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川内川激特事業 景観水理模型実験

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Academic year: 2022

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川内川激特事業 景観水理模型実験

九州大学大学院工学府 学生員 ○貴島茂 九州大学大学院工学府 学生員 林博徳 九州大学大学院工学研究院 フェロー会員 島谷幸宏

1.研究の背景および目的

2006 年 7 月に鹿児島県薩摩地方北部を中心に記録 的な集中豪雨が発生した.それに伴う外水氾濫によ って川内川流域では大きな被害を受けた.特に薩摩 郡さつま町での被害は甚大であり,虎居地区では最 大水深が 4m にも及んだ.この地域での被災状況とし ては,人的被害が死者 1 名・軽傷者 3 名,建物被害 は全壊 214 棟・半壊 367 棟,床上・床下浸水が合わ せて 232 棟であった.

このような背景を受け,川内川流域は河川激甚災 害対策特別緊急事業(以下,激特事業)に指定され,

特に被害が甚大であったさつま町虎居地区では,湾 曲部を大規模にショートカットする分水路(以下,

分水路)の新設・市街地部分の築堤・河道掘削など が計画されている.計画当該地域には,歴史的文化 的な価値を有する「虎居城」と呼ばれる史跡や,鮎や ホタルが多数生息する良好な生態系が保たれている.

したがって,早急な治水対策が求められる一方で,

史跡や生態系への影響が最小限となるような河川改 修案を検討することが求められている.

また虎居地区では,国と地域住民との十分な意思 疎通がなされておらず,国側の事業の進め方・計画 案に対し不信感を抱く声も聞かれるなど,合意形成 が難航しているという問題点も存在する.

以上のような問題点を受けて,九州大学では,1)

計画案の治水効果の検証,2)計画案が景観や環境 へ与える影響の把握,3)地域住民との良好かつ円 滑な合意形成,以上3点を目的として景観水理模型 実験を実施することとした.

2.景観水理模型の概要

模型の再現範囲は 34.6km 地点から 38.0km 地点ま での縦断距離延長 3.4km の区間とした(図-1).

模型の縮尺は 1/200 とし,相似則にはフルード相 似則を適用した.表-2 に諸量の縮率を示す.

河床は移動床とし,河床材料には現地平均粒径 15cm に対応して平均粒径 0.8mm 程度の砂を用いた.

河道周辺市街地の地盤高は平面図における測量値を もとに現地の状況を再現した.家屋については,家 屋数,その位置および大きさを縮尺どおり再現した.

樹木についても樹高・樹幹・密生度を現地調査によ る計測結果を参考に作成した.

このように現地の状況を縮尺どおり正確に再現す ることは,水理学的にも景観検討においても有効と 考えられる.

写真-1に製作した景観水理模型を示す.

3.実験方法

水位測定実験は,下流端水位を 2006 年 7 月の災害 発生時の痕跡水位に設定し,洪水時の流量 4840m3/s

(模型上は 8.56L/s)を上流端から流下させた状態で 写真-1 景観水理模型

表-1 諸量の縮率

縮尺(n=1/200) 原型値 模型値

水深 n 1 m 0.5 cm

流速 n 1/2 1 m/s 7.1 cm/s

流量 n 5/2 4840 cm3/s 8.56 L/s 図-1 模型再現範囲と浸水域

土木学会西部支部研究発表会 (2008.3) II-038

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実施した.水位 計 測 範 囲 は 34.8k ~ 37.8k までとし,200m ピッチ(模型上 では 1m ピッチ)

で 16 横断面に つ い て 計 測 し た.なお各横断

について左岸・右岸の 2 点の水位を測定し,それら の平均値を各横断面の水位とした.水位測定の様子 を写真-2に示す.

なお,水位測定実験を実施したのは(1)現況,(2)分 水路新設,(3) (2)+下流部河床掘削・樹木伐採,(4) (3)+上流部の築堤(パラペット)・築堤前面掘削の計 4 ケースである(図-3).

4.結果

図-4に各実験ケースで計測された水位縦断図を 示す.この図より次のことが言える.

1. 現況の水位・浸水状況が再現された.

2. (2)案によって,37.0km 地点の水位が約 1.1m 低下する.

3. (3)案により 37.0km 地点の水位がさらに約 1.0m 低下する.しかし,氾濫はまだ治まらない.

4. (4)案により 37.2kより上流で水位低下し,

37.6k地点で 0.9m 程度水位低下する.

5. ケース(4)案により虎居地区の氾濫は完全に 防ぐことができる.

6. 土砂の動きは活発でないので,瀬の大きな形

状変化は急には起こりにくい.

写真-2 水位測定風景

図-4 水位縦断図 5.考察

実験前,さつま町で景観水理模型の説明会やワー クショップで計画案に対する意見交換を行い,それ を参考に実験案を策定した.その際は,アンケート 結果から国側の事業の進め方や改修事業について批 判的な意見も多々見られた.しかし,公開実験後は そのような意見が減り,「実験により水位低減の効果 が目で見て理解できた」「このような精密な模型を作 ってくれて感謝する」等意見も見受けられた.住民 への公開実験の様子を写真-3に示す.

以上より,景観水理模型は水理的・景観的な再現 だけでなく,住民の合意形成にも大きな影響を与え ることが分かった.

図-3 実験ケース

写真-3 公開実験 6.今後の課題

今後は,分水路や堤防の詳細な形状について,景 観面や環境面からも検討も進めていく予定である.

進め方については,引き続きワークショップを行い, 地域住民を含めて様々な意見を酌み交わし決定して いく.

計画案とまちづくりとの関係について,検討を進 めていくことも今後の課題である.

土木学会西部支部研究発表会 (2008.3) II-038

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