博 士 ( 工 学 ) 佐 々 木 学 位 論 文 題 名
含水多孔質層の凍結熱伝達に関する研究
学位論文内容の要旨
ユヒ旦
含水した多孔質層の凍結現象は,寒冷環境下での土壌の自然凍結や樹木の凍結などに代表され るほか,工学の面においても,軟弱な地盤の固化を目的とした地盤凍結工法,汚泥の凍結融解処 理,食品の冷凍保存・凍結粉砕および低温貯蔵庫の建設など種々の分野と密接に関連している。
さらに近年,寒冷地ににおいて,土壌を潜熱蓄冷槽とした低温貯蔵庫が開発されるなど,冬期冷 熱を夏期に有効に活用しようとする試みがなされている。また,都市部においては,深夜電カの 効率的運用を目的とした氷蓄冷空調システムが利用されている。しかし,氷蓄冷槽の性能は,一 般に,蓄冷材料すなわち水・氷の熱的性質によってある範囲内に限定され,その利用目的に応じ た伝熱特性を得ることが困難である。しかし,土壌を潜熱蓄冷槽として利用する場合と同様に,
水と固体粒子より構成される多孔質層を蓄冷槽として利用した場合,その利用目的に応じて,固 体粒子の種類,ならびに粒子量などを変化させることにより,幅広くその伝熱特性および蓄冷特 性を変えることが可能となる。
このように,含水多孔質層の凍結は,自然界における問題のみならず,様々な工学の分野に関 連する重要な問題である。したがって,その熱的特性や凍結挙動に関する詳細な検討が必要と なっており,様々な条件下における凍結熱伝達特性を実験的に検討するとともに,凍結量および 蓄冷熱量などを解析的に予測することは意義あることと考えられる。しかしながら多孔質層の凍 結に関する従来の実験および解析的研究では,凍結量や温度分布に関する検討に主点がおかれ,
多孔質物性や粒子径,ならびに温度条件が,蓄冷熱量および凍結熱伝達特性におよぼす効果に関 しては,ほとんど研究がなされていない。
このような現状に基づき,本論文では,含水した多孔質層の凍結に関して実験的および解析的 研究を行い,これまで不明であった粒子物性,粒子径,加熱・冷却温度条件,および未凍結層内 に発生する自然対流が,凍結熱伝達特性,蓄冷熱量,および凍結界面形状におよぼす影響に関し て詳細な検討を行っている。
本論文は,7章より構成されている。第1章は序論であり,含水多孔質眉の凍結が関連する自
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然現 象およ び工学 的問題 にっい て概 説し, 含水多 孔質層 の凍 結熱伝 達に関する研究の意義と本研 究の 概要を 述べて いる。
第2章で は,多 孔質層 の凍結 問題 に関連 する基 礎事項 と従来 の研 究にっ いて, 実験お よび 解析 の双 方の観 点から 述べる ととも に, これら の研究 におけ る問 題点を 指摘し,含水多孔質層の凍結 に関 する本 研究の 目的お よび位 置付 けを明 らかに してい る。
第3章で は,含 水した 多孔質 層の 凍結に 関する 実験お よび解 析に 先立ち 多孔質 層の熱 物性 値に 関し て実験 的検討 を行っ た。こ こで は,始 めに自 然界に おけ る多孔 質層の身近な例として土壌を 取り 上げ, その温 度伝導 率の経 時変 化を種 々の含 水率の もと で測定 することにより,温度勾配下 にお いて発 生する 土壌内 での物 質移 動に関 して検 討を行 った 。次に ,多孔質層の凍結熱伝達に関 する 数値解 析およ び実験 を行ナ ょうための基礎データを得ることを目的として,熱物性値の既知な 粒子 より構 成され ている 多孔質 層が 空気, 水,お よび氷 で満 たされ た場合の熱伝導率,熱容量,
およ び温度 伝導率 の測定 を行い ,粒 子層の 熱伝導 率の算 定に 従来用 いられているモデル式の妥当 性, ならび に熱伝 導率算 定モデ ル式 および 体積熱 容量よ り求 められ る温度伝導率の推定値の妥当 性に 関して 検討を 行って いる。
