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ヒラメ幼魚のエネルギー代謝に関する実験的研究

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 水 産 学 ) 劉    海 金 学 位 論 文 題 名

ヒラメ幼魚のエネルギー代謝に関する実験的研究

学位論文内容の要旨

    ヒラメ、(Para黼£ゆ°.施閲恥)は、東アジアの沿岸に広範囲に分布する浅海 性魚 類である 。本種は成 長が早く 美味で、 日本にお ける高価 格魚種のーつであ るた め、栽培 漁業と完全 養殖の重 要な対象 種とされ ている。 しかし、その養殖 方法 は現場で の経験的な 技術応用 を主体と して行わ れている こともあって、種 苗生 産を含む 高密度な集 約的養殖 方法に対 する生理 的対応に ついての研究は少 ないのが現状である。

  本研 究では、 ヒラメ養殖 の効率化 に関連す る基礎的 知見を得 るため,幼魚期 に至 るまでの エネルギー 代謝のパ ターンの 解明を目 的として 、エネルギー代謝 に関 連する酸 素消費量の 変動、日 周リズム 、特異動 的作用お よび温度の影響を 調べ 、次に、 排泄物とな るアンモ ニアと尿 素の変動 およびそ れに与える温度と 摂餌 量の影響を求めた。さらに、成長に与える摂餌量の影響について実験を行っ た 。 こ れ ら の 結 果 に 基 づ き 、 、 ヒ ラメ 幼 魚の エ ネ ルギ ー 動 態を 試 算し た 。 1.呼吸によるエネルギーの代謝

  人工 種苗から 育成された ヒラメ幼 魚(体重範囲:2.4‐4213g)を用いて、水 温15℃ 、20℃ お よび25℃の3温 度区を設 定して、平 常代謝量 および特 異動的作 用を測定した。

  本研 究では、 絶食後3日目 の幼魚の 酸素消費 量を平常 代謝量と し、絶食後7日 目の 酸素消費 量を標準代 謝量とし た。その 結果、標 準代謝量 は平常代謝量の76

%に 相当した 。幼魚の1個 体あたり の酸素消費量は、体重の増加に伴い増加し、

単位 体重当た りでは体重 の増加に 従い減少 した。絶 食時の酸 素消費量の日周リ     一928―

(2)

ズムでは、日中の消費量は変化が少なく、午前3時から6時の間にピークとなる 日周期性が認められた。酸素消費量の日周期性の成因を検討するため、活動の 日周性を調べたところ、幼魚は昼間にはあまり活動せず、午前0時から6時にか けて活動が活発であった。この幼魚の行動量の上昇、ピークの形成、下降の傾 向が酸素消費量の推移とよく一致していたことから、酸素消費量の日周性は幼 魚の活動日周期と関連していると考えられた。

  酸素消費量に与える水温の影響を調べるため、3温度区について実験を行っ た結果、酸素消費量と体重との関係にはそれぞれ高い相関が見られ、高温ほど 酸素消費量が高く、・また、3温度区間での酸素消費量に有意差が認められた。

しかし、いずれの温度段階でも、代謝量と体重の関係式の体重指数は約0.65と、

円形な遊泳魚の0.75より低かった。これは、異体類であるヒラメが底生魚であ るために活動代謝が低いことを意味している。一方、代謝量に与える摂餌量の 影響を反映する特異動的作用は、摂餌量(体重の1、2、3%)の増加に伴い高 くなるのに対して、特異動的作用と温度との相関関係は認められなかった。

2.排泄によるエネルギーの損失

  3温度区における絶食および摂餌時のアンモニアと尿素排泄量を調べた。絶 食時のアンモニアはいずれの温度段階でも日中と夜間の変動が小さく、ほぼ一 定の値に保たれた。摂餌したヒラメの排泄量は、摂餌直後から摂餌前の4‑6倍 に急上昇し、摂餌後6‑12時間にピークとなり、その後24時間以内に緩やかに摂 餌前のレベルに下降した。個体当たりのアンモニア排泄量は、温度の上昇に伴 い増加し、15℃と20℃の間では有意差が見られなかったが、25℃では15℃およ び20℃に対して有意差が認めら れた。これは、25℃を超えるとヒラメの排泄量 が顕著に増加することを反映していると考えられた。

