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チューブリン結合性天然有機化合物の 全合成研究

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(1)

チューブリン結合性天然有機化合物の 全合成研究

Synthetic Studies on the Tubulin-binding Natural Products

2005年 3 月

早稲田大学大学院理工学研究科

生命理工学専攻  活性分子有機化学研究

鈴木  孝洋

(2)

目次

緒論 本論

1章  (+)-Phomopsidinの全合成 1節  序論

2節  合成研究

3節  分子内Diels-Alder反応を用いた中心骨格の合成 4節  Transannular Diels-Alder反応を用いた中心骨格の合成 5節  Phomopsidinの全合成

2章  FR182877の全合成研究 1節  序論

2節  合成計画

3節  AB環部分の合成研究 4節  全合成へ向けた合成ルート 3章  触媒的不斉野崎−檜山反応の開発

1節  序論

2節  リガンドの設計・合成

3節  触媒的不斉野崎−檜山アリル化反応

1

3

4

6

8

12

17

21

22

25

34

39

42

44

(3)

総括 実験の部

1章  (+)-Phomopsidinの全合成

    第1節  分子内Diels-Alder反応を用いた中心骨格の合成     第2節  Transannular Diels-Alder反応を用いた中心骨格の合成     第3節  Phomopsidinの全合成

2章  FR182877の全合成研究     第1節  AB環部分の合成     第2節  全合成に向けた合成

3章  触媒的不斉野崎−檜山アリル化反応 1節  リガンドの合成

  第2節  触媒的不斉野崎−檜山アリル化反応 謝辞

文献 研究業績

47

49

50

62

77

93

109

123

126

127

128

(4)

緒論

微小管はすべての真核生物に必須な管状蛋白繊維であり、特に有糸 分裂装置である紡錘体の主成分としてよく知られているが、そのほ かにも細胞運動、細胞内輸送、細胞の形態維持などの中枢的な機能 に関与している。この微小管を構成する基本蛋白がチューブリンで、

α-チューブリンとβ-チューブリンが結合したヘテロ二量体を基本単 位として、他の補助的な微小管結合蛋白とともに規則正しく重合し て微小管を形成する。微小管は細胞周期の中で、正常な重合・脱重合 を行って消長するが、その調節機構はいまだ明らかでない。

一方、微小管の形成を制御し、その結果、細胞分裂阻害などの様々 な生物活性を示す化合物が多数知られている。それらは有糸分裂阻 害剤と総称され、広く真核細胞に働き、医薬・農薬としても制癌剤、

抗カビ剤、駆虫薬、除草剤など幅広く用いられている。当初はチュ ーブリン重合阻害作用を有する化合物しか知られていなかったが、

北米産イチイから単離されたパクリタキセルは、微小管脱重合阻害 というこれまでとはまったく異なる有糸分裂阻害作用を示す抗癌剤 として注目され、これまで治療の困難であった乳癌、卵巣癌に対し て優れた治療効果を上げている。

これらの薬剤の結合部位は、ほとんどがβ-チューブリンであること が知られており、チューブリンの重合・脱重合にかかわる機能ドメイ ンに密接に関与があると予想されるため、阻害剤とチューブリンの 間の分子認識機構の解明は、薬物設計の基礎となるとともに、微小 管機能解明へのアプローチとしても重要である。そのような観点か ら、微小管の重合阻害活性及び脱重合阻害活性を持つ新規化合物の 全合成を目指して研究を行った。

第一章では、微小管重合阻害活性を示すphomopsidinの全合成につい て述べる。中心骨格である cis-デヒドロデカリン骨格を exo 選択的 transannular Diels-Alder反応により効率的に構築することで世界初の 全合成を達成した。

  第二章では、微小管脱重合阻害活性を示す抗腫瘍性抗生物質 FR182877 の 全 合 成 研 究 に つ い て 述 べ る 。AB 環 部 分 の 分 子 内

(5)

Diels-Alder反応を用いた高ジアステレオ選択的構築法を確立し、CD 環部分を分子内 hetero Diels-Alder 反応により構築することで、

FR182877のABCD環部分の合成に成功した。

  第三章では、前述の二つの化合物の効率的な合成を目指した触媒 的不斉反応について述べる。野崎−檜山−岸反応の不斉触媒化を行 うべく新規不斉三座配位子を考案し研究を行い、野崎−檜山アリル 化反応において良好な結果が得られた。

(6)

本論

本論文で使用する略語は以下のとおりである

BBN borabicyclo[3,3,1]nonane BHT di-t-butyl-p-cresol

BOM benzyloxymethyl BPS t-butyldiphenylsilyl Bu butyl Bz benzoyl

dba dibenzylideneacetone

DDQ 2,3-dichloro-5,6-dicyanobenzoquinone DEAD diethyl azodicarboxylate

DHP dihydropyrane

DIBAL diisobutylaluminum hydride DIPEA diisopropylethylamine DMAP 4-N,N-dimethylaminopyridine DMF N,N-dimethylformamide DMSO dimethylsulfoxide EE 1-ethoxyethyl Et ethyl

EVE ethyl vinyl ether

HMDS hexamethyldisilazide HMPA hexamethylphosphoramide KPB potassium phosphate buffer

