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3. 立体映像撮影用アダプタの試作による撮影法の検討

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3. 立体映像撮影用アダプタの試作による撮影法の検討

3.1 本章の目的

 本章の目的は,簡易な立体映像撮影を可能とする制作環境を構築することであり,その ために,立体映像特有の課題点に着目し,立体映像制作者が使いやすい立体映像撮影用ア ダプタの試作を行った.それにより,非専門家である一般ユーザによる立体映像撮影の,機 会と制作環境の提供を可能とすることが期待できる.

 立体映像は,左右眼で視差のある空間を見ているのと同様に,水平方向に視差のある二 つの映像を記録することにより制作される.そして,立体映像を撮影するための機材は,大 きく二つに分類することができる(表 3.1).一つは,左右の視差映像を記録するために二 つの撮像管を必要とするタイプである.つまり,立体映像撮影に特化したビデオカメラで ある.例えば,LK-33(池上通信機)は,二つの撮像管と映像記録部が一体となった立体映 像撮影用カメラであり,KS-55ZS(レッツコーポレーション)は,映像記録部はもたない立 体映像撮影用レンズユニットである.これらは一般に,大掛かりな機構が必要で高価であ るという特徴がある.

 もう一方は,既存のビデオカメラに装着することで立体映像撮影を可能とするアダプタ 型のタイプである.つまり,通常の映像撮影に使われているビデオカメラを用いて,それ に付加する形で,立体映像撮影を可能とする機構となっている.例えば,荻野らにより開 発された立体映像撮影用レンズは,ディジタルカメラ用の交換レンズであり,左右対称に 配置されたレンズ系により,視差映像の撮像が可能となっている54).また,NuViewは,民 生用ビデオカメラに装着するタイプの立体映像撮影用アダプタ(以下,立体アダプタ)で あり,比較的簡易な立体映像撮影が可能となっている.これらは,既存のビデオカメラを 利用することから,立体映像の制作環境を比較的容易に構築することが可能であり,加え

表3.1 撮像方式による立体映像撮影機材の分類

撮像管型

アダプタ型

視差を生じさせる機構

2つの撮像管を配置 して物理的に構成

レンズやミラーを利 用して光学的に構成

高度な調整が必要 左右映像の画質調整

1つの撮像管に記録さ れるため基本的に不要

価格 主な対象

プロフェッショナル

一般ユーザ 複雑で高価

簡易で安価

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て,ズーム機能やフォーカス機能などをビデオカメラ部に依存することで,その機構を簡 易化することが可能である.また,機構の簡易化により,低コストでの生産が期待できる.

 本研究では,立体映像に関する専門家だけではなく,家庭用ビデオ撮影を行うような一 般のユーザに対して,広く,立体映像メディアの普及を目標としているため,低コストで 簡易な機構により立体映像撮影を実現できるアダプタ型を,試作の対象とした.具体的に は,従来型の当該立体アダプタのユーザビリティを調査した上で,問題点を抽出し,それ らを改善したユーザフレンドリーな立体アダプタの設計を行った.それにより,立体映像 制作者にとって使いやすい立体アダプタを試作した.

3.2 立体映像撮影用アダプタの試作 3.2.1 立体アダプタを用いた撮影システム

 試作の対象とした立体アダプタでは,カメラのレンズ前部に設置されたハーフプリズム の反射と透過を,液晶シャッタで制御することにより,左右の視差画像を NTSC 信号の フィールド毎に切り替え,立体映像信号の入力を行っている(図 3.1).それにより,既存 の,カメラやレコーダを2台使用するシステムなどと比較して,立体撮影システムの簡易 化とコストの軽減を可能としている.なお,この撮影システムは,既存の従来型アダプタ

(NuView, 3D Video Inc.)と基本的に同様であるため,本研究にあたっては,従来型アダプ タにおける問題点を調査し,それらを改善するとともに,立体映像制作者が使いやすい立 体アダプタの設計を検討した.

撮像管 左画像 右画像

平均的な 瞳孔間隔

左右分離

左画像 液晶

シャッタ

右画像

透過 反射

60Hzで

切り替え 撮像管へ

全反射 ミラー

ハーフプリズム

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3.2.2 従来型アダプタの選定と特徴

 同様な撮影システムを有する従来型アダプタとして,NuView(3D Video Inc.)を選定し た.この従来型アダプタは,民生用のビデオカメラに取り付けるタイプであるため,簡易 なシステムとして,立体撮影に比較的広く用いられている.また,ズームやオートフォー カスといったカメラ固有の機能を維持することが可能であるといった特徴があり,通常の ビデオカメラ操作を行うのと同じ感覚で,立体撮影を行うことができる.