  アンモニア排泄量に与える摂餌量の影響に関しては、いずれの水温でも、摂 餌量が高いほどアンモニア排泄量がほぼ直線的に高くなる傾向が示された。尿 素排泄量は、絶食時のアンモニアの変動傾向とほぼ同様に日周性は見られなかっ たが、アンモニア排泄量の約15%と低い値を示した。また、尿素排泄量は水温 の 上 昇 に よ り 増 加 し た が 、3温 度 区 で は 有 意 差は 認 めら れ なか っ た。

    ‑ 929−

(3)

  尿素 に与 える 摂餌量 の影 響で は、 摂餌 後緩やかに上昇し、アンモニアのピー ク 時に 高い 値と なるが 、明 瞭な 日周 変化 が認められず、異なる摂餌量に対して も 、尿 素排 泄量 はほぼ 同様 な値 を示 した 。20℃におけるヒラメ幼魚の含窒素排 泄量(アンモニアと尿素)は、摂取されたエネルギー量の約4.4%(範囲:2.2 ‑ 5.4%)に相当することが明らかとなった。

3, 成 長 に 伴 う 魚 体 力 口 リ ー 価 の 変 化 お よ び 成 長 に 及 ぼ す 摂 餌 量 の 影 響 幼 魚( 体重0.6‑21.3g)を 用い て、 単位 乾重 量当た りの カロ リー 値を 求めた。

ま た、20℃ にお ける異 なる 摂餌 量条 件下 での成長実験を行い、ヒラメ幼魚の飼 育 下で の摂 餌量 と成長 量の 関係 を検 討し た。さらに、摂取されたエネルギー量 について成長への配分量を試算した。

ヒ ラ メ 幼 魚 の 乾 重 量 当 たりの カ口 リー 値は 、乾 重量Sg以 内で は個 体間 のば ら っきが大きかったが、5‑18.8gの範囲ではほぼ同じ値(50 00cal/g)が得られた。ま た 、 乾 重 量 を 湿 重 量 に 換算す ると 、湿 重量1gの 増加 は1440カ 口リ ーに 相当 し て いた 。体 重の1%、2%お よび3% の摂 餌量 を投与 した 実験 結果 を用 いて、成 長 量へ の影 響を 調べた とこ ろ、1% の摂 餌量での日間成長量は1.12%、2%では 2.25%、3%では3.19%であり、成長量と摂餌量との間に高い正の相関が認めら れ た。 この 実験 結果か ら、 水温20℃ の条 件下で摂取されたエネルギーの39.4% (35.2‑40.3%)が体成長に配分されると試算された。

  以上 に示 した ヒラメ 幼魚 の代 謝に 関わ る酸素消費量、排泄量および成長量の 実 験結 果に 基づ いて、20℃ で摂 餌量2% の場 合に摂 取さ れた ヒラ メ幼 魚のエネ ル ギー 動態 を試 算した 。な お、 排出 量( 糞)は本実験で測定しなかったため、

既 往の 知見(13% )を 用い た。 その 結果 、代謝量では、標準代謝量913%、活動 代 謝量16.7%、特異動的作用17.2%、また、排泄量414%、成長量39.4%と試算 された。

  ヒラ メ幼 魚の エネル ギー 動態 の算 出は 、本研究が初めての試みであるが、今 後 は各 成長 段階 および 異な る温 度条 件下 でエネルギー動態を詳細に調ぺる必要 が ある 。こ れら の結果 に基 づく 養殖 技術 の進歩や飼育環境の改善がさらに期待 される。

    ―930−

(4)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    島 崎 健二 副 査    教 授    小 城 春雄 副 査    教 授    中 尾    繁 副査   助教授   桜井泰憲

