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韓国籍の在日コリアンとして生きる ――

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Academic year: 2021

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社会学研究科年報 2021 №28

- 57 - 修士(2020 年度)

韓国籍の在日コリアンとして生きる

――在日コリアンの若者のライフストーリー研究――

小島 春恵 1.問題意識――調査する筆者の意識の変化――

本研究では、日本籍の在日コリアンが増えていく現状を背景に、韓国籍の在日コリアン の若者が抱える「生きづらさ」と、それを抱えるうえで韓国籍であり続けるということへ の意味づけを明らかにすることを目的としている。

この研究は、在日コリアンについて表面的な理解しかしていなかったことにより、相手 を傷つけたことの反省から、在日コリアンについて学ぶようになった筆者の経験がきっか けとなっている。そして、世代が進むなかで、日本で生まれ育ったが韓国籍を保持する在 日コリアンの若者のアイデンティティがどのようなものなのか、という問題意識をもち、

韓国籍の在日コリアンの若者

10

名へのインタビューを行ってきた。しかし、インタビュー を重ねるなかで、在日コリアンについて理解してもらえないことによる葛藤や悩みという 共通した語りが出てきたこと、調査協力者の

1

人である

Y

さんが、 「日本に住んでるなら 日本国籍が説明しやすいし世間的な正解だと思う」と語っていたことが、在日コリアンが 理解されていない状況に合わせているように見受けられたことを踏まえて、かれらの「生 きづらさ」に着目していくようになった。また、

Y

さんへ再度インタビューを行うと、 「日 本国籍はまだ自分を代表するものではない」と語っており、Y さんの国籍に対する考え方 の変化から、在日コリアンとして生きる上で韓国籍であることがどのような意味を持って いるのか、という問いが生まれた。こうした経験的な問いが、本研究の問題意識の出発点 となった。

2.先行研究の検討

先行研究では、今まで在日コリアンのアイデンティティにおける韓国籍の意味づけが、

在日コリアンに対する差別に抵抗するための手段とみなされてきたことや、新しい運動や 連帯を目的として、多様化した在日コリアンの集合的アイデンティティを再定義するかた ちで論じられており、個人の人生によっての韓国籍の意味づけについては十分に検討され ていないことを指摘した。そして、韓国籍の在日コリアンの若者をとりまく環境は、直接 的、そして意図的な差別による「生きづらさ」ではなく、差別されうる可能性を感じるな かで「生きづらさ」を抱える状況に変化していることを示した。

以上を踏まえて、 「生きづらさ」の状況が変化したことを背景に、個人の人生において、

韓国籍であることがどのような意味を持っているのかを検討した。

3.研究手法

研究手法としては、ライフストーリー研究の手法を用いた。ライフストーリー研究には、

個人の人生における経験の全体性を理解し

(

小倉

2011:138)

、聞き手の変化を読み手にも遡

及的に体験してもらうという特徴(西倉 2015:69,60)があるため、読み手として想定される

(2)

- 58 -

日本人の意識の変化を促すことをねらいとして、調査協力者

10

名にライフストーリー・イ ンタビューを行った。

4.考察

調査協力者の語りから、韓国籍である在日コリアンの若者の「生きづらさ」は、社会の なかで在日コリアンという存在が理解されないまま、みえない存在となってしまうことに よって生じていることが示された。 「日本人と同じだよね」 「日本に住んでるなら日本人に なればいいじゃん」 「韓国籍・韓国名で羨ましい」という日本人側からの言葉に、蔑視観は ないが、こうした言葉には「同じであること」がよいという認識と、 「あなたは日本人では ない」という前提があり、在日コリアンについて表面的にしか理解しようとしない日本人 側の姿勢が見受けられた。

また、在日コリアンとして生きる上で、韓国籍であることがどのような意味を持ってい るのかについて、Y さんの事例から検討した。Y さんは、在日コリアンについて理解され ない「生きづらさ」のなかで、日本国籍に変えようとしていた。しかし、朝鮮学校に再び 通うことで在日コリアンとしての原点に戻ること、また、自分と似たような境遇にいる、

さまざまな国籍やルーツをもつ人びととの出会いをきっかけに、自分がどの立場で人と接 しているかを考えたときに、韓国名で韓国籍の在日コリアンとして生きてきた経験が、自 分を代表するポジションであると感じるようになった。そして、他者との繋がり――今ま で在日コリアンであることによって経験してきた理不尽さや葛藤を乗り越えてきたことに 誇りをもち、それをパワーに変えることで、在日コリアンの文化や、差別を受けてきた歴 史を他者と共有していくこと、他のマイノリティに共感できる立場としてサポートしてい くこと――を、韓国籍であり続けることの意味として見いだしている。

5.結論

本研究では、筆者と調査協力者

10

名の関わり合いのなかで、在日コリアンについて理解 していない現状ではなく、理解しようとしない姿勢によってかれらの「生きづらさ」が生 じること、韓国籍であり続けることへの意味として、他者との繋がりを求めていることか ら、理解しようとする姿勢の重要性を提示した。こうした姿勢は、どの程度の規模の解決 策に繋げることができるかという議論の前提として、重要なものであることを主張する。

参考文献

小倉康嗣, 2011,「ライフストーリー研究はどんな知をもたらし、人間と社会にどんな働きかけをする のか―ライフストーリーの知の生成性と調査表現―」『日本オーラル・ヒストリー研究』7:137-155

西倉実季, 2015,「なぜ『語り方』を記述するのか―読者層とライフストーリー研究を発表する意義に

注目して」桜井厚・石川良子編著『ライフストーリー研究に何ができるか 対話的構築主義の批 判的継承』新曜社:49-74.

参照

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