 しかしながら,このように比較的簡易な立体撮影を可能とするアダプタであるが,アダ プタの構造に起因した問題点がいくつか指摘される55).図3.2に,従来型アダプタの構造と,

主な3つの問題点を示した.

図3.2 従来型アダプタの課題点

 1つめの問題点は,従来型アダプタでは,交差法による立体感の調整方法として,全反 射ミラーのみで光軸を変化させるため,左右の光軸角度に差異が生じることである.その ため,特にカメラをパン操作した時に,映像の立体感に違和感を生じさせることが予想さ れている47)

左右の光路長が異なるため,近距離撮影 時の左右の被写体の大きさが異なる.

1

2

片側のみで光軸を変化させるため,パン させた場合に違和感が生じる.

3

反射像側の画角が狭いため,ケラレが発 生する.

左画像 右画像

3 2

1

液晶 シャッタ

ハーフ プリズム

全反射 ミラー

(4)

 2つめの問題点は,カメラのズームをワイド端付近にした時に,ケラレが発生すること である.ケラレとは,反射像側の画角が狭いために発生する映像の欠損のことであり(図 3.3),このケラレをなくすためには,通常,カメラをズームアップさせて調整しなくてはい けない.

 3つめの問題点は,近距離撮影において被写体の大きさに差異が生じることである.こ れは,左画像の光路長が,右画像の光路長よりも,基線長分だけ長いために発生する.つ まり,被写体までの距離が数メートル程度以上の場合にはその影響は少ないが,1メート ル以内といったような近距離の場合,左画像の被写体が,右画像と比較して小さく撮像さ れてしまうという問題点である.

図3.3 映像の周辺部に発生するケラレ

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3.2.3 立体映像の撮影方式

 立体映像の撮影方式には,光軸を平行にする方式(平行法)と光軸を交差させる方式(交 差法)がある(図 3.4).交差法による撮影では,光軸の交点に位置する被写体が,映像再 生時に呈示画面上に再現されるため,立体感の調整を撮影時にコントロールすることがで きる.そして,基本的に撮影後の画像処理などが不要であるため,立体撮影方式として多 くの場面で用いられている.しかしながら,撮影時に立体感の調整が必要であることから,

立体感に関する映像構成を予想するための,立体映像撮影の経験や知識が必要とされる.さ らに,交差法の場合,撮影によりキーストーンひずみが発生するため,左右映像に垂直視 差が発生し,映像自体を見にくくしてしまうことがある.キーストーンひずみは,カメラ 間隔が大きいほど,あるいは,被写体までの距離が短いほど顕著に発生し,そのひずみは 画面の端の部分で最大となる.一方,平行法は,撮影・再生条件を適正に設定することで,

立体像の歪みがない空間を再現できることが立証されている56).その場合,再生時におい て,左右画像が水平方向に適正にシフトされている必要があるため,再生機器による調整,

あるいは立体映像自体の補正などを行う.また,平行法では,撮影時における立体感に関 する映像構成が不要となるため,立体映像撮影の経験が少ないユーザによくある,過度な 視差を付けてしまうといったような失敗を軽減できると考えられる.

 本研究では,従来型アダプタで用いられている,交差法による撮影方式ではなく,平行

左眼用撮影 右眼用撮影 左眼用撮影 右眼用撮影

図3.4 立体映像の撮影方式(左:交差法,右:平行法)

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法による撮影方式を採用し,立体アダプタの設計を行った.平行法の採用により,適正な 立体映像空間を再現させる必要条件を満たし,従来型アダプタの一つの問題としてあげら れる,全反射ミラーのみで光軸を変化させることによる立体感の差異を解消した.また,映 像再生時の視聴環境に関しては,立体映像の編集時にソフトウェア57)を用いて,視聴時の 呈示画面の大きさに対応させて,左右画像を水平方向にシフトさせることにした.

3.2.4 従来型アダプタの評価

 立体映像制作者の意見を立体アダプタの設計に反映させることを目的として,従来型ア ダプタの操作性や問題点に関して,インタビュー法によるユーザビリティテストを行った.