第4章 で は ,合 水 多 孔 質 層の 非 定 常 な らび に 定常状 態にお ける 凍結熱 伝達特 性を, 数値 解析 に より 詳 細 に 検 討 する こと を目的 として ,最 も基本 的な構 造であ る上 下面を 断熱壁 ,左右 垂直 壁 をそ れ ぞ れ 加 熱 壁, およ び冷却 壁とし た矩 形多孔 質層の モデル を導 入し, 界面移 動をと もな う 相変 化 問 題 の 解 法と して ,凍結 界面形 状お よび界 面近傍 の温度 応答 を正確 に算定 するこ とが 可 能な , 境 界 固 定 法に 基づ いた数 値解析 手法 にっい て述べ ている 。ま た,未 凍結領 域の運 動量 方程 式には ,固体 壁面で すべり なしの条件を満足させるため,粘性の影響を,さらに高レーレ―数 領 域へ の 適 用 が 可 能と な る よ う に, 速 度 の2乗に比 例した 慣性の 影響 を取り 入れた 拡張さ れた ダ ルシ ー 法 則 を 採 用す ると ともに ,未凍 結領 域およ び凍結 領域に 対す る各基 礎方程 式,な らび に 凍結 界 面 で の エ ネル ギー バラン ス式の 無次 元化に より多 孔質層 の凍 結現象 に影響 する無 次元 数に 関して 検討を 行って いる。
第5章で は,垂 直な加 熱・冷 却壁 を有す る含水 矩形多孔質層の定常および非定常状態における,
凍結 熱伝達 および 凍結層 厚さに およ ばす, 未凍結 層内に 生ず る自然 対流の影響を明らかにするた め, 種々の 加熱・ 冷却温 度粒子 径, および 粒子物 性の場 合に 関して ,実験 および 第4章で述 べた 数値 解析法 による 検討を 加えて いる 。実験 におい ては, 非定 常状態 での多孔質層への伝熱量の測 定, 赤外線 温度計 (サー モビュ ア) による 温度分 布の可 視化 ,およ び定常状態での凍結界面形状 の写 真撮影 を行い ,数値 解析結 果と の比較 検討を 行って いる 。
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第6章では ,工学 的応 用例と して, 実際に 蓄冷さ れる 場合を 対象と して取 り上 げ,水 で飽和 さ れ た矩形 多孔 質層の 一垂直 壁から 冷却が 行わ れ,凍 結が進 行する 場合 を考え,その凍結量,蓄冷 熱 量,お よび 凍結界 面での 熱伝達 特性に 関し て実験 的なら びに解 析的 検討を行っている。ここで は 主とし て凍 結量, 蓄冷熱 量,お よび凍 結界 面での 伝熱特 性に及 ぼす ,初期温度空隙率,および 粒 子物性 の影 響に関 して検 討を行 ってい る。 さらに ,実測 された 凍結 層厚さおよび蓄冷熱量に関 す る無次 元整 理式を 提示し ている 。
第7章は結 論であ り, 本研究 におい て得ら れた結 果を 要約し て述べ ており ,含 水多孔 質層の 凍 結 量およ び蓄 冷熱量 に関す る解析 方法お よび 研究結 果は, 自然凍 結に 伴う凍害防止対策への情報 と な る の み で な く , 多 孔 質 利 用 蓄 冷 槽 の 開 発 設 計 の 基 礎 資 料 と な る こ と を述 べ て い る 。
学位論文審査の要旨
含水多 孔質層 の凍結 問題 は,凍 結界面 上で潜 熱の吸 収あ るいは 放出が 存在し,凍結界面が時空 間 的に 変化す る移動 境界問 題であ るこ とから ,その 熱移動 現象 は,未 凍結層内での対流伝熱およ び 凍 結 層 内 で の 伝 導 伝 熱 が 複 合 し た 問 題 と し て 取 り 扱 わ な け れ ば な ら な い 。 含水多 孔質層 の凍結 は, 寒冷環 境下で の土壌 の凍結 や樹 木の凍 結など の自然現象のみならず,
地 盤 凍 結 工 法, 汚 泥 の 凍 結 融解 処 理 , 食 品の 冷 凍保 存・凍 結粉砕 ,およ びLNG地下 埋設タ ンク の 建設 など様 々な工 学の分 野と密 接に関連する重要な問題である。さらに近年,寒冷地において,
