第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
第 6 章 室内の SVOC 放散挙動実験及び実測調査
6-1 実測目的
第3、4章には、実住宅におけるSVOC濃度に関する実測調査と共に幼児がハウスダスト により経口摂取するDEHP 量を推定した。また、5章にはPVC系床材の表面ブリードアウ ト量や実住宅における床面付着SVOC濃度を測定し、床の種類によって床面付着DEHP濃 度が異なることが分かった。しかし、室内の SVOC 汚染対策を確立するためには室内の放 散挙動の知見を得ることが非常に大切である。日本ではマイクロチャンバーが JIS A19041)
「建築材料の準揮発性有機化合物(SVOC)の放散測定方法」と定められ、建材からの SVOC 放散速度の測定が出来るようになったが、室内の SVOC 放散挙動を予測するための放散メ カニズム実験の事例がまだ少ない。海外では建材からのSVOC放散挙動の知見を得るため、
長期間の実験によってチャンバー内の定常状態や表面濃度と気中濃度から分配係数などを 求めている。しかし、海外で測定されている各チャンバーの実験条件や材質などが異なる ため、実験の時間や分配係数などをそのまま利用するのは難しいと考えられる。マイクロ チャンバーを用いて放散メカニズム実験を行うためには海外で行っている実験条件と物理 的な環境などを知る必要がある。
そこで、マイクロチャンバーを用いて建材からのSVOC放散メカニズム実験を行うため、
海外で実験を行っているチャンバーとの比較と共にマイクロチャンバーの定常状態時間を 検討することとした。また、マイクロチャンバーを用いたPVC系床材からのSVOC放散メ カニズム実験を行い、室内の SVOC 放散挙動について予測する。更に、実住宅で使用して いる床材からの放散速度を測定し、ハウスダスト中 SVOC 濃度との相関性を調べ、室内の SVOC汚染対策を行うこととした。
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6-2 実測方法
6-2-1 ハウスダスト中SVOC濃度の測定
ハウスダストの捕集装置と測定方法・分析方法は第2章に紹介した方法と同じである。
6-2-2 室内空気中SVOC濃度の測定
測定対象住宅の室内空気を捕集した。サンプリングはTenax TA充填済ゲステル捕集管を 用いてアクティブ法により気中濃度を測定した。三脚を用いて床上100cm 地点に捕集管を 設置し、捕集速度 200mL/min で対象室内の空気を 150分吸入、30L 捕集を行った。SVOC
の分析はGC/MSによって定性定量を行った。
表6-1に室内空気サンプリング条件、表6-2に分析条件を示す。また、図6-1にSVOC気 中濃度測定風景を示す。
表6-1 室内空気サンプリング条件
物質 SVOC気中濃度
捕集管 Tenax TA
(Gerstel tube)
捕集速度[mL/min] 200
捕集時間[min] 150
捕集量[L] 30
表6-2 分析条件(GC/MS)
使用機器 Agilent 6890N/5973inert カラム Inert Cap 1MS 30m*0.25mm*0.25μmdf
温度 50˚C(2min)→10˚C/min→320˚C(5min)
測定モード SCAN 検出器温度 280˚C 230˚C 150˚C
SCANパラメータ マスレンジ(Low)30 マスレンジ(High)450
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図6-1 SVOC気中濃度測定風景
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6-2-3 マイクロチャンバー法(JIS A 1904)1) 1)マイクロチャンバーの概要
表6-3にマイクロチャンバーの試験条件を示し、図6-2にマイクロチャンバーの実物写真 と形状を示す。
表6-3 マイクロチャンバーの試験条件
チャンバー容積 630ml 試料負荷率 8.4m2/m3
温度 28±1℃
相対湿度 50±5%
換気回数 1.5回/h
Ø3
Ø3 Ø115✕5.5 Ø115
Ø82
125
単位:mm
図6-2 マイクロチャンバーの実物写真と形状
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2)試験片のシール
試験片の端部及び裏面はマイクロチャンバーに接触しないようにアルミ箔などを利用し て巻く。図6-3に試験片のシール例(上)と試験片の実物(下)を示す。
測定面
アルミ箔
試験片裏面 Ø82
Ø115 単位:mm
図6-3 試験片のシール例(上)と試験片の実物
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3)放散試験及び加熱脱着試験
建材から放散された SVOC はガス状の物質より室内の表面などに付着する性質を持って いる。そのため、マイクロチャンバー法は2段階に分けて試験を行っている。1段階は室内 環境条件下で放散する SVOC をチャンバー内に吸着させる工程(放散試験)とチャンバー 内に吸着した SVOC を加熱脱着させる工程(加熱脱着試験)である。1 段階の放散試験は 24時間実施する。建材からのSVOC放速度は1段階と2段階に捕集した量の合計で算定す る。加熱脱着する際にはマイクロチャンバーから試験片を取り除き、加熱脱着装置にマイ クロチャンバーを取り付け、その後、Tenax TA捕集管を設置する。オーブン温度は室温か
ら毎分10〜20℃の速度で昇温し、200〜220℃で40分程度保持する。不活性ガスはヘリウム
ガスを用いた。供給量は90[ml/min]、吸引量60[ml/min]で加熱脱着を行った。図6-4にマイ クロチャンバー法の概念図と測定写真を示す。また、表6-4にはMSTDの加熱脱着条件を 示す。
捕集管
湿度を制御した清浄空気 RH50±5%
30ml/min
捕集ポンプ クランプ
試験片 1段階:放散試験
恒温恒湿槽
空気
15ml/min
15ml/min ベントライン
28±1℃
加熱脱着する前試験片をマイクロチャンバーから取り除く
MSTD-258M 2段階:加熱脱着試験
加熱脱着装置
不活性ガス:He、N2
90ml/min
捕集管
捕集ポンプ 60ml/min 200-220℃
30ml/min ベントライン