学 位 論 文 題 名

ヒラメ幼魚のエネルギー代謝に関する実験的研究

  ヒ ラ メ (Paral ichth}rs  ol´ vaceus‑)は 、 サハ リ ン より 東 シナ 海 に 至 る 沿 岸 域 に 分 布 す る 浅 海 性 魚 類 で あ る 。 わ が 国 で は 高 級 魚 と し て 評 価 さ れ て い る た め 、 各 地 で 養 殖 さ れ て い る 。 レ か し 、 そ の 養 殖 方 法 は 現 場 で の 経 験 的 な 技 術 応 用 を 主 体 と し て い る た め 、 種 苗 生 産 を 含 む 陸 上 で の 高 密 度 な 集 約 的 養 殖 方 法 に 対 す る 生 理 学 的 対 応 に つ い て の 研 究 は 少 な い の が 現 状 で あ る 。

  本 論 文 は 、 ヒ ラ メ 養 殖 の 効 率 を 向 上 さ せ る こ と に 関 連 す る 基 礎 的 知 見 を 得 る た . め 、 幼 魚 期 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 の パ 夕 一 ン の 解 明 を 目 的 と し て 、 様 々 な 水 温 と 摂 餌 量 の 飼 育 下 で の 、1) 酸 素 消 費 量 を 指 標 に し た 呼 吸 に よ る エ ネ ル ギ ー の 代 謝 、2) ア ン モ ニ ア と 尿 素 を 指 標 と し た 排 泄 に よ る エ ネ ル ギ ー の 損 出 、3) 成 長 に よ る エ ネ ル ギ ー の 蓄 積 等 を 実 験 で 明 ら か に し 、 エ ネ ル ギ ー を 指 標 と す る ヒ ラ メ 幼 魚 の エ ネ ル ギ ー 動 態 の 試 算 を 行 っ て い る 。 な お 、 飼 育 水 温 区 は15°C、20゜C、25゜ Cと し 、 餌 は ヒ ラ メ 用 配 合 餌 料 を 用 い た 。 従 っ て 、 各 実 験 で の 幼 魚 の 湿 体 重 当 た り の 摂 餌 量 (1、2、 3%) は 乾 重 量 と し た 。 な お 、 ヒ ラ メ 幼 魚 の サ イ ズ は 体 重 2― 45gの 範 囲 で あ っ た 。 か か る 内 容 の 本 論 分 の 結 果 を 要 約 す る と 以 下 の 如 く ま と め ら れ た 。

1) 酸 素 消 費 量 を 指 標 に し た 呼 吸 に よ る エ ネ ル ギ ー の 代 謝   絶 食 後 3日 目 の 酸 素 消 費 量 を 平 常 代 謝 量 、 そ し て7日 目 の 酸 素 消 費 量 を 標 準 代 謝 量 と し た 。 標 準 代 謝 量 は 平 常 代 謝 量 の76% に 相 当 し た 。 幼 魚 1個 体 当 た り の 酸 素 消 費 量 は 、 体 重 の 増 加 に 伴 い 増 加 し た が 、 単 位 体 重 当 た り で は 減 少 し た 。 酸 素 消 費 量 の 日 周 性 は 絶 食 時 で 午 前 3ー6時 に ピ ー ク と な り 、 そ し て 活 動 の 日 周 性 は 午 前Oー6時 に ピ ー ク

(5)

と な っ た 。 す な わ ち 酸 素 消 費 量 の 日 周 性 は 幼 魚 の 活 動 日 周 性 と 関 連 し て い た 。 酸 素 消 費 量 と 水 温 と の 関 係 で は 、 高 温 ほ ど 酸 素 消 費 量 が 高 く な っ た 。 摂 餌 量 が 代 謝 に 与え る 影 響 を 評 価 す る 特 異 動 的作 用 は 、 摂 餌 量 ( 体 重 の

1

2

3%

) の 増加 に 伴 い 高 く な っ た が 、 温 度と の 相 関 は見出せなかった。

2

) ア ン モ ニ ア と 尿 素 を 指 標 と し た 排 泄 に よ る エ ネ ル ギ ー の 損 出

  

絶 食 時 の ア ン モ ニ ア 排 泄 量 は い ず れ の 飼 育 水 温 区 で も 日 中 と 夜 間 の 変 動 が 小 さ く 、 ほ ぼ 一 定 に 保た れ た 。 摂 餌 レ た ヒ ラ メ の 排泄 量 は 、 摂 餌 直 後 か ら 摂 餌 前 の