LDA lithium diisopropylamide Me methyl

MPM p-methoxyphenylmethyl NMP N-methyl-2-pyrrolidinone Ph phenyl

PPTS pyridinium p-toluenesulfonate Pr propyl

Py pyridine

TBAF tetrabutylammonium fluoride TBAI tetrabutylammonium iodide TBS t-butyldimethylsilyl

TEA triethylamine

Tf trifluoromethanesulfonyl THF tetrahydrofurane

THP tetrahydropyrane TIPS triisopropylsilyl TMS trimethylsilyl Ts p-toluenesulfonyl

(7)

第1章  (+)-Phomopsidinの全合成 第1節  序論

Phomopsidinは 1997 年 東 京 海 洋 大 学 の 浪 越 ら に よ り 糸 状 菌 Phomopsis sp. TUF95F47から単離された海洋性天然物1)である。その 相 対 配 置 は 各 種NMRス ペ ク ト ル(1H-1H COSY, HMQC, HMBC,

NOESY)によって決定され、絶対配置は誘導体のCDスペクトルによ

って決定された(Figure 1)。生物活性は強い微小管重合阻害活性 (IC50=5.7µM)を示す。側鎖部分の幾何異性体であるMK83832)において も同程度の強い活性(IC50=8.0µM)が見られることから、phomopsidin は構造活性相関の上で興味深い化合物である。またphomopsidinは13C ラベル実験より、ノナケチドとして生合成されていることが報告さ れている(Figure 2)。その際、solanapyrone類や他のデカリン誘導体と 同 様 にDiels-Alder反 応 に よ る 骨 格 構 築 が 推 定 さ れ て お り 、 phomopsidinは対応するヘキサエン1からの分子内Diels-Alder (IMDA) 反応によって生合成されていることが予想され、その際の酵素の関 与の有無などについても興味がもたれている。こうしたことから、

我々はDiels-Alder反応を鍵反応とするphomopsidinの世界初の全合成 を行うこととした。

(8)

H H

HO

COOH

Phomopsidin

H H

HO

COOH

MK8383

2 4 6 8

11

15

Figure 1.

OH

COOH

Diels-Alderase

1

HO

COOH

∆ L-[S-13CH3]methionine

13CH3 13COOH

Figure 2. Biosynthetic Origins of Carbons in Phomopsidin

(9)

第2節  合成計画

ヘキサエン1 の(E,Z,E )-トリエン部位は不安定であり、立体障害の

ためにs-cisのコンフォメーションをとりにくくIMDA反応3)が進行し

にくいと予想し、1 からの全合成は困難であると考えた。そこで、ま

ずはphomopsidinの骨格を合成後に側鎖を順次導入して全合成を達成

することにし、phomopsidinの骨格に相当するcis-デカリン 3を鍵中間 体として設定し、その合成について検討することにした(Scheme 1)。 3 のような立体配置を持つcis-デカリン骨格をIMDA反応で合成する には、ジエン部分の幾何配置が(E,Z )であることが必要である。しか し、(E,Z )-ジエンを用いたIMDA反応は、ジエン部分がs-cisのコンフ ォメーションをとりにくいためエネルギー的に不利であり、報告例 が少ない。したがって、いかに高収率、高選択的にcis-デカリン骨格 を構築するかが全合成を行う上で最も重要な課題である。

Phomopsidin

H

TIPSO H

OR1

3

OR2

Scheme 1. Retrosynthetic analysis

H CHO

TIPSO H

2

(10)

全合成を行うにあたり、まず生合成的な合成経路であるヘキサエ ン1からの骨格形成に類似する合成ルートで合成することを考えた。

ヘキサエン 1 に存在する二重結合のうち、骨格形成に必要な(E,Z )- ジエンと(E)-ジエノフィルのみを有するトリエン 4 からIMDA反応を 行い、cis-デカリン 3 の合成を行うことにした(Scheme 2)。また、ト リエン4はアセチレン5と(Z)-ヨードアルケン64)とのワンポット鈴木

‐宮浦カップリングを用いて合成し、アセチレン 5 は市販の光学活 性なアルコール8 からアミド7 を経て合成できると考えた。

H

TIPSO H

OR1

TIPSO

OR1

IMDA CHO

3 4

OR2

Scheme 2. Retrosynthetic Aalysis via a IMDA Reaction

E Z

reaction

TIPSO

OR

N O

OR OMe

HO CO2Me

+

5 6

7 8

CO2Et I

Suzuki-Miyaura coupling

Me

(11)

第3節  分子内Diels-Alder反応を用いた中心骨格の合成

出発原料である(S)-3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸メチル 8 を 6 工程でMPMエーテル14とした(Scheme 3) 5)。その後、THP基を脱保 護したのち生じた水酸基をヨード化し 16 を得た。ヨード体 16 をマ ロン酸ジエチルでアルキル化しジエステル17とした後、DMSO中で 加熱することにより脱炭酸を行いモノエステル 18 へと変換後、

Weinrebのアミド 19とした。

HO CO2Me

19

9 10

THPO OH

a

d

f

8

Scheme 3. Reagents and conditions: (a) DHP, PPTS, CH2Cl2, rt; (b) LiAlH4, Et2O, 0 oC, 99% (2 steps); (c) Dess-Martin periodinane, CH2Cl2, rt; (d) (EtO)2P(O)CH2CO2Et, LiCl, DIPEA, CH3CN, rt, 83% (2 steps); (e) DIBAL, CH2Cl2, -78 oC; (f) MPMCl, NaH, TBAI, THF/DMF(10/1), rt; (g) PPTS, MeOH, rt, 83% (3 steps); (h) I2, PPh3, imidazole, benzene, rt, 93%; (i) CH2(CO2Et)2, NaH, THF, reflux; (j) NaCl, H2O, DMSO, reflux, 89% (2 steps);

