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博士の専攻分野の名称 博 士 (教育学)

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Academic year: 2021

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論文審査の要旨

博士の専攻分野の名称 博 士 (教育学)

氏名 正木 友則 学位授与の要件 学位規則第4条第

項該当

論 文 題 目

「筆者」概念に着目した説明的文章の学習指導に関する研究

論文審査担当者

主 査 教授 間瀬 茂夫 審査委員 教授 山元 隆春 審査委員 教授 難波 博孝

〔論文審査の要旨〕

テクストの書き手主体については,その意図を理解することが読み手に課せられた責務のよ うに考えられる一方で,「作者の死」ということばに象徴されるように,書き手によるテクス トの統括から読者を解放しようとする営みもある。国語科の読むことの学習指導研究において は,文章のジャンルや特性に応じた指導のあり方が探究されてきた。説明的文章の学習指導研 究は,「非文学」と称された時期を経て,昭和33年版学習指導要領の告示を契機に本格化した が,1980年代中頃から1990年代にかけて,学習者の主体性を保障しつつ,獲得すべき学力や 学習指導内容の充実化が図られるようになると,「筆者」という存在が,単に文章の書き手を 指すだけでなく読みの目標や,学習活動の類型,具体的な発問など学習指導を構成する諸要素 と「筆者」概念との連動性が見出されるようになった。しかし,そうした一方で,現在に至る まで,「筆者」概念に関する議論は,説明的文章の学習指導研究における主要な課題として体 系的に論じられておらず,授業実践面においてのみならず,理論面においてもしばしば混乱が 見られる。本論文は,こうした状況にある説明的文章の「筆者」概念に注目し,次のような課 題に取り組むものである。

一つ目に,説明的文章の学習指導研究において,「筆者」概念が論じられるようになった歴 史的な必然性を明らかにすること。

二つ目に,説明的文章の学習指導における「筆者」概念の理論的枠組みを形成すること。

三つ目に,「筆者」概念の理論的枠組みを用いて,説明的文章の読みの授業における学習や 指導の実際を記述・説明すること。

上記課題について,本論文は,次のような構成により探究した。

第1章では,説明的文章の学習指導研究における「筆者」概念の課題状況を明らかにしたう えで,解釈学理論を基に,「筆者」概念を検討するための仮説的な枠組みを形成した。

第2章では,「筆者」概念に着目した読むことの学習指導の源流に位置づけられる,大正期 の秋田喜三郎の創作的読方教授と,戦後の倉澤栄吉を中心とした筆者想定法について検討する ことで,その歴史的意義と課題を明らかにした。

第3章では,さらに説明的文章の学習指導に焦点を当て,小松善之助のデータ吟味の読みと,

森田信義の評価読みを検討することで,説明的文章の学習指導研究における到達点と課題を次

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のような点に見出した。

①文章観および学習指導観と「筆者」概念が関わり,具体的な指導内容や指導方法,学 習指導過程が提起されたこと。

②批判的読みを充実したものにするため,筆者と読者の既有知識・経験量の隔たりを埋 める学習過程が設定されたこと。

③学習者の主体性を保障するために,筆者の執筆過程に着目し,筆者を権威的存在とし てではなく,学習者によって想定される筆者として捉えることで,筆者の相対化を可 能にしたこと。

④「想定のパラドクス」や「批判対象のトリレンマ」と定義される「筆者」概念に関す る議論の核となる原理的な問題が提起されたこと。

⑤評価行為では,「正しさ」という基準から学習者の内面にある価値基準に転換され,

「筆者の工夫」が読みとりの対象としてではなく,学習者の評価行為の根拠として位 置づけられたこと。

第4章では,いくつかの段階をふみながら,説明的文章の学習指導における「筆者」概 念の理論的枠組みを構築した。

〈書き手〉の下位概念として,〈認識主体〉すなわち〈知識の 担い手としての筆者〉と〈表現主体〉すなわち〈レトリックの使い手としての筆者〉といった 複数の位相が明らかにされた。

第5章では,第4章で構築した「筆者」概念の理論的枠組みを用いて,実験授業として行っ た授業について,記述・説明を試みた。記述・説明は,〈筆者〉との対話が可能となる発達段 階とされる小学校5年生を対象に行われた実験授業を対象とした。

第6章では,「筆者」概念の理論的枠組みが,指導方法と学習指導過程にどのように位置づ けられ,説明的文章の学習指導論と接続するのかについて次のような点を明らかにした。

・説明的文章の読むことの学習指導で扱う筆者の存在位相は,教材の文章表現を存在証 明(根拠)にした「想定される筆者」とすること。

・筆者を相対化し,文章を完成された結果像としてとらえず,学習者に提案された過程 像として捉えること。

・筆者の想定や評価に関する多様な考えを他者と共有するために,学習者が自分の考え をもち,表現し,他者と交流する学習指導を構想すること。

終章では,研究成果を総括し,展望を述べた。

以上のような内容からなる本論文は,次のような点において高く評価できる。

1.解釈学の系譜をふまえ,大正期の秋田喜三郎からはじまる「筆者」に注目した学習 指導論が,どのような「筆者」位相を問題にしてきたのかを明らかにしたうえで,現 代において「筆者」を軸とした説明的文章の学習指導論の到達点をとらえた点。

2.現象学および解釈学の検討から,筆者をとらえるための枠組みを,読者による解釈 行為との関係,さらには,教授と学習との関係において提示した点。

3. 「筆者」をとらえるための枠組みによって,実際の授業の指導過程および教師や学 習者の発言を記述・説明したうえで,学習指導論へと展開した点。

以上,審査の結果,本論文の著者は博士(教育学)の学位を授与される十分な資格があ るものと認められる。

平成31年 2月15日

参照

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