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西 周 「人 生 三 宝 説 」 を 読 む(三)

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西 周 「 人 生 三 宝 説 」 を 読 む(三)

鈴 木 修 一

十 政 府 上 、 少 々 可 カ ラ ザ ル ノ 性 質 ハ 、 即 チ 事 務 分 掌 ノ コ トナ リ

さ て 、 国 憲(=三 権 分 割 ノ論)と 政 体 に っ い て 、 「上 ノニ 性 質 ハ 、 政

くマ マ ラ

府 上 、 本 体 上 、 少 ク ヘ カ ラサ ル ノ性 質 二 非 ス シ テ、 時 庭 ノ変 更 ヲ受 クヘ キ 者 」 と され る の に 対 して 、 「而 シ テ政 府 上 、 本 体 少 ク可 カ ラ サ ル ノ性 質 ハ 、 即 チ 事 務 分 掌 ノ コ トナ リ、 是 亦 三 宝 説 二係 ハ リテ ハ 、 分 チ テ四 項 トナ ス」 と して 、 「内 部 合 法 上 ノ義 務 」、 「外 部 合 法 上 ノ義 務 」、 「政 府 自 己 ノ三 宝 保 存 二属 ス ル事 務 」、 「道 徳 上 ノ義 務 、 即 チ道 義 」 の 四 項 が 、 国 憲 政 体 の い か ん に か か わ らず す べ て の 政 府 が担 わ な けれ ば な らな い もの

と さ れ る。

しか し、 「内 部 合 法 上 ノ義 務 」 と 「外 部 合 法 上 ノ義 務 」 が 「政 府 其 会 社 全 列 二 対 ス ル{1)」(五 三 六 頁)す な わ ち 、 国 全 体 社 会 全 体 に 関 わ る義 務 と さ れ る の に 対 して 、 第 三 項 は 「政 府 自 己」 の 義 務 で あ っ て 、 「会 社 全 列 二対 ス ル ノ、 義 務 二 非 ル コ ト」(五 三 八 頁)で あ り、 第 四 項 は、 「政 府 ノ合 法 上 ノ責 分 二非 ス 」(五 三 七 頁)で あ る。 い つ れ も三 宝 に 関 わ る こ と は確 か だ が 、 前 二 者 は 「合 法 上 」(国 内 に お け る、 国 外 に 対 す る、

法 律 上 の)の 事 務 分 掌 で あ る の に対 して 、 後 二 者 は 「合 法 上 」 外 の 事 務 分 掌 と さ れ る の で あ る。

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第 一 項 の 「内部 合 法 上 ノ義 務 」 に っ い て は、 「凡 ソ是 二 属 ス ル者 、 綜 紀 、 戸 籍 風 憲 、 警部衛 生 警部ノー種 、 民 法 裁 判 、 刑 法 裁 判 、 等 ノ如 シ、 是 亦 全 特 ノ別 ア リ」 で 、 「綜 紀 、 風 憲 ノ如 キ ハ 、 列 位 ノ三 宝 二 兼 渉 リ、 其 傷 害 ヲ未 発 二 保 護 シ、 衛 生 ノ如 キ ハ 、 特 二健 康 ノー 宝 ヲ傷 害 未 発 二保 護 ス ル 者 ナ リ」(五 三 五 頁)と 言 わ れ る。 「風 憲 」 と は風 紀 取 り締 りの こ と。

「是 亦 全 特 ノ別 ア リ」 と 「亦 」 と言 わ れ る の は、 先 に 「政 府 ノ形 質 ヲ論 ス レハ 、 社 交 中会 社 ノー 種 ニ シ テ、 固 ヨ リ区 別 ナ シ、 唯 其 度 量 二至 テハ 、 全 特 ノ別 ナ キ 能 ハ サ ル 耳 」(五 三 三 〜 四 頁)と 言 った こ と に対 応 して い

る の だ ろ うが 、 こ こで も同 様 に、 「内 部 合 法 上 ノ義 務 」 と して の 「全 特 ノ別 」 と は、 三 宝 の す べ て に関 わ るか 、 一 部 に関 わ るか の相 違 につ い て 言 っ て い る の で あ る。 す な わ ち、 「内 部 合 法 上 ノ義 務 」 は 「全 特 ノ別 」 は あ って も、 三 宝 を 「保 護 」 す る機 能 を果 す とい うの で あ る。 具 体 的 に は、 「綜 紀 、 戸 籍 、 風 憲 」 そ して お そ ら く 「警 部 」 は 「列 位 ノ 三 宝 二兼 渉 リ」、 っ ま り、 三 宝 の す べ て に 関 わ り、 「警 部 ノ0種 」 と さ れ る 「衛 生 ②」 は三 宝 の 一 た る健 康 に 関 わ って 、 三 宝 が 損 な わ れ な い よ う に保 護 す るの で あ る。

この よ うに 「綜 紀 、 戸 籍 、 風 憲 、 警 部 、 衛 生 」 は三 宝 の 「傷 害 未 発 二 保 護 ス ル 」 機 能 を 果 す の に 対 して 、 「而 シ テ民 法 刑 法 ノ如 キ ハ 又 兼 テ三 宝 ノ傷 害 ヲ既 発 二保 護 ス ル ナ リ」(五 三 五 頁)で あ る。 す な わ ち、 「民 法 刑 法 」 は、 三 宝 が 傷 害 さ れ な い よ う に保 護 す る と共 に、 そ れ で も傷 害 さ れ て しま っ た場 合 に は、 「民 法 」 は 「猶 本 二復 ス ル コ トヲ得 ヘ キ者 トシ」、

「刑 法 」 は 「既 発 ノ傷 害 ヲ復 ス ル ニ道 ナ シ ト錐 トモ」(例 え ば、 極 端 な例 で 殺 人 の よ う な こ とを 考 え れ ば)、 「因 テ以 テ他 二及 ホ シ」(抑 止 効 果 と

して)、 「未 発 ノ傷 害 ヲ保 護 ス ル 者 ナ リ」(同 右)で あ る と さ れ る ⑧。 す な わ ち、 「民 法 刑 法 」 は 三 宝 の 「傷 害 未 発 二 保 護 ス ル 」 と 同 時 に 「既 発 二保 護 ス ル」 機 能 を果 す と考 え られ て い るの で あ る。

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西 周 「人生 三宝 説 」 を読 む(三)3

か く して 、 第0項 は 「此 庭 綜 紀 風 憲 ノ事 務 ヨ リ民 事 、 刑 事 ノ事 務 二 至 リ、 自 ヲ浅 深 厚 薄 ア リテ未 発 ヨ リ既 発 二接 シ、 復 反 テ未 発 へ接 ス ル 自 ヲ 其 順 序 ア ル カ如 シ」(五 三 五 〜 六 頁)と 結 ば れ る が 、 最 後 の 「… … 自 ラ 其 順 序 アル カ如 シ」 と言 うの は単 な る修 辞 上 の 綾 にす ぎ な い と思 わ れ る

が 、 い か が な もの で あ ろ うか ④。

さて 次 に 第 二 項 「外 部 合 法 上 ノ義 務 」 も第0項 同 様 「政 府 其 会 社 全 列

00

二対 ス ル 」 もの で あ る。 「凡 ソ是 二 属 ス ル 者 、 外 交 外務、 兵 備 海陸軍」 と され る。 外 交 に 関 して は 「外 交 ノ以 テ起 ル 由縁 ハ 、 我 力 会 社 全 列 ノ三 宝 ヲ他 ノ会 社 二 対 シ テ保 護 ス ル ニ 非 ル莫 シ」(五 三 六 頁)と 、 す な わ ち 、 外 国 か らの わ が 国 の三 宝 へ の侵 略 を 保 護 す る こ とを 目的 と し、 兵 備 に 関 して は 「兵 備 二至 テ ハ 、 三 宝 二関 ス ル コ トナ キ カ如 シ ト錐 トモ、 我 力 会 社 列 位 ノ三 宝 ヲ暴 二傷 害 セ ン ト欲 ス ル者 ア レハ 、 之 ヲ以 テ之 ヲ保 護 セ サ ル ヲ得 ス、 況 ンヤ 、 三 宝 ノ依 テ以 テ存 ス ル土 地 管 轄 ヲ奪 ハ ン ト欲 ス ル者 ヲ ヤ」(同 右)と 、 す な わ ち、 外 交 は平 和 的 手 段 に よ る外 国 に対 して の 三 宝 の保 護 で あ るの に対 し、 兵 備 は、 暴 力 に対 して 暴 力 で も って の 外 国 に対 して の三 宝 の 保 護 で あ って 、 目的 は手 段 の相 違 は あ って も、 同 じで あ る と され る。 兵 備 は直 接 三 宝 に か か わ らな い よ う に見 え るが 、 と断 っ て い るが 、 そ れ は外 交 も同 様 で あ ろ う。 直 接 に 関 わ らな い と は、 三 宝 を 増 進 す る方 向 に は働 らか な い とい う程 度 の意 味 で あ ろ うか 。 西 は この よ う に外 交 兵 備 を消 極 的 に保 護 とい う観 点 か ら しか 捉 え て い な い が 、 しか し、 外 交 に は現 在 に お い て 端 的 に 見 られ る よ うに、 当 時 に お い て も欧 米 列 強 諸 国 が 、 む しろ貿 易 に よ る三 宝 の増 進 の た め に、 兵 備 と相 携 え て か か わ って い た こ と大 で あ った点 を ど う見 て い た の で あ ろ うか 。 そ れ に兵 備 を充 実 す る こ と は̲̲̲̲̲.面で 人 民 の重 税 負 担 を犠 牲 に供 す る反 面 、 商 売 会 社 の三 宝 を増 進 す る面 もあ っ た の で あ る。 外 国 か らの兵 備 の 充 実 に よ る に しろ、 国 内生 産 の そ れ に よ るに しろ。 こ の点 を勘 案 す る と、 直 接 か か

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わ らな い と は言 え な い の で は な い か。