(k) Me3Al, MeONHMe-HCl, ClCH2CH2Cl, 70 oC, 74%;

THPO O

I OMPM i OMPM j

THPO CO2Me THPO OH

THPO CO2Me

e

THPO OMPM HO OMPM

EtO2C EtO2C

EtO2C OMPM

OMPM N

O MeO

Me

b c

g h

k

11 12 13

14 15

16 17

18

(12)

19 に対してアセチリドを付加させイノン 20 とした後、(-)-α-ピネ ンと 9-BBNを用いた不斉還元6)により高選択的(>95% de)に望みの立 体配置の不斉中心を導入することに成功し21 を得た(Scheme 4)。続 いてTMS基を除去し水酸基をTIPS基で保護してアセチレン22へと変 換した。続いて、(E,Z )-ジエン部分の合成を行った。三重結合に対し

て 9-BBNでジヒドロホウ素化し、ベンズアルデヒドでデヒドロホウ

素化を行い選択的に(E )-アルケニルボラン7)とし、(Z )-ヨードアルケ ン6 との鈴木‐宮浦カップリングをワンポットで行い、(E,Z)-ジエン 24を合成した。エステルをDIBAL還元しアルコール 25 へと変換し、

生じた水酸基をBz基で保護した後、MPM基を脱保護しアルコール27 を得た。保護基によるIMDA反応の反応性の違いをみるために、ジエ ン部分の末端水酸基の保護基をBz基からBPS基へと 4 工程で変換し アルコール31とした。

25

26 27 28 29 30 31

21 19

OMPM

O

N(OMe)Me

OMPM

OH

OMPM

TIPSO

OH TIPSO

OR1

a

f

g OR2

Scheme 4. Reagents and conditions: (a) TMSCCH, n-BuLi, THF, 0 oC, 97%; (b)

(-)-α-pinene, 9-BBN, THF, rt; (c) TBAF, THF, rt; (d) TIPSOTf, TEA, CH2Cl2, rt, 74% (3 steps);

(e) i) 9-BBN, THF, reflux, ii) PhCHO, r.t., iii) 6, [Pd2(dba)3]-CHCl3, AsPh3, K2CO3, DMF, THF, H2O, rt; (f) DIBAL, CH2Cl2, -78 oC, 89% (2 steps); (g) Bz2O, TEA, DMAP, CH2Cl2, rt, 97%;

(h) DDQ, 2-methyl-2-butene, CH2Cl2/t-BuOH/KPB7 (8/1/1), rt, 59%; (i) EVE, PPTS, CH2Cl2, rt, y. 86%; (j) K2CO3, MeOH, rt, y. 99%; (k) BPSCl, imidazole, CH2Cl2, rt; (l) PPTS, MeOH, rt, 83% (2 steps).

23

OMPM

TIPSO

TMS

d

OMPM

O

TMS b c

OMPM

OH

OMPM

TIPSO CO2Et

e

R1 = Bz ; R2 = MPM R1 = Bz ; R2 = H R1 = Bz ; R2 = EE R1 = H ; R2 = EE R1 = BPS ; R2 = EE R1 = BPS ; R2 = H

22

20

24

h i j k

l

(13)

得られたこれらのアルコール27, 31を活性MnO2で酸化してアルデ ヒド32, 33 とし、IMDA反応を検討した(Scheme 5)。Lewis酸存在下で

は基質32, 33 ともに分解してしまう結果となった。そこで基質32, 33

をそれぞれトルエン中で 4 日間加熱還流させたが、32 ではIMDA反 応は全く進行せず、環化体34は得られなかった。しかし、33では遅 いながらも反応は進行し、収率45%(at 48% conv.)で環化体35を単一 のジアステレオマーとして得ることに成功した。

27 CHO

TIPSO

OR1

CHO

TIPSO

OR1

R1 = Bz R1 = BPS

31

34 35

R1 = Bz R1 = BPS Scheme 5. Reagents and conditions: (a) MnO2, CH2Cl2, rt, 32: 87%, 33: 73%;

(b) BHT, toluene, reflux, 4 days, 34: N.R., 35: 45% (at 48% conv.)

32 33

R1 = Bz R1 = BPS

a b

(14)

得 ら れ た 環 化 体 35 が 微 量 で あ っ た た め 、 構 造 確 認 は 天 然 の phomopsidinと の1H-NMRデ ー タ と の 比 較 に よ り 行 う こ と に し た (Figure 3)。phomopsidinのcis-デカリン骨格上で特徴的なC11位のピー クで比較したところ、結合定数から考えると合成した環化体ではピ ークが二つのアキシアル−アキシアルと一つのアキシアル−エクア トリアルのカップリングによる分裂であり、天然のphomopsidinに見 られる一つのアキシアル−アキシアルと二つのアキシアル−エクア トリアルの分裂ではないことから、C12 位の立体配置はphomopsidin とは異なっていることが判明した。以上の結果から、鎖状のトリエ ン 4 のIMDA反応による所望のcis-デカリン骨格構築は困難であると 判断し、別の合成方法を検討することにした。

