地下建設における2液混合噴流の
172
0
0
全文
(2)
(3) 地下建設における2液混合噴流の 地盤掘削特性および地中支障物の切削性 に関する研究 Study on the Characteristics of Dual-Fluid Jets For the Soil Excavation and the Obstacles Cutting in Underground Construction. 2018 年 2 月 早稲田大学大学院 創造理工学研究科. 神山 Mamoru. 守. KAMIYAMA.
(4)
(5) 目 第1章. 次. 緒論. 1-1. 研究に至る経緯. 1-1. 1-2. 研究課題と方針. 1-2. 1-2-1. 研究課題. 1-2. 1-2-2. 研究方針. 1-3. 1-3. 本論文の構成. 1-6. 1-4. 用語の定義. 1-6. [参考文献] 第2章. 1-9. 下水道事業におけるトンネル技術の変遷と課題. 2-1. はじめに. 2-1. 2-2. 東京都における下水道整備の変遷. 2-2. 2-2-1. 草創期の下水道整備. 2-2. 2-2-2. 東 京 都 区 部 下 水 道 の 100% 普 及 へ の 道 の り. 2-3. 2-3. 我が国のトンネル技術の導入と変遷. 2-7. 2-3-1. 日本で最初のトンネル. 2-7. 2-3-2. シールド工法の導入. 2-7. 2-3-3. 東京都におけるシールド工法導入の経緯. 2-8. 2-3-4. シールド技術の変遷. 2-10. 2-3-5. 特殊条件下における施工技術の変遷. 2-12. 2-3-6. 都市の課題に挑戦するべく多様化するシールド技術. 2-15. 2-4. トンネル技術の発展に貢献した下水道事業. 2-15. 2-4-1. 下水道普及までの施工技術. 2-15. 2-4-2. 推進工法. 2-16. 2-4-3. シールド工法. 2-17. 2-5. 都市域におけるトンネル技術の課題. 2-20. 2-5-1. 地上への影響をより少なくする工夫. 2-20. 2-5-2. 工事期間を短くする工夫. 2-21. 2-5-3. 既設構造物への影響を最小限とする工夫. 2-21. [参考文献] 第3章. 2-22. 超高圧ジェット噴流を活用したトンネル技術の開発. 3-1. はじめに. 3-1. 3-2. 支障物処理の従来工法とその課題. 3-1. 3-2-1. 地上からの撤去. 3-1. 3-2-2. 掘進機内から人力による撤去. 3-1.
(6) 3-2-3 3-3. シールド機による直接切削. 超高圧噴流技術によるトンネル工法の開発経緯と特徴. 3-2 3-2. 3-3-1. 超高圧ジェット噴流技術の適用. 3-2. 3-3-2. 超高圧噴流技術の開発コンセプト. 3-3. 3-3-3. DO-Jet 工 法 の シ ス テ ム と 実 績. 3-5. 3-4. 小・中口径掘進機の開発. 3-7. 3-5. 掘進機の設計. 3-8. 3-5-1. 掘進機の構造検討および設計. 3-8. 3-5-2. 切断用ノズルの配置検討. 3-8. 3-5-3. 最大切断片の取込みに関する検討. 3-9. 3-5-4. 地盤改良用ノズルの配置検討. 3-10. 3-5-5. ノ ズ ル 以 外 の DO-Jet 工 法 の 機 能 の 装 備 に つ い て. 3-11. 3-5-6. 掘進機の構造検討. 3-14. 3-5-7. 基本設計および検討結果のまとめ. 3-16. 口 径 1000mm 対 応 の 超 高 圧 ジ ェ ッ ト シ ス テ ム. 3-17. 3-6. 3-6-1. 前方探査技術の評価. 3-18. 3-6-2. 超高圧地盤改良技術の評価. 3-24. 3-6-3. 切断および切断片除去技術の評価. 3-39. 3-6-4. 「 前 方 探 査 技 術 」「 超 高 圧 地 盤 改 良 技 術 」「 切 断 お よ び 切 断 片 除去技術」の適用範囲拡大実験のまとめ. 3-6-5. 口 径 800mm~ 1350mm の 施 工 実 績. [参考文献] 第4章. 3-53 3-56 3-57. 地盤改良用 2 液混合噴流の地盤掘削特性に関する研究. 4-1. 研究の背景. 4-1. 4-2. 研究の概要. 4-1. 4-3. 実験装置の製作. 4-2. 4-3-1. 圧力容器の仕様. 4-2. 4-3-2. 動圧測定センサの仕様. 4-3. 4-3-3. 動圧測定センサの精度確認. 4-4. 4-3-4. ミキシング室内の噴流特性. 4-6. 4-4. 加圧水中における噴流状態の目視観察. 4-7. 4-5. ノズル内の混合過程のモデル化とその検証. 4-8. 4-5-1. 運動量保存則による混合噴流の噴出速度. 4-8. 4-5-2. 算出された流速の検証. 4-9. 水中における噴流の動圧の測定. 4-12. 4-6. 4-6-1. 実験条件. 4-12.
(7) 4-6-2. 実験結果. 4-12. 4-6-3. まとめ. 4-15. 4-7. 乱 流 モ デ ル に よ る 水 中 に お け る 噴 流 の 流 動 特 性 の FVM 解 析. 4-16. 4-7-1. 定常解析モデル. 4-16. 4-7-2. 解析結果. 4-17. 4-7-3. FVM 解 析 の ま と め. 4-21. 4-8. 模擬地盤の掘削実験. 4-21. 4-8-1. 可視化用透明容器の製作. 4-21. 4-8-2. 模擬地盤の作製方法. 4-21. 4-8-3. 可視化容器を用いた掘削実験. 4-22. 4-9. 混 相 流 モ デ ル に よ る 地 盤 掘 削 過 程 の FVM 解 析. 4-25. 4-10 現 状 の 地 盤 改 良 計 画 の 評 価. 4-27. 4-11 ま と め. 4-28. 4-11-1. 2 液混合噴流の動圧分布. 4-28. 4-11-2. 地盤の掘削実験. 4-28. 4-11-3. FVM 解 析. 4-28. 4-11-4. 今後の課題. 4-29. [参考文献] 第5章. 4-30. 2 液混合噴流による地中支障物の切削性に関する研究. 5-1. 本研究の目的. 5-2. 高 水 圧 下 に あ る 奥 行 き 300mm を 超 え る 支 障 物 に 対 す る. 5-1. DO-Jet 工 法 の 適 用 性. 5-1. 5-3. 検証実験の概要. 5-2. 5-4. 適用性を検証する工事の概要. 5-2. 5-5. 超高圧ジェット噴流の事前の確認実験と考察. 5-4. 5-5-1. 実験場所および実験装置の概要. 5-4. 5-5-2. 実験機器. 5-4. 5-6. 気 中 環 境 に お け る 切 断 能 力 確 認 実 験( 実 験 case1). 5-5. 5-6-1. 実験方法. 5-5. 5-6-2. 圧力容器内の圧力が切断能力に与える影響の把握. 5-8. 5-6-3. 噴射材料が切断能力に与える影響の把握. 5-8. 5-6-4. 噴射ノズルの適正な移動速度の把握. 5-8. 5-6-5. 実験結果. 5-9. 5-7. 気中環境における切断能力確認実験のまとめ. 5-15. 5-8. 土 中 切 断 お よ び 改 良 体 確 認 実 験( 実 験 case2). 5-16. 5-8-1. 実験方法. 5-16.
(8) 5-8-2 5-9. 実験結果. 土中切断および改良体確認実験のまとめ 土中切断. 5-31. 5-9-2. 土中切断後の改良材の置換え. 5-31. まとめ. [参考文献] 第6章. 5-31 5-33. 結論 本研究の結論. 6-1-1. DO-Jet 工 法 の 小・中 口 径 ト ン ネ ル へ の 適 用 拡 大. 6-1-2. DO-Jet 工 法 に お け る 2 液 混 合 噴 流 が 地 盤 等 へ 与 え る 影 響 の解明. 6-1-3 6-2. 5-31. 5-9-1 5-10. 6-1. 5-18. 6-1 6-1 6-2. DO-Jet 工 法 に お け る 2 液 混 合 噴 流 の 支 障 物 の 切 削 性 の解明. 6-2. 今後の課題. 6-3. 謝辞 研究業績.
(9) 第1章 1-1. 緒論. 研究に至る経緯. 下 水 道 は ,汚 水 の 収 集 お よ び 処 理 ,雨 水 の 排 除 と い う 機 能 を 有 し ,生 活 環 境 の 改 善 や 公 衆 衛 生 の 向 上 ,浸 水 の 防 除 ,さ ら に は ,河 川 等 の 公 共 用 水 域 の 水 質 保全を図るための重要な施設であり,市民の生活や都市の機能を支えている. 著 者 が 下 水 道 事 業 に 携 わ る よ う に な っ た 1991 年 当 時 の 下 水 道 事 業 最 大 の 目 標 は , 東 京 都 区 部 の 下 水 道 を 1995 年 3 月 ま で に 100% 普 及 さ せ る こ と で あ っ た .同 時 に ,長 年 の 組 織 目 標 で あ る 100% 普 及 達 成 後 の 下 水 道 事 業 が 抱 え て い る諸課題の解決に道筋をつけ,事業を的確に軌道に乗せていくことであった. そ の 一 つ が ,下 水 道 普 及 促 進 の 陰 に あ っ て 対 処 療 法 的 な 取 り 組 み に と ど ま っ て い た 老 朽 化 対 策 を 着 実 ,円 滑 に 展 開 で き る よ う に す る こ と で あ り ,そ の た め の 調 査 ,研 究 が 精 力 的 に 行 わ れ て い た .そ の よ う な 中 に あ っ て ,著 者 は 住 宅 密 集 地での推進工事やシールド工事などの現場経験を踏まえた計画づくりに取り 組むこととなった. 下 水 道 の 老 朽 化 と は ,経 年 的 な 劣 化 と ,機 能 や 能 力 が 低 下 し て 所 定 の 下 水 道 の 役 割 を 担 う こ と が で き な い 状 態 を い う .す な わ ち ,下 水 道 管 き ょ を 例 に と る と ,前 者 に よ る 状 態 と そ れ に 起 因 す る 現 象 と し て は ,管 路 に 生 じ た ひ び 割 れ や 抜 け 出 し な ど と ,道 路 陥 没 の 発 生 や 下 水 の 地 山 へ の 流 出 に よ る 地 下 水 汚 染 ,後 者は都市化の進展に伴う雨水流出量の増加に伴う雨水排除能力の 不足とそれ に よ る 浸 水 被 害 の 発 生 と い っ た こ と が 挙 げ ら れ る .こ の よ う な 老 朽 化 へ の 対 応 を計画的に行う事業を再構築事業と定義して計画づくりを進めた. そ の 後 ,施 設 建 設 の 現 場 責 任 者 と し て 計 画 に 沿 っ て 実 際 に 再 構 築 事 業 の 設 計 や 工 事 を 指 揮 す る 立 場 に な り ,そ れ ま で と は 異 な る 課 題 に 遭 遇 す る こ と に な っ た .す な わ ち ,非 開 削 の ト ン ネ ル 工 事 に お い て 鋼 矢 板 や H 形 鋼 な ど の 仮 設 材 が 土 中 に 残 置 さ れ た 現 場 に 遭 遇 す る こ と が 多 々 あ り ,推 進 工 事 や シ ー ル ド 工 事 を 施 工 す る 上 で 障 害 に な っ て い た .こ の 問 題 は ,事 前 に 支 障 物 の 存 在 が 判 っ て い る 場 合 と 判 っ て い な い 場 合 と で は 対 処 の 方 法 が 異 な る .判 っ て い る 場 合 は ,埋 設 位 置 を 変 更 す る こ と に な る が ,現 実 的 に は 変 更 し て 下 水 道 管 き ょ を 埋 設 で き る ス ペ ー ス が 限 ら れ て い る の が 実 態 で あ る .施 工 中 に 判 明 し た 場 合 は ,一 般 的 に は 路 上 か ら 開 削 に よ り 支 障 物 を 撤 去 す る こ と を 検 討 す る こ と に な る が ,鋼 材 な ど を 残 置 し て し ま っ た 原 因 が ,撤 去 す る こ と が で き な い 施 工 環 境 で あ っ た こ と に 起 因 し た も の が ほ と ん ど で あ り ,そ の 場 合 は 工 事 の 中 断 を 余 儀 な く さ れ る ことになる.いずれの場合も再構築事業を円滑に進めることができなくなり, 下水道事業を推進する上で大きな課題となっている. 東 京 都 下 水 道 局 で は ,こ の 課 題 に 対 し て 非 開 削 で ,推 進 あ る い は シ ー ル ド 機 1-1.