図6-4 マイクロチャンバー法の概念図と測定写真
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分析対象物質はD6, BHT, DEP, C16, TBP, TCEP, DBA, DBP, C20, TPP, DOA, DEHPとDEHP の加水分解物質2E1Hなどの13物質とした。分析機器はGC/MSで行った。
捕集されたガス成分量及びチャンバー内の吸着成分量から、式(6.1)を用いて放散速度 ERを求める。
・・・(6.1)
ER :放散速度[µg/(m2・h)]
C :チャンバー内のガス放散成分濃度[µg/m3] Q :チャンバーの換気量[m3/h]
A :試験体の表面積[m2]
Ad :チャンバー内吸着成分量[µg]
t :チャンバーへの通気時間[h]
表6-4 MSTDの加熱脱着条件
使用機器 MSTD-258M オーブン
温度 28℃→20℃/min →200〜220℃(40分)
供給ガス量 90ml/min (ベント:30 ml/min)
吸引量 60ml/min
運転時間 1時間
A Q t Q
Ad A
C Q
ER
( )
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6-3 海外チャンバーとの比較
6-3-1チャンバー実験の目的及び実験概要 1)実験の目的
2008年にマイクロチャンバー法がJISに制定されて以来、建材からのSVOC放散速度の 測定が可能となった。海外の研究でも従来の測定方法と新たなチャンバーを製作し、建材 からの SVOC 放散速度を測定している。海外の実験では、チャンバー実験を用いて室内の SVOC放散挙動や表面濃度に対する気中濃度の分配係数等を検討しているが、日本では室内 の SVOC 放散挙動の実験が少ない。そのため、マイクロチャンバー法を用いて建材からの SVOC放散メカニズム実験を行うため、マイクロチャンバーの定常状態時間等を把握し、測 定時間等を検討する必要がある。
そこで、この項ではマイクロチャンバーと海外の測定方法との比較を通して、各測定方 法に関する考察と共にマイクロチャンバーを用いた放散メカニズム実験の測定時間等を検 討した。マイクロチャンバーと比較した海外の測定方法はFLEC2)、CLIMPAQ2)、John Little 氏によって考案された新たなチャンバー法3)(以下、Littleチャンバー法)である。
2)実験概要
各実験に採用されたPVC材料はLittleから入手した床材であり、Littleチャンバー法、FLEC 法、CLIMPAQ法で測定した試験片と同じものである。表6-5にマイクロチャンバーの測定 条件を示す。
表6-5 マイクロチャンバーの測定条件
条件名 設定温度 測定時間 測定回数 備考 BL-22-24h
22℃
24h 1 ブランク実験
DK1~3-22-24h 3 デンマーク製
ビニル 床材測定 DK-22-6h 6h
1
DK-22-12h 12h DK-22-48h 48h DK-22-72h 72h DK-22-168h 168h(1 week)
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6-3-2 各チャンバーの詳細
表6-6に各チャンバーの実験条件を、図6-5に各SVOC測定チャンバーの概観(Littleチ ャンバー、FLEC、CLIMPAQ)を示す。
表6-6 各チャンバーの試験条件 パラメータ マイクロ
チャンバー
Little
チャンバー3) FLEC2) CLIMPAQ2) 温度[℃] 22±0.5 22±0.2 20.1-23.6 22
相対湿度[%] 50±5 ― 48-52 50
容積[ml] 630 2000 35 51
流量[ml/min] 15 850±20 444-465 8300-9400 換気回数(n)
[回/h] 1.5 25±1 760-796 9.8-11 試料負荷率
[m2/m3](=L) 8.4 126 510 31 N/L 0.18 0.20 1.5 0.34 内表面積[m2] 0.037 0.02 0.018 1.6
図6-5 各SVOC測定チャンバーの概観
Littleチャンバー FLEC CLIMPAQ
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6-3-3 測定結果・考察
表6-7にSVOC放散量、表6-8にSVOC放散速度を示す。
表6-7 SVOC放散量 測定対
象物質
放散量[µg]
DK1-22 -24
DK2-22 -24
DK3-22 -24
DK-22 -6
DK-22 -12
DK-22 -48
DK-22 -72
DK-22 -168 2E1H 96 500 118.47 51 114 235 282 588
D6 1 2 N.D. N.D. N.D. 1 4 5 BHT 1 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 4 2
DEP 5 4 7 5 4 9 6 14
C16 24 27 28 7 11 35 40 86 TBP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP 46 51 44 26 34 37 19 36
C20 3 3 4 2 2 3 N.D. 4
TPP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA 1 2 2 N.D. 1 1 1 1
DEHP 250 250 180 55 73 280 150 430 N.D.:検出限界以下
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表6-8 SVOC放散速度
測定対 象物質
放散速度[µg/m2・h]
DK1-22 -24
DK2-22 -24
DK3-22 -24
DK-22 -6
DK-22 -12
DK-22 -48
DK-22 -72
DK-22 -168 2E1H 0.76 3.90 0.94 1.60 1.80 0.93 0.74 0.66
D6 0.01 0.02 N.D. N.D. N.D. N.D. 0.01 0.01 BHT 0.01 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 0.010 N.D.