上 記 の よ う に述 べ た 後 、 次 の よ う に言 わ れ る。 「此 二 項 ハ 政 府 其 会 社 一伺 二対 ス ル、 合 法 上 ノ義 務 ニ シ テ、 直 チ ニ保 護 ト云 フー義 ニ テ之 ヲ書 シ、 約 シテ云 ヘ ハ 、 其 人 民 ノ性 命 、 健 剛 ヲ保 護 シ、 其 人 民 ノ知 識 ヲ保 護 シ テ、 欺 詐 ヲ シ テ行 ハ レサ ラ シメ、 其 人 民 ノ富 有 、 財 産 ヲ保 護 シ損 害 莫 ラ シム ル ノ外 ナ シ」(同 右)。 外 交 兵 備 にっ い て は西 は終 始 、 三 宝 の保 護 と い う観 点 か らの 平 和 論 者 で あ る。 この 点 で は、 同 時 期 の、 特 に 『文 明 論 之 概 略 」 第 十 章 「自国 の 独 立 を論 ず 」 に 見 られ る よ うな福 沢 諭 吉 の考 え と は対 照 的 で あ る と言 え よ う。 例 え ば 福 沢 は次 の よ う に言 う。 「… …

に く

戦 争 もま た 然 り。 単 に これ を殺 人 の 術 とい え ば 、 悪 む べ きが 如 くな れ ど

た だ ち い くさ

も、 今 直 に無 名 の師 を起 さん と欲 す る者 あ れ ば 、 た と い今 の 不 十 分 な る文 明 の 有 様 に て も、 不 十 分 は不 十 分 の ま ま に、 あ る い は条 約 の明 文 あ り、 あ る い は談 判 の掛 引 あ り、 万 国 の 公 法 もあ り、 学 者 の議 論 もあ りて、

も う きよ

容 易 に そ の 妄 挙 を許 さず 。 ま た あ る い は た だ利 の た め に あ らず して、 国 の栄 辱 の た め 道 理 の た め に とて 起 す 師 もな き に あ らず 。 故 に殺 人 争 利 の

けが が た

名 は、 宗 教 の 旨 に対 してcら わ し く、 教 敵 た るの 名 は免 か れ 難 しとい え

い き おい

ど も、 今 の 文 明 の 有 様 に於 て は、 止 む を 得 ざ るの 勢 にて 、 戦 争 は独 立 国 の権 義 を 伸 ば す の術 に して、 貿 易 は国 の 光 を放 っ の徴 候 と い わ ざ るを得 ず ⑤。」 この 主 張 の是 非 は こ こで は 問 わ な いが 、 福 沢 は西 と較 べ て、 外 交 兵 備 に つ い て 多 面 的 に捉 え て い る と言 って よ い だ ろ う。

な お 西 に は 『明六 雑 誌 」 第 十 九 号(明 治 七 年 十 月)に 掲 載 され た 「秘 密 説 」 と い う論 説 が あ り、 わ ず か 四頁 の小 論 で あ るが 、 外 交 兵 備 につ い

て 触 れ て い るの で、 そ れ を見 て お こ う。 秘 密 とい う語 に つ い て の枕 の部 分 は さて お い て 、 「所 謂秘 密 ナ ル 者 猶 政 事 ノ上 二存 スル コ ト」(一 ・ウ)

と言 い 、 蓋 シ世 間 明 二至 ル モ秘 密 ノ會 テ廃 ス可 ラサ ル 者 」 が 三 っ あ る と

ラ ルtリ

され る。 「道 徳 上 ノ秘 密 」、 「兵 機 上 ノ秘 密 」、 「政 略 上 ノ秘 密 」 で あ る。

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西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)5

「道 徳 上 ノ秘 密 」 は 「中 蕎 ノ言 」(=寝 室 で の む っ 言)を 初 め と して 、 猫 犬 の尿 ま で 、 「醜 ヲ掩 ヒ稼 ヲ隠 ス」 で あ り、 「故 二 道 徳 上 ノ秘 密 ハ 事 ノ 尤 已(6)ム 可 ラ サ ル 者 ナ リ」(以 上 、 一 ・ウ 〜 二 ・オ)と さ れ る が 、 こ れ は、 当 面 の 外 交 兵 備 と い う テ ー マ と は 関 係 な し と して よ い だ ろ う。

(も っ と も現 代 に お い て は、 こ の 「中 董 ノ秘 密 」 が 外 交 兵 備 上 の 大 事 件 に な って 世 を騒 が せ た こ とが 多 々 あ っ た の で 、 無 関 係 と は言 え ま い が 、 そ れ は西 の 関 知 しな い こ とで あ ろ う。)

西 の 議 論 と関 係 す る の は、 後 の 二 っ で あ る。 「兵 機 上 ノ秘 密 」 に っ い て は 「所 謂 帷 握 ノ簿 策 洩 ラス可 ラサ ル者 ナ リソ レ兵 ハ 凶 戦 ハ 逆 固 ヨ リ常 道 ヲ以 テ論 ス可 ラス古 二 日 ク機 事 密 ナ ラサ レハ 則 チ 害 成 ル」 と言 わ れ 、

「政 略 上 ノ秘 密 」 につ い て は、 国 内 的 な もの につ いて 述 べ た後 、 「… … 唯

セ ク レ ツ トコ ン エ レ ン ス

外 邦 交 際 等 ノ事 二 至 テ ハ 必 ス 明 言 ス 可 ラサ ル 者 ア リ所 謂 秘 密 盟 約 ノ 如 キ公 法 ノ條 規 亦 許 ス所 タ リ」 と言 わ れ る。 した が って、 政 治 上 の これ

ら三 っ の秘 密 は 「事 ノ 己 ム可 ラサ ル 者 」(以 上 、 二 ・オ)で あ る。 な お これ 以 外 に政 治 上 の も う一 っ の秘 密 が あ る と さ れ 、 明 治 七 年 の 「征 台 」 (=台 湾 征 伐)の 件 な ど を 例 に あ げ て 論 じ られ て い るが 、 そ れ に つ い て は これ 以 上 言 及 しな い 。

さ らに も う一 点 言 及 して お くな ら、 「兵 備 」 にっ い て 、 西 は も っ ぱ ら 対 外 的 に三 宝 の 保 護 の観 点 か ら しか 触 れ て い な いが 、 現 在 もそ う だ が 、 当 時 に あ って も、 と言 う よ り、 当 時 に お い て は差 し当 り、 国 内 的 に優 先 さ れ た治 安 上 の 観 点 が あ っ た こ とを 忘 れ て は な らな い だ ろ う。 そ れ は次 の よ うに指 摘 さ れ る側 面 で あ る。 「天 皇 制 軍 隊 は、 「内 は以 て 草 賊 を鎮 圧

し、 外 は以 て 対 峙 の 勢 を 張 る」 目的 を 掲 げ て 創 設 さ れ た 。 「草 賊 」 士 族 暴 動 に た い して は、 徴 兵 の 鎮 台 兵 が 差 し向 け られ 、 そ の 「兵 気 凛 然 」 が 讃 え られ 、 「均 し く皇 国 一 般 の 民 」 と して の 人 民 の愛 国 心 へ の 信 頼 が 当 局 者 に よ って 表 明 され た。Jと い わ れ る よ う な 「人 民 威 圧 の 専 制

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支 配 の 象 徴(7)」 と して の 側 面 で あ る。 これ は次 項 の 「政 府 自 己 ノ三 宝 保 存 二 属 ス ル事 務 」 と い う こ と に な る の で あ ろ うか 。

十 一 事 務 二 従 服 ス ル ノ先 後 ハ 、 目 的 ト方 略 トノ 関 係 二 在 テ 、 目 的 ノ軽 重 二 在 ラ サ ル ナ リ

第 三 番 目の 事 務 は 「政 府 自 己 ノ三 宝 ヲ、 保 存 ス ル ノ務 メ ニ シテ、 会 社 同 列 二対 ス ル 、 義 務 二 非 ル コ ト明 カ ナ リ」(五 三 八 頁)と 、 す な わ ち、

政 府 が 自 己 を維 持 す るた め に、 政 府 自 らの三 宝 を保 存 す る た め の もの で あ って 、 国 内 の個 々 の会 社 及 び社 会 に対 す る 「内 部 合 法 上 ノ義 務 」 と は 明 確 に異 な る と さ れ る ⑧。 そ うで あ る け れ ど も、 「第 三 項 ノ事 務 ハ 政 府 二在 テ猶 一 人 ノ三 宝 ア ル カ如 シ」(五 三 六 頁)で あ る。 な ぜ な らば、 「政 府 モー 人 ノ人 ノ如 シ、 官 員 ナ ケ レハ 政 府 存 ス ル コ ト能 ハ ス是 猶 一 人 ノ健 剛 ノ如 シ、 又 政 府 ノ鐙 衡 任 使 鮎 防 ノ事 ハ 猶0人 ノ知 識 ノ如 シ、 此 事 務 ナ ケ レハ 政 府 ハ 唯 鳥 獣 ノ群 ノ如 キ ノ ミ、 而 テ財 政 即 征 税 ヨ リ官 禄 ト用 度 ト ノ分 配 ハ 、 大 蔵 猶0人 ノ富 有 ノ如 シ、 是 無 レハ 政 府 亦 自 ラ存 立 ス ル コ ト

能 ハ サ ル ナ リ」(同 右)で あ る か らで あ る。 す な わ ち、 健 康 と して の

「官 員 」、 知 識 と して の 「鐙 衡 任 使 鮎 防(=・ 降 官 あ る い は免 職)」、 富 有 と して の 「財 政 」 の三 宝 の 貴 重 増 進 が 無 け れ ば政 府 の 存 立 が不 可 能 に な っ て しま うか らで あ る と。

け れ ど も、 と言 う。 「然 ル ニ是 二 由 テ前 ノニ 項(=内 部 合 法 上 ノ義 務 と外 部 合 法 上 ノ義 務)ト 此 一 項(=政 府 自 己 ノ三 宝 保 存 二属 ス ル事 務)

ト前 後 軽 重 ア ル ヲ知 ル ヘ シ、 前 二 項 ノ如 キ ハ 政 府 ノ責 分 ニ シテ、 必 ス壷 サ サ ル 可 ラ サ ル義 務 ナ リ、 今 若 シ政 府 ア リテ、 第 三 項 ノ事 務 二従 事 シ テ 前 ノニ 項 ノ事 務 ヲ忽 略 セ ハ 、 猶 家 ニ シ テ 肥 大 強 健 ノ贅 婿 ア ル カ如 キ ノ ミ」(五 三 六 〜 七 頁)と 。 す な わ ち、 前 二 項 は政 府 が 必 ず な さ な け れ ば な らな い義 務 で あ って 、 この一 項 を な す た め に前 二 項 を 疎 か に す る よ う