(10) 内 か ら 支 障 物 を 切 断 ,除 去 で き る 技 術 が 事 業 を 推 進 し て 行 く 上 で 必 要 で あ る と 考 え ,そ の 実 現 の た め に ,下 水 道 局 の 指 導 の 下 ,下 水 道 局 の 監 理 団 体 で あ る 東 京 都 下 水 道 サ ー ビ ス 株 式 会 社( 以 下「 TGS」と 呼 ぶ )が 民 間 企 業 と の 共 同 研 究 , 技 術 開 発 に 取 り 組 ん だ .そ の 結 果 ,開 発 ,実 用 化 さ れ 多 く の 現 場 で 適 用 さ れ る よ う に な っ た 工 法 が DO-Jet 工 法 ( Double Object Jet Method) で あ る . 一 方 , DO-Jet 工 法 の 採 用 が 拡 大 す る に つ れ て 新 た な 課 題 が 発 現 し て き た . す な わ ち ,採 用 機 会 の 多 い 小・中 口 径 へ の 適 用 が で き な い か ,切 断 等 に 用 い る 超 高 圧 ジ ェ ッ ト 噴 流 が 地 盤 内 で 悪 影 響 を 及 ぼ す こ と は な い か ,地 下 埋 設 部 の 輻 輳 に よ り 下 水 道 管 き ょ の 布 設 位 置 が 深 く な っ た た め ,高 水 圧 下 で の 施 工 は ど の ように行うことが合理的なのか,といったことなどである. 1-2 1-2-1. 研究課題と方針 研究課題. 東 京 都 区 部 の 下 水 道 は ほ ぼ 普 及 率 100% に な っ て い る も の の ,大 正 ,昭 和 初 期 に 建 設 さ れ た 下 水 道 施 設 ,取 り 分 け 下 水 道 管 き ょ は ひ び 割 れ や 破 損 あ る い は 鉄 筋 の 腐 食 と い っ た 老 朽 化 が 進 ん で お り ,そ の 対 策 が 急 が れ て い る .ま た ,道 路の舗装化や都市開発の進展等による雨水浸透能力の低下が下水道への雨水 流 出 量 を 増 加 さ せ ,結 果 的 に 雨 水 排 除 能 力 が 不 足 す る よ う に な っ て い る .さ ら に ,近 年 頻 発 す る 局 地 的 な 集 中 豪 雨 に よ り 浸 水 被 害 が 頻 発 す る よ う に な っ て い る .こ の た め ,東 京 都 で は 老 朽 化 対 策 や 浸 水 対 策 と し て の 再 構 築 事 業 を 鋭 意 進 めているところである. 再 構 築 事 業 で は ,比 較 的 小 口 径 な 管 き ょ に つ い て は ,更 生 工 法 で 管 内 面 を 巻 き た て る な ど し て 再 生 し た り ,開 削 工 法 に よ り 管 き ょ の 入 れ 替 え を 行 う 工 事 を 行 っ て い る .大 口 径 な 管 き ょ に つ い て は ,工 事 に よ る 地 盤 沈 下 に よ る 影 響 や 道 路 交 通 へ の 影 響 ,輻 輳 す る 地 下 埋 設 物 の 存 在 な ど の 制 約 か ら 非 開 削 工 法 で あ る 推 進 工 法 や シ ー ル ド 工 法 が 多 用 さ れ て い る .東 京 都 下 水 道 局 で は ,従 来 よ り シ ールド掘進に伴う地盤変状と周辺家屋との関係等について現場計測をはじめ と し た 調 査 研 究 を 行 い ,地 盤 沈 下 の メ カ ニ ズ ム や そ の 解 析 手 法 な ど に つ い て の 知見. 1) 2) 3) を 蓄 積 し て き て い る . 一 方 , 近 年 課 題 と な っ て い る シ ー ル ド 工 事. な ど に お け る 地 中 支 障 物 の 問 題 ,地 中 に 残 置 さ れ 施 工 時 に 支 障 と な る 事 案 に 対 する施工技術については確たるものは有していない状況にあった.このため, 東 京 都 下 水 道 局 と TGS は , 2002 年 頃 か ら 超 高 圧 ジ ェ ッ ト 噴 流 を 活 用 し た 切 削 技 術 を 有 す る 民 間 企 業( ジ ェ ッ ト モ ー ル 工 法 開 発 企 業 )な ど と ,支 障 物 を 安 全 , 確 実 に 除 去 で き る と と も に ,周 辺 構 造 物 な ど に も 影 響 な ど を 与 え る こ と が な い 技 術 を 共 同 で 開 発 ,実 用 化 4 )し て き た .こ の 技 術 が DO-Jet 工 法 で ,口 径 1500mm 1-2.
(11) 以上の規模の管きょ断面を対象としたものであった. 一 方 , DO-Jet 工 法 の 採 用 が 拡 大 す る に つ れ て 新 た に 以 下 の 課 題 が 発 現 し て きた. ① 採用機会の多い小・中口径への適用拡大ができないか ② 支障物の切断等に用いる超高圧ジェット噴流が地盤や近接構造物にどの ような影響を与えているのか ③ 大深度の高水圧下でも効率的に施工ができないか 著 者 は ,こ れ ら の 課 題 に 対 し て ,実 務 的 な 対 応 と と も に 実 験 的 な 方 法 に よ り 解決策を探るための研究を進めることとした. 1-2-2. 研究方針. 前 述 し た 研 究 課 題 ① に 対 し て は ,次 の よ う な 取 り 組 み を 行 っ た .従 来 の 口 径 1500mm 以 上 の 掘 進 機 が 備 え て い る DO-Jet 工 法 の 機 能 で あ る ,地 中 の 障 害 物 や 構 造 物 の 位 置 を 明 ら か に す る 探 査 技 術 ( 前 方 探 査 技 術 ), 地 中 の 構 造 物 に 影 響 を 与 え る こ と な く 周 辺 地 盤 を 改 良 す る 技 術 ( 超 高 圧 地 盤 改 良 技 術 ), 地 中 の 障 害 物 を 超 高 圧 噴 射 シ ス テ ム に よ り 切 断 お よ び 除 去 す る 技 術( 切 断 お よ び 除 去 技 術 )を 基 本 に ,小・中 口 径 の 掘 進 機 が 同 様 の 機 能 を 発 揮 で き る よ う に す る た め の研究開発である.本研究は,これまでの実務経験などを基に ,実際に口径 1000mm の 掘 進 機 を 製 作 し , こ の 掘 進 機 を 実 験 フ ィ ー ル ド 土 中 に 埋 設 し て 所 定 の 性 能( 前 方 探 査 技 術 ,超 高 圧 地 盤 改 良 技 術 ,切 断 お よ び 除 去 技 術 )の 確 認 を 行うなど実証的な取り組みを行うことにした. 研 究 課 題 ② に 対 し て は ,超 高 圧 ジ ェ ッ ト 噴 流 の 地 盤 内 で の 挙 動 を 明 ら か に す る こ と で あ る .こ の 課 題 に 対 し て は ,以 下 の よ う な 取 り 組 み を 行 う こ と と し た . DO-Jet 工 法 に よ る 超 高 圧 水 が 地 中 で は ど の よ う な 現 象 を 引 き 起 こ し , ど の よ う な 影 響 を 与 え て い る の か ,実 際 の 現 場 で は 地 中 で の 挙 動 を 計 測 す る 手 段 が な か っ た た め ,定 量 的 に は 把 握 で き て い な い .そ こ で 著 者 ら は ,超 高 圧 水 の 実 際 の地盤中での挙動および超高圧水による近接構造物への影響や地盤改良範囲 を定量的に把握するための調査研究. 5 ), 6 ) を 実 施 す る こ と と し ,大 型 の 圧 力 容. 器中に模擬地盤を作製して超高圧水の動圧の測定と地盤の掘削過程を再現し た実験などを行うことにした. 最 後 に 研 究 課 題 ③ に つ い て で あ る .東 京 都 江 東 区 に お い て 地 下 鉄 工 事 施 工 時 に 大 型 の 支 障 物 が 残 置 さ れ て い る 場 所 で ,下 水 道 管 き ょ を シ ー ル ド 工 事 で 施 工 す る こ と に な っ た .こ の 現 場 は ,地 下 水 位 が 高 い 軟 弱 な 沖 積 層 に 位 置 し ,土 被 り 約 30m と 埋 設 深 度 が 深 い . 課 題 ② の 研 究 に お い て 超 高 圧 ジ ェ ッ ト 噴 流 の 影 響 範 囲 な ど は 明 ら か に す る こ と は で き た も の の ,水 圧 の 高 い 大 深 度 工 事 に お け る 切 削 能 力 や 支 障 物 背 面 へ の 影 響 な ど の 詳 細 は 把 握 で き て い な い こ と か ら ,施 1-3.
(12) 工 の 安 全 性 や 効 率 性 の 観 点 か ら 調 査 研 究 す る こ と に し た .本 調 査 研 究 で は ,大 型 圧 力 容 器 を 用 い て ,支 障 物 が 残 置 さ れ て い る 状 態 を 再 現 し た 模 擬 地 盤 を 作 製 し,気中と水圧が作用した場合の違いによる切削能力等を調査研究7)するこ ととした. こ の 結 果 か ら ,実 際 の 大 深 度( 高 水 圧 )の 現 場 で の 施 工 性 を 向 上 さ せ る 方 法 と し て は ,切 羽 前 面 に 圧 気( 限 定 圧 気 )を 作 用 さ せ る こ と が 考 え ら れ た .そ こ で ,同 様 の 圧 力 容 器 を 用 い て 容 器 内 に 圧 気 状 態 を 再 現 し て ,切 削 能 力 の 改 善 な どを実証するための研究を行うことにした. 以 上 述 べ た 本 研 究 の 概 要 を 図 1-1 に 示 す .. 1-4.