δ = 3.45 (ddd, J = 10.0, 10.0, 4.4 Hz) CHO

TIPSO

OR1

H Hax Heq

Hax

HO H

Hax Heq

Hax

δ = 3.57 (ddd, J = 11.2, 4.6, 4.6 Hz) H

Figure 3. Difference of the Coupling Constant

natural phomopsidin

11 11

(15)

第4節  Transannular Diels-Alder反応を用いた中心骨格の合成

  鎖状のトリエンからのIMDA反応では、反応点が接近しにくいため 厳しい反応条件が必要であり、また軌道の二次相互作用によりexo環 化に比べてendo環化が進行しやすいという問題点がある。それらの 問題を解決するために、transannular Diels-Alder (TADA)反応8)を行う ことにした。マクロラクトン 36 に対してTADA反応を行えば、付加 環化体37を高収率、高選択的に得られることが予想できる(Figure 4)。 それは、マクロラクトン 36 のTADA反応の遷移状態を考えると、反 応点は初めから接近しているため温和な条件でもTADA反応が進行 すると予想されるからである。またラクトン環の立体化学的な要因 によりexo環化しか起こらないと予想される。さらにexo環化の二つの 遷移状態は図のような遷移状態になると考えられ、TS-1 は椅子型の コンフォメーションをとれ、また置換基がエクアトリアル位を占め るため、遷移状態がより安定であり、TS-2 はツイストボート型のコ ンフォメーションであり、Me基が擬アキシアル位を占めるためエネ ルギー的に不利である。したがって、TS-1 が有利な遷移状態になり 望みの環化体37が優先的に得られることが予想される。

TIPSO

O O H

H

H H

TIPSO

O O H

H

H H

O TIPSO O

O O

TIPSO

desired

exo exo

36

37

37'

TS-1

TS-2

TIPSO

Me

O O

more stable!

Figure 4. Transition States of exo-cyclization

(16)

なお、マクロライド36 はホスホネート38から分子内HWE反応を 用いてジエノフィル部分を合成し、38はアルコール39から変換する ことにした(Scheme 6)。アルコール39はアセチレン40と(Z )-ヨード アルケン6 とのワンポット鈴木‐宮浦カップリングにより(E,Z)-ジエ ン部分を合成し、アセチレン 40 は市販の光学活性なアルコール 41 より合成できると考えた。

CHO

TIPSO

O O P(O)(OEt)2

MeO2C OH

6 2

+

38

40

41

CO2Et I

Scheme 6. Retrosynthetic analysis via a Transannular Diels-Alder Reaction

H

TIPSO H

O O

O O

TIPSO

transannular Diels-Alder

37 36

E Z

Horner-Wadsworth- Emmons (HWE)

TIPSO

OH OR

39

reaction

(TADA) reaction

TIPSO

Suzuki-Miyaura OR

coupling

H

TIPSO H

OR2 OR1

(17)

(R )-3-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸メチル41を出発原料とし、

まず水酸基をEE基で保護し、続いてエステルをLiAlH4で還元した

(Scheme 7)。生じたアルコールをヨード化し、マロン酸ジエチルでア

ルキル化してジエステル45に変換した後、DMSO中で加熱すること により脱炭酸を行ったが、同時にEE基も脱離してしまいδ-ラクトン 46が得られた。そこで、Weinrebのアミド化によりラクトンを開環し、

生じた水酸基を再びEE基で保護してアミド 48 とした。アミド 48 に 対してリチウムアセチリドを付加させイノン49とした後、(-)-α-ピネ ンと 9-BBNを用いた不斉還元6)により高選択的(>95% de)に望みの立 体配置の不斉中心を導入することに成功した。続いてTMS基を除去 し、水酸基をTIPS基で保護しアセチレン52へと変換した。

MeO2C OH

41

O O OEE

O N

OEE

OTIPS

a

f

h

46

48

52

Scheme 7. Reagents and conditions: (a) EVE, PPTS, CH2Cl2, rt; (b) LiAlH4, Et2O, 0 oC; (c) I2, PPh3, imidazole, benzene/CH3CN(10/1), rt, 85% (3 steps); (d) NaH, CH2(CO2Et)2, THF, reflux; (e) NaCl, H2O, DMSO, reflux, 81% (2 steps); (f) Me2AlCl, MeONHMe-HCl, CH2Cl2, rt, 78%; (g) EVE, PPTS, CH2Cl2, rt, 95%; (h) TMSCCH, n-BuLi, THF, 0 oC; (i) (-)-α-pinene, 9-BBN, THF, rt; (j) TBAF, THF, rt, 88% (3 steps);

(k) TIPSOTf, TEA, CH2Cl2, rt, 76%;

OEE HO

EtO2C OEE EtO2C

b

e

OEE

OH

TMS

g

OEE

OH

OEE

O

TMS

OH

O N OEE

I

MeO2C OEE

c

d

i

k

j

MeOMe

MeOMe

42 43

44 45

47

49 50

51

(18)

  続いて、(E,Z )-ジエン部分の合成を行った(Scheme 8)。三重結合に

対して 9-BBNでジヒドロホウ素化し、ベンズアルデヒドでデヒドロ

ホウ素化を行い選択的に(E )-アルケニルボラン7)とし、(Z )-ヨードア ルケン 6 との鈴木‐宮浦カップリングをワンポットで行い、(E,Z )- ジエン 53 を合成した。DIBAL還元によりアルコール 54 とした後、