DEP 0.04 0.04 0.06 0.15 0.07 0.04 0.02 0.02 C16 0.20 0.21 0.22 0.22 0.17 0.14 0.10 0.10 TBP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP 0.37 0.41 0.35 0.83 0.54 0.14 0.05 0.04 C20 0.02 0.03 0.03 0.07 0.03 0.01 0 N.D.
TPP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA 0.01 0.02 0.01 N.D. 0.02 0.01 N.D. N.D.
DEHP 2.00 2.00 1.40 1.70 1.20 1.10 0.39 0.48 N.D.:検出限界以下
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1)放散速度測定結果
図6-6にDEHP放散速度測定結果を示す。24時間測定については3回の平均値である。
マイクロチャンバーでの温度条件22℃の時、床材からのDEHP放散速度は1.7µg/m2h程度 の値であった。また、72、168h に測定された放散速度が同程度であった。これは、24h 以 降吸着速度がほぼ一定になったためと考えられる。すなわち、建材表面から吸着面への濃 度勾配がほぼ一定になったと予想される。マイクロチャンバーで 72、168h に測定された DEHP放散速度はLittleチャンバー、CLIMPAQで測定された放散速度とほぼ同じであった。
FLECでの放散速度は他のチャンバーより高い値を示した。この結果は他のチャンバーより FLECの試料面積当たりの換気量が大きいためと考えられる。
図6-6 DEHP放散速度測定結果
(初期) (定常)
(定常)
(定常)
CLIMPAQ Littleチャンバー FLEC
マイクロチャンバー DEHP放散速度[µg/m2 h]
0 0.5 1.0
1.5 2.0
マイクロチャンバー Littleチャンバー
■24h測定 ■72h測定 ■168h測定 ■初期放散 ■定常状態
(初期)
(定常)
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2)積算吸着量及び放散速度
図6-7に積算吸着量と放散速度の経時変化を示す。積算吸着量を試料面積と時間で除する と放散速度が得られる。チャンバー内のDEHP吸着量は時間の経過と共にDEHP積算吸着 量は増加している。しかし、建材からのDEHP放散速度は時間経過とともに減衰している。
これはマイクロチャンバー内表面への DEHP 吸着量が時間の変化と共に定常状態に近付い ていることが考えられる。
48時間条件までの放散速度はLittleチャンバー測定法の初期値に近い値を示した。マイク ロチャンバー法で測定した72、168時間条件では、DEHP放散速度が0.5µg/m2h以下となり、
Littleチャンバー測定法の定常状態の値に近い値となった。各測定法において、定常状態に
なるまでの期間はCLIMPAQ、FLECが150日以上、Littleチャンバーは約30日であるのに 対し、マイクロチャンバー法ではきわめて短い時間での測定が可能になっている。Little ら は吸着面積が小さくなると、定常状態になるまでの期間が短くなると報告している4)が、チ ャンバー内表面の吸着性状の差異によっても定常状態になるまでの期間が変化することが 考えられた。この実験の結果からマイクロチャンバーを用いて放散挙動等の実験を行う場 合、定常状態になる時間が非常に短いため、放散メカニズム実験等が短時間で出来ると考 えられる。
図6-7 積算吸着量と放散速度の経時変化
0 0 0 0 0
Littleチャンバー(経時変化)
時間とDEHP放散速度の関係
0 0.5 1.5 2.5
1.0 2.0
時間[h]
DEHP放散速度[µg/m2h]
時間[h]
時間とDEHP放散量の関係
0
DEHP積算吸着量[ng]
0 50 100 150 200 0 50 100 150 200
100 200 300 400 500
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6-4 床材からのSVOC放散メカニズム実験
6-4-1 マイクロチャンバーを用いた床材からのSVOC放散挙動実験
1) 実験目的
6-3の実験結果からマイクロチャンバーを用いて放散メカニズム実験を行う場合、測定時 間が短くなることが分かった。そのため、マイクロチャンバーを用いて放散メカニズム実 験を行うこととした。チャンバーを用いたSVOC放散メカニズム実験は室内SVOC放散挙 動に対するより正確な基礎データの蓄積し、放散面積と付着面積が建材からの SVOC 放散 量に及ぼす影響に関する把握が出来ると考えられる。
そこで、本項では建材の放散面積とチャンバー内付着面積の変化による建材からのSVOC 放散量を検討し、実内SVOC汚染メカニズムに関る予測を行った。
