𝑧 � 𝑔𝑥𝑔𝑦𝑔𝑧3 = ��𝜕𝑥𝜕 𝒊+𝜕𝑦𝜕 𝒋+𝜕𝑧𝜕 𝒌� ∙ (𝑑1𝒊+ 𝑑2𝒋+ 𝑑3𝒌)� 𝑔𝑥𝑔𝑦𝑔𝑧 = (∇ ∙𝒗)𝑔𝑉 微小体積において、流出する量と流入する量との差を表す物理量が発散の概念である。 従って、発散(スカラー)が正ならば、場が対象領域から外部に流出(わき出し)、負ならば、 場が外部から対象領域に流入(吸い込み)を意味する。例えば、放射性物質から広がる放射線や点 電荷から周りに出る電気力線などを表現できる。 𝑓(𝑥, 𝑦, 𝑧)が2 階微分可能なスカラー関数であれば、 𝑔𝑑𝑑(𝑔𝑔𝑔𝑔 𝑓) ≡𝜕𝜕𝑥2𝑓2+𝜕𝜕𝑦2𝑓2+𝜕𝜕𝑧2𝑓2 = ∇2𝑓 = ∆𝑓 (5.18) が与えられる。この式はスカラー関数𝑓のラプラシアンであり、はラプラス演算子と呼ばれる。

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d)ベクトル場の回転 デカルト座標において、ベクトル 𝒗(𝑥, 𝑦, 𝑧) = 𝑑1𝒊+ 𝑑2𝒋+ 𝑑3𝒌 を微分可能とすれば、ベクトル関数 𝑔𝑟𝑟 𝒗≡ ∇ ×𝒗= �𝜕𝑑𝜕𝑦 −3 𝜕𝑑𝜕𝑧 �2 𝒊+ �𝜕𝑑𝜕𝑧 −1 𝜕𝑑𝜕𝑥 �3 𝒋+ �𝜕𝑑𝜕𝑥 −2 𝜕𝑑𝜕𝑦 �1 𝒌 (5.19) を𝒗の回転という。回転はベクトル場の各点における回転を示すベクトル(回転軸ベクトルの向き と回転の大きさ)であり、電磁場の記述に頻繁に利用されている。 平面ベクトル場(2 次元)では、以下のように表される。 𝑔𝑟𝑟 𝒗= �𝜕𝑑𝜕𝑥 −2 𝜕𝑑𝜕𝑦 �1 𝒌 (5.20) 【演習問題】 (5-9) 次式で示されるベクトル関数の発散と回転を求めよ。 (a) 𝒗 = 𝑦𝒊 + 2𝑥𝒋 (b) 𝒗 = 𝑥𝒊 + 𝑦𝑧𝒋 −(𝑥2+ 𝑧2)𝒌 (c) 𝒗 = 𝑥𝒊 + 3𝑥𝑦𝒋

Fig. 5-7 に示すように、単位法線ベクトル

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