評価の対象者は,立体映像の撮影経験を有する大学生及び大学院生10名であり,評価にお いては,実際の撮影を想定し,従来型アダプタを操作しながら,自由な回答を求めた.そ の結果,従来型アダプタの主な問題点として,ケラレの発生や,立体感の調整の困難さ,垂 直視差の補正の困難さなどがあげられた.垂直視差とは,左右の映像における垂直方向の ずれのことであり,これは自然視においては存在しないため,視覚負担を大きくする要因 とされている.そのため,立体映像の撮影時において,この垂直視差が発生しないように 補正する必要がある.

 回答結果からは,特に,ケラレの発生が気になるという意見が複数の被験者から聞かれ た.具体的には,「ケラレの除去を考えて撮影するのが負担になる.」,「ケラレの発生に気 付かずに撮影してしまったことがある.」といった意見である.さらに,具体的な撮影状況 を想定し,「ケラレをなくすために画角を広くとれないから,撮影場所が狭く,後ろにあま り引けないときに困る.」という指摘もあった.

 評価結果から,ケラレの発生により,ユーザに撮影における手間や負担を増加させ,映 像表現やカメラワークにいくらかの制限を与えてしまうことが確認された.そこで,本研 究においては,ケラレの発生しない光学設計を前提とし,従来型アダプタのユーザビリティ テストにより抽出された,これらの問題点を解決するための検討を併せて行った.

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3.2.5 立体アダプタの基本構成

 立体アダプタの設計を行うにあたり,平行法を用いることと,ケラレの発生をなくすこ とに加え,従来型アダプタのいま一つの問題点としてあげられる,近距離撮影における被 写体の大きさの差異を解決することを検討した.

 これらの問題の解決として,光路長の差をなくすために,立体アダプタ内の全反射ミラー を,撮像管位置に対して左右対称の位置に配置する構成や,全反射ミラーを組み合わせる 構成を検討した(図 3.5).しかしながら,左右対称型においては,光量計算の結果,使用 するクロスハーフプリズムでは,光が均等に透過しないことが分かった.また,全反射ミ ラー組み合わせ型においては,光路計算の結果,ケラレの発生しない条件とするためには,

左右の全反射ミラーの大きさがそれぞれ1メートル以上となり,立体アダプタのサイズが非 実用的な大きさとなることなどが分かった.そのため,これらの構成方式は不採用とする ことにした.

 そこで,試作する立体アダプタの要求項目を解決するために,撮影距離50cmと100cm用 の2種類の補正レンズを用意し,それらを必要に応じて配置することで被写体の大きさを 同一にすることが可能な構成を考案し,立体アダプタの基本構成に決定した(図 3.6).

図3.5 検討した立体アダプタの構成(左:左右対称型,右:全反射ミラー組み合わせ型)

撮像管 壁ブロック

全反射 ミラー

クロス

ハーフプリズム 液晶

シャッタ

フード

全反射 ミラー

撮像管 全反射

ミラー ハーフプリズム

液晶 シャッタ

フード 全反射ミラー

右画像 左画像

(8)

3.2.6 立体アダプタの光学設計

 立体アダプタの大型化を避けるために,フィルター径 37mm のディジタルビデオカメラ

(DCR-PC110,SONY)を対象として,最も小型化が可能な条件を光学設計した.具体的に は,対象としたビデオカメラの画角計測後に,コンバージョンレンズ使用の有無,ハーフ ミラーあるいはハーフプリズムの使用の有無,及び反射面傾斜角度について,表3.2に示し た9条件に関して,光路計算による検討を行った.

図3.6 立体アダプタの基本構成

表3.2 光学設計における検討条件 撮像管

全反射ミラー

ハーフプリズム 液晶シャッタ

フード 補正レンズ

配置条件 コンバージョンレンズ ハーフミラー/ハーフプリズム 反斜面傾斜角

1 なし ハーフミラー式 45°入射

2 プリズム式 45°入射

3 プリズム式 49°入射

4 プリズム式 50°入射

5 プリズム式(硝材変更) 49°入射

6 2倍コンバージョンレンズ ハーフミラー式 50°入射

7 2倍コンバージョンレンズ プリズム式 50°入射

なし なし なし なし

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 その結果,コンバージョンレンズの有無に関わらず,ハーフプリズムを使用しない場合 は光線の広がりを抑制できず,サイズが大きくなってしまうことが分かった.また,テレ・