2) 実験概要
マイクロチャンバーの中にガラスプレートを投入し、チャンバー内の SVOC 付着面積を 変化し、付着面積が建材からの SVOC 放散量に及ぼす影響を考察した。また、付着面積は 一定にし、建材の放散面積を変化した時、建材からの SVOC 放散量に及ぼす影響を考察し た。使用した壁紙の成分情報は表6-9に示す。表6-10に放散面積及び付着面積設定条件一 覧を示す。図6-8に測定装置概要、図6-9に測定風景を示す。
表6-9 塩化ビニル樹脂系壁紙の成分情報
名称 含有量
g/m2 %
ポリ塩化ビニル 85.1 29
DOP 39.4 14
炭酸カルシウム 85.1 29
二酸化チタン 8.5 3
その他 防カビ剤 - 1%未満
普通紙(裏打ち紙) 65.0 22
重量 291g/m2
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表6-10 放散面積及び付着面積設定条件一覧
条件名 放散面積[m2] 付着面積[m2] 測定時間[h]
E100 5.0×10-3(放散面積100%)
42.5×10-3 24 E50 2.5×10-3(放散面積50%)
E25 1.3×10-3(放散面積25%)
3
5.0×10-3
37.4×10-3 72
Ax 87.8×10-3
24
A3 67.1×10-3
A2 57.0×10-3
A1 47.0×10-3
A0 37.4×10-3
図6-8 測定装置詳細図
図6-9 測定風景
ガラスプレート 塩ビ系壁紙
マイクロ チャンバー 捕集管
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3) 実験方法
マイクロチャンバーとガラスプレートを水洗いし、メタノールで拭き取り洗浄した後、
MSTD(加熱脱着装置)に入れ、装置の内部温度を 250℃で、2時間エージングを行った。
エージング後、マイクロチャンバーとガラスプレートの温度が常温状態になってから対象 建材を設置して放散実験を行う。1段階の放散試験は恒温恒湿槽で 24、72時間実施し、温
度28±1℃、相対湿度50±5%の清浄空気を用いて換気回数1.5回/hで試験を行った。2段階の
加熱脱着をする際にはマイクロチャンバーから試験片を取り除いた後、マイクロチャンバ ーを加熱脱着装置(MSTD-258M)に取り付け、ヘリウムガスを供給しながら、室温から毎
分 10〜20℃の速度で昇温し、200〜220℃で 40 分程度保持した。ヘリウムガスの供給量は
90[ml/min]、ベントライン 30[ml/min]、吸引量 60[ml/min]で加熱脱着を行った。床材からの SVOC放散速度は第 1段階と第 2 段階に捕集した量の合計で算出した。捕集した物質は、
GC/MSで分析を行った。分析対象物質はハウスダストと同様に13物質とした。
4) 放散速度の算出
建材からのSVOC放散メカニズムの知見を得るためにLittleらが提案した物質収支モデル
4)を用いて放散速度を求めた。式(6.2)は実空間におけるSVOC放散挙動に関する物質収 支モデルである。今回はチャンバー実験であるため、yin(t)(供給空気)とqp(t)(チャンバー 内外の浮遊粒子)が「0」と仮定できる。そのため、式(6.2)を展開するとマイクロチャンバ ー法の物質収支式が式(6.3)で示される。この物質収支モデルから今回の実験は Asの建材の 放散面積[m2]と Ai のチャンバー内の付着面積[m2]の変化させることにより、建材からの SVOC放散挙動に関する考察を行った。
t
t p
ts pt
t i t in
t
A m Qy Qq
dt V dq dt
A dq Qy
dt V
dy
…(6.2)y(t):気中濃度[µg/m3]
Q:チャンバーの換気量[m3/h]
Ai:チャンバー内吸着面積[m2] m.
:放散速度[µg/m2・h]
As:放散面積[m2]
q(t):時間当たりのチャンバー内表面吸着量[µg/m2h]
qp(t):時間当たりの浮遊粒子吸着量[µg/m3h]
…(6.3)
t i t
s
Qy
dt t A dq
m
A ( )
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6-4-2 結果・考察
表6-11に吸着面積一定条件及び3日間条件のSVOC検出量、表6-12に放散面積一定条件 のSVOC検出量を示す。また、表6-13に全条件のSVOC放散量を示す。
表6-11 吸着面積一定条件及び3日間条件のSVOC検出量
試験名
SVOC検出量 [ng]
BL* E100 E50 E25 3 L** H*** L H L H L H L H 2E1H 47.4 4.3 61.9 21.1 64.0 190.0 39.5 21.5 170.0 51.1
D6 1.4 4.2 2.4 2.5 5.3 1.4 4.3 4.1 8.2 2.6 BHT 7.8 N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 2.0 N.D.