4

6

倍 に 急 上 昇 し 、 摂 餌 後

6

12

時 間に ピ ー ク と な り 、 そ の 後

24

時 間 以 内 に 緩 や か に 摂 餌 前 の レ ベ ル に 下 降 し た 。 個 体 当 た 、 り の ア ン モ ニ ア 排 泄量 は 、 温 度 の 上 昇 と 共 に 増 加し た が 、 特 に

25

C

を 越 す と 顕 著 に な っ た 。 ア ン モ ニ ア 排 泄 量 に 与 える 摂 餌 量 の 影 響 で は 、 い ず れ の 水 温 で も 、 摂 餌 量 が 高 い ほ ど ア ン モ ニ ア 排 泄 量はほぼ直線的に高くなった。

  

絶 食 時 の 尿 素 排 泄 量 に 日 周 性 は 見 ら れ ず 、 ア ン モ ニ ア 排 泄 量 の 約

15

% と 低 い 値 を 示 し た 。 ま た 、 尿 素 排 泄 量 は 水 温 の 上 昇 に よ り 増 加 し た が 、

3

飼 育 水 温 区 で は 有 為 差 は み ら れ な か っ た 。 尿 素 排 泄 量 に 与 え る 摂 餌 量 の 影 響 で は 、 摂 餌 後 緩 や か に 上 昇 し 、 ア ン モ ニ ア の ピ ー ク 時 に 高 い 値 と な る が 明 瞭 な 日 周 性 は 無 く 、 異 な る 摂 餌 量 に 対 し て も 尿 素 排 泄 量 は ほ ぼ 同 様 な 値 を 示 し た 。

20

°

C

に お け る 含窒 素 排 泄 量(アンモニアと尿素)は、摂取されたエネルギー量の約4 .4 %(2 .2 ー5 .

496)

に相当レた。

3)

成長によるエネルギーの蓄積

  20

°

C

に お け る 異 な る 摂 餌 条 件 下 で の 成 長 実 験 を 行 い 、 ヒラ メ 幼 魚 の 飼 育 下 で の 摂 餌 量 と 成 長 量 の 関 係 を 検 討 し た 。 さ ら に 、 摂 取 さ れ たエネルギー量についての成長への配分を試算した。

  

ヒ ラ メ 幼 魚 の 乾 重 量 当 た り の カ ロ リ 一 価 は

5000cal/g

で 、 ま た 湿 重 量

lg

の 増 加 は

1440cal

に 相 当 レた 。 体 重 の

1

% 、

2

% 、

3

% の摂 餌 量 で の 日間 成長 量は 、それ ぞれ1.  12 %、2 .25 %、3 .19 %であった。摂取さ れ た エ ネ ル ギ ー の

39. 496(35.2

40. 3

)

が 体 成 長 に 配 分 さ れ た 。

  

以 上 の 実 験 結 果 か ら 、

20

C

で摂 餌 量

2

% の 場 合 に 摂 取 さ れた ヒ ラ メ 幼 魚 の エ ネ ル ギ ー 動 態 を 試 算 し た 。 そ の 結 果 、 代 謝 量 で は 標 準 代 謝 量9 , 3% 、活動代謝量16. 796 、特異動的作用17. 2% 、また排泄量4 .4 %、

成 長 量

39. 4%

、 排 出 量 ( 糞

)13

(

文 献 値 よ り 引 用 ) と な っ た 。

  

上 述 の よ う に 、 本 研 究 で は 、 ヒ ラ メ 幼 魚 が 餌 と し て 取 り 込 ん だ エ

ネ ル ギ ー が 代 謝 、 排 泄 、 排 出 、 成 長 に 如 何 に 配 分 さ れ る か に つ い て

(6)

詳細に調べた。これらの結果は、ヒラメの集約的養殖方法に対する

生理的対応を解明する初めての研究であり水産学上極めて重要な知

見であるとして高く評価され、本論文が博士(水産学)の学位請求

論文として相当の業績であると認定レた。

参照

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