(13) 【本研究の背景】 非開削トンネル工事(シールド・推進工事)における課題 鋼矢板等の仮設材が土中に残置された現場に遭遇した場合,施工上の大きな障害. 掘 進 機 内 か ら 支 障 物 を 切 断 , 除 去 で き る 技 術 ( DO-Jet 工 法 ) を 開 発 , 実 用 化. DO-Jet 工 法 の 採 用 が 拡 大 す る に つ れ て , 新 た な 課 題 が 発 現. 【研究課題と方針】. 超高圧ジェット噴流を活用したトンネル技術の開発. 第3章. 【課題1】採用機会の多い小・中口径への適用拡大ができないか. 第4章. ·. こ れ ま で 適 用 範 囲 外 で あ っ た 口 径 1000 ㎜ の 掘 進 機 を 製 作. ·. 掘進機を実験フィールド土中に埋設,所定の性能を評価. 地盤改良用2液混合噴流の地盤掘削特性に関する研究 【 課 題 2 】支 障 物 の 切 断 等 に 用 い る 超 高 圧 ジ ェ ッ ト 噴 流 が 地 盤 や 近 接 構 造物にどのような影響を与えているか. 第5章. ·. 大 型 の 圧 力 容 器 中 に 模 擬 地 盤 を 作 製 し ,動 圧 分 布 を 測 定. ·. 超高圧水の動圧と地盤掘削過程を再現した実験を実施. ·. 動 圧 の 測 定 結 果 を FVM 解 析 結 果 と 比 較 ,地 盤 の 掘 削 過 程 を FVM 解 析. 2液混合噴流による地中支障物の切削性に関する研究 【課題3】大深度の高水圧下でも効率的に施工ができないか ·. 大型の圧力容器中に,支障物が残置された模擬地盤を作製. ·. 「気中」と「水圧が作用した場合」の切削能力などを比較調査し, 高水圧下での効率的な施工方法を確認. 【本研究の結論】 . DO-Jet 工 法 の 小 ・ 中 口 径 ト ン ネ ル へ の 適 用 拡 大 小・中口径でも実用化が可能で有効な技術であることを確認. . DO-Jet 工 法 に お け る 2 液 混 合 噴 流 が 地 盤 等 へ 与 え る 影 響 の 解 明 解析結果が改良範囲の推定,近接構造物の影響評価等に活用できることを明 らかにした. . DO-Jet 工 法 に お け る 2 液 混 合 噴 流 の 支 障 物 の 切 削 性 の 解 明 ノ ズ ル か ら の 距 離 が 600 ㎜ 程 度 の 位 置 に あ る 鋼 材 を 切 断 で き る こ と を 確 認 し,作業効率の向上や作業時間の短縮が可能であることを示した. 図 1-1. 本研究の概要 1-5.
(14) 1-3. 本論文の構成. 本論文は 6 章から構成されており,その概要は以下のとおりである. 第 1 章 で は ,研 究 に 至 る 背 景 ,研 究 課 題 と 方 針 ,本 論 文 の 構 成 ,お よ び 用 語 の定義を述べている. 第 2 章 で は ,東 京 都 に お け る 下 水 道 整 備 の 変 遷 ,我 が 国 の ト ン ネ ル 技 術 の 導 入 と 変 遷 ,ト ン ネ ル 技 術 の 発 展 に 貢 献 し た 下 水 道 事 業 ,都 市 域 に お け る ト ン ネ ル技術の課題について述べている. 第 3 章 で は ,シ ー ル ド 等 ト ン ネ ル 工 事 に お け る 支 障 物 の 処 理 に 関 す る 従 来 工 法とその課題について述べるとともに, これまでの実務経験などを基に口径 1000mm に 対 応 す る 掘 進 機 を 試 作 し , 「 前 方 探 査 技 術 」, 「 超 高 圧 地 盤 改 良 技 術 」, 「 切 断 お よ び 除 去 技 術 」に 関 す る 各 種 実 験 を 行 い ,こ れ ま で 適 用 範 囲 外 で あ っ た 口 径 1000mm に お け る DO-Jet 工 法 の 基 本 性 能 を 評 価 し た 結 果 を 述 べ て い る . 第 4 章 で は , DO-Jet 工 法 の 2 液 混 合 噴 流 が 及 ぼ す 影 響 範 囲 や 地 盤 改 良 範 囲 を明らかにするために行った実験的研究について述べている. 地盤中での 2 液混合噴流と地盤との相互挙動を実際の現場では計測することができないた め ,実 験 で は ,大 型 の 圧 力 容 器 中 に 模 型 地 盤 を 作 製 し て 超 高 圧 水 の 動 圧 と 地 盤 の 掘 削 過 程 を 再 現 し ,そ の 挙 動 を 観 察 し た .さ ら に ,2 液 混 合 噴 流 に 関 す る FVM 解析を行い,実験結果と比較検討した内容などを述べている. 第 5 章 で は ,大 深 度 で 大 型 の 支 障 物 が 残 置 さ れ て い る シ ー ル ド 工 事 を 効 率 的 , 安 全 に 施 工 す る た め に 行 っ た DO-Jet 工 法 の 施 工 の 効 率 性 に 関 す る 研 究 に つ い て 述 べ て い る . DO -Jet 工 法 で 安 全 , 確 実 に 切 断 す る こ と が 可 能 な 支 障 物 の 奥 行 き は ,鋼 材 で 300mm 程 度 で あ る .奥 行 き が 300mm を 超 え る 支 障 物 に 遭 遇 し た 場 合 は ,2 回 以 上 の 切 断 を 行 う 必 要 が あ る た め ,切 断 作 業 回 数 が 増 え 工 事 期 間 が 長 期 化 す る .こ の た め ,地 下 水 圧 の 違 い に よ る 切 削 性 能 を 確 認 し た 上 で ,効 率的な施工を行うために切羽前面を限定 的に圧気することで地下水圧を軽減 した状況で支障物の切断および除去の効率を向上させる方法を研究した成果 を述べている. 第 6 章 で は ,本 研 究 の 成 果 を 結 論 と し て 述 べ る と と も に ,今 後 の 課 題 に も 言 及している. 1-4. 用語の定義. 本 論 文 で 用 い た 用 語 の う ち ,シ ー ル ド 工 法 お よ び 地 盤 改 良 並 び に ト ン ネ ル 工 事における地中の支障物の除去において一般的に用いられている用語以外に ついて,以下のように定義する.. 1-6.
(15) ・アブレシブ 支 障 物 を 切 断 す る た め に 用 い る 研 磨 剤 を い う .研 磨 剤 に は 環 境 基 準 に 適 合 したガーネットを用いている. ・アブレシブジェット 支 障 物 を 切 断 す る た め に ,切 断 用 ノ ズ ル か ら 超 高 圧 で 噴 射 さ れ る 研 磨 剤 を 含んだ粉粒体をいう. ・アブレシブスラリー 支 障 物 を 切 断 す る た め に 用 い る ,研 磨 剤 と 硬 化 剤 お よ び ポ リ マ ー 溶 液 の 混 合液をいう. ・アブレシブライン アブレシブスラリーまたはセメントミルクをミキシング室まで圧送する 系 列 の こ と で あ り ,ア ブ レ シ ブ ス ラ リ ー ま た は セ メ ン ト ミ ル ク の 供 給 装 置 か ら ,圧 送 ホ ー ス ,超 高 圧 複 合 ス イ ベ ル ,超 高 圧 メ イ ン シ ャ フ ト ,カ ッ タ ー ヘ ッド内超高圧配管およびホース類,超高圧噴射ノズルまでをいう. ・加泥材 超高圧地盤改良前の切羽保持とアブレシブスラリーや超高圧地盤改良材 のチャンバ内の付着防止や閉塞防止のために注入する粘土系の添加材をい う. ・給水フィルタユニット 超 高 圧 発 生 装 置 に 送 る 水 道 水 ま た は 井 戸 水 な ど に 含 ま れ る 微 粒 子 を ,膜 ろ 過などによって除去する装置をいう. ・珪酸ナトリウム溶液供給装置 カッターヘッド前方における支障物の有無の探査時や超高圧地盤改良時 および切断時において使用する珪酸ナトリウム溶液を撹拌し供給する装置 をいう. ・ジェットライン 超高圧ジェット水を超高圧噴射ノズルの噴射口まで圧送する系統のこと であり,超高圧発生装置から超高圧ホース,超高圧ロータリージョ イント, ラ イ ン 切 替 ユ ニ ッ ト ,超 高 圧 複 合 ス イ ベ ル ,超 高 圧 メ イ ン シ ャ フ ト ,カ ッ タ ーヘッド内超高圧配管およびホース類,超高圧噴射ノズルまでをいう. ・スラリー撹拌装置 アブレシブスラリーを製造するために研磨剤と硬化剤およびポリマー溶 液を調合し撹拌混合をする装置をいう. ・スラリー供給装置 ス ラ リ ー 撹 拌 装 置 で 製 造 し た ア ブ レ シ ブ ス ラ リ ー を 圧 送 す る 装 置 ,ま た は 前方探査時の硬化剤溶液を圧送する装置をいう.. 1-7.
(16) ・切断材 超高圧ジェットにおいて,噴射して支障物を切断する材料のことをいう. 木 材 や 巨 石 ,岩 盤 等 を 切 断 す る 場 合 は ,超 高 圧 ジ ェ ッ ト 水( 溶 液 型 注 入 材 等 ) を 用 い ,鋼 材 類 を 切 断 す る 場 合 は ,ア グ レ シ ブ ス ラ リ ー と 珪 酸 ナ ト リ ウ ム 溶 液の混合材を用いる. ・切断および除去システム 切断施工図を基に超高圧のアブレシブジェットによって支柱障害物の切 断と除去を行う一連のシステムをいう. ・切断用ノズル 支障物を切断するためにカッターヘッドおよびオーバカッターに装備し たノズルをいう. ・超高圧 10Mpa 以 上 ( 最 大 245MPa) の 圧 力 を 超 高 圧 と い う . ・超高圧ジェット 「 前 方 探 査 」, 「 超 高 圧 地 盤 改 良 」, 「 切 断 お よ び 除 去 」の そ れ ぞ れ の 目 的 に 応 じ て ,切 断 用 ノ ズ ル ま た は 地 盤 改 良 用 ノ ズ ル か ら 噴 射 す る 超 高 圧 の 粉 粒 体 の総称をいう. ・低圧 1.0MPa 程 度 の 圧 力 を 低 圧 と い う . ・低圧ジェット 「 前 方 探 査 」, 「 切 断 お よ び 除 去 」の そ れ ぞ れ の 目 的 に 応 じ て ,ア ブ レ シ ブ ラ イ ン か ら ミ キ シ ン グ 室 に 低 圧 ( 1 MPa) で 送 ら れ る 硬 化 剤 溶 液 ま た は ア ブ レシブスラリーをいう. ・2 液混合噴流 超高圧ジェットと低圧ジェットを混合して噴射する方式をいう.. 1-8.