DEP N.D. N.D. 1.6 4.0 1.5 5.0 N.D. N.D. 3.8 3.5 C16 3.9 1.2 10.5 4.7 8.3 4.4 7.9 1.4 24.6 4.5 TBP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP 1.7 1.4 N.D. 26.7 N.D. 42.1 N.D. 6.5 N.D. 42.6 C20 N.D. N.D. N.D. 3.2 N.D. 3.5 N.D. N.D. 1.1 2.7 TPP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA N.D. 1.6 N.D. 2.5 N.D. 3.3 N.D. 4.3 N.D. 1.9 DEHP N.D. 3.8 2.0 779.6 N.D. 570.0 N.D. 31.8 N.D. 800.0 C16換算
総有機 物量
750 290 1800 2500 2300 3300 1000 370 4100 2800
* BL:ブランク測定
**L:放散実験の時、チャンバー内のガス状成分
*** H:加熱脱着の時、チャンバー内壁吸着成分 N.D.:検出限界以下
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表6-12 放散面積一定条件のSVOC検出量
試験名
検出量 [ng]
Ax A3 A2 A1 A1-2 A0
L* H* L H L H L H L H L H 2E1H 59.0 34.8 67.1 16.5 32.2 32.4 36.6 47.9 39.8 24.8 36.4 32.3
D6 4.8 2.2 4.5 3.7 2.9 1.2 4.3 3.3 6.2 N.D. 3.3 1.3 BHT N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DEP N.D. 3.6 N.D. 1.5 N.D. 9.3 N.D. 9.7 2.6 1.5 N.D. 5.3 C16 9.1 4.5 9.1 1.8 10.7 4.0 10.5 7.0 9.6 1.4 12.1 3.6 TBP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP N.D. 10.7 N.D. 3.4 1.1 29.1 N.D. 33.9 1.1 6.3 N.D. 13.3 C20 N.D. 1.9 N.D. 1.0 N.D. 4.9 N.D. 5.4 N.D. 1.1 N.D. 3.4 TPP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D N.D. N.D N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA N.D. 5.5 N.D. N.D. N.D. 8.9 N.D. 4.9 N.D. N.D. N.D. 7.8 DEHP N.D. 250 N.D. 160 N.D. 770 N.D. 120 N.D. 180 N.D. 400
C16 換算 総有機
物量
2200 1700 1100 800 1200.0 5200 1000 3800 1400 1400 1400 2300
L*:放散実験の時、チャンバー内ガス状成分 H*:加熱脱着の時、チャンバー内壁吸着成分 N.D.:検出限界以下
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
表6-13 全条件のSVOC放散量 試験名 SVOC放散量 [ng]
E100 E50 E25 3 Ax A3 A2 A1 A1-2 A0 2E1H 31.3 202.4 17.2 169.4 42.2 32.0 28.2 43.6 20.5 28.0
D6 1.0 4.0 3.0 6.9 3.4 3.2 1.5 3.0 4.8 1.9 BHT N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DEP 5.6 6.5 N.D. 7.3 3.6 1.5 9.3 9.7 4.1 5.3 C16 10.0 7.5 4.2 23.9 8.4 5.7 9.5 12.4 5.9 10.6 TBP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP 25.3 40.7 5.0 41.2 9.3 1.9 27.7 32.5 4.8 11.9 C20 3.2 3.5 N.D. 3.8 1.9 1.0 4.9 5.4 1.1 3.4 TPP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA 0.9 1.7 2.7 0.4 3.9 N.D. 7.3 3.3 N.D. 6.2 DEHP 777.8 566.2 28.0 796.2 246.2 156.2 766.2 1196.2 176.2 396.2
C16 換算 総有機
物量
3260 4560 330 5860 2860 860 5360 3760 1760 2660
N.D. : 検出限界以下
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
a)吸着面積同一条件の比較
図6-10に吸着面積同一条件のDEHP放散量と放散面積の関係を示す。
図6-10 吸着面積一定条件のDEHP放散量と放散面積の関係
建材の放散面積が増加する事によってDEHP放散量も増加する傾向がみられた。E50の放 散量はE25の約20倍、E100はE50の約1.3倍となった。SVOC放散源の面積が大きい室内 の場合、SVOC の放散量が高くなる可能性が考えられる。実空間の SVOC 汚染濃度を減ら すためには室内のSVOC放散源の面積を減らすことが有効であると考えられる。
0 0.001
放散面積[m2]
DEHP放散量[μg]
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.002 0.003 0.004 0.005 0.006
●E25 ■E50 ◆E100
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
b)放散面積同一条件の比較
図6-11に放散面積同一条件のDEHP放散量と吸着面積の関係を示す。
図6-11 放散面積同一条件のDEHP放散量と吸着面積の関係
チャンバー内の吸着面積が大きくなると放散量は増加することが予想されたが、吸着面 積が増加しても放散量は変化しなかった。
今回の試験で、チャンバー内の吸着面積の増加による SVOC 放散量の変化はなかった。
この結果から、実住宅でのハウスダストの量が多くても室内のSVOC放散原からSVOC放 散量は変化しなかった。すなわち、室内の SVOC 汚染濃度を削減するためにはハウスダス トを除去するより室内のSVOC放散原を減らすのが有効であることが分かった。
0.005
吸着面積[m2]
DEHP放散量[μg]
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
0.006 0.007 0.008 0.009 0.003 0.004
▲A0 ●A1 ■A2 ◆A3 ○Ax
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
c)24時間条件と72時間条件
図6-12に24時間条件と72時間条件のDEHP放散量の関係を示す。
図6-12 24時間条件と72時間条件のDEHP放散量の関係
A0(24時間条件)の放散量は0.4μgであったが、3(72時間条件)は、0.8μgで約2倍と
なった。放散時間が増加したことで、SVOCの総放散量も増加したと考えられる。実空間に おいては、放散されたSVOC物質がハウスダスト等に蓄積する可能性が考えられる。