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西 周 「人 生 三 宝説 」 を 読 む(三)7

な こ とが あ る な ら、 そ れ は家 を 肥 大 強 健 に す る こ と に な っ て も、 そ の 家 に住 む人 の益 に は な らな い無 用 の い わ ば単 な る箱 物 に す ぎ な い もの に な って しま う と言 うの で あ る。 す な わ ち、 国 富 ん で 人 民 貧 し、 と い う主 客 転 倒 に な って し ま う と言 うの で あ る。 だ か ら、 「前 ノニ 項 ハ 、 第 三 ノー 項 ヨ リモ、 一 層 切 要 ニ シ テ、 政 府 ノ0日 モ、 忽 棄 ス可 ラサ ル所 タル ハ 言 ヲ待 ス」(五 三 七 頁)な の で あ る。 実 現 さ る べ き 「目 的 」 と い う観 点 か らは、 前 二 項 は第 三 項 よ り も 「重 」 な の で あ る。

さ ら に しか し、 と言 う。 「然 レ トモ 、 事 務 二 従 服 ス ル ノ先 後 ハ 、 目 的 ト方 略 トノ 関係 二在 テ 、 目的 ノ軽 重 二在 ラサ ル ナ リ」(五 三 八 頁)。 先 ず 事 を な す に 当 って は、 目 的 を立 て 、 そ れ を 成 就 す る た め の手 段 を考 え る の が 順 序 で あ るが 、 い ざ実 施 に 際 して は、 手 段 を確 立 しな け れ ば 、 目的 達 成 の た め の行 為 に就 くこ と はで きな い の で あ って 、 手 段 の確 立 が 先 に な され な け れ ば な らな い。 実 現 され るべ き 目的 の軽 重 に か か わ らず 、 で あ る。 した が って 、 「故 二 目 的 ハ 主 タ リ ト錐 トモ、 後 来 達 ス ヘ キ ノ正 鵠 ニ シテ、 方 略 ハ 客 タ リ ト錐 トモ、 現 在 二服 用 ス ヘ キ 弓 矢 タ リ、 是 ヲ以 テ 政 府 前 二 項 ノ義 務 ヲ書 シ テ善 美 ヲ極 メ ム ト欲 セ ハ 、 宜 シ ク先 ツ第 三 項 ノ 事 務 ヲ整 理 シ テ、 遺 策 ナ カ ル ヘ シ、 是 即 チ此 三 宝 説 ノ要 訣 ニ シテ 、 日 ク、

自己 ノ三 宝 ヲ貴 重 セ ヨ ト云 フ ノ 旨趣 ナ リ」(同 右)。

この記 述 に は奇 妙 な 転 倒 が 見 られ な い だ ろ うか 。 実 現 さ れ る べ き 目 的 を実 現 す る た め に は、 そ の 実 現 に従 事 す べ き手 段 を 「整 理 」 し 「遺 策 」 の な い よ う にす るべ き だ と、 一 見 当 り前 の こ と を言 って い る に す ぎな い よ う に思 え る。 しか し事 実 に お い て は この 主 張 は、 「後 来 達 ス ヘ キ 正 鵠 」 の た め に、 「現 在 服 用 ス ヘ キ 弓 矢 」 を 貴 重 増 進 しな け れ ば な らな い 、 と い う の で あ れ ば、 後 来 の た め に現 在 を犠 牲 に して 、 「家 ニ シテ 肥 大 強 健

ノ贅 婿 ア ル カ如 キ」 に な りか ね な い危 険 性 を秘 め て い る の で あ る。 歴 史 的 に見 て も、 明 治 専 制 政 府 の 執 っ た富 国 強 兵 政 策 は ま さ に そ の 危 険 性 の

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う ち に あ っ た の で あ る(9)。

「故 二人 萄 モ 、 人 ノ三 宝 ヲ貴 重 シ之 ヲ助 ケ長 セ ム ト欲 セ ハ 、 将 二先 ッ、

自 己 ノ三 宝 ヲ貴 重 伸 達 ス ヘ シ」 で あ り、 「古 ヨ リ己 レ危 ウ シテ 、 能 ク人 ヲ救 フ者 ア ラサ ル ナ リ」 で あ るか らで あ る。 例 と して 「讐 ヘ ハ 人 ア リ水 二溺 ル ・ノ人 ヲ救 ハ ム ト欲 セ ハ 、 己 レ先 ッ陥 没 ヲ恐 ル ・コ トナ キ ノ地 二 立 ッ ヘ シ」 と言 わ れ る(以 上 、 同 右)。

しか し、 この例 は こ こで は適 しい もの と は言 え な いで あ ろ う。 この 例 は 「同 生 同 人 二 交 ハ ル 」 場 合 に こ そ適 し い例 な の で は な い か 。 「人 生 三 宝 説(二)」 の末 尾 で 言 わ れ た 「三 大 宝 ノニ(=健 康 と富 有)ヲ 棄 テ ㌧ 以 テ其 一(=知 識)ヲ 全 ウ ス ル」 とい う孔 子 の 言 う 「身 ヲ殺 シ以 テ仁 ヲ 成 ス」 場 合 が そ れ で あ る。 そ こ で は こ う言 わ れ て い た 。 「人 世 変 二遭 ヒ 時 難 二罹 リ道 義 正 二 旺 ス ル 時 ハ 、 同 生 同 人 ノ為 二奮 テ死 ヲ顧 ミス以 テ其 道 義 ヲ全 ウ ス ル コ トア リ」(以 上 三 九 ・三 ・ウ)と 。 した が って この 場 合 、 「己 レ先 ツ陥 没 ヲ恐 ル ・ コ トナ キ ノ地 二立 ツ」 こ と もな く 「人 ヲ救 」

お う とす る こ と も在 り う る の で あ る。 この例 を 、 政 府 と人 民 との関 係 に 適 用 して 、 政 府 が 人 民 の た め に 「己 レ先 ツ陥 没 ヲ恐 ル ・ノ コ トナ キ地 二 立 ッ」 こ と を 優 先 す る な ら、 「人 ヲ救 」 う と い う名 目 で 政 府 は、 人 民 を い く らで も犠 牲 に して こ とを 行 う こ とが で き るの で あ り、 事 実 、 明 治 専 制 政 府 が 行 った の は、 そ うい う こ と だ っ た と言 え る の で は な いか 。 「能 ク人 ヲ救 フ」 こ とが で き る よ う に と、 「己 レ先 ッ陥 没 ヲ恐 ル ・ コ トナ キ 地 二 立 ツ」 こ と を 優 先 して 、 結 果 的 に は 、 「前 ノニ 項 ノ事 務 ヲ忽 略 」 し て 「家 ニ シテ肥 大 強健 ノ贅 婿 ア ル 」 こ と に な りか ね な い危 険 性 が そ こに は秘 め られ て い る の で あ る。 これ は な に も明 治 専 制 政 府 に限 られ た こ と で は な く、 現 在 に ま で 連 綿 と して続 く、 官 僚 制 の陥 穽 で あ る と言 って も よ い の で あ ろ う。

さて 西 の 所 説 を 先 に進 め よ う。 この例 を挙 げ た後 、 次 の よ うに論 説 さ

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西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)9

れ る。 「此 ノ 旧 縁 ヲ 以 テ 、 政 府 其 本 分 ノ 義 務 ヲ盤 シ、 責 任 ヲ 果 サ ム ト(10)欲 セハ 、 先 ツ第 三 項 ノ事 務 ヲ整 理 ス ル ハ 、 第 一 先 務 ノ着 手 方 略 タ ル ヘ シ」 と さ れ て 、 そ れ は 「別 ケ テ三 項 」 あ る と言 う(五 三 九 頁)。 す な わ ち、

「其0官 ヲ設 ケ職 ヲ制 ス ル勉 メ テ 簡 易 ニ シテ贅 官 冗 員 無 ラ シ ム ル ナ リ」

「其 二 鐙 衡 ヲ審 カ ニ シ、 任 使 ヲ専 ラニ シ、 勉 メ テ 公 平 ニ シ テ 濫 選 、 漣 授 、 無 ラ シム ル ナ リ」

「其 三 出 納 ヲ厳 ニ シ分 賦 ヲ詳 カ ニ シ、 勉 メ テ節 倹 ヲ主 トシ テ、 虚 実 、 浮 靡i、無 ラ シム ル ナ リ」(同 右)

の 三 項 で あ る。 この 三 項 が 「先 ッ取 ル ヘ キ方 略 ノ、 最 大 緊 急 事 務 」(五 四 〇 頁)で あ る。

「其 一 」 につ い て は次 の よ うに説 明 され る。 「蓋 シ政 府 ノ官 員 アル ハ 、 猶 人 ノ耳 、 目、 鼻 、 口、 手 、 足 、 指 爪 ア ル カ如 シ、 勉 メ テ運 用 自在 ナ ラ

シ ム ヘ シ、 今 贅 官 卜冗 員 トハ 猶 人 ノ贅 疵(=い ぼ)ト 六 指(=指 が 六 本)、 欠 唇(=三 っ 口)、 等 ノ如 キ ノ ミ、 是 二 因 テ其 用 ヲ敏 捷 ナ ラ シム ル ニ非 ス、 反 テ是 二 因 テ其 用 ヲ遅 滞 ナ ラ シ ム、 故 二 此 一 項 ハ 政 府 自 ラ第 一・

宝(=健 康)ヲ 貴 重 セ サ ル 可 ラ サ ル 所 以 ナ リ」(同 右)と 。 こ の 第 一 項 に つ い て は何 も拙 論 す る こ と は な い。