ジエチルホスホノ酢酸とのエステル化によりホスホネートを導入後、

酸性条件下でEE基を除去しホスホネート 56へと変換した。ホスホネ ート 56 の水酸基をDess-Martin酸化しアルデヒド 38 とした後、分子 内HWE反応により13員環マクロラクトン36を合成することにした。

種々の条件を検討した結果、高希釈条件(0.005M)下トルエン溶媒中 K2CO3, 18-crown-6-etherを用いた条件で、マクロラクトン36が最も良 い収率(84%)及び幾何選択性(>10:1)で得られた。

H

TIPSO H O O O

O

TIPSO TIPSO

O O OH P(O)(OEt)2

OEE

OTIPS

OH

b

d

54

56

36 37

Scheme 8. Reagents and conditions: (a) i) 9-BBN, THF, reflux, ii) PhCHO, rt, iii) 6, [Pd2(dba)3]-CHCl3, AsPh3, K2CO3, DMF, THF, H2O, rt; (b) DIBAL, CH2Cl2, -78 oC; (c) (EtO)2P(O)CH2CO2H, CBr4, PPh3, Py, CH2Cl2, rt, 69% (3 steps); (d) PPTS, EtOH, rt, 98%; (e) Dess-Martin periodinane, CH2Cl2, rt, 94%; (f) K2CO3, 18-crown-6-ether,

g

52 a

OEE

OTIPS CO2Et TIPSO

O O OEE P(O)(OEt)2

CHO

TIPSO

O O P(O)(OEt)2

c

e f

53 55

38

OEE

TIPSO

BBN BBN

OEE

TIPSO

i) BBN

ii) iii)

(19)

マクロラクトン36が得られたので、TADA反応を行うこととした。

トルエン中24時間加熱還流したところ、TADA反応が進行し環化体 37 をクロマトグラフィーで分離不可能なジアステレオマー比 2:1 の 混合物で得ることに成功した。

得られた環化体の構造決定を行うこととした(Figure 5)。TIPS基を 除去することによりジアステレオマーが分離可能となり、主生成物 57 の水酸基をp-BrBz化し 59 とした。ベンゾエート 59 が結晶化した ため、X線結晶構造解析により構造決定しようと再結晶を行ったが、

測定に適した単結晶は得られなかった。そこで、Phomopsidinの

1H-NMRとの比較とNOE実験により、化合物 59 が望みの立体配置を

持っていることを確認した。また、副生成物である環化体58につい てもNOE実験を行ったところ、図のような構造であることが判明し た。したがって、マクロラクトン 36 からのTADA反応では、予想通 りexo環化のみが進行し、さらに望みの環化体 37 が主生成物として 得られることが判明した。

H

p-BrBzO H O O

p-BrBzO Me

O O H H

H

H

H

4.7%

8.6%

10.2%

10.6%

6.9%

NOE experiment on compound 59 59 37 a) TBAF

y. 93%

OH

O O

b) p-BrBzCl, DMAP

H

HO

H

H

O O

H H

2.9%

3.6%

6.1%

5.0%

NOE experiment on compound 58 57 58

y. 50%

y. 27%

+

Figure 5. Structure Determination of Cycloadducts

(20)

第5節  Phomopsidinの全合成

  phomopsidinのcis-デカリン骨格はTADA反応を用いるルートで合成 できることがわかったので、ラクトン37からの側鎖導入を検討する ことにした(Scheme 9)。ラクトン 37をWeinrebアミドとすることでジ アステレオマーが分離できるようになり、アルコールを単一のジア ステレオマーとして単離した。生じた水酸基を保護しようとしたが、

塩基性条件では閉環しラクトン37へと戻ってしまうため、酸性条件 で保護できるEE基で保護してアミド 61 とした。アミド基の還元は 種々の条件を検討したが、立体的に混んでいるためか、選択的にア ル デ ヒ ド を 得 る こ と は な か っ た 。 そ こ で 、Myersら が 報 告 し た LAB(lithium amidotrihydroborate)試薬9)を用いて還元したところ、アル コール体62が高収率で得られた。水酸基をBPS基で保護し63へと変 換 し た 後 、EE基 を 除 去 し 、 生 じ た 水 酸 基 をDess-Martin酸 化 、 Corey-Fuchs法によりアルキン67 を合成した。

H

TIPSO H O O

H

TIPSO H O

Me N

OEE

H

TIPSO H

OH

H

TIPSO H

OBPS

61

62

67

OMe

OEE

a b

g

37 (2 : 1)

H

TIPSO H

CHO OBPS

h

Scheme 9. Reagents and conditions: (a) MeONHMe-HCl, i-PrMgCl, THF, 0 oC, 68%;

(b) EVE, PPTS, CH2Cl2, rt, 90%; (c) BH3-NH3, LDA, THF, 0 oC to rt, 91%; (d) BPSCl, imidazole, CH2Cl2, rt, 98%; (e) 1N-HCl, THF, rt, 87%; (f) Dess-Martin periodinane, CH2Cl2, rt, 78%; (g) CBr4, PPh3, CH2Cl2, rt, 93%; (h) n-BuLi, THF, -78 to 0 oC, 73%.