(17) [参考文献] 1) 下 水 道 シ ー ル ド 工 事 に お け る 地 盤 沈 下 対 策 ( そ の 1) 協会誌. 間片博之. 下水道. 間片博之. 下水道. Vol.17, No.192, 1980. 3) 下 水 道 シ ー ル ド 工 事 に お け る 地 盤 沈 下 対 策 ( そ の 3) 協会誌. 下水道. Vol.17, No.191, 1980. 2) 下 水 道 シ ー ル ド 工 事 に お け る 地 盤 沈 下 対 策 ( そ の 2) 協会誌. 間片博之. Vol.17, No.193, 1980. 4) 地 中 障 害 物 対 策 を 駆 使 し た シ ー ル ド 施 工 -東 京 都 下 水 道 王 子 西 一 号 幹 線 神山守,岡本順,坂本久之. 日本トンネル技術協会誌. トンネルと地下. Vol.47, No.8, pp.59-67, 2016 5) Do-Jet 工 法 に お け る 超 高 圧 2 液 混 合 ジ ェ ッ ト 噴 流 の 影 響 範 囲 に 関 す る 実 験的研究 誌. 神山守,小泉淳,磯部隆寿,岩佐行利. トンネルと地下. 日本トンネル技術協会. Vol.47, No.11, pp.47-52, 2016. 6) 支 障 物 撤 去 型 掘 進 工 法 に お け る 地 盤 改 良 二 液 混 合 噴 流 の 地 盤 掘 削 特 性 に 関 する研究. 神山守,小泉淳,磯部隆寿,田中雅彦,志村洋平. 土木学会論. 文 集 F1( ト ン ネ ル 工 学 ), Vol.73, No.2, pp.88-99, 2017 7) 限 定 圧 気 工 法 を 併 用 し た DO-Jet 工 法 の 支 障 物 切 断 性 能 に 関 す る 実 験 的 研 究. 神山守,小泉淳,磯部隆寿,杉本克美,志村洋平. ド技術交流会論文集. pp.60-65, 2017.8. 1-9. 第9回日中シール.
(18)
(19) 第2章 2-1. 下水道事業におけるトンネル技術の変遷と課題 はじめに. 東 京 都 に お け る 下 水 道 の 整 備 は 明 治 17 年 の 神 田 地 区 に お い て 施 工 さ れ た 「 神 田 下 水 」を 嚆 矢 と し て い る .爾 来 ,100 年 以 上 の 歳 月 を か け て 平 成 6 年 度 末 に 東 京 都 区 部 の 下 水 道 の 普 及 は 100% 概 成 に 至 っ た .こ の 結 果 ,東 京 都 区 部 に は 13 か 所 の 水 再 生 セ ン タ ー と 84 か 所 の ポ ン プ 所 , 約 16,000km に 及 ぶ 下 水 道管きょが整備された. こ の 内 , 下 水 道 管 き ょ の 約 50% は 高 度 経 済 成 長 期 に 整 備 さ れ て お り , 法 定 耐 用 年 数 50 年 を 超 え た 老 朽 下 水 道 管 き ょ の 延 長 は 既 に 約 1,800 km に 達 し て い る .今 後 ,高 度 経 済 成 長 期 以 降 に 整 備 し た 大 量 の 下 水 道 管 き ょ が 一 斉 に 耐 用 年 数 を 迎 え , 20 年 後 に は 約 8,900 km に 増 加 す る こ と か ら , 下 水 道 管 き ょ の 老 朽 化対策を計画的に進めることが大きな課題となっている. 下 水 道 管 き ょ は 道 路 を 占 用 し て 埋 設 さ れ て い る .都 心 部 の 道 路 下 に は ,下 水 道 管 き ょ 以 外 に も ,水 道 や 電 気 ,ガ ス 管 ,通 信 ケ ー ブ ル ,地 下 鉄 な ど の 多 く の ラ イ フ ラ イ ン が 埋 設 さ れ て い る .こ の た め ,下 水 道 管 き ょ の 老 朽 化 対 策 を 進 め る に は ,埋 設 物 を 避 け て 下 水 道 管 き ょ を 布 設 し た り ,あ る い は 移 設 を 最 小 限 に 留 め る と と と も に ,道 路 交 通 や 都 民 の 日 常 生 活 へ の 影 響 を 最 小 限 に 抑 え る こ と が 必 要 と な っ て い る . さ ら に , 既 に 整 備 さ れ た 下 水 道 管 き ょ は 24 時 間 365 日 利 用 さ れ て お り ,下 水 を 一 時 も 止 め る こ と は で き な い た め ,老 朽 化 し た 下 水 道 管 き ょ の 対 策 を 行 う に は ,下 水 の 流 れ を 切 り 替 え る 新 た な 下 水 道 管 き ょ を 整 備 することが必要となっている. ま た ,こ れ ま で の 都 市 化 の 進 展 に よ り 道 路 の 舗 装 化 や 緑 地 の 開 発 な ど が 進 み , 下 水 道 に 流 入 す る 雨 水 量 が ,高 度 経 済 成 長 期 以 前 と 比 較 し て 約 1.6 倍 に 増 加 し て お り ,下 水 道 管 き ょ の 雨 水 排 除 能 力 が 不 足 し て き て い る .こ れ に 加 え て ,近 年 で は 局 地 的 集 中 豪 雨 の 増 加 に よ り ,雨 水 整 備 水 準 の レ ベ ル ア ッ プ も 求 め ら れ る よ う に な っ て お り ,シ ー ル ド 工 法 が 適 用 と な る よ う な 大 口 径 の 下 水 道 管 き ょ の 布 設 と そ れ に 接 続 す る 小・中 口 径 の ト ン ネ ル 工 法 の 需 要 が 高 ま っ て き て い る . こ の よ う に ,都 心 部 の 下 水 道 に は ,下 水 道 管 き ょ の 老 朽 化 対 策 に 加 え ,雨 水 排 除 能 力 の 向 上 や ,耐 震 性 の 向 上 な ど ,様 々 な 機 能 の 向 上 が 必 要 と な っ て お り , 東 京 都 下 水 道 局 は ,普 及 の 概 成 以 降 ,こ れ ら の 機 能 向 上 を 合 わ せ て 行 う 再 構 築 事業を進めているところである. 一 方 ,再 構 築 事 業 を 進 め る 上 で ,以 下 の よ う な 解 決 す べ き 課 題 も 明 ら か に な っ て き て い る .道 路 下 に は 前 述 し た 地 下 埋 設 物 や 既 設 構 造 物 の 他 に ,そ れ ら の 施 設 を 建 設 す る 際 に 地 中 に 残 置 さ れ た 仮 設 構 造 物 や 基 礎 杭 な ど が あ り ,こ れ ら を適切に撤去や処理をしながら下水道管きょの布設を行う技術が不可欠とな 2-1.
(20) っている. 本章では,東京都における下水道整備の変遷,我が国のトンネル技術の導入と 変遷,トンネル技術の発展に貢献した下水道事業および都市域におけるトンネル 技術の課題について述べる.. 2-2 2-2-1. 東京都における下水道整備の変遷 草創期の下水道整備. 1 )2 ). 明 治 10 年 以 降 繰 り 返 し 国 民 を 襲 っ た コ レ ラ の 流 行 に よ り , 明 治 15 年 に は , 全 国 で 死 者 が 34,000 人 を 超 え た . 特 に 同 年 , 東 京 府 下 で は 死 者 が 5,000 人 に も達した. コ レ ラ の 蔓 延 を 防 ぐ た め , 明 治 16 年 , 内 務 卿 山 田 顕 義 か ら 上 下 水 道 の 整 備 を 促 す「 水 道 溝 渠 等 改 良 ノ 儀 」の 示 達 を 受 け た 東 京 府 は ,内 務 省 御 用 掛 石 黒 五 十 二 に 設 計 を 命 じ ,オ ラ ン ダ 人 技 師 ヨ ハ ネ ス・デ・レ ー テ に 意 見 を 求 め ,近 代 下水道の先駆けとなる「神田下水」の計画を立案した.この下水道計画では, 対 象 地 域 を コ レ ラ で 大 き な 被 害 を 受 け た 神 田 地 区 と し ,構 造 は 欧 米 諸 国 に な ら った暗渠,排除方式は合流式(し尿は含まない)で排水は神田川などに放流, 本管は煉瓦積みの卵形渠,分管は円形陶管とするものであった. 神 田 下 水 の 工 事 は ,明 治 17 年 か ら 同 18 年 に か け て 2 期 に わ た り ,約 8 万円 を 費 や し ,4km の 下 水 道 管 き ょ を 建 設 し た が ,財 政 難 か ら 国 庫 補 助 が 不 許 可 と な り 第 3 期 工 事 は 中 止 を 余 儀 な く さ れ た .以 後 ,上 水 道 整 備 が 先 行 し ,下 水 道 整備は先送りされることとなった.. 写 真 2-1. 130 年 以 上 経 過 し た 今 も 使 用 し て い る 神 田 下 水 2-2.
(21) な お ,当 時 建 設 さ れ た 神 田 下 水 の う ち ,20% に あ た る 約 800m ほ ど の 下 水 道 管 き ょ が 130 年 以 上 経 過 し た 今 も 現 存 し , 東 京 都 史 跡 に 指 定 さ れ る と と も に , 現役として活用されている. 2-2-2 2-2-2-1. 東 京 都 区 部 下 水 道 の 100% 普 及 へ の 道 の り 下水道計画の策定. 1 )2 ). 近 代 産 業 の 急 速 な 発 展 と 東 京 市 の 人 口 集 中 に 伴 う 都 市 環 境 の 悪 化 に よ り ,明 治 33 年 に 「 下 水 道 法 」 が 制 定 さ れ る と と も に , 東 京 市 に お い て も 下 水 道 整 備 に 向 け た 測 量 と 調 査 が 再 開 さ れ た .こ の 調 査 を も と に 東 京 帝 国 大 学 中 島 鋭 治 博 士 に 委 嘱 し ,明 治 41 年 に 現 在 の 下 水 道 計 画 の 基 礎 と な る「 東 京 市 下 水 道 設 計 」 が策定,告示された. 本 計 画 で は ,降 水 量 が 多 く ,低 湿 地 帯 を 抱 え る 東 京 に は 雨 水 排 除 の 必 要 性 が 高く,緊急を要することや財政状況などから排除方式は合流式が採用された. 計 画 最 大 雨 水 量 は , 1 時 間 1.25 イ ン チ ( 約 30 ㎜ /h , 大 正 2 年 の 第 1 期 工 事 着 工 時 に 50 ㎜ /h に 変 更 )と し た .ま た ,計 画 人 口 は 当 時 の 市 域 最 大 収 容 人 口 の 300 万 人 ,計 画 排 水 面 積 5,670ha と し ,排 水 区 域 を 3 つ に 分 け( 現 在 の 芝 浦 , 三 河 島 , 砂 町 処 理 区 ), 管 き ょ 延 長 826km を 布 設 し , 放 流 区 域 に は 下 水 処 理 施 設を整備するものであった.. 図 2-1. 東 京 市 下 水 道 設 計 ( 明 治 41 年 ). 2-3.
