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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 中 尾 弘 志

学 位 論 文 題 名

薬剤抵抗性チリカブリダニPhytoseiulus persLmilis Athias −Henriot (DAS 系統)利用による施設野菜ハダ二類の生物的防除に関する研究

学位論文内容の要旨

  薬剤抵抗性チリカブリダニによるハダニ類防除と他病害虫の薬剤防除を併用したシステムが可 能となり,簡易大量増殖法を開発したことにより施設野菜におけるハダニ類の生物的防除ならび に病害虫の総合防除の可能性が示され,以下の結論を得た。

1.薬剤抵抗性チリカブリダニに対する農薬の影響

(1)薬剤抵抗性チリカブリダニに使用可能な農薬     1)薬剤抵抗性チリカブリダニに使用可能な殺虫剤     MEP;アブラムシ,スリップス剤

    ブプロフウジン;オンシツコナジラミ剤     イミダプ口クリド粒剤;アブラムシ剤

    2)薬剤抵抗性チリカブリダニに使用可能な殺菌剤

    TPN,ポリカ―バメート,卜リアジメホン,マンゼブ・メタラキシル,卜リフルミゾー     ル,マンゼブ,ホセチル・マンゼブ,銅・カスガマイシン,プロシミドン,キャプタン,

    フェナルモル

(2)薬剤抵抗性チリカブリダニに悪影響が認められた農薬

    1) DDVPは 死 虫 率 が 高 か っ た 。 し か し , 殺 卵 カ は ほ と ん ど な か っ た 。     2)キノキサリン系では,死虫率はさほど高くなかったが,活動性が悪くなり産卵数が滅少     するなどの悪影響が認められた。

    3)合成ピレス口イド剤のぺルメトリンは,直接散布の死亡率は100%(10,000倍液)で,

    残効期間(2,000倍液)も50日以上のため,チリカブリダニを利用する場合に使用を避け     る必要がある。

(2)

2.薬剤抵抗性チリカブリダニによるナミハダニの生物的防除

(1)5.4x 20mの ビ ニ ー ル ハ ウ ス 内 で, 殺 菌 剤7回,MEP4回 散 布 条 件 のも と 抵 抗 性 チリ カ     ブリ ダニを キュウ リ葉の被害指数1.3で,(ハダニ雌:チリカブリダ二雌;以下同じ)  10:     1の比 率 にな るよ う放飼 したと ころ, ナミ ハダニ を充分 に抑制 するこ とが でき, 放飼7〜lO     日 後 のMEP散 布 で はほ ば 経 済 的 被 害許 容 水 準 以 下に 被 害 指 数 を抑 え ら れ ,MEP無 散 布 同     様の効果が認められた。

(2)5.4x20mの ビ ニ ー ル ハ ウ ス 内 で , 殺 菌 剤8回, 殺 虫 剤6回散 布 条 件 で , チリ カ ブ リ ダ ニ     を10:1の放飼比率では,キュウりの被害指数(O.5),(O.8)で,20:1では被害指数(O.5)     で 放 飼 す れ ば , 充 分 な 防 除 効 果 と 収 量 が え ら れ る こ と が 確 認 さ れ た 。

3. 薬剤抵 抗性 チリカ ブリダ ニの簡 易大 量増殖 法に関 する試 験

(1)簡易 大量 増殖法

    1)透 明プラ スチッ クと紙 を用 いた増 殖ケー ジを開 発した 。

    2)この ケ ー ジ は , カブ リ ダ ニ の 飼育 , 増 殖 , 保存 , 輸 送 ,放飼 が一貫 して可 能で ある。

    3)飼育 ・ 増 殖に 際し専 門的 技術を 特に必 要とせ ず,小 面積 で効率 的なカ ブリダ ニの 増殖が     可能 にな った。

(2)薬剤抵 抗性チ リカブ リダニ の保 存方法 ・配布 方法に 関す る試験

    1)薬剤 抵 抗 性 チ リ カブ リ ダ ニ は ,5℃で 約60日 まで生 存可能 でその 後の飼 育温 度を上 昇さ     せ る こ と に よ り , 飼 育 個 体 数 を 急 増 で き る こ と が 明 ら か に な っ た 。     2)10℃ で は 約90日 生存可 能で, 飼育温 度を 少なく とも12℃ にす れば個 体数の 増加が 可能 で     あっ た。

    3)増殖 ケ ー ジ の ま まの 保 存 試 験 を9℃で 実施し たが, ビニ ールに 入れた 場合に 成虫 の生存     期 間 は 長か っ た。ま た,保 存期間 中に 餌のハ ダニを 追加す るこ とで, 生存期 間を長 くする     こと がで きた。