ワイドのいずれにしても,コンバージョンレンズを付加することで,ハーフミラーあるい はハーフプリズムに対するフィルター系が大きくなるために,立体アダプタのサイズが大 きくなってしまうことも明らかとなった.さらに,通常,ハーフプリズムに使用される硝 材よりも屈折率の高い硝材を使用する場合(条件5)は,全体のサイズはわずかであるが 小型化でき,とりわけハーフプリズム自体を小型化できることが分かった.そこで次に,使 用する硝材に関して検討した.屈折率,分散常数,および生産頻度の高さなどを考慮した 結果,LaC14(屈折率:1.69680,分散常数:55.5)を選定することにした.分散常数とは,

数値が低いほど分散による色収差発生が少ないことを表している.なお,一般的に使用す る硝材は BK7(屈折率:1.51623,分散常数:64.1)であり,他の硝材による製造は希少で あるといえる.

 以上の検討を経て再計算を行い,コンバージョンレンズは使用せずハーフプリズムを使 用し,反斜面傾斜角度を48°とし,硝材に LaC14を選定することで,立体アダプタを効率 的に最小とできることが分かった.そして,それらをふまえた上,立体アダプタの構成,液 晶シャッタ,補正レンズなどの配置を含めた光学計算を再び行った結果,反射像側のケラ レが発生しない最短基線長が90mmであることが分かった.図3.7に,基線長を90mmとし,

液晶シャッタや補正レンズなどを配置した構成を示した.この条件においては,左右の画 角がともに40°となり,ビデオカメラをワイド端(広角)にした場合でもケラレが発生し ない.

40° 40°

全反射ミラー 補正レンズ ハーフプリズム

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3.2.7 立体アダプタの機構設計

 機構の設計にあたっては,従来型アダプタを対象としたユーザビリティテストの結果を ふまえ,ケラレの発生,立体感の調整方法,垂直視差の補正方法を改善することを目的と した.

 本アダプタの光学設計より,カメラ側の焦点距離がワイド端において,反射側光線のケ ラレが発生しない基線長は 90mm であることが分かったが,それは,平均的な瞳孔間隔で ある 65mm を上回っている.この基線長とは左右のカメラレンズ間隔に相当するものであ り,カメラレンズ間隔と瞳孔間隔の比率により,再生される立体映像空間が拡大縮小する ことが知られている58).したがって,立体映像空間の再現性の観点からは,基線長は,瞳 孔間隔と等しいことが望ましいと言えるが, 90mm以下にした場合,ケラレが発生する.し かしながら,前述のユーザビリティテストでは,ケラレの発生への不満が多かったことか ら,本アダプタでは,左右の光線の平行状態を保持しながら,ユーザが基線長を 65mm か ら90mmの範囲で調整できるよう,全反射ミラーのスライド機構を付加することにした(図 3.8).これにより,常に平行法の条件を維持できるため,ユーザによる撮影時の立体感の調 整は不要となった.

 また,垂直視差の補正にあたっては,ダイアルを設置することで,簡易に調整可能な機 構とした.さらに,近距離撮影における被写体の大きさの差異を解決するために,近距離 撮影時に,必要に応じて補正レンズを付加できる機構とした(図 3.9).

移動ギア スライド軸

全反射ミラー 全反射ミラー

移動ダイアル

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図3.9 立体アダプタの機構

(上:基線長の調整,左下:垂直視差の調整,右下:近距離撮影用補正レンズの付加)

全反射ミラー 移動ダイアル

調整ダイアル

補正レンズ

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3.3 立体映像撮影用アダプタの評価

 本アダプタの使用感を,従来型アダプタと比較検討することを目的として,ユーザビリ ティテストを行った.具体的には,本アダプタと従来型アダプタのそれぞれをディジタル ビデオカメラに装着することで立体映像撮影の環境を用意し,被験者に実際の撮影を想定 したカメラ操作をさせた(図3.10).なお,被験者は,従来型アダプタを用いた立体映像の 撮影経験を有する大学生及び大学院生 10 名であった.

 インタビュー調査は,本アダプタと従来型アダプタの相違点を説明しながら,以下の4項 目に関して質問し,記述を行った.