(22) 昭 和 7 年 , 東 京 市 に 5 郡 82 町 村 が 編 入 さ れ , 行 政 区 は 15 区 か ら 35 区 に 拡 大 し た が ,各 町 村 で 進 め ら れ て い た 下 水 道 事 業 も そ の ま ま 引 き 継 が れ た .こ れ ら の 各 町 村 の 下 水 道 事 業 で は ,幹 線 ,ポ ン プ 場 ,処 分 場 の 基 幹 施 設 の 計 画 を「 東 京 都 市 計 画 郊 外 下 水 道 設 計 」と し て 東 京 府 が 昭 和 5 年 に 決 定 し て い た が ,枝 線 は 町 村 ご と の 決 定 に 任 さ れ て い た .そ の た め ,東 京 市 の 下 水 道 計 画 は ,旧 市 を 対 象 と す る 「 東 京 市 下 水 道 設 計 」, 新 市 域 を 対 象 と す る 「 東 京 都 市 計 画 郊 外 下 水 道 設 計 」,「 旧 12 町 下 水 道 計 画 」 の 3 計 画 が 分 立 す る 形 と な っ た が , 戦 時 体 制 の た め 事 業 は 縮 小 し , 昭 和 19 年 に は 打 ち 切 ら れ た . 打 ち 切 り ま で に 約 2,000km の 下 水 道 管 き ょ と ,約 5 万 個 の 人 孔 ,10 か 所 の ポ ン プ 所 ,3 か 所 の 処 理場の整備が行われた. 2-2-2-2. 戦後復興と下水道整備. 1 )2 ). 戦 後 最 初 の 下 水 道 事 業 は , 昭 和 21 年 か ら 始 ま っ た 戦 災 復 興 土 地 区 画 整 理 事 業 に 伴 う 下 水 道 復 旧 管 渠 移 設 事 業 で あ り ,昭 和 32 年 ま で 続 け ら れ た .ま た ,3 つ に 分 立 し て い た 下 水 道 計 画 は ,新 し い 下 水 道 基 本 計 画 で あ る「 東 京 特 別 都 市 計画下水道」 ( の ち に「 東 京 都 市 計 画 下 水 道 」と 改 称 )と し て 昭 和 25 年 に 決 定 , 告 示 さ れ た .こ の 基 本 計 画 で は ,計 画 人 口 630 万 人 ,計 画 対 象 地 域 36,155ha, 管 き ょ 計 画 は 6,468km と し ,既 設 の 3 処 理 区 に 加 え ,小 台 ,落 合 ,森 ヶ 崎 の 計 6排水系統により下水の排除,処理を行うことになった. そ の 後 , 昭 和 30 年 代 に な り 経 済 復 興 か ら 東 京 に は 1 千 万 人 を 超 え る 昼 間 人 口 が 活 動 す る よ う に な る が , 当 時 の 下 水 道 普 及 率 は 20% に も 満 た な い 状 況 に あ り ,下 水 道 整 備 の 遅 れ が 深 刻 な 環 境 上・衛 生 上 の 問 題 を も た ら す こ と に な っ た .ま た ,昭 和 34 年 に オ リ ン ピ ッ ク 東 京 大 会 の 開 催 が 決 定 さ れ た こ と も あ り , 下 水 道 整 備 対 象 区 域 も 荒 川 以 東 の 地 域 に 拡 大 さ れ ,現 在 の 特 別 区 全 域 を 計 画 区 域として下水道整備は一層進められた. 昭 和 40 年 代 に は , 高 度 経 済 成 長 の ひ ず み と し て 生 じ た 水 質 汚 濁 に 代 表 さ れ る 公 害 が 大 き な 社 会 的 問 題 と な り , 昭 和 45 年 の い わ ゆ る 「 公 害 国 会 」 に お い て ,水 質 汚 濁 防 止 法 な ど の 制 定 と 下 水 道 法 な ど の 改 正 が 行 わ れ た .下 水 道 法 の 改 正 に よ り ,同 法 の 目 的 に「 公 共 用 水 域 の 水 質 保 全 に 資 す る こ と 」が 加 え ら れ , 水質保全対策として下水道整備の位置づけが明確にされた. このように,時々の社会経済状況に対応し,幾多の計画変更を重ねながら, 平 成 6 年 度 末 に 東 京 都 区 部 の 下 水 道 整 備 100% 普 及 概 成 が 達 成 さ れ た .. 2-4.
(23) 600 年度別(Km). 累計(km). 16,000. 500. 14,000. 400. 年度別延長(km). 12,000. 累計延長(km). 10,000. 300. 8,000 6,000. 200. 4,000 100. 2,000 0 大正元年 大正5年 大正9年 大正13年 昭和3年 昭和7年 昭和11年 昭和15年 昭和19年 昭和23年 昭和27年 昭和31年 昭和35年 昭和39年 昭和43年 昭和47年 昭和51年 昭和55年 昭和59年 昭和63年 平成4年 平成8年 平成12年 平成16年 平成20年 平成24年 平成28年. 0. 図 2-2 2-2-2-3. 東京都(区部)の年度別下水道管きょの布設延長の推移. 下水道の老朽化対策および機能向上を図る再構築事業. 3) 4) 5 ). 100% 普 及 概 成 は 達 成 し た も の の ,初 期 に 整 備 し た 下 水 道 施 設 が 法 定 耐 用 年 数 を 超え,管きょの損傷等により道路陥没が増加するなど老朽化の課題が顕在化して きていた.さらには,頻発する浸水被害への対応や公共用水域の水質改善など, 下水道システムをさらに充実させることが求められていた. 下水道局では,こうした課題への対応を見据え,普及の概成以降の下水道のあ り 方 を 示 し た「 第 二 世 代 下 水 道 マ ス タ ー プ ラ ン 」を 普 及 概 成 前 の 平 成 4 年 に 策 定 した.このプランでは,老朽化への対応に加え,雨水排除能力の増強や水質改善 等の下水道機能の向上を図る「再構築」事業を打ち出している. このプランの方針の下,下水道管きょの再構築に当たっては,老朽箇所の部分 的な対応を図るのではなく,処理区全体の下水道管 きょの機能改善,増強を進め ることとしている. 区部全域の膨大な下水道管きょを対象にすることから,アセットマネジメント 手法を活用し,下水道管きょのライフサイクルコストを考慮した経済的耐用年数 の 設 定 ( 図 2-3) や , 区 部 を 整 備 年 代 に よ り 三 期 に 分 け て 事 業 を 段 階 的 に 進 め る こ と で( 図 2-4),中 長 期 的 な 事 業 量 の 平 準 化 を 図 る 等 ,計 画 的 か つ 効 率 的 に 再 構 築 事 業 を 実 施 し て き て い る .こ の 事 業 計 画 に 基 づ く 管 き ょ の 面 的 な 再 構 築 工 事( 面 整備)では,管路内テレビカメラ等による調査結果を基に老朽化等による損傷の. 2-5.
(24) 評価を行うとともに,雨水排除能力の検証を行い,既設の下水道管きょを有効活 用するか,更生工法を採用するか,または下水道管きょを布設替えするかを判定 している. こうした下水道管きょの再構築に加え,雨水排除能力の抜本的な向上のため, 新たな下水道幹線等の整備も合わせて進めている.さらに,良好な水環境の創出 に向け,合流式下水道の改善対策として,雨天時の下水をより多く水再生センタ ーに送水する下水道管きょや降雨初期の特に汚れた下水を貯留する貯留管の整備 等にも取り組んでいる. これらの事業を着実に推進し下水道システムの機能向上を図ってきた結果,普 及 概 成 し た 平 成 6 年 度 末 の 管 き ょ 延 長 14,603km に 比 べ , 平 成 28 年 度 末 時 点 の 管 き ょ 延 長 は 1,457km 増 の 16,060km に も 達 し て い る .. 図 2-3. 図 2-4. 東京都区部の下水道管きょの経済的耐用年数. 東京都区部における再構築事業の対象範囲. (現在第一期の範囲を対象に事業を推進) 2-6.
(25) 2-3. 我が国のトンネル技術の導入と変遷. 2-3-1. 2) 6) 7). 日本で最初のトンネル. 日本のトンネル工事は青の洞門や箱根用水トンネルなどのように独自の技 術 を 駆 使 し て 建 設 さ れ て き た も の も あ る が ,西 洋 の 近 代 技 術 が 導 入 さ れ て 最 初 に行われた工事は,石屋川トンネルといわれている.以来,わが国では鉄道, 水 路 ,道 路 用 等 の 多 く の ト ン ネ ル が 建 設 さ れ て き た .当 初 は 矢 板 工 法 が 主 流 で あ っ た が ,補 助 工 法 が あ ま り 存 在 し な か っ た こ と も あ り ,経 験 ,勘 ,コ ツ と い った職人芸が必要で,トンネル工事の成否は,工夫の技量に左右されていた. そ の 後 , NATM 工 法 , シ ー ル ド 工 法 な ど の 技 術 導 入 , 技 術 開 発 に よ り 職 人 芸 的 な 技 術 か ら ,計 測 デ ー タ に 基 づ く 工 法 や 汎 用 的 な 機 械 に よ り ト ン ネ ル が 建 設 さ れるようになった. 2-3-2. シールド工法の導入. シ ー ル ド 工 法 は , フ ラ ン ス 人 技 術 者 ブ ル ネ ル に よ り , 1818 年 に フ ナ ク イ ム シが体の先端にある硬い貝殻で木材に穴を空けながら木材を食べると同時に, 石灰質の分泌液を口から出して穴の内側を固めつつ掘り進んで いくことにヒ ン ト を 得 て 考 案 さ れ ,特 許 が 取 得 さ れ た も の で あ る .ブ ル ネ ル の 特 許 か ら 200 年 近 く が 経 過 し て い る が ,基 本 的 な コ ン セ プ ト は 現 在 の シ ー ル ド 工 法 も 変 わ っ ていない.. 図 2-5. シールド工法のヒント. 図 2-6. ブルネルのシールド特許図面. になったフナクイムシ 最初のシールド工法によるトンネル工事は,テムズ河床横断トンネルで, 1825 年 に 掘 削 が 開 始 さ れ た . 一 方 , 日 本 で 最 初 に シ ー ル ド 工 法 が 採 用 さ れ た 2-7.