    4)増殖 ケ ー ジに よる送 付, 郵送が 可能で あるが ,ケー ジの 紙が破 けない ように 梱包 する必     要が ある 。

(3)簡易大 量増殖 法によ る生産 費

    1時間当 りのケ ージ 生産数 は0. 73で,成 虫1個体当 りの生 産費(設備,減価償却費は除く)

    は5.5円と なった 。この ケー ジでは カブリ ダニの 全ステ ージ (成虫,卵,幼虫,若虫)が実     際に は利 用可能 でこれ らを含 めた個 体数 は成虫 数を150とす れば,少なく見積っても600には

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(3)

達し,生産費は約1.5円程度と計算された。充分に餌を与えれば,1ケージ当り500成虫程度 の生産が可能で,増殖温度を上げることで増殖スピードはより速くでき,生産費の低減がさ らに可能である。

4.増殖ケ―ジによる薬剤抵抗性チリカブリダ二利用試験

(1)キュウりでの防除試験

    1)キュウりでの増殖ケージによるチリカブリダニ放飼試験

    殺 菌剤11回,殺虫剤8回散布条 件下での増殖ケージによる放飼区のキュウリ収量は,殺     ダ二剤1回散布区の1. 25倍,無処理区の1.54倍と高く,チリカブリダニの定着・分散に問     題はなかった。

    2) 現地ハウスキュウりでの増 殖ケージによるチリカブリダニ放飼試験とその定着状況     @ 現地ハウスでの放飼後の定着・分散は良好であったが,チリカブルダニに悪影響のあ     る アブラムシ防除剤の散布によルチリカブリダニが滅少した。現地でのチリカブリダニ     放飼中のアブラムシ対策を明確にして指導する必要がある。

    ◎ チリカブリダニの増殖はハウス内温度が長時間30℃を越える条件下で悪影響が認めら     れ た 。 特 に ,4時 間 以 上33℃ を 越 え る よ う な 栽 培 条 件 を 避 け る 必 要 が あ る 。   (2)高温による薬剤抵抗性チリカブリダニの増殖への影響

    薬剤抵抗性チリカブリダニは31℃以上の高温が連続する条件下では増殖に適さず,変温条     件下でも少なくとも33℃以上の高温が4時間以上連続すると増殖に悪影響があることが明ら     かになった。

5.他作物での薬剤抵抗性チリカブリダニの利用可能性

(1)イチゴのナミハダ二寄生程度別収量調査の結果,1小葉当りに雌成虫が2頭以上になると     減収することが明らかになった。

(2)イチゴではダニによる食痕がキュウりのように葉に明瞭に現れないため,破害の指数化は     困難と考えられた。

(3)メロンでの増殖ケージによるチリカブリダニ放飼試験で,チリカブリダニはメ口ンのナミ     ハダニを防除できた。しかし,防除時期の目安となる被害の指数化は充分にできなかった。

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6.シ ステム ズモデ ル

(1) 斎 藤 ら(1986)のモデ ルを 基本と して, システ ムズ モデル の検討 を行っ た結果 ,平 均気温     と抵抗 性チリ カブリ ダ二 放飼後 の定着 率の2点を 修正す るこ とで, 実測値 とほぼ 一致する理   論 値が 得られ ,本モ デルの 適用 可能性 が示さ れた。

(2) 被害指 数もシ ミュ レーシ ョンで きるモ デルを 開発 し,葉 の表面 の平均 気温 を補正 すること     で実測 値とよ く一致 する 結果が えられ た。

    1) 葉 の 被害 指数 (O.5) では10:1,20:1の放 飼比率 で,(0.8) では10:1の 放飼比 率     でチ リ カ ブリ ダニを 放飼す れば ,充分 な防除 効果と 収量が 得ら れるこ とがモ デルの 計算 結     果に よ り 確認 された 。この モデ ルで放 飼比率 と防除 効果を 評価 するこ とが可 能であ った 。     2) さらに ,ナミ ハダニ の増殖 はキ ュウり での生 育デー タを 使用, ナミハ ダニの 生息部位で     ある キ ュ ウリ 裏面の 葉面温 度を 用いる ことで 実測値 と一致 する シミュ レーシ ョンが 可能 に     なった 。

    3) 防除時 期,防 除の過 程(防 除日 数,防除完了までのハダニによる被害)が予測可能となっ     た こ と で ,天 敵 利 用 者 (農 家 ) の 生 物防 除 に 対 す る 理解 を 深 め , 不安 を 取 り 除 ける 。

