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エストロゲン受容体

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 中 島 亜 矢 子

学 位 論 文 題 名

エストロゲン受容体n に対するユビキチンリガーゼ

    ●   J  ●

estrogen responslVe丘 ngerproteln( EFP) の 機 能 解 析

学位論文内容の要旨

  エ ス ト ロ ゲ ン 受 容 体a (ERa)は エ ス ト ロ ゲ ン と 複 合 体 を 形 成 し 、 転 写 因 子 と し て 標 的 遺 伝 子 の 転 写 を 活 性 化 す る こ と で 生 殖 器 の 発 達 や 乳 癌 や 子 宮 体 癌 の 腫 瘍 形 成 に 関 与 す る 。ERa は 核 内 受 容 体 ス ー パ ー フ ん ミ リ ー に 属 し 、 リ ガ ン ド 依 存 性 にDNAに 結 合 し て 転 写 活 性 を 起 こ す 。ERaは り ガ ン ド が 結 合 す る と 立 体 構 造 を 変 化 さ せ ニ 量 体 を 形 成 し 、 コ ア ク チ ベ ー タ ー と 複 合 体 を 形 成 す る 。 そ の 複 合 体 は ヒ ス ト ン を ア セ チ ル 化 す る こ と で 、 さ ま ざ ま な 標 的 遺 伝 子 の 転 写 調 節 領 域 に 存 在 す る エ ス ト ロ ゲ ン 応 答 エ レ メ ン ト(ERE)に 作 用 し 転 写 を 活 性 化 す る 。

  ユ ビ キ チ ン | プ ロ テ ア ソ ー ム シ ス テ ム は 、 細 胞 内 タ ン パ ク 質 の 分 解 シ ス テ ム で あ り 、 細 胞 周 期 制 御 、 シ グ ナ ル 伝 達 、 癌 抑 制 遺 伝 子 の 発 現 調 節 、 転 写 調 節 な ど の 機 能 に 関 与 し て い る 。 ユ ビ キ チ ン は 、 ユ ビ キ チ ン 活 性 化 酵 素(El) に ト ラ ン ス フ ァ ー さ れ 、 ユ ビ キ チ ン 結 合 酵 素(E2) を 介 し て ユ ビ キ チ ン リ ガ ー ゼ(E3) に よ っ て 認 識 さ れ て い る 基 質 タ ン パ ク 質 に 付 加 さ れ る 。 基 質 タ ン パ ク 質 上 に ポ リ ユ ビ キ チ ン 鎖 が 形 成 さ れ る と 、 基 質 タ ン パ ク 質 は プ ロ テ ア ソ ー ム に よ り 分 解 さ れ る 。 ま た 、 ユ ビ キ チ ン 化 は タ ン パ ク 質 分 解 だ け で は な く 、DNA修 復 、 エ ン ド サ イ ト ー シ ス 、 ア ミ ノ 酸 輸 送 等 の 機 能 に も 関 与 す る 。 近 年 、 い く っ か の 核 内 受 容 体 に お い て 、 ユ ビ キ チ ン 化 が 転 写 活 性 化 に 重 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。ERaも エ ス 卜 ロ ゲ ン 依 存 性 に 分 解 さ れ 、 そ の 分 解 は プ ロ テ ア ソ ー ム 阻 害 剤 で 阻 害 さ れ る 。ERaは ユ ビ キ チ ン ・ プ ロ テ ア ソ ー ム シ ス テ ム で 分 解 さ れ る こ と に よ り 、 受 容 体 の 発 現 レ ベ ル や 転 写 活 性 レ ベ ル 及 び 活 性 時 間 を 調 節 す る こ と が 推 測 さ れ て い る 。ERaは エ ス ト ロ グ ン 依 存 性 に 転 写 活 性 を 促 進 す る が 、 エ ス ト ロ ゲ ン が 結 合 す る と 、ERaの 半 減 期 は 約3時 間 に 短 縮 す る 。 し か し 、 現 在 ま で エ ス 卜 ロ グ ン 存 在 下 でERaと 結 合 し 、 そ の 転 写 活 性 や 分 解 制 御 に 関 与 す るE3は 同 定 さ れ て い な い 。   申 請 者 はERaを 特 異 的 に ユビ キ チ ン 化 するE3と し てestrogen responsive finger protein (EFP) を 同 定 し 、 そ の 生 化 学 的 及 び 細 胞 生 物 学 的 解 析 を 行 っ た 。efp遺 伝 子 はEREを 有 す るERaの 標 的 遺 伝 子 の ー っ で あ り 、 エ ス ト ロ ゲ ン 投 与 に よ りEFPタ ン パ ク 質 の 発 現 レ ベ ル が 増 加 す る 。 EFPは 、N末 端 にRING finger domainを 持 ち 、 細 胞 周 期 のG2停 止 を 引 き 起 こ す14‑3‑3aの タ ン パ ク 質 分 解 を 引 き 起 こ すE3で あ る こ と が 以 前 に 報 告 さ れ て い る 。 ま た 、 所 遺 伝 子 ノ ッ ク ア ウ ト マ ウ ス は エ ス ト ロ ゲ ン 低 反 応 性 で あ り 、EFPは エ ス ト ロ ゲ ン 依 存 性 細 胞 増 殖 と 生 殖 器 官 の 発 育 に 不 可 欠 と 報 告 さ れ て い る 。