しかし、建材からの放散速度は算出して見ると、A0(24時間条件)は3.1[μg/(m2・h)]で、
3(72時間条件)は2.1[μg/(m2・h)]であり、経時変化と共に建材からのDEHP放散速度は減 衰されている。この結果から、室内でのSVOC濃度が定常状態に近付くと建材からのSVOC 放散速度が徐々に減少することが予想される。
放散時間[h]
DEHP放散量[μg]
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0 0
▲A0 ▲3
20 40 60 80
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
6-5 床材のSVOC放散速度と室内の空気・ハウスダスト中SVOC濃度との関係
6-5-1 実測概要
表6-14 に対象住宅の測定概要を示す。K-TW(a)と K-TW(b)は床材のリフォーム前・後の ハウスダスト中SVOC濃度と床材からのSVOC放散速度を比較した。また、K-SHは2003 年に竣工された建物であるが、2007 年5月に壁紙と床材がリフォームされた住宅である。
K-YHは1990年に竣工されたが、2010年8月に壁紙と床材がリフォームされた住宅である。
表6-14 対象住宅の測定概要
サンプル名 K-TW(a) K-TW(b) K-SH K-YH
構造 鉄筋コンクリート造
換気
システム 第3種換気システム(トイレから排気)
ダスト齢 3日齢
竣工年月 2000 2003 1990
天井 クロス(塩ビ) クロス(塩ビ) クロス(塩ビ) クロス(紙) 壁 クロス(塩ビ) クロス(塩ビ) クロス(塩ビ) クロス(紙)
床材 PVCシート
(9年間便用した物)
PVCシート 2010.6 床材リフォーム
PVCシート 2007.5 壁紙と床材を
リフォーム
PVCシート 2010.8 壁紙と床材を
リフォーム ダスト
捕集面積[m2] 29 29 18 15
ダスト
総捕集量[mg] 195 2530 988 2230
63µm以下
ダスト量[mg] 5.5 23.3 24.8 78.0
測定時期 2009.5 2010.8 2010.10 2010.10
6-5-2 実測方法
ハウスダスト中SVOC濃度、室内気中SVOC濃度、床材からのSVOC放散速度について の実験方法は本章の6-2の実測方法6-2-1、6-2-2、6-2-3に示した方法と同じである。分析対 象物質はハウスダストから分析している13物質である。
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
6-5-3 実測結果
1) 室内のSVOC気中濃度
表6-15に気中からのSVOC検出量を示し、表6-16に室内のSVOC気中濃度を示す。図 6-13にDBP、DEHPの気中濃度を示す。
N.D.:検出限界以下 表6-15 気中からのSVOC検出量(TB考慮)
分析物質 検出量[ng]
K-TW(b) K-SH K-YH
2E1H 180 390 100
D6 11 110 44
BHT N.D. 4.9 N.D.
DEP 1.9 1.4 2.0
C16 23 37 17
TBP N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D.
DBP 15 13 11
C20 1.0 1.1 1.1
TPP N.D. N.D. N.D.
DOA N.D. N.D. N.D.
DEHP 17 11 4.5
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
N.D.:検出限界以下
表6-16 室内のSVOC気中濃度(TB考慮)
分析物質 気中濃度[µg/m3]
K-TW(b) K-SH K-YH
2E1H 6.0 13.0 3.3
D6 0.35 3.67 1.46
BHT N.D. 0.16 N.D.
DEP 0.06 0.05 0.07
C16 0.77 1.25 0.55
TBP N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D.
DBP 0.49 0.44 0.36
C20 0.03 0.04 0.04
TPP N.D. N.D. N.D.
DOA N.D. N.D. N.D.
DEHP 0.56 0.36 0.15
室内温度[℃] 24.2 23.7 22.7
相対湿度[%RH] 61 60 60
床表面温度[℃] 24.0 22.6 22.6
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
分析した対象物質は13物質であったが、DBP、DEHP以外の物質は微量であったため、
図6-13にはDBP、DEHPの気中濃度のみを示す。Wensingら5)の報告では、PVC製品に対 するチャンバー試験で、室内の温度下でのDEHP濃度が0.1µg/m3以下、60℃にてDEHP気
中濃度が5.2µg/m3であった。また、ドイツの実住宅において最も高かったDEHP気中濃度
は2.2µg/m3であったと報告されている。日本の場合、常本ら6)の研究によると実住宅のDEHP
気中濃度が0.63µg/m3、DBP が 1.4µg/m3であったと報告した。鍵ら 7)は DEHP 気中濃度が 0.19µg/m3、DBPが0.12µg/m3であったと報告した。金澤ら8)によると、札幌市の一般住宅の DEHP気中濃度の最大値が1.66µg/m3であったと報告している。
韓国住宅にて測定した DBP、DEHP の気中濃度は海外や日本住宅で測定された値と概ね 同じ値が測定された。K-TW(b)のDEHP気中濃度は最も高い値で、0.56µg/m3を示した。今 回の実測により、韓国住宅でも DBP、DEHP の気中濃度は日本住宅や海外で測定した実測 値と同じ傾向が見られた。
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
K‐TW(b) K‐SH K‐YH
DBP DEHP
図6-13 DBP、DEHPの気中濃度 気中濃度[µg/m3 ]
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
2) ハウスダスト中SVOC濃度
表6-17にハウスダストからのSVOC検出量を、表6-18にハウスダスト中SVOC濃度を 示す。図6-14にハウスダスト中DEHP濃度を示す。
表6-17 ハウスダストからのSVOC検出量
サンプル名 検出量[µg]
K-TW(a) K-TW(b) K-SH K-YH 2E1H N.D. N.D. N.D. N.D.
D6 N.D. N.D. N.D. N.D.
BHT N.D. N.D. N.D. N.D.
DEP N.D. N.D. N.D. N.D.
C16 N.D. N.D. N.D. N.D.
TBP N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP N.D. N.D. N.D. N.D.
C20 N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA N.D. N.D. N.D. N.D.
TPP N.D. N.D. N.D. N.D.
DEHP 4.56 111.84 69.44 327.18 C20換算総有機物量 5.54 102.52 54.56 397.29 63µm以下ダスト量[mg] 5.5 23.3 24.8 77.9
N.D.:検出限界以下
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
表6-18 ハウスダスト中SVOC濃度 サンプル名 SVOC濃度[µg/g]
K-TW(a) K-TW(b) K-SH K-YH 2E1H N.D. N.D. N.D. N.D.