「其 二 」 に っ い て は、 「蓋 シ政 府 ノ選 任 ヲナ スハ 猶 人 ノ五 官 ヲ具 シテ、

外 物 ヲ知 覚 シ、 其 適 用 ノ物 ヲ取 テ、 己 レカ用 二供 ス ル カ如 シ、 今 濫 選 、 乏 授 用 ウル所 、 其 人 二非 レハ 、 猶 人 ノ救 麦(=豆 と麦)ヲ 弁 セ ス、 馬 鹿 (=馬 と鹿)ヲ0視 ス ル カ 如 シ、 特 二冠 履 ヲ顛 倒 ス ル ノ笑 フヘ キ 耳 二非 ス、 又 将 二盗 二利 刃 ヲ授 ル ノ禍 ヲ胎 サ ム トス、 故 二此 一 項 ハ 政 府 自 ラ第 二 宝(=知 識)ヲ 貴 重 セ サ ル可 ラサ ル 所 以 ナ リ」(同 右)と 言 う。 政 府 の役 人 は選 考 を厳 し く公 平 に しな け れ ば な らず 、 優 秀 な人 材 を 確 保 しな け れ ば な らな い、 と言 うの だ か ら、 こ の第 二 項 に っ い て も何 も言 うべ き

(10)

こ と は な い よ うに思 わ れ る。 しか し、 で あ る。 そ の よ うに して 「任 使 」 され た 官 員 が 「任 使 」 され た後 も優 秀 な働 きを す るか ど うか は別 問 題 で あ る。 官 員 とな って 仕 事 を す る に は ひ とっ の制 度 の も とに 組 織 の集 合 体 と して 仕 事 を す る の で あ り、 ひ と りで す る の で は な い。 そ して この 点 に こそ 、 選 考 厳 し く公 平 に優 秀 な 人 材 を確 保 した と して も、 そ れ だ けで は 十 分 で な い理 由 が あ る の で あ る。 こ の こ とを 同 時 代 人 と して、 西 よ り も

良 く見 抜 い て い た の が 福 沢 諭 吉 で あ った。

福 沢 は、 明 治 七 年 一 月 刊 の 『学 問 のす!め 』 の 第 四 編 「学 者 の職 分 を 論 ず 」 で 官 と 民 の あ り様 に っ い て 以 下 の よ う な 指 摘 を して い る(11)。

「… …今 在 官 の 人 物 少 な し とせ ず 、 私 に そ の 言 を 聞 き そ の 行 い を 見 れ ば 概 ね 皆 闊 達 大 度 の士 君 子 に て 、 我 輩 これ を 間 然 す る能 わ ざ る の み な らず 、 そ の言 行 或 い は慕 うべ き もの あ り。 ま た一 方 よ り言 え ば 、 平 民 と錐 ど も 悉 皆 無 気 無 力 の 愚 民 の み に 非 ず、 万 に一 人 は公 明 誠 実 の 良 民 もあ るべ し。

然 る に今 こ の士 君 子 、 政 府 に会 して 政 を な す に 当 り、 そ の為 政 の事 跡 を 見 れ ば我 輩 の悦 ば ざ る もの甚 だ 多 く、 ま た か の 誠 実 な る良 民 も、 政 府 に 接 す れ ば 忽 ち そ の節 を屈 し、 偽 詐 術 策 を も って 官 を 欺 き、 嘗 て恥 ず る も の な し。 こ の士 君 子 に して この政 を施 し、 この 民 に して こ の賎 劣 に陥 る は何 ぞ や 。 あ た か も0身 両 頭 あ るが 如 し。 私 に在 って は智 な り、 官 に在 って は愚 な り。 これ を散 ず れ ば 明 な り、 これ を 集 む れ ば 暗 な り。 政 府 は 衆 智 者 の 集 ま る所 に して 一 愚 人 の 事 を行 う もの と言 うべ し。 豊 に怪 しま ざ る を得 ん や 」(三 八 〜 九 頁)と 。

「私 に 在 っ て は」 と は 「民 に 在 っ て は」 と い う こ と だ ろ うが 、 次 に

「散 ず れ ば 」 と あ る よ うに 、 「一 人 ひ と りに お い て は」 の 意 で あ ろ う。 そ して 「官 に在 って は」 は 「集 む れ ば」 と あ る よ うに制 度 の も とに組 織 の 集 合 体 を な す 政 府 の こ と で あ る。 選 考 厳 し く公 平 に 「智 」 「明 」 の人 材 を任 使 して も、 西 の言 うよ うに第 二 宝 を貴 重 進 達 す る こ と に な る と は限

(11)

西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)11

らな い と福 沢 は指 摘 して い るの で あ る。

そ れ で は な ぜ この よ う な こ とに な るの か 。 福 沢 は次 の よ う に指 摘 す る。

「畢 寛 そ の然 る 由 縁 は、 か の 気 風 な る もの に制 せ られ て 人 々 自 ら0個 の 働 きを 逞 し うす る こ と能 わ ざ る に 由 って 致 す と ころ な らん 乎 。 維 新 以 来 、 政 府 にて 、 学 術 、 法 律 、 商 売 等 の道 を興 さん と して効 験 な き も、 そ の病 の原 因 は蓋 し こ こに在 る な り」(三 九 頁)と 。 か の 気 風 と は、 「0種 無 形 の 気 風 」 と呼 ば れ る 「卑 屈 不 信 の 気 風 」 で あ り、 「人 民 は や や 権 利 を 得 る に似 た れ ど も… … 依 然 と して 旧 に異 な 」(三 八 頁)っ て い な い の で あ る。 こ の 気 風 に 関 して は、 西 も 『明 六 雑 誌 」 第 三 十 二 号(明 治 八 年 三 月)の 「国 民 気 風 論 」 で 必 らず し も福 沢 と同 じと は言 え な い が 、 同 様 の 指 摘(12)を して い る け れ ど、 な ぜ か 、 「人 生 三 宝 説 」 の こ こで の論 点 に っ いて の 福 沢 に見 られ る よ うな 観 点 は と られ て い な い。 そ の た め で あ ろ うか 、 西 が 「此 第 三 項 、 即 チ政 府 自 己 ノ三 宝 ヲ保 存 ス ル ヲ以 テ、 其 会 社 全 列 ノ 目的 ヲ達 ス ル為 二、 先 ッ取 ル ヘ キ 方 略 ノ、 最 大 緊 急 事 務 トシ」 と

い う箇 所 に つ い て 、 ヘ イ ブ ンス は、 「国 家 は他 の 義 務 、 近 代 政 府 に と っ て 困 難 だ が 不 可 欠 の課 題 に応 ず る前 に 、 自 らを 整 え な けれ ば な らな い、

と西 は考 え て い る。 西 の この点 に関 して の 際 立 った 強 調 は、 彼 が そ の 一 員 で あ った 明 治 新 政 府 へ の批 判 と して 理 解 さ るべ きで は な い。 む しろ そ れ は多 分 、 幕 府 の衰 退 して い く行 政 機 構 にっ いて の 洋 学 者 や 多 くの志 士 た ち の側 か らの 幕 末 期 の 大 不 安 に 根 去 して い る 個 」 と述 べ て い るが 、 明 治 新 政 府 へ の批 判 云 々 は別 と して 、 そ の 通 りだ と思 わ れ る。

さて 、 福 沢 は 『学 問 の す 〜め」 で この よ う に指 摘 す る一 方 、 同 時 期 、 或 い は少 し後 の時 期 に書 き始 め た と さ れ る 『文 明 略 之 概 略 』 に お い て も

同様 の指 摘 を よ り明 確 に概 念 化 して 指 摘 して い る の で 、 そ れ を見 て お こ う。 第 四 章 「一 国 人 民 の智 徳 を論 ず 」 の 続 き と して の第 五 章 「前 論 へ の 続 き」 に お い て、 「衆 論 」 につ い て 論 じて い る。 「… … 衆 論 と は、 即 ち 国

(12)

内衆 人 の 議 論 に て 、 そ の時 代 に あ りて普 く人 民 の 間 に分 賦 せ る智 徳 の有 様 を 顕 わ した る もの」 と定 義 した上 で、 衆 論 に つ い て言 って お か な けれ ば な らな い 「二 箇 条 」 が あ る、 そ れ は 「衆 論 は必 ず し も人 の数 に 由 らず 、

にん にん

智 力 の分 量 に 由 りて 強 弱 あ り と の こ と」 と 「人 々 に智 力 あ り と い え ど も、

習 慣 に 由 て これ を 結 合 せ ざ れ ば 衆 論 の 体 裁 を成 さず との こ と」(以 上 一

〇 〇 頁)で あ る、 と さ れ る。 拙 論 で 差 し当 り関 係 あ る の は後 者 で あ る。

あつ ま り

後 者 の説 明 の 冒頭 で 「人 の議 論 は集 て趣 を変 ず る こ と あ り」(一 一 三 頁) と 「い わ ゆ る衆 智 者 結 合 の変 性 な る も の」 ←一一 四 頁)に つ い て 語 り始 め る。 臆 病 な人 間 が三 人 一 緒 に暗 夜 の 山 路 を行 け ば恐 れ る こ と な い が 、 これ は 「三 人 の 問 に生 ず る勇 気 」 の お か げ で あ り、 十 万 の 勇 士 が 風 の 音 鶴 の 鳴 き声 で 一 斉 に逃 げ 出 す の も 「十 万 人 の 間 に生 ず る臆 病 」 に よ るの で あ る(14)。 さ ら に 「人 の 智 力 議 論 は な お 化 学 の 定 則 に 従 う物 品 の 如 し」(以 上 一 一 三 頁)と 言 う。 一 人 の 人 間 の もっ 性 質 能 力 が 、 複 数 集 ま る と、 そ れ は単 純 な た し算 に よ って 得 られ る の と は異 な る集 合 体 の性 質 能 力 が 生 ず る、 す な わ ち全 体 は諸 部 分 の総 和 で は な く、 諸 部 分 相 互 の 関 係 に よ って 全 く新 しい性 質 能 力 が 生 ず る の だ 、 と言 う ので あ ろ う。 新 し い マ イ ナ スへ の性 質 能 力 の生 成(先 の十 万 人 の 勇士 の例)の 例 と して さ らに 挙 げ られ るの が 、 「近 来 日本 に 行 わ る る諸 方 の 会 社 な る もの を 見 る

いよ い よ

に、 そ の会 社 い よ い よ大 な れ ば、 そ の 不 始 末 愈 甚 しきが 如 し」(同 右) と い う例 で あ る。 「方 今 に て 結 社 を 企 る者 は大 抵 皆 世 間 の 才 子 」 で あ る の に、 「この 才 子 、 相 会 して 事 を 謀 る に至 れ ば、 忽 ち そ の性 も変 じて 捧

