• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 環 境 科 学 ) 早 川 真 紀

     学位論文題名

    Cell viability of phytoplankton     in the Northwest Pacific Ocean

(北西太平洋域における植物プランクトンの細胞死)

学位論文内容の要旨

  海洋植物プラ ンクトンは、海洋の主要な基礎生産者であり、海洋の生態系や物質循環過程に おいて、極めて 重要を役割を果たしている。今まで、海洋植物プランクトンは、主に沈降や動 物プランクトン による捕食により、海洋表層から取り除かれていると考えられてきた。しかし、

最近、これら以 外の除去過程として、海洋表層での植物プランクトンの細胞死の重要陸が指摘 されるようにな ってきた。植物プランクトンの細胞死が海洋の生態系や物質循環過程に及ぼす 影響として、主に次のことが予想される。(1)基礎生産者が減少することにより、海洋表層の基 礎生産が低下す る。これにより、海洋表層から中層への有機物輸送が減少し、海洋の二酸化炭 素固定能カが下 がる。り特定の植物プランクトンの細胞死により、植物プランクトンの群集組 成が変化する。 これに伴い、海洋物質循環過程に変化が生じる。(3)植物プランクトンの細胞内 物質の一部が溶 存有機物として細胞外に放出され、微生物食物網の駆動に寄与する。このよう に、植物プラン クトンの細胞死は海洋の生態系や物質循環過程に重大な影響を及ぼす可能陸が ある。しかした がら、太平洋における植物プランクトンの細胞死についての知見は皆無である。

特に最近、北西 太平洋亜寒帯域の植物プランクトン現存量や純群集生産が年々低下しているこ と が示 唆さ れて 韜り 、植 物プ ラ ンク トン の細 胞死 がそ の一 因と なっ てい る可 飽陸 がある。

  このため先ず、親潮域で優占する中心目珪藻Thalassiosira nordenskioeldiiの単離培養株を用い て、細胞消化法 と古くから用いられているエバンスブルー法により細胞生存率の測定を行った。

さらに、過去に 報告の無い高速液体クロマトグラフイーによる植物色素分析法と細胞消化法を 組ろ哈わせて、細胞生存率を見積もる方法を開発した。

  次に、北西太 平洋に韜ける植物プランクトン群集の細胞死に関するパラメーター(細胞生存 率およぴ比細胞 溶解速度)を測定し、調査海域に韜ける植物プランクトンの細胞死の重要陸を 定量的に評価す ることを試みた。実験は、独立行政法人水産総合研究センター若鷹丸に乗船し、

2003年9月2日カゝら21日(晩扇のWK03 09航海と2005年5月10日カゝら29日(着溺ゲ)WK0505航海にお い て 、 北 海 道 お よ ぴ 東 北地 方沖 の6観測 点( 以下 、Stn)の10m深(WK0309航 海) また は5m深

(2)

(WK0505航繊の海水を用いて行った。両航海における全観韻JJ点において、フローサイトメータ ーを用いた測定により、ウルトラ植物プランクトンは、ラン藻Synechococcus spp.と真核ウルト ラ 植物プランクトン(体長く10 Lun)から構成されていた。2003年晩夏では全観測点において、