D6 N.D. N.D. N.D. N.D.
BHT N.D. N.D. N.D. N.D.
DEP N.D. N.D. N.D. N.D.
C16 N.D. N.D. N.D. N.D.
TBP N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D.
TCEP N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP N.D. N.D. N.D. N.D.
C20 N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA N.D. N.D. N.D. N.D.
TPP N.D. N.D. N.D. N.D.
DEHP 830 4800 2800 4200
C20換算総有機物量 1000 4400 2200 5100 平均温度[℃] 24.1 24.2 23.7 22.7 相対湿度[RH%] 55 60 60 59 ハウスダスト総捕集量[mg] 195 2530 988 2230
63µm以下ダスト量[mg] 5.5 23.3 24.8 77.9 N.D.:検出限界以下
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
図6-14に各住宅のハウスダスト中DEHP濃度を示す。ハウスダスト中から検出された物 質はDEHPのみであり、その以外の物質は検出限界以下であった。K-TW(a)とK-TW(b)はリ フォーム前後のハウスダスト中DEHP濃度を比較した物である。K-TW(a)の床材はPVC系 の床材で、9年間使用した床材である。K-TW(b)は測定2ヶ月前にPVC系床材をリフォーム した住宅である。K-TW(a)のハウスダスト中DEHP濃度が830[µg/g]、K-TW(b)のハウスダス
ト中DEHP濃度が4800[µg/g]であった。りフォーム後K-TW邸のハウスダスト中DEHP濃
度はリフォーム前より約6倍程度高い値が測定された。また、測定2が月前に測定したK-YH のハウスダスト中DEHP濃度が4200[µg/g]で、約3年前にリフォームしたK-SHよりハウス ダスト中 DEHP 濃度が高かった。りフォーム前の K-TW(a)以外はドイツの既往研究
95P(2600[µg/g])より高い値を示した。韓国住宅は床材や壁紙として PVC 系が多く利用され
たため、ハウスダスト中DEHP濃度が高くなったと考えられる。
図6-14 ハウスダスト中DEHP濃度
0 1000 2000 3000 4000 5000
K‐TW(a) K‐TW(b) K‐SH K‐YH
ハウスダスト中DEHP濃度[µg/g]
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
3) 床材からのSVOC放散速度
表6-19に各床材からのSVOC放散量を、表6-20に各床材からのSVOC放散速度の測定 結果を示す。図6-15にDBP、DEHPの放散速度を示す。
表6-19 各床材からのSVOC放散量(TB考慮)
サンプル名
分析物質
K-TW(a) K-TW(b) K-SH K-YH SVOC検出量[ng]
A* H* A* H* A* H* A* H*
2E1H 93 23 N.D. 35 82 20 1500 130 D6 3.6 1.0 3.2 2.1 N.D. N.D. 1.6 N.D.
BHT N.D. N.D. 2.5 N.D. N.D. N.D. N.D. 1.7 DEP N.D. 1.0 N.D. 2.9 N.D. 2.8 N.D. 7.1 C16 19 4.3 13 4.5 5.1 2.2 24 5.5 TBP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 6.6 TCEP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP N.D. 13 2.2 120 N.D. 39 N.D. 110 C20 N.D. 3.2 N.D. 6.7 N.D. 1.1 N.D. 3.3 TPP N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. N.D. 1.5 DOA N.D. 7.0 N.D. 3.5 N.D. 2.9 N.D. 11 DEHP 1.0 90 N.D. 540 N.D. 170 N.D. 550
C16
換算総量有機物量計算 4600 2200 10000 6100 770 1300 7700 5600
A*:マイクロチャンバー法の1段階(放散試験)
H*:マイクロチャンバー法の2段階(加熱脱着)
N.D.:検出限界以下
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
N.D.:検出限界以下 表6-20 各床材からのSVOC放散速度(TB考慮)
分析物質 放散速度[µg/ m2・h]
K-TW(a) K-TW(b) K-SH K-YH
2E1H 0.9 0.3 0.8 12.9
D6 N.D. N.D. N.D. N.D.
BHT N.D. N.D. N.D. N.D.
DEP N.D. N.D. N.D. 0.1
C16 0.2 0.1 0.1 0.2
TBP N.D. N.D. N.D. 0.1 TCEP N.D. N.D. N.D. N.D.
DBA N.D. N.D. N.D. N.D.
DBP 0.1 1.0 0.3 0.9
C20 N.D. 0.1 N.D. N.D.
TPP N.D. N.D. N.D. N.D.