  EFPとERcニcの 結 合 をHEK293T細 胞 内 で 解 析 し た と こ ろ 、EFPはERaと 特 異 的 に 結 合 し た 。 ま たEFPとERaの り コ ン ビ ナ ン ト タ ン パ ク 質 を 混 合 し 、 抗EFP抗 体 で 免 疫 沈 降 し 、 抗ERa 抗 体 で ウ エ ス タ ン 解 析 を 行 っ た と こ ろ 、 両 者 の 結 合 が 確 認 さ れ た 。 さ ら に 、 酵 母 ツ ー ハ イ ブ リ ッ ド 法 に よ り 、 エ ス ト ロ ゲ ン (17p‑estradiol)依 存 性 に 両 者 の 結 合 が 促 進 さ れ る こ と が 判明 し た 。 し た が っ て 、EFPとERaは 他 の 要 素 (17p‑estradiolや ア ダ プ タ ー 分 子 な ど ) な し で も 結 合 し 得 る が 、17f3‑estradiol存 在 下 に お い て そ の結 合 が さ ら に増 強 さ れ る こと が 確 認 さ れ た。

ま た 、EFPがE3で あ る か を 検 討 す る た め に 、in vitroユ ビ キ チ ン 化 アッ セ . イ を 行っ た と こ ろ 、     ―375−

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・ EFP は E3 として機 能し、 E2 としてUbc4 や UbcH5c を使用することが判明した。さらにRING    フアンガ ードメインを欠損させたEFP (ARING) と、システインをアラニンに置換したEFP   (C8A) の変 異体の E3 活性を検 討した ところ、両者ともE3 活性の減弱もしくは消失が認め    られ、酵素活性にはRING フインガードメインが必要であることが判明した。さらに加vitro ユ ビキチ ン化アッセイにおいてEFP が ERa を直接ユビキチン化することが判明した。また、

HEK293T 細胞 内での in vivo ユビ キチン 化アッセ イにお いて、 EFP の存在で ERa のユビキチ    ン化が促進され、細胞内においてもEFP がERa をユビキチン化することが確認された。さら に 、 EFP が ERa の 安定性 に与える 影響を パルス‐チェイス法によって解析したところ、EFP   (ARING) を過 剰発現 させた場 合にERa の分解速度の遅延が認められ、細胞内においてEFP が ERa の分解に関与することが明らかとなった。

    EFP がERa の転写活性に与える影響を調べるためにルシフェラーゼアッセイを行ったとこ ろ 、 EFP の 過剰発現 により ERE 転写 活性が 上昇した 。また、 EFP (ARING) を 過剰発 現させ た場合には転写活性の抑制が認められ、ドミナントネガティブ効果がみとめられた。EFP が    どのような機序で転写活性能に影響を与えているかを検討するために、コアクチベーターの ー つであ る Tip60 と の関係 について 検討し た。その 結果、 EFP (WT) の存在下で、Tip60 と ERa の結 合の促進が認められ、一方、EFP (C8A) の過剰発現の場合は両者の結合が抑制され た 。した がって、 EFP は Tip60 と ERa の結 合を促進 するこ とで、 ERE の転写活性を促進する ことが示唆された。

     また、臨床検体を用いて子宮内膜癌での EFP の発現にっいて検討したところ、類内膜腺癌 Grade1 及び2 においてEFP の比較的高い発現が確認された。

     今回の研究でEFP の新たな機能として、ERa の分解と転写制御に関与するE3 であること

が判明し、ERE における転写に対してポジティブフイードバック作用を有することが示され

た。このことは、 EFP が複数の段階(細胞周期制御や転写制御など)でホルモン依存性腫瘍

の形成及び悪性化に関与している可能性が示唆された。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

エストロゲン受容体n に対するユピキチンリガーゼ

    ●

estrogen responslVe丘 ngerprotein( EFP) の 機 能 解 析

  正 ス ト ロ ゲン レ セ プ ターa (ERa)はエス トロゲ ンと複 合体を形 成し、 転写因 子とし て標的 遺伝子 の転写 を活性 化し、 生殖器 の発達 やホルモ ン依存性癌(乳癌や子宮体癌など)の腫瘍形 成に関 与する ことが 知られ ている 。本学 位論文は ,ERaを 特異的 にユビキ チン化するユビキチ ンリガーゼE3、estrogen responsive finger protein (EFP)を同定し、生化学的及び細胞生物学的解 析を行 ったも のであ る。EFPはERaと直接 結合し 、その結合はエストロゲン依存性に増強した。

