博 士 ( 医 学 ) 小 玉 和 郎
学位論文題名
.Primary cutaneous largeB ― cell lymphomas ・ Clinicopathologic features , classification , and prognostic factors inalarge series of patients . (原発性皮膚大細胞型 B 細胞リンパ腫.多症例を用いての 臨 床 病 理 学 的 特 徴 , 病 型 分 類 , 予 後 因 子 )
学位論文内容の要旨
緒 言:
2005
年 に 提 唱 さ れ た ,WHO/EORTC (European Organization for Research and Treatment of Cancer
) によ る皮 膚リン パ腫 の新 分類 では ,皮 膚原 発大 細胞型B細胞リン パ腫(LargeB
―cell lymphoma
(LBCL) )は3
つのカテゴリーに分かれている.すなわち,「下肢型」,「ぴまん性濾胞中心リンバ腫(FCL)型」,「その他の型」である.しかし,この分 類方法が臨床病理学的特徴,予後の点を考慮すると適切であるか否かは不明である.また,
予後因子も明らかになっていない.
目的: 本研 究の 目的は,多数の
LBCL
症例を用いて病理学的特徴,臨床学的特徴,予後に関 してLBCLに つい てWHO/EORTC分類が 適切 であ るか否かを検討すると同時に,予後因子の同 定を試 みる こと にあ る・対 象 と 方 法 :
93
例 の 皮 膚 原 発LBCL
を 対 象 とし た. この93
例 はWHO/EORTC新 分類 に沿 う と「 下肢 型」LBCL
は40例, 「びま ん性FCL
型」 は44例, 「その 他の 型」 は9例と分類され た.これらの症例に関し,LBCL全体および各群において@病理学的特徴,◎臨床学的特徴,◎予後に関する解析を行った.具体的な解析内容を以下に記す・
@臨床情報,◎皮疹の性状,◎予後,各個人から得られた皮膚生検組織を用いての@H−E 染色 プレ バラ ートによる腫瘍細胞の形態学的解析,◎腫瘍細胞のフェノタイプを解析する
ための
BCL
―2,BCL−6,MIBー1
,MUM−1,FOX−Plなどのモノクローナル抗体を用いた免疫染色,◎PCRによるヘルヘ°スウイルス8型
(HHV8
)DNA
の検出,ぐ)Borrelia burgdorferi DNA
の検出J◎IgH
遺伝子再構成の検出,◎in situJ1イフ゛リタ゛イセ゛ーション法を用いたEBウイルスの発現.結 果 : 統計 学 的解 析 で は「下 肢型」と「 びまん性
FCL
型」に分 類された 症例は臨 床病理学 的 特徴や生 存率にお いて明らか に差があ り,その 独立性が 証明され た.具体 的には「下肢 型 」 が 「 ぴ ま ん 性FCL
型 」 に 比 較 し て 以 下 の 差 異 が 有 意 差 を も っ て 得 ら れ た ・す なわ ち ,@ 年 齢 分布 が
median age
で12,5
歳 高く(p〈0.0001
) ,◎下肢 に優位に 多く(p<0.0001
) ,◎MUMー1
( 形質細胞や一部の濾胞中心B
細胞に発現する転写因子)が優位に発 現し(p
く0,0001
),@FOX一Pl
(forkhead box pretein Pl,節性ぴまん性活性型B細胞由来の 症例で優位に発現がみられる転写因子)が優位に発現し(p
〈0.0001
),◎予後不良(61.7%対86.7X,)
,であった.一 方,LBCL全体 における 予後不良因子の同定を試みたところ,以下の因子が同定された・
J
すなわち,@病変が下肢に存在する(p=0.001),@発症年齢が70歳以上(pー−0.007),◎腫瘍 細胞の形態がcleavedcellよりも
roundcell
優位(p O
.02
),@BCL
―2
陽性(p 0.05
),◎MUM
−1陽性(p O
.05),◎FOX−P1陽性(p
−−0.03
).ま た,「そ の他の型 」は臨床学 的,病理 学的に「 下肢型」と「ぴまん性
FCL
型」の中間の 特徴を備えていた.考 按 :本 研 究に お い て, @ 皮疹の性 状などの 臨床所見 は病変の 存在部位 を除いて 予後と は関 係なく,
LBCL
の分類に 寄与しない ,@正確 な腫瘍細 胞の形態学的解析およぴフェノタ イ プ の解 析 をす る こ とに よ って,ほ とんどの 症例(93例 中84
例,90
% )は予後 が有意に 異 な る2
群, 「 下肢 型 」 ある いは「び まん性FCL
型 」に分類 可能であ ることが 示された .第
3
のカ テ ゴリ ー と 分類 せ ざる を 得 ない 「 そ の他 の 型」 は全て の皮膚原 発LBCL
の10
% に当 たるが, これらの 症例が実際 に独立し た臨床病 理学的特徴を備えているか否かを明ら かに するため にさらな る研究が必 要である と考えら れた.―139−
学 位 論 文 審査 の 要 旨
学位論文題名
Primary cutaneous largeB ― cell lymphomas . Clinicopathologic features , classification , and prognostic factors inalarge series of patients .