DOA 0.1 N.D. N.D. 0.1
DEHP 0.72 4.26 1.34 4.34 C16換算総量有機物量計算 53.7 127.1 16.3 105.0
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
分析した13物質の中からDBP、DEHPの放散速度を図6-15に示す。DEHPの場合、実際 の家で9年間使われたK-TW(a)が最も低い放散速度を示した。測定2ヶ月前リフォームした K-TW(b)とK-YH邸の床材からのDEHPの放散速度は4.34[µg/ m2・h]でほぼ同じであっ た。また、測定3年前にリフォームしたK-SH邸の床材のDEHP放散速度は1.34[µg/ m2・
h]で、実空間で長い時間施されていた床材ほどDEHPの放散速度が低い値を示した。しか
し、初期の放散速度が分からないため、今後経時変化による建材からの放散速度を検討す る必要があると考えられる。また、DBPの放散速度もDEHPの放散速度と同じ傾向が見ら れた。
図6-15 床材からの放散速度 放散速度[µg/ m2 ・h]
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0
K‐TW(a) K‐TW(b) K‐SH K‐YH
DBP DEHP
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
6-5-4 考察
図6-16に床材の放散速度とDEHP気中濃度との相関性を、図6-17に床材の放散速度とハ ウスダスト中DEHP濃度との相関性を示す。
図6-16 床材の放散速度とDEHP気中濃度との相関性
0 1000 2000 3000 4000 5000 6000
0 1 2 3 4 5
K‐TW(a) K‐TW(b) K‐SH K‐YH
ハウスダスト中DEHP濃度[µg/g]
DEHP放散速度[µg/ m2・h]
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
0 1 2 3 4 5
K‐TW(b) K‐SH K‐YH
DEHP気中濃度[µg//m3 ]
DEHP放散速度[µg/ m2・h]
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
図6-16に示したように床材の放散速度と室内のDEHP気中濃度との相関性は見られなか った。原因としては沸点が高い SVOC は気中よりハウスダストや家具、ガラスの表面など に付着する性質を持つため、測定した住宅の物理的な環境等が DEHP の気中濃度に影響を 与えたと考えられる。例えば、測定する際に室内の浮遊粉塵の濃度が高くなると、捕集管 に浮遊粉塵が多量捕集され、粉塵に付着しているDEHPの量が検出される可能性がある。
しかし、図6-17に示した床材の放散速度とハウスダスト中DEHP濃度の相関性は相関性 が見られた。リフォーム前、K-TW(a)の床材の放散速度が0.72[µg/( m2・h)]の時、ハウスダ スト中の DEHP の度が 830[µg/g]で、リフォーム後の K-TW(b)の床材放散速度が 4.26[µg/
(m2・h)]の時、ハウスダスト中の DEHP濃度が 4800[µg/g]であった。また、K-SHのDEHP 放散速度が1.34[µg/( m2・h)]で、ハウスダスト中DEHP濃度が2800[µg/g]であった。この結 果から、床材のDEHP放散速度は気中濃度よりハウスダスト中DEHP濃度にもっと相関性 があると考えられる。そのため、ハウスダスト中 SVOC 濃度を減らすためには放散速度が 低い床材を選択し、特に幼児が接触しやすい床の仕上げ材は可塑剤等が含有されていない 物を選択することが望ましいと考えられる。
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
6-6 まとめ
室内のSVOC放散源の1つであるPVC床材のSVOC放散速度や室内でのSVOC放散挙 動に関するメカニズムの検討を行った。また、本章では、2008 年に定められたマイクロチ ャンバー法(JIS A1904)と海外で測定しているチャンバーとの比較を行った。更に、韓国 住宅における気中・ハウスダスト中DEHP濃度を測定し、測定対象住宅の床材からのDEHP 放散速度との相関性を検討した。
マイクロチャンバー法で測定した72時間条件では、DEHP放散速度が約0.5[µg/m2・h]と なり、Littleチャンバー測定法の定常状態の値に近い値となった。各測定法において定常状 態になるまでの期間はCLIMPAQ、FLECが150日以上、Littleチャンバーは約30日である のに対し、マイクロチャンバー法ではきわめて短い時間での測定が可能になっている。
マイクロチャンバーにより、24時間条件のDEHP放散量は0.4μgであったが、72時間条
件は0.8μgで、約 2倍となった。しかし、建材からの放散速度を算出して見ると、24時間
条件は3.1[μg/(m2・h)]で、72時間条件は2.1[μg/(m2・h)]であり、経時変化と共に建材からの DEHP 放散速度が減衰された。そのため、室内の SVOC 濃度が定常状態に近付くと建材か らのSVOC放散量が徐々に減少する事が示唆される。
マイクロチャンバー試験により、試験体の放散面積が増加するとチャンバー内表面の DEHP の検出量が増加した。そのため、実空間の SVOC 汚染濃度を減らすためには室内の 放散源を減らすのが有効であると考えられる。また、チャンバー内の吸着面積が大きくな ると、放散量が増加すると予想したが、吸着面積が増加しても放散は変化しなかった。こ の結果から、実住宅でのハウスダスト量が多くても室内のSVOC放散源からSVOC放散量 は変わらないことが示唆された。
測定時間の経時変化によってマイクロチャンバー内の吸着濃度がほぼ一定になった。マ イクロチャンバーで72hに測定されたDEHP放散速度がLittleチャンバー、CLIMPAQで測 定された放散速度とほぼ同じであったが、FLECの放散速度は他のチャンバーより高い値を 示した。FLEC測定法は他のチャンバーよりN/Lが大きいためと考えられる。
韓国住宅の実測調査により、床材の DEHP放散速度と室内の DEHP気中濃度との相関性 は見られなかったが、床材のDEHP放散速度とハウスダスト中 DEHP濃度との相関性が見 られた。そのため、ハウスダスト中 SVOC 濃度を減らすためには放散速度が低い床材を選 択し、特に幼児が接触しやすい床の仕上げ材は可塑剤等が含有されていない建材を選択す ることが望ましいと考えられる。
第6章 室内のSVOC放散挙動実験及び実測調査
【参考文献】
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