さ らに、in vitroユビ キチン 化アッ セイに おいてEFPはERaをユ ビキチ ン化し た。ま た細胞 内 にEFPを過 剰発現 させると 、ERaの ユビキ チン化を 促進し た。そ のユビ キチン 化は、 リジン48 を介し たポリ ユビキ チン鎖 形成で あり、 そのユビ キチン 鎖をプ ロテア ソームが認識しERaを分 解 に導く ことが 判明し た。ま たEFPはエ ストロ ゲン依 存性に 、ERaの転 写活性 を促進 させる こ と も明ら かとな った。 この転 写促進 のメカ ニズム は、EFPに よるERaの ユビキ チン化 を認識 し て 、コア クチベ ーター のーっ であるTip60がERaに 結合す ることに 起因す ること も判明 した。

また、 各進行 度の子 宮体癌 の組織 検体に 対してウ エスタ ンブロ ット解 析によるEFPの発現レベ ルの検 討を行 ったと ころ、 正常子 宮内膜 と癌組織 で発現の相違が認められた。したがって、今 後臨床 医学的 に乳癌 や子宮 体癌な どのホ ルモン依 存性癌 におい て、EFPの 分子レベルでの解析 をすることの重要性が示唆された。

  口 頭発 表におい て、笠 原正典 教授よ り、EFPは エス卜 ロゲジ 依存性 にERaをユ ビキチ ン化す るユビキチンリガーゼとして初めての発見か、EFPに着眼した理由は何か、TRIM family protein の なかで エスト ロゲン 応答領 域を持 っタン パク質 はEFPのみ か、EFPノ ックア ウトマ ウスの 表 現型か ら考え るとERaの ユビキ チン化 には他 のユビ キチン リガー ゼの関与 が考えられるのか、

ERaのユ ビ キ チ ン化 に よ る 分解 は 、 細 胞内 のDNA上 で起 こる反 応と考 えてい いのか などの 質 問 があっ た。こ れらの 質問に 対し、EFPはエス トロゲ ン依存 性にERaを ユビキ チン化 するユ ビ

次 明

鎮 範

山 木

畠 櫻

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

キチンリガーゼとして今回が初めての発見であり、TRIM family proteinのなかで、エストロゲ ン応答領域を持っタンパク質はEFPのみであり、そのため本研究においてEFPに注目したとい うこと、EFPのノックアウトマウスでもエストロゲンの作用のすべては消失しなぃことから EFP以外にもERcニcをユビキチン化するユビキチンリガーゼは存在する可能性があること、ERa のユビキチン化による分解は細胞内のDNA上でおこる反応かどうかは不明だが、多くの転写 因子の分解はDNA上で認められる可能性が高いと考えられているが,統一した見解は難しい     1

ことを回答した。っいで櫻木範明教授より、エストロゲンの反応は臓器特異的であるがそのメ カニズムについてEFPの関与はあるのか、タモキシフェンなどのエストロゲン受容体アンタゴ ニストの作用と、ユビキチン化やEFPに関係はあるのか。EFPのドミナントネガティブ型を今 後治療に応用できるのかなどの質問があった。これらの質問に対しては、EFPは多くの組織に 発現しているタンパク質であり、EFPの作用でエストロゲンの臓器特異的な作用を説明するの は困難であり、タモキシフェンの作用については今回検討していないがEFPの関与が否定でき ないこと、さらに,EFPのドミナントネガティブを今後治療に応用できる可能性があることを 回答した。さらに、畠山鎮次教授より、今回の研究を確実にするために不足している点は何か と質問があり、EFPをノックダウンさせた場合のERaの転写や分解に対する実験の必要性を回 答した。

  この論文は、北海道医学雑誌で高く評価され、今後、臨床でのホルモン依存性腫瘍における 予後規定因子としての役割や、ホルモン依存性腫瘍の発癌の解明、及び治療の方面で期待され る。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院過程における研鑽や取得単位なども併せ 申 請 者 が 博 士 ( 医学 ) の 学資 を 受 け るの に 十 分な 資 格 を有 す る もの と 判 定し た 。

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参照

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