H

TIPSO H O

Me N

OH OMe

c

H

TIPSO H

OBPS

OEE H

TIPSO H

OBPS OH

H

TIPSO H

OBPS Br Br

d e

64 63

65

60

66

f

(21)

アルキン67が得られたので、三置換アルケンの構築を検討するこ とにした。アルキン67 において、三重結合に対して置換基がシクロ ヘキセン環上で隣接する炭素に存在し、反応点が立体的に混んでい ることが予想される。そこで、まずモデル化合物を合成しカルボア ルミ化の検討を行うこととした。モデル化合物 68cis-1,2,3,6- tetrahydrophthalic anhydrideから5工程で合成し、一般的な条件として、

Cp2ZrCl2触媒存在下Me3Alによりカルボアルミ化を行った(Table 1)。 反応は立体障害のため進行が遅く、さらに副反応として生成したア ルケニルアランがプロトン化されてしまい、高収率でヨードアルケ ンを得ることはできなかった。そこで、加熱して反応を行ったが、

目的のヨードアルケン69を選択的に得ることはできなかった。しか し、WipfらによってH2Oの添加によりカルボアルミ化が促進されると の報告10)があり、その条件で行ったところ(entry4, 5)、反応は低温で も速やかに進行し高収率でヨードアルケン69を得ることに成功した。

OTBS OTBS

X

entry solv. yield

1 2 3 4 5

4.0 39

3.0 48

5.0

5.0 83

77 Cp2ZrCl2

(eq.)

temp. time (h)

0.5 CH2Cl2 rt 24 (74)

0.5 (CH2Cl)2 60oC 24 0.5 2.0 CH2Cl2 -20oC 3 0.5 1.5 CH2Cl2 -20oC 4

2 : 1

1 : 2 9 : 1 20 : 1 Me3Al

(eq.)

(conv.) 69 : 70 Table 1. Water-accelerated Carboalumination

H2O (eq.)

i) Carboalumination ii) I2 (1.3eq), THF, -20oC

69: X = I

70: X = H

68

3.0 0.3 CH2Cl2 reflux 8 67 (81) 8 : 1

そこで、モデル化合物での検討の結果からWipfの条件を用いてア

(22)

ルキン67に対してカルボアルミ化を行ったところ、高収率で目的の ヨードアルケン71が得られた(Scheme 10)。続いて、Pd触媒下Me2Zn でメチル基の導入を行い、三置換アルケン72の合成に成功した。

H

TIPSO H

OBPS

H

BzO H

CO2Et

72

H

BzO H

OH

H

HO H

76 COOH

79

a c

g i

(+)-phomopsidin

H

HO H

OTBS

e

Scheme 10. Reagents and conditions: (a) Cp2ZrCl2, Me3Al, H2O, CH2Cl2, -20 to 0 oC;

then I2, THF, 0 oC, 86%; (b) Me2Zn, PdCl2(PPh3)2, THF, rt, 99%; (c) TBAF, THF, reflux, 95%; (d) TBSCl, imidazole, CH2Cl2, rt; (e) Bz2O, DMAP, CH2Cl2, 0 oC to rt, 87% (2 steps);

(f) TBAF, THF, rt, 90%; (g) Dess-Martin periodinane, CH2Cl2, rt, 76%; (h) LiHMDS, (EtO)2P(O)CH2CH=CHCO2Et (78), THF, -78 to -20 oC, quant; (i) LiOH, EtOH, H2O, 93%.

H

BzO H

CHO

h

H

BzO H

OTBS

f

H

TIPSO H

I OBPS

b H

HO H

OH

d

71

75

77

73

74 67

  残りの側鎖を導入するため三置換アルケン72からBPS基のみを脱 保護しようと試みたが、選択的に反応が進行しなかった。そこで TBAF で両方のシリル基を除去しジオール 73 とした後、1 級水酸基 のみをTBS 基で保護した。2 級水酸基をBz 基で保護し、続いてTBS 基 の 除 去 を 行 い ア ル コ ー ル 76 へ と し た 後 、 生 じ た 水 酸 基 を

Dess-Martin酸化しアルデヒド77とした。続いて残りの側鎖の導入を

(E,E)-α,β,γ,δ

(23)

飽和エステル 79 をジアステレオ選択的に導入することに成功した。

最後に加水分解を行い、生成物と天然のphomopsidinの各種スペクト ル デ ー タ を 比 較 し た と こ ろ 、 良 い 一 致 が 見 ら れ 、 こ こ に (+)-phomopsidinの世界初の全合成を達成した。

(24)

第2章  FR182877の全合成研究 第1節  序論

 FR182877 は 1998 年 に 藤 沢 薬 品 工 業 の 佐 藤 ら に よ り 放 線 菌 Streptomyces sp. No.9885 の培養濾液より単離構造決定された化合物 である11) (Figure 6)。FR182877は、抗癌剤として知られるタキソール と同様に微小管の重合を促進し、脱重合を阻害することにより細胞 周期をG2/M期で止め、抗腫瘍活性を発現する。その活性は、タキソ ールと同程度であり、各種癌細胞に対し数十ng/mlのIC50値で幅広い 抗腫瘍スペクトラムを示す。また近年、その新奇な六環性骨格を持 つ化合物として、Hexacyclinic acid12)やFR18287613)が単離され、これ らに共通の炭素骨格に対する有機合成化学的な興味が非常に深まっ てきている。FR182877は現在までにSorensen及びEvansらの研究グル ープにより全合成が報告されており14)、その他にも多くの研究グルー プから全合成研究が報告されている15)。本研究では、FR182877 の不 斉全合成を達成するとともに、高度に歪んだ炭素骨格の合成法、お よび構造活性相関研究を行うことを目的としている。 

O O O HO

OH

H

H

H H H

H

H A

B C D

E

(-)-FR182877

O O O

CO2H AcO

OH

H

H

H H H

H

H H

OH

Hexacyclinic acid

A

B C D

E

O O O HO

OH

H

H

H H H

H

H H

O O

H N N

NMe

H N

O O

A

B C D

E

Figure 6.