みず

腹 に堪 え ざ る失 策 を行 い、 … … そ の 会 社 中 の才 子 も 自か らそ の 然 る所 以 を知 ら」 ← ・一三 〜 四 頁)な い の で あ る。

以 上 の よ うな例 を提 出 した あ と、 拙 論 に か か わ る指 摘 が 次 の よ う に語 られ る。 「ま た、 今 の 政 府 の 官 員 も皆 国 内 の 人 物 に て 、 日本 国 中 の 智 力 は大 半 政 府 に集 る とい う も可 な り。 然 り とい え ど も この 人 物 、 政 府 に会

(13)

西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)13

あ た り

して事 を為 す に当て はそ の処 置必 ず しも智 な らず 、 いわ ゆ る衆 智 者結 合

の変 性 な る もの にて、彼 の有 力 な る曹 達 と塩 酸 と合 して食塩 を生 ず るの

むす び

理 に異 な らず 。 概 して いえ ば 、 日本 の人 は仲 間 を結 て 事 を行 う に当 り、

にん にん

そ の 人 々持 前 の 智 力 に 比 して 不 似 合 な る拙 を尽 す 者 な り」(一 一 四 頁) と。 そ れ で は なぜ この よ うな こ とが お き るの か 。 福 沢 は、 そ れ が 生 ず る の は 「日本 人 が 無 議 の 習 慣 に制 せ られ 」(一 一 七 頁)て い るか らだ と言

う。

日本 の 場 合 に 反 して 、 「西 洋 諸 国 の人 民 必 ず し も智 者 の み に あ らず 。 然 る にそ の仲 間 を結 て 事 を行 い、 世 間 の 実 跡 に顕 わ る る所 を 見 れ ば、 智 者 の所 為 に似 た る もの 多 し」(同 右)で あ る。 そ れ は、 西 洋 諸 国 に お い て は 「仲 間 を 結 て 公 使 の事 務 を 相 談 す る の風 」(同 右)、 す な わ ち 「衆 議 の法 」(一 一 五 頁)が あ るか らで あ る。 そ れ ゆ え、 「概 して いえ ば 、 西 洋 諸 国 に行 わ る る衆 論 は、 そ の 国 人 各 個 の 才 智 よ り も実 に高 尚 に して 、 そ の 人 は人 物 に 不 似 合 な る説 を 唱 え 不 似 合 な る事 を 行 う」(同 右)こ とが 可 能 に な る の で あ る。 中 間 的 に総 括 して こ う言 わ れ る。 「… … 西 洋 の 人

となえ

は、智 恵 に不似 合 な る銘 説 を唱 て、不似 合 な る巧 を行 う者 な り。 東洋 の

はき

人 は、 智 恵 に 不 似 合 な る愚 説 を 吐 て 、 不 似 合 な る拙 を 尽 す 者 な り」(同 右)と 。

そ れ で は な ぜ 西 洋 に は 「衆 議 」 の 習 慣 が 確 立 さ れ、 東 洋 は 「無 議 の習 慣 」 に制 せ られ る こ と に な った の か 。 西 洋 に お い て も 「無 議 」 の習 慣 は 一 朝 一 夕 に確 立 さ れ た の で は な く、 数 百 年 の 時 間 を か けて 序 々 に確 立 さ れ て きた の で あ るが 、 東 洋 に お い て は専 制 政 府 の も とに 「徒 党 を 禁 ず る の 法 」 を 設 け て 人 の 集 議 を 妨 げ、 西 や 福 沢 の 指 摘 す る よ う な 「国 民 気 風 」 が 形 成 さ れ て 、 「無 議 の 習 慣 」 がaら ず 知 らず の う ち に 「第 二 の 天 然(=性 質)」(同 右)と な って し ま っ た の だ 、 と指 摘 され る。 「習 慣 の 久 し き、 そ の 風 俗 を成 し、 遂 に今 の 有 様 に 陥 りた る な り」(一 一 六 頁)。

(14)

しか しそ れ は あ く まで 習 慣 で あ るの で あ って 、 「天 然 の 欠 典(=点)に あ らず 、 習 慣 に 由 て 失 うた る もの な れ ば 、 これ を恢 復 す る の法 もま た 習 慣 に 由 らざ れ ば 叶 うべ か らず 。 習 慣 を変 ず る こ と大 切 な り と い うべ し」

(‑〇 八 頁)と 、 国 民 気 風 を 変 え て、 習 慣 を 「無 議 」 か ら 「衆 議 」 へ と 変 え な けれ ば な らな い と主 張 さ れ る。

以 上 が 福 沢 の指 摘 主 張 で あ り、 西 の よ うに単 に優 秀 な人 材 を集 め るだ けで は 「政 府 其 本 分 蓋 シ、 責 任 ヲ果 」 す こ と は で きな い と考 え て い る点 で、 西 よ り一 歩 進 ん で い る と言 え るで あ ろ う。

西 の テ キ ス トに戻 る。 「其 三 」 に っ い て は、 蓋 シ政 府 ノ出 納 分 賦 ヲナ ス ハ 、 猶 人 ノ富 有 ヲ処 置 ス ル カ如 シ、 今 虚 費 、 浮 庭 、 国 努 支 ヘ サ レハ 将 二之 ヲ継 クニ 重 税 厚 敏 内 外 負 債 ヲ以 テ セ ム トス、 乃 チ 個 々 人 々 第 三 宝 ヲ 忽 略 シ之 二継 ク ニ、 貧 乏 ヲ以 テ シ、 負 債 ヲ以 シテ 、 寛 二盗 窃 二陥 ル ト、

何 ソ異 ナ ラ ム、 故 二重 敏 、 厚 税 バ ー 身 上 二在 テ、 盗 窃 ト類 ヲ同 ウス ル者 ナ レハ 、 政 府 ノ第 三 宝 二於 ル、 尤 モ貴 重 シ、 尤 慎 重 セ サ ル 可 ラサ ル所 以 ナ リ」(五 三 九 〜 五 四 〇 頁)と 言 う。 政 府 が 出納 の 配 分 を 厳 し く し、 無 駄 な経 費 を な くす よ う に す るの は、 個 人 が 富 有 を考 慮 す る の と同 じで あ る。 無 駄 な 経 費 を な くす よ うに しな い と、 不 足 分 を 重 税 や外 債 や 国 債 に 頼 らざ る を 得 な くな り、 個 人 が 富 有 を 粗 末 に して 貧 乏 に な り借 金 に頼 る よ う に な り、 あ げ くの果 て盗 み を は た ら くの と同 様 で あ る。 重 税 は個 人 の 場 合 の 盗 み と同 じで あ る か ら、 政 府 は そ うな らな い よ う第 三 宝 を 貴 重

しな けれ ば な らな い、 と言 うの で あ る。

そ れ で は こ の よ う に指 摘 され た こ とを ど の よ うに 実 現 す るか 。 優 秀 な 人 材 を集 め た と ころ で 、 そ れ が な さ れ る と い う保 証 は 「其 二 」 に お い て 見 て き た が 、 「衆 議 」 の 手 続 に っ い て は福 沢 も そ こ で は 触 れ て い なか っ た。 この 点 に つ い て 、 『明 六 雑 誌 』 上 で、 津 田 真 道 、 神 田 孝 平 が 触 れ て い るの で、 神 田 の そ れ を 見 て お こ う ⑯ 。

(15)

西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)15

「財 政 変 革 の 説 」(『明 六 雑 誌 』 第 十 七 号 、 明 治 七 年 十 月)で 神 田 は

「我 邦 徒 来 ノ財 政 ヲ案 ス ル ニ士 農 工 商 等 何 業 二 限 ラ ス政 府 ヨ リ其 利 分 相 等 ノ税 額 ヲ賦 課 シ時 ヲ以 テ微 収 シ其 聚 リタ ル総 数 ヲ以 テ歳 入 トシ再 ヒ分 配 シテ以 テ各 種 ノ政 費 二 充 ツル ナ リ是 量 入 為 出 ノ古 法 ニハ ア レ ト方 今 漸 ク弊 害 ア ル ニ 似 タ リ」(一 ・オ)と 始 め る。 政 府 の 出 納 を 従 来 の や り方 で や って い る と い ろ い ろ 弊 害 が 出 て くる と い う。 そ の弊 害 と は歳 入 歳 出 が 不 安 定 に な っ た り、 税 の微 収 洩 れ を 疑 って 取 り立 て が 酷 し くな り過 ぎ た り、 収 税 が 滞 った り、 税 則 の 勝 手 な 変 更 を した りす る こ とで あ り、 ま た、 「人 民 ハ 政 府 ノ定 次 第 税 ヲ納 ム レハ ー 切 義 務 ス テ ニ終 ル トシ政 事 ハ 政 府 ノ請 合 仕 事 ノ 姿 トナ リ人 民 殆 ト国 家 ノ安 危 ヲ意 トセ サ ル ニ 至 ル」

(同 右)と 人 民 の 政 事 的 無 関 心 を 指 摘 し、 福 沢 の 言 う 「日本 に は た だ 政 府 あ りて 未 だ 国 民 あ らず と言 う も可 な り ⑯ 」 に通 ず る考 え 方 を 示 して

い る。 だ か ら速 か な 改 革 が 必 要 だ と言 う。 そ の 改 革 と は、 「 a先 ッ民 撰 議 院 ノ制 ヲ定 メ

b第 二 会 計 検 査 ノー 局 ヲ指 キ

c第 二 各 寮 司 ヲ シテ 翌 年 間 ノ政 費 ノ見 積 リヲ為 サ シ メ集 メ テ政 費 ノ総 額 トシ

d民 撰 議 院 ノ公 議 ヲ経 テ其 額 数 ヲ確 定 シ e之 ヲ国 中 二配 当 シ テ微 集 シ

f政 費 二充 テ

g使 用 終 テ 後 二見 積 高 二 照 シテ精 算 シ

h更 二民 撰 議 院 ノ公 議 ヲ経 テ以 テ完 成 二 至 ル ナ リ」(一 ・ウ)