(26) の は , 1917 年 に 羽 越 線 折 渡 ト ン ネ ル 工 事 で , 切 羽 の 安 定 が 保 て な い 区 間 の 特 殊工法として導入された. そ の 後 , 1960 年 に 名 古 屋 市 営 地 下 鉄 覚 子 山 ト ン ネ ル 工 事 に お い て 円 形 断 面 の 都 市 ト ン ネ ル と し て 採 用 さ れ て 以 降 ,大 都 市 の ほ と ん ど が 軟 弱 な 沖 積 地 盤 上 に あ り 地 下 水 位 が 高 い こ と ,都 市 化 の 進 展 に 伴 っ て 社 会 基 盤 の 整 備 が 急 務 と な っ て い た こ と ,都 市 の 過 密 化 に 伴 い 地 下 埋 設 物 の 輻 輳 か ら 開 削 工 法 に よ る ト ン ネ ル 布 設 が 困 難 と な っ た こ と な ど を 背 景 に ,技 術 開 発 が 積 極 的 に 進 め ら れ ,日 本独自でシールド工法が大きく発展することとなった. 2-3-3. 東京都におけるシールド工法導入の経緯. 東 京 都 下 水 道 局 で 初 め て シ ー ル ド 工 法 を 採 用 し た の は , 1962 年 4 月 に 着 工 し た 石 神 井 川 下 幹 線 そ の 9 工 事 で あ る . 写 真 2-2 は , 石 神 井 川 下 幹 線 そ の 9 工 事 に 使 用 し た シ ー ル ド 機 で あ る .当 然 の こ と な が ら 我 が 国 下 水 道 界 に お い て も初めての工事となった. 一 方 , 前 述 し た 1917 年 に 行 わ れ た 羽 越 線 折 渡 ト ン ネ ル 工 事 は シ ー ル ド 工 法 が採用はされたものの途中で切羽崩壊などのため中止を余儀なくされており, わ が 国 で シ ー ル ド 工 法 が 本 格 的 に 成 功 し た の は , 1936 年 の 鉄 道 省 の 関 門 ト ン ネル下り線部と海底部工事である.圧気併用の開放型円形シールド外径φ 7000mm で あ る . そ の 後 , 都 市 ト ン ネ ル に 採 用 さ れ た の が , 1957 年 の 東 京 地 下 鉄 第 4 号 線( 現 東 京 メ ト ロ 丸 ノ 内 線 )永 田 町 に お い て 比 較 的 安 定 し た 地 盤 に 適 用した半円形ルーフシールドである. こ の よ う に シ ー ル ド 工 法 の 採 用 事 例 が 少 な い 中 ,東 京 都 下 水 道 局 内 で は 特 に 小 断 面 ( φ 2500 ㎜ ) で 地 下 水 が あ る 地 盤 と 街 中 で の シ ー ル ド 工 法 の 適 用 に 向 け た 検 討 が 行 わ れ た .当 時 の 下 水 道 局 は ,オ リ ン ピ ッ ク を 間 近 に 控 え 急 ピ ッ チ で 下 水 道 の 整 備 を 進 め て お り ,下 水 道 工 事 に よ る 交 通 障 害 や 工 事 沿 道 商 工 業 者 の 受 け る 営 業 上 の 損 害 ,工 事 に よ る 地 盤 沈 下 と 建 物 の 被 害 な ど ,解 決 す べ き 多 く の 課 題 を 抱 え て い た .す な わ ち ,住 民 か ら は 下 水 道 整 備 促 進 を 求 め ら れ る 一 方 で ,地 元 や 交 通 関 係 者 ,道 路 関 係 者 か ら は 迷 惑 が ら れ た り も し て い た の で あ る .そ の た め ,も っ ぱ ら 開 削 工 法 に よ っ て い た 下 水 道 管 き ょ 建 設 工 事 を 非 開 削 の ト ン ネ ル 工 法 で 工 事 を 進 め る な ど ,工 事 を 近 代 化 ,機 械 化 し て い か な け れ ば ということが課題となっていた. こ う し た こ と を 踏 ま え ,当 時 の 下 水 道 局 の 建 設 部 長 で あ っ た 野 中 八 郎 氏 は 後 日 ,「 日 本 で 初 め て , し か も 公 共 的 な 下 水 道 管 き ょ 工 事 に 率 先 採 用 す る に は 大 英 断 を 要 し た 」と 述 べ て い る よ う に ,シ ー ル ド 工 法 を 下 水 道 工 事 で 採 用 す る に は 技 術 面 ,費 用 面 に お い て 多 く の 課 題 を 克 服 し な け れ ば な ら な か っ た .技 術 面 に つ い て は ,シ ー ル ド 工 法 の 先 駆 者 で あ る 熊 谷 組 の 加 納 専 務 ,熊 谷 勝 正 支 店 長 2-8.
(27) の献身的な研究努力によるところが大であったと述べている.加納専務とは, 鉄道省の技師で下関工事事務所の工事課長として関門トンネルのシールド工 事 に 従 事 し た 加 納 倹 二 氏 で あ る .こ の 功 に よ り 1942 年 に 鉄 道 大 臣 表 彰 を 受 け , 戦 後 の 1949 年 に 熊 谷 組 に 取 締 役 技 術 部 長 と し て 迎 え ら れ た . 加 納 氏 と 野 中 氏 が 大 学 の 同 窓 で あ る と い っ た 縁 よ り ,シ ー ル ド 工 法 を 下 水 道 工 事 に 適 用 す る こ と に つ い て ,両 氏 の 間 で 情 報 交 換 や 技 術 的 な 検 討 が 行 わ れ 実 現 に 至 っ た と 考 え ら れ る .ま た ,当 時 ,ソ 連 な ど で 小 口 径 の シ ー ル ド 機 械 が 開 発 さ れ コ ス ト 面 で も導入する意義が高まってきたようである. 石 神 井 川 下 幹 線 そ の 9 工 事 に 従 事 し た 設 計 ・ 工 事 担 当 者 に よ れ ば ,シ ー ル ド 工 法 採 用 の 狙 い の 一 つ で あ る 地 盤 沈 下 の 抑 制 効 果 に つ い て ,「 開 削 箇 所 で あ る 特 殊 人 孔 付 近 で は 18 ㎜ , そ の 他 は ±5 ㎜ 程 度 で あ っ た が , シ ー ル ド 施 工 部 は 変 化 が 見 ら れ な か っ た 」と そ の 効 果 を 評 価 し て い る .ま た ,今 後 シ ー ル ド 工 法 の 採 用 拡 大 を 図 っ て い く た め の 課 題 と し て ,工 事 費 の 約 1/3 を 占 め る 一 次 覆 工 のコストダウンが不可欠であると論じている. こ の よ う な 経 緯 の も と シ ー ル ド 工 法 は ,下 水 道 整 備 に 欠 か せ な い 工 法 と し て 以 降 積 極 的 に 採 用 さ れ ,わ が 国 固 有 の 土 木 技 術 と し て 海 外 に 技 術 輸 出 さ れ る よ う に な っ た .そ の 幾 分 か は 東 京 都 下 水 道 局 の 工 法 導 入 や そ の 後 の 新 技 術 の 開 発 や採用などが貢献してきたと考えられる.. 写 真 2-2. 石神井川下幹線その 9 工事に使用したシールド機. 2-9.
(28) 2-3-4 2-3-4-1. シールド技術の変遷 開放型シールド. 初 期 の シ ー ル ド 工 法 は ,圧 気 工 法 を 併 用 し た 手 掘 り 式 が 主 流 で あ り ,軟 弱地 盤 や 地 下 水 位 が 高 い 条 件 で は ,薬 液 注 入 や 地 下 水 位 低 下 工 法 な ど を 補 助 工 法 と し て 用 い る こ と が 一 般 的 で あ っ た .先 に 述 べ た 石 神 井 川 下 幹 線 工 事 も 圧 気 工 法 を併用した手掘りシールドである. 手 掘 り シ ー ル ド と 併 せ て 機 械 掘 り 式 な ど も 実 用 化 さ れ た が , 1970 年 代 以 降 の 密 閉 型 シ ー ル ド の 導 入 に よ り 1990 年 以 降 は ほ と ん ど 見 ら れ な く な っ た . 2-3-4-2. 密閉型シールド. シ ー ル ド 工 法 は ,そ の 導 入 以 来 ,都 市 部 に お け る ト ン ネ ル 施 工 法 と し て 急 速 に 採 用 が 拡 大 さ れ て き た .し か し ,開 放 型 シ ー ル ド は 都 市 部 に お け る 軟 弱 で 地 下 水 位 が 高 い 地 盤 に お い て は ,切 羽 の 安 定 を 図 る た め に 圧 気 工 法 や 地 盤 改 良 を 用 い る こ と に な る .こ の た め ,工 事 費 の 増 高 や 広 域 的 な 地 盤 沈 下 の 発 生 ,井 戸 枯 れ な ど の 問 題 が 発 生 し て き た . こ の 問 題 に 対 応 す べ く , 1960 年 代 後 半 か ら 急速に密閉型シールド工法の開発,実用化が進められた. 密 閉 型 シ ー ル ド 工 法 は ,切 羽 の 直 後 に 隔 壁 を 設 け て 切 羽 と 坑 内 を 遮 断 し ,隔 壁 に よ り 切 羽 側 の チ ャ ン バ 内 だ け で 切 羽 の 安 定 を 確 保 し ,坑 内 側 は 大 気 圧 状 態 と す る 工 法 で ,開 放 型 と 比 較 し て 作 業 の 安 全 性 や 能 率 が 向 上 す る と と も に ,地 盤 変 位 抑 制 が 可 能 に な っ た .密 閉 型 に は 泥 水 式 シ ー ル ド と 土 圧 式 シ ー ル ド が あ る. 泥 水 式 シ ー ル ド は 圧 気 の 代 わ り に カ ッ タ ー チ ャ ン バ 内 に 泥 水 を 充 満 ,加 圧 す る も の で , 1964 年 に 開 発 さ れ た の ち , 1968 年 よ り 実 用 化 さ れ , 営 団 地 下 鉄 9 号 線( 現 東 京 メ ト ロ 千 代 田 線 )第 1 期 神 田 川 シ ー ル ド 工 事 に お い て 導 入 さ れ た . 下 水 道 工 事 に お い て は , 1969 年 , 東 京 都 下 水 道 局 の 乞 田 幹 線 工 事 に お い て 初 めて導入された. 最 近 で は 1 台 の シ ー ル ド 機 で 9 km も の 長 距 離 の 掘 進 が 可 能 と な る な ど , 高 水圧下での長距離,高速施工に対応する様々な技術が開発されている. 土 圧 式 シ ー ル ド は 日 本 で 発 明 ,開 発 さ れ た も の で ,掘 削 土 砂 を 塑 性 流 動 化 し て チ ャ ン バ に 充 満 さ せ ,所 定 の 圧 力 を 加 え て 切 羽 の 土 水 圧 に 対 抗 し て 切 羽 の 安 定 を 図 る も の で ,シ ー ル ド 工 法 の 主 流 と な っ て い る .こ の 工 法 は ,土 圧 シ ー ル ドと泥土圧シールドに大別される. 土 圧 シ ー ル ド は , 1975 年 に 東 京 都 水 道 局 水 元 配 水 管 工 事 で 初 め て 導 入 さ れ た .泥 土 圧 シ ー ル ド は ,泥 水 式 シ ー ル ド や 土 圧 式 シ ー ル ド の 課 題 で あ っ た 細 粒 2-10.
