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パッシブサーモグラフィ法による欠陥検出と降雨の関係

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Academic year: 2022

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(1)

パッシブサーモグラフィ法による欠陥検出と降雨の関係

中央工学校 正会員 ○ 金光 寿一 日本大学 正会員 柳内 睦人

1.はじめに

サーモグラフィ法から連続したコンクリートの内部診断を行う場合には,太陽光を利用したパッシブ法が 有効である.しかし,気象条件は晴れ,曇り,雨の繰り返しが日々変化するため,最適な診断を行うために は,特に降雨後の診断について明らかにしておく必要がある.一般に,雨がコンクリートに浸透して日射を 受けると気化熱によって表面温度は低下することになるが,一方では水はコンクリートの 2 倍の熱容量を持 ち,含水率が高いほど熱伝導率も大きくなるという特性がある.従って,降雨後の気象条件によっては内部 の水分が欠陥検出に有効に働くことが期待される.そこで,本研究では実測された日々変化する気象条件か ら降雨後の内部診断への有効性について検討した.

2.日射量とコンクリート温度との関係

日射量とコンクリート温度のデータは横浜市港北 区役所から提供されたものである.区役所屋上ではヒ ートアイランド現象の緩和や省エネ対策に繋がる事 業として緑化内部温度及びコンクリート表面温度(水 平面)が 1 分間隔で計測されている.図-1は 2006 年 8 月 1 日から 31 日まで計測されたコンクリート表面の 最大上昇温度と最大温度までの日射積算量との関係 である.なお,この最大上昇温度は最大温度から日の

出時刻の温度を減算したものである.その結果,図-1に示すようにコン クリートの最大上昇温度は日射積算量とほぼ比例関係にあるように思 われるが,17 日,31 日,14 日及び 10 日は同日射積算量で比較すると 5℃

以上も大きい特異な上昇温度を示している.これらに共通する気象条件 は,前日あるいは前々日が雨天となっている.その降雨量では,9 日は 103mm/日の大雨で,14 日の前々日となる 12 日は 20mm/日,16 日は 14mm/

日,また 17 日は 18.5mm/日で朝の 8:00 頃まで降っている.また,30 日 は時刻 15:40~16:00 まで 0.5mm/日の降雨量であった.

特に,10 日は日射積算量が少ない割には 8 月で最も上 昇温度が大きくなっており,降雨後に晴天の場合には診 断への有効性が認められる.

3.水中含漬実験による健全部と欠陥部温度

実験に供した試験体は,縦 300×横 300×高さ 210mm で,内部欠陥として縦 100×横 100×厚さ 5mm の空洞を 深さ 20mm(No.1 試験体),30mm(No.2 試験体),40mm(No.3 試験体)の位置に設けたものと欠陥のない標準試験体 (No.4 試験体)である(図-2参照).降雨を想定したコン

キーワード:サーモグラフィ法,気象条件,降雨,日射量,コンクリート温度

連絡先:〒275-8575 千葉県習志野市泉町 1-2-1 日本大学土木工学科 TEL047-474-2441 E-mail:yanai@cit.nihon-u.ac.jp 図-2 試験体(No.1)

300

210

100 100

20185

100 単位:mm

5

0 200 400 600 800 1000

0:00 10:00 20:00 6:00 16:00 時刻

日射量(W/m2 )

0 5 10 15 20 25

外気温(℃)

日射量 気温

13日 14日

図-3 日射量と外気温

図-1 コンクリート上昇温度と日射積算量(8 月) 0

1000 2000 3000 4000 5000

1 4 7 10 13 16 19 22 25 28 31 日

最大温度まの日射 算量(W/m2 ・h)

0 5 10 15 20 25

最大上昇温度(℃)

日射積算量 上昇温度

    

5-162 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

-323-

(2)

クリートへの吸水は,打設後 28 日間水中養生し,その 後 1 ヶ月間室内で気中養生を続けた後に,3 日間を測定 面のみ水に浸した.実験は,2007 年の 11 月 13 日と 14 日の両日で,13 日の時刻 6:45 に試験体を水槽から取り 出して表面の水滴を拭き取り,時刻 7:00(日の出時刻 6:20)より赤外線カメラによる温度測定を開始し 14 日の 17:00 まで行った.図-3に日射量と外気温を示す.含水 率 の 測 定 は コ ン ク リ ー ト モ ル タ ル 接 触 型 水 分 計

〔(HI-520):高周波容量式,測定範囲 0~12%〕にて行っ た.各試験体の含水率は,13 日の時刻 7:00 で 5.15%,

実験を終了した 14 日の 17:00 で 4.56%であった(深さ 40mm までの平均値).写真-1に 13 日の時刻 13:00 に得 られた熱画像を示す.No.1 試験体(欠陥深さが 20mm)は,

欠陥の位置に高温域を確認することができるが,No.3 試 験体(深さ 40mm)については視覚的に欠陥の位置を確認 することは困難になっている.図-4(a),(b)には日射積 算量と試験体中心位置の上昇温度との関係を示す.欠陥 のない No.4 試験体の両日を比較すると,13 日の上昇温 度では実験開始時刻 7:00 からの上昇温度勾配は表面の 湿気及び気化熱によって緩やかに変化し,800W/m2・h(時 刻 9:40)以降から 14 日に比べて大きくなっていることが 分かる.一方,最大温度からの降下勾配は僅かではある が緩やかになっている.図-5(a),(b)に最大温度となっ た試験体中央位置の温度差分布を示す.その両日の温度 差変化は,13 日の方が欠陥部位置の温度差も大きく,ま た欠陥深さ 40mm の No.3 試験体もその温度分布変化の特 徴から欠陥を評価できる.また,最大温度差となる時刻 では 13 日の方が早く現れている.各試験体の温度差の 比較では,欠陥のない No.4 試験体(健全箇所)は 0.3℃程 度の差であるが,No.1 の欠陥部では 1.2℃程度の差とな っており,降雨後に晴れの場合の診断が欠陥部の検出に 有効であることが確認できる.日射による蓄熱量は健全 部では深さ方向にも熱拡散することになるが,欠陥部前 面では空洞・空隙が熱移動を遮断して残留水分が熱媒と なり,より蓄熱量が増大したものと考えられる.

4.まとめ

(1) コンクリートの上昇温度は,日射積算量とほぼ比 例関係にあり,特に降雨後には同日射積算量で比較す ると 5℃以上も大きい特異な上昇温度を示した.(2) 水中浸漬実験では,健全部よりも空洞・空隙を有する 欠陥部の上昇温度差の方が大きくなり,降雨後の診断

が欠陥検出に有効であることが分かった. 図-5 温度分布変化

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

0 50 100 150 200 250 300

寸法(mm)

温度分布(℃)

No.1(12:10) No.2(12:20) No.3(12:10) No.4(12:30)

欠陥の位置

(a)13 日

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

0 50 100 150 200 250 300

寸法(mm)

温度分布(℃)

No.1(12:50) No.2(12:40) No.3(12:40) No.4(12:40)

(b)14 日

0 5 10 15 20

0 1000 2000 3000 4000

日射積算量(W/m2・h)

上昇温(℃)

No.1 No.2 No.3 No.4

(a)13 日

図-4 日射積算量と上昇温度

0 5 10 15 20

0 1000 2000 3000 4000

日射積算量(W/m2・h)

上昇温度(℃)

No.1 No.2 No.3 No.4

(b)14 日

写真-1 13 日の熱画像(13:00)

5 15 20 25 30 35

10

(a)No.1 (b)No.2 (c)No.3

5-162 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)

-324-

参照

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