と い う手 続 き に よ って 政 府 の 出納 を計 る よ う に す る こ とで あ る。 これ は 現 在 の 日本 の 制 度 と もそ うか け離 れ た(eを 除 け ば)主 張 で は な い。 民 撰 議 院 の役 割 は多 々 あ るが 、 財 政 に 関 す る点 で 言 え ば、 「夫 レ人 民 ハ 給 料 ト費 用 ヲ出 シ テ政 府 ヲ雇 ヒ政 ヲ為 サ シム ル 者 ナ リ政 府 ハ 人 民 二雇 ハ レ

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給 料 ト費 用 ヲ受 テ政 ヲ為 ス者 ナ リ」(同 右)と 、 一一種 の 社 会 契 約 説 的考 え を 述 べ て い る が 、 これ も福 沢(は 明 確 な虚 構 と して 社 会 契 約 説 を主 張 して い るが(17り と同 様 な 考 え で あ る と言 え るだ ろ う。 だ か ら して 、 と 神 田 は 言 う。 「而 シテ民 撰 議 院 ノ会 議 ハ 人 民 ヨ リ政 府 へ対 シ翌 年 ノ注 文

ヲ為 シ政 府 ヨ リ人 民 へ 対 シ昨 年 政 事 ノ仕 上 ケ 勘 定 ヲ為 ス者 ナ リ」(同 右) と。 す な わ ち 、 神 田 は 財 政 権 が 民 撰 議 院 に あ る と主 張 して い るの で あ る。

(以上a)

そ して 民 撰 議 院 の 会 議 は重 要 だ が 、 「議 院 ハ 多 人 数 ノ事 ニ モ ア リ且 ツ 時 ヲ以 テ聚 散 ス ル 」 の で あ るか ら、 会 計 の 検 査 に専 念 で き な い の で 、 公 選 に よ り人 を 選 ん で 「会 計 検 査 局 」 を 設 置 す る こ と とす る(18)(b)。 以 下cか らhに っ い て の詳 論 が な さ れ るが 、 こ こで は、 西 が 「内 外 負 債 」 を 否 定 的 に捉 え て い る点 に関 して 、 神 田 の 「公 債 」 「国 債 」 論 につ い て だ け(eに 関 わ る)触 れ て お こ う。

西 は先 に 引 用 した よ う に、 「今 虚 費 、 浮 廉 、 国 努 支 ヘ サ レハ 将 二之 ヲ 継 ク ニ重 税 厚 敏 内 外 負 債 ヲ以 テ セ ム トシ」 と、 経 費 の 無 駄 使 い に よ り歳 入 が 足 らな くな って そ れ を補 う た め に重 税 を課 した り、 内外 債 を発 行 せ ざ る を得 な くな る の は不 可 と して い る。 もち論 絶 対 的 に 内外 債 の 発 行 を 不 可 と して い るの で は な い で あ ろ うが 、 そ れ に つ い て は言 及 して い な い。

神 田 は 、 「人 民 ハ可 成 丈 税 ノ軽 キ ヲ欲 ス」 か ら、 「会 議 ニ テ ハ 政 費 見 積 高 ヲ可 成 丈 省 略 シ万 々 要 用 ノ分 二非 サ レハ 記 入 ス ル コ トヲ承 諾 」 しな い、

しか し 「政 府 二貯 金 ハ ナ キ筈 」 な の で 、 「一 旦 事 変 ノ生 ス ル 時 二見 積 外 ノ財 用 ヲ要 ス ル コ ト」 もあ り、 「カ ・ル 時 ニ ハ 臨 時 ノ会 議 ヲ開 キ其 事 由 ヲ詳 述 シ会 議 ノ承 諾 ノ上 二公 債 証 書 ヲ発 行 シー・時 ノ急 ヲ弁 シ其 利 金(=

利 子)卜 年 賦 消 却 ノ 割 合 金 トハ 翌 年 ヨ リ歳 費 見 積 ノ 内 へ盛 込 ミテ闊 国 (=全 国)人 民 ヨ リ之 ヲ取 立 ル ナ リ」(三 ・ウ)と 言 うが 、 結 局 人 民 の 負 担 で あ る こ と に は変 り な い こ とに な る。 「事 変 」 が 何 か の 事 業 を 興 す ご

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西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)17

と な ら場 合 に よ って は そ の 収 益 で 償 還 す る こ と も可 能 に な る だ ろ うが 。 た だ しそ うで な くて も少 な く と も 「公 債 証 書 」 の発 行 が 、 経 常 政 費 で な く、 何 か 「事 変 」 が な けれ ば認 め られ な い こ と に は変 りは な い の で 、 こ の点 で は西 の 主 張 と は異 な らな い こ と は確 か で あ る。 そ して 「国 債 ノ法 利 ア リ害 ア リ」(四 ・オ)と して次 の点 を 列 挙 す る。 「

a之 二侍 ミテ可 成 丈 租 税 ヲ減 ス ル コ トヲ得

b民 間 資 材 ア リテ子 母 術 ヲ行 サ ル 者 仮 令 ハ 寡 婦 孤 児 官 吏 僧 侶 ノ類 公 債 証 書 ヲ買 テ安 全 ノ利 ヲ坐 収 ス ル コ トヲ得

c民 間死 金 之 二依 リテ活 動 ヲ得 ル(以 上 利)

d執 政 等 国 財 ヲ濫 用 シ之 ヲ挟 テ威 権 ヲ張 リ国 民 ヲ圧 抑 シ国 家 転 覆 ノ 大 禍 ヲ醸 成 ス ル(害)」

この よ う に 国 債 の 利 害 を列 挙 した後 で 国 債 に っ い て 次 の よ うに結 論 す る。 「要 之 国 債 ハ 国 会 ノ承 認 ヲ経 サ レハ 増 減 セ サ ル ヲ法 トス ヘ シ善 ク如 此 ナ レハ 庶 幾 クハ 長 ク 其 利 ヲ収 メ 其 害 ヲ避 ク ル コ ト ヲ得 ヘ シ」(以 上

四 ・オ)と(19)。

以 上 神 田 の財 政 改 革 の説 を概 観 して き た が 、 神 田 は最 後 に 、 民 撰 議 院 設 立 を 前 提 に し た 財 政 改 革 が 、 人 民 に 「国 事 ヲ憂 フ ル 心 ヲ 生 ス ル 」

(四 ・ウ)し 、 「国 運 次 第 二 隆 興 」(五 ・オ)さ せ る と結 論 す る。 す な わ ち、 「余 窃 二以 為 ク善 ク此 法 二 従 フ時 ハ 国 家 ノ利 益 際 限 ア ル ヘ カ ラス 第 0執 政 国財 ヲ濫 用 ス ル ノ弊 ナ ク人 民 亦 用 途 不 分 明 ノ税 金 ヲ納 ムル ニ及 ハ ス 国 家 ノ財 計 玲 朧 透 徹 官 民 ノ間毫 モ猜 疑 ノ心 ヲ貯 ヘ ス互 二赤 心 ヲ吐 露 シ

民 間 ノ事 ハ 民 間 ノ 自 由 二任 セ 置 キ テ差 支 ナ キ カ故 二許 多 ノ官 員 ヲ省 約 ス ル コ トヲ得(西 の 「贅 官 冗 員 無 カ ラ シム ル 」 は具 体 性 に欠 け て い たが 。 傍 点 筆 者 、 以 下 同 じ)ヘ シ」(四 ・オ)で 、 さ らに ま た 「実 二 是 迄 地 方

rr 

二許 多 ノ官 員 ヲ要 シ政 府 二酸(=残)酷 苛 察 ノ吏 ヲ要 ス ル カ如 キ ハ 人 民 モ シ ヤ税 ヲ免 ル ・者 ナ キ ヤ トノ猜 疑 二 出 ッ ル 者 ヲ多 シ トス」(四 ・オ 〜

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四 ・ウ)で あ る。 そ して 「就 中此 法 ノ国 ノ為 二鴻 益 アルハ人 民油 然 トシ

...

テ国事 ヲ憂 フルノ心 ヲ生 スルニ在 リ是 レ其成敗得失遂一 自己身上 二関渉

...

ス ル ヲ以 テ ナ リ… …人 民 ノ風 習 好 テ 国 事 ヲ論 ス ル ニ至 レハ知 識 次 第 二 開 ケ(こ の考 え方 は、 民 撰 議 院 尚 早 論 者 と逆 の主 張 で あ る)次 第 二万 国 ノ 事 情 二通 シ次 第 二 急 要 ノ事 務 ヲ暁 リ次 第 二経 国 ノ人 材 ヲ生 シ国 運 次 第 二

隆 盛 ス ヘ シ」(四 ・ウ 〜五 ・オ)と 結 ん で い る。

以 上 、 西 の第 三 項 の 「政 府 自己 ノ三 宝 保 存 二属 ス ル事 務 」 に つ い て の 見 解 を 福 沢 や神 田 の見 解 と照 し合 わ せ な が ら見 て きた 。

第 三 項 が 次 の よ う に要 約 さ れ る。 「贅 官 ヲ省 キ 冗 員 ヲ汰 シ、 濫 選 ヲ慎 ミ、 迂 援 ヲ戒 メ、 虚 費 ヲ抑 へ、 浮 魔 ヲ裁 ス ル ハ 、 政 府 其 会 社 全 列 二対 ス ル、 最 大 義 務 ナ リ」(五 四 〇 頁)と 。 そ して さ らに 次 の よ うに 続 け られ る。 「故 二 此 義 務 ハ 、 前 二 項 ノ義 務 、 即 チ 合 法 上 保 護 ノ義 務 ト並 ヒ、 彼 ヲ積 極 ノ義 務 トシ、 此 ヲ消 極 ノ義 務 トス 、 何 トナ レハ 保 護 ノ義 務 ハ 、 政 府 ノ為 サ サ ル可 ラ サ ル ノ義 務 、 即 チ責 分 ニ シテ、 贅 官 、 冗 員 、 濫 選 、 漣 援 、 虚 費 、 浮 慶 、 ノ八 ッ(六 ッの 誤 記 力)ハ 、 決 シ テ為 ス可 ラサ ル ノ義 務 ナ レハ ナ リ、 如 此 ク表 裏 、 内 外 ノ義 務 ア ル ハ 、 搦 リ政 府 ノ ミニ 限 ラ ス、