 1)ケラレと本体の大きさ,及び撮影時のズーム機能に関して  2)垂直視差の補正に関して

 3)立体感の調整に関して

 4)近距離撮影用の補正レンズに関して

 また,各項目に対して以下の説明を行った.1)においては,従来型アダプタはケラレ 図3.10 評価実験の様子

試作した

立体アダプタ 従来型 立体アダプタ

(13)

いということ.2)においては,従来型アダプタはレンチで行うが,本アダプタはダイア ルにより行うこと.3)においては,従来型アダプタは撮影時に立体感の調節を行うが,本 アダプタは撮影時に立体感の調節を行わず,後から観察条件に合わせて適正に調整をする ということ.4)においては,従来型アダプタは接写撮影に対応できないが,本アダプタ は 50cmと 100cm の撮影距離において,被写体の大きさを同一にできるということ.

 さらに,2種類のアダプタによる映像は,それぞれ21インチテレビモニタにより,リア ルタイムで立体映像観察ができるようにし,立体感の確認をすることもできるようにした.

なお,その際の立体映像観察は,液晶シャッタメガネを用いた時分割方式であった.

 結果から,垂直視差の補正については,従来型アダプタよりも,大きく改善されている ことが認められた.立体感の調整に関しては,平行法による撮影条件によって適正な立体 感が得られるならば,調整が不要である点において望ましいという意見が多かった.また,

本アダプタの小型化とケラレの除去という,現状では相反する要件については,意見が分 かれた.この点については,目的に応じて制作者が適宜使用できるよう,選択肢として複 数の立体アダプタを用意することが望ましいと考察された.主なインタビュー結果を,表 3.3 に示した.

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表3.3 インタビューの結果

ケラレと本体サイズ,及び撮影時のズーム調整に関して

・撮影時にケラレても,編集時に直せるならコンパクトな方がいい.

・映像のクオリティにこだわって,アダプタが大きくてもいい.

・本アダプタは移動用としては大きい.従来型アダプタは携帯性がいい.

・大きさに関係なく,ケラレはユーザが撮影時に気を付ければいい.

・本アダプタにおいて,光軸間隔を90mmにした時の立体感は不自然ではないかと思う.

・1台で,交差法撮影と平行法撮影ができるといい.

・本アダプタは,大きくて怖く,安全性が低い.

垂直視差の補正に関して

・本アダプタの方が使いやすい.

・従来型アダプタの場合は,レンチを挿すのに位置を探らなければならなく大変だった.

・レンチをなくすと大変だと思っていたので,その点でも(本アダプタは)改善された.

立体感の調節に関して

・従来型アダプタにおいては,特に,ズームをかけたときの立体感の調節が難しい.

・本アダプタは,奥行き方向に動いているものの撮影に適しているのではないか.

・撮影時の立体感調節は難しいから,後で適正に,そしていろいろと変更できる方がいい.

・気軽に撮ってすぐに見たいときは,従来型アダプタが便利.

・従来型アダプタは撮影時に仕上がり(立体感)が分かるのでいい.イメージしやすい.

・一発撮りなど,立体感の調整が難しいときは,本アダプタがいい.

近距離撮影用の補正レンズに関して

・補正レンズを使わずに,後から編集できるならそれがいい.

・補正レンズを割ってしまう可能性があり,不安感がある.

・近くのものの大きさは適正になるが,背景の遠くのものがズレる.

・やはり同じ大きさに撮れた方がいい.それの方が見ていて疲れないと思う.

・手前をうまく立体にしたいときに必要.

・映像表現の幅が出る.

・別パーツになっているのが不満点だ.切り替えスイッチなどの利用で,一体化できないか.

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3.4 まとめ

 本研究では,立体映像制作者の視点から,時分割方式で入力するための立体アダプタの 設計を検討し,その試作を行った.またその際,従来型の当該アダプタの主な問題点を解 決し,使いやすい機構とした.本アダプタの主な特徴は,以下の5点である.

 1)平行法による立体撮影が可能である.

 2)ケラレのない撮影が可能である.

 3)補正レンズの使用により,近距離撮影時の左右の被写体の大きさが同一となる.

 4)垂直視差を容易に調節できる.

 5)基線長を 65mm から 90mm の範囲で変更できる.

 評価実験の結果からは,従来型アダプタよりも使いやすいことが認められたが,その一 方で,実用性という観点から,アダプタの小型化に関してさらに検討する必要性があげら れた.また,用途や被写体に応じて撮影方法・機材を選択するなどと柔軟な方法も検討す る必要性が示唆された.

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