(25)

第2節  合成計画

  FR182877の合成計画は以下のように行った(Scheme 11)。D, E, F環 部分が不安定であるため、最後にE, F環を電子豊富ジエンとカルボ ニルとの分子内hetero Diels-Alder(IMHDA)反応により80から構築す ることとした。また、C, D環も1-オキソブテンをジエンとし、三置 換アルケンとのIMHDA反応により81 から構築できると考えた。さ らに、A, B 環は鎖状のペンタエン 83 での分子内 Diels-Alder(IMDA) 反応により構築することとし、ペンタエン83は三つのフラグメント

84, 85, 86から合成することとした。

O O H

OH H HO

H

H

H H

H MeO

OMe

O CO2Me H

OR RO

H

H

H H

H

O CO2Me H

OR RO

H

H

H OR

I +

TBSO +

FR182877

O CO2Me OR

RO

OR

I

CO2Me

O

Intramolecular Diels-Alder

Reaction

80

81 82

Intramolecular Hetero Diels-Alder

Reaction

Intramolecular Hetero

83

84 85 86

Diels-Alder Reaction

OR

CHO OTIPS AcO

Scheme 11. Retrosynthetic analysis

(26)

初めに、A, B 環部分に相当する trans に縮環した 5-6 員環骨格 87 の IMDA 反応による構築について、反応の基質と立体選択性の関係 について検討することにした(Scheme 12)。光学活性な基質を用いた IMDA 反応においては、endo の遷移状態と exo の遷移状態でそれぞ れ 2 種類ずつ、計 4 種類の遷移状態があり、それに対応して 4 種類 のジアステレオマーを与える可能性があるが、トリエン88の C4位 の酸素官能基の立体配置を変えることにより遷移状態間のエネルギ ー差を変化させ、付加環化の選択性を制御できると予想した。そこ で、C4位の酸素官能基のジアステレオマーである88a, 88bの 2種類 を合成して IMDA 反応を行い、その結果から高選択的に反応が進行 し、最も効率良くA, B環部分を構築できる基質を計画し、それをも とに全合成を行うことにした。なお、当初FR182877の絶対配置はエ ナンチオマーとして報告されていたので、この時点では(+)-体の合成 になっている。 

(+)-FR182877

PO OP

H H

H H A

B CO2Me OP

CO2Me PO

OP

OP

Intramolecular Diels-Alder

reaction

87 88a

(P = protecting group) 88b

2 6 4

10

TBSO CHO

OP

TBSO CHO N O

O O

+ 89

90

91

I CO2Me

+

(α-OP) (β-OP)

Scheme 12. Retrosynthetic Analysis of the AB Ring Moiety

(27)

IMDA反応の検討を行う基質であるトリエン 88aおよび 88bは、ア

ルデヒド89と(E )-2-ヨードアクリル酸メチルとの岸-野崎カップリン

グ反応により両方のジアステレオマーが合成できると考えた。また、

アルデヒド89はオキサゾリジノン91を不斉素子としたsyn-aldol反応 によってジエナール9016)から合成することにした。

(28)

第3節  AB環部分の合成研究

D-valine由来のオキサゾリジノン 91 のホウ素エノラートとジエナ

ール90とのsyn-aldol反応によりC5,C6位の不斉中心を導入し、続い てオキサゾリジノンを除去しアミド93へと変換した(Scheme 13)。水 酸基をTIPS基で保護し、アミドをDIBALで還元してアルデヒド95を 得た。(E )-2-ヨードアクリル酸メチルとの岸-野崎カップリング反応

17)では、2:1 の比でのジアステレオマー混合物 96 を与えた。この混 合物はシリカゲルクロマトグラフィーで分離不可能であった。種々 条件を検討し選択性を向上させようと試みたが、良い結果は得られ なかった。

TIPSO

TBSO CO2Me

I CO2Me OH

96 90 + 91

TBSO

OH N O

OMe

TBSO CHO

TIPSO

93

95

TBSO

OH N O

O O i-Pr

TBSO

TIPSO

N O

OMe

92

94

Scheme 13.Reagents and conditions: (a) n-Bu2BOTf, TEA, CH2Cl2, -78 oC to rt, 98%;

(b) Me3Al, MeONHMe-HCl, THF, 0 oC to rt, 94%; (c) TIPSOTf, TEA, CH2Cl2, rt, 99%; (d) DIBAL, THF, -78 oC, 97%; (e) methyl (E)-2-iodoacrylate, NiCl2, CrCl2, NaHCO3, THF, rt, 93% (dr = 2:1)

a b

c d

e

(29)