前 篇 二 云 フ、 他 ノ会 社 ノ如 キ モ、 或 ハ 政 府 中 ノー 官 、 一・局 、 一 司、 等 ノ 如 キ モ、 此 二 成 分(=積 極 消 極 二 っ の義 務)ヨ リ成 ラサ ル ハ 莫 シ」(同 右)と 。 こ こ で 「積 極 ノ義 務 」 「消 極 ノ義 務 」 と命 名 さ れ て い る が、 こ

の 「積 極 」 「消 極 」 と い う語 は、 「人 生 三 宝 説(二)」 で 「人 二 接 ス ル ノ

要 」 に 「三 大 例 規 」 が 挙 げ られ た 際 、 「命 ス ル ニ セ ヨ ヲ以 テ シ」 だ か ら

「積 極 」、 「命 ス ル ニ 勿 レ ヲ以 テ シ」 だ か ら 「消 極 」 と言 わ れ た(三 十 九 ・二 ・オ)こ と に対 応 して い て 、 「為 サ サ ル可 ラ サ ル 」 だ か ら 「積 極 」、

「為 ス可 ラサ ル」 だ か ら 「消 極 」 と言 わ れ て い る こ と は明 らか で あ る。

「政 府 中 」 の 部 局 に 関 して 「裁 判 権 ア レハ 、 其 内 政 部 ア リ、 海 陸 軍 ア レハ 、 其 内 政 部 ア ル カ如 シ」 で 、 「之 ヲ家 道 二推 ス モ、 亦 然 リ」 で 、 「洋

(19)

西 周 「人 生 三 宝 説 」 を読 む(三)19

語 之 ヲ 「ア ド ミニ ス ト、 レ ー シ ウ ン(=administration経 営)」 と 云 フ」(五 四 〇 頁)と 、 政 府 と い う会 社 も個 別 の 会 社 も同 じ こ とが 妥 当 す る と駄 目押 しが な され るが 、 「家 道 」 に っ い て は 「亦 然 リ」 と言 わ れ る の は ど うだ ろ うか 。 「家 道 」 に あ って は、 「虚 費 、 浮 魔 」 に つ い て は と も か く、 「贅 官 冗 員 」 「濫 選 、 乏 援 」 と は。 そ れ と も或 い は使 用 人 な ど を雇

う こ とが 念 頭 に置 か れ て い る の だ ろ うか 。

「然 ル ニ 古 ヨ リ国 ノ以 テ廃 興 、 存 亡 ス ル 所 以 ノ者 ヲ観 ル ニ 、 政 府 タ ル 者 、 常 二前 二 項 ノ合 法 上 ノ義 務 ヲ行 フ ニ、 長 短 ア ル ニ非 ス シテ、 此 第 三 項 、 即 チ 自 己 ノ三 宝 ヲ忽 棄 ス ル ヨ リ、 顛 覆 亡 滅 ノ禍 ヲ取 ル コ ト、 比 々然 ラサ ル莫 シ、」(同 右)と 、 す な わ ち 歴 史 上 の 国 の 興 亡 を見 る と、 そ の 原 因 は 「前 二 項 ノ合 法 上 ノ義 務 」 を う ま く果 せ た か 否 か に よ る と言 う よ り

は、 「自 己 ノ三 宝 ヲ忽 棄 」 した が た め に亡 び た 場 合 が 、 圧 倒 的 に 多 い の で あ る、 と指 摘 さ れ る。 こ れ は個 人 に っ い て も言 え る こ と で 、 「0人 ノ

くク ラ ラ

身 ニ シテ、 酒 色 以 テ其 健 康 ヲ害 シ、 頑 鈍 以 テ其 知 識 ヲ惨 マ シ、 放 逸 以 テ 其 富 有 ヲ傾 敗 ス ル カ如 シ、 亡 シス シ テ何 ヲカ 待 タ ム」(同 右)と 言 わ れ る が 、 この 例 もい か が で あ ろ うか 。 言 わ れ て い る こ と は そ の通 り だが 、 こ こで の場 合 の 例 と して 言 うな ら、 「一 人 ノ身 ニ シテ」 身 を亡 ぼ す の は 、

「酒 色 以 テ其 健 康 ヲ害 シ、 頑 鈍 以 テ其 知 識 ヲ惨 マ」 す よ り も、 「放 逸 以 テ 其 富 有 ヲ傾 敗 ス ル 」 「比 々然 ラサ ル 莫 シ」 とす べ きで あ ろ う。

こ の政 府 第 三 項 の 事 務 「政 府 自 己 ノ三 宝 保 存 二属 ス ル事 務 」 に つ いて 、 ヘ イ ブ ンス は次 の よ うに 述 べ て い る。 「国 内 的 政 治 改 革 は̲̲̲̲.八六 〇 年 代 の も っ と も保 守 的 な知 識 人 を 除 い た あ らゆ る知 識 人 の 揺 ぎ な い要 求 で あ

った 。 この こ と に よ り西 の 一 八 七 五 年 にお け る高 潔 な政 府(こ の 「人 生 三 宝 説(四)(五)で 論 じ られ て い る よ うな)に 対 す る きわ だ っ た関 心

が 説 明 され るか も しれ な い(20)」 と。(続 く)

(20)

り も

1王 (1)

{2)

(3)

{4)

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(8)

以 下 引 用 に 際 し て 前 稿 に な ら い 、 「人 生 三 宝 説 」 五 以 下 は 『西 周 全 集 』 第 一 巻(一 九 七 一 年 、 宗 高 書 房)か ら、 必 要 に 応 じて 一 〜 四 か ら の 引 用 は 『復 刻 版 明 六 雑 誌 」(一 九 九 八 年 、 大 空 社)に よ る 、 そ れ ぞ れ の 頁 数 を 示 す 。

「警 部 ノー 種 」 が 、 テ キ ス トで は 、 「衛 生 」 に か か る の か 、1「民 法 裁 判 、 刑 法 裁 判 」 に か か る の か 判 然 と せ ず 、 常 識 的 に は 「民 法 裁 判 、 刑 法 裁 判 」 に か か る と読 む べ き か と も思 わ れ る が 、 そ れ は 「民 法 裁 判 、 刑 法 裁 判 」 は 三 宝 の す べ て に関 わ る と考 え られ る の で 、 「警 部 」 が 同 様 に 三 宝 の す べ て に 関 わ る と 考 え ら れ る 以 上 、 「警 部 ノ ー 種 」 を 「警 部 の 一 部 」 と解 し て 、 「衛 生 」 に か か る と 読 ん で お く。 同 様 の 表 記 が 「外 交 外 務 、 兵 備 海 陸 軍 」(五 三 六 頁)に お い て も見 られ る こ と を 付 記 して お く。

刑 法 に つ い て 、 西 は 、 「既 発 ノ 傷 害 ヲ 復 ス ル ニ道 ナ シ ト錐 トモ 、 因 テ 以 テ 他 二 及 ホ シ、 未 発 ノ 傷 害 ヲ保 護 ス ル 者 ナ リ」 と 、 三 宝 保 護 の 観 点 か ら、 現 在 言 わ れ る と こ ろ の 法 益 保 護 機 能 の こ と を 言 って い る の だ と思 わ れ る が 、 同 じ く、 三 宝 保 護 に 関 わ る と 思 わ れ る 自 由 保 障 機 能 に つ い て は 言 及 して い な い 。

な お 『百 学 連 環 』 に お い て 民 法 と刑 法 に つ い て 触 れ て い る の で 、 参 考 ま で に 以 下 に 引 用 し て お く。 「万 国 公 法(=国 際 法)を 除 き 、 翰 近 哲 学 上 の 法 学 た る も の は 分 っ て ニ ツ の 区 別

と す 。 即 ち 佛 郎 語 に て 一 ッ をdroitpriveと し 、 一 ッ をdroitpubliqueと す 。 私 権 を

droitcivi1霧 昏嚇 と 言 ひ 、 公 権 をdroitpolitique裳 と 言 ふ な り 。 又droit

は   な

commercialな る あ り。 即 ち 国 法 に 属 す る も の に て 民 政 の 一 種 た り 。 又droitcriminelな る あ り。 即 ち 政 法 に 属 して 其 一 種 な る も の な り。(第 二 篇 殊 別 学 三 政 事 学(法 学)、

(三)確 定 国 法(e実 定 法)、 『西 周 全 集 」 一 九 七 〜 八 頁)。

『文 明 論 之 概 略 』 二 七 四 〜 五 頁(岩 波 文 庫 、 一一九 九 五 年)。

「巳 ム 」 と あ る が 「已 ム 」 と訂 正 。

遠 山 茂 樹 「明 治 維 新 』 二 八 六 〜 七 頁(岩 波 全 書 、 一 九 六 六 年)。 な お 「内 は 以 て … … 」 の 文 言 は 、 山 縣 有 朋 の 明 治 七 年 一 月 の 奏 議 中 の も の と の こ とで あ る。

以 下 「政 府 自 己 ノ三 宝 保 存 二 属 ス ル 事 務 」 と 「道 徳 上 ノ義 務 、 即 チ 道 義 」 に つ い て は 、 「人 生 三 宝 説(六)」 が 「人 生 三 宝 説(五 〉」 の こ の 二 っ の 項 の 「余 論 」 と さ れ て い る の で 併 せ て 読 ん で い く こ と とす る。 す な わ ち 、(六)の 冒 頭 で こ う述 べ られ て い る。 「此 前 第 五 篇 二 於 テ 、 治 人 ノ道 モ 、 亦 三 宝 ヲ貴 重 ス ル ノ外 ナ キ ヲ論 シ タ レ トモ 、 猶 書 サ ・ル 所 ア ル ヲ 以 テ、

愛 ニ ハ 其 余 論 ヲ述 フ ヘ シ、 前 篇 ニ テ 、 事 務 分 掌 ノ 事 ヲ論 シ、 分 チ テ 四 項 トナ シ タ リ、 此 四 項 ノ 中 、 第 一 、 第 ニ ハ 、 内 外 正 変 ノ 別 ア リ錐 トモ 、 要 ス ル ニ 、 政 府 合 法 上 ノ責 分 ニ シ テ 、

(21)