真核ウルトラ植物プランクトンが優占していた。エSynec轟粥叱仇鱈spp.の細胞密度(2〜14x104 ceusm.1)は真核ウルトラ植物プランクトンの2〜5倍高かった。細胞消化法により見積った生存 率は、跏ピあ〇cDcc鰡鄲,が60〜79%、真核ウルトラ植物プランクトンが2641%であり、真核ウ ル トラ植物プランクトンは跏eあDc。cc甜spp.よりも致死率が有意に高かったのく0.05)。また、エ ステラーゼ活性法によって見積った植物プランクトン群集の比細胞溶解速度は、0.12〜O.67ボで あった。この比細胞溶解速度は、Sh血ada甜鹹(2000)が過去に報告した夏季の同観測点における 微小動物プランクトンによる植物プランクトンの比捕食速度く0.09加.25dl)と同等か、それを上 回 った。す なわち、 晩夏で は調査海域における植物プランクトンの細胞死は、微小動物プラン ク トンによ る捕食と 同等も しくはそれ以上に重要なものであり、植物プランクトンの除去過程 を 考える上 で決して 無視で きぬぃものであることが示唆された。また、晩夏において、植物プ ラ ンクトン の細胞死 の要因 の1っ として予想される、生物に有害なB領域紫外線放射の影響を評 価 するため 、紫外線 透過条 件を変えた海水培養容器を用意して、太陽光下、24時間の船ヒ培養 実 験を行い 、培養前 後のウ ルトラ植物プランクトンの見かけの増殖率、生存率を評価した。そ の 結果、母 珊尅桝D飽瑠 邪.細胞 は真核 ウルトラ 植物プラ ンクト ンよりもUvB耐 陸が低いこと が わかった 。また、 短時間 の太陽紫外線放射ではウルトラ植物プランクトンの生存率に負の影 響を及ばさないことがわかった。2005年春季において、^蜀們ピめDcDc弸spp.の細胞密度は黒潮親 潮 移行域においてのみ測定でき、その細胞密度は5〜8x10ヨcdlsm・1であった。一方、親潮域お よ ぴ黒潮親 潮移行域 の真核 ウルトラ植物プランクトンの細胞密度ば7〜35×103cens耐11であっ た 。また、 細胞消化 法によ り見積もった.跏P出DcDc淵暉p.の生存率は黒潮親潮移行域では約 80% 、真陵ウルトラ植物プランクトンは70%以上であった。細胞消化法とH)LC色素分析法を組 み 合わせて 見積もっ た生存 率はフコキサンチン(珪藻類やプリムネシオ藻類由来)が親潮域で 生存率約100%であった。両航海を通して、5りPあDcDc鰡spp.と真核ウルトラ植物プランクトン の 細胞生存 率と水温 もしく は主要栄養塩との問に有意な相関関係は見られなかった。しかし、

本調査海域に茄いて、溶存鉄濃度は春季が0.5nM、夏季にはく0.1nMに減少するという報告や、

鉄 枯渇が細 胞死を引 き起こ す要因のーっであるであるという報告も過去にあることから、海水 中 の鉄枯渇 が研究海 域で植 物プランクトンの細胞死を引き起こしている可飽陸があり、今後、

植 物プラン クトンの 細胞死 と海水中の鉄濃度の問の関係を調べることが必要である。以上の結 果 より、北 西太平洋 域にお いて、植物プランクトンの細胞死は季節的に植物プランクトンの群 集 構造を変 化させ、 さらに それが海洋の物質循環過程を変化させることが本研究によって初め て示唆された。

1120 ‑

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

准教授 教授 教授 助教

鈴 木 光 次 東    正 剛 吉 川 久 幸 藏 崎 正 明

     学位論文題名

Cell viability of phytoplankton in the Northwest Pacific Ocean

( 北 西 太 平 洋 域 に お け る 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 細 胞 死 )

  海 洋 にお いて ,植 物プランクトンは,主 要な基礎生産者であり,海水中の二酸化炭素および光を 利用 し て光 合成 を行 うことにより,有機物 を生産する。この有機物は生食食物連鎖や微生物食物網 の過 程 で消 費, 分解 されるが,その―ー部 は海洋の中深層へ輸送され長期間,炭素が貯蔵される。

この 海 洋生 物に よる 炭素貯蔵機構は生物ポ ンプと呼ばれ,海洋の二酸化炭素固定能カを決定する。

申請 者 が研 究対 象と した北西太平洋亜寒帯 域は,世界有数の漁場であるとともに,生物による表面 海水中の二酸化炭素分圧を下げ る効果が世界の海の中で最も高い海域の1つであり,生物ポンプの効 率が非常に高しゝことで知られ ている。しかしながら,近年,同海域において,純群集生産が年々減 少し て いる こと が示 唆されている。また, 親潮域の春季ブルーム(大増殖)期において,植物ブラ ンクトンの現存量指標であるク 口口フィルa濃度が年々減少 傾向にあり,プルームを形成する珪藻種 も年々変化していることカゞ報 告された。申請者は,近年注目されている権物プランクトンの細胞死

(プ 口 グラ ム細 胞死 )がこれら変化の一因 になっている可能性を推測したが,同海域における植物 プラ ン クト ンの 細胞 死に 関す る知 見は 皆無 であ った こと から , 下記 の研 究を実施するに至った。

  申請者は先ず,親潮域で春季ブルームを主に形成する中心目珪藻Thalassiosira nordenskioeldriの単離培 養株を用しゝたバッチ培養実験 を行い,細胞消化法と古くから用いられているエパンスブ渺ー法によ り細 胞 生存 率の 測定 をし た。 さら に, 過去 に報 告の 無い 高速 液 体ク 口マ トグラフイー(HPLC)によ る植 物 色素 分析 法と 細胞消化法を組み合わ せて,細胞生存率を評価する手法を開発した。この室内 培養実験を通して,分析手法を確立するとともに,Z noidgnskioeldiが培地中の栄養状態が悪化した際 に 休 眠 胞 子 を 作 る こ と な ど に よ り 細 胞 生 存 率 を 維 持 す る 戦 略 を 持 つ こ と が 明 ら か と な っ た。