  そこで、まずアルデヒドに対して選択的に求核付加を行った後、

ジ エ ノ フ ィ ル 部 分 へ と 変 換 す る こ と を 試 み た 。 求 核 剤 と し て

TMS-acetylene から得られる金属アセチリドを用い、アルデヒド 95

に対して求核付加を行った(Table 2)。条件を検討した結果、エーテル 中でリチウムアセチリドを付加させた場合、Felkin-Anhモデルに従う syn 体が優先的に得られたが(entry 4)、チタニウムアセチリドに変換 した場合、選択性が逆転しanti体が優先して得られた(entry 6)。しか し、それ以上の選択性の向上が望めなかったため、それ以上の変換 は行わなかった。

TMS M

TBSO

TIPSO OH

TMS , conditions, -78 oC

95

TMS H

THF

THF Et2O Et2O/TEA (3/1) ClTi(OiPr)3 (2.5) Et2O

98

entry base (eq) additive (eq) solv. yield (%) anti/syn 1

2 3 4 5 6

3.0 n-BuLi (2.5) THF/HMPA (6/1) 22 1.3/1

3.0 n-BuLi (2.5) 55 1.4/1

3.0 NaHMDS (2.5) 55 1.7/1

3.0 n-BuLi (2.5) 92 1/4.8

3.0 n-BuLi (2.5)

3.0 n-BuLi (2.5) 28 1/3.6

64 4.0/1

Table 2. Acetylide Addition to Aldehyde 95

(30)

  ジアステレオマー混合物であるアリルアルコール 96 を活性MnO2

で酸化すると、マイナーなジアステレオマーのほうが反応性が高く、

エノンへと変換されやすいため、ジアステレオマー混合物を速度論 的に分離できることを見出した(Scheme 14)。この反応性の違いは、

二酸化マンガンへの吸着されやすさによるものと考えられる。酸化 されたα, β−不飽和ケトン100 は選択的に1, 2-還元することにより、

再び2:1 のジアステレオマー混合物 96に変換することができる。得 られた単一のアリルアルコール 99 の立体配置はIMDA反応後のX線 結晶構造解析により決定している。残りのIMDA反応の基質を合成す るため、アリルアルコール99の水酸基を光延反応で反転しベンゾエ ート101 としたのち、脱Bz化しアリルアルコール102 を得た。

100

101 ; R=Bz 102 ; R=H

+

TIPSO

TBSO CO2Me

TIPSO O

TBSO CO2Me

OH 99

TIPSO

TBSO CO2Me

OR

TIPSO

TBSO CO2Me

OH 96

Scheme 14.Reagents and conditions:

(a) MnO2, CH2Cl2, rt, 99: 57%, 100: 39%;

(b) NaBH(OMe)3, MeOH, rt, 82% (dr = 2:1);

(c) DEAD, PPh3, BzOH, THF, rt, 71% (at 49%

conv.); (d) K2CO3, MeOH, rt, 58%.

a b

c

d

(31)

得られたIMDA反応の基質のうち、まず、99についてIMDA反応 を行ったところ、選択的に反応が進行し 10:1 以上の比で環化体 103 が得られた(Scheme 15)。環化体103 は結晶性誘導体104 へと変換し X線結晶構造解析を行うことにより、その構造を確認した(Figure 7)。 その結果、99からのIMDA反応では望みどおりの環化が進行してい ることがわかった。また、副生成物 103’についても同様に結晶性誘 導体105 へと変換しX線結晶構造解析を行い、endo環化体であるこ とを確かめた(Figure 8)。

104

99 O

OBz-p-Br

H

H

H

H O

p-BrBzO CO2Me

OTBS OH

H

H

H TIPSO

H

103

105

O OBz-p-Br

H

H

H

H O

p-BrBzO

Scheme 15. Reagents and conditions: (a) BHT, toluene, 80 oC, 24h, 82% (dr = >10:1); (b) p-BrBzCl, DMAP,

CH2Cl2, rt, 94%; (c) TBAF, THF, rt; (d) p-BrBzCl, DMAP, CH2Cl2, rt, 83% (2 steps).

a b - d

(32)

Figure 7. X-ray Crystallographic Structure of 104

Figure 8. X-ray Crystallographic Structure of 105

(33)

また101, 102でIMDA反応を行ったところ、どちらも 2つのジア ステレオマーがほぼ1:1の比で得られ、選択的に反応は進行しなかっ た(Scheme 16)。生成物 106-109の立体配置については、108はBz化 すると106と一致し、同様に109をBz化すると107と一致したこと、

また 106103 を光延反応により水酸基を反転しベンゾエートとし たものと一致し、107 は副生成物103’を光延反応により水酸基を反転 させたものと一致したことから、Scheme 16のように決定した。

106 ; R=Bz y. 41%

108 ; R=H y. 49%

107 ; R=Bz y. 47%

109 ; R=H y. 42%

CO2Me OR

TIPSO

H OTBS H HH

CO2Me OR

TIPSO

OTBS

+ H

H HH

Scheme 16. Reagents and conditions: (a) BHT, toluene, 80 oC, 24h; (b) Bz2O, DMAP, (CH2Cl)2, reflux, 64%; (c) Bz2O, DMAP, CH2Cl2, rt, 73%.

a

b c

101 ; R=Bz

102 ; R=H

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