西 周 「人 生 三 宝 説 」 を 読 む(三) 21

政 府 ノ 以 テ 政 府 タ ル 義 務 ヲ壼 ス ・\ 此 二 項 二 在 リ、 而 テ 第 三 項 ノ 事 務 ハ 、 … … 」(五 三 八 頁)と 記 さ れ 、 さ らに 「而 テ 第 四 項 ノ 事 務 二 就 テ 、 … … 」(五 四 一 頁)と 続 い て い る か ら で あ る。

(9)な お こ の 目 的 と方 略 に っ い て は 、 後 の 明 治 一 七 年 五 月 に 『東 京 学 士 会 員 雑 誌 』 に 発 表 し た

「論 理 新 説 」 と い う論 考 が あ り、 そ の 中 に も次 の よ う な 表 現 が 見 ら れ る。 学 を 西 独 特 の 表 現 に よ る観 門(=理 論 的 学)と 行 門(=実 践 的 学)に 区 分 し た 観 点 に 則 して 語 っ て い る。

「… … 即 チ 目 的 〔エ イ ム〕 及 ヒ方 便 〔ミ イ ン ス 〕 ト云 フ事 ナ リ、 此 ニ ッ ハ 行 門 ノ 論 理 二 欠 ク可 ラ サ ル モ ノ ニ シ テ 、 先 ッ 目 的 ヲ審 ニ シ テ 後 二 之 二 達 ス ル ノ 方 便 ヲ講 明 ス ル コ ト・\ 讐 ヘ ハ 目 的 ハ 即 チ 鵠 的 ニ シ テ 、 方 便 ハ 即 チ 弓 矢 ナ リ、 其 正 鵠 ハ 易 フ可 カ ラ ス ト錐 トモ 、 弓 矢 ハ 種 々 ノ種 類 二 分 ッ可 シ 、 … … 」(『西 周 全 集 」 第 一 巻 、 五 七 六 〜 七 頁)。 「人 生 三 宝 説 」 の 約 七 年 後 の も の な の で 、 こ こ で の 解 釈 に は 、 拙 稿 は 援 用 せ ず に 、 単 に 指 摘 す る に と ど め て お く。 「論 理 新 説 」 に っ い て 触 れ た も の と して 、 小 泉 仰 「西 周 と 欧 米 思 想 と の 出 会 い』(三 嶺 書 房 、 一 九 八 九 年)第 六 章 第 四 節 、 「西 周 の 「行 門 の 論 理 」 とそ の 適 用 」(三 一 一 頁 〜 三 三 〇 頁)参 照 。

(10)こ の 箇 所 の 「果 サ ム 」 と読 ん だ 部 分 は 、 全 集 本 に よ る と、 日偏 に 卸 と い う字 が 使 わ れ て い る が 、 諸 稿 の 『大 漢 和 辞 典 』 を は じ め 、 数 種 の 漢 和 辞 典 に あ た って み た が 、 い つ れ の 辞 典 に も載 って い な い 漢 字 で あ り、 正 確 な 読 み は 不 明 。 な お 、 植 手 通 有 も現 代 語 訳 に あ た っ て

「責 任 を は た さ ん と欲 せ ば 」 と読 ん で い る 。(中 央 公 論 社 、 日 本 の 名 著34『 西 周 、 過 当 弘 之 」 二 四 七 頁)

(11)『 学 問 の す \ め 」(岩 波 文 庫 、 一 九 九 七 年)か らの こ の 前 後 で の 引 用 は 頁 数 の み 記 す 。 『文 明 論 之 概 略 』(岩 波 文 庫 、 一 九 九 五 年)に っ い て も 同 様 。

(12)「 国 民 気 風 論 」 に つ い て は 、 前 々 稿(『 明 六 雑 誌 と そ の 周 辺 』 所 収 、 三 六 〜 八 頁)を 参 照 。 た だ し、 「内 地 旅 行 論 」(『明 六 雑 誌 』 二 十 三 号 、 明 治 七 年 十 二 月)に お い て 、 前 稿 で 触 れ た よ う に 、 「御 一 新 後 七 年 ト云 フ 星 霜 ヲ経 テ 人 間 ノ 身 体 モ 骨 力 カ ラ 変 ッ タ」 と い う見 解 を 示 して 、 国 民 の 気 風 が 変 っ た か の よ う な 言 い 方 を して い るが 、 これ は 福 沢 に よ り批 判 さ れ て い て 、 西 と 福 沢 は 見 解 が 異 な る と し た 方 が 良 い の か も しれ な い 。

(13)ヘ イ ブ ン ス 、 前 掲 書p.160.

(14)こ こ で 言 わ れ て い る 例 は 、 確 証(福 沢 が 読 ん だ と い う)は な い が 、 『平 家 物 語 』 中 の 「富 士 川 合 戦 」(岩 波 日 本 古 典 文 学 大 系32、 『平 家 物 語 上 」 三 七 三 〜 四 頁 。)に お け る 平 家 方 敗 走 な ど が 念 頭 に な い だ ろ うか 。

(15)神 田 、 津 田 に っ い て は 、 前 稿 で 、 民 撰 議 院 論 争 と の か か わ りで 簡 単 に触 れ た 。 前 稿 「西 周

(22)

(16) (1?}

(is)

(19)

「人生 三 宝 説」 を 読 む」(二)、 神 奈 川 大学r人 文研 究」 一 五 七 号 二 七 頁。

学 問 の すaめ 」(岩 波 文 庫 、 一 九 九 七 年 、 四一 頁)

同右 、六 五 頁 。 「… …一 国 の人 民 は即 ち政 府 な り。 そ の故 は一 国 中 の人 民 悉 皆政 を なす べ き もの に非 ざ れ ば、 政 府 な る もの を設 けて これ に 国 政 を任 せ、 人 民 の名 代 と して事 務 を取 り扱 わ しむ べ し との約 束 を定 め た れば な り。故 に人 民 は家 元 な り、 主 人 な り。 政府 は名 代 人 な り寸 また 支 配 人 な り」。 た だ し福 沢 は神 田 の 主 張 とは異 な り、民 撰 議 院 を前 提 に社 会 契 約 的 な考 え を述 べ て い るの で は な い こ とに注 意 す る必 要 が あ るが 。 福 沢 は こう も言 って い る。 「… … 国民 の 総 代 と して政 府 を 立 て 、善 人 保 護 の職 分 を 勤 め しめ、 そ の代 と して 役 人 の 給 料 は勿 論 、 政 府 の 諸 入 用 を ば 悉 皆 国 民 よ り賄 うべ し と約 束 せ し こ と な り。 … …」

(同五 四頁)。 「… … 元 来 人 民 と政 府 との 間 柄 は、 も と同 一 体 に て そ の職 分 を 区別 し、 政 府 は人 民 の名 代 とな りて 法 を施 し、 人 民 は必 ず この法 を守 る べ しと、 固 く約 束 した る もの な り。 讐 え ば今 、 日本 国 中 にて 明 治 の年号 を奉 ず る者 は、 今 の法 に従 うべ し と条 約 を結 び た る人 民 な り」(同 二 五 頁)。 虚 構 の社 会契 約 説 と言 わ れ る由縁 で あ る。

会 計 検 査 の 部 局 を 置 く点 で 、 津 田 の 主 張 も同 じで あ る。 『明 六 雑 誌 』 第 十 五 号(明 治 七 年 八 月)の 政 論 四 」 で 津 田 は そ の 設 置 を 神 田 と は異 な っ た理 由 で こ う述 べ る。 「… … (西洋 諸 国 で は)夫 ノ歳 出 歳 入 ノ総 額 等 国家 ノ大 会計 ハ 特 二民 撰 議 院 ノ監 督 ス ル所 ナ リ然 リ而 シ テ此 ノ如 キ国家 ノ大 会 計 ハ珀 細 ナ ル諸 会計 ノ合 計 総 額 ナ リ… …然 ル ニ此 ノ如 ク珀 末 ノ事 ヲ査 勘 ス ル ハ 国家 ノ大 政 ヲ議 シ天 下 ノ大 事 ヲ論 スル議 法 員 ノ間(=閑)暇 ナキ所 ニ シ テ且 其 能 ク為 ス 所 二非 ズ」(傍 点 筆 者)だ か ら 「統 計 院(=会 計 監 査 院)」(以 上 七 ・オ) を設 けて い る の だ と述 べ て 、 そ れ は わ が 国 の 「大 蔵 省 内 検 査 寮 」(七 ・ウ)に 類 す る もの だ け れ ど も、 こ の検 査 寮 は種 々 の 理 由 か ら うま く機 能 しな い の で 、 「方 今 ノ計 ヲ為 ス太 政 官 直 隷 特 立 ノ統 計 院 ヲ建 テ欧 州 各 国該 院 ノ規 則 ヲ酌 量 シテ章 程 ヲ定 メ官 省 院 使寮 司府 県鎮 台(=陸 軍)提 督 府(=海 軍)裁 判所 官 立 学 校 国 立 銀 行 等 一 切 ノ会 計 細 大 遺 ス所 ナ ク本 院 二 送 致 シ本 院 二於 テ復 算 検 校 シ鏑 鉄 ノ差 モ之 ヲ訂 正 シ機 密 明 亮 ナ ル報 知 表 ヲ作 リ… …」

(七 ・ウ〜八 ・オ)と す るの が良 い、 と提 案 す る。

会 計 検 査 及 び 国債 に っ い て、 さ らに若 干 時 期 はず れ るが 明六 社 以 外 の人 、小 野 梓 の見解 に こ こで 触 れ て お こ う。 小 野 は 『国 憲 汎 論 』(明 治 九 年 五 月起 稿 、 同 十 五 年 八 月脱 稿 。 引 用 は早 稲 田 大 学 大 学 史 編 集 所 編 の 「小 野 梓 全 集 』 第 一 巻 、一 九 七 八 年 、 に よ る。)の 第 四 十 一 章 「会 計 の事 を 論 ず 一 」 で 会計(=財 政)に っ い て論 じて い るが

、 そ こで は、 会 計 と 政 治 との 関 係 、 会 計 の 予 算 、租 税 の賦 課 、 国 債 の募 集 、 会 計 の検 査 等 にっ いて 触 れて い る の で 後二 者 につ いて 見 て い くこ と にす る。

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