  次に,北西太平洋域における 植物プランクトン群集の細胞死に関するバラヌー夕(糸田胞生存率と 比細 胞 溶解 速度 )を 取得するために,申請 者は独立行政法人水産総合研究センター若鷹丸WK0309航 海(2003年9月2‑‑‑21日)およびWK0505航海(2005年5月10ー‑29日)に参加した。2003年9月の晩夏では,

植物 プ ラン クト ン群 集中で細胞数が最も高 かったラン藻S)meめ鰍嬲の細胞生存率が60ー79%,真核

(4)

ウルトラ植物プランクトン(体長く10阻めの細胞生存率カs26丶一一‑41%'であり,真核ウルトラ植物プラン クトンの致死率は,|Synechococcusに比ベ,有意に高いことを発見した。また,工ステラーゼ活性法で 評価した植 物プランクトン群集の比細胞溶解速度は0.1200.67一であり,過去に同海域で調査し た微 小 動物 プラ ンク トン の 植物プランクトンの比補食速度(0.09‑0 25dl)に匹敵す るものであった。こ の 結果 は, 同海 域の 晩 夏では,植物プランクトンの細胞死が植物プランクトン の除去過程として極 めて重要で あることを示唆する貴重な発見であった。一方,2005年5月の春季では,検出されたSynec hococc班お よび真核ウルトラ植物プランクトンの細胞生存率は,2003年9月晩夏と比較して,有意に高 か った 。ま た, 細胞 消 化法とHPLC色素分析法で見積もったフコキサンチンを補 助色素として持つ親 潮 域の 植物 プラ ンク ト ン(主に珪藻類とプリムネシオ藻類)の細胞率が約100%‑Cあったことを明ら か にし た。 以上 の結 果 から,北西太平洋域の植物プランクトンの細胞生存率は 季節的に変化するこ とが本研究で初めて明らかとなった。

  申請 者は ,さ らに 植 物プランクトンの細胞死と海水中の鉄利用度との関係を 評価するため,2004 年 夏季 に西 部北 太平 洋 亜寒帯循環域で実施された現場鉄散布実験(SFiFDSrIDに 参加した。近年,夏 季 の西 部北 太平 洋亜 寒 帯循環域は,海水中の鉄不足により,植物プランクトン の増殖が制限されて いる海域として知られている。鉄散布後,.Sjmechocoa:usの細胞生存率は有意に増加したことから,海 水中の鉄不足により Synechococcusの細胞死が起きていたことが本研究により初めて明らかとなった。

また,実験 後半,鉄散布効果カ潮た海水中ではSynechococcus*3よび真核ウルトラ植物プランク トン の 細胞 生存 率が 有意 に 減少したことから,これら細胞死により細胞外に放出さ れた有機物が微生物 食物網を刺激した可能陸が考えられた。

  審査 員一 同は ,こ れ らの研究成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ 熱心であり,大学院 博 士課 程に おけ る研 鑽 や修得単位などもあわせ,申請者が博士(環境利学)の 学位を受けるのに充 分な資格を有するものと判定した。

参照

関連したドキュメント

図 21 のように 3 種類の立体異性体が存在する。まずジアステレオマー(幾何異 性体)である cis 体と trans 体があるが、上下の cis

福島第一原子力発電所 .放射性液体廃棄物の放出量 (単位:Bq)

石綿含有廃棄物 ばいじん 紙くず 木くず 繊維くず 動植物性残さ 動物系固形不要物 動物のふん尿

優占動物プランクトン 優占植物プランクトン  LORENZENに準ずる方法  .  Jeffrey&Humphreyの式 (mg/m

泥炭ブロック等により移植した植物の活着・生育・開花状況については,移植先におい

生育には適さない厳しい環境です。海に近いほど  

木くず 繊維くず 動植物性残さ 動物系固形不要物 動物のふん尿 動物の死体 政令13号物 建設混合廃棄物 廃蛍光ランプ類

石綿含有廃棄物 ばいじん 紙くず 木くず 繊維くず 動植物性残さ 動物系固形不要物 動物のふん尿