(29) 分 の 少 な い 崩 壊 性 の 砂 ,レ キ 層 の 切 羽 安 定 と 掘 削 土 の ス ム ー ズ な 取 り 込 み ,排 出 を 目 的 に 開 発 さ れ , 1976 年 に 東 京 都 下 水 道 局 に お い て 直 径 2.44m の 泥 土 圧 シールドがはじめて採用された. そ の 後 ,土 圧 式 シ ー ル ド は 地 盤 条 件 や 施 工 条 件 に 応 じ て 各 種 の シ ー ル ド が 開 発 さ れ て き た が ,そ の 適 用 性 の 広 さ と 切 羽 の 安 定 性 ,経 済 性 な ど か ら 国 内 外 で 泥土加圧シールドが多く採用されるようになっている. 2017 年 2 月 に は 東 京 外 か く 環 状 道 路 本 線 ト ン ネ ル ( 関 越 ~ 東 名 間 ) に お い て , シ ー ル ド 外 径 16.1m の 大 断 面 ト ン ネ ル の 掘 削 が 開 始 さ れ た . 図 2-7 に , 1964 年 よ り 現 在 に 至 る ま で の シ ー ル ド 形 式 の 変 遷 を 示 し た .. 図 2-7. シールド形式の変遷. 2-11.
(30) 2-3-5. 特殊条件下における施工技術の変遷. 大 都 市 に お け る 下 水 道 を は じ め と し た ト ン ネ ル は ,大 断 面 か ら 小 断 面 ま で 幅 広 い ニ ー ズ が あ る 一 方 で ,道 路 線 形 や 既 設 の 埋 設 物 に 制 約 を 受 け る こ と が 多 く , か つ 発 進 到 達 立 坑 用 地 等 の 確 保 が 困 難 な こ と も 多 い .こ の た め ,特 殊 条 件 下 に おける施工技術の開発が行われてきた. 2-3-5-1. 急曲線施工. 道 路 や 鉄 道 で は ,走 行 の 安 全 性 の 観 点 な ど か ら 省 令 等 で 最 小 曲 線 半 径 が 規 定 さ れ て お り ,曲 線 半 径 が 100m を 下 回 る も の は 少 な い .一 方 ,下 水 道 に お い て は ,公 道 下 に 埋 設 す る こ と を 基 本 と し て お り ,道 路 線 形 や 既 設 の 埋 設 物 と の 取 合 な ど の 関 係 か ら 100m 以 下 の 急 曲 線 施 工 が 多 く み ら れ る . 図 2-8 は , 曲 線 半 径 の 年 代 別 推 移 で あ る . 2000 年 以 降 , 曲 線 半 径 30m 未 満 の工事が 3 割以上に増加している.. 図 2-8. シールド工法の曲線半径の年代別推移. 表 2-1 は , 全 国 の 下 水 道 事 業 に お け る 急 曲 線 工 事 の 中 か ら 曲 線 半 径 30m 以 下 の 工 事 を 抽 出 し た も の で あ る .最 小 半 径 は ,東 京 都 下 水 道 局 馬 込 幹 線 工 事 の 8m と な っ て い る . 急 曲 線 施 工 が 増 加 し た 背 景 は ,埋 設 物 が 輻 輳 し ,幹 線 道 路 か ら 離 れ た 道 路 で の 管 き ょ 布 設 を 余 儀 な く さ れ ,道 路 線 形 や 交 差 点 部 分 な ど で 急 曲 線 施 工 が 必 要 と な る ケ ー ス の 増 加 に あ わ せ ,シ ー ル ド の 中 折 れ 装 置 や 裏 込 注 入 と 袋 付 セ グ メ ン ト な ど の 余 掘 り 充 填 の 技 術 が 一 般 化 し ,地 盤 改 良 を 施 工 せ ず と も 急 曲 線 施 工 2-12.
(31) が可能となったことが考えられる. 表 2-1. 全 国 の 下 水 道 事 業 に お け る 急 曲 線 工 事 ( 曲 線 半 径 30m 以 内 ) ( 2014 年 現 在 ). 2-3-5-2. 大断面施工. 日 本 下 水 道 協 会 の シ ー ル ド 工 事 用 標 準 セ グ メ ン ト は , 外 径 6000 ㎜ ま で を標 準 化 し て い る .こ の 規 格 に 沿 っ て 下 水 道 シ ー ル ド を 分 類 す る と ,大 断 面 は セ グ メ ン ト 外 径 6m 超 と な る . 図 2-9 に 示 す と お り ,外 径 6m 以 上 の 大 断 面 は 1 割 程 度 で は あ る も の の ,年 代 ご と に 一 定 量 の 施 工 実 績 が あ る .先 に 述 べ た と お り ,最 近 で は 東 京 外 か く 環 2-13.
(32) 状 道 路 本 線 ト ン ネ ル 工 事 に お い て , シ ー ル ド 外 径 16.1m で の 施 工 が 開 始 さ れ ている.. 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0%. 10m以上 7m~10m未満 6m~7m未満 5m~6m未満 3m~5m未満 3m未満. 図 2-9. 2-3-5-3. シールド外径毎の割合の年代別推移. 長距離施工. 密 集 し た 市 街 地 で は ,作 業 基 地 も 含 め た 発 進 到 達 立 坑 用 地 の 確 保 が 極 め て 困 難 で あ り ,長 距 離 掘 進 を 行 っ て ト ン ネ ル を 築 造 す る 必 要 性 が 高 ま っ て い る .図 2-10 に 示 す と お り , 平 均 施 工 延 長 は 年 々 増 加 し て い る . 近 年 で は , 東 京 外 か く 環 状 道 路 本 線 ト ン ネ ル の 9.2 ㎞ ,東 京 都 下 水 道 局 千 代 田 幹 線 の 8.7 ㎞ な ど が ある. こ れ ら の 長 距 離 施 工 が 可 能 に な っ て き た の は ,特 殊 技 術 と し て ,カ ッ タ ー ビ ッ ト の 交 換 ,カ ッ タ ー ビ ッ ト の 耐 久 性 向 上 ,搬 送 設 備 ,測 量 技 術 の 向 上 な ど が 挙げられる.. 2-14.
(33) 図 2-10 2-3-6. シールドの平均施工延長の年代別推移. 都市の課題に挑戦するべく多様化するシールド技術. こ れ ま で に 挙 げ た シ ー ル ド 技 術 の ほ か ,制 約 条 件 の 多 い 中 で 必 要 な 断 面 や 線 形 を 確 保 す べ く ,複 円 形 断 面 シ ー ル ド ,地 中 接 合 ,地 中 分 岐 シ ー ル ド な ど が 開 発,採用されてきている. 都 市 部 で の ト ン ネ ル 築 造 は ,様 々 な 既 設 構 造 物 を 避 け な け れ ば な ら ず ,特 に , 既設構造物を建設する際に設置された仮設構造物や基礎杭などの支障物への 対応が重要な課題となる. こ れ ら に つ い て ,超 高 圧 ジ ェ ッ ト 噴 流 を 活 用 し た 技 術 に よ り ,既 設 構 造 物 や 周辺地盤に影響を与えることなく必要部分を撤去してトンネルを築造するこ と が で き る 支 障 物 撤 去 技 術 は ,都 市 域 に お け る ト ン ネ ル 築 造 の 課 題 解 決 に 大 き く貢献するものである. 2-4 2-4-1. トンネル技術の発展に貢献した下水道事業. 1 )7 ). 下水道普及までの施工技術. 下 水 道 管 き ょ の 施 工 は ,戦 前 か ら 戦 後 に か け て は 人 力 か つ 古 来 の 器 具 を 用 い て の 施 工 が 主 で あ っ た が , 昭 和 30 年 代 半 ば こ ろ か ら , 木 製 の 仮 設 材 が 鋼 製 に 2-15.
(34) 変 わ っ た ほ か ,経 済 発 展 と 公 共 事 業 の 拡 大 に 伴 い 工 事 の 大 型 化 や 迅 速 化 が 求 め ら れ ,土 工 や 杭 打 ち な ど の 機 械 化 が 進 む な ど ,施 工 法 が 急 激 に 変 化 し て い っ た . ま た ,下 水 道 管 き ょ の 整 備 対 象 が 軟 弱 地 盤 へ 広 が り ,か つ ,埋 設 深 が 大 き く な っ て き た こ と ,工 事 に 対 す る 住 民 の 注 目 や 環 境 意 識 が 高 ま っ た こ と 等 に よ り , 工 事 の 安 全 性 や 経 済 性 ,効 率 性 に 留 ま ら ず ,騒 音 や 振 動 な ど 環 境 に 配 慮 し た 施 工技術が求められ,技術開発が進んだ. 施 工 法 で 見 る と ,戦 前 は 一 部 に 隧 道 工 法 が 採 用 さ れ て は い た が 開 削 工 法 が 多 く ,戦 後 は ,開 削 工 法 に 加 え ト ン ネ ル 工 法 と し て シ ー ル ド 工 法 や 推 進 工 法 が 用 いられるようになった. 下 水 道 整 備 最 盛 期 の 昭 和 45 年 か ら 東 京 都 区 部 の 下 水 道 の 普 及 が 概 成 し た 平 成 6 年 度 ま で の 工 事 に 対 す る 工 法 別 の 比 率 は , 開 削 工 法 が 87% , シ ー ル ド 工 法 が 5% , 推 進 工 法 が 5% で あ っ た . 開 削 工 法 に よ る 布 設 が 標 準 で あ っ た 下 水 道 管 き ょ で あ る が ,普 及 を 進 め る に あ た り ,埋 設 物 が 輻 輳 し て い る 箇 所 や 開 削 工 法 に よ る 施 工 が 困 難 な 場 所 に お い て も 下 水 道 管 き ょ を 布 設 す る 必 要 が 生 じ た こ と と ,さ ら に 環 境 へ の 配 慮 な ど 現 場ニーズに対応するため,非開削工法である推進工法やシールド工法が開発, 実用化されていった. 2-4-2. 推進工法. 推 進 工 法 は ,昭 和 28 年 ,台 東 区 石 浜 町 に お い て 通 信 ケ ー ブ ル の 下 を 口 径 1200 ㎜ で 延 長 14.6m を 施 工 し た の が 最 初 で あ る . 当初は開放型シールドと同様に切羽全面の推進管に刃口を装着した簡易な 施 工 技 術 で あ っ た が , 昭 和 40 年 代 以 後 , 施 工 環 境 が 厳 し く な っ て い く と と も に 急 速 に 採 用 が 拡 大 さ れ る の に あ わ せ ,シ ー ル ド 工 法 と の 融 合 化 や 施 工 の 長 距 離化,高速化,曲線施工,小口径化などに向けた開発が積極的に行われた. た と え ば , 泥 水 加 圧 方 式 ( 1965 年 ), 引 張 式 ( 1969 年 ), 部 分 圧 気 式 ( 1971 年 ) に 加 え , 1982 年 に は 矩 形 渠 セ ミ シ ー ル ド な ど が 導 入 さ れ て い っ た . 近 年 で は ,軟 弱 地 盤 な ど に お い て 切 羽 の 安 定 保 持 と ず り 処 理 の 効 率 化 を 図 っ た 泥 濃 式 推 進 工 法 ( 1982 年 ) が 多 用 さ れ る よ う に な っ た . さ ら に ,初 期 の 推 進 工 法 は 元 押 し 式 で あ っ た が ,長 距 離 施 工 を 可 能 と す べ く , 推 進 中 の 管 体 の 中 間 に 中 押 し ジ ャ ッ キ を 設 け る 中 押 し 工 法 が 開 発 ( 1972 年 ), 採 用 さ れ た ほ か ,埋 設 物 が 輻 輳 し て い る 場 合 や ,道 路 交 通 へ の 影 響 を 最 小 限 と す る と い っ た ニ ー ズ に 応 え る た め ,推 進 工 法 の 適 用 拡 大 を 目 指 し ,人 が 入 れ な い 小 口 径 の 下 水 道 管 き ょ( 口 径 700mm 未 満 )に も 適 用 で き る 小 口 径 推 進 工 法 が 多 種 開 発 さ れ た ( 1975 年 ). 推 進 工 法 は ,現 場 の ニ ー ズ に 合 っ た 技 術 開 発 が 積 極 的 に 行 わ れ ,採 用 が 拡 大 2-16.