土 壌を 潜熱蓄 冷槽と した低 温貯蔵 庫が 開発さ れるな ど,そ の熱 伝達特 性や凍結挙動の解明が急務 と なっ ている 。しか しなが ら,従 来の 研究で は,凍 結熱伝 達特 性およ び蓄冷熱量に関してはほと ん ど検 討がな されれ ていな い,さ らに ,解析 的研究 におい ては ,凍結 界面の取り扱い方や未凍結 領 域内 の温度 場およ び流れ 場の検 討は ,充分 ではな かった 。
本論文 では, 含水多 孔質 層の凍 結に関して実験的および解析的研究を行い,これまで不明であっ た 粒子 物性, 粒子径 ,加熱 ・冷却 温度 条件, および 未凍結 層内 に発生 する自然対流が,凍結熱伝
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郎 、
一 博
二
一
尚 誠
亮
迫 田
口 黒
福 飯
谷 石
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
達特性,蓄冷熱量,および凍結界面形状におよばす影響に関して詳細な検討を行い,その結果を 7章にまとめている。
第1章は序論であり,含水多孔質層の凍結が関連する自然現象および工学的問題にっいて概説 し , 含 水 多 孔 質 層 の 凍 結 熱 伝 達 に 関 す る 研究 の 意義 と本 研究 の概 要 を述 べて いる 。 第2章では,多孔質層の凍結問題に関連する基礎事項と従来の研究にっいて述べるとともに,
これらの研究における問題点を指摘し,本研究の目的および位置付けを明らかにしている。
第3章では,多孔質層の熱伝導率,熱容量,および温度伝導率の測定を行い,粒子層の熱伝導 率の算定に従来用いられているモデル式の妥当性,ならびに熱伝導率算定にモデル式および体積 熱容量より求められる温度伝導率の推定値の妥当性に関して検討を行い,含水多孔質層の凍結に 関 し て 解 析 的 検 討 を 行 う 際 の 熱 物 性 値 の 算 定 方 法 に 関 す る 指 針 を 与 え て い る 。 第4章では,含水多孔質層の凍結熱伝達特性を,数値解析により詳細に検討することを目的と して,最も基本的な構造である上下面を断熱壁,左右垂直壁をそれぞれ加熱壁,および冷却壁と した矩形多孔質層のモデルを導入し,界面移動をともなう相変化問題の解法として,凍結界面形 状および界面近傍の温度応答を正確に算定することが可能な,境界固定法に基づぃた数値解析手 法にっいて述べている。
第5章では,垂直な加熱・冷却壁を有する含水矩形多孔質層の定常および非定常状態における,
凍結熱伝達特性および凍結層厚さにおよぼす,未凍結層内に生ずる自然対流の影響を明らかにす るため,種々の加熱・冷却温度,粒子径,および粒子物性の場合に関して,実験および解析によ る検討を加えている。
第6章では,実際に蓄冷される場合を対象として,水で飽和された矩形多孔質層の一垂直壁か ら凍結が進行する場合の凍結量,蓄冷熱量,および凍結界面での熱伝達特性に関して実験的なら びに解析的検討を行うとともに,凍結層厚さおよび蓄冷熱量に関する無次元整理式を提示してい る。
第 7章 は 結 論 で あ り , 本 研 究 に お い て 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し て い る 。 これを要するに,本論文は,含水多孔質層の凍結に関して実験的および解析的研究を行い,粒 子物性,および未凍結層内に発生する自然対流などの諸因子が,凍結熱伝達特性,蓄冷熱量,お よび凍結界面形状に及ぼす影響を明らかにするとともに,含水多孔質層の凍結量および蓄冷熱量 の予測,ならびに凍結熱伝達の制御に関して指針を与えたものであり,その成果は伝熱工学に寄 与するところ大である。よって著者は博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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