学位論文審査の要旨

  施設に おけ る栽培 条件は ハダニ 類の 生育の 好適な ため発 生量が 多く ,有効 な登録薬剤が少ない 現状の なかで ,薬 剤抵抗 性の発 達に注 意する 必要 がある 。更に ,近年 はよ り安全な農作物に対す る指向 の増大 や, 害虫の りサー ジェン ス(復 活) 現象の 主な原 因が天 敵類 の活動の阻害によるこ となど から, 化学 的防除 は困難 な現状 にある 。そ のため 天敵の 働きが 再確 認され,ハダニ類の薬 剤抵抗 性発達 の回 避,よ り安全 な農作 物の生 産の 面から も,天 敵利用 によ るハダニ類の生物的防 除の実 用化が 期待 されて いる。

  本 論 文 は 総 頁 数159, 図44, 表40を 含 み ( 別 に 図 版2) 和 文 で 書 か れ て い る 。   本 研 究 に は西 ド イ ツDarmstadtの 生 物 的有 害 動 植物 防除 研究所 から1984年に北 海道大 学農学

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須 彦

樊 敏

   

塚 越

森 飯

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

部応用動物学教室に導入したチリカブリダ二薬剤抵抗性系統(以下,DAS系統と略称)を供試 した。研究成果は次のように要約される。

  (1)DAS系統にたいして,日本国内で使用されている農薬の影響にっいて,使用可能な殺虫     剤及び使用可能な殺菌剤を明らかにした。

    殺虫 剤MEP剤 (フ ェ ニト 口チ オン剤 )によるDAS系統の死虫率は ,薬剤散布をくり返     すことにより低下した。しかし,4〜6力月の散布停止によって感受性の復元がみられた。

    DAS系統に悪影響が認められた農薬のうちで,特に合成ピレス口イド剤のペルメトリンは     死亡率が100%と高く,残効期間が長いことから,チリカブリダニを利用する場合に使用で     きない。

  (2) DAS系統によるハダニの生物的防除を薬剤散布下のキュウリ栽培ビニールハウスで実施     した。

    殺虫 剤MEP4回, 殺菌 剤7回散 布条件 のもとで,キュウリ葉の被 害指数1.3(ハダニの     加害跡が葉面積の 約%にみられる)の時点で,ハダニの雌に対してDAS系統の雌を10:1     (以下同じ)の比率になるように放飼すると,ナミハダニを完全に制御できた。同時に経済     的被害水準以下に被害指数をおさえられた。キュウリ葉の被害指数0.5では,20:1の比率で     DAS系統を放飼すれ ば,充分な防除効果とキュ ウりの収量がえられることを確認した。

  (3)簡易大量増殖法の考案。

    透明プラスチックと紙を用いた簡易増殖ケージを開発した。このケージ内にインゲンマメ     の生葉と餌のハダニとチリカブリダニを入れる。ケージのままカブリダニの増殖,保存,輸     送,放飼が一貫して可能であった。飼育,増殖に際し専門的技術を特に必要とせず,小面積     で効率的なカブリダニの増殖が可能になった。DAS系統の保存には10℃で約90日生存可能     なこと,増殖ケージのまま送付,郵送が可能で,外国で開発された方法にくらべ,著しく簡     便且つ省力的である。

    簡易大量増殖法による生産費は,チリカブリダニ成虫1個体当り(設備費,管理費は除く)

    は5.5円となった。このケージではカブリダニの全ステージ(成虫,卵,幼虫,若虫)が実     際に利用可能であるから,全ステージの1個体当りに見積ると,生産費は約1.5円となった。

  (4)簡易増殖ケースを用いたキュウりでのハダ二防除。

    殺菌剤11回,殺虫 剤8回,散布条件下のキュウ リ栽培のビ二―ルハウスでのDAS系統放     飼試験の結果,ハダニの制御に成功した。放飼区のキュウりの収量は殺虫・ダ二剤散布区の     1. 25倍,無処理区の1.54倍と高かった。但し,ハウス内で放飼されたDAS系統は31℃以上

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    の高温が連続する条件下では増殖に適さず,変温条件下でも33℃以上が4時間以上続くと増     殖に悪影響がみられ,ハダ二防除は成功しなかった。キュウリ以外ではイチゴおよび露地メ     口ン栽培圃場で,DAS系統の利用の可能性が確かめられた。

  (5)システムズモデル。

    薬剤散布環境下で実施したハウスにおける防除試験結果に適合するシミュレーションモデ     ルを作製して,薬剤散布時期,DAS系統チリカブリダニの放飼時期,放飼比率など,多く     の 組 合 せ に っ い て モ デ ル 上 で 検 討 し , 効 果 的 な 利 用 方 法 を 明 ら か に し た 。   本研究はチリカブリダニを日本に導入以来,っみ重ねられた研究成果を発展させ,更に天敵の 簡易大量増殖法やシステムズモデルの開発によって,チリカブルダニの実用化に明るい展望をも たらした画期的な業績である。

  よって審査員一同は,別に行った学力確認試験の結果と合わせて,本論文の提出者中尾弘志 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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