(35) された結果,現在では一般的な下水道管きょの布設工法となっている. 2-4-3. シールド工法. 下 水 道 整 備 に お い て は ,特 に 都 市 部 に お い て シ ー ル ド 工 法 に よ り 下 水 道 管 き ょ が 多 く 布 設 さ れ て き た .こ れ は ,日 本 の 大 都 市 の 多 く が 大 河 川 の 河 口 部 に 形 成 さ れ て い た こ と も あ り ,三 角 州 な ど 軟 弱 な 地 盤 に 位 置 し て い る こ と に 起 因 す る .東 京 都 下 水 道 局 を 例 に と る と ,江 戸 川 や 多 摩 川 に よ り 形 成 さ れ た 地 下 水 位 が 高 い 軟 弱 な 沖 積 層 が 広 く 分 布 し て い る た め ,東 京 都 区 部 の 下 水 道 管 き ょ の 全 延 長 約 16,000km の う ち 約 950km が シ ー ル ド 工 法 に よ り 布 設 さ れ た . こ の よ う な 背 景 に よ り ,全 国 の シ ー ル ド 工 事 の う ち 約 6 割 が 下 水 道 事 業 に お い て 採 用 さ れ て お り ,他 イ ン フ ラ と 比 較 し て 圧 倒 的 に 多 い .こ の た め ,セ グ メ ン ト の 標 準 化 を は じ め ,多 く の シ ー ル ド 掘 進 技 術 や 覆 工 技 術 の 開 発 や 実 用 化 に も積極的に参画,寄与してきた. 先 に 述 べ た と お り ,下 水 道 工 事 に 初 め て シ ー ル ド 工 法 を 採 用 し た の は ,1962 年 ,東 京 都 下 水 道 局 の 石 神 井 川 下 幹 線 工 事 で あ る .こ れ は ,東 京 都 下 水 道 局 の シ ー ル ド 工 事 第 1 号 で あ る だ け で な く ,日 本 の 都 市 ト ン ネ ル に お け る 小 断 面 シ ー ル ド の 第 1 号 で も あ っ た . 本 工 事 は , 1957 年 の 営 団 地 下 鉄 4 号 線 永 田 町 工 区 に お け る ル ー フ シ ー ル ド , 1960 年 名 古 屋 市 地 下 鉄 覚 王 山 ト ン ネ ル に お い て 円 形 断 面 シ ー ル ド が は じ め て 施 工 さ れ る と い う シ ー ル ド 工 法 黎 明 期 に ,国 内 外 の技術情報を広く収集するなど課題を克服して進めた工事である. 当 時 の 担 当 者 の 記 録 で は ,地 盤 沈 下 の 発 生 と と も に 地 下 水 の 流 入 と 切 羽 の 崩 壊 ,蛇 行 と い っ た こ と に 注 意 が 注 が れ て い た .さ ら に 施 工 後 の 考 察 と し て ,今 後 の 下 水 道 整 備 促 進 の 有 力 な 工 法 と な る こ と と ,そ の た め の 課 題 と し て 適 用 地 盤や埋設深度の確認,コストの低減などを挙げていた. そ の 後 ,特 に 東 京 都 で は ,普 及 事 業 の み な ら ず 雨 水 流 出 量 の 増 大 に 伴 う 雨 水 対 策 や 合 流 式 下 水 道 の 改 善 対 策 ,老 朽 化 対 策 で あ る 再 構 築 事 業 が 積 極 的 に 推 進 さ れ た こ と か ら ,大 口 径 の 下 水 道 管 き ょ の 布 設 と そ れ に 接 続 す る 小・中 口 径 の 下 水 道 管 き ょ の 整 備 が 必 要 と な っ た .こ う し た 事 業 は ,多 く の イ ン フ ラ が 整 備 さ れ て い る 中 で の 工 事 と な る た め ,地 下 構 造 物 を 避 け て 布 設 せ ざ る を 得 ず ,必 然的に下水道管きょの埋設位置が大深度化したこともシールド工法の採用拡 大に拍車をかけた. 当 初 の シ ー ル ド は ,開 放 型 手 掘 り 式 ,機 械 掘 り 式 が 主 で ,圧 気 ,地 盤 改 良 を 併 用 し て 施 工 さ れ , 昭 和 50 年 代 ま で シ ー ル ド 工 法 の 中 で は 主 力 の 工 法 で あ っ た が ,軟 弱 な 沖 積 地 盤 で の シ ー ル ド 掘 削 に 伴 う 地 盤 沈 下 の 発 生 と ,そ れ に 伴 う 周辺家屋への影響を極力低減するために技術開発が進められた. 下 水 道 工 事 で は 1969 年 に は 泥 水 式 ,1974 年 に は 土 圧 式 ,1976 年 に は 泥 土 圧 2-17.
(36) 式 が 採 用 さ れ , 昭 和 50 年 代 半 ば 以 降 急 激 に 開 放 型 が 減 少 し , 泥 水 , 土 圧 , 泥 土圧式に移行していった. 表 2-2 は ,シ ー ル ド 掘 進 技 術 の 開 発 と そ の 実 用 化 ,採 用 状 況 を 端 的 に 示 す た め ,初 期 の 1962 年 か ら 2006 年 ま で に 東 京 都 下 水 道 局 が 施 工 し た シ ー ル ド 工 事 を,施工延長,仕上がり内径,シールド機械タイプ別に整理したものである. 表 2-2. 東京都下水道局におけるシールド工事の工法別施工実績 起工延長 (m). 起 工 年 度 S37 S38 S39 S40 S41 S42 S43 S44 S45 S46 S47 S48 S49 S50 S51 S52 S53 S54 S55 S56 S57 S58 S59 S60 S61 S62 S63 H1 H2 H3 H4 H5 H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18. 一. 二. 次. 次. 1,948 2,722 1,128 6,634 3,831 12,046 8,743 18,880 15,950 45,892 47,454 17,437 17,686 12,320 30,699 22,327 34,694 41,983 36,609 41,283 46,350 28,175 18,860 19,945 21,114 16,122 23,376 24,584 23,798 19,124 20,570 14,281 8,744 22,770 15,977 12,864 15,187 8,195 16,078 15,428 6,934 7,398 5,354 3,219 2,881. 1,948 2,722 1,128 6,634 3,831 12,046 8,743 18,184 18,609 44,318 42,239 20,041 21,298 13,984 37,699 15,803 22,230 35,408 23,035 20,721 41,772 40,064 22,219 30,269 20,322 12,850 13,736 22,642 5,716 8,409 7,383 19,786 10,355 19,555 10,043 23,243 14,730 10,508 10,326 11,762 8,206 12,634 3,955 4,809 4,303. シールド機械タイプ(件). シールド仕上り内径 (mm). 二 一省 次 体略 覆 型 ・ 工 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1,899 2,372 4,120 1,792 6,808 2,808 2,515 4,088. 最. 最. 小. 大. 1,800 1,650 2,500 1,500 1,650 1,500 1,500 1,650 1,500 1,400 1,400 1,350 1,650 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,200 1,200 2,150 1,500 1,500 1,500 1,500 1,500 1,350 1,350 1,000 1,500 1,500 1,000 1,500 1,650 1,650 1,650 1,650 1,500 1,500 1,100 1,200 1,650 1,350 1,000 1,650. 3,700 2,800 5,000 5,000 3,000 4,000 4,000 3,700 3,700 4,800 7,000 6,500 6,500 4,500 7,000 4,500 5,750 7,000 6,500 6,500 7,550 6,750 8,000 8,000 7,400 6,500 6,250 6,500 6,500 6,750 6,750 6,750 6,600 6,500 8,000 6,500 8,500 8,500 4,750 4,650 8,500 7,600 5,000 8,500 5,000. 2-18. シ ャ ベ ル 併 用. 手 掘 り 2 5 3 8 7 14 11 32 31 45 38 15 17 10 13 6 11 11 10 8 6 9 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0. ブ ラ イ ン ド. 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 1 5 4 3 3 4 0 5 3 0 4 4 2 2 2 4 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0. 0 0 0 1 0 0 1 1 1 7 8 5 2 1 5 6 8 8 4 9 11 4 2 1 3 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0. 機. 泥. 土. 械. 水. 圧. 0 0 0 3 0 2 3 1 1 1 3 1 1 3 1 2 8 5 0 2 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0. 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 1 1 1 1 1 1 6 11 8 7 8 4 4 2 1 1 4 11 4 8 10 8 14 8 9 4 7 9 6 7 5 3 1 1. 泥 土 圧 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 3 1 8 3 4 16 13 2 1 1 16 9 4 2 4 2 2 1 0 1 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0. そ の 他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 3 0 5 5 8 17 3 6 12 17 6 15 13 10 10 13 16 21 19 14 13 22 19 18 11 17 16. 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0.
関連したドキュメント
ピッチは60mm~80mmで設計され ているが,本研究では取り付けピッ チを100mmに設定し,補助ノズル噴
1.4.2 流れの条件を変えるもの
断面が変化する個所には伸縮継目を設けるとともに、斜面部においては、継目部受け台とすべり止め
5 ケースの実験結果を比較すると,落下高さの低い段
自然電位測定結果は図-1 に示すとおりである。目視 点検においても全面的に漏水の影響を受けており、打音 異常やコンクリートのはく離が生じている。1-1
試験体は 4 タイプである.タイプAでは全ての下フラン ジとウェブに,タイプ B 及び C では桁端部付近の下フラン ジ及びウェブに実橋において腐食した部材を切り出して用
に,レベル 2 地震動に対する液状化抵抗について検証した. 2.実験の概要 土試料として Fc=0%である 5 号相馬硅砂と 5 号,6 号,8
供試体の寸法は、高さ 100mm,直径 50mm である。図‑2 はペデスタ