(原発性皮膚大細胞型B 細胞リンパ腫.多症例を用いての ・ 臨 床 病 理 学 的 特徴 ,病 型 分類 , 予後 因 子)
2005年 に 新 た に 提 唱 さ れ た ,WHO/EORTC (European Organization for Research and Treatment of Cancer)によ る 原 発性 皮 膚 リン ノ 嗹 の 分類 で は ,原 発 性 皮膚大細 胞型B細胞 リンパ.腫(primary cutaneous largeB―cell lymphoma (PCLBCL))は,「legtypeJ Tfollicular center lymphoma (FCL)」rother type」 の3群 に分け られている.しかし,この分類が臨床病 理 学的特 徴,予後 の点か ら適切で あるか否 かは不 明であり ,予後 因子およ び病因 も明らかに な ってい ない.そ のため ,本研究 では多数 のPCLBCL症例 を解析 すること により ,臨床病理学 的 特 徴 ,予 後 に 関し てWHO/EORrC新分類が 適切であ るか否 かを検討 すると 同時に, 予後因 子 および病因の同定も試みた.
対 象は93例のPCLBCIーであり,WHO/EORrC新分類に沿うと「leg type」が40例,「FCL type」 が44例,rother type」が9例 と分 類 さ れた .こ れらの 症例に関 して以 下の点に ついて 検討 し た.@ 新分類の 有用性 の分析: それぞれ の群に 韜ける年 齢,性 差,皮疹 の性状 ,予後の解 析 ,H一E染 色プレパ ラート による腫 瘍細胞 の形態学 的角晰,BCL‑2,BCL‑6,MIB‑1,MUM一1, FOX‑P1な ど のモ ノ ク ロー ナ ル 抗体 を 用 いた 免疫 染色に よる腫瘍 細胞の フェノタ イプの解 析 を 行った .◎予後 因子の 同定:症 例全体及 び個々 の群にお いて, 以下のパ ラメー タについて 解析を行った.すなわち,腫瘍細胞形態,年齢,下肢病変の有無,病変数,Bcl‑2,MUM一1,FOX一Pl, CD10ま た はBCL‑6各マーカ ーの発 現を調べ た.◎原 因検索 :PCRに よるHHV‑8およぴBorrelia burgdorferiの 検 出 , in situ hybridization法 を 用 い た EBVの 検 出 を 試 み た . そ の結果 ,@「leg type」と「FCL type」問には 臨床病 理学的特 徴およ ぴ予後において明 ら かに差 があり, 腫瘍細 胞の形態学的韜よぴフェノタイプの正確な解析をすることによって,
ほ とんどの症例く93例中84例,90%)が予後の有意に異なる2群,「leg type」と「FCL type」 に 分類可 能だった .また ,「other type」は臨床病理学的に「leg type」と「FCL type」の中 間 の特徴 を備えて いた. @腫瘍細 胞形態, 年齢, 下肢病変 の存在 ,Bclー2,MUM‑1・FOX一Pl の 発 現 と予 後 と の 問に 逆 相 関を 認 め た. ◎HHV‑8は 「leg typeJ 33例 中1例 のみが陽 陛だっ
―140 ‑
宏寛 也
雅 哲 水村 内 清今 守 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
たが,BorreliaおよびEBVは全例陰陸だった・
これ らの 結果 より ,@WHO/EORTC新分 類は 適切であるが,10%を占める 「other type」が実 際に独立した臨床病理 学的特徴を備えているかは確定できないこと,(勧重瘍細胞形態,年齢,
下肢病変の存在,Bcl―2,MUM‑1 ‑FOX‑P1の発現, の6っが予後不良因子であること,◎HHV‑8, Borreliaお よびEBVが 病因 でぬ いこ と, が明 らか にな った .今 回の 研究 により,新分類に従 っ て個 々の 症例 を適 切に 分類 する こと によ り ,予 後の 予測 およU沐 疾患 の再分類にっながる デ .‐タの蓄積が 可能との結論に至った.
公開 発表 に際 し, 副査 の今 村雅 寛教 授か らは本症の分類の今後の改訂 の見込みについての 質 問や 治療 法に ついての質問,副査の守内哲 也教授からは,瑠y遺伝子再 構成に関する質問,
予 後不 良因 子の ーっであるFOx一Plの遺伝子転座についての質問,主査の 清水宏教授からは,
臨床所見が今後の分類 に再:て膾まれる可能性にっいての質問などが有ったが ,申請者は大概 適切な回答をなし得た .
この 論文 は, 悪性 リン ノ嗹 の一 型で あるPCLBCIーにおいて,93例とい う多数の症例を用い て 臨床 病理 学的 にWHO/EORrC新 分類 の適 切性 が明 らか にな った 点, 新分 類に基づぃた予後不 良因子の同定をなしえ た点が高く評価された・
審査 員一 同は ,こ れら の成 果を 高く 評価 し,申請者が博士(医学)の 学位を受けるのに充 分